ここでは、法人が国税に関する申告、届出等をインターネットを通じて電子的行うための事前準備までを解説します。
具体的には、国税について電子申告を行う場合、電子送信に対応した市販の税務ソフトを使用しない場合、国税庁が提供しているeTaxソフトを使って行う必要があります。
今回の記事では、法人が確定申告等を電子申告するために、そのeTaxソフトを使えるようにするまでの手続きの方法を解説していきます。
この記事は、法人の使用を前提していることにご注意ください。
また、電子申告をするために必要なeTaxソフトには、Web版とインストール版の2種類があります。
両者の機能をここで整理しておきましょう。
Web版 | ダウンロード版 | |
---|---|---|
Macでの利用 | ||
Windowsでの利用 | ||
ソフトのインストール | 不要 | 必要 |
申告書を1から作成すること | ||
eTax用ファイル形式xtxの組み込み | ||
組み込み後法人税・消費税の申告内容の編集 | ||
法人税・消費税の帳票追加 |
特徴を要約すると次のように言えるでしょう。
- Web版は、1から申告書を作成することができないので、すでに完成した電子申告用ファイルを組み込む方法でしか電子申告できない
- 他の税務ソフト等を利用せず、1から申告書を作成するにはダウンロード版を使用するしかない。(Windowsユーザのみ)
- ダウンロード版は、電子申告用ファイルを組み込んだ後も申告内容の編集や帳票の追加が可能
- Mac利用者は、Web版に電子申告用ファイルを組み込む方法でしか電子申告できない
e-Taxソフト(Web版)はできることが限られています。e-Taxソフト(Web版)でできることについては、次のリンクをご参照ください。
e-Taxソフトを利用するための事前準備の具体的方法の解説に入る前にe-Taxとはそもそもなんなのかということを確認しておきましょう。
e-Tax(イータックス)とは
e-Taxとは、国税に関する申告や申請、届出等の各種の手続について、インターネット等を利用して電子的に手続きが行えるシステムをいいます。
申告をe-Taxでする、といった表現で使われたりします。
それでは、e-Taxというシステムはどのようにすれば使えるようになるのでしょうか。
e-Taxの利用の流れ
e-Taxを利用して電子申告を行うまでのおおまかな流れは次のようになります。
電子証明書の入手
電子署名付与環境用意(ICカードリーダライタorマイナポータルアプリ)
e-Taxの開始届出書を提出
eTaxソフトの起動
eTaxソフトで申告書を電子送信
今回はeTaxソフトを起動するまでの手続きについて解説します。
それでは、一つずつそれぞれの手続きについて、詳しく解説していきます。
まずは、電子証明書を入手するところから始めます。
STEP1 電子証明書を入手
電子証明書がなぜ必要なのか
国税について電子申告する場合は、電子証明書の取得が必須になります。
電子申告を行うには、利用者本人であることの確認とデータの改ざんの有無を確認するために電子署名を付す必要があります。
その電子署名を付与するためには、電子証明書が必須なのです。
法人がe-Taxで国税の申告や申請行う場合には、原則法人代表者の電子署名が必須になります。(または、法人の代表者から委任を受けた者(法人の役員および職員に限る)の電子署名でも構わないことになっています。詳しくはこちら。)
それでは、その電子証明書はどのように取得すればよいのか。
ここでは、電子証明書の一般的な入手方法として、マイナンバーカードを取得する方法をご紹介します。(マイナンバーカード以外の取得方法等の詳細はこちらをクリック)
なぜマイナンバーカードを使うかというと、マイナンバーカードの交付申請に係る手数料は、当面は無料ですが、例えば商業登記認証局の場合は、証明期間が12か月の場合、7,900円となっています(執筆現在)。このような理由でマイナンバーカードを取得するのが一般的となっています。
マイナンバーカードを作成すると、カードの中に電子証明書が記録されています。つまり、マイナンバーカードを作成すれば、電子証明書も同時に入手することができます。
マイナンバーカードの入手方法については、「マイナンバーカードの交付申請」ページをご覧くださいあ。よくわからない場合は、お住いの自治体へお問い合わせください。
例えば横浜市で申請する場合は、次のようなに案内がされています。
横浜市の場合は、窓口、郵送またはインターネットで申請し、その後概ね1ヶ月(場合により2ヶ月)程度で、区役所からカードの受け取り方法を記載したはがきが送られてきます。そのはがきを区役所に持参して交付を受けるという流れになっています。
申請から受け取りまで1〜2ヶ月程度かかるケースがあるとのことですので、申告期限から逆算して早めの申請が寛容です。
続いてマイナンバーカードを使って電子署名を付与するための環境を用意します。
STEP2 電子署名を付与できる環境を用意
マイナンバーカードを使って電子署名を付与するための環境を用意する方法は2つあります。
スマートフォンにインストールした「マイナポータルアプリ」を使用する方法と、「ICカードリーダライタ」を使用する方法です。
それぞれの方法を比較すると次のような特徴があります。
マイナポータルアプリ | ICカードリーダライタ | |
---|---|---|
e-Taxソフト(ダウンロード版) | ||
e-Taxソフト(Web版) | ||
メリット |
|
e-Taxソフト(DL版)と(Web版)の両方で使える |
デメリット | e-Taxソフト(DL版)で使えない |
|
それぞれの方法について、解説していきます。
まずは「マイナポータルアプリ」を使用する方法について解説します。
マイナポータルアプリを使用する方法
マイナポータルアプリを使用して電子署名を付与する方法は、スマートフォンにインストールした「マイナポータルアプリ」でパソコン等に表示された2次元バーコードを読み込み、マイナンバーカードの上にスマートフォンを置くことで証明書を読み込み、電子署名を付与するという流れになっています。
スマホにマイナポータルアプリをインストール
署名が必要な場面で画面に表示された2次元バーコードを読み込む
マイナンバーカードの上にスマホを置く
電子署名完了
マイナポータルアプリを使用して電子署名を付与する場合、その環境設定は、スマートフォンに「マイナポータルアプリ」をインストールするだけです。
ICカードリーダライタの設定は面倒ですので、手間を考えるとこちらの方法が断然楽です。そしてICカードリーダライタを購入する必要がありませんので、金銭的にも得といえます。
iOSとAndroidいずれにも対応しています。
ただし、対応しているスマートフォンの機種が限られていますので、その点は注意が必要です。
マイナポータルアプリに対応しているスマートフォンについては、次のページでご確認ください。
Q. マイナポータルアプリに対応しているスマートフォン等を教えてください。
マイナポータルアプリを使った具体的な電子署名の方法については、国税庁の次のページで詳しく解説されているので、そちらをご覧いただき、スマートフォンにマイナポータルアプリをインストールしてください。
e-Taxソフト(ダウンロード版)を使用する場合は、次のICカードリーダライタを使用する方法一択になります。
続いてICカードリーダライタを使用する方法について解説します。
ICカードリーダライタを使用する方法
ICカードリーダライタを使用して電子署名を付与する場合の環境設定の手順は次のとおりです。
ICカードリーダライタを入手
ICカードリーダライタのドライバーをインストール
利用者クライアントソフトのインストール
マイナポータルアプリを使う場合は、アプリをインストールするだけだったのに比べて手続きが煩雑であると言えるでしょう。
それでは順を追って確認していきましょう。
ICカードリーダライタを入手
ICカードリーダライタを使っての電子署名の方法は、具体的にはICカードリーダライタにマイナンバーカードをさし、パソコンに繋げて、電子署名をすることになります。
ICカードリーダライタのご用意(公的個人認証サービスポータルサイト)でマイナンバーカードに対応したICカードリーダライタが紹介されていますので、こちらから対応するカードリーダライタを選び、用意します。
ICカードリーダライタのドライバをインストール
ICカードリーダライタを使用するためには、お使いのパソコンにドライバのインストールが必要になります。購入したICカードリーダライタの説明書き等でドライバのインストールの方法を確認し、インストールします。
利用者クライアントソフトのダウンロード
ICカードリーダライタのドライバを用意したら、電子証明書を利用するためのパソコン側のセットアップを行います。利用者クライアントソフトをインストールします。
利用者クライアントソフトとは、公的個人認証サービスを利用した行政手続き等を行うときにマイナンバーカード(ICカード)に記録された電子証明書を利用するためのソフトウェアです。(公的個人認証サービスポータルサイト)
利用者クライアントソフトのダウンロードをクリックします。
WindowsとMacそれぞれのインストール方法を解説していきます。
Windowsをお使いの場合のインストール方法は次のとおりです。
インストール方法(Windows)
「Windowsをご利用の方」をクリックします。
画面上部で動作環境を確認し、画面下部でインストールを開始します。
「利用者クライアントソフト(Windows版) Ver…」をクリックし、インストーラーをダウンロードします。
ダウンロードした利用者クライアントソフトのインストーラーをダブルクリックするとインストールが開始されます。画面の案内にしたがってインストールを完了させます。
Windows版のインストール方法の詳細についてはこちらをクリック
続いてMacをお使いの場合のインストール方法を解説します。
インストール方法(Mac)
「Mac版のダウンロードはこちら」をクリックします。
「利用者クライアントソフトVer3.5(Mac版)ダウンロード」をクリックします。
ダウンロードされたファイルを開きます。
JPKIInstall.pkgを開きます。
画面の案内にしたがってインストールします。
インストール完了です。
これで電子署名を付与する環境が整いました。
続いては、e-Taxの利用開始を税務署に届け出ます。
⒊ e-Taxの開始届出書を提出する
e-Taxの使用を開始することを国税庁に届け出る方法を解説します。
e-Taxの開始届出書を提出するにあたっての事前準備については、次の国税庁のページで包括的に解説してあります。
e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナー【事前準備】
以下で開始届出書の提出の仕方について説明していきますが、この解説で不明な部分が出てきた場合は、上記サイトで詳細を確認してください。
⑴ 利用規約を確認する
e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナーを利用するに当たってにアクセスします。
「国税電子申告・納税システムの利用規約」e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナーの利用規約」をそれぞれ確認します。
⑵ 利用環境を確認する
続いて「⑵利用環境の確認」に進みます。
WindowsとMacいずれか使用するOSの利用環境を確認します。
⑶ ルート証明書・中間証明書をダウンロード・インストール
次にルート証明書等をダウンロードします。
WindowsとMacそれぞれのインストール方法を解説します。
Windows版のルート証明書等のインストール方法
「⑶ルート証明書等のインストール」に進み、 「ルート証明書・中間証明書インストーラ」をクリックし、インストーラをダウンロードします。
ダウンロードしたインストーラを起動します。
「インストール」をクリックします。
インストールが終了すると、処理結果が表示されるので、指示のとおり「エンターキー」を押します。
これでルート証明書のインストールが完了しました。
⑷ 信頼済みサイト・ポップアップブロックの許可サイトへ登録
Microsoft Windows 7、8.1とInternet Explorer 8 以降ではセキュリティ機能が強化されていおり、e-Tax関係のURLをinternet Explorerの信頼済みサイト及びポップアップブロックの許可サイトに登録しないと正しく動作しない場合があるため、次の作業を行います。
「信頼済みサイト登録ツール」をクリックし、インストーラをダウンロードします。
❷ ダウンロードしたインストーラを起動します。
「登録する」をクリックします。
「完了」をクリックします。
続いてMac版のルート証明書等のインストール方法について解説します。
Mac版のルート証明書等のインストール方法
「Macintoshを利用の方」をクリックし、「セコムパスポート for WebSR3.0のルート証明書」と「セコムパスポート for WebSR3.0の中間証明書」をそれぞれクリックし、ダウンロードします。
Finderから「アプリケーション」>「ユーティリティ」>「キーチェンアクセス」を起動します。
「ファイル」>「読み込む」からダウンロードした「セコムパスポート for WebSR3.0のルート証明書(rscrootca2.der)」を選択します。
「署名された証明書をこれ以降信頼するようにお使いのコンピュータを設定しますか?」と聞かれたら「常に信頼」ボタンを押します。
これでルート証明書のインストールが完了しました。
続いて中間証明書をインストールしますが、上記同様の方法で「セコムパスポート for WebSR3.0の中間証明書(pfwsr3ca.der)」についてもインストールします。
Mac版のルート証明書等のインストールの方法や、インストールが正しく行われたかを確認する方法等の公式のマニュアルはこちらをクリックしてご確認ください。
⑸ 届出書の選択
「⑷利用可能時間」を確認後、最後に次の方法で税務署に対し、開始届出書を提出します。
❶ 「届出書の選択」をクリックします。
❷ 作成・送信する開始(変更等)届出書の選択
画面下部の「開始届出書(法人用)新規」をクリックします。
❸【ご利用になる前に】画面
「次へ」をクリックします。
❹【法人名称等の入力】画面
画面の案内に従って法人名称等の情報について必要事項を入力し、「次へ」をクリックします。※必須の部分は必ず入力が必要です。
❺【代表者情報の入力】画面
画面の案内に従って代表者の情報について必要事項を入力し、「次へ」をクリックします。
❻【暗証番号等の入力】画面
画面の案内に従って暗証番号等について必要事項を入力し、「確認」をクリックします。
利用者識別番号を発行していいかの確認が入ります。ここでは新規に取得する方が対象ですので、「OK」をクリックします。
万が一以前すでに利用者識別番号を発行している場合は、変更届出になりますので、「変更届出(法人用)利用者識別番号や暗証番号をお忘れになった方」をクリックして、利用者識別番号や暗証番号を確認するようにしてください。
❼【入力内容の確認】画面
入力した内容を確認し、よければ「送信」をクリックします。
「表示された内容で送信してもよろしいですか?」と確認されますので、「OK」をクリックします。
❽【利用者識別番号等の通知】
データが受け付けられ、利用者識別番号が発行されます。
e-Taxを利用するのにこの「利用者識別番号」と「暗証番号」が必ず必要になります。
この画面は再度表示することはできませんので、「印刷」または「保存」をクリックし、確実に保存します。
⒋ eTaxソフトを起動する
e-Taxソフト(Web版)を利用する場合は、e-Taxソフト(Web版)のページにアクセスして、「利用者識別番号」と「暗証番号」によりログインすれば、すぐにでも利用できます。
e-Taxソフト(ダウンロード版)を利用する場合は、e-Taxソフトをダウンロードする必要があります。ダウンロード版の動作する環境は繰り返しになりますが、Windowsのみになります。
それぞれについて、その起動方法を解説していきます。
まずは、e-Taxソフト(Web版)から解説します。
e-Taxソフト(Web版)の起動方法
「e-Tax」のページにアクセスし、画面右上の「ログイン」ボタンを押します。
「法人の方」をクリックします。
「利用者識別番号」「パスワード」を入力し、「ログイン」ボタンを押します。
ログインに成功すると、トップ画面が表示されます。
これでe-Taxソフト(Web版)により電子申告する準備が整いました。
次にe-Taxソフト(ダウンロード版)を利用する場合は、ソフトをインストールする必要があります。e-Taxソフト(ダウンロード版)のインストール方法を解説します。
e-Taxソフト(ダウンロード版)のインストール & 起動方法
ダウンロード前に、ダウンロードコーナーの利用規約に目を通しておきましょう。
STEP1 eTaxソフトのダウンロード&インストール
「eTaxソフトダウンロードコーナー」にアクセスします。
❶ 「e-Taxソフトのダウンロード」をクリック。
❷「e-Taxソフト (共通プログラム)インストーラ」をクリック。
「web_ntasetup」というファイルがダウンロードされますので、このファイルをダブルクリック等で開きます。
「次へ」をクリックします。
❶「使用許諾書の全条項に同意します。」にチェック → ❷「次へ」をクリック。
「次へ」をクリックします。
「インストール」をクリックします。
これで、eTaxソフト のインストールは完了です。
STEP2 eTaxソフトで使用する税目を設定する
法人税の確定申告を例にして説明します。
eTaxソフトを起動します。
eTaxソフトを起動すると、「バージョンアッププログラム接続確認」画面が表示されるので、「OK」をクリックします。
税目を追加する必要があるので、「追加」インストールをクリックします。
【法人税】
法人税の電子申告を行う場合は、「法人税・地方法人税」をクリックし、申告の対象となる事業年度分にチェックを付し、「インストール」をクリックします。
全力法人税が法人税のetaxソフト用ファイルを出力できるのは「平成31年4月1日以降終了事業年度分」以降です。
【消費税】
消費税の電子申告を行う場合は、「消費税」をクリックし、申告の対象となる事業年度分にチェックを付し、「インストール」をクリックします。
全力法人税が消費税のetaxソフト用ファイルを出力できるのは令和元年(2019年)10月1日以後開始の課税期間分です。
「実行する」をクリックします。
パソコンのデスクトップにeTaxソフトのショートカットが作成されます。
eTaxソフト(ダウンロード版)のインストールが完了しました。
STEP3 eTaxソフトの初期設定をする
次にeTaxソフトの初期設定を行います。
eTaxソフトを起動します。
初めて起動すると次の画面が表示されます。
「マイナンバーカードを利用しない」を選択し、「次へ」をクリックします。(法人はマイナンバーカード方式には対応していません。)
「利用者識別番号」欄に、開始届出書の提出で取得した利用者識別番号を入力し、「利用者名」欄に、法人名を入力し、「保存」をクリックします。
保存先を指定し、必要に応じてファイル名を変更し、「保存」をクリックします。
利用者ファイルが保存され、メイン画面が表示されます。
eTaxソフトを2度目以降に起動する場合は、次の画面が表示されます。
「過去に開いた利用者ファイル一覧から選んで開く」を選択し、一度開いたファイルを選択し、「OK」をクリックします。
これで法人税・地方法人税をeTaxソフト(ダウンロード版)で電子申告する準備の完了です。
長い長い設定お疲れ様でした。
この後は、eTaxソフトで申告書等を作成し、電子署名をし、送信するという作業をすることで電子申告をすることができます。
全力法人税で作成した申告書類をe-Taxソフトで電子申告する場合は、次のマニュアルにより、全力法人税からe-Tax用ファイルを出力 e-Taxソフトに組み込み 電子署名 電子送信と進んでいきます。

全力法人税を使用せず、e-Taxソフト(ダウンロード版)を駆使して申告書を作成する方のためにe-Taxソフトについての詳しい操作方法が載っている国税庁の公式ページのリンクを貼っております。
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