役員報酬を減額できるのはたった3つのケースだけ!元国税税理士が0から解説

役員報酬を減額できるのはたった3つのケースだけ

業績が伸び悩み、役員報酬を減額せざるを得ない状況に陥ることがあると思います。

そんなときに法人税のことを考えずに減額した場合、思いがけず大きな税負担を強いられることがあります。役員報酬を下げても税金が増えてしまっては元も子もありません。

ここでは役員報酬を減額する上で押さえておくべきポイントをわかりやすく解説していきます。これさえ押さえておけば何も怖がることはありませんのでしっかりチェックしていきましょう。

また、減額するときに必要となる株主総会議事録の雛形もダウンロードできます。是非ご活用ください。

この記事を書いた人

税理士(元国税調査官)

税務署に12年間勤務。主に法人税の調査に従事。

税務署側の視点を交えながら、主に法人税・消費税について一般の方に向けて実務に直結した税務情報を分かりやすく解説します。

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本題に入る前に

表題のとおり0から説明していきます。0から理解するためには役員報酬の減額手続きの説明に入る前に次の2つのポイントを押さえておく必要があります。

  1. 損金とは、損金不算入とは
  2. 役員報酬が損金に算入される条件とは

この2つが前提となりますので、まずはその点を一つずつ押さえていきましょう。

損金とは 損金不算入とは

「損金」と「損金不算入」という用語は、知らないと法人税法の話を理解することができないというほどの超基本ワードです。逆にこの2つの用語を知っていればだいたいの話は理解できます。あとはその規定を知っているか知らないかだけの話になります。

ここは遠回りになりますが、まずはこの2つのキーワードを解説した次の記事を読んでから、またこの続きに移ってもらえらばと思います。

損金の意味とは?損金不算入だけ注意すれば実務はほぼOK【元国税税理士が図解解説】
法人税法の独特の用語に「損金」という言葉があります。これがなぜ重要かというと法人税法には損金不算入という規定があるからです。実務で最も注意が必要なのも損金不算入です。法人税の申告をする上で不可欠な知識「損金不算入」をこの記事でマスターしましょう。

定期同額給与を知ろう

役員報酬は実は、法人税法でかなり厳しく縛られています。

役員報酬を損金に算入する(法人税法上も費用にする)にはなんと、たった一つしか方法がありません。

それは以下の条件に則って役員報酬を支給するという定期同額給与です。

  1. 支給時期が1月以下の一定の期間ごと
  2. 会計期間内の各支給期間の支給額が同額

定期同額給与についてよく知らない場合は、次の記事でその内容を理解してからまたこの記事に戻ってきてください。

定期同額給与とは?役員報酬で絶対知らなきゃいけない2要件
元国税調査官・税理士が調査での誤り例を交えて解説。役員報酬は毎月同額で支給しないと税負担が増加する。それは定期同額給与という法人税法の規定があるためだ。法人経営者なら絶対知っておく必要がある。定期同額給与となる重要な2要件をおさえておこう。

役員報酬を減額するには

役員報酬を減額する方法

役員報酬を減額する手続き

役員報酬を減額するには次のような手続きを踏む必要があります。

❶ 役員報酬の変更には株主総会などで正式に決定する必要があります。

❷ 決定後は株主総会議事録を作成する必要があります。

なお、合同会社の場合は、同意書という形で変更内容を残す必要があります。

役員報酬を減額できる3つの要件

役員報酬を減額してその全額を損金に算入するためには、次の3つの要件のいずれかに当てはまる必要があります。

どのように改定して支給すれば要件に合致するかを、一つ一つ確認していきましょう。

⒈ 定時株主総会等での役員報酬の減額

一つ目は一番安全な減額の方法です。

定時株主総会の決議や総会後の取締役会の決議などにより会計期間開始の日から3ヶ月以内に減額を行うという方法です。

例えば3月決算の法人で、5月に定時株主総会を開催して、6月支給分から役員報酬を減額するケースが当てはまります。

下の例では改定前の4〜5月は70万円で、改定後の6〜3月が50万円でそれぞれの期間が同額になっています。

また4月に会計期間が開始し、5月に減額を行なっていますので、会計期間開始の日から3ヶ月以内に行われています。条件を満たしていますので、適正な減額ということになり、この役員報酬の全額が損金に算入されます。

役員報酬の減額手続き 通常改定図解

 定時株主総会議事録のサンプル

定時株主総会で役員報酬を減額する場合の株主総会議事録の雛形を示しておきますので参考にしてください。
定時株主総会で役員報酬を減額する場合の株主総会議事録の雛形・記載例

 

⒉ 業績悪化による役員報酬の減額

続いては、業績悪化による減額です。

経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由で減額されるときは定期同額給与に該当する改定と認められます。

どのようなときに業績悪化のための改定と認められるかについては次の具体例が挙げられていますので、それを参考に判断することになります。

 業績の悪化による改定と認められる具体例

⑴ 財務諸表の数値が相当程度悪化したこと

⑵ 倒産の危機に瀕したこと

⑶ 株主との関係上※、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合

※ただし株主との関係については、同族会社のように株主が少数の者で占められ、かつ、役員の一部の者が株主である場合や株主と役員が親族関係にあるような会社について安易にこれを適用すればそれは調査で否認される危険性を伴います。そのような場合には、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的かつ特別の事情を具体的に説明できるようにしておく必要があります。

⑷取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合

⑸業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合

⑹売上の大半を占める主要な得意先が1回目の手形の不渡りを出したなどの客観的な状況があり、得意先の経営状況を踏まえれば数か月後には売上が激減することが避けられない状況となったため、役員給与の減額を含む経営改善計画を策定したような場合

⑺法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどは該当しません。

⑴や⑵のように会社の存続が危ぶまれるようなケースは当然に認められると考えられます。そしてそこまではいかないケース⑶〜⑹のように第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じた場合は客観的に判断できるため認めています。逆に⑺で示しているように、第三者との関係もないし、会社が危機に瀕しているわけでもない場合には認められないので注意しましょう。

このような場合には、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的かつ特別の事情を具体的に説明できるようにしておく必要があるでしょう。

このように業績の悪化で減額するときは上記具体例を参考にして慎重に決定する必要があります。

ただし元国税調査官の個人的な意見を言わせてもらいますと、大会社でもなければ会社が赤字でそれを回避するために減額する場面で、敢えてムキになって否認しにいくかと言ったら、よほどのことがない限り積極的には動かないと思われます。節税とは反対の局面です。国税調査官は税金を減らそうとするところにこそ目を光らせる人種だからです。

このような点もふまえて、イメージとしては普通の人が聞いてそれは仕様がないよね、という場面であれば通常は認められるというように理解しておくとよいと思います。

参考「役員給与に関するQ&A 」(国税庁)

 コロナ禍で業績悪化に該当する具体例

コロナ禍で業績悪化に該当する具体例

国税庁が公表している「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取り扱いに関するFAQ」において新型コロナウイルスによる業績悪化がこの「業績の悪化による改定」として認められる例示されていますので、確認しておきましょう。

Q:当社は、各種イベントの開催を請け負う事業を行っていますが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、イベント等の開催中止の要請があったことで、今後、数か月間先まで開催を予定していた全てのイベントがキャンセルとなりました。
その結果、予定していた収入が無くなり、毎月の家賃や従業員の給与等の支払いも困難な状況であることから、当社では、役員給与の減額を行うこととしました。
法人税の取扱いでは、年度の中途で役員給与を減額した場合、定期同額給与に該当せず、損金算入が認められないケースもあると聞いています。
そこで、当社のような事情によって役員給与を減額した場合、その役員給与は定期同額給与に該当するでしょうか。

A:法人税の取扱いにおける「業績悪化改定事由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいいますので、貴社のように、業績等が急激に悪化して家賃や給与等の支払いが困難となり、取引銀行や株主との関係からもやむを得ず役員給与を減額しなければならない状況にある場合は、この業績悪化改定事由に該当することになります。

業績が悪化した場合に行う役員給与の減額(国税庁)

Q:当社は、新型コロナウイルス感染症の影響により、外国からの入国制限や外出自粛要請が行われたことで、主要な売上先である観光客等が減少しています。
そのため、当面の間は、これまでのような売上げが見込めないことから、営業時間の短縮や従業員の出勤調整といった事業活動を縮小する対策を講じています。
また、いつになれば、観光客等が元通りに回復するのかの見通しも立っておらず、今後、売上げが更に減少する可能性もあるため、更なる経費削減等の経営改善を図る必要が生じています。一方で、当社の従業員の雇用や給与を維持するため、急激なコストカットも困難であることから、当社の経営判断として、まずは役員給与の減額を行うことを検討しています。
しかしながら、法人税の取扱上、年度の中途で役員給与を減額した場合にその損金算入が認められるのは、経営が著しく悪化したことなど、やむを得ず減額せざるを得ない事情(業績悪化改定事由)がある場合に限られると聞いています。
そこで、当社のような理由による役員給与の減額改定は、業績悪化改定事由による改定に該当するのでしょうか。

A:貴社が行う役員給与の減額改定について、現状では、売上などの数値的指標が著しく悪化していないとしても、新型コロナウイルス感染症の影響により、人や物の動きが停滞し、貴社が営業を行う地域では観光需要の著しい減少も見受けられるところです。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が防止されない限り、減少した観光客等が回復する見通しも立たないことから、現時点において、貴社の経営環境は著しく悪化しているものと考えられます。

そのため、役員給与の減額等といった経営改善策を講じなければ、客観的な状況から判断して、急激に財務状況が悪化する可能性が高く、今後の経営状況が著しく悪化することが不可避と考えられます。

したがって、貴社のような理由による役員給与の減額改定は、業績悪化改定事由による改定に該当します。

業績の悪化が見込まれるために行う役員給与の減額

 業績悪化による減額場面の臨時株主総会議事録サンプル

業績悪化による減額を株主総会で決定する場合の臨時株主総会議事録の雛形を用意しました。ダウンロードしてご使用いただけます。

業績悪化による役員報酬の減額場面の臨時株主総会議事録サンプル 記載例

 

⒊ 臨時的な理由による役員報酬の減額

次のような臨時的・突発的な理由による減額は定期同額給与として認められる改定とされています。

・代表取締役が急病などの理由により他の役員が代表取締役へ昇格するなどの役員の職制上の地位の変更

・地位の変更とまでは行かないが、病気で入院している間、入院前と同じようには経営に参画できないために減額するといった場合

・合併、分割等により役員の職制上の地位は変わらないもののその職務内容が大幅に変わる場合

 

以上の3つのいずれかの条件に合致した改定によれば、その改定前と改定後の報酬が同額であれば定期同額給与としてその全額が損金に算入されます。

2つ目と3つ目の改定は判断が分かれる場面が容易に想像されますので、できれば1つ目の条件で改定したいところです。役員報酬の減額を少しでも考えるのであれば決算期末から申告の間の2ヶ月の間(申告期限の延長をしていれば3ヶ月の間)で慎重に検討を重ねましょう。

最後に損金に算入されないという言葉をこれまで繰り返し使ってきましたが、実際に損金に算入されないこととなった場合にはどの部分が損金に算入されずに所得に加算されるのかを見ていきたいと思います。

損金に算入されない金額はどの部分?

すぐ下の図を見てください。例えば3月決算の法人で4月から9月まで月額50万円の役員報酬を支払っていて、その後先に説明した改定に当てはまらない改定を行って10月から3月まで月額70万円支給していた場合はどうなるのでしょう。

回答は紫色の部分が損金不算入となります。

先ほどの例で言えば増額した20万円×6月=120万円が損金不算入となり所得金額に加算されます。

役員報酬の要件に該当しない増額改定 図解

逆に減額改定が先の例に当てはまらなかった場合は次の図の紫部分が損金不算入となります。

役員報酬の要件に該当しない減額改定 図解

このように役員報酬は定期的に支給される同額の部分のみ損金に算入されます。そうでない部分は損金に算入されず、言ってしまえば利益になるのと同じ意味を持ちます。結果的にその分税額が増えます。つまり、同額になっていない額×誤っている月がもろに利益になって、税額として跳ね返ってくるのでここを誤るとかなり危険です。

まとめ

いかがだったでしょうか。少し長くなりましたが、役員報酬を減額する方法についてすべてをお話ししました。今回の記事で触れられた部分を押さえていれば、役員報酬を減額する局面で考慮しなければいけないポイントでもれはありません。

まず、要件にあった改定を行うこと、そしてその改定の前と後ろのそれぞれの期間で毎月同額を支給するという点が今回のポイントでした。

この部分を一つ一つ確実にクリアして正しい形で役員報酬の減額をやり遂げてください。

また次の記事で役員報酬と役員賞与について別の切り口で説明していますので、よろしければこちらもチェックしてみてください。

役員報酬と役員賞与で知らなきゃいけない損金不算入になる最重要ポイント2選【元国税税理士が解説】
役員報酬の場合は毎月同額、役員賞与であれば事前に届出を提出、この2点を知らないで税務調査を受けてしまった場合は悲惨な結果になってしまうでしょう。いずれも損金不算入になりかねない。元国税調査官からすれば法人を経営する以上税務でこの2つは絶対に知っておかなければならない

 

執筆者 ジャパンネクス株式会社代表 元国税調査官 税理士 海野 耕作

コメント

  1. ポン より:

    何もわからずに法人を立ち上げ、役員や使用人の区別をなく、給与を支払ってきてしまった者です。先生の記事はどのサイトよりも本当に0からわかるので、素人には助かります。

    顧問税理士はいますが、私ども素人は、今回のようにおかしことをやっていることにも気づけずにいる状態のため、うまく税理士さんを使いこなせていません。

    まだ、読んでいる途中なのですが、良いサイトに出会えて感激して書き込みました。
    しっくり勉強させていただきます。
    ありがとうございます。

    • コメントありがとうございます。お役に立てて何よりです。引き続き、わけのわからないものを、シンプルに整理し、わかりやすく解説していきたいと思います。

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