初めて法人の申告時期を迎え、税務署から法人税の申告書が送られてきてあまりの書類の多さと訳の分からなさに愕然としてしまった。
このような法人税の申告書に初めて向き合った方、勘定科目内訳明細書の書き方がわからないといった法人税の申告書作成初心者の方を対象に、勘定科目内訳明細書の基本やその書き方について元国税調査官の視点から0から解説していきます。
この記事を読めばこの書類との付き合い方がわかり、書き方や作成のコツまでわかりますので、読み終わったころにはアレルギーもなくなり、勘定科目内訳明細書は恐るに足りなくなっていることと思います。
それでは早速始めていきましょう。
- 勘定科目内訳明細書とは
- 勘定科目内訳明細書の書き方の基本
- 16種類の勘定科目内訳明細書の書き方と記載例
- ⒈ 預貯金等の内訳書(記載例)
- ⒉ 受取手形の内訳書(記載例)
- ⒊ 売掛金(未収入金)の内訳書(記載例)
- ⒋ 仮払金(前渡金)の内訳書・貸付金及び受取利息の内訳書(記載例)
- ⒌ 棚卸資産(商品又は製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品)の内訳書(記載例)
- ⒍ 有価証券の内訳書(記載例)
- ⒎ 固定資産(土地、土地の上に存する権利及び建物に限る。)の内訳書
- ⒏ 支払手形の内訳書(記載例)
- ⒐ 買掛金(未払金、未払費用)の内訳書(記載例)
- 10. 仮受金(前受金・預り金)の内訳書(記載例)
- 11. 借入金及び支払利子の内訳書(記載例)
- 12. 土地の売上高等の内訳書(記載例)
- 13. 売上高等の事業所別内訳書(記載例)
- 14. 役員給与等の内訳書(記載例)
- 15. 地代家賃等の内訳書(記載例)
- 16. 雑益、雑損失等の内訳書(記載例)
- 決算期末に残高のない勘定科目は内訳書の作成必要なし
勘定科目内訳明細書とは
勘定科目内訳明細書が法人税の確定申告の中でどのような位置づけとなっているかを確認しておきましょう。
法人税の確定申告書に添付する提出書類の一つ
法人税の確定申告書(別表)に添付する必要のある書類は主に次のものになります。
- 決算書
- 勘定科目内訳明細書
- 事業概況説明書
- 適用額明細書(該当がある場合のみ)
このように勘定科目内訳明細書は確定申告書に添付する書類の一つという位置づけとなっています。
勘定科目内訳明細書は提出しなければいけないの?
勘定科目内訳明細書は提出しなければならないのか?という基本的なところを確認しておきましょう。
Yes!提出しなければいけません。
提出することが義務となっています。
その理由は次のとおりです。
特にその理由を知らなくてもいいという方は少し長く難しくなるので勘定科目内訳明細書の書き方の基本まで読み飛ばしてください。
法人税法第74条第1項の内容は次のような内容となっています。
内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から2月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。ー中略ー3 第一項の規定による申告書には、当該事業年度の貸借対照表、損益計算書その他の財務省令で定める書類を添付しなければならない。
第35条 法第74条第3項(確定申告書の添付書類)に規定する財務省令で定める書類は、次の各号に掲げるもの(略)とする。-中略-三 当該事業年度の貸借対照表及び損益計算書に係る勘定科目内訳明細書
勘定科目内訳明細書をどのように作成するか、その書き方を見ていくことにしましょう。
勘定科目内訳明細書の書き方の基本
勘定科目内訳明細書の作り方は、実はそんなに難しいものではありません。
それでは何を転記すればいいのか、大きな流れを確認していきましょう。
勘定科目内訳明細書は16種類の内訳書からなる書類ですが、そのうちの1つである「売掛金(未収入金)の内訳書」を例にその書き方の基本を詳しく見ていくことにしましょう。
勘定科目の期末現在の残高を取引先ごとに転記する
売掛金(未収入金)の内訳書はこのような様式です。
勘定科目内訳明細書の作業のほとんどは、
決算期末の時点で各内訳書の題目に記されている勘定科目(下の画像でいえば「売掛金(未収入金)」)に残高がある場合に、その残高を取引先ごとに集計して取引先別に1行1行転記していく
という作業の繰り返しになります。
売掛金と未収入金を例に詳しく見ていきましょう。
下の貸借対照表をご覧ください。
期末時点の売掛金の残高が7,060,000円で、未収入金の残高が332,000円であることがわかります。合計が7,392,000円です。
勘定科目内訳明細書は取引先ごとに残高を集計して転記していきますので、結果として下の内訳書のサンプルのように期末現在高の計の欄が7,392,000円となり、貸借対照表の7,392,000円と一致します。
このように決算書の残高と内訳書の合計が一致することを確認します。
ここで取引先ごとの残高って?と初めて作成される方は思うかもしれません。
そうなんです。各勘定科目の残高を取引先ごとに集計する必要があるのです。
会計ソフトで帳簿をつけるときに取引の多い相手先に「補助科目」を設定していれば下のサンプルのように「補助元帳」で取引先ごとの残高を確認することができます。
上のサンプルでは「あいうえお商店株式会社」の残高は6,480,000円であることがわかります。上の内訳書のサンプルに「あいうえお商店株式会社」の残高が6,480,000円と転記されていることを確認してください。
もし補助科目の設定をしていなかったという場合には、是非次の年度からはこの内訳書を作成する前提で、会計ソフト入力時に頻繁に取引する相手先には補助科目を設定することをお勧めします。
これにより申告時のこの書類の作成時間が大幅に減りますし、普段取引先ごとに金額を確認したいときも補助元帳を見ればすぐにわかるというメリットがあります。
また補助科目を設定していなくても別途支払い管理のために取引先ごとの売掛金や買掛金などを毎月エクセル等で表を作成している(売掛金台帳・買掛金台帳・受取手形記入帳・支払手形記入帳など)という場合はその書類も使用できます。
もし、補助科目を設定していないし、取引先ごとに台帳や表も作っていないという場合には改めて請求書を引っ張り出してきて取引先ごとの残高を集計する必要がでてきます。その場合にはエクセルなどの表計算ソフトを使うと良いでしょう。
このように実は勘定科目内訳明細書は難しいのではなく手間なのです。
日々の帳簿付けのときに勘定科目内訳書の作成を前提に作業するようにすることが申告時の手間軽減につながっていきますので毎年工夫を重ね、効率的に作成できるようにしていきましょう。
ここで一つ安心材料を付け足しておきます。
取引先ごとの残高をすべて転記する必要はない
勘定科目内訳明細書には「(注)」という表現で記入の上での注意点が挙げられています。
上の画像の注の⒉をご覧ください。
相手先別期末現在高が50万円以上のもの(50万円以上のものが5口未満のときは期末現在高の多額なものから5口程度)については各別に記入し、その他は一括して記入してください。
このようにすべてを転記する必要はないので、この注書きに則して必要最低限のものを転記するようにしましょう。たいていの内訳書がこのように金額の少ないものは一括してよいことになっています。
注意書きに則して記載しよう
前述したように勘定科目内訳明細書には、その様式の下部に注意書きがあります。
勘定科目内訳明細書を記載する際は、その注意書きに目を通し、そのとおりに記載することが肝要です。
勘定科目内訳明細書は、その書き方という形では国税庁が公表していません。法人税の申告書の添付書類の一つである法人事業概況説明書には書き方が公表されていますが、勘定科目内訳明細書にはありません。
実はこの注意書きが勘定科目内訳明細書の書き方のすべてなのです。
そこに書いていないことは自ら判断することになります。
例えば売掛金(未収入金)の内訳書の注意書き1には次のように記載されています。
「科目」欄には、売掛金、未収入金の別を記入してください。
では「完成工事未収入金」とは書いていないから記載しなくていいのか?
「完成工事未収入金」も「未収入金」と同様の性質なものだから必要だろう、と判断します。
「仮払金(前渡金)の内訳書」の注意書き1には次のように記載されています。
「科目」欄には、仮払金、前渡金の別を記入してください。
前渡金とあるなら前払費用は記載する必要があるのか?
前渡金と前払費用は会計的に異なる性質のものであるから不要と判断します。
ただし、前払費用を入れたとしても別に問題はまったくありません。
前払費用がなぜ入っていないかを第三者から指摘されたら内訳書の注意書きには仮払金と前渡金の別を記入するようにとしか書いていないと言えるわけです。
この注意書きが勘定科目内訳書の書き方のすべてなので、作成の際には必ず確認しましょう。
16種類の勘定科目内訳明細書の書き方と記載例
勘定科目内訳明細書の書き方の基本がわかったところで、16種類の勘定科目内訳明細書の書き方の概略とその記載例を見ていくことにしましょう。
その前に平成31年4月1日以後終了事業年度分から勘定科目内訳明細書の様式が新しくなっていますので、新たに作成する際は、正しい様式を使用するよう注意しましょう。
平成31年4月1日以後終了事業年度分の勘定科目内訳明細書(国税庁提供)
それでは勘定科目内訳明細書の記載例をみながらそれぞれの内訳書について解説していきます。
⒈ 預貯金等の内訳書(記載例)
預貯金等の内訳書には、法人で持っている預貯金等の内訳を、取引金融機関別、そして預貯金の種類別に記載します。
現金及び預金の残高の預貯金等の内訳書の残高を合わせたいという場合は、現金を含めるケースもあります。
注意書きにもありますが、口座名義人が法人になっていなくても法人で利用している口座は記載し、「適用」欄に「名義人○○○」と記載します。
預貯金等の内訳書の書き方の詳細を知りたいという方は次の記事をご参照ください。
⒉ 受取手形の内訳書(記載例)
受取手形の内訳書には、期末時点で法人が持っている受取手形の内訳を振出人ごとに区分してその明細を記載します。
⒊ 売掛金(未収入金)の内訳書(記載例)
売掛金(未収入金)の内訳書には、決算期末時点で売掛金・未収入金に残高がある場合に、取引先別にその明細を記載します。
売掛金(未収入金)の内訳書の書き方の詳細を知りたいという方は次の記事をご参照ください。
⒋ 仮払金(前渡金)の内訳書・貸付金及び受取利息の内訳書(記載例)
❶ 上段の仮払金(前渡金)の内訳書には、期末時点で勘定科目「仮払金」と「前渡金」に残高がある場合に取引先ごとにその明細を記載します。
❷ 下段の貸付金及び受取利息の内訳書は、期末時点で貸付金が残高として残っている金額の明細とその貸付金から申告年度中に受け取っている利息の明細を記載します。
⒌ 棚卸資産(商品又は製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品)の内訳書(記載例)
棚卸資産の内訳書には、期末時点で棚卸資産に分類される科目(主に「商品」又は「製品」、「半製品」、「仕掛品」、「原材料」、「貯蔵品」)に残高がある場合にその明細を記載します。
棚卸資産の内訳書の書き方の詳細を知りたいという方は次の記事をご参照ください。
⒍ 有価証券の内訳書(記載例)
有価証券の内訳書には、期末時点で有価証券を保有している(勘定科目「有価証券」「投資有価証券」「出資金」に残高がある)場合に、有価証券の区分、種類、銘柄ごとにその残高の明細を記載すると同時にその決算期の中で増減がある場合は、その明細も併せて記載します。
区分というのは次の区分のことをいいます。
売買目的有価証券 |
|
満期保有目的等有価証券 |
|
その他有価証券 | 上記以外の有価証券 |
⒎ 固定資産(土地、土地の上に存する権利及び建物に限る。)の内訳書
固定資産の内訳書は、次の場合に作成します。
- 決算期末時点に土地または建物を保有している場合
- 土地・建物を当期中に売却または評価替えした場合
上記事由があった場合に物件ごとにその明細を記載します。
土地・建物を保有していなかったり当期中に増減がなければ作成する必要はありません。
⒏ 支払手形の内訳書(記載例)
支払手形の内訳書には、期末時点で支払期日のきていない支払手形がある場合に、支払先ごとに区分してその明細を記載します。
⒐ 買掛金(未払金、未払費用)の内訳書(記載例)
買掛金(未払金、未払費用)の内訳書には、決算期末時点で買掛金・未払金、未払費用に残高がある場合に、取引先別にその明細を記載します。
買掛金(未払金・未払費用)の内訳書の書き方の詳細を知りたいという方は次の記事をご参照ください。
10. 仮受金(前受金・預り金)の内訳書(記載例)
❶ 上段仮受金(前受金・預り金)の内訳書には、決算期末時点で仮受金、前受金、預り金に残高がある場合に、取引先別にその明細を記載します。
❷ 下段源泉所得税預り金の内訳には、期末時点で預り金として経理している天引きした源泉所得税がある場合に、給与を支払った年月別に所得の種類に分けてその明細を記載します。源泉所得税を納期の特例で納付している場合は、複数の支払年月記載する必要があります。
上段仮受金(前受金・預り金)の内訳書に記載した源泉所得税の預り金の期末現在高と下段の源泉所得税預り金の内訳の合計は一致します。
11. 借入金及び支払利子の内訳書(記載例)
借入金及び支払利子の内訳書には、期末時点で借入金が残高として残っている金額の明細とその借入金に対して申告年度中に支払っている利息の明細を記載します。
12. 土地の売上高等の内訳書(記載例)
土地の売上高等の内訳書は、次の2つのケースに該当する場合に作成が必要な書類です。
- 土地(土地の上に存する権利と土地付き建物を含む)を棚卸資産として保有していて、それを申告期間中に売却した場合
- 土地または土地付き建物を仲介した場合
土地を棚卸資産として保有しているということは不動産業を生業にしている必要があります。したがってこの書類は不動産業を営んでいる法人だけが作成する書類になります。
13. 売上高等の事業所別内訳書(記載例)
売上高等の事業所別内訳書は、法人が複数の事業所(支店等)を持つ場合に、その事業所ごとに申告年度の情報を記載する明細書です。
事業所が1箇所の場合は、作成の必要はありません。
14. 役員給与等の内訳書(記載例)
❶ 上段の役員給与等の内訳には、役員すべてを記載し、給与の種類ごとに支給金額を記載します。
役員給与等の内訳の給与の金額は申告年度中に支払った総額で、月額を記載するのではありません。
❷ 下段の人件費の内訳には、役員給与と従業員給与手当て、従業員賃金手当に区分して支給額の総額とそのうち代表者とその家族分について記載します。
役員給与等の内訳書の書き方の詳細を知りたいという方は次の記事をご参照ください。
15. 地代家賃等の内訳書(記載例)
❶ 地代家賃の内訳には、申告期間中に支払った地代・家賃を物件ごとに区分してその明細を記載します。
地代は、土地を借りる時に支払う賃借料(土地や駐車場の使用料)
家賃は、建物を借りる時に支払う賃借料(事務所や店舗、倉庫の使用料)
❷ 権利金等の期中支払の内訳は、申告期間中に物件を賃借する際に支払った権利金や立退料などがあった場合にその支払いごとに明細を記載します。
❸ 工業所有権等の使用料の内訳書には、申告期間中に特許権、実用新案権、意匠権及び商標権等の使用料の支払いがあった場合に、その支払いごとに明細を記載します。
16. 雑益、雑損失等の内訳書(記載例)
❶ 雑益等の欄には、申告期間中に生じた雑収入や、特別利益に分類される固定資産売却益等について、原則10万円のものをその収入ごとに記載します。
❷ 雑損等の欄には、申告期間中に生じた雑損失や貸倒損失、特別損失に分類される固定資産売却損等について、原則10万円のものをその損失ごとに記載します。
決算期末に残高のない勘定科目は内訳書の作成必要なし
勘定科目内訳明細書は全部で16種類ありますが、それは全部作る必要があるのかというとそうではありません。期末に残高のない勘定科目の内訳書は作成する必要がありませんし、自社に関係のない内訳書も作成する必要がありません。
例えば在庫を抱えない会社は「棚卸資産の内訳書」はいりません。有価証券を保有していなければ「有価証券の内訳書」もいりません。
棚卸資産として土地を保有したり、土地等を仲介する会社でなければ「土地の売上高等の内訳書」はいりません。
勘定科目内訳明細書はなんのために提出するのか?
それぞれの勘定科目内訳明細書の書き方の概略がわかりました。
続いて勘定科目内訳明細書をなんのために提出するものかを理解しましょう。
なんのために提出するか、というこの書類提出の趣旨を理解していれば、書類作成時に疑問が生じた時、どのように記載するかの道標になるからです。
前記した勘定科目内訳明細書の書き方は注意書きだけで、それ以外の事柄は自分で判断する必要があると言いましたが、それに通じるところです。趣旨を理解していれば間違った判断をしにくくなるからです。
元国税調査官の立場から申しますと、
です。
また税務調査の際、取引先の情報は、調査官が調査法人の取引を把握する上でとても重要な情報です。したがいまして、それを予め提出させることでお互いの手間を省く効果もあるでしょう。
では、具体的に税務署はどのように勘定科目内訳明細書を使用するかを、言える範囲でいくつか例を挙げてみましょう。
国税調査官は勘定科目内訳明細書をこう見ている
調査官は提出された勘定科目内訳明細書を次のような視点で見ています。
支払いに関する情報はとても重要ですので、まずは買掛金(未払金・未払費用)の内訳書を例にしてみましょう。
買掛金(未払金・未払費用)の内訳書
まず会社が不正計算をする最も多い方法の一つが架空外注費や架空経費です。要するに請求書や領収書を偽造して、金銭を支出したと仮装して自分の懐に入れるというパターンです。
架空の費用を計上していると想定して調査先を選ぶときに、その法人の支払先がどのような法人かをまず調べます。
国税庁は日本中の法人の申告データを持っているので、その内容をもちろん確認できます。
例えばA社の内訳書にB社への未払金残高が1,000,000円と記載されていたとしましょう。
そのB社の申告データがなかったらどうでしょう。税務署は全国の申告内容を持っています。検索をかけてこの会社がヒットしなければ、B社は申告書を提出していないことになります。
この場合、B社が申告を免れているか、A社が架空の支払いを計上しているか、または単にB社に関する記載誤りなのか。このような可能性が考えられます。
代表者勘定
勘定科目内訳明細書のうち貸付金や仮払金、借入金といった内訳書には「法人・代表者との関係」という欄があります。不正計算を首謀するのは圧倒的に代表者やその親族であることが多いため、このような勘定科目に注目します。
例えば代表者借入金が多額で毎年変動しているとしましょう。そうすると調査官はこの会社は現金勘定が合っていないだろうと判断します。それも現金の増加の相手勘定が不明である場合に特に注意を払います。借入金も収入も同じ貸方科目なので入れ替えても帳簿上の貸借は合います。
通常会社は支払いは漏らさず計上します。他方売上の一部を帳簿に載せていなかったとしたらどうなるでしょう。支払いはあるけど収入がない場合、帳簿上現金が不足します。
税理士事務所の事務員が会社に聞きます。「現金がないのに支払いがあります。どうやって支払えたのですか。」「さあ、どうでしょう。私が立て替えているかもしれません。」「では社長さんからの借入金としておきます。」このような理由で代表者借入金が増えているんだなとこのように調査官は筋書きを作ります。では、調査で確認しよう。とこうなるのです。
税務署はこのように勘定科目内訳明細書を精査して調査先を選んでいるのです。
とこう書くと、ものすごく大事な書類じゃないかと思うかもしれません。しかし、ある種の法人からすれば逆を返せば取るに足りない書類とも言えます。それはなぜか、また別の視点から勘定科目内訳明細書を見ていきたいと思います。
おおまかにですが、調査対象となりにくい法人を以下に挙げてみます。
調査対象とならない法人とは
- 売上が年間3,000万円に満たない小規模
- 赤字
- 設立から3年に満たない
この条件を同時に2つ満たせばかなりの確率で調査を受けることはないでしょう。(元国税調査官の経験です。)
この条件に当てはまる法人であればどんな内容で出そうと税務署にとっては感心の薄い存在ということになります。要するに内容について深く検討されることがない。ひょっとしたら税務職員の誰の目にも触れないかもしれません。
そうだとすれば勘定科目内訳明細書の書き方で悩む必要があるでしょうか。
もし勘定科目内訳明細書の内容に誤りがあったとしたら
ここで私が言いたいのは上の条件に当てはまるような法人の場合は税務署に提出する書類だからといってなんでもかんでも難しく捉えるのではなく、勘定科目内訳明細書を重く受け止めずもっと軽い気持ちで作れますよということです。
勘定科目内訳書に誤りがあったところで税額が変わるわけじゃありません。肩肘張らずにやったらいいのでは、ということです。
だからと言って何一つ合っていなくてもいいと言っているわけではもちろんありません。正確に作成するに越したことはありません。しかし、この書類を作成するのに頭を悩ませるのであれば、そこまで深く考えて作るほどの書類ではないですよ、ということです。
ただ最近では融資の際、金融機関が勘定科目内訳書の提出を求めるケースも増えてきているので融資を必要としている法人の場合は金融機関の融資担当者がその書類の内容を検討するのですから正確でなければ融資を受けられないなんてこともあるでしょう。
したがってその法人の規模や状況によってこの書類の重要度は変わってくると言えましょう。
勘定科目内訳明細書を無料で作成する方法
勘定科目内訳明細書の書き方はわかりました。それでは実際に作成する段になって、国税庁が提供する様式を印刷して手書きするのか。それともエクセルで提供しているものを探すのか…
税理士に頼まずに自社で作成するような会社さんは効率的に作成することを第一に考えることが賢明だと言えるでしょう。毎年繰り返す申告です。勘定科目内訳明細書の作成は一番時間がかかるものかもしれません。毎年自社で効率的に作成する方法を考えて実施していくことで申告事務が軽減されていくことと思います。
ということを考えると手書きはありえません。見栄えも悪いですし。
エクセルももはや時代遅れで効率的ではありません。そもそもエクセルがPCに入っていない場合もあります。
ではどうしたらよいのか。
無料で勘定科目内訳明細書を効率的に作成できる税務ソフトがあります。
クラウドソフトなので、ソフトをインストールする必要がなく、インターネットにつながってさえいれば使用できます。
専門家向けでなく、自社で申告書を作成する方向けに作られているので簡単です。
しかも無料で勘定科目内訳明細書を作成できます。
詳しくは次の記事でそのクラウド税務ソフトを使って勘定科目内訳明細書を作成する方法を紹介していますので、よろしければ参考にしていただければと思います。
この記事に載せている16種類の記載例はすべてこのソフトで難なく作成しています。
まとめ
税務署への提出書類ということで、相手がどういう目的で収集しているかがわからないとビクビクしてしまうものだと思います。
今回この記事をお読みになったみなさんは勘定科目内訳明細書がどういった書類かがもうわかっているので、かなり冷静に対処できるのではないかと思います。
自分ができる最善のものを作成すればよいのです。