法人税の確定申告書の提出期限までに提出することができず、期限後に申告した場合どのようなペナルティがあるのでしょうか。
元国税調査官・税理士が解説します。
期限後申告で課されるペナルティとは
大きく2つのペナルティが課されます。
- 無申告加算税(加算金) : 遅れた罰金
- 延滞税(延滞金) : 申告期限から納めた日までの利息相当分
この2つのペナルティについて詳しく見ていくことにしましょう。
無申告加算税(加算金)とは
無申告加算税(加算金)は、期限内に納めなかった罰金という意味合いで課されます。
国(税務署)が課す罰金を無申告加算税と呼びます。また、地方(都道府県)が課す罰金を不申告加算金と呼びます。
無申告加算税の計算方法
無申告加算税は、納付すべき法人税(地方法人税を含む)額に対して5%の金額が課されます。
例)
納める法人税額 100万円 × 5% = 5万円
ただし、調査を受けたことにより期限後に申告書を提出した場合には、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の金額となります。
なお、平成29年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについては、調査の事前通知の後にした場合は、50万円までは10%、50万円を超える部分は15%の金額となります。)
(注) 期限後申告であっても、次の要件を全て満たす場合には無申告加算税は課されません。
・その期限後申告が、法定申告期限から1月以内に自主的に行われていること。
・期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合に該当すること。
一定の場合とは、次の(1)及び(2)のいずれにも該当する場合をいいます。
(1)その期限後申告に係る納付すべき税額の全額を法定納期限(原則期末の2ヶ月後)までに納付していること。
(2)その期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税又は重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと。
(注は国税庁ホームページより)
不申告加算金の計算方法
不申告加算金は、法人の事業税のみに対して都道府県が課す罰金で、無申告加算税と同様の方法で計算されます。
原則、納付すべき事業税額の5%の金額が課されます。
ただし、調査を受けたことにより期限後に申告書を提出した場合には、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の金額が課されます。
延滞税(延滞金)とは
延滞税(延滞金)とは
お金は銀行に預けていれば利息を生むように、持っているだけである一定の割合で増えていくものです。国や自治体が期日に手にしていれば増えていったものを、期日に手にしなかったためにその分の金額を手にし損なったわけなのでその分の金額を支払いなさいという利息の意味合いで課されます。
国(税務署)が課すものを延滞税と呼び、道府県民税や市民税、事業税等の地方税に対して課すものを延滞金と呼びます。呼び名は異なりますが計算の方法は基本的には同じです。
延滞税(延滞金)の計算方法
納付すべき税額 × 延滞税の割合 × 未納の間の日数 ÷ 365日
延滞税の割合には2種類あります。
1. 納付期限(期限後申告提出日)までの期間と納付期限の翌日から2ヶ月※間の割合・・・表の1
2. 1.より後の期間(申告期限の翌日から2ヶ月※後の翌日以降の期間)・・・表の2
※ 地方税で課される延滞金の場合は1ヶ月
期間 | 1 | 2 |
---|---|---|
平成28年の間 | 2.8% | 9.1% |
平成27年の間 | 2.8% | 9.1% |
平成26年の間 | 2.9% | 9.2% |
平成25年〜平成22年 | 4.3% | 14.6% |
平成21年の間 | 4.5% | 14.6% |
延滞税の割合は毎年更新されますのでこちらのページ(国税庁ホームページ)でご確認ください。
なお、延滞税(延滞金)は新たに納めるべき本税の額に対してのみかかりますので、加算税(加算金)にはかかりません。
例) 申告期限(H26.12.31)の6ヶ月後申告書を提出して1,000,000円をその日に納めたケース
1,000,000 × 2.8% × 181日 ÷ 365日 = 13,800円(100円未満切り捨て)
※納付期限は期限後申告書の提出日なので、期限後申告書の提出から2ヶ月を過ぎると上の表の2の利率が課されます。したがいまして、期限後申告の場合は、納めるときに申告書を提出すべきということになります。
期限後申告でもペナルティが課されないケース
ここまでの内容を追ってくると、申告書を期限内に提出しないと必ずペナルティが課されるように思えてくるかもしれませんが、実は全部が全部そうなるとは限りません。
なぜなら、加算税(加算金)、延滞税(延滞金)ともに税額に一定の率を乗じてペナルティを算出します。したがいまして、税額がなければペナルティは発生しません。
繰り返しますが、赤字や欠損金控除により税額が発生しない場合は、期限後に申告してもペナルティは課されないのです。
※地方税の均等割には延滞税が課せられます。ただし、均等割が大きくなく、期限後すぐに納付すれば1,000円未満不徴収※2にひっかかる可能性もあります。
※2 少額不徴収制度
加算税は5,000円未満、加算金は1,000円未満、延滞税は1,000円未満は徴収されません。
したがいまして、税額が発生していても、金額が少ない場合は加算税、加算金、延滞税が課されないケースもあります。
しかしながら、赤字の場合は期限後申告でいいやという気持ちでいると、2期連続の期限後申告は青色申告の取消要因になりますので注意が必要です。
青色申告の取り消しについての詳細は次の記事で解説しています。
まとめ
期限内に申告するに越したことはもちろんありませんが、もし期限後申告になってしまった場合でも、その場合のペナルティを把握しておけば、必要以上に恐れることなく、冷静に対応できるのではないでしょうか。
申告期限に間に合わない場合は、延滞税率の関係で申告書の提出に合わせて納税するようにすること。税額が発生しない場合はペナルティが課されないということがポイントです。
執筆者 ジャパンネクス株式会社代表 元国税調査官 税理士 海野 耕作
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