平成30年3月30日に公表された「収益認識に関する会計基準」を受けて法人税法も平成30年の税制改正で収益の認識に関する事項が改正され、この会計基準との関係も含めて整理されました。
それを受けて本記事も令和3年7月にリライトしました。
中小企業が売上を計上するタイミングの基準が「収益認識に関する会計基準」が適用されるようになって結局どうなったかというものが整理された記事がなかったため、本記事で中小企業の売上を計上するタイミング(基準)について一から整理し直しました。
それでは元国税調査官である税理士が中小企業の売上を計上する時期についてわかりやすく解説していきます。
収益認識に関する会計基準と中小企業の収益認識基準との関係
まず「収益認識に関する会計基準」自体が中小企業に直接関係するのかが気になるところだと思いますので、その部分から説明します。
中小企業と収益認識に関する会計基準の関係
平成30年3月30日に公表された「収益認識に関する会計基準」は令和3年4月1日以後開始する会計年度から監査対象法人については強制適用となります。
強制適用?え?と思われるかもしれませんが、強制適用になるのは監査対象法人です。
監査対象法人は、大雑把に言って資本金が5億円以上、または負債金額が200億円以上の大企業です。したがって中小企業は適用してもしなくてもいいということになります。
監査対象法人以外の中小企業については、引き続き企業会計原則に則った会計処理ができます。
監査対象法人は投資家に対して比較可能な財務諸表を提示する必要があるために皆が適用する「収益認識に関する会計基準」を適用する必要があるわけです。そして「収益認識に関する会計基準」を適用するには複雑な事務作業が必要になるわけですが、大多数の中小企業は投資家を相手にしているわけではありませんので、わざわざ大きな事務負担をかけて「収益認識に関する会計基準」を適用する会社はないよという結論に至ります。
「収益認識に関する会計基準」ってなんだろう初めて聞いたという方は完全に無視してしまっても問題ありませんし、その方が時間を無駄にしなくて良いという意味で賢明です。
「収益認識に関する会計基準」の概要について知りたいという場合は、国税庁提供の次のものが簡潔でわかりやすいと思いますので参考にしてみてください。
「収益認識に関する会計基準」への対応について〜法人税関係〜平成30年5月
法人税法の売上計上基準への影響は
中小企業は引き続き企業会計原則に則った会計処理ができますと言いましたが、実は企業会計原則に則って処理しても法人税法では認められないということが起こり得ます。損金不算入がその典型例です。
(参考記事)

でもそこはご安心ください。法人税法も企業会計原則に則った処理を原則認めていますので、これまで実務で行っていた売上の計上基準がほぼそのまま使えます。
法人税法が改正されましたが、中小企業の売上計上のタイミングを規定した項目はほぼそのまま踏襲されると同時に「収益認識に関する会計基準」と歩調を合わせるような規定が新設されているような形になっています。
「収益認識に関する会計基準」と中小企業への影響を整理できましたので、中小企業の計上するタイミングはいつなのかという本題に入っていきたいと思います。
売上計上時期いかんによって起きる問題点
いきなりですが、売上の計上時期いかんによってどのような問題が起きるか考えたことがありますか?
売上の計上時期で一番問題になるのは税務調査のときです。
調査官が必ず確認する点が
です。
この点を確認するために、売上の計上基準を確認します。
例えば不動産の売買など、単価の大きい売上について、来期に計上していた売上を今期に計上すべきだという指摘を受けたとしましょう。その場合はその取引の利益分が申告もれとなります。
下の表のように売上3,000万円原価2,000万円の物件を次の決算に計上していたところ、今期に計上することになった場合、利益1,000万円分が申告もれということになります。
| 売上 | 3,000万円 |
| 原価 | 2,000万円 |
| 利益 | 1,000万円 |
| 税金(税率30%) | 300万円 |
| 加算税(10%) | 30万円 |
税率が30%であった場合、1,000×30%=300万円が追徴されるのに加えて、税額の10%の加算税30万円を余計に支払うことになります。
売上の単価が大きければ大きいほど誤った時の影響が大きいです。
売上計上時期の重要さがわかっていただけたと思います。
ちなみに売上の計上時期の誤りを業界では「期ズレ」と呼んでいます。
このように税務調査では売上の計上時期を必ず確認します。
売上計上基準を疎かにしていると、税務調査で思わぬ出費を強いられるかもしれませんので、自身の会社の取引はどの基準で売上を計上すべきなのかをしっかり検討し、それを適用していく必要があります。
それでは売上の計上基準について詳しく一つ一つ見ていくことにしましょう。
売上計上の2大原則
- 実現主義
- 継続適用
実現主義
売上は代金を受領した時に計上するものではありません。代金を受領した時に売上を計上する方法を現金主義と呼びますが、店頭販売を除いては通常それでは遅すぎます。
企業会計原則では、一般的に売上が実現した時に計上することになっています。これを実現主義と言います。
売上が実現した時とは次の2つが完了した時のことをいいます。
- 商品・製品を引き渡したまたは役務の提供を完了した
- 現金・現金等価物(売掛金・受取手形)を取得した
例えば、物の引き渡しが必要な物は「引き渡しがあった日」、物の引き渡しが必要でない役務の提供の場合は「役務の提供が完了した日」に現金・現金等貨物を取得したものについて実現したものとして売上に計上します。
継続適用
売上の計上基準は毎期継続的に適用されることが求められています。
したがって、一度決めた基準は合理的な理由なく変えてはいけません。
例えば、前期は出荷したときに売上を計上していたのに、今期は売上を遅く計上したいがために、検収したときに計上するといった会社の都合で売上の計上時期が操作されるのを防ぐために継続適用が求められているのです。
それでは、取引のケース別に売上を計上すべきタイミングがいつになるのかを確認していきましょう。
商品・製品等を販売するときの売上計上基準
商品や製品を販売する場合には、その商品・製品を引き渡した日に売上を計上するのが大原則です。
具体的に引き渡した日がいつなのかという判断は、商品や製品の種類や性質、その販売の契約内容等に応じて次の基準から選び、毎期継続して適用します。
- 出荷基準
- 納品基準(着荷基準)
- 検収基準
- 使用収益基準
- 船積基準
- 土地の売上
- 検針日基準
- 委託販売
一つ一つ確認していきましょう。
1 出荷基準
商品等を出荷したときに売上を計上する基準です。
商品等を出庫したとき、トラックや船に積み込んだとき、得意先の指定した場所に搬入したときなどに売上を計上します。
物販業でよく採用されている基準です。
2 納品基準(着荷基準)
商品等を納品した日に売上を計上する基準です。
例えば納品書を相手に渡し、複写の納品書(控)または受領書に得意先から受領印をもらうということをしているとすればその納品書の日付が売上の計上日になります。
商品、製品等を納品する場合に広く採用されている基準です。
3 検収基準
相手方が検収を完了した日に売上を計上する基準です。
納品は受けたが、依頼した仕様と違い修正が必要になるといった場合が多くあるような業種で採用される基準です。製造業等で多く採用されています。
4 使用収益基準
相手方がその商品等を使用でき、収益を獲得できるような状態になったときに売上を計上する基準です。
土地・建物を販売する不動産業などで採用されています。「家の鍵を渡した日」ということがよく言われます。
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