0からわかる売上計上基準・売上計上時期の基礎知識【元国税調査官解説】

売上計上時期

いきなりですが、売上の計上時期いかんによってどのような問題が起きるか考えたことがありますか?

 売上計上時期いかんによって起きる問題点

売上の計上時期で一番問題になるのは税務調査のときです。

調査官が必ず確認する点が

次の決算期に計上されている売上で、今期に計上すべきものはないか。

です。

この点を確認するために、売上の計上基準を確認します。

例えば不動産の売買など、単価の大きい売上について、来期に計上していた売上を今期に計上すべきだという指摘を受けたとしましょう。その場合はその取引の利益分が課税漏れとなります。

下の例でいけば税金300万円が追徴されるのに加えて加算税を30万円余計に支払うことになります。

売上  3,000万円
原価 2,000万円
利益 1,000万円
税金(税率30%) 300万円
加算税(10%) 30万円

売上の単価が大きければ大きいほど誤った時の影響が大きいので注意を払う必要があります。

ちなみに売上の計上時期の誤りを業界では「期ずれ」と呼んでいます。

このように税務調査では売上の計上時期を必ず確認します。

売上計上基準を疎かにしていると、税務調査で思わぬ出費を強いられるかもしれません。

それでは売上の計上基準について一つ一つ見ていくことにしましょう。

 売上計上の大原則

 実現主義

売上は代金を受領した時に計上するものではありません。代金を受領した時に売上を計上する方法を現金主義と呼びますが、店頭販売を除いてはそれでは遅すぎます。

会計では、売上が実現した時に計上すると一般的に言います。これを実現主義と言います。例えば、物の引き渡しが必要な物は「引き渡しがあった日」、物の引き渡しが必要でない役務の提供の場合は「役務の提供が完了した日」に実現したものとして売上に計上します。

 継続適用

売上の計上基準は毎期継続的に適用されることが求められています。

したがって、一度決めた基準は合理的な理由なく変えてはいけません。

例えば、前期は出荷したときに売上を計上していたのに、今期は売上を遅く計上したいがために、検収したときに計上するといった会社の都合で売上の計上時期が操作されるのを防ぐために継続適用が求められているのです。

それでは、売上の内容別に売上の計上基準を詳しく見ていきましょう。

 商品・製品等を販売するときの売上計上基準

商品や製品を販売する場合には、商品や製品の種類や性質、その販売の契約内容等に応じて次の4つの基準から選び、毎期継続して適用します。

1 出荷基準

商品等を出荷したときに売上を計上する基準です。

商品等を出庫したとき、トラックや船に積み込んだとき、得意先の指定した場所に搬入したときなどに売上を計上します。

物販業でよく採用されている基準です。

2 納品基準

商品等を納品した日に売上を計上する基準です。

例えば納品書を相手に渡し、複写の納品書(控)または受領書に得意先から受領印をもらうということをしているとすればその納品書の日付が売上の計上日になります。

商品、製品等を納品する場合に広く採用されている基準です。

3 検収基準

相手方が検収を完了した日に売上を計上する基準です。

納品は受けたが、依頼した仕様と違い修正が必要になるといった場合が多くあるような業種で採用される基準です。製造業等で多く採用されています。

4 使用収益基準

相手方がその商品等を使用でき、収益を獲得できるような状態になったときに売上を計上する基準です。

土地・建物を販売する不動産業などで採用されています。「家の鍵を渡した日」ということがよく言われます。

5 検針基準

検針等により販売数量を確認したときに売上を計上する基準です。

電気・ガス・水道等の販売で採用されます。

 請負の計上計上基準

請負には物の引き渡しが必要なもの(建築請負等)と、物の引き渡しが必要でない役務の提供だけのもの(運送、設計、エンジニアリング等)とがあります。それぞれ売上計上基準は次のようになっています。

 物の引き渡しが必要な場合の売上計上基準

6 完成引渡基準

目的物の全部を引き渡した日に売上を計上する基準です。

建設工事等の引き渡した日がいつかについては、作業を結了した日、相手方の受入場所へ搬入した日、相手方が検収を完了した日、相手方において使用収益ができることとなった日等建設工事等の種類及び性質、契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日になります。

この場合、その後の補修、追加工事等があったからといって引渡しが行われたかの判定には関係しません。

7 部分完成基準

法人が請け負った建設工事等が次のいずれかに該当する場合は、その建設工事等の全部が完成しないときにおいても、その事業年度において引き渡した建設工事等の量又は完成した部分に対応する工事収入を売上に計上しなければなりません。

  1. 一の契約により同種の建設工事等を多量に請け負ったような場合で、その引渡量に従い工事代金を収入する旨の特約又は慣習がある場合
  2. 1個の建設工事等であっても、その建設工事等の一部が完成し、その完成した部分を引き渡した都度その割合に応じて工事代金を収入する旨の特約又は慣習がある場合

ちょっとややこしいので、余談として流してもらって構わないのですが、この部分完成基準とは別に工事進行基準というものがあります。

長期大規模工事といって、工事期間が1年以上だったり、請負の対価の額が10億円以上といった工事を請け負った場合は一定の計算で算出する工事完成割合に応じた売上を計上しなければならないという規定です。ただ、10億円以上の工事を小規模の法人が請け負うことはかなりまれだと思いますので、ここではそんな規定もあるんだ程度に流していただいて構いません。

 物の引き渡しが必要でない場合の売上計上基準

8 役務完了基準

設計、作業の指揮監督、技術指導その他の技術役務の提供を行ったことにより受ける報酬の額は、原則としてその約した役務の全部の提供を完了した日に売上に計上する

9 部分完了基準

その技術役務の提供について次に掲げるような事実がある場合には、その支払を受けるべき報酬の額が確定する都度その確定した日に売上に計上する。

(1) 報酬の額が現地に派遣する技術者等の数及び滞在期間の日数等により算定され、かつ、一定の期間ごとにその金額を確定させて支払を受けることとなっている場合

(2) 例えば基本設計に係る報酬の額と部分設計に係る報酬の額が区分されている場合のように、報酬の額が作業の段階ごとに区分され、かつ、それぞれの段階の作業が完了する都度その金額を確定させて支払を受けることとなっている場合

 まとめ

以上のように主な売上の計上基準を9つ列挙しました。この9つの中から、売り上げるものの種類や性質、契約の内容、取引の携帯などに応じて、最も合理的と認められる売上の計上基準を選択しましょう。誰かになぜこの売上計上基準を選択しているのかを説明できるというのが合理的であるかどうかの一つの判断基準になると思います。

税務調査のときには必ず聞かれるので、十分に検討して決定しましょう。

そして毎期継続してて適用し続けることに注意が必要です。

執筆者 ジャパンネクス株式会社代表 元国税調査官 税理士 海野 耕作

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