電子取引データの電子帳簿保存法ではタイムスタンプ実は不要

タイムスタンプ不要イメージ1タイムスタンプだけで電子帳簿保存法の電子データを保存するのは危険!

 

2024年1月からスタートする領収書や請求書をデータでやりとりした場合は、紙での保存ができなくなるよね。どう対応するつもり?

 

私は、電子データ保存を一元管理するソフトでやろうと思ってる。

タイムスタンプを無料で押せて、電子帳簿保存法に対応しているみたいだし。

電子帳簿保存法では、タイムスタンプは万能ではなく、タイムスタンプだけでは要件を満たさない場合があるけど、その場合のケアはしているのかな?

 

え、そうなの!?

ホームページには、電子帳簿保存法の要件を満たす措置としては、タイムスタンプしか載ってないわ。

 

現状ある電子取引データに関する電子帳簿保存法に対応しているというソフトの中で、よくある問題が2つあります。

  1. タイムスタンプのみで不正な改ざん防止策を満たそうとしているパターン
  2. タイムスタンプは有料の高いプランにのみ用意し、あとは自分で訂正削除防止に関する事務処理規程を用意して自社でうまくやってねというパターン

電子取引データの電子帳簿保存法に対応しているというソフトを調べてみると大抵の場合この2つのパターンに行き当たります。

タイムスタンプの期限を守らなかった場合は、自分で訂正削除防止に関する事務処理規程用意して対応してね、という姿勢です。

電子取引データに関する電子帳簿保存法の原則のルールに従って運用していこうとした場合、実は

タイムスタンプの付与はあってもなくてもどちらでもいいという程度のものなのです。
あなたは、本当にそのソフトの運用方法で大丈夫ですか?
続きを読んで判断してください。
この記事を書いた人

税理士(元国税調査官)

税務署に12年間勤務。主に法人税の調査に従事。

現在は、クラウド税務ソフト「全力法人税」、「全力消費税」や「全力電子帳簿」等を提供するジャパンネクス株式会社の代表を務める。

税務署側の視点を交えながら、主に法人税・消費税について一般の方に向けて実務に直結した税務情報を分かりやすく解説します。

ジャパンネクス株式会社

海野 耕作をフォローする

1 タイムスタンプだけで電子帳簿保存法の要件を満し続けることは困難

タイムスタンプ不要イメージ2 タイムスタンプだけで電子帳簿保存法の要件を満し続けることは困難

電子保存した電子取引データを一元管理するソフトの中では、電子帳簿保存法の要件を満たすための措置としてタイムスタンプを付与できると謳っているものがよくあります。

結論から言うと

タイムスタンプだけでは、電子帳簿保存法の要件は満たすことはほとんど無理!

なのです。

その理由を解説します。

1-1 タイムスタンプを7営業日以内にすべて付与できるか問題

タイムスタンプの付与だけで要件を満たすことができない理由は、タイムスタンプは原則そのデータを受け取ってから7営業日以内に付与しなければならないからです。

取引データを受け取ってから7営業日以内にタイムスタンプを付与できていれば問題ありませんが、その期限内にタイムスタンプを付与できなかったらアウトなのです。

つまり、

電子帳簿保存法に対応していると謳っているソフトがタイムスタンプを付与することしかできない場合、タイムスタンプを付与する期限を過ぎたら、別の方法で要件を満たさなければならない。

すなわち、そのソフトだけでは完結できないということになります。

1年間絶対に期限を過ぎずにタイムスタンプを押し続けることができるならいいのですが、絶対できると言い切れますか?

ソフトの利用を判断する上で、この点はとても重要なポイントです。

なぜならタイムスタンプの付与期限を過ぎてしまったら、結局ソフトでは対応できず、自ら別の措置を講じなければならず、かなりの手間と労力を投入することになるからです。

タイムスタンプの付与期限は2ヶ月伸ばせると聞いたけど

最大で2か月延ばすことが可能だけど、そのためにはスキャナ保存で求められている「各事務の処理に関する規程」に準ずるレベルの規程を作成する必要があるんだよ。

この規程の作成は税理士でも相当困難なレベルで、中小規模の事業者ではほとんど対応が不可能なレベルだよ。

 

1-2 付与期限を2ヶ月延ばす方法も激ムズ問題

タイムスタンプの付与期限は原則7営業日以内ですが、最大2か月延ばすことが可能です。

しかしながら、そのためには、取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている必要があります。

法令の根拠は次のとおりです。

二 次に掲げる方法のいずれかにより、当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すとともに、当該電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。
イ - 省略 –
ロ 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことをその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと(当該取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。)。

電子帳簿保存法施行規則第4条第1項第2号ロ

 

現在、作成が求められるこの規程がどのようなものかというサンプル等が国税庁から提供がない状況です。(執筆時点)

そこで国税庁が公表している一問一答(電子取引関係)の問56で、「スキャナ保存にある考え方と同様」である旨記されているため、スキャナ保存の「各事務の処理に関する規程」を参考にする方法が考えられます。

スキャナ保存の「各事務の処理に関する規程」は、作業責任者、処理基準及び判断基準等を含めた業務サイクルにおけるワークフローなどの企業の方針を定めたものとされており、次の規程がサンプルとして挙げられています。

おそらく戦意を喪失するはずです。

スキャナによる電子化保存規程
第1章 総則
(目的)
第1条 この規程は、○○における紙による国税関係書類について、××社製●●システム(以 下「本システム」という。)を活用して、スキャナによる電子化を安全かつ合理的に図るための 事項を定め、適正に利用・保存することを目的とする。

(定義)
第2条 この規程において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 電子化文書 紙文書を電子化した文書をいう。
二 管理責任者 本システムを円滑に運用するための責任者をいう。
三 真実性を確保するための機能 電子化文書の故意又は過失による虚偽入力、書換え、消去 及び混同を未然に防止し、かつ、改ざん等の事実の有無が検証できる機能をいう。
四 機密性を確保するための機能 電子化文書へのアクセスを制限すること、アクセス履歴を 記録すること等により、アクセスを許されない者からの電子化文書へのアクセスを防止し、 電子化文書の盗難、漏えい、盗み見等を未然に防止する形態で保存・管理される機能をいう。
五 見読性を確保するための機能 電子化文書の内容を必要に応じ電子計算機その他の機器を 用いて検索し、画面又は書面に直ちに出力できるよう措置される機能をいう。

(運用体制)
第3条 ○○における本システムの運用に当たっては、管理責任者及び作業担当者を置くものと し、事務分掌細則によりこれを定める。
2 管理責任者は、電子化文書を作成する作業担当者を管理し、電子化文書が法令等の定めに則 って効率よく作成されることに責任を持つ。
3 管理責任者は、電子化文書の作成を外部委託する場合、外部委託業者が電子化文書作成に必 要な法令等の知識と技能を持つことを確認し、これを条件に業務を委託することができる。

(利用者の責務)
第4条 本システムの利用者は以下の責務を負う。
一 自身のIDやパスワードを管理し、これを他人に利用させない。
二 本システムの情報の参照や入力(以下「アクセス」という。)に際して、IDやパスワード によって、本システムに利用者自身を認識させる。
三 与えられたアクセス権限を越えた操作を行わない。
四 参照した情報を目的外に利用しない。
五 顧客及び関係者のプライバシーを侵害しない。

第2章 対象書類及び入力の時期

(対象書類)
第5条 ○○におけるスキャナにより電子化する書類は、次の各号に定めるところによる。
一 請求書
二 納品書
三 見積書(控)
四 注文書
2 前項第3号及び第4号に定める書類は、これらを併せて、以下「一般書類」という。

(入力の時期)
第6条 第5条各号に定める書類については、書類を取得後、次の時期に入力する。
一 請求書 速やか(おおむね7営業日以内)に入力
二 納品書 毎月末までに受領したものを、翌々月7日までに入力
三 見積書(控) 1月から6月までに発行したものは8月末までに、7月から 12 月までに発 行したものは翌年2月末までに入力
四 注文書 1月から6月までに受領したものは8月末までに、7月から 12 月までに受領し たものは翌年2月末までに入力

第3章 機能要件

(管理機能等)
第7条 本システムによる電子化文書の作成及び管理機能は、次に定めるところによる。
一 データフォーマット 電子化文書のデータフォーマットは、BMP、TIFF、PDF又 はJPEGとする。
二 階調性の確保 画像の階調性を損なうような画像補正は行わない。
三 画像品質の確保 電子化文書の画像は、第 10 条で定めるところにより確認できること。
四 両面スキャン 電子化文書の作成に当たっては、原則として、両面をスキャンする。 ただし、裏面に記載のないものなどについては、この限りではない。
2 真実性を確保するための機能は、次に定めるところによる。
一 タイムスタンプ ●●株式会社のタイムスタンプサービスを利用し、電子化文書には第6 条各号に定める時期までにタイムスタンプを付与し、当該電子化文書の作成時期の証明及び 改ざん等の事実の有無を検証できるようにする。 なお、課税期間中の任意の期間を指定して当該期間内に付与したタイムスタンプについて、 一括して検証できるようにする。
二 解像度等の情報の保存 電子化文書作成時の解像度、階調及び元の紙文書の大きさに関す る情報を保存する。 ただし、一般書類については、紙文書の大きさに関する情報を保存する必要はない。
三 ヴァージョン管理 記録した電子化文書のヴァージョン管理を行うに当たり、当初に記録 した電子化文書を第1版とし、その後に訂正又は削除が行われても第1版の内容を保持する。
3 機密性を確保するための機能は、次に定めるところによる。
一 アクセス管理 情報の利用範囲、更新履歴、機密度等に応じた管理区分を設定するととも に、情報にアクセスしようとする者を識別し認証できること。
二 不正アクセスの排除 不正なアクセスを排除できること。
三 利用ログ管理 本システムの管理責任者は、ログの情報等を利用して不正なアクセスの防 止をすることとする。
4 見読性を確保するための機能は、次に定めるところによる。
一 検索機能 記録されている電子化文書に検索のために必要な情報(検索項目)を付加し、 かつ、その検索項目を活用して該当する電子化文書を抽出できること。
二 検索項目設定機能 検索項目に、ⅰ)取引日付、ⅱ)取引金額、ⅲ)取引先名称が設定で き、日付又は金額の項目は範囲指定を可能とし、任意の2項目以上の検索項目を組み合わせ て検索できること。
三 帳簿との関連性を確保する機能 電子化文書には、管理用通番として伝票番号を付し、帳 簿に記載される内容と関連付けを行う。
四 整然とした形式で速やかに紙出力する機能 記録されている電子化文書及びログ等の管理 情報をデータフォーマットの種類にかかわらずディスプレイやプリンタに整然とした形式で 国税関係書類と同程度の明瞭さを確保しつつ速やかに出力することができること。
五 4ポイント文字が認識できる機能 本システムは JIS X 6933 又は ISO12653-3 テストチャ ートの4ポイント文字が認識でき、電子化文書を拡大縮小表示できること。

第4章 機器の管理と運用

(機器の管理)
第8条 本システムの機器の管理及び運用に関する基準を遵守する。
2 電子化文書の情報が十分に保護されるように記録媒体の二重化、バックアップの採取等を行 う。また、品質劣化が予想される記録媒体については定期的に記録媒体の移し替え等を行う。
3 外部ネットワーク接続により、不正アクセスによる被害やウィルスによる被害が発生しない ように対策を施す。

(入力装置の設定)
第9条 入力装置の設定は、次に定めるところによる。 ただし、一般書類に係る階調はグレースケールとしてもこれを認める。
一 解像度 200dpi以上とする。
二 階調 電子化文書は赤、緑、青の各色 256 階調(24 ビット/ピクセル)とする。

(出力装置の設定)
第 10 条 出力装置の設定は、次の各号に定めるところによる。 ただし、一般書類については、第2号及び第3号の階調及び印刷装置をグレースケール以上 の能力を持つ表示装置及びプリントできる印刷装置としてもこれを認める。
一 表示装置のサイズ 14 インチ以上の表示装置とする。
二 表示装置の階調 赤、緑、青の各色 256 階調(24 ビット/ピクセル)以上の能力を持つ表示 装置とする。 三 印刷装置の解像度及び階調 印刷装置はカラープリントできるものとする。

第5章 スキャニングの手順等

(書類の受領)
第 11 条 取引先から請求書を受領した営業責任者は、納品書及び検収報告書との照合を行い内容 に誤りがないことを確認した後に、請求書を経理責任者に引き継ぐ。
2 取引先から納品書を受領した営業責任者は、注文書(控)及び納品された現物を確認した後 に、納品書を経理責任者に引き継ぐ。
3 見積書を作成した営業責任者は、その控えを経理責任者に引き継ぐ。
4 取引先から注文書を受領した営業責任者は、出荷指示書を作成し、商品を出荷した後に、注 文書及び出荷指示書を経理責任者へ引き継ぐ。

(仕訳伝票等の整理)
第 12 条 経理責任者は、回付された請求書に基づき決済手続、仕訳伝票の整理、買掛帳の整理等 を行った後に、作業担当者が請求書をスキャナ用ボックスに保管する。
2 作業担当者は、回付された納品書、見積書、注文書及び出荷指示書をそれぞれごとに分類し、 スキャナ用ボックスに保管する。

(スキャニングの準備)
第 13 条 作業担当者は、次の期日までにホチキス留めをはずし、折りたたみを広げスキャニング の準備を行う。
一 請求書 請求書受領後、5日以内
二 納品書 毎月末
三 見積書(控え) 1月から6月までに発行したものは7月末、7月から 12 月までに発行し たものは翌年1月末
四 注文書 1月から6月までに受領したものは7月末、7月から 12 月までに受領したものは 翌年1月末
2 作業担当者は、スキャニングする書類について、前項各号ごとに枚数及び対象年月を確認し、 これを入力区分票に記載する。

(スキャニング処理)
第 14 条 作業担当者は、本システムを活用し、スキャニング処理を実施する。 なお、帳票ごとに1ファイルにするとともに、裏面のスキャナ漏れがないよう留意する。
2 作業担当者は、スキャン枚数及びスキャン画像を目視にて確認する。
3 作業担当者は、正確にスキャニングされていることを確認した後に、画像(電子化文書)及 びCSV(検索項目)をサーバに転送し、管理責任者にこれを引き継ぐ。
4 管理責任者は電子化文書の確認を速やかに行う。
5 管理責任者は、第7条第2項第1号に定めるタイムスタンプを付与し、本システムに登録す る。

(電子化文書の保存)
第 15 条 本システムにより電子化されたデータは、国税に関する法律の規定により保存しなけれ ばならないとされている期間まで保存する。

第6章 原本の廃棄等

(原本の廃棄)
第 16 条 作業担当者は、スキャニング処理を了した原本について、管理責任者のチェックが完了 するまでの間、一時保管する。
2 この管理責任者のチェックが完了した原本については、作業担当者が文書管理規程に基づき、 これを廃棄し、その旨を管理責任者に連絡する。
3 管理責任者は、廃棄結果を記録する。(電子化文書の消去)
第 17 条 作業担当者は、保存期間が満了した電子化文書の一覧を作成し、管理責任者に連絡する。
2 管理責任者は、保存期間が満了した電子化文書の一覧を基に、該当するデータの消去を行い、 消去結果を記録する。

附則 (施行)

第 18 条 この規程は、令和○年○月○日から施行する。

このサンプルはスキャナ保存用のものであるため、会社名等を書き換えるだけでは自社用に転用することはできず、電子取引データの電子保存用に書き換えるには、全文を見直し、実際に自社の業務フローを洗い出し、電子取引データをどのように保存していくかを検討し、決定する必要があります。

この対応をどれだけの事業者ができるでしょうか。

個人的には誰もやりたくないという結論に辿りつくのではないかと思っています。

各社ソフトの多くもこの点は放ったらかしで、タイムスタンプを付与できるから要件を満たしているとしか言っていないのです。

結局この規程を用意できないとなると、やはり7営業日以内にタイムスタンプを付与しなければならないというところに落ち着きます。

結論として、7営業日以内にタイムスタンプを付与できない事態は必ず起きるということを想定すれば、

タイムスタンプは7営業日以内に付与しなければならないという期限が設けられている点で、実務では使い勝手が悪い

と言わざるを得ません。

結果的にタイムスタンプを付与するにしろ、付与しないにしろ他の方法で電子帳簿保存法の要件を満たす必要が出てくるのです。

ではタイムスタンプ以外でどのように電子帳簿保存法の要件を満たせば良いのか?

実は、電子帳簿保存法では、他に3つの方法が用意されています。

あらゆる状況に対応することを考えると、そのうちの一つである次の方法以外に対応のしようが実はない状況です。

訂正削除の防止に関する事務処理規程を備え付ける

この方法は、他の方法に比べ導入が圧倒的に簡単で、使い勝手も非常によく、誰でもできる方法になっています。

次の章で詳しく解説していきます。

 

2 タイムスタンプ以外の電子帳簿保存法の要件とは

タイムスタンプ不要イメージ3タイムスタンプ以外の電子帳簿保存法の要件とは

2024年1月に適用開始となる電子帳簿保存法は、領収書や請求書等がデータでやりとりされる場合、そのデータを一定の要件で電子保存することが求められています。

電子帳簿保存法が求めている電子保存の要件は以下の3つです。

  1. コンピュータ、ディスプレイとカラープリンタの備え付け
  2. 検索機能の確保
  3. 不正な改ざん防止策を講じる

1つ目のコンピュータ、ディスプレイ、カラープリンタについては、データを受領している時点でコンピュータとディスプレイはあることになりますし、カラープリンタについては、自社にない場合でも近隣の有料コピー機で速やかに印刷できるようであれば要件を満たしますので、容易にこの要件はクリアできると思います。

2つ目の検索機能の確保については、今回の記事がソフトを使うことを前提としていますので、ソフトを使用している以上、この検索機能を設けていないとは考えられないためこの部分は当然に満たしていることとします。

今話題にしているタイムスタンプ問題は、この3つ目に該当します。

不正な改ざん防止策とはどのような策を講じればよいかというと次の4つの方法のうちいずれかを採用する必要があります。

  1. タイムスタンプが付与された後の授受
  2. 7営業日以内に(又は最長2ヶ月+7営業日以内に)タイムスタンプを付す
    ※ 括弧書の取扱いは、取引情報の授受からタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。(超難関)
  3. データの訂正削除を行った場合にその記録が残る又は訂正削除ができないクラウドサービス等を利用して取引データをやりとりする
  4. 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け

このうちの2つ目の方法が、これまで解説してきたタイムスタンプ方式です。

タイムスタンプの付与期限を過ぎた場合は、これ以外の3つの方法で改ざん防止策を講じる必要があります。

この3つについて、それぞれ見ていくことにしましょう。

2-1 タイムスタンプが付与された後の授受

これは領収書や請求書のデータの受け渡しをする前にタイムスタンプが付与されていればOKというものです。

ある請求書データを受け取った時に、その請求書データにタイムスタンプがすでに付与されているという状態です。
その場合は、その時点で要件を満たします。

ただし、この方法は、データの交付側がタイムスタンプを付与している必要があるので、受領側が何かできるわけではなく、すべて交付側に委ねられてしまうので、汎用性がありません。

タイムスタンプの付与期限を過ぎてしまったときに、そのデータを見たら交付側がたまたまタイムスタンプを付与していたのでセーフという奇跡を信じるしかありません。

この方法は受領側が採用できるという性質のものではないため、タイムスタンプ付与期限を過ぎた場合の代替には使えません。

次の方法を見てみましょう。

2-2 データの訂正削除を行った場合に、その記録が残る又は訂正削除ができないクラウドサービス等のシステム内で取引データをやりとりする

どういうことかというと、例えば、Amazonや楽天といったASPを利用するケースがわかりやすいと思います。

Amazonでは、自分のアカウントの注文履歴から領収書をダウンロードすることができますが、これが該当します。

Amazonの注文履歴は、削除・訂正をユーザー側ですることができません。
したがって、Amazonに領収書が保存されている限り、それは改ざん防止策を講じるという要件を満たしていることになります。

ただし、AmazonからダウンロードしてPC上に保存したり、別のソフトに保存したりするとこの要件を満たさなくなります。
あくまで、Amazon上にデータがあり、必要なときにダウンロードする場合はOKということです。

最近では請求書をクラウドでやりとりするケースも多くなってきています。

請求書発行ソフトで請求書を作成し、データはクラウド上にあり、相手先には、メールでその保存先のURLを案内し、その相手側は、発行側が使っているソフトにある請求書データにアクセスしてダウンロードするようなケースを想定してみます。

この場合は、この請求書発行ソフト側で、訂正削除の履歴が残るまたは訂正削除ができない措置が施されていれば、このソフトに保存されている請求書データはこの要件を満たすことになります。

この方法で重要なポイントが、サービス内で領収書等のデータがやり取りされなければならない点です。

電子帳簿保存法対応と言っているソフトでもこの点を理解しておらず、削除訂正の履歴が残るまたは削除訂正ができないシステムだから大丈夫だと言う記述があったりしますので注意が必要です。

この要件は、あくまでそのようなシステム上で電子取引データがやり取りされていなければなりません。

つまり、Amazonからダウンロードした領収書データをあるソフトにアップロードして、そのソフトが削除訂正の履歴が残るまたは削除訂正ができないシステムであっても要件を満たしません。

削除訂正の履歴が残るまたは削除訂正ができないシステム内でやりとりされていないとアウトなのです。

一度そのソフトのソフトから出てしまったものはこの要件を満たしません。

Amazonから領収書をダウンロードした時点で他の方法で要件を満たす必要がありますし、請求書ソフトから受け取り側がダウンロードした時点で他の方法で要件を満たす必要があるということです。

この方法は、タイムスタンプの付与期限を経過した後でも、そのようなシステムを使ってやりとりしていれば代替的な方法として使えますが、メールで領収書等のデータを受領した場合などにはこの方法は使えませんので、汎用性がなく、やはり、別の方法も用意しておく必要があります。

最後になりましたが、4つ目の方法が最も使い勝手の良い方法で、汎用性があり、誰でも簡単に導入できる方法です。

2-3 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け

この方法は、訂正・削除防止の事務処理規程を作り、その規程どおりに運用する。たったこれだけです。

「訂正・削除防止の事務処理規程」と名称だけ聞くと面倒そうですよね。

でも安心してください。面倒なものなら誰もやらないですよね?

全事業者に強制的に適用される制度を、税務当局はやってもらわないと困ってしまうので、当局がフォーマットを公式に用意しています。
それをほぼコピペすれば終わりです。

ではサンプルを紹介します。
個人事業主用と法人用で2つ用意されています。

【サンプル1】個人事業主用 事務処理規程サンプル

電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程

  この規程は、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法の特例に関する法律第7条に定められた電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務を適正に履行するために必要な事項を定め、これに基づき保存することとする。

(訂正削除の原則禁止)
保存する取引関係情報の内容について、訂正及び削除をすることは原則禁止とする。

(訂正削除を行う場合)
業務処理上やむを得ない理由(正当な理由がある場合に限る。)によって保存する取引関係情報を訂正又は削除する場合は、「取引情報訂正・削除申請書」に以下の内容を記載の上、事後に訂正・削除履歴の確認作業が行えるよう整然とした形で、当該取引関係情報の保存期間に合わせて保存することをもって当該取引情報の訂正及び削除を行う。

 一 申請日
二 取引伝票番号
三 取引件名
四 取引先名
五 訂正・削除日付
六 訂正・削除内容
七 訂正・削除理由
八 処理担当者名

 この規程は、令和○年○月○日から施行する。

【サンプル2】法人用 事務処理規程サンプル

電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程

第1章 総則

(目的)
第1条 この規程は、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法の特例に関する法律第7条に定められた電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務を履行するため、○○において行った電子取引の取引情報に係る電磁的記録を適正に保存するために必要な事項を定め、これに基づき保存することを目的とする。

(適用範囲)
第2条 この規程は、○○の全ての役員及び従業員(契約社員、パートタイマー及び派遣社員を含む。以下同じ。)に対して適用する。

(管理責任者)
第3条 この規程の管理責任者は、●●とする。

第2章 電子取引データの取扱い

(電子取引の範囲)
第4条 当社における電子取引の範囲は以下に掲げる取引とする。
一 EDI取引
二 電子メールを利用した請求書等の授受
三 ■■(クラウドサービス)を利用した請求書等の授受
四 ・・・・・・

記載に当たってはその範囲を具体的に記載してください

(取引データの保存)
第5条 取引先から受領した取引関係情報及び取引相手に提供した取引関係情報のうち、第6条に定めるデータについては、保存サーバ内に△△年間保存する。

(対象となるデータ)
第6条 保存する取引関係情報は以下のとおりとする。
一 見積依頼情報
二 見積回答情報
三 確定注文情報
四 注文請け情報
五 納品情報
六 支払情報
七 ▲▲

(運用体制)
第7条 保存する取引関係情報の管理責任者及び処理責任者は以下のとおりとする。
一 管理責任者 ○○部△△課 課長 XXXX
二 処理責任者 ○○部△△課 係長 XXXX

(訂正削除の原則禁止)
第8条 保存する取引関係情報の内容について、訂正及び削除をすることは原則禁止とする。

(訂正削除を行う場合)
第9条 業務処理上やむを得ない理由によって保存する取引関係情報を訂正または削除する場合は、処理責任者は「取引情報訂正・削除申請書」に以下の内容を記載の上、管理責任者へ提出すること。
一 申請日
二 取引伝票番号
三 取引件名
四 取引先名
五 訂正・削除日付
六 訂正・削除内容
七 訂正・削除理由
八 処理担当者名
2 管理責任者は、「取引情報訂正・削除申請書」の提出を受けた場合は、正当な理由があると認める場合のみ承認する。
3 管理責任者は、前項において承認した場合は、処理責任者に対して取引関係情報の訂正及び削除を指示する。
4 処理責任者は、取引関係情報の訂正及び削除を行った場合は、当該取引関係情報に訂正・削除履歴がある旨の情報を付すとともに「取引情報訂正・削除完了報告書」を作成し、当該報告書を管理責任者に提出する。
5 「取引情報訂正・削除申請書」及び「取引情報訂正・削除完了報告書」は、事後に訂正・削除履歴の確認作業が行えるよう整然とした形で、訂正・削除の対象となった取引データの保存期間が満了するまで保存する。

附則

(施行)
10条 この規程は、令和○年○月○日から施行する。

 

国税庁の次のページからこれらのサンプルをダウンロードできます。
参考資料(各種規程等のサンプル)

ポイントは、削除・訂正する場合は、「取引情報訂正・削除申請書」を作成し、削除訂正内容を記録として残すことで、事後に確認できる体制を整えることによって信頼性を担保しようとしている点です。

この趣旨から外れないような事務処理規程を作成することが肝要です。

個人事業主は、個人事業主用として簡単なサンプルが用意されているので、これをコピペしてしまえば事務処理規程は完了です。
しかも国税庁のお墨付き付きです。

あとは、事務処理規程どおりに運用すればそれで事務処理規程を用意するという条件はクリアです。

法人のサンプルを見ると、課長や係長まで登場しているので、中堅・大企業まで想定して作成されたものと想像できます。

法人用のサンプルは経理処理を複数人でやっていることが前提となっているので、経理を一人で処理しているようなマイクロ法人や小規模法人も個人事業主用のサンプルを使用すればよいでしょう。

経理担当者が単独でいて、それを確認する責任者がいるような経理処理を複数人でやっているような法人は、法人用のサンプルを使用して、それ以外の小規模法人は、個人事業主用のサンプルを使用しましょう。(国税調査官の経験から、個人事業主用となっているものを小規模法人が使っているからといって、それをいけないと注意する調査官はよほど目に余ることがない限りいないでしょう。)

またサンプルどおりのものを作らなければいけないわけではないので、事務処理規程の趣旨から外れなければ、自社の状況によって自社用に修正して作成すればよいでしょう。

この「訂正削除の防止に関する事務処理規程」を備付けて、それ通りに運用していれば、改ざん防止策を講じる要件を満たすわけです。

2-4 タイムスタンプは実はなくてもいい

訂正削除の防止に関する事務処理規程は、ほぼコピペで作成でき、タイムスタンプのように期限もなく、訂正削除ができないシステム上でやりとりする必要もなく、全然制約が少ないことがお分かりいただけると思います。

この「訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付ける」方法が最強であることにお気づきになったと思います。

つまり、タイムスタンプすら不要なわけです。

この訂正削除の防止に関する事務処理規程さえ備え付けていれば改ざん防止策を講じるという要件を満たすわけですので、タイムスタンプの代替案という位置付けではなく、これを採用するのが一番効率的であることがお分かりいただけると思います。

 

3 電子帳簿保存法に対応するためにはどういうソフトを使うべきなのか

タイムスタンプ不要イメージ4電子帳簿保存法に対応するためにはどういうソフトを使うべきなのか

ここまでの解説で、タイムスタンプだけで電子帳簿保存法の要件を満たそうとする方法は、危険だということが理解いただけたと思います。

以下の2つの要件も汎用性がなく、あらゆる状況に対処できませんでした。

  • タイムスタンプが付与された後の授受
  • データの訂正削除を行った場合にその記録が残る又は訂正削除ができないクラウドサービス等を利用して取引データをやりとりする
結果的に次の方法に対応しているソフトが最強ということになります。
訂正削除の防止に関する事務処理規程を備え付ける

この方法であれば、タイムスタンプの付与すら不要でした。

この方法だけ対応していれば、改ざん防止策を講じる要件を満たすので、とてもシンプルです。

ここで冒頭で確認した、現状ある電子取引データに関する電子帳簿保存法に対応しているというソフトの中で、よくある問題は2つを再確認しておきます。

  1. タイムスタンプのみで不正な改ざん防止策を満たそうとしているパターン
  2. タイムスタンプは有料の高いプランにのみ用意し、あとは自分で訂正削除防止に関する事務処理規程を用意して自社でうまくやってねというパターン

電子取引データの電子帳簿保存法に対応しているというソフトを調べてみると大抵の場合この2つのパターンに行き当たります。

各社タイムスタンプに重きを置いて、タイムスタンプの期限を守らなかった場合は、自分で訂正削除防止に関する事務処理規程用意して対応してね、という姿勢です。

唯一この事務処理規定の備え付け要件を満たすソフトがあります。(執筆時点の当社調べ)

それが「全力電子帳簿」というクラウドソフトです。

各社が「自分たちで事務処理規程を用意して、それどおりに運用してね」と一番大事なところをケアしていない次のことを、クラウドサービスで、よりスマートに、より簡単に実現してくれます。

  • 訂正・削除を防止する事務処理規程を作成する(自動)
  • 事務処理規程どおりに訂正・削除申請を行い、管理者から承認を受け、訂正削除履歴を保存する
  • 領収書や請求書等の電子データをクラウド上に保存する
  • 電子帳簿保存法の要件に合致した検索ができる

全力電子帳簿は、法人税の申告書をクラウドで初めて法人税知識不要で自力で作成できるようにした税務ソフト「全力法人税」を運用している会社が作った改正電子帳簿保存法のこの義務化に対応させたクラウドソフトです。

全力法人税は、現在24,000社以上のアカウント登録があります。

全力法人税の実績は、これまでアカウントの登録数は24,000社を超えています。
元国税調査官・税理士が監修しており、お客様レビューでの高評価数850越えで信用できます。

2割特例 全力法人税 全力消費税 お客様 レビュー

全力電子帳簿も同様に、元国税調査官・税理士(実は私)が監修しています。

では、全力電子帳簿では、実際にどのように領収書や請求書などの電子取引データを電子保存していくのかを画面を見ながら確認していきましょう。

❶ 改ざん防止の事務処理規程を自動で作成する

まず冒頭で全力電子帳簿の事務処理フローどおりの事務処理規程を自動的に作ってしまいます。

利用者名や法人名(または個人事業主名)等を入力します。

全力電子帳簿初期設定画面1

管理責任者を決めます。

この例では管理責任者が利用者本人であった場合で作成していきます。
(つまりマイクロ法人や一人親方、一人でフリーランスをやっている、副業を一人でやっているケースを想定しています。)

全力電子帳簿事務処理規程作成画面

事務処理規程がもう出来上がりました。

全力電子帳簿事務処理規程完成画面

作成した事務処理規程をダウンロードできます。

全力電子帳簿で作成した事務処理規程

この事務処理規程に基づいて電子取引データの保存を行なっていきます。
もちろんこの規程による運用は、改正電子帳簿保存法の要件に合致しています。

実際に領収書等の電子データを保存する挙動を確認していきましょう。

❷ 領収書等の電子データを保存する

次のAmazonの領収書を「全力電子帳簿」に保存してみます。

【STEP1】 電子取引データ保存画面にPDFファイルをアップロードする

全力電子帳簿 アップロード画面

アップロードが完了したら
【STEP2】電子取引データの内容をフォームに入力する

全力電子帳簿へアップロード画面 

入力が済んだら保存する。

一覧画面で登録した電子データの内容を確認できます。

全力電子帳簿 一覧表示画面

要件に合った検索がもちろん可能です。

取引先名で検索してみます。

全力電子帳簿 検索画面

このように「取引先」に記載した文字で検索することができます。

次に問題の削除訂正部分です。

「全力電子帳簿」は、電子取引データの削除が必要なときは、管理者に削除申請を行います。
そして管理者が承認すると、削除が行われます。
削除申請自体が保存されますので、これまで削除されたものが何か一目でわかります。

なお、全力電子帳簿では、アップロードした電子データをアップロードし直す(訂正する)ことはできず、変更が必要な時は、一旦削除申請を管理者にして、承認を受けるシステムとしています。

それでは、全力電子帳簿で削除する場合の具体的な画面の挙動を見ていきましょう。

【STEP1】担当者が削除申請を行う。

全力電子帳簿 削除申請フォーム

【STEP2】管理者が承認または差し戻しを行う。

全力電子帳簿 管理者承認画面

承認が完了されると、対象のデータは削除され、削除申請履歴に保存されます。

全力電子帳簿 削除申請画面

削除申請自体を保存することで、削除の履歴を残すことができ、かつ削除前のデータや削除理由を後日確認することが可能となります。

このように「全力電子帳簿」を使えば、電子帳簿保存法でどのような要件があって、どのようにそれを履行しなければいけないかを知らなくても、改正電子帳簿保存法の学習コストなしにスムーズに、そしてスマートに対応できてしまいます。

2024年1月からの電子帳簿保存法の対応が面倒であるとか、待ったなしの状況だ、という場合は、無料で利用を開始できるので、一度試してみるのもよいかもしれません。

利用料金は、10ファイルまではお試し無料。
1月10ファイルまでは月額100円+税。
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