法人の法定償却方法とは〜償却方法は自由に選べないの!?〜元国税・税理士が解説

鎖の上の鳥

 

個人事業主から法人成りした場合に、減価償却費の計算で償却方法を個人事業主でしていたように全部定額法にしてたら、法人の場合はそうでないことを後から知った!なんてことがあるかもしれません。

通常の会計ソフトでは償却方法を自由に選べるので、法人の税務でも自由にできるように錯覚してしまうこともあるかと思います。

ここで知っておきましょう。減価償却の償却方法は自由に決めることはできません!

減価償却の法定償却方法について、元国税調査官・税理士がわかりやすく解説します。

法定償却方法とは

実は法人税法では、資産の種類ごとにその償却方法が決められています。

その法律で決められている償却方法を法定償却方法と呼びます。文字どおり「律でめられている償却方法」です。

そしてその法定償却方法とは異なる償却方法を適用したい場合は、税務署に事前に届出をする仕組みになっています。

では具体的に法定償却方法がどのように決められているかを見てみましょう。

具体的な法定償却方法一覧

 

固定資産の種類  法定償却方法
法人 個人
建物 H10.3.31以前に取得 定率法 定額法
 H10.4.1以降に取得 定額法
建物付属設備・構築物 H28.4.1以前に取得 定率法
H28.4.1以後に取得 定額法
機械・装置、船舶、航空機、車両運搬具、工具、器具備品 定率法
無形固定資産・生物 定額法

※平成19年3月31日以前に取得した資産の法定償却方法は定率法を旧定率法に、定額法を旧定額法に読み替える。

このように令和3年現在法人が新しく減価償却が必要な固定資産を取得するとその償却方法は、建物と建物付属設備・構築物、無形固定資産・生物を除く日々の経済活動でよくありうるものは定率法であることがわかります。

法人の場合は、原則定率法で、建物のような大きなものを作るときには定額法になるという覚え方がよいかもしれません。

 

償却方法の届出

この法定償却方法とは違う償却方法で減価償却したい場合には、事前に税務署に一定の届出を提出し、承認を受ける必要があります。

初めて減価償却資産に対して減価償却をする際に償却方法を決定する時に行う届出は「減価償却資産の償却方法の届出書」です。

減価償却資産の償却方法の届出書の様式

 

減価償却資産の償却方法の届出書

 

詳しい手続きの方法等は次のリンクをご覧ください。

減価償却資産の償却方法の届出(国税庁HP)

提出期限については上記ページで次のように示されています。

減価償却資産の償却方法の届出提出期限

(減価償却資産の償却方法の届出の裏面)

設立第1期目の償却方法から変更する場合は、設立1期目の確定申告書の提出期限までに提出する必要があります。

一度適用された償却方法を変更する場合

「減価償却資産の償却方法の届出書」は最初に減価償却をする時に届けるものでしたが、今度は一度償却方法を適用していたものを変更するケースについてです。

このように減価償却資産の償却方法を変更しようとするときは、「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を提出する必要があります。

減価償却資産の償却方法の変更承認申請書の様式

減価償却資産の償却方法の変更承認申請書の様式

 

「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」は、新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに所轄税務署長に提出する必要があります。そして承認を受けなければなりません。

償却方法の変更申請は、その法人が現によっている償却の方法を採用してから相当期間(3年間)を経過していないとき、又は変更しようとする償却の方法によっては各事業年度の所得の金額の計算が適正に行われ難いと認められるときは、承認されませんのでご注意ください。

詳しい手続きの方法等については次のリンクをご覧ください。

減価償却資産の償却方法の変更手続(国税庁HP)

減価償却資産の償却方法の変更承認申請書様式と記載要領等(国税庁HP

 法定償却方法で償却しない場合はどうなるの?

法定償却方法で償却していない場合は次の計算式で一旦その差額を計算します。

法定償却方法によらない償却方法で計算した償却費 ー 法定償却費で計算した償却費 = A

Aがプラスの場合は所得金額に加算します。つまりその分は税法上費用になりません。

このように法定償却方法で計算した金額以上に償却費を計上するとその分税法上の費用にならないのです。

このような理由で大半の企業が償却方法を法定償却方法で償却しているのが現状です。

独自の損益分析によらなければならないよほどの理由がない限り、あえて償却方法を法定償却方法どおりにしないということはないでしょう。小規模法人であれば会計に労力をかけることなど皆無だと思います。

 

執筆者 ジャパンネクス株式会社代表 元国税調査官 税理士 海野 耕作

コメント

タイトルとURLをコピーしました