役員報酬と役員賞与で知らなきゃいけない損金不算入になる最重要ポイント2選【元国税税理士が解説】

役員報酬と役員賞与で知らなきゃいけないたった2つのこと

 

役員報酬や役員賞与を支給する際に、法人税法上絶対にやってはいけないことがあります。これを聞いて「うんうん」と思わない方はかなり危険です。

何が危険か?それは多額の税金を税務調査により納める可能性があるという意味で危険です。

また、決算期の途中で気づいても後から修正できないということがさらに恐怖です。事前にこの2つのことは知っておかなければならないのです。

この事実を知らないために多額の税金を納めることがないよう国税専門官として12年間勤務した経験から役員報酬役員賞与で注意すべき点をわかりやすく解説していきます。

同族会社に該当する中小企業であればこれから説明する2つのポイントだけ押さえていれば十分です。しっかりポイントをチェックしてください。

本題に入る前に法人税法上の「損金」「損金不算入」という考え方を知っているかそうでないかで理解度に雲泥の差がつきますので、まだこの用語をご存知でない方は先に次の記事をお読みいただくことをお勧めします。この記事は、この用語を知っていることを前提に書かれています。

損金の意味とは?損金不算入だけ注意すれば実務はほぼOK【元国税税理士が図解解説】
法人税法の独特の用語に「損金」という言葉があります。これがなぜ重要かというと法人税法には損金不算入という規定があるからです。実務で最も注意が必要なのも損金不算入です。法人税の申告をする上で不可欠な知識「損金不算入」をこの記事でマスターしましょう。
この記事を書いた人

税理士(元国税調査官)

税務署に12年間勤務。主に法人税の調査に従事。

現在は、クラウド税務ソフト「全力法人税」、「全力消費税」や「全力電子帳簿」等を提供するジャパンネクス株式会社の代表を務める。

税務署側の視点を交えながら、主に法人税・消費税について一般の方に向けて実務に直結した税務情報を分かりやすく解説します。

ジャパンネクス株式会社

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1 役員報酬で注意すべきポイント

役員報酬・役員賞与で注意すべきポイント

役員報酬は、決算書上では当然に費用となり、利益を少なくする役割を演じます。しかしながら、税金を計算する上では、役員報酬として経理したものすべてが、税金上の費用である損金になるとは限りません。

損金にならないということは収入から差し引かれないということになりますのでその分利益が大きくなり、結果的に税金が多くなるということを意味します。

では、どうすれば損金になるのか?これがもっとも大事なところです。

支給する役員報酬を損金に算入する(法人税法上も費用とする)には次の2つ条件を満たす必要があります。

  1. 支給時期が1月以下の一定の期間ごと
  2. 会計期間内の各支給期間の支給額が同額

つまりこの要件を同時に満たさなければ損金には算入されないこと(損金不算入)になります。

この2つの要件を満たす役員報酬のことを「定期同額給与と呼びます。

この規定を初めて聞いたという場合は、かなり危険な事態になっているかもしれません。

定期同額給与についての詳しい解説は次の記事でしておりますので、この規定を知らないという場合は、必ず確認してください。最悪の場合、支給している役員報酬の大半が損金にならない、なんて事態に陥っているかもしれません。

定期同額給与とは?役員報酬で絶対知らなきゃいけない2要件
元国税調査官・税理士が調査での誤り例を交えて解説。役員報酬は毎月同額で支給しないと税負担が増加する。それは定期同額給与という法人税法の規定があるためだ。法人経営者なら絶対知っておく必要がある。定期同額給与となる重要な2要件をおさえておこう。

2 役員賞与で注意すべきポイント

ここでいう役員賞与は、前述の役員報酬と退職給与を除いた支給形態を取っているものをいうこととします。したがって、以下の説明では役員報酬とは別に夏や冬に支給するボーナス以外にも、4半期ごとに支給する場合や半年ごとに支給する場合も役員賞与としてとらえます。

 役員賞与には事前の届出が必要(ただし同族会社に限る)

法人税法では、役員賞与を自由な時期に自由な額を支給するということができません。

例えば、決算期末間際になって利益が出ているので、利益を圧縮する目的で役員賞与を支給する、なんてことをするとその役員賞与の全額が損金にならないということになります。

この規定を知らないと役員賞与で所得税を支払った上に、法人税は一切安くならないという恐怖の事態に陥ります。

そうならないために、役員賞与を損金に算入するためにどうしたらいいのか?

それは、税務署に一定期間内に賞与を支給するという届出を提出する必要があります。

届出を出さなかったり、届出どおりに支給しない場合には、その全額が損金に算入されないというたいへんな事態になります。

ただし、この規定は同族会社に該当する法人のみに適用されますので、例えば非同族会社で定期給与を支給しない役員に対して所定の時期に数回支給する給与などは損金に算入されます。

届出を出さずに賞与を支給する。

これがやってはいけない2つ目のポイントです。

事前に届出をして支給される賞与を法人税法では「事前確定届出給与」と呼んでいます。事前確定届出給与は損金に算入されます。裏を返せば事前に届出を出していないのに役員賞与を支給するとその金額が損金不算入になります。

事前確定届出給与については、以下の記事で詳しく解説してますので、詳しい規定についてはこちらをご覧ください。

0からわかる事前確定届出給与とは?書き方、提出期限、記載例、議事録、無料作成ソフト全部解説
役員への賞与は原則自由に支給することができません。事前確定届出給与に関する届出書を税務署に事前に提出する必要があります。その届出書の書き方を記載例を交えて解説。提出期限は最重要チェック事項です。賞与を支給する際には議事録を作成する必要があります。議事録のサンプル付き。正確に簡単に作成できる無料ソフトも紹介。

過大な役員給与の損金不算入とは

過大な役員給与(役員報酬・役員賞与)の損金不算入とは

役員報酬と役員賞与における絶対に押さえておく必要があるポイントは以上の2点ですが、その他にもこんなものもありますよという程度のおまけとして頭の片隅に置いておいてほしい規定がもう一つあります。

過大な役員給与の損金不算入という規定です。

端的に言えば役員報酬または賞与の額が不相当に高額な部分の金額は、過大な役員給与として損金に算入しないというものです。

これだけ聞くとなぜこれがおまけなのか。調査を受ける側からすると注意すべき危険な規定なのではないかと思われるかもしれません。

しかしながらこの規定がおまけと言えるのはこの規定を適用して調査で不相当に高額な部分を立証するのは実務的にはかなり難しいからです。よほど誰が見てもおかしいでしょうというものでないと指摘はできないのです。

何もしていない社長の妻が毎月100万円もらっているというのであれば不相当に高額だと言えるでしょうが、親族のみの同族会社で経営方針について話し合っていると言われれば、調査する側からするとそんなことはしていないということを立証するのはかなり困難です。(ご興味のある方は国税不服審判所の裁決事例をご覧ください。)

それに役員報酬を利用して故意に税額を圧縮しようと思うような方は調査で指摘されればいいと個人的には思いますのでここではあまり突っ込まないで、よほど悪質でなければこの規定が登場することはないということでこういうものがありますよ程度で済ませたいと思います。

大切なのはあくまで前述の2点です。

まとめ

中小の同族会社では、役員報酬の場合は毎月同額であること、役員賞与であれば事前に届出を提出する、この2点を守らない場合基本的には損金不算入になってしまいます。これを知らずに税務調査を受けてしまった場合は悲惨な結果になってしまう恐れがあります。

法人で活動している場合はこの2点を必ず押さえる必要があります。顧問税理士がいれば税理士が適切に処理してくれるでしょうが、税理士がいないような会社さんは要注意です。

元国税調査官の立場からするとこの役員報酬と役員賞与に関する2つのポイントは調査で指摘を受ける中で最も危険なポイントではないかと思っています。役員報酬や役員賞与は金額が相対的に大きくなりがちなので、ここで誤りを指摘された場合には、税金も大きくなる可能性が高くなりますので、この規定を知らないというのはかなりのリスクと言えます。

しかしながら、この2つのポイントさえ押さえていれば役員報酬と役員賞与の支給で税務上迷うことはもうほとんどありません。自信を持って日々の経理事務を行ってください。

 

執筆者 ジャパンネクス株式会社代表 元国税調査官 税理士 海野 耕作

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