会計ソフトが減価償却費をすべて自動でやってもらえると思っているかもしれませんが、会計ソフトによっては固定資産の減価償却の計算の場面で改定取得価額の入力を求められる場合があるので、知っておく必要がある知識です。
改定取得価額を考慮しない場合は、減価償却費の計算を誤る可能性があります。
改定取得価額とは
改定取得価額は、平成19年4月1日以降に取得した減価償却資産のうち、定率法で減価償却費を計算する場合に耐用年数の後半に影響の出てくる重要なものです。
改定取得価額を認識しないと減価償却が一生終わらないという事態になりますので、理解が必要です。
文章で説明すると理解が難しいと思いますので、表を使って説明します。
改定取得価額の具体的な算出
3,000,000円の耐用年数6年の車両を購入し、減価償却をするケース
決算期 | 期首
帳簿価額 ⑴ |
減価償却費算式 | 減価償却費
償却限度額 ⑵ |
期末
帳簿価額 ⑴ – ⑵ |
---|---|---|---|---|
①
平成27年3月 |
3,000,000 | 3,000,0000×0.333 | 999,000 | 2,001,000 |
②
平成28年3月 |
2,001,000 | 2,001,000×0.333 | 666,333 | 1,334,667 |
③
平成29年3月 |
1,334,667 | 1,334,667×0.333 | 444,444 | 890,223 |
④
平成30年3月 |
890,223 | 890,223×0.333=296,443
890,223×0.334 |
297,334 |
592,889 |
⑤
平成31年3月 |
592,889 | 890,223×0.334 | 297,334 | 295,555 |
⑥
令和2年3月 |
295,555 | 890,223 ×0.334 | 297,335
→295,554 |
1 |
順を追って説明します。
1 通常の計算
まず、上の表の①〜③は通常の償却費の計算です。
定率法は以下の式で計算します。
期首帳簿価額に平成24年4月1日以降に取得しており、耐用年数6年なので償却率0.333を乗じて計算していきます。
(参考)償却率表
したがって償却費の計算は上の表の①〜③のように計算されます。
ここまでは簡単ですね。問題はここからです。
2 償却保証額の計算
償却保証額というものを計算する必要があります。
具体的に償却保証額を求めると次のようになります。
保証率は償却率表から6年の場合は、0.09911となっています。
3,000,000(取得価額) × 0.09911(保証率) = 297,330
3 償却保証額と通常の償却費の比較
次に償却保証額と1で計算した通常の償却費を比較します。
両者を比較した結果、通常の償却費が、償却保証額を初めて下回った場合に注目します。
上の表で見ると、④の償却費が296,443で、償却保証額297,330を下回っています。
296,443(通常の償却費) < 297,330(償却保証額)
③では下回っていませんので、初めて下回りました。
その初めて下回った会計年度の前年度の期末帳簿価額を改定取得価額として認識します。
つまり上の表の③の期末帳簿価額890,223を改定取得価額とします。
4 その後の償却費の計算
初めて下回った会計年度から償却費は次の計算式で行います。
改定償却率も償却率表に記載があります。
耐用年数6年の改訂償却率は、0.334です。
改訂償却率は通常の償却率より0.001上がったことに気づくと思います。
具体的には上の④〜⑥のように同様の計算になります。
最後の会計年度だけ、備忘価額の1円を残します。
まとめ
改定取得価額は非常に重要な用語です。
これを認識せず、通常の計算を④以降も続けると期末帳簿価額に1未満の償却率を乗じるため、一生減価償却が終わらない状況に陥ってしまいますので、定率法の計算をする場合は必ず償却保証額と通常の償却費を比較し、通常の償却費が償却保証額を下回ったら改定取得価額を認識しましょう。
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