電子帳簿保存法が改正され、2022年1月からは、領収書等のデータをオンラインでやり取りした場合には、電子保存が義務化され、これまでのように紙で保存することができなくなることになっていました。
しかしながら2021年12月27日に国税庁から更新された電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(変更箇所下線あり)が公表され、宥恕措置により、領収書等のデータをオンラインでやり取りした場合に、電子保存が義務化されるのは2024(令和6)年1月1日からということが決定されました。
つまり、次のように言って間違いがありません。
この具体的内容とどのような経緯で一度法改正により決まっていたものが、2年後に延期ということになったのかを確認していきましょう。
宥恕措置の具体的内容
今回2年延長される法的構図は次のようなイメージです。
【宥恕措置】2022年1月から2年間は対応できないやむを得ない事情があると認めた場合で、紙の保存をしていた場合は、それもよしと認める。
建前は、2022年1月から事業者のみなさんは、領収書等をオンラインでやり取りした場合は、一定の要件の下で電子保存しなければなりません。
でも対応ができないのやむを得ない事情があれば、これまでどおり紙で保存することを2年間認めます。
こんなイメージです。
宥恕措置というのは、例えば、本来はこの届出をある期限までに提出しなければ、その届出は認められないという規定があったときに、災害等でその期限までに提出できないやむを得ない事情があると税務署長が認めた時は、提出期限後に提出されたとしても提出期限内に提出したことにしましょう。といったように、寛大な措置を取るための規定をいいます。
今回は、それを広く電子帳簿保存法の電子取引に適用するイメージです。
施行規則を次のように改正して宥恕措置を盛り込みました。
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成十年法律の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令の一部を改正する省令を次のように定める。 第二十五号)第七条の規定に基づき、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令の一部を改正する省令を次のように定める。
ー省略ー
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和三年財務省令第二十五号)の一部を次のように改正する。 附則第二条第三項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
3 この省令の施行の日から令和五年十二月三十一日までの間に電子取引を行う場合における新令第四条第三項の規程の適用については、同項中「証明したとき」とあるのは「証明したとき、又は納税地等の所轄税務署長が当該財務省令で定めるところに従って当該電磁的記録の保存をすることができなかったことについてやむを得ない事情があると認め、かつ当該保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録を出力することにより作成した書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。) の提示若しくは提出の要求に応じることができるようにしているとき」と、同項ただし書中「当該事情」とあるのは「これらの事情」とする。
そしてこの内容を受け、国税庁は電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(変更箇所下線あり)を更新して実務ではどのように対応するのかを示しました。
それを整理すると次のようになります。
②電子保存していなくても紙での保存も認める。
つまり、2022年1月から2年間は、どんな形であれ電子保存をしていてそれを見せられる状態にしているか、紙に出力して保存している場合、税務署長がやむを得ない事情があると認めればOKということです。
では税務署がするやむを得ない事情があるかの判断はどういうものなのか。
- 事前の申請は不要
- 保存要件に従って保存をすることができなかったことに関するやむを得ない事情を確認する場合がある程度
事前の申請は不要
事前の申請が不要であることについて、電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(変更箇所下線あり)で次のように述べています。
やむを得ない事情の有無や出力された書面については、必要に応じて税務調査等の際に確 認することとしており、事前に税務署への申請等をすることは必要ありません。
(問41ー5)
やむを得ない事情を確認するケース
電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(変更箇所下線あり)では、やむを得ない事情を確認させてもらうケースがあることについて次のように述べています。
保存要件に従って保存をすることができなかったことに関するやむを得ない事情を確認させていただく場合もありますが、仮に税務調査等の際に、 税務職員から確認等があった場合には、各事業者における対応状況や今後の見通しなどを、 具体的でなくても結構ですので適宜お知らせいただければ差し支えありません。
(問41ー2)
つまり、事前の申請も不要で、電子取引の電子保存に対応できなかった言い訳を用意しておけば、全事業者がこの2年間の延長の宥恕措置を受けられると理解できます。
元国税調査官の感覚では、これはどんな理由でもやむを得ないと解釈すると言っていると考えられます。確認する場合があるということは、確認しない場合もあるということですので、税務調査官にとっては、どっちでもいい程度の事柄であると言えます。
つまり対応ができていない事業者は、全員がやむを得ない事情があると判断するということを意味しています。ただ聞いたら言い訳だけはしてね、という程度であると言っているのです。
まとめ
これまでの内容を振り返ります。
2021年12月27日の施行規則の改正により、領収書等の取引データをオンラインでやりとりした場合に電子保存が義務化されるのは2024年1月からに実質延長された。
データを見せられる状態で保存しておくか、紙に出力して保存していればOK。
ただし法律自体は2022年1月から適用されているので、税務調査の際に、電子保存の要件にしたがって保存していない場合は、できなかったやむを得ない理由を聞かれる可能性があるため、税務署に聞かれる可能性があるときはその言い訳は考えておくこと。
2年間はこのような方法で、義務化された電子取引の電子保存はやり過ごせることになりました。ただし、法律自体の施行は開始しており、2024年1月からは確実に電子帳簿保存法に規定された次の3つの要件に基づいて保存することになるので、対応できる事業者は対応しておいて損はないでしょう。
- コンピュータ、ディスプレイとプリンタの備え付け
- 検索機能の確保(2年前の売上が1,000万円以下なら不要)
- 不正な改ざん防止策を講じる(真実性の要件)
2022年1月から適用開始となる電子帳簿保存法による電子取引データの電子保存について、そもそもどういう規定でどのように対応すべきかを知りたい方は、次の記事をご参照ください。
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