高額なパソコンを購入したとします。耐用年数を決定しようと考えた時、予備知識のない方の多くが機械装置に該当するとお考えになるのではないでしょうか。しかしながらパソコンは、実は機械装置には該当せず、器具備品に該当します。
償却が必要な固定資産を取得し、その耐用年数を決定する上でどのような資産が機械装置に該当するかという判断ができる必要があります。
なぜなら「機械装置」に当てはまるかどうかの判断をして、当てはまらなかった場合に初めて、それ以外の資産に該当するかどうかの判断に移ることになります。
法定耐用年数を決定する手順
法定耐用年数の決定は次の手順で行います。
画像下部「機械装置に該当するか」の判定で、機械装置に該当する場合は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第二に当てはめて判定します。機械装置に当てはまらなかった場合には別表第一に当てはめて判定します。
ちなみに別表第一には「建物」「構築物」「車両運搬具」「器具備品」「工具」などの一般的に多く使用される資産の耐用年数が網羅されています。
このように機械装置の場合は、別表第二で、それ以外は別表第一で判断することになってますので、機械装置がどういうものかを知っている必要があるのです。
固定資産の耐用年数の決め方については、次の記事で詳しく解説しています。
機械装置とは
それでは機械装置とはいったいどのようなものを指すのでしょうか。
機械装置が何かは決められていない!?
実は税法上機械装置がどのようなものかは規定されていません。
多くの減価償却に関する書籍でも明確に定義づけているものは見当たりませんので、残念ながらはっきり機械装置はこういうものですと言うことはできません。そうなると社会通念上で会社自身が判断し、税務当局から指摘を受けた場合に、その指摘を受け入れられなければ法廷で争うということになります。法律で規定がない以上税務当局にしても争ってみないとわからないわけです。
しかしながらそれでは今回の話は終わってしまいますので、ある判例を基に定義づけることにしてみましょう。
機械装置とは設備です
平成19年10月30日の不服審判所の裁決で機械装置がどのようなものかを示していますので、その裁決から抜粋すると、
機械装置とは、外力に抵抗し得る物体の結合からなり、一定の相対運動をなし、外部から与えられたエネルギーを有用な仕事に変形するもので、かつ、複数のものが設備を形成して、設備の一部としてそれぞれのものがその機能を果たすものをいう
このようにわかりにくいとはいえ、はっきり定義を言ってくれていますので、機械装置の定義はこちらを採用しておけば今のところ問題ないのではないかと思います。
ここで重要なのは「複数のものが設備を形成して」というところでしょう。したがって冒頭で取り上げたパソコンはこれに当てはまるはずはないと判断できます。機械装置を判断するスタンスとしては、「複数のものが設備を形成しているか」という点を軸にするということになると思います。
ただ、この定義が万能かといえばそうではないとも思います。
例えば、「トラッククレーン、ブルドーザー等のように人又は物の運搬を目的とせず、作業場において作業することを目的とするものは、「特殊自動車」に該当せず、機械及び装置に該当する」という規定があったりしますのでブルドーザーが設備か?と問われれば、一般的にはそうではないと言わざるを得ませんので、こういった特殊なケースにも気を配る必要はあります。
(参考)法人税法基本通達 2-5-5(「特殊自動車に該当しない建設車両等」)
機械装置の耐用年数の決定方法
機械装置がどのようなものかわかったので、次は耐用年数をどのように決めるかを見ていきたいと思います。
耐用年数は業種により判断する
固定資産の耐用年数は耐用年数表に当てはめて判定するのですが、機械装置は他の一般的な資産とは異なる耐用年数表(別表第二)に当てはめます。別表第二をご覧になっていただくと耐用年数が設備の種類に対応して記載されているのがわかると思います。
このように機械装置の場合は、いずれの業種用の設備として通常使用しているかにより判定します。
例えば、自動販売機を製造するための機械装置を購入した場合、別表第二の「19 業務用機械器具製造業用設備」に該当して7年ということになります。
何の業種に当てはまるかをシステムで検索しよう
ここで問題になるのが、その機械装置が何の業種用の設備なのか、という点です。
そこでこの判定のために「耐用年数の適用等に関する取扱通達の付表(付表八)」というものが用意されています。さて、内容を見てみると、、、見るのも嫌になってしまう量ですね。そこで「全力耐用年数」というツールを利用しましょう。
下の画像のように「自動販売機」と入力すると、一発で結果が表示されて7年ということがわかります。業種を選択するマストアイテムです。
「設備の種類」の判定は最終製品に基づき判定する
何の業種に当てはまるかは別表第二に当てはめて判定するというのがわかりましたが、会社内で複数の種類の製品やサービスを提供している場合にどちらの業種に当てはめればいいかわからないというケースがあると思います。その場合は、その設備から生産等される最終製品(サービスを含む)に基づき判定します。
例えば、前述した自動販売機を製造する工場に食堂があったとして、その食堂の厨房設備を一新したとしましょう。そうすると製造の方で判断するか飲食店の方で判断するか迷うと思います。この厨房設備は食事の提供を行うものですので、この場合の最終製品(サービス)は食事提供となります。全力耐用年数で、「食堂」と検索すると「8年」であることがわかります。
2種類以上のサービスを提供している場合
複数のサービスが一緒になって一つのサービスを提供している場合は、この一つのサービスの方の業種により耐用年数を判定します。
例えば、ホテルはクリーニング設備や浴場設備、厨房設備を使用して、トータルで宿泊というサービスを提供しています。このような設備はすべてホテルに関連する業種により判定します。例によって全力耐用年数で「ホテル」を検索すると、「10年」とわかりますので、これらすべての設備の耐用年数が10年であることがわかります。
まとめ
購入した固定資産が、機械装置に該当するかどうかという判定をまずするわけですが、それにはその固定資産が設備なのかということで判断するのでしたね。そして次に何の業種用の設備かを判断するという手順でした。
これまで解説してきた内容をベースにすることで、機械装置の判定をかなりスムーズにできると思います。あとは、経験ということになってこようかと思います。例えば生活の中でよく接する歯科医院で目にする歯科診療用ユニットなどは複数のものが設備を形成しているように個人的には感じますが、器具備品に該当します。設備というほどではないということなんでしょう。