
法人の青色申告って難しいんじゃないかと思っていませんか?
そんな方に朗報です。
実は、令和2年の国税庁の統計で、国内の全法人のうち99.2%が青色申告という発表がされています。

(国税庁令和2年会社標本調査から抜粋)
99.2%もの法人が青色申告になっているものが難しいでしょうか?
そうです、青色申告法人になることは難しいことではありません。もちろんあなたの法人もこの記事のとおりに手続きを進めれば当然青色申告の承認を得ることができます。
そしてこれだけ多くの法人が青色申告するのは、簡単であるという理由以外にも、青色申告するメリットがとても大きいという理由があります。
是非元国税調査官で税理士の私が解説するこの記事を読んで、手続きだけでなく、青色申告法人のメリットや青色申告となるための要件、そして取り消しとなる事由等法人の青色申告について必要な事項を余すところなく、しかもわかりやすく解説しておりますので、是非法人の青色申告をマスターしてください。
目次
1 法人の青色申告とは
法人の青色申告とはどのような制度なのか、というイメージを持てるよう冒頭でその概要から説明していきます。
1-1 法人の青色申告の概要
法人の青色申告とは、複式簿記に基づいて決算を行うことで、白色申告と比べて節税面で大きなメリットがある制度です。
税務署に確定申告を提出するにあたって、申告には青色申告と白色申告の2種類が存在します。
法人でなく個人では、毎年3月15日までに確定申告する所得税の申告に青色申告があることはよく知られていますが、法人にも青色申告が存在します。
法人は、会計期間が終了したら、決算を確定し、会計期間終了から原則2ヶ月以内に法人税の確定申告書を所轄の税務署に提出する必要があります。
白色申告と比較して労力としては大きく変わらないにもかかわらず大きなメリットが得られるので、青色申告は、法人を設立したら必ず行うべき手続きだ
と声を大にして言います。
1-2 個人の青色申告と法人の青色申告との違い
個人事業主から法人成りしたケースでよくある間違いがありますので、ここで確認しておきます。
よくある間違い
- 10万円控除や65万円控除はない
- 青色申告決算書という様式はない
所得税の青色申告には10万円控除や65万円控除という特典がありますが、法人にはありません。
また個人事業主が青色申告の場合は、「収支内訳書」ではなく「青色申告決算書」を提出する必要がありますが、法人に「青色申告決算書」というものはありません。
個人事業主が青色申告の場合は、青色申告決算書を提出する必要があります。
所得税の青色申告決算書
所得税の場合は、青色申告は青色申告決算書を提出し、白色申告は収支内訳書を提出しますが、法人の場合は、様式は同じで、青色申告と白色申告の区別は、下の画像のとおり法人税の確定申告書の表紙的な意味合いのある「別表1」という書類の右上の表示で行います。
このように所得税の場合は、青色申告と白色申告で様式に大きな違いがありますが、法人税の場合は、様式自体に大きな違いはありません。
個人事業主であった方が、法人の青色申告にあるのではないかと思ってしまう点について確認したところで、これから法人の青色申告の本題に入っていきたいと思います。
2 青色申告法人の4大メリット
冒頭で、全法人のうち実に99.2%が青色申告であることをお伝えしました。
なぜ法人のほとんどが青色申告するのでしょうか。
それはやはり前述のとおり、青色申告法人になると、多くの場合、それほどの負担なくかなりの節税効果が得られるからです。
それでは青色申告法人となるメリットからみていくことにしましょう。
どの規模の法人にも関係する青色申告法人の主なメリットとしては、以下の4つが挙げられます。
- 欠損金(赤字)を最長10年間繰り越せる
- 欠損金の繰戻し還付が受けられる
- 30万円未満の少額減価償却資産の取得価額の全額を損金算入できる
- 推計による更正又は決定がされない
それでは、この4つのメリットについて、詳しくみていきます。
2−1 欠損金(赤字)を最長10年間繰り越せる
この欠損金の繰越しが何にも増して青色申告のメリットの中で節税面で最大のインパクトがあります。このメリットのためだけでも青色申告をするべきです。
欠損金の繰り越しとは大まかに言うと、赤字の繰り越しです。
欠損金の繰越し制度を具体例を使って説明します。
青色申告法人と白色申告法人で同じ利益を稼いだ場合の税金を考えてみます。
下の表を見てください。
【白色申告法人のケース】
| 会計年度 | 第1期 | 第2期 |
|---|---|---|
| 利益 | △100 | 200 |
| 課税所得 | 200 | |
| 税金(税率30%) | 0 | 60 |
【青色申告法人のケース】
| 会計年度 | 第1期 | 第2期 |
|---|---|---|
| 利益 | △100 | 200 |
| 繰越欠損金 | △100 | |
| 課税所得 | 100 | |
| 税金(税率30%) | 0 | 30 |
納める税金が白色申告法人が60で青色申告法人が30となり、青色申告法人は白色申告法人に比べ税金が半分になっています。
両者とも決算後の最終の利益が第1期は100の赤字となり、第2期は200の黒字です。
まず白色申告法人をみてみましょう。
第1期は利益がないので、税金も0です。
第2期は利益が200出ましたので、それに30%を乗じて税金を60納付しています。
200 × 30% = 60
次に青色申告法人を見てみましょう。
第1期は利益がないので、税金も0です。
青色申告法人の場合は、赤字100を繰り越すことができるので、繰越欠損金として100を次の決算期に繰り越します。
第2期は、利益は200ですが、繰越欠損金100がありますので、これを利益から差し引き、課税所得※が100になります。この100に30%を乗じて納める税金が30になります。
※課税所得:税率を乗じるベースとなる金額
100 × 30% = 30
この例では白色申告法人(60)と青色申告法人(30)との税金の差が倍違ってきています。
このように黒字となっている決算期以前に赤字の決算があればその赤字を繰り越して黒字から差し引くことができるのが欠損金です。これを青色繰越欠損金と呼びます。
青色繰越欠損金があるとないとでは、納める税金にかなりの差が生じます。
この一つのメリットのためだけでも、青色申告法人にならない手はないということを理解いただけると思います。
なお、赤字が発生した会計年度に青色申告法人であれば、この青色繰越欠損金を最長10年間※繰り越すことができます。
※平成20年4月1日以後に終了した事業年度に生じた欠損金は9年間。平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年間。
繰越欠損金制度については、次の記事で詳しく解説しています。
2−2 欠損金の繰戻し還付が受けられる
青色申告法人のメリット2つ目は繰戻し還付制度です。
繰戻し還付制度とは、簡単にいうと、法人税を納めた次の年度が赤字だったらその赤字額に対応した前期に納めた金額が還付されるという制度です。
前期は黒字で納税したけど、今期は赤字だった。悪いから前期の税金お返しします。というイメージです。
下の表をご覧ください。わかりやすいように大雑把な計算を例に説明します。
| 会計年度 | 第1期 | 第2期 |
|---|---|---|
| 所得金額 | 100 | △80 |
| 納める税金 | 20 | |
| 還付税金 | 16 |
第1期に100の利益が出て20の税金を納め、翌年度は80の赤字だった場合
20 × 80/100 = 16
ざっとこのような計算式で還付金を求め、第1期、第2期ともに青色申告の場合に税務署に請求することができるのです。
なお、欠損金の繰戻し還付は法人税にのみ存在する制度なので、法人住民税は翌年度以降で還付法人税分を課税標準から控除する方法をとります。
- 欠損金の繰越し控除の特徴:赤字が出た場合、将来に渡って税金を減らす
- 繰戻し還付請求の特徴:黒字決算の直後の赤字決算ですぐに還付金を受け取ることができる
- 欠損金の繰越し控除に比べ、繰り戻し還付の方が、その資金をすぐに事業に投下できるという点でよりメリットが大きいといえます。
2-3 30万円未満の少額減価償却資産の取得価額の全額を損金算入できる
資本金1億円以下の青色申告法人(一部例外あり)であれば30万円未満の固定資産を減価償却をすることなく全額費用とすることができます。(全額費用は、会計期間1年の中で300万円が限度)
具体例を使って解説します。
| 通常の減価償却を適用 | 少額減価償却資産の特例を適用 | |
|---|---|---|
| 償却費差引前利益 | 280,000円 | 280,000円 |
| 償却費 | 140,000円 | (2倍)280,000円 |
| 所得金額 | 140,000円 | 0円 |
| 税額 | 42,000円 | 0円 |
上の例のようにある法人が28万円のパソコンを通常の耐用年数5年で減価償却を行い、今年度の所得が140,000円だったとします。
中小企業を例に実効税率が法人税や地方税を含め30%だとすると、140,000×30%で42,000円納付することになります。
しかし、140,000円の減価償却費のかわりに280,000を全額費用とした場合、140,000円費用が増えますので、所得金額は0になり、税金も0になります。つまり、42,000円節税したことになります。
少額減価償却資産の数が、10あったとすればいくらの節税になるでしょう? このようにこの規定は費用の先出し効果があり、節税効果があります。
30万円未満の少額減価償却資産の特例については、次の記事で詳しく解説しています。
どの規模の法人でも享受できる節税メリットを3つ解説しました。この3つに比べれば利用できる法人は限定的ですが、比較的利用できる機会のある節税メリットを参考までに2つ挙げておきます。
次の2つの規定は要件が厳しいので適用できる会社は限定的ですが、該当すれば節税効果は少なくありません。
2−3−1 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除
新品の機械及び装置などを取得し又は製作して国内にある製造業、建設業などの指定の事業の用に供した場合に、基準取得価額の30%を普通償却額に上乗せできる特別償却又は基準取得価額の7%の税額控除を認めるという制度。
詳しくは以下の国税庁の解説を参照
2−3−2 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除
国内の新規雇用者に対して給与を支給する場合に、所定の適用要件を満たすときは、その事業年度の控除対象新規雇用者給与等支給額の15%相当額の法人税額の特別控除ができる制度。
詳しくは以下の国税庁の解説を参照
給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(旧:給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の法人税額の特別控除)
続いて4つ目のメリットです。節税とは違う観点で、青色申告法人であると税務調査時にメリットがあります。
2−4 青色申告法人には推計による更正又は決定はできない
青色申告の法人は、税務調査の時に、税務調査官に帳簿に基づかない所得計算をされることはないというものです。
法人税法131条に次のような規定があります。
税務署長は、内国法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合には、その内国法人の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその内国法人に係る法人税の課税標準または欠損金額を推計して、これをすることができる。
ただし、この推計による更正・決定は青色申告書が提出されている場合にはできないこととなっています。
これはどういうことかというと、調査官が税務調査をしている中で、帳簿の真実性を裏付ける取引書類がない(あるいは提出しない)などの理由で、申告の元となる帳簿が信頼できない場合やそもそも帳簿を確認できない場合などに、法人税の課税標準を推計することができることになっています。しかしながら、それは白色申告法人にのみ適用できるのです。
余談ですが、帳簿がないや保存すべき証拠書類がないという悪質な場合は後述する青色申告の要件を満たしていないので、青色申告を取り消されて推計されるということは考えられます。
青色申告で、保存すべき帳簿書類があれば、調査官が勝手に推計計算を採用することはできません。青色申告の場合は、税務調査においてこの点は守られることになります。
以上が青色申告となるメリットになります。青色申告法人になるメリットは白色申告と比較して相当大きいということが理解いただけたと思います。このメリットを知れば青色申告にならない手はないですよね。
それでは次にこれほどのメリットがある青色申告法人となるにはどうすればいいのでしょうか。
法人が青色申告になるためには要件があります。どんな法人でもなれるわけではありません。
ここで「え?どんな法人でもなれるわけではない?難しいのかな?」と思う必要はありません。冒頭であったように99.2%の法人が青色申告法人なわけです。そこから推測するに簡単なはずです。
そのとおりで要件は簡単で、たった2つしかありません。
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