1 売上を確定する
売上の計上時期を決める
決算を組むにあたって、最初にすべきことは売上高を確定することです。
当期の売上高を確定させるためには、まず自社の売上をいつ計上するのか、つまり商品や製品を出荷したときに売上を計上するのか、それとも納品したときか、あるいは相手方が検収したときか、それを決定する必要があります。
いつ売上が上がるかが決まっていなければ、どの売上までを計上していいかがわかりません。
例えば、売上を計上する時期を納品したときにしているとします。するとその決算で計上すべき売上は、決算の開始日から終了日までに納品したすべての商品ということになります。逆に出荷したけれど納品していないものは売上に計上しません。
このように売上高を確定するためには、まず売上をいつ計上するかを決める必要があります。売上をいつ計上するかについてはいくつか基準がありますので、そこから選びます。売上計上基準については次の記事を参照してください。
今期の売上をすべて拾う
売上の計上基準が決まったら、その基準で売上に計上すべきものをすべて拾うことになります。
売上の計上を納品基準としている場合はその決算の開始日から終了日までに納品したすべての商品を売上に計上する必要があります。
普段は得意先に差し入れる請求書の請求金額で売上を計上しているとします。その請求書が20日締めだとすれば、通常月はその月の請求金額で売上を計上することになんら問題はありませんが、決算月は違います。決算月では21日から月末までに納品した分がその月の請求書には入っていないのでその分を拾わないといけません。たとえば売上が商品や製品の場合は納品書(控)や受領書などから拾うことになるでしょうし、売上が工事だとすれば、翌月の請求書で請求している工事の中で決算期末までに終わっている工事を拾う必要があります。
このように決算月には注意が必要です。請求書だけでなく、売上基準に則って売上となっているものを自社の書類からすべて拾うようにしましょう。もし税務調査があれば調査官が必ず確認するポイントです。
【参考】売上の計上方法
「売上を計上するタイミングはいつ?中小企業の売上計上基準を元国税・税理士が解説」で触れたように、売上は実現したときに売上を計上するので、請求をしたときに売上を計上するというのが一般的だとは思いますが、請求ベースで売上を計上していれば、自社の売上をリアルタイムに近いタイミングで把握できるという利点があります。
一方請求ベースで売上を計上するとその消し込みが必要になります。要するに請求どおりに金額が入ってきたかを帳簿に記録する必要があります。これにより回収漏れを防ぐことができますが、手数がかかるというデメリットがあります。
事務手数を省くという意味では、通常月の売上の計上は入金ベース(現金主義)で行い、決算月には、売上の計上基準に則って実現している売上を拾うという手続きを取ってもなんら問題はありません。
2 未収入金・未収収益を確定する
売掛金、未収収益、未収入金の区別
会計では、収入は発生しているが、代金を回収していないものを売掛金、未収入金と未収収益に分類します。
売掛金とは
本業からの得た収入(=売上高)のうち、代金が回収されていないものを「売掛金」と呼びます。
上記1で決算月に売上を拾うという話をしていましたが、拾った売上の相手勘定科目は売掛金になります。
未収収益とは
一定の契約に従って継続して役務の提供を行う場合、既に提供した役務に対していまだその対価の支払を受けていないものを「未収収益」と呼びます。
例えば、賃料を半年に一度6月と12月に受け取る契約をしていた場合に、3月末の時点では代金はもらっていませんが、1月〜3月まではすでに貸しているので収入としては発生していると考えます。その場合は未収収益を3ヶ月分計上することになります。
仕訳例
未収家賃 900,000 / 受取家賃 900,000
未収入金とは
本業以外から得た収入(=雑収入など)のうち、物の引き渡しや役務の提供が完了していて債権として確定しているが、対価の支払いを受けていないものを「未収入金」と呼びます。
例えば製造現場から出た鉄くずなどを売却したもので、代金が未回収のものや、車両などの固定資産を売って、代金が未回収のものなどが未収入金になります。
未収収益と未収入金の違いはわかりにくいかもしれません。勘定科目としては別のものですが、実務では両方を収入にあげていればその収入の相手科目を未収入金と未収収益に正確に区分できていなくても問題は特にありません。
今期の未収収益と未収入金をすべて拾う
売上以外の収入についても決算のときにすべて拾う必要があります。
未収収益の確認
家賃収入や貸付金の受取利息などの一定の契約の下、代金は受け取っていないが、役務の提供はしていて収入として発生している未収収益はないかを確認します。
未収入金の確認
本業以外の収入で未回収となっている未収入金についても売上同様、収入に計上する基準を決め、その基準で収入として計上すべきものを拾い出します。
3 売掛金(未収入金)の内訳書を作成する
記入上の注意点
法人税の申告書に添付する勘定科目内訳明細書の売掛金(未収入金)の内訳書には、これまで説明した売掛金、未収入金そして未収収益を記入します。
- 売掛金、未収入金、未収収益から取引先別の残高を抽出します。
- 残高が50万円以上のものについては、取引先ごとに、科目、取引先名、住所、残高を記入します。( ただし、50万円以上のものが5口未満のときは金額の多いものから5口程度を記入)その他は一括して記入します。
- 未収入金については、その取引内容を摘要欄に記入します。
勘定科目内訳書の共通する基本的な書き方については「0からわかる勘定科目内訳明細書とは 〜書き方の基本〜」をご参照ください。
貸借対照表との照合
内訳書に記入された売掛金、未収入金そして未収収益の各科目の合計金額が貸借対照表の各科目の金額と同じになっているか確認しましょう。
下の記載例の売掛金の合計は3,200,000円です。したがって、貸借対照表の売掛金も3,200,000円である必要があります。
売掛金(未収入金)の内訳書の記載例
まとめ
決算で最も重要なものの一つが収入を確定するということです。
今期の収入を拾いもれのないように決算時に十分に確認しましょう。
一度決算時に何の書類を確認すればよいかわかれば、来年以降も概ね同じ作業で収入を確認することができますので、ルーティンワークにできるよう決算時に確認する書類を控えておくと作業が効率的に進むかもしれません。
なお、16種類すべての勘定科目内訳明細書を通してその書き方の基本的な部分を説明した記事がありますのでそちらも参照するとより理解が深まると思います。
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