2024年電子データの電子帳簿保存法の猶予措置とは?超簡単!

電子データの電子帳簿保存法はソフトは不要? 保存要件が免除される猶予措置とは? アイキャッチ

 

2024年1月から領収書をデータでやりとりした場合には、もう紙で保存するこができなくなるんでしょ?

結構厳しい要件があるんでしょ?

本業が忙しいから対応できるか不安…

 

猶予措置があるから、対応できないということは普通はないと思うよ。
「システム等や社内でのワークフローの整備が間に合わない」という理由ですべての保存要件がなくなるというのが猶予措置ね。

 

え!?
そうなの!?

詳しく教えてー

 

2024年1月から電子取引データの電子保存が義務化されたことで、お使いのソフトのカスタマーサービスからこんなメールが届いたことがあるかもしれません。

電子帳簿保存法の保存の要件も細かく設定されており、その要件を満たせるよう準備を行う必要があります。確認・準備がまだの方は、年末までに早急に対応しましょう。

原則のルールでは事実ですが、これから解説する猶予措置を適用すれば、

領収書等をデータでやりとりした場合、その電子取引データを、税務職員に確認された場合でも、ちゃんと提示・提出できるように電子保存していればよい。(原則のルールが免除)
ということが理解いただけると思います。
ソフトを買わせるための文句に騙されないように電子取引に関する電子帳簿保存の猶予措置を理解しておきましょう。
猶予措置についてわかりやすく解説した動画もあるので、こちらも参考にしてください。

 

この記事を書いた人

税理士(元国税調査官)

税務署に12年間勤務。主に法人税の調査に従事。

現在は、クラウド税務ソフト「全力法人税」、「全力消費税」や「全力電子帳簿」等を提供するジャパンネクス株式会社の代表を務める。

税務署側の視点を交えながら、主に法人税・消費税について一般の方に向けて実務に直結した税務情報を分かりやすく解説します。

ジャパンネクス株式会社

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1 2024年開始の電子取引データに関する電子帳簿保存法の猶予措置とは

電子帳簿保存法の原則では、領収書や請求書等をデータで受領または交付した場合、そのデータを一定のルールで保存しなければなりません。

ただ、2022年1月の法施行直前で、全事業者が対応できないという苦情が殺到したために、やむを得ない場合はこれまでどおり紙の保存でよいという宥恕規定が2年間限定で設けられました。その流れを組んだ形ですべての事業者が対応できるよう令和5年の法改正で今回解説する猶予措置が盛り込まれました。

猶予措置で電子取引データの電子保存のすべての要件が免除されますが、次のことは前提として注意してください。

2024年1月からは、領収書等の電子取引データをデータでやりとりした場合には、そのデータを保存しなければならない。紙に印刷しての保存はできない。
それでは、猶予措置について詳しく解説していきます。
電子取引データを保存するための要件を簡単にして、次に猶予措置について確認する流れで解説していきます。

1-1 電子取引データに関する電子帳簿保存法の保存3要件

領収書等をデータでやりとりした場合には、次の3つの要件を満たした状態で保存するというのが原則的なルールとなっています。

  1. コンピュータ、ディスプレイとプリンタの備え付け
  2. 不正な改ざん防止策を講じる
  3. 検索機能の確保

1つ目のコンピュータ、ディスプレイ、カラープリンタについては、データを受領している時点でコンピュータとディスプレイは通常はあるでしょうし、カラープリンタについては、自社にない場合でも近隣の有料コピー機で速やかに印刷できるようであれば要件を満たしますので、容易にこの要件はクリアできると思います。

2つ目の不正な改ざん防止策を講じるというのは、電子取引データを保存するときに次のいずれかの方法を取る必要があるというものです。

  1. タイムスタンプが付与された後の授受
  2. 7営業日以内に(又は最長2ヶ月+7営業日以内に)タイムスタンプを付す
    ※ 括弧書の取扱いは、取引情報の授受からタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。
  3. データの訂正削除を行った場合にその記録が残る又は訂正削除ができないクラウドサービス等を利用して取引データをやりとりする
  4. 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け

詳しく知りたい方は次の記事をご参照ください。

 

電子帳簿保存法の真実性の要件(改ざん防止策を講じる)とは?
国税OB&税理士が解説。2022年1月スタートのする電子帳簿保存法において、電子取引データを電子保存するための要件として4つの不正な改ざん防止策を講じる(真実性の要件)が必要となる。それぞれの方法について具体例を挙げながらわかりやすく解説。

 

3つ目の検索機能の確保については、次の3つの方法で電子取引データを検索できなければならないというものです。

  1. 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索できる
  2. 日付又は金額については、その範囲を指定して検索できる(緩和措置あり)
  3. 2以上の任意の項目を組み合わせて検索できる(緩和措置あり)

詳しく知りたい方は次の記事をご参照ください。

 

電子帳簿保存法|電子取引データの電子保存の3つの検索要件とは
国税OB&税理士が解説。2022年1月スタートの電子帳簿保存法では、電子取引データを保存するにあたって、検索機能を確保するため3つの検索要件を満たす必要がある。実務で具体的にどのように処理すべきかを具体例を使いながらわかりやすく解説。

 

電子取引データを電子保存するにあたり一定のことをすれば上記の3つの要件がすべて免状されるというのが、猶予措置です。

それでは、猶予措置について詳しく見ていくことにしましょう。

 

1-2 電子取引データに関する電子帳簿保存法の猶予措置とは

猶予措置とは、次の2つの条件を満たすときには、前述の3要件を満たしていなくても電子保存を認めるというものです。

  1. 所轄の税務署長が電子取引データの保存を要件どおりにできなかったことについて、相当の理由があると認める場合
  2. 電子取引データと電子取引データを出力した書面を税務職員からの要求に応じて提示もしくは提出できるようにしている場合

この2つの要件を満たしていると、その電子取引データを電子保存していれば問題なしということになります。

条件の1つ目の「所轄の税務署長が電子取引データの保存を要件どおりにできなかったことについて、相当の理由があると認める」というのがどういうケースかが気になるところだと思います。

 

相当の理由があると認める場合とは

「所轄の税務署長が電子取引データの保存を要件どおりにできなかったことについて、相当の理由があると認める」ケースは、国税庁が次のように公表しています。

(猶予措置における「相当の理由」の意義) 7-12
規則第4条第3項((電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に関する猶予措置等))に規定する「相当の理由」とは、事業者の実情に応じて判断するものであるが、例えば、システム等や社内でのワークフローの整備が間に合わない場合等がこれに該当する

電子帳簿保存法取扱通達(国税庁)

例えば、システム等や社内でのワークフローの整備が間に合わない場合等」は相当の理由になると記載があります。

つまり、前述の電子保存3要件を満たすためのシステム等の導入や、2つ目の不正な改ざん防止策を講じるの「訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け」を運用するためには社内のワークフローが必要になりますが、こういった対応ができない場合は、これらの3要件は免除されるということです。

そして、この猶予措置の運用はかなり柔軟にされることが予想されます。

国税庁の電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問62では、この免除規定の適用に関して次のような解説があります。

「保存時に満たすべき要件に従って保存をすることができなかったことに関する相当の理由を確認させていただく場合もありますが、仮に税務調査等の際に、税務職員から確認等があった場合には、各事業者における対応状況や今後の見通しなどを具体的にご説明いただければ差し支えありません。」
とこんな感じです。

 

2 電子取引データに関する電子帳簿保存法の猶予措置のまとめ

電子取引データに関する電子帳簿保存法の猶予措置のまとめキャプチャ

電子取引データに関する電子帳簿保存法の猶予措置をまとめると

領収書や請求書等をデータでやりとりした場合には、電子データのままで保存することが義務