特定の居住用財産の買換えの特例の適用要件のすべて(措36条の2)|不動産譲渡所得

住宅買換え

もくじ

特定の居住用財産の買換えの特例の概要

この特例は租税特別措置法第36条の2で規定されており、課税の繰り延べと一般的に言われている特例で、売却した後の新たなマイホームの購入、そしてその物件の売却までを考慮に入れなければならないちょっと厄介な特例です。

わかりやすいように単純化してその内容をみていきましょう。(単純化しているので譲渡費用などを考慮していないざっくりとした計算になっています。)

購入から売却、買換えまで

まず売却するマイホームの取得費を1000万円としましょう。

それを5000万円で売却したとします。

利益は4000万円ですね。通常はこの金額に税率をかけて税金を計算します。

しかし今回は買換えの特例なので買換え資産の情報を追加します。

売却額5000万円と手持ち資金2000万円で7000万円のマイホームを新たに買いました。

この特例を適用すると

4000万円(利益)- 7000万円(買換え費用)= 0(マイナスなので利益は0)

となり、利益がないので税金が課されないことになります。

一件落着、、、とはいかず課税の繰り延べなので次の段階があります。

買換え物件を売却

今度は買い換えたマイホームをまた売った場合について考える必要があります。

買い換えたマイホームを売却した場合、その前に売却した物件の取得費を引き継ぎます。

例えば買い換えたマイホームを8000万円で売ったとしましょう。

買い換えたマイホームの取得費は7000万円でしたので、利益は

8000万円 – 7000万円 = 1000万円

となりそうですよね。

違います。その前の物件の取得費の1000万円を引き継ぐので、今回の売買の取得費は1000万円になります。つまり

8000万円 – 1000万円 = 7000万円

と買い換えた物件の利益は7000万円になるのです。

前回の売買で4000万円については課税されていませんでしたが、ここで前回の分をまとめて課税されています。それゆえに課税の繰り延べと言われるのです。

イメージはつかめましたのでしょうか。

ややこしいですよね。

適用要件もややこしいです。

それでは、覚悟してこの特例を適用するための要件を以下見ていくことにしましょう。

特定の居住用財産の買換えの特例の適用要件とは

 売却した以前の住まいと新たに取得した住まいはいずれも国内に所在するものか

売却した以前の住まいと新たに取得した住まいはいずれも国内に所在するものである必要があります。

 売却した物件に住んでいたか

住んでいたかというのは、生活の拠点としていたか(居住の用に供していた)と言う意味で、次の点に留意してください。

  • 転勤、転地療養等の事情のため、配偶者等と離れ、単身で他に起居している場合であっても、その事情が解消したときは、その配偶者等とまた暮らすこととなる場合には、その配偶者等が住んでいる家は、その者にとっても、生活の拠点といえる。
  • 上記も含め、生活の拠点となる家が2以上ある場合には、その者が主として生活の拠点としている家のみが特例適用の対象となる。
  • この特例の適用を受けるためのみの目的で入居した場合は特例対象外。
  • 家屋の新築期間中だけの仮住まい等一時的な目的で入居したと認められる場合は特例対象外。
  • 別荘等の主として趣味、娯楽、保養の目的で有する場合は特例対象外。

 売却物件の所有期間が10年超か

売却した年の1月1日において所有期間が10年を超えていない場合はこの特例を適用できません。

平成28年に売却したのであれば、平成17年12月31日以前に取得した居住用の土地建物でないと該当になりません。

 転居した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却しているか

平成28年の売却の場合、平成25年1月2日以後に所有者が転居している場合にこの特例は適用できます。

 売却した住まいは家、土地共にあなたのものか

この特例は原則として居住用の家屋に適用され、その家屋の敷地は、特例の要件をクリアする家屋の敷地である場合にこの特例を適用することができます。

次の場合には注意が必要です。

 家屋と所有者と敷地の所有者が異なっている場合

家屋の所有者と敷地の所有者が異なっている場合、原則として敷地の所有者にはこの特例を適用することはできません。

ただし、次の要件を満たしていればこの特例を適用することができます。

1 譲渡資産の要件
  1. 家屋と土地等の所有期間が、譲渡した年の1月1日において10年を超えていること。
  2. 家屋の所有者と敷地の所有者の居住期間が10年以上であること。
  3. 敷地が家屋とともに譲渡されているものであること。
  4. 家屋にその家屋の所有者と敷地の所有者がともに居住していること。(住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡した場合は、その住まなくなった日の直前に住んでいたかで判断する)
2 買換資産の要件
  1. 買換資産(新たに取得した資産)が居住のための1の家屋又は敷地であること。
  2. 1.の家屋又は敷地は、おおむねそれぞれの所有者の売却物件の売却収入金額の割合に応じた持分を有していること。
  3. 1.の家屋又は敷地は、買換資産の取得期間内に取得されているものであること。
  4. 1.の家屋にその家屋の所有者と敷地の所有者がともに居住の用に供する期間内に居住を開始していること。
3 その他の要件
  1. 譲渡した家屋と土地等の所有者は、その譲渡の時から買換資産を取得した年の翌年の12月31日までの間、親族関係を有し、かつ、生計を一にしていること。
  2. 譲渡家屋の所有者と敷地の所有者が、ともにこの特例を適用して確定申告をしていること。

詳しくはこちらをクリックし、36の2-19を参照

 売却するために家屋を取り壊した場合

売却するために家屋を取り壊してその敷地を売却した場合は、次の要件をすべて満たしている場合に限り、特例の適用を受けることができます。

  1. 土地等は、その家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものであること。(平成28年に取り壊したのであれば、平成17年12月31日以前にその家屋を取得)
  2. 土地等の譲渡に関する契約が、その家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、転居の日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡したものであること(平成28年の売却の場合、平成25年1月2日以後に転居)
  3. その家屋を取り壊した後譲渡に関する契約を締結した日まで、貸付けその他の用に供していない土地等の譲渡であること

 住まいの敷地の一部を区分して売却した場合

所有者が現に居住している家屋の敷地の用に供されている土地等の一部を区分して譲渡した場合には、その敷地がその家屋の譲渡と同時に行われたものであるときは、この特例の対象となりますが、当該譲渡が当該家屋の譲渡と同時に行われたものでないときには、この特例の対象にはなりません。

 家屋の一部を売却して、その残った部分が機能的にみて独立した住まいと認められる場合

この場合、売却した部分についてはこの特例を適用することはできません。

詳細はこちらをクリックし、31の3-10をご覧ください。(36の2-23で準用されている)

 売却した家屋に10年以上居住していたか

住んでいない期間がある場合はその期間を除き、その前後の住んでいた期間を合計して判断します。

転勤、転地療養等の事情のため、配偶者等と離れ、単身で他に起居している場合であっても、その事情が解消したときは、その配偶者等とまた暮らすこととなる場合には、継続して住んでいたと認められます。

借家として住んでいた建物を買い取った場合は、借家の期間も居住期間に含まれます。

また、家屋の建替えのために、一時的に他の場所で起居したいた期間も居住期間に含まれます。

 店舗兼住宅等の場合、居住用部分のみに適用しているか

居住用住宅と店舗等が併用されているような家屋を売却した場合は、居住用部分のみが特例の対象になります。

なお、居住用部分が全体の90%以上であるときは、全体を居住用に使っていたものとしてこの特例を受けることができます。

詳細はこちらをクリックし、31の3-7と31の3-8をご覧ください。(36の2-23で準用されている)

 売却物件の譲渡価額は1億円以下か

売却価額が1億円を超えている場合は、この特例を適用することができません。

売却価額が1億円を超えるかどうかの判定は次のように行います。

  1. 売却物件が共有である場合は、各所有者ごとの譲渡対価により判定する。
  2. 売却物件が店舗兼住宅等及びその敷地である場合は、その居住部分に対応する譲渡対価により判定する。
  3. 前述の「家屋と所有者と敷地の所有者が異なっている場合」に該当する場合において、これらの者がともにこの特例を適用する旨の申告をするときは、その家屋の売却価額と土地等の売却価額の合計額で判定する。

また居住用家屋または土地の一部を譲渡した年の前後2年以内に譲渡した場合、1億円を超えるかどうかの判定は次のように行います。

  1. 譲渡した年の前後2年以内にある場合は、これらの譲渡対価の額の合計額により判定する。
  2. 贈与または著しく低い価額の対価による譲渡の場合は、その贈与や譲渡があった時の価額に相当すぐ金額により判定する。

 新たに取得した物件の床面積は50㎡以上か

この特例の適用には次の要件を満たしている必要があります。

  1. 1棟の家屋の床面積のうち居住用部分の床面積が50㎡以上であること。
  2. 1棟の家屋のうち、独立部分を区分所有する場合には、その独立部分の床面積のうち、居住用部分の床面積が50㎡以上であること。

 新たに取得した家屋が中古の建築物の場合は25年以内に建築されたものか

① 取得した家屋が中古の耐火建築物の場合

新たに取得した家屋が中古の耐火建築物の場合は、取得の日以前25年以内に建築されたものである必要があります。

耐火建築物とは、登記簿に記録された当該家屋の構造のうち建物の主たる部分の構成材料が石造、れんが造、コンクリートブロック造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造のものをいいます。

また、中古の耐火建築物で25年以内に建築されたものでなくても、建築基準法施行令第3章および第5章の4の規定または地震に対する安全性に係る基準に適合することが証明された以下の書類を確定申告書に添付することでこの特例を摘要することができます。

  1.  耐震基準適合証明書(建築士、指定確認検査機関または指定住宅性能評価機関が証する書類で、家屋の取得の日前2年以内にその証明のための家屋の調査が終了したものに限る。)
  2. 住宅性能評価書の写し(家屋の取得の日前2年以内に評価されたもので、耐震等級に係る評価が等級1、等級2または等級3であるものに限る。)
  3. 既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約(家屋の取得の日前2年以内に締結されているもの等一定の要件をみたすものに限る)が締結されていることを証する書類

② 取得した家屋が中古の耐火建築物でないの場合

平成30年1月1日以後に自宅を売却した場合については、新たに取得した家屋が中古の耐火建築物でない場合には、次の条件を満たす必要があります。

平成30年4月1日以後に取得されたものである場合は、取得の日以前25年以内に建築されたものである必要があります。

また、そうでない場合でも平成30年12月31日までに建築基準法施行令第3章および第5章の4の規定または地震に対する安全性に係る基準に適合することが証明された上記①で記した書類を確定申告書に添付することでこの特例を摘要することができます。

なお、平成29年12月31日以前に自宅を売却している場合は中古の耐火建築物でない、例えば木造の中古物件にはこのような制限はありません。

 新たに取得する敷地の面積が500㎡以下か

買い換える家屋の敷地の面積は500㎡以下である必要があります。

 以前の住まいを売った年の前年から翌年までに新たな住まいを取得しているか

以前の住まいを売った年の前後1年の間に新たな居住用物件を取得している必要があります。

 新たに取得した住まいに期限内に入居しているか

買い換えたマイホームには、一定期限までに住む必要があります。
買い換えた物件を住まいとして使用を開始する期限は、その物件を取得した時期により次のようになります。

  • 売った年かその前年に取得したときは、売った年の翌年12月31日まで
  • 売った年の翌年に取得したときは、取得した年の翌年12月31日まで

 売却先(買主)は第三者か

売却先(買主)が次に該当する場合は、この特例を適用することはできません。

  1. 譲渡者の配偶者・直系血族(祖父母、父母、子、孫等)
  2. 譲渡者の1.以外の親族で譲渡者と生計を一にしている
  3. 譲渡者の1.以外の親族で家屋が譲渡された後、譲渡者とその家屋に居住する者
  4. 譲渡者と婚姻の届出をしていないが、婚姻関係と同様の事情にある者及び婚姻関係と同様の事情にある者の親族でその者と生計を一にしている者(いわゆる内縁関係者等)
  5. 譲渡者から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者及びその者の親族でその者と生計を一にしている者(1.〜4.に該当する者を除く)
  6. 譲渡者、譲渡者の1.、2.及び3.に該当する親族、譲渡者の使用人及びその使用人の親族でその使用人と生計を一にしている者並びに4.及び5.に該当する者(以下これらを「同族関係者」といいます。)を判定の基礎となる株主等とした場合に次の要件に該当することとなる法人(会社以外の医療法人などを含みます。)
  • ⑴ 同族関係者の有する株式の数若しくは金額又は一定の議決権の数が発行済株式の総数   若しくは総額又は一定の議決権の総数の50%超である法人
  • ⑵ 同族関係者及び⑴の法人の有する株式の数若しくは金額又は一定の議決権の数が発行済株式の総数若しくは総額又は一定の議決権の総数の50%超である法人
  • ⑶ 同族関係者及び⑴・⑵の法人の有する株式の数若しくは金額又は一定の議決権の数が発行済株式の総数若しくは総額又は一定の議決権の総数の50%超である法人

 贈与・交換・出資・代物弁済により譲渡していないまたは贈与・交換・代物弁済により新たな住まいを取得していないか

贈与・交換・出資・代物弁済により以前の物件を譲渡している場合または贈与・交換・代物弁済により新たな住まいを取得している場合はこの特例を適用することはできません。

 この特例適用年分の前年・前々年の所得税の申告で住宅借入金等特別控除の特例を適用していないか

この特例を適用する年分の前年、前々年の所得税の申告で、今回売却した住まい以外の居住用の土地建物について、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除(ローン控除)または認定住宅新築等特別税額控除の特例を適用している場合は、この特例を適用することはできません。

例)これまで住んでいた家が売れる前に、新たなマイホームを購入してそちらに住宅ローンを適用していて、年をまたいで売りに出していた前の家が売れたようなケース

 この特例適用年分の所得税の申告で住宅借入金等特別控除の特例を適用していないか

この特例を適用する年分の所得税の確定申告で、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除(ローン控除)または認定住宅新築等特別税額控除の特例を適用している場合は、この特例を適用することはできません。

 この特例適用年分の所得税の申告で他の譲渡に関する特例を適用していないか

この特例を適用する年の確定申告で次の特例を適用している場合には、この特例を重複して受けることができません。

  1. 収用交換等により代替資産等を取得した場合の特例(措法33〜33の3)
  2. 収用交換等により資産を譲渡した場合の5000万円控除の特例(措法33の4)
  3. 特定の事業用資産の買換え(交換)の特例(措法37,37の4)
  4. 大規模な住宅等の造成のための交換等の特例(措法37の7)
  5. 特定普通財産とその隣接する土地等の交換の場合の特例(措法37の9の4)
  6. 平成21年及び平成22年に土地等の先行取得をした場合の特例(措法37の9の5)

 譲渡した年、前年、前々年に居住用財産に関する特例を適用していないか

この特例を適用する年分、前年分または前々年分に次の特例を受けている場合には、この特例を適用することはできません。

  1. 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の税率の特例(措法31の3)
  2. 居住用財産を譲渡した場合の3000万円控除の特例(措法35)
  3. 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法41の5)
  4. 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法41の5)

まとめ

以上のように居住用財産の特例を受けるための要件はかなり細かく決まっていますので一つ一つ確認し、誤りのないように慎重に検討しましょう。

ポイントは3000万円控除の特例と軽減税率の特例とを重複して適用できませんので、どちらか一方の適用になる点に注意が必要です。

執筆者 ジャパンネクス株式会社代表 元国税調査官 税理士 海野 耕作

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