2024年1月からスタートの電子帳簿保存法では、オンラインで領収書等の取引データをやりとりした場合には、それを出力して紙で保存するのではなく、取引データをデータのまま保存することが義務付けられました。
取引データをデータのまま保存するにあたって、電子帳簿保存法では、次の3つの要件を満たすよう求めています。
- コンピュータ、ディスプレイとプリンタの備え付け
- 検索機能の確保
- 不正な改ざん防止策を講じる
ここでは、2つ目の要件である「検索機能の確保」について具体例を使ってわかりやすく解説していきます。
電子帳簿保存法は、電子保存した電子取引データについて、整然とした形式・明瞭な状態で、速やかに出力することを求めています。
実務では、1つの会計期間を通じて、探したい電子取引データをすぐに検索できる状態にしておくことが求められます。
しかしながら、この「検索機能の確保」要件は、すべての事業者に求められているわけではありません。
まずは、この要件が不要なケースから確認していきましょう。
1 「検索機能の確保」要件が不要なケース
次のケースに該当する場合は「検索機能の確保」要件を満たす必要がありません。
- 基準期間の売上高が5,000万円以下の場合
- 電子取引データを出力した書面を取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものを提示・提出できるようにしている場合
- 検索機能の確保の要件を満たすような方法を準備できない場合
※これらの場合で、さらに税務職員の求めに応じて電子取引データを提示または提出するという条件があります。(後述)
これら3つのケースのいずれかに該当する場合は、検索機能の確保という要件が免除されます。
一つ一つ確認していきましょう。
1-1 基準期間の売上高が5,000万円以下の場合
個人事業主 | 電子取引が行われた日の属する年の前々年の1月1日から12月31日までの期間の売上高 |
---|---|
法 人 | 電子取引が行われた日の属する事業年度の前々事業年度の売上高 |
例を使って判定してみましょう。
令和3年度に検索要件が必要かどうかを判定してみます。
令和3年度 (2年前) |
令和4年度 (1年前) |
2024.1.1 〜 2024.12.31(令和6年度) |
---|---|---|
売上49,000,000 <基準期間> |
売上51,000,000 | <令和6年度の判定> 令和元年度売上5000万円以下 検索要件不要 |
この例では、2年前(法人の場合は、2事業年度前)の売上高が4,900万円なので、令和6年度は検索要件は不要となります。
このように検索要件の有無を判定します。
【基準期間判定の注意点】
⑴ 設立初年度等など、基準期間に事業をしていない(基準期間がない)場合 検索要件不要
⑵ 基準期間が12ヶ月ない場合
- 個人事業主 そのままの売上高で判定
- 法人 1年に換算して判定※
※1年換算の具体例
①基準期間が2020.2.15〜2020.12.31
②売上高12,000,000
基準期間の月数 10ヶ月と15日→11月(端数切り上げ)
12,000,000 × 11/12 = 11,000,000
⑶売上高とは、具体的に何を指す?
売上高とは、会計上の「売上高」を意味しています。
つまり、損益計算書で「売上高」と経理する本業によって得た収益を意味し、雑収入等の営業外収入や特別利益を指しません。
個人事業者の売上高 | 法人の売上高 |
「商品製品等の売上高、役務提供に係る売上高、農産物の売上高(年末において有する農産物の収穫した時の価額を含みます。)、賃貸料又は山林の伐採又は 譲渡による売上高」をいい、家事消費高及びその他の収入は含まれません。 | 「一般的に売上高、売上収入、営業収入等として計上される営業活動から生ず る収益」をいい、いわゆる営業外収益や特別利益は含まれません。 |
(電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問45(国税庁)から引用)
売上高の返品、値引き、割戻しは、この売上高からは控除して判定します。
⑷基準期間の売上高は消費税込みか抜きか?
① 基準期間が消費税の納税義務者の場合
・税抜経理方式 税抜の売上高
・税込経理方式 税込の売上高
② 基準期間が消費税の納税義務者でない場合 税込の売上高
したがって、売上が5,000万円を超えないような小規模事業者は、この検索要件を満たす必要がないのです。(正確な検索要件の有無の判定は、基準期間の売上高で判断します。)
1-2 電子取引データを出力した書面を取引年月日等及び取引先ごとに整理されたものを提示・提出できるようにしている場合
電子取引データを印刷した書面でそれを見つけやすいように整理していればということです。
取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理とは、具体的には、次のいずれかの方法で整理することが求められています。
❶ 決算期(または年分)ごとに、取引年月日その他の日付の順にまとめた上で、取引先ごとに整理する方法
❷ 決算期(または年分)ごとに、取引先ごとにまとめた上で、取引年月日その他の日付の順に整理する方法
❸ 書類の種類ごとに❶または❷と同様の方法で整理する方法
電子取引データを印刷して、これらのいずれかの方法で整理した上で、税務職員からのダウンロードの求めに応じることができるようにしていれば、検索要件不要。
1-3 検索機能の確保の要件を満たすような方法を準備できない場合(猶予措置)
これは、電子取引データに関する電子帳簿保存法の猶予措置というもので、猶予措置とは、次の2つの条件を満たすときには、前述の電子取引データを電子保存するための3要件すべてを満たしていなくても電子保存を認めるというものです。
- 所轄の税務署長が電子取引データの保存を要件どおりにできなかったことについて、相当の理由があると認める場合
- 電子取引データと電子取引データを出力した書面を税務職員からの要求に応じて提示もしくは提出できるようにしている場合
この2つの要件を満たしていると、検索機能の確保だけでなく、他の要件も全て免除され、その電子取引データを電子保存していれば問題なしということになります。
「所轄の税務署長が電子取引データの保存を要件どおりにできなかったことについて、相当の理由があると認める」ケースは、「例えば、システム等や社内でのワークフローの整備が間に合わない場合等」が該当すると国税庁が公表しています。
したがって、検索機能の確保ができるようなシステム等の整備が間に合わないという理由でOKな訳です。
この猶予措置について、次の記事で詳しく解説してます。
ここまで検索機能の確保が不要なケースを解説してきましたが、検索機能の確保が必要な場合、どのようなことをする必要があるかを解説します。
2「検索機能の確保」要件が必要なケース
電子帳簿保存法で求められている「検索機能の確保」とは、具体的にはどのようなことをする必要があるのか。
それは次の3つの検索機能を確保することが求められています。
- 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索できる
- 日付又は金額については、その範囲を指定して検索できる(緩和措置あり)
- 2以上の任意の項目を組み合わせて検索できる(緩和措置あり)
この3つの検索機能があるシステム上に保存できていればいいのですが、そのようなサービスは現状ではあまり多くないと思われます。
例えばマイクロソフトのOne Drive上では、これらの要件の1つも満たすことはできません。Amazonの注文履歴も同様です。
どのようにこの検索機能を確保するのが最も効率的かというのは、その企業が所持している電子取引データによって異なるので一概に言うことはできません。
そしてこの3つの検索機能を確保するやり方は、一つではないので、様々なツールを使うことで、この機能を満たすやり方は複数考えられます。
自社に合った効率的な方法を見つけることが肝要でしょう。
例えば、クラウド上で請求書をやりとりするソフトを使用している場合、これらの電子帳簿保存法に対応と謳っているようであれば、検索機能が備わっているでしょうから、それを使えば、このソフト内でやりとりされる電子取引データに関しては、検索要件はクリアされます。
メールで請求書等のデータをやり取りする場合は、なんらかの電子帳簿保存法に対応している電子取引データの一元管理ソフトを使用するのが効率的と思われます。
例えば当社が提供している全力電子帳簿では、クラウド上にアップロードした請求書等を次のように検索できます。
では、ソフトを使わないと検索機能を確保できないかというとそういうわけではありません。表計算ソフト等を使用した方法を国税庁が公表していますので、それをここでは紹介します。
国税庁が公表している電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】の問33で解説している方法を紹介します。
最低限この方法であれば、誰でもこの「検索機能の確保」機能を満たせるという方法です。
この「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」では、次の2つの方法が紹介されています。
- データのファイル名に番号を付って、表計算ソフトに番号ごとに取引年月日、取引金額、取引先を入力して管理する。
- データのファイル名に「20221130_㈱国税商事_20,000」」のように規則性を持たせて取引年月日、取引金額、取引先を入力する。+税務調査官のダウンロードの求めに応じる。
順に解説していきます。
表計算ソフトで検索要件を満たす方法
Excel、GoogleスプレッドシートやNumbers等表計算ソフトを利用している場合は、一覧性や検索のしやすさからこちらをおすすめします。
この方法は、国税庁が公表している電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】の問33で解説している方法です。
表計算ソフトで次のような索引簿を作成して、表計算ソフトのフィルター機能で検索する方法です。
このサンプルは国税庁の「参考資料(各種規程等のサンプル)」ページの「索引簿の作成例」からダウンロードできます。
索引簿でどのように検索要件を確保するかを解説します。
まずは、索引簿を作成する方法から見ていきましょう。
索引簿の作成方法
【手順1】
電子取引データを保存するフォルダを作成します。
【手順2】
電子保存する電子取引データのファイル名を1から順に連番を振っていきます。
ファイル名を変更したら、【手順1】で作成したフォルダに保存します。
※ファイル名は単純に「1」とすると検索の際に見つけづらいので、「001」としています。
ファイル名を複雑にすればするほど見つけやすくなりますが、それに反比例して入力が面倒になりますので、見つけやすいくらいの独自性がありつつ簡単めなファイル名にしましょう。
【手順3】
ファイル名(番号)と一致する索引簿の「連番」の行に対象の電子取引データから必要なデータを転記します。
今回の例では、ファイル名を「001」にしていますので、索引簿の「連番」の①の行に対象の請求書データに記載されている「日付」「金額」「取引先」を入力します。
次の電子取引データは、ファイル名を「002」にして【手順1】で作成したフォルダに保存し、索引簿の「連番」②の行に必要な情報を入力する。
これをこの後の電子取引データに対しても繰り返していきます。
次にこのようにして作成した索引簿でどのように必要な電子取引データを検索するかを解説します。
索引簿検索方法
エクセルを例に、この要件をどう満たしていくかを解説します。
まず次のように、タイトルを選択し、フィルタをクリックして、フィルタ機能を追加します。
これにより色々な種類の検索が可能になります。
⑴ 一つ目の検索要件「取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索できる」については、次のように満たすことができます。
① 日付の検索
【手順1】エクセルファイルの「日付」タイトルのセルにある「▼」をクリックすると「日付」というフォームが出てくる。
【手順2】フォームの検索窓に検索したい日付を入力する。
この例では「20220228」(2022年2月28日)を検索し、6行目の連番「③」の日付がヒットしています。
連番③がヒットしていますので、【手順1】で作成したフォルダ内で「003」というファイル名のファイルが該当のファイルであることがわかります。
② 金額の検索
【手順1】エクセルファイルの「金額」タイトルのセルにある「▼」をクリックすると「金額」というフォームが出てくる。
【手順2】フォームの検索窓に検索したい金額を入力する。
今回の例では、「55000」を検索し、7行目がヒットし、004のファイルを見ればいいことがわかります。
③ 取引先の検索
【手順1】エクセルファイルの「取引先」タイトルのセルにある「▼」をクリックすると「取引先」というフォームが出てくる。
【手順2】フォームの検索窓に検索したい取引先を入力する。
今回の例では、「いろはに電気」を検索し、8行目がヒットし、005のファイルを見ればいいことがわかります。
これで1つ目の要件はクリアです。
⑵ 続いて2つ目の要件「日付又は金額については、その範囲を指定して検索できる」をどのように満たすか見ていきましょう。
① 日付の範囲指定の方法
日付の範囲指定から説明します。
【手順1】エクセルファイルの「日付」タイトルのセルにある「▼」をクリックすると「日付」というフォームが出てくる。
【手順2】「フィルター」の選択肢から、「指定の値以上」を選択し、範囲の開始の日付を入力する。
今回の例では、2022年2月1日からの範囲指定で、「20220201」と入力しています。
【手順3】指定の値以下を入力する。
手順2の入力が終わるともう一つ選択肢が表示されるので、「および」を選択し、さらに選択肢から「指定の値以下」を選択し、範囲の終わりの日付を入力します。
今回の例では、2022年2月28日までを検索したいので、「20220228」を入力しています。
このように20220201〜20220228(2022年2月1〜2022年2月28日)の範囲のデータのみが表示されます。
② 金額の範囲指定の方法
①と同様のやり方で金額の範囲指定を行なっていきます。
400,000〜600,000で範囲指定をする例で説明します。
エクセルファイルの「金額」タイトルのセルにある「▼」をクリックするとフォームが出てきます。
「フィルター」の選択肢から、「指定の値以上」を選択し、「150000」と入力し、「および」と「指定の値以下」を選択し、「300000」を入力し、「enter」を押すと、その範囲の金額の行のみが表示されます。
⑶ 次は3つ目の要件「2以上の任意の項目を組み合わせて検索できる」を満たす方法です。
例として、日付「2022年2月10日」と取引先「アマゾンジャパン」を同時に満たすの領収書を検索してみます。
【手順1】
取引先のフィルターの検索窓に「アマゾンジャパン」と入力し、「enter」を押します。
【手順2】
日付のフィルターの検索窓に「20220210」と入力し、「enter」を押します。
すると↑の画像のようにこの2つの検索条件に合致する行のみが表示され、ファイル名が「002」のファイルであることがわかります。
フィルターの検索機能で、3つの検索要件をすべて満たすことが確認できました。
ここまでが、必要なファイル名の連番をどのように見つけるかという方法の説明でした。
続いて、ファイル名の連番を見つけた後、どのように保存しているフォルダから該当のファイルを見つけ出すかについて説明します。
フォルダ内の検索方法
Macを使っている場合のフォルダ内を検索する方法を紹介します。
Macの場合
【手順1】電子保存しているフォルダを開く
【手順2】Finderから「環境設定」を開く
【手順3】「詳細」タブ>「現在のフォルダ内を検索」にする
【手順4】フォルダの検索窓に検索したい番号を入力し、「ファイル名」>「名前が一致」を選択する
ファイル名が「001」のファイルがフォルダ内で検索されます。
次はWindowsで作成したフォルダ内のファイルを検索する方法を見ていきましょう。
Windowsの場合
【手順1】電子保存しているフォルダを開く
【手順2】開いたフォルダの検索窓で検索する
Windowsは開いているフォルダの検索窓がそのフォルダ内を検索するようになっているので、その検索窓に探したいファイル名を入力すれば、フォルダ内を検索してくれます。
次はクラウドに作成したフォルダ内のファイルを検索する方法を見ていきましょう。
クラウドサービスの場合
今回はOneDiveを例に解説します。
OneDriveにも検索窓があるのですが、フォルダを指定して検索することができず、全ファイルを検索する機能しかありません。
実際にOneDriveで「001」を検索してみましたがヒットさえしませんでした。
そこで、フォルダを指定しての検索機能がない場合は、保存しているフォルダを開いて、ブラウザの検索機能で見つける方法で対応します。
ブラウザの検索機能は、Macであれば「command+F」で、Windowsであれば「control+F」というショートカットキーで検索窓が開きます。
そこに探したいファイル名を入力して「enter」を押すと上の画像のように該当の文字がヒットするので、検索が可能です。
ここまでが「表計算ソフトで検索要件を満たす方法」についての解説です。
続いては、「ファイル名に規則性をもたせることで検索要件を満たす方法」について解説します。
この方法を採用するメリットは、索引簿を作る手間が軽減されるという点です。
ファイル名に規則性をもたせることで検索要件を満たす方法
「ファイル名に規則性をもたせることで検索要件を満たす方法」については、国税庁が電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】の問12で解説している方法です。
具体例を紹介した方がわかりやすいと思いますので、2022/1/31にアマゾンジャパン合同会社から110,000の備品を購入した場合で解説します。
Amazonサイトから領収書をダウンロードしてファイル名を次のようにします。
「 20220131_アマゾンジャパン合同会社_110000 」
つまり、「日付_取引先_金額」という規則性を持ったファイル名にします。
数字はすべて半角で入力します。
フォルダに保存すると次のように並びます。
これを前述のフォルダ内を検索する方法で、検索します。
ここでもう一度検索要件を確認しておきます。
- 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索できる
- 日付又は金額については、その範囲を指定して検索できる
- 2以上の任意の項目を組み合わせて検索できる
まずは、1つ目の要件である「取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索できる」について、Macを例に確認していきます。
⑴ 日付の検索
2022年2月28日の領収書を検索します。
⑵ 取引先の検索
「ABCカンパニー株式会社」の領収書を検索します。
⑶ 金額の検索
「330,000」の領収書を検索をします。
このように要件である「取引年月日、取引金額及び取引先」は検索可能であることがわかりました。
ただ、この方法では残りの次の2つの検索要件を満たすことはできません。
- 日付又は金額については、その範囲を指定して検索できる
- 2以上の任意の項目を組み合わせて検索できる
では、どうするかというと実は、この2つの要件には緩和措置があり、次のことをすれば、この2つの要件は不要になります。
税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合は、次の要件は不要。
- 日付又は金額については、その範囲を指定して検索できる
- 2以上の任意の項目を組み合わせて検索できる
要するに、税務調査のときに、「その領収書をダウンロードしてください。」と言われたら、それに応じ、すぐに出力して、税務職員に見せれる状態になっているということです。
つまり、すぐダウンロードする心の準備と、物理的に税務職員に見せれる状態(画面に映せる、または紙で印刷できる状態)になっているという意味です。
これをできるようにしていれば、2つの要件が免除になり、1つ目の「取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索できる」これができれば検索要件はパスです。
この方法は、コストをとにかくかけずに、なるべく楽に済ませたいという方に向いています。
ただし、税務調査のときに、ダウンロードの求めに応じることが約束されていると税務調査官がパソコン内を調査するハードルがかなり下がるでしょう。
これが嫌だという場合は、他の方法を選択する必要があります。
以上「検索機能の確保」要件を満たすための具体的な2つの方法を紹介しました。
まとめ|電子帳簿保存法の検索要件
これまでの内容を確認します。
電子取引データに関する電子帳簿保存法で求めている電子保存するための要件の1つである検索機能の確保については、次の3つの方法の検索機能を確保することが原則です。
- 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索できる
- 日付又は金額については、その範囲を指定して検索できる(緩和措置あり)
- 2以上の任意の項目を組み合わせて検索できる(緩和措置あり)
この3つの要件のうち2つは、次の条件を満たすことで不要になります。
税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合は、次の要件は不要。
- 日付又は金額については、その範囲を指定して検索できる
- 2以上の任意の項目を組み合わせて検索できる
検索機能を確保する場合は、上記方法で確保することになりますが、この検索機能の確保の要件が不要なケースがあります。
それが次の3つのケースです。
- 基準期間の売上高が5,000万円以下の場合
- 電子取引データを出力した書面を取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものを提示・提出できるようにしている場合
- 検索機能の確保の要件を満たすような方法を準備できない場合(猶予措置)
これらに該当している場合で、税務職員の求めに応じて電子取引データを提示または提出するようにしていれば検索機能の確保という要件すべてが免除されます。
この3つ目の猶予措置を使えばたいていの場合で、電子保存の要件すべてが免除されるので、実務では、検索機能のあるシステムを導入している以外はこの猶予措置を使って検索機能要件を確保しないというケースが多くなることが予想されます。
つまり、電子取引データを、税務職員に聞かれた場合にダウンロードできるように管理しやすい形で電子保存しておく、というのが猶予措置を適用した場合の運用の仕方になるかと思います。
電子取引データを電子帳簿保存法が定める方法で電子保存できるシステムを導入している場合は、しくしくとそのシステムで運用していくということになるでしょう。
これらの「検索機能の確保」要件をどのように満たすかは、自社が送受信する電子取引データによって最適な方法を見つけるということがこの電子帳簿保存法の義務化に対応する上で重要と言えるでしょう。
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