0からわかる個別注記表とは?簡単に作れるサンプル・記載例あり

0からわかる個別注記表の書き方!ひな形サンプルを編集するだけ 記載例あり

 

中小企業を対象として個別注記表を自ら作成する方向けに「個別注記表とは」から「作成の仕方」まで0からやさしく解説していきたいと思います。

個別注記表のイメージを持てるよう記載例をつけました。そしてWordの様式をダウンロードもできます。是非ご活用ください。

この記事を書いた人

税理士(元国税調査官)

税務署に12年間勤務。主に法人税の調査に従事。

税務署側の視点を交えながら、主に法人税・消費税について一般の方に向けて実務に直結した税務情報を分かりやすく解説します。

ジャパンネクス株式会社

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個別注記表とは

個別注記表はそもそも作成する必要があるのか

個別注記表とは、会社を経営する上で従う必要のある会社法と会社計算規則により作成を義務付けられている書類ですので作成する必要があります。

貸借対照表損益計算書、株主資本等変動計算書と併せて作成が義務付けられており、これらの書類をまとめて一般的に決算書と呼んでいます。

税務署に提出する必要があるのか

法人税法施行規則第35条では、主に貸借対照表損益計算書、株主資本等変動計算書、勘定科目内訳明細書、事業概況説明書が提出書類として挙げられておりますが、個別注記表は明記されていませんので、提出する必要がないと言えばないのかもしれません。

元国税調査官の私の経験では税務署の現場でも個別注記表がないからといって提出をお願いすることはありませんでしたし、今もしていないでしょう。

しかしながら多くの会社は添付していましたし、etaxソフトでも添付が可能となっており、会社法でも作成が義務付けられている書類で決算書を構成している書類であることから、提出するべきだと言えると思います。

ただ、この書類の作成方法がわからないために申告期限を過ぎてしまうなら、私なら作成しないで提出するでしょう。

ただ、銀行に提出するなら、、、

というように実務上はなんともふわふわした存在といえるのかもしれません。ただ、作成しておけば間違いはありません。

個別注記表はどういう性格なもの?

中小企業の会計に関する指針では次のように説明しています。

会社計算規則では、重要な会計方針に係る事項に関する注記等の項目に区分し て、個別注記表を表示するよう要求されている。また、それら以外であって、貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書により会社の財産又は損益の状態を正確に判断するために必要な事項は注記しなければならない。

大まかに言えば、個別注記表は貸借対照表、損益計算書と株主資本等変動計算書を補足する書類ということになります。

個別注記表の具体的な記載事項

個別注記表の具体的な記載事項 書き方

個別注記表に注記すべき事項については、以下の表のように19挙げられており、また会社の形態により注記を要しない項目が規定されています。

①会計監査人設置会社以外の株式会社(公開会社を除く。)・・・多くの中小企業

②会計監査人設置会社以外の公開会社・・・大会社

③合同会社、合資会社のような持分会社

(注記を要求される項目○、注記を要求されない項目×)

項 目①中小②大③持分
(1) 継続企業の前提に関する注記×××
(2) 重要な会計方針に係る事項に関する注記
(3) 会計方針の変更に関する注記
(4) 表示方法の変更に関する注記
(5) 会計上の見積りの変更に関する注記×××
(6) 誤謬の訂正に関する注記
(7) 貸借対照表に関する注記××
(8) 損益計算書に関する注記××
(9) 株主資本等変動計算書に関する注記×
 (10) 税効果会計に関する注記××
 (11) リースにより使用する固定資産に関する注記××
 (12) 金融商品に関する注記××
 (13) 賃貸等不動産に関する注記××
 (14) 持分法損益等に関する注記×××
 (15) 関連当事者との取引に関する注記××
 (16) 一株当たり情報に関する注記××
 (17) 重要な後発事象に関する注記××
 (18) 連結配当規制適用会社に関する注記×××
 (19) その他の注記

これだけ並べられると頭痛がしてくるかもしれませんが、これをお読みになっている皆さんは、上記①中小企業または③持分会社の方々のはずですので、主に関係するのは一般的には株式会社であれば(2)と(9)だけで、合同会社等の持分会社では(2)だけです。

個別注記表の記載例

先に記載例を見てしまった方が理解が早いと思いますので、まず見てしまいましょう。

株式会社の個別注記表の記載例(会計監査人設置会社以外の非公開会社)

個別注記表

自平成○○年○○月○○日 至平成○○年○○月○○日

1 この計算書類は「中小企業の会計に関する指針」によって作成しています。

2 重要な会計方針に係る事項に関する注記

 ⑴ 資産の評価基準及び評価方法

  ① 有価証券の評価基準及び評価方法

  •  法人税法の規定により、売買目的有価証券については、期末決算日の市場価格等に基づく時価法(売却原価は移動平均法により算定)によっています。
  •  その他の有価証券については移動平均法による原価法によっています。

  ② 棚卸資産の評価基準及び評価方法

    最終仕入原価法

 ⑵ 固定資産の減価償却の方法

  ① 有形固定資産

  •  定率法を採用しています。なお、平成10年4月1日以降取得した建物(附属設備を除く。)及び平成28年4月1日以降取得した建物附属設備並びに構築物については、定額法を採用しています。

  ② 無形固定資産

    定額法によっています。

 ⑶ 引当金の計上基準

  ①   貸倒引当金

  •  債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権について法人税法の規定による法定繰入率により、貸倒懸念債権については個別に回収可能性を勘案し,回収可能見込額を計上しています。

  ②   賞与引当金

  • 従業員の賞与支給に備えるため、支給見込額の当期負担分を計上しています。

  ③ 退職給付引当金

  • 従業員の退職給付に備えるため、退職金規程に基づく期末要支給額により計上しています。

 ⑷ その他計算書類の作成のための基本となる重要事項

  ① 消費税等の会計処理

    税込経理方式によっています。

  ② リース取引の処理方法

  •  リース物件の所有権が借り主に移転すると認められるもの以外のファイナンス・リース取引については、通常の賃貸借取引にかかる方法に準じた会計処理を行っています。

3 会計方針の変更

  •  棚卸資産の評価については総平均法による原価法を採用していましたが、当期から最終仕入原価法による原価法に変更しました。なお、この変更に伴う当事業年度の損益に与える影響は軽微です。

4 株主資本等変動計算書に関する注記

 ⑴ 当事業年度の末日における発行済株式の数

   普通株式  ◯◯○株

 ⑵ 当事業年度末日における自己株式の数

   普通株式  ○○○株

 ⑶ 当事業年度中に行った剰余金の配当に関する事項

決議年月日

決議機関

配当の総額

1株当たり配当金

基準日

効力発生日

平成○○年

○○月○○日

株主総会

◯◯◯◯円

◯◯円

平成○○年

○○月○○日

平成○○年

○○月○○日

 ⑷ 当事業年度の末日後に行う剰余金の配当に関する事項

決議年月日

決議機関

配当の総額

1株当たり配当金

基準日

効力発生日

平成○○年

○○月○○日

株主総会

◯◯◯◯円

◯◯円

平成○○年

○○月○○日

平成○○年

○○月○○日

合同会社ほか持分会社の個別注記表の記載例

続いて合同会社等の持分会社の個別注記表の記載例を示します。

持分会社の場合は株主資本等変動計算書に関する注記が必要ありませんので、ボリュームが少し減ります。

個別注記表

自平成○○年○○月○○日 至平成○○年○○月○○日

1 この計算書類は「中小企業の会計に関する指針」によって作成しています。

2 重要な会計方針に係る事項に関する注記

 ⑴ 資産の評価基準及び評価方法

  ① 有価証券の評価基準及び評価方法

  • 法人税法の規定により、売買目的有価証券については、期末決算日の市場価格等に基づく時価法(売却原価は移動平均法により算定)によっています。
  • その他の有価証券については移動平均法による原価法によっています。

  ② 棚卸資産の評価基準及び評価方法

    最終仕入原価法

 ⑵ 固定資産の減価償却の方法

  ① 有形固定資産

  •  定率法を採用しています。なお、平成10年4月1日以降取得した建物(附属設備を除く。)及び平成28年4月1日以降取得した建物附属設備並びに構築物については、定額法を採用しています。

  ② 無形固定資産

    定額法によっています。

 ⑶ 引当金の計上基準

  ①   貸倒引当金

  •  債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権について法人税法の規定による法定繰入率により、貸倒懸念債権については個別に回収可能性を勘案し,回収可能見込額を計上しています。

  ②   賞与引当金

  • 従業員の賞与支給に備えるため、支給見込額の当期負担分を計上しています。

  ③   退職給付引当金

  • 従業員の退職給付に備えるため、退職金規程に基づく期末要支給額により計上しています。

 ⑷ その他計算書類の作成のための基本となる重要事項

  ① 消費税等の会計処理

    税込経理方式によっています。

  ② リース取引の処理方法

  •  リース物件の所有権が借り主に移転すると認められるもの以外のファイナンス・リース取引については、通常の賃貸借取引にかかる方法に準じた会計処理を行っています。

3 会計方針の変更

  •  棚卸資産の評価については総平均法による原価法を採用していましたが、当期から最終仕入原価法による原価法に変更しました。なお、この変更に伴う当事業年度の損益に与える影響は軽微です。

これだけ見るとやはり難しそうに感じますが、この内容は記載事項をほぼすべてを網羅した場合で、中小企業の多くは関係しない項目が多いのではないでしょうか。

関係ないものを記載する必要がありません。例えば有価証券を持っていなければ有価証券の評価基準及び評価方法については記載する必要がありません。

それでは個別注記表の作成の仕方を1から解説していきます。

個別注記表の作成の仕方(書き方)

個別注記表の作成の仕方(書き方)

個別注記表の作成の仕方を解説します。

様式を用意しましたので、まずはひな形をダウンロードして、それを自社に合うように編集するという方法が効率的ですので、そのように進めていきます。

 書式のダウンロード

記載例の内容をそのままWord形式でダウンロードできるようになっています。

該当する方の様式(Word形式)の「ダウンロード」ボタンを押してお使いください。

これまで令和3年7月現在で両者合わせて18,000以上ダウンロードされています。

 様式の編集

ダウンロードした様式を叩き台として自社に合うように編集していきます。

基本的な流れとしては、一つ一つ内容を確認し、該当のないものは削除し、該当するが処理方法が違う場合は変更するといった手順で進めます。

それでは、記載例の一つ一つを確認していきましょう。

1 中小企業の会計に関する指針

1の「この計算書類は「中小企業の会計に関する指針」によって作成しています。」という文言ですが、この指針を一度も読んだことがない方は削除してください。

文言どおり、この指針に従っている場合のみ記載します。

ちなみに貸倒引当金の設定は必須ですし、固定資産の未償却残高がありながら赤字だからといって減価償却費を計上していなかったり、消費税の経理処理が税抜でなければその時点でこの中小企業の会計に関する指針に従っていないことになります。

2 ⑴①有価証券の評価基準及び評価方法

有価証券を保有していて、税務署に届出をしていない場合は、表現は記載例のままになります。

なぜなら税務上の法定評価方法が記載のとおりだからです。つまり税務署に有価証券の評価に関する届出をしていなければ前述の注記表の記載例のとおりに評価していなければならないのです。

有価証券を保有していなければ①の部分はすべて削除します。

2 ⑴②棚卸資産の評価基準及び評価方法

期末に棚卸資産※があり、税務署に届出をしていない場合は表現はそのままです。

これも法定評価方法が「最終仕入原価法」になっているからです。

※棚卸資産とは、次の3つすべてに当てはまるものをいいます。

  • 商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等の資産
  • 企業がその営業目的を達成するために所有
  • 売却を予定する資産

事務用消耗品費等の売却を予定していない販売活動及び一般管理活動で消費されるものも棚卸資産に含まれます。

法定評価方法が「最終仕入原価法」であるという話ついて詳しくは次の記事で説明しています。

実務での棚卸資産の評価方法は最終仕入原価法一択!元国税・税理士が解説
元国税調査官・税理士が解説。中小規模の法人では棚卸資産の評価方法は最終仕入原価法だけ知っていれば十分。税務署に事前に届け出を出していなければ最終仕入原価法で評価しなけれならない。そして最終仕入原価法が最も簡単に評価できる。

棚卸資産が期末になければ②の部分はすべて削除しましょう。

2 ⑵固定資産の減価償却の方法

固定資産を保有しており、税務署に届出をしていない場合は表現は記載例のままです。

これも届出がない場合の法定償却方法が記載のとおりなので、記載のとおりに償却する必要があります。

減価償却が必要な固定資産の法定償却方法について詳しくは次の記事で説明しています。

法人の法定償却方法とは〜償却方法は自由に選べないの!?〜元国税・税理士が解説
個人事業主から法人成りした場合に、減価償却費の計算で償却方法を個人事業主でしていたように全部定額法にしてたら、法人の場合はそうでないことを後から知った!なんてことがあるかもしれません。 通常の会計ソフトでは償却方法を自...

固定資産を保有していない場合は⑵の部分は削除します。

2 ⑶引当金の計上基準

引当金については法定繰入率ではなく、実績繰入率で求めている等記載内容と異なる箇所があれば訂正しましょう。

記載の引当金を計上していなければ削除しましょう。

2 ⑷その他計算書類の作成のための基本となる重要事項

消費税の部分はどの会社も該当しますので、ここは必ず記載することになります。

ちなみに消費税を納める義務がない場合は税込経理方式と決まっています。

リース取引がある場合は所有権移転外リース取引を売買として処理している場合はそのように変更しましょう。変更がなければ記載例そのままです。リース取引がなければ削除しましょう。

3 会計方針の変更

会計方針の変更があれば記載例を参考にその内容を記載してください。

4 株主資本等変動計算書に関する注記

合同会社や合名会社等の持分会社はこの注記は不要です。

⑴の部分は株式会社であれば必ず記載が必要になる部分です。

自己株式があれば⑵のように記載し、配当を行うのであれば⑶や⑷のように記載します。

まとめ

以上のように基本的には様式を削除・編集していけば個別注記表はそう難しくなく作成できるのではないでしょうか。

様式にはたくさん書いてありますが、例えば、有価証券や固定資産、引当金、リース取引がなければ、消費税の経理処理と普通株式の数だけ書いて終わりなんてこともざらにあるかと思います。

個別注記表は第三者に経理処理の内容をよりわかりやすく説明するものですので、同族で経営していて、銀行などに決算書を見せるわけでもなければ経営判断の資料となるものでもないので、重要度が落ちるように見えるかもしれません。

 

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