帳簿は間違えてもいい?税務調査で誤りすべてを修正申告するわけではない

確定申告 青色決算書

間違って帳簿をつけてしまうことが怖いのはなぜ?

事業を営んでいる中で帳簿をつけていらっしゃるみなさんは、日々帳簿をつけるときに「間違えてはいけない!」という強い意識をもってされているのではないかと思います。それぞれの立場によってその帳簿に対して負っている責任も様々だとは思いますが、正しく記帳しなければいけないという意識は、例えば家計簿をつけることに比べればずっと強いのではないかと思います。

それはなぜでしょう。

帳簿をつける目的としては、経営成績や財政状態を明らかにすることや、税法や会社法で記帳義務が課せられている、金融機関から決算書の提出を求められるといったことが挙げられると思います。

その中でも帳簿をつける一番の理由は、儲けがどの程度あるか、今資金がどの程度あるのかといった事業を進めるにあたって知っておきたいこと、言ってしまえば家計簿をつける目的と同じくお金がどう入ってきて、どう出ていったのかということが知りたいわけです。

そうであれば、帳簿を誤ってつけてしまうことにどうしてビクビクしてしまうのでしょう。

それは後日その帳簿を元に申告をして税金を払うから、という理由が一番大きいのではないしょうか。間違っていれば、さらに税金を払い、罰則や延滞金を払わされてしまうという不安があるからではないでしょうか。

逆に言えば間違っていても税金を追徴されることがないとわかっていれば、そんなにビクビクせずに、効率的に帳簿をつけられるのではないでしょうか。

帳簿は間違えていても大丈夫なの!?

例えば、こんなとき、あなたならどうしますか。

経理処理の方法が二通りあり、今記帳しようとしている取引がどちらで経理すべきかを税法を調べたり、書籍を調べたり、ネットで調べたりと色々調べてみないとわからないとしましょう。これを処理するにあたって一方の経理処理を行った場合と他方の経理処理を行った場合で所得金額にして10万円しか変わらないとします(税額ではなく、所得金額で10万円です)。それでもあなたはどちらが正しいかを労力をかけてすべて調べ尽くしますか。

例えば、法人税で考えて、令和2年時点で法人税率が15%(所得金額800万円以下)だとすれば、この経理を誤って追徴される金額は、所得金額の100,000円×15%=15,000円です。加算税が10,000円×10%=1,000円。5,000円未満不徴収なので0円、延滞金もこの金額ならかかりません。

となるとトータルで15,000円の追徴になりますが、税務署が税務調査にきて、調査官がこの処理は誤りであると言ったとしましょう。

しかしながら、調査官が調査を終えるにあたってこの誤りについて修正申告の提出を求める(簡単にいうと、処理を正して申告をし直し、正しい税金を納めるよう指導する)ことはまずありません。

この時の調査官の判断について詳しく見てみることにしましょう。

税務署は申告に誤りがあったとしてもすべて修正申告を求めるわけではない

税務署の調査官は誤りを見つけても、そのすべてについて修正申告を求めるかというと、そうとは限りません。

それでは、調査官の修正申告を求めるか求めないかの判断材料について詳しく見ていくことにしてみましょう。税務調査官の頭の中を覗いてみましょう。

少額な誤りは指摘をしない

絶対的な側面から

第一に、小さな誤りを訂正させることは基本的にはありません。

どの程度が小さい誤りなのかは明確な基準はありません。はっきり言って調査官の判断です。ただ調査官の判断といっても税務署の中でこれまで醸成されてきた不文律らしきものを踏襲していることには違いありませんので概ねの基準はあると言えます。

それに加えてその時のその調査官を取り巻く種々の環境が影響するとも言えると思います。私個人的には、調査においては所得金額にして30万円程度の誤りはまず修正申告を求めることはないと言っていいと思います。逆に70万円以上になってくると指摘は免れないのではと思います。これもその調査の状況によって変わってくるでしょう。

相対的な側面から

例えば、調査において、複数の指摘があり、その中に多額な不正計算があったとしましょう。その全貌を解明して、調査対象者にその事実を認めさせるということがときにかなり困難を伴うことがあります。そういう場合には相対的にその他の不正でない誤りは税務署側からすると小さな存在になってきます。そうなると上の例で挙げた70万円というものも指摘を免れるということもあり得ます。税務調査官が不正を認めさせる際の交渉材料にしよう、ということも起こり得ます。こちらは目をつぶるので、この不正計算は認めなさいと言ったように。

結果の出ていない調査官は厳しい場合も、、、

調査官の評価は調査の内容いかん

調査官の人事評価の最も大きな要素は、言わずもがな、調査の結果です。

ちなみに税務署は他の省庁であるように試験を受けて昇進するということはありませんので、調査官が出世するかどうかは上司の評価に負うところが大きいと言えます。そうなれば調査の結果いかんによってその評価が変わってくるのは当然と言えるでしょう。

ちなみに主な評価材料としては、修更正割合や重加割合そして増差金額この3つが挙げられます。

  1. 修更正割合・・・修正申告を提出させた、更正処分を行った件数/調査件数
  2. 重加割合 ・・・重加算税(不正計算に対する加算税)を適用した件数/調査件数
  3. 増差金額 ・・・調査で指摘して増えることとなった所得金額

調査官のそのときの調子は?

以上3つの材料から見て、調査に来た調査官が良い成績を保っていれば、所得金額で40万円くらいの指摘事項に目くじらを立てることはないかもしれません。しかし、修更正割合が悪い調査官は40万円をみつければ、その割合を上げることができるので喜んで指摘をしてくるかもしれません。

以上述べたように、指摘されない金額というのは種々の理由から変わってくるということにはなりますが、ここで重要な点は調査において誤りがすべて指摘されるわけでないということを知ることです。

申告をする上での考え方

記帳は効率的に

このように、帳簿や申告の誤りすべてがすべて修正申告しなければいけない訳ではないわけです。もちろん正しく記帳しようという考え方の下で帳簿をつけるということは大前提です。しかしながら、すべてを正しく記帳するということはこだわればその労力は並大抵ではなくなります。資金が潤沢にあり、経理担当の従業員も十分に雇えるし、税理士に対して顧問料も十分に支払えるのであったらそれでいいかもしれません。

しかしながらそのような会社さんはほんの一握りだと思います。多くの企業は、本業で精一杯で経理まで手が回らない、税理士への顧問料の支払いもギリギリの状況という中で日々営業されていることと思います。であるなら、記帳や申告においてもメリハリをつけ、効率的に行うということを考えるべきです。

判断に迷うときはこれを誤ることでどのくらいのリスクがあるのかということを考えましょう。そのリスクの大小によって時間のかけ方を変えるべきです。小さな問題であれば、税務署でも無視するところはその小さな問題という枠をでることのない範囲で最善の判断をすればよいのではないでしょうか。

税務署から追徴される金額の多くは元々支払うべきお金

最後に、税務署から調査によって追徴される金額は、所得税や法人税等の税額、それに罰則的な意味合いの加算税、延滞税になりますが、その多くを占める税額部分は元々支払うべき金額だったわけです。判断に迷って誤った処理をしていたとして、正しい内容を教えてもらえるわけです。わからないところはとりあえずそのときの最善の処理をして、誤っていたら後日調査で正しい処理を教えてもらい、その正しいところの金額を改めて支払うという考え方も十分ありだと思います。しかしそれには誤った際の加算税や延滞税を許容できる範囲で、ということになろうかとは思いますが。

加算税や延滞税の詳しい説明は「税務調査で課せられる加算税・延滞税の計算方法のすべて」が参考になるかと思います。

所得税の確定申告だってすべてを修正するわけではない

税務署は調査において誤りのすべてを指摘して修正を求めるわけではないということを知っていただけたと思います。

これは所得税の確定申告にも言えることです。1年のうち1、2ヶ月の間に膨大な数の申告書が提出されます。職員の数は限られています。果たして誤っているものをすべて指摘できるでしょうか。それをやり始めたら終わらないうちに次の確定申告になってしまうのではないでしょうか。じゃあどのくらいの誤りは見逃されているのかということについては…これ以上は多くを語らないようにしたいと思いますが、これまで述べてきたことからお察しいただければと思います。所得税の確定申告に関してもこれまで述べてきたことが当てはまるということです。

申告においてもメリハリをという考えは適用しうると思います。

執筆者 ジャパンネクス株式会社代表 元国税調査官 税理士 海野 耕作

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