「役員給与等の内訳書」は勘定科目内訳書の中で法人税の知識を必要とする数少ない内訳書の一つです。
初めてこの内訳書を作るといった方や法人税に精通していない方は、内訳書の「役員給与等の内訳」の部分をどのように書けばよいか迷うのではないかと思います。
でもご安心ください。この記事とこの記事で紹介する記事を丹念に確認すれば、小規模の同族会社で押さえるべき役員報酬と役員賞与については完璧と言えるレベルまで到達します。少し面倒なところもありますが、頑張ってついてきてください。
自力で法人税の申告書を作成したいと考えている方で、勉強というレベルでしっかり確認しなければならない論点はこの役員報酬・役員賞与の部分くらいです。
ただ役員報酬周辺はそれだけ重要になりますのでこれを押さえればもうヘビーな論点はないという気持ちで気合いを入れて取り組んでください。といっても本気を出せば大した量でも難しいものでもありません。ただ面倒なのです。
この記事は中小企業向けに書かれています。
役員給与等の内訳書の書き方
決算書からの転記
まずは、決算書の「販売費及び一般管理費の内訳書」を用意します。(製造原価報告書や完成工事原価報告書など、人件費に関連する勘定科目が載っている決算書があればそれも併せて用意します。)
決算書から転記できるものを「役員給与等の内訳書」に転記していきます。
「役員給与等の内訳書」の記載例を用いて具体的に説明します。
役員給与等の内訳書の記載例
記載例の❶「役員給与計」の「計」の値は、決算書「販売費及び一般管理費の内訳書」(下のイメージ参照)の役員報酬と役員賞与の合計額と一致し、さらに記載例の❷「役員給与」の「総額」欄とも一致します。
例ではそれぞれ9,400,000で一致しています。
記載例の❸の従業員の「給料手当」と「賃金手当」は決算書の「販売費及び一般管理費の内訳書」や「製造原価報告書」などから転記します。
記載例では「給料手当」欄の2,400,000円が「販売費及び一般管理費の内訳書」の「給料手当」の金額と一致しています。
内訳書下段の「総額のうち代表者の家族分」欄は、文字どおり総額のうち代表者とその家族に支払っている金額がある場合は、その金額を「役員給与」「給与手当」「賃金手当」に区分して記入します。
役員給与等の内訳の書き方
「役員給与等内訳書」の前段「役員報酬手当等の内訳」の部分に「使用人職務分」「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動給与」「その他」という区分があります。この内訳書で書き方がわからないのはこの部分だと思います。
一つ一つ確認していきましょう。
定期同額給与と事前確定届出給与とは(最重要の2つの給与)
- 定期同額給与
- 事前確定届出給与
この二つは余計な税金を払わないということを考えるときに絶対に押さえておかなければいけない用語です。この二つについては次の記事で詳しく説明しているので、そちらを確認し、マスターしてください。
この部分は役員給与周辺、いや法人税法の実務全般で最重要事項ですので必ず抑えてください。
利益連動給与とは
利益連動給与は、同族会社に該当しない法人が業務執行役員に対して支給する利益に関する指標を基礎として算定される給与をいいます。太字にしましたが、同族会社に該当しない法人のみに関する規定です。本ブログは自分で法人税の申告書を作成する方向けに書いていますので、通常は同族会社に該当するはずですので、小規模の同族会社にとっては関係しない規定としてここでは説明を省略します。
使用人兼務役員分の給与
内訳書の「使用人職務分」欄には、法人税法で「使用人兼務役員」と呼ばれる者に支給する給与のうち、その使用人の職務部分に対応する金額が入ります。したがって使用人職務分でない役員に対応する部分の給与はすべて「使用人職務分以外」欄に入ります。
使用人兼務役員とはそもそも何かが分からないという方は、次の記事で詳しく説明していますのでそちらをご確認ください。
その他の給与
内訳書の「使用人職務分以外」の「その他」欄にはこれまで言及された給与以外の給与が入ります。つまり、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与、使用人兼務役員に対する使用人部分の給与以外の給与です。
例えば、役員報酬のうち定期同額給与に該当しない給与や事前確定届出給与に該当しない届け出をせずに支給した賞与などがこの欄に入ることになります。
この欄に入る金額は原則損金に算入されませんので法人税上の利益(所得)となります。
別表4の「役員給与の損金不算入額」の欄に「その他」欄の金額を転記し、所得金額(法人税法上の利益)に加算します。(下の図参照)
つまり、「その他」欄の金額が増えればその金額×税率分税金が増えることになります。
損金や損金不算入がわからない場合は、事の重大さがわからないということにもなりかねませんので次の記事を参照して必ず理解してもらいたいと思います。
まとめ
「役員給与等の内訳書」の書き方については、定期同額給与、事前確定届出給与、使用人兼務役員を理解していれば難しいことなく記載を進めていけるものです。ただ知らないとかなりヘビーな書類になってしまいます。このようにヘビーな内容を要求される書類はこの書類しかないと言ってよいと思いますので今回の記事とこの記事で紹介した記事を確認してそれぞれの用語の理解に努めてください。
本当に重要な箇所なので、ここを疎かにして恐ろしい目に合わないようここだけは確実に押さえましょう。
なお、16種類すべての勘定科目内訳明細書を通してその書き方の基本的な部分を説明した記事がありますのでそちらも参照するとより理解が深まると思います。
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