法人税の修正申告で絶対に押さえておくべき基本を元国税調査官が解説

法人税の修正申告をする時の基本的な考え方アイキャッチ

 

税務署から法人税の修正申告を提出するように言われた。

修正申告の仕方は教えてもらったけど、修正仕訳はどうやったらいいのか?

このように、修正申告が必要になった場面で、初めての場合は、どのように経理処理すればよいのかわからないと思います。

この記事では、法人税の修正申告での経理処理の基本を元国税調査官で税理士の私が、わかりやすく解説します。

 

まず第一に、法人税の修正申告が必要になった時の基本的な考え方として何より大事なことは

確定した決算は修正しない!修正するのは今現在進行している年度内で行う!
ということです。
どういうことかを詳しく解説します。
この記事を書いた人

税理士(元国税調査官)

税務署に12年間勤務。主に法人税の調査に従事。

現在は、クラウド税務ソフト「全力法人税」、「全力消費税」や「全力電子帳簿」等を提供するジャパンネクス株式会社の代表を務める。

税務署側の視点を交えながら、主に法人税・消費税について一般の方に向けて実務に直結した税務情報を分かりやすく解説します。

ジャパンネクス株式会社

海野 耕作をフォローする

1 確定した決算を修正しないとは

法人税の確定申告は、以下のように法人税法の条文で、確定した決算に基づき行うこととされています。

内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。

法人税法74条1項

確定した決算に基づくとは、たとえば株式会社の場合は株主総会というように法人形態によってそのしかるべき機関が承認した決算書類に基づいてという意味になります。

したがって、確定申告書というものはすべて確定した決算に基づいて提出されているものなので、その確定申告の内容を修正する場合でも、そのすでに確定した決算の内容は修正しません。

それでは、どのように修正するのかというと、確定していない現在申告中の決算で修正することになります。

 

2 どのように修正するのか

法人税が修正申告となった場合、どのように修正内容を決算に反映させればよいのでしょうか。

 

2-1 法人税の申告と決算書の修正内容の認識の違い

決算書にその修正内容を反映するにはどうすればよいかというと、前述のように確定した決算の内容に変更を加えることはないので、今進行している年度で修正することになります。

具定例で説明します。
例えば2024年度(12月決算)に売上の計上もれがあったとします。

先に、税務署に提出する修正申告書のことに触れておくと、売上の計上もれは、2024年度分の当初申告の内容に、計上もれの金額を含めて所得金額と税金を計算し直すことになります。
これはあくまで法人税の確定申告を修正した修正申告の話です。

次に決算書について考えてみます。
決算書にこの売上計上もれをど反映させるためには、この売上高の仕訳を仕訳帳に記録すればOKです。
では、この仕訳をいつの日付で記録するかというと、2025年度の開始日です。これで、2025年度の決算に反映されたことになります。

まとめると、2024年度に売上に計上すべき分が漏れていた場合、法人税の修正申告では2024年度に含めて計算し、決算書では2025年度にその売上分を反映させるということになります。

2024年度 2025年度
法人税の申告 修正申告を作成
(売上計上もれを認識)
決算に反映 この年度の決算書に手を加えない 売上高の計上もれを2025年度に計上

 

2-2 修正申告の場合の仕訳

決算書に反映させるために、実際にどのように仕訳するかというと、
売上高が1,000,000円分計上もれになっていた場合、以下のように「前期損益修正益」という勘定科目を使って仕訳します。

【1,000,000の売上計上もれのケース】

日付 借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
2025.1.1 売掛金 1,000,000 前期損益修正益 1,000,000

※消費税の税区分は、売上高が課税売上10%に該当するのであれば、前期損益修正益も同じ税区分で記録します。

減価償却費が多く計上されていたという場合は、以下のような仕訳になります。

【500,000の減価償却費が過大であったケース】

日付 借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
2025.1.1 建物 500,000 前期損益修正益 500,000

逆に売上高と同時に原価も計上もれであった場合のように、費用科目が課題であったケースでは、以下のように「前期損益修正損」を使って仕訳します。

【400,000の仕入高が計上もれのケース】

日付 借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
2025.1.1 前期損益修正損 400,000 買掛金 400,000

なお、損益科目は、「前期損益修正益」「前期損益修正損」に集約されてしまうので、摘要にどのような取引であるかを記載するよう必要があります。

 

3 そもそも修正申告とは

ここで、よくある勘違いとして、確定申告の内容に誤りがあった場合は、すべて修正申告になると思ってしまう誤りがありますので、そもそも「修正申告」とはどのような手続きをいうのかを確認しておきましょう。

 

3-1 修正申告とは

修正申告とは、税額を少なく申告していた場合のみ行う手続き。
税額を少なく申告していたとは、文字通りのケース以外にも、還付金額が多すぎた場合にも当てはまりますし、繰越欠損金が多すぎた場合にも当てはまります。
所得金額が少なかったケースということもできます。
つまり、自分に誤って有利になっている場合のみ「修正申告」という手続きを踏むことになります。
それでは逆に自分に不利になっている場合はどういう手続きをふめばよいのでしょうか。
「更正の請求」という手続きにより修正を行うことになります。

3-2 更正の請求とは

税額を多く申告していたり、還付金が少なかったり、繰越欠損金が少なく申告していたという場合にそれを税務署に対して修正を求めるのは、「更正の請求」という手続きをふみます。

具体的には、「更正の請求書」という書類を提出します。

様式は以下のページで取得できます。

法人税及び地方法人税の確定申告に係る税額等についての更正の請求(国税庁HP)

更正の請求を行うときも、確定した決算を修正しないのは、修正申告と同様です。

 

4 まとめ

ここまでの内容をまとめてみましょう。

法人税の修正申告が必要になった場合、確定した決算書は遡って絶対に修正はしないということは覚えておきましょう。

修正をするのは、現在進行中の年度で行います!

決算に反映させる修正仕訳には、「前期損益修正益」という勘定科目を使います。費用が計上漏れになっている場合は「前期損益修正損」を使います。

そして最後に修正申告は、税額が少なくなっていた場合にのみ行う手続きであることも覚えておきましょう。税額が多くなっていた場合は、「更正の請求」という手続きを行います。

 

知識0でも自分でできる!法人税申告書作成ソフト「全力法人税」

中小企業向け法人税申告書作成ソフトの特徴

 ・元国税・税理士が作った
 ・登録ユーザー22,000社を突破
 ・法人税の知識不要で誰でもできる
 ・クラウド法人税ソフトで業界最安値
 ・無料でほぼすべての機能を利用できる
  (一部の申告書類の出力を除く)

クラウド税務ソフトで初めて自力申告を可能にした元祖「全力法人税」であなたも税理士なしで法人税の申告書をかんたんに作成できます!

法人税法人税その他

コメント

タイトルとURLをコピーしました