2020年から資本金1億円を超える法人の電子申告が義務化されています。
電子申告への圧力がじわじわと強くなってきている昨今、電子申告ソフトの使い勝手云々の話はあるかもしれませんが、時代がそのようになっている以上できるところからやっていく必要があろうかと思います。
今回は毎年1月31日が提出期限の給与支払報告書の提出をPCdeskにより電子申告する方法を解説します。また、PCdesk※で給与支払報告書を提出すると税務署へ提出義務のある源泉徴収票も同時に提出できますので、その方法も併せて解説します。
※PCdeskというのは、地方税に関する税務手続きを電子的に行えるシステムであるeLTAXに対応したソフトウェアです。
給与支払報告書と源泉徴収票は同じ内容ですので、これをPCdeskにも手打ちして、e-Taxソフトにも手打ちしてというのは労力の無駄と感じざるを得ません。
PCdeskを使って給与支払報告書と源泉徴収票を1度の手続きで両方終わらせてしまいましょう!
電子申告の解説の前に、まずは給与支払報告書について、基本的なところを確認しておきましょう。
1 給与支払報告書とは
1-1 給与支払報告書とは
給与を支払う事業主は、従業員の給与支払報告書を、翌年の1月1日時点で従業員が住む市区町村へ翌年の1月31日までに提出する義務があります。
つまり、給与を支払っている会社は、すべからく前年に支払った給与に関する給与支払報告書を今年の1月31日までに提出する必要があります。
1-2 給与支払報告書の提出義務者
給与支払報告書を提出しなければならないのは、その年の1月1日から12月31日までに給与を支払った事業主(法人・個人を問わない)です。
1-3 給与支払報告書を提出すべき従業員の範囲
その年中に給与の支払いを受けた従業員すべて。
パート、アルバイト、役員など退職者を含むすべての従業員が対象です。
1-4 給与支払報告書を提出すべき自治体
給与支払報告書はどこに提出すればよいのか。
それは、給与の支払いを受けている従業員の今年の1月1日現在の住所所在地の市町村に提出します。
前年の途中に従業員が引っ越した場合は、今年の1月1日現在住んでいる市町村に提出することになります。
従業員が複数いて、複数の市町村に住んでいるとすれば、その複数の市町村すべてに提出しなければなりません。
1-5 給与支払報告書の様式
1-5-1 給与支払報告書(個人別明細書)
(総務省HPから抜粋)
源泉徴収票の複写のような様式です。
個人別に作成します。
1-5-2 給与支払報告書(総括表)
(総務省HPから抜粋)
給与支払報告書(個人別明細書)を集計して表示する表紙のようなものです。
2 eLTAX(PCdesk)で給与支払報告書と源泉徴収票を提出する方法
給与支払報告書と源泉徴収票を電子申告で提出するにあたって、PCdesk(DL版)を使っていきます。
PCdeskとは、無料でご利用いただけるeLTAX対応ソフトウェアです。
2-1 PCdesk(web版)では給与支払報告書を提出できません。
PCdesk(DL版)は、利用できるようにするその準備が面倒なところがあるので、PCdesk(web版)で簡単にできないかを考えるところではありますが、PCdesk(web版)では、給与支払報告書を提出することはできません。
この執筆時点でPCdesk(web版)でできるものは以下のとおりです。
ということで選択の余地がありませんので、給与支払報告書を電子送信するためには、PCdesk(DL版)を使用していきます。
2-2 PCdesk(DL版)の利用開始までの事前準備
PCdesk(DL版)のセットアップがまだ済んでいない場合は、以下の記事を参照していただき、セットアップを済ませてください。
2-3 給与支払報告書を作成する
給与支払報告書を1件ずつ手入力で作成し、電子申告する方法を解説していきます。
10人程度の会社規模であれば、手入力でもそんなにストレスを感じることなく作成できるのではないかと思います。
PCdeskを立ち上げます。
⒈ プルダウンから申告する対象の会社を選択し、「選択」をクリックする。
⒉ 「申告に関する手続き」をクリックする
⒊ 「申告データの作成」をクリックする
「利用者情報ファイルのダウンロードを行います。」と聞かれるので「OK」をクリックする。
暗証番号を入力して「ログイン」をクリックする。
⒋ 「利用者情報確認」画面で提出先情報を確認し、「次へ」をクリックする
給与支払報告書の提出先が「提出先情報」画面にあることを確認します。
提出先の「申告税目」は「個人都道府県民税・市区町村民税(特徴)」です。
提出先がある場合は、「次へ」ボタンで進み、提出先がない場合は、「提出先変更」をクリックし、提出先を追加します。
追加の方法については、こちらをクリック。
⒌ 「科目選択」画面で「個人住民税」をクリックする
⒍ 「申告区分選択」画面で「給与支払報告書・源泉徴収票及び合計表」にチェックし、「次へ」クリックする
⒎ 「源泉徴収義務者情報登録」画面が表示されるので、必要事項を入力し、「次へ」をクリックする。
これ以降は給与支払報告書を実際に作成していく段階に入りますが、「手入力による作成」と「CSV取込による作成」の2つの方法があります。
提出する枚数が少ない場合や、給与支払報告書をcsv形式のファイルで出力できるツールやソフトがない場合は、PCdeskに手入力して給与支払報告書を作成することになります。
まずは、こちらの方法から解説し、次に「CSV取込による作成」の方法を解説していきます。
2-3-1 手入力により給与支払報告書を作成する方法
⒈ 「作成方法選択」画面で、「手入力による作成」を選び、「新規」を選ぶ。その他のフォームを入力し、「次へ」をクリックする。
⒉ 「給報・公的・源泉統一入力」画面で「作成区分」は「地方税」を選択し、「地方税提出先」を選択し、個人別明細情報を入力する。
2人以降は画面下部の「次頁」をクリックして追加していきます。
すべての従業員の入力が終わったら「次へ」をクリックします。
エラーがない場合は、個人別明細情報の登録を終了するか聞かれるので、「はい」をクリックします。
続いて、給与ソフトなどから給与支払報告書のデータをCSV形式で出力できる場合は、CSV形式のファイルをPCdeskに読み込ませることができます。提出枚数が多い場合などは有益です。
2-3-2 CSV取込により給与支払報告書を作成する方法
⒈ 「作成方法選択」画面で、「CSV 取込による作成」を選ぶ。その他のフォームを入力し、「次へ」をクリックする。
⒉「特別徴収税額通知受取情報」の確認がされるので内容を確認してよければ「はい」をクリックする。
⒊ 「給与支払報告書」ファイル(CSV)の選択を求められるので、該当のファイルを選択して「開く」ボタンをクリックする。
⒋ CSVファイルの取込みが完了したことを確認する。
ここで、データのチェックが行われ、エラーが返ってくる場合があります。(例:作成区分が正しくない明細があります。 確認してください。)
給与支払報告書CSVファイル読み込みでエラーが返ってきた場合の対処法
このような場合は、次の方法で解決することができます。
eLTAXが提供する「給報等統一CSVデータ作成支援ツール」を使用します。
次のページからダウンロードできます。
このツールはエクセルファイルで、「ファイル取込」ボタンを押して給与支払報告書のCSVファイルを選択して取り込みます。
「データチェック」を押すと、別のシートでエラー箇所が赤斑点しているので、その部分を修正してもう一度データチェックを押し、エラーが解消するまで修正を繰り返します。
そして最後に「ファイル出力」を押してPCdeskに読み込むことができるようになったデータを出力します。
このファイルを実際に使用したところ一筋縄ではいきませんでした。
私個人的には以下のように対応しましたので、参考までに紹介します。
・Macでは「ファイルの取込」ボタンを押しても何も起こらず、Windowsで操作したところ機能した。
・このファイルはデスクトップに保存し、ファイル名を5文字にしなければ「ファイル出力」を押したときに「実行時エラー’76’ パスが見つかりません。」というエラーが返ってきて出力できなかった。

ここまでで、給与支払報告書のデータが作成されました。
2-3-3 給与支払報告書を完成させる
⒈「申告データ作成対象一覧」画面で複数行ある場合は、「合計表入力」をクリックして、合計表のフォームに必要事項を入力して「次へ」ボタンをクリックする。
「B 源泉徴収票を提出するもの」の人員、支払金額、源泉徴収税額の欄が必須になっています。必要事項を入力して「保存」ボタンを押します。
⒉ e-Tax利用者識別番号を登録する
「e-Tax利用者識別番号」欄に値を入力し、「登録」ボタンをクリックする。
もう一度「申告データ作成対象一覧」画面で「次へ」ボタンをクリックします。
⒊ 申告データ作成結果一覧で作成状況を確認する。
申告データの作成がここで完了となります。
「次へ」ボタンをクリックして作成されたデータの内容を確認します。
⒋ 「申告データ表示・編集(本表)」画面で、作成された内容を確認し、「次へ」をクリックする。
作成されたデータを確認します。
自動で「給与支払報告書(総括表)」が作成されます。
給与支払報告書の明細を確認する場合は、❷「別表」欄をクリックすることで確認が可能です。
複数の自治体に提出する場合は❶「>>」ボタンを押して次の自治体に変更します。
ここまでで、給与支払報告書の作成と見直しが完了です。
続いて電子証明を付与していきます。
上記の画面で「次へ」ボタンを押すと署名付与画面に遷移します。
2-4 電子証明を付与する
1. メインメニューの「申告に関する手続き」をクリックする
⒉ 「申告データの電子署名」をクリック
⒊ 付与したい申告データを選択し、「署名付与」ボタンをクリック
⒋ 署名に使用する電子証明書を選択します。 基本的には「ICカード又はUSBトークンを利用」を選択し、「認証局サービス名」を選択し、「次へ」をクリック。
マイナンバーカードを設置し、電子証明書のパスワードを入力し、OKをクリック
電子証明書の内容が表示されるので、表示された内容を確認し、「次へ」をクリックして、署名を付与します。
2-5 申告データを送信する
最後に申告データを送信します。
⒈ 「申告メニュー」画面から「申告データの送信」をクリック
⒉ 一覧から送信を行う対象の申告データを選択し、「送信」をクリック
送信する手続きを選択して「送信」をクリックします。
ここで、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書」を選択すると、税務署にも法定調書を同時に提出することができます。
「送信」をクリックしてポータルサイトへログインしていない場合は、ポータルセンタログイン画面が表示されるので、ログインしてから操作を続けてください。
また、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書」を選択していると、e-Taxの利用者識別番号と暗証番号の入力を求められます。
申告データの送信が完了すると、申告データの送信結果が一覧表示されるので、送信結果を確認します。(送信結果一覧は、一度閉じると再度確認することはできません。)
これで給与支払報告書を各自治体に、源泉徴収票を税務署に提出ができました!
申告後に電子申告の内容を確認したい場合は、次の手順で確認します。
2-6 メッセージ照会
⒈ メインメニューから「メッセージ照会」をクリック
⒉ メッセージ照会メニューで「メッセージ照会(本人)」をクリック
⒊ メッセージ一覧(本人)画面で、確認したい申告データを選択し、「表示」をクリック
電子申告の履歴が確認できます。
送信した申告データの内容を確認したい場合は「照会」ボタンから確認することができます。
税務署にも提出している場合は、e-Taxにもメッセージが届いていますのでそちらも確認しておきましょう。
確認方法は以下のページをご覧ください。

源泉徴収票と給与支払報告書を同時に電子申告する方法は以上になります。
次に、事務の流れとして源泉徴収票以外にも法定調書がある場合に、それも電子申告したいところかと思います。
その方法を次の章で紹介します。
3 源泉徴収票以外の法定調書を電子申告する方法
提出する必要のある法定調書が源泉徴収票以外にもある場合は、それらの法定調書はどうやって電子申告すればいいのでしょうか?
その方法はこちらの記事で詳しく解説しています。

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