特定の居住用財産の買換え特例(措法36の2)適用のリスクー注意点ー

3000万円控除(措法35)+軽減税率の特例(措法31の3)と特定の居住用財産の買換え特例(措法36の2)とを比較したときに、税額では買換え特例が有利であったとしても、一概に買換え特例が有利だとは言い切れないことに注意が必要です。

買換え特例の適用には次の点を考慮に入れておく必要があります。

特例の内容

特定の居住用財産の買換え特例(措法36の2)の内容を確認しておきましょう。

本特例は、マイホームを売却し、その後代わりのマイホームを取得した場合で、一定の要件※を満たしたときは、売った金額が新たに買った物件の金額以下のときは、税金がかからず、売った金額が新たに買った物件の金額より高いときは、その差額に税金がかかるというものです。

※一定の要件の詳細についてはこちら

特定の居住用財産の買換えの特例の適用要件のすべて(措36条の2)|不動産譲渡所得
特定の居住用財産の買換えの特例の概要この特例は租税特別措置法第36条の2で規定されており、課税の繰り延べと一般的に言われている特例で、売却した後の新たなマイホームの購入、そしてその物件の売却までを考慮に入れなければならないちょっと厄介な特例...

特例適用の注意点

この特例は課税の繰り延べにすぎない

どういうことかと言うと、例えば次の例を見てみましょう。

① 1,000万円で購入したマイホームAを5,000万円で売った。

② 新たに7,000万円のマイホームBを買った。

③ マイホームBを8,000万円で売却した。

この特例を使うと

①は5,000万円ー1,000万円=4,000万円の利益

②で特例を適用して4,000万円(利益)< 7,000万円(購入金額)なので、利益が0になります。

ここで一件落着。とはなりません。

③の場面では、8,000万円ー7,000万円という式をたてたくなりますが、②で特例を適用したことにより、次のような式になります。

8,000万円ー(7,000万円ー4,000万円)=5,000万円

5,000万円が利益になります。

1度目の売買の時に特例で、無しにした利益4,000万円を2度目は差し引かないよ、というものです。要するに1度目に税金をかけるところを2度目にかけるという単なる課税の繰り延べというのがこの特例の本質になります。

したがってこの特例を適用するときは2度目に課税される可能性があるというリスクを考慮に入れておく必要があります。

ただ、この利益に対して課税されるかというとそうとも限りません。

条件に合致すれば、3000万円控除+軽減税率の特例を適用することもできますし、さらに買換える場合はこの特例をもう一度適用することも可能です。

また、2度目の売買の際に必ず値下がりするという予測がたてばリスクは軽減されるという点も考慮すべきかもしれません。

例えば、上の例で、③の際に3,000万円までの売却価額であれば利益は0になるので課税を繰り延べたとしても税金はかからない結果になります。

まとめ

以上のように買換え特例は買い替えた特例を将来どうするかという不確定要素により状況が変わりますので、3000万円控除+軽減税率とどちらを適用する?というケースでその損得をはっきりさせることが難しいのです。

前回売買の取得費を引き継ぐという面倒と用意する書類も3000万円控除+軽減税率よりも多くなるという面倒が重なりますので、その適用には以上のことを十分考慮して選択することが肝要となります。

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