固定資産の耐用年数の決め方を図解でかんたん解説|元国税・税理士が解説

図解で簡単法定耐用年数適用の手順 耐用年数の決め方 

 

固定資産の減価償却を計算するときに必要となる「耐用年数」をどのように決定するかというと、実務では自社で合理的に見積もるなどということはせずに、税法で規定されている法定耐用年数により決定します。具体的には「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表第一から別表第六に購入した資産を当てはめて調べます。

耐用年数はなぜ法定耐用年数を適用するかについては次の記事で詳しく解説しています。

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耐用年数決定のために別表を見る前に実務ではいくつか確認すべき点があります。それを図解で説明していきます。

この記事を書いた人

税理士(元国税調査官)

税務署に12年間勤務。主に法人税の調査に従事。

現在は、クラウド税務ソフト「全力法人税」、「全力消費税」や「全力電子帳簿」等を提供するジャパンネクス株式会社の代表を務める。

税務署側の視点を交えながら、主に法人税・消費税について一般の方に向けて実務に直結した税務情報を分かりやすく解説します。

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  法定耐用年数の適用手順

耐用年数適用の図解 耐用年数の決め方 

これに従って一つ一つ順を追って確認をしていけば、「購入時に全額費用にできたのに、減価償却をしてしまっていた。」なんて間違いを防ぐことができます。

※別表第五と別表第六については多くの企業で関係しないことが多いと考えられるため、説明をよりわかりやすくするために割愛しています。

30万円未満は減価償却をする必要がない!?

図解の中に記載がありますが、資産を購入しても法定耐用年数を適用して減価償却する必要のない場合があります。中小企業の場合はこれに該当することが多いと思います。

例えば9万円でパソコンを購入した場合、それは消耗品として9万円全額を費用として計上できます。その条件は大きく3つに分けられます。なお、この取扱いは法人と個人事業主と両方に同様に適用されます。

  • 購入代金が10万円未満かどうか
  • 購入代金が20万円未満かどうか
  • 購入代金が30万円未満かどうか

(注1)「購入代金」は正確には税務用語では「取得価額」といい、購入代金に加え、引取運賃や購入手数料などその購入のために要した費用と、使用するために直接要した費用を合計した金額になります。(以下ここでいう「購入代金」は取得価額のことを意味しています。)

(注2)金額は、消費税について税込経理方式を採用していれば税込金額で判断し、税抜経理方式を採用していれば税抜金額で判断します。

1 購入代金が10万円未満

次のいずれかに該当する場合は、その全額がその資産の使用を開始した事業年度(個人事業主の場合は年)の費用になります。

なお、こちらの規定を適用した資産は、固定資産税として申告すべき償却資産の対象外となります。

  • 購入代金が10万円未満かどうか
  • 使用可能期間が1年未満であるもの

2 購入代金が20万円未満

購入代金が20万円未満であるものは、その資産の使用を開始した事業年度(個人事業主は年)から3年の間で、その購入代金に事業年度の月数/36(個人事業主は1/3)ずつを乗じた金額を均等に償却することができます。このような償却方法は「一括償却」と呼びます。

なお、こちらの規定を適用した資産も、固定資産税として申告すべき償却資産の対象外となります。

また、この規定を適用するには、法人の場合は確定申告書に「一括償却資産の損金算入に関する明細書」を添付する必要があり、個人事業主の場合は確定申告書に経費に算入した金額の掲載明細書を添付する必要があります。

一括償却については、次の記事で詳しく解説しています。

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3 購入代金が30万円未満

購入代金が30万円未満であるものは、30万円未満の資産のうち、その購入代金の合計金額が300万円に達するまでの金額を、その資産の使用を開始した事業年度(個人事業主は年)に全額費用として計上することができます。ただし、次の要件のいずれも満たしている必要があります。

  • 中小企業者(主に資本金1億円以下の中小法人と常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人事業主)であること
  • 青色申告書を提出している

なお、この規定を適用する場合には確定申告書に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」という書類を添付する必要があります。(個人事業主の場合は一定の要件の下で省略可。詳しくは国税庁ホームページをご参照ください。青色決算書への記載例の掲載もあります。)

また、こちらの規定を適用した資産は、固定資産税として申告すべき償却資産の対象となりますのでご注意ください。

この規定については、次の記事で詳しく解説しています。

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4 法定耐用年数の適用

上記1〜3に該当しない場合にいよいよ法定耐用年数を決定するという手順になります。

法定耐用年数は冒頭で説明した減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表に記載されていますが、ここから該当のものを見つけるのは容易ではありませんので、全力耐用年数というサイトを使って検索するという方法がおすすめです。

全力耐用年数は、資産名を入力すると耐用年数を瞬時に教えてくれますのでたいへん便利です。その他機械装置や建物に特有の検索にも対応し、中古資産の耐用年数計算まで簡単に計算できます。耐用年数に関するものはこのサイトで全てまかなえるといってもいいでしょう。

 元税務署員EYE

「減価償却」の部分で税務署の調査官はどこに注意するのでしょうか。

それは減価償却すべき資産を購入時に全額費用とすることなく、きちんと会計上の資産科目に計上しているかという点に尽きます。

例えば総勘定元帳の「消耗品」、「外注費」や「修繕費」などの科目の中から金額の少なくないもの(70万円から80万円以上が目安でしょうか)をピックアップし、資産に該当するものがないかという点を請求書などで確認するという作業をあまり時間をかけずに行います。

調査官は30万円未満の資産を費用に計上する処理をその調査対象者が選択している場合は購入代金が30万円未満のものはどんどん確認を飛ばしていくということになります。実は税務調査の場面では30万円未満の資産についてはあまり注意されていないのです。

 まとめ

資産を購入した場合には、それがそもそも減価償却するべき資産なのかを判断し、その次に購入した金額によって法定耐用年数を適用する必要があるかを判断するという手順になります。

ちなみに、上記の1から3はそういう処理ができるというもので、1から3の処理をせずに、すべて資産に計上して法定耐用年数で減価償却してもかまいませんし、法人の場合は減価償却しなくてもかまいません。これは申告する方の任意選択になっています。(個人事業主は強制で償却しなければなりません。)利益を出すために減価償却しないという場合を除けば、通常は1から3の処理を行って早期に費用化、事務簡略化を図るというのが一般的です。

税務調査の場面では30万円未満の資産についてはあまり注意されない点ではありますが、中小企業の方々の場合は該当することが多いところですので、適切に処理をして、税務調査の場合にこの部分はどんどん飛ばしてもらえるようにしましょう。

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