法人の青色申告とは?メリット・要件・申請書の書き方まですべて解説

青い空

法人の実務で青色申告に関して必要となる知識のすべてを、元国税調査官で税理士の私が徹底解説します。

法人を設立したら、まず真っ先にすることの一つとして、税務署に青色申告の承認申請書を提出し、青色申告法人になることです。

平成29年の国税庁の統計では、全法人のうち実に99.2%が青色申告法人という発表がされています。

国税庁統計

国税庁平成29年会社標本調査から抜粋)

なぜ法人のほとんどが青色申告法人になるのでしょうか。

それは、青色申告法人になると、多くの場合、それほどの負担なくかなりの節税効果を得られるからです。

それではまずは青色申告法人となるメリットからみていくことにしましょう。

青色申告法人のメリット

どの規模の法人にも関係する青色申告法人の主なメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

  1. 欠損金の繰越し
  2. 欠損金の繰戻しによる法人税額の還付
  3. 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

上記以外にも要件をクリア(通常容易ではありませんが)することで減価償却を通常より多く費用化できる特別償却や割増償却、法人税額の特別控除などの特典が青色申告法人には設けられています。

それでは、この3つのメリットについて、詳しくみていきます。

⒈ 欠損金の繰越し

この欠損金の繰越しが何にも増して青色申告のメリットの中で節税面で最大のインパクトがあります。

欠損金の繰り越しとはざっくり言うと、赤字の繰り越しです。

下の表を見てください。青色申告法人と白色申告法人で同じ利益を稼いだ場合の税金の計算例を表しています。

白色申告法人のケース】

会計年度 第1期 第2期
利益 △100 200
課税所得 200
税金(税率30%) 60

青色申告法人のケース】

会計年度 第1期 第2期
利益 △100 200
繰越欠損金 △100
課税所得 100
税金(税率30%) 30

両者とも決算後の最終の利益が第1期は100の赤字、第2期は200の黒字です。

まず白色申告法人をみてみましょう。

第1期は利益がないので、税金も0です。

第2期は利益が200出ましたので、それに30%を乗じて税金を60納付しています。

次に青色申告法人を見てみましょう。

第1期は利益がないので、税金も0です。

青色申告法人の場合は、赤字100を繰り越すことができるので、繰越欠損金として100を次の決算期に繰り越します。

第2期は、利益は200ですが、繰越欠損金100がありますので、これを利益から差し引き課税所得(税率を乗じるベースとなる金額)が100になります。この100に30%を乗じて納める税金が30になります。

この例では白色申告法人(60)と青色申告法人(30)との税金の差が倍違ってきています。

このように黒字となっている決算期以前に赤字の決算があればその赤字を繰り越して黒字から差し引くのが繰越欠損金です。

繰越欠損金があるとないとでは、納める税金にかなりの差が生じます。

この一つのメリットのためだけでも、青色申告法人にならなければならないというのがご理解いただけるかと思います。

なお、この欠損金が発生した時に青色申告法人であれば、最長9年間※繰り越すことができます。

※平成20年3月31日以前に終了した事業年度に生じた欠損金は7年間。平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年間。

詳しくは「0からわかる繰越欠損金とは 〜節税の超基本〜」をご覧ください。

⒉ 欠損金の繰戻し還付

欠損金の繰戻し還付制度の概要

欠損金の繰戻し還付について簡単に説明しますと、第1期が黒字で法人税を納めたとします。第2期が赤字だった場合に、その赤字額に対応した第1期に納めた法人税額を還付してもらえるという制度です。

下の表をご覧ください。わかりやすいように大雑把な計算を例に説明します。

会計年度 第1期 第2期
所得金額 100 △80
納める税金 15
還付税金 12

第1期に100の利益が出て15の税金を納め、翌年度は80の赤字だった場合

15 × 80/100 = 12

ざっとこのような計算式で還付金を求め、第1期、第2期ともに青色申告の場合に税務署に請求することができるのです。

なお、欠損金の繰戻し還付は法人税にのみ存在する制度なので、住民税は翌年度以降で還付法人税を課税標準から控除する方法をとります。

欠損金の繰越しと繰戻し還付の違い

欠損金の繰越し控除も欠損金の繰戻し還付も税金を減らすという意味では同じ効果ですが、繰越し控除の場合は、将来に渡って税金を減らすのに対し、繰戻し還付請求は、赤字の決算ですぐに還付金を受け取ることができるため、その資金をすぐに事業に投下できるという点でよりメリットが大きいといえます。

⒊ 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

資本金1億円以下の青色申告法人であれば30万円未満の固定資産を会計期間1年の中で300万円を限度に減価償却をすることなく全額費用とすることができます。

例えば通常なら5年に分けて減価償却しなければならないものが、その年度で全額を費用にできますので、費用を先出しすることができ節税効果があります。

詳しくは「30万円未満の固定資産を全額費用とする方法」をご覧ください。

どの規模の法人でも享受できるメリットとして3つを解説しました。この3つに比べれば利用できる法人は限定的ですが、比較的利用できる機会のある特典を参考までに2つ挙げておきます。

法人を設立したら、節税のために青色申告法人にならなければならない理由はお分りいただけたと思います。

青色申告法人となるには、実は要件があります。どんな法人でもなれるわけではありません。

ここで「え?どんな法人でもなれるわけではない?難しいのかな?」と思う必要はありません。冒頭であったように99.2%の法人が青色申告法人なわけです。そこから推測するに簡単なはずです。

そのとおりで要件は簡単です。たった2つしかありません。

青色申告になるためのたった2つの要件

青色申告の法人のなるための要件は、簡単にいうと以下の2つしかありません。

  1. 法定の帳簿書類を備え付けて取引を記録し、その書類を一定期間保存すること
  2. 税務署に青色申告の承認の申請書を提出して、あらかじめ承認を受けること

それぞれ詳しく見ていくことにしましょう。

要件1 帳簿の備え付けとその保存

⒈ 帳簿の備え付け

青色申告法人となるためには次に挙げる帳簿を備え付ける必要があります。

  1. 資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を複式簿記の原則にしたがって、整然と、かつ明瞭に記録し、その記録に基づいて決算を行うこと
  2. 仕訳帳、総勘定元帳その他の必要な帳簿を備え、取引に関する一定事項(法人税法施行規則別表二十に規定する事項)を記載すること
  3. 仕訳帳には、取引の発生順に、取引の年月日、内容、勘定科目及び金額を記載し、総勘定元帳には、その勘定ごとに記載の年月日、相手勘定科目及び金額を記載すること
  4. 棚卸表を作成すること
  5. 一定の科目をもって貸借対照表及び損益計算書を作成すること

これだけ見ると難しそうに感じるかもしれませんが、会計ソフトを使っていれば基本的にはこの要件はクリアされると考えて大丈夫です。

つまり、市販の会計ソフトを使っていれば、この要件は何もしないでも自動的にクリアされています。

⒉ 帳簿書類の保存

帳簿書類を原則7年間保存しなければなりません。

帳簿書類とは

保存しなければならない帳簿書類は以下のとおりです。

  • 前述の「帳簿の備え付け」で挙げた5点に加え、取引に関して作成されたその他の帳簿
  • 取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書、請求書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し

要するに会計ソフトで作成した帳簿と受取手形記入帳や支払手形記入帳など、取引に関して作成された帳簿、そして取引の際に作成される書類をすべて取っておくというイメージです。

例えば、商品を納品するときに、納品書を相手方に交付し、複写の受領書を受け取る場合は手元に残る受領書を保存する。また、請求書を相手方に交付した場合は、通常控えを作成しますのでその控えを保存するといった具合です。

帳簿書類を保存する期間

原則確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要があります。

詳しくは「法人の帳簿書類の保存期間は何年?」をご覧ください。

帳簿書類を取っておくのは、会社を経営する以上は、常識と考えてください。

帳簿が正しいかを確認するときに、その元となる資料が何一つなければ、記載されている帳簿の内容が正しいかどうか検証することができません。決算書が正しいという証拠が何一つなければ誰も信用しませんよね。金融機関も信用しません。お金を貸しません。税務署も信用しません。

というように帳簿書類を保存するのは当然だということはご理解いただけるかと思います。

要件2 事前の承認

青色申告法人になるための2つ目の要件は、税務署に青色申告の承認の申請書を事前に提出することです。

(参考)青色申告の承認申請書様式

事前に申請書を提出するというのがポイントです。事後に申請書を提出しても承認されないというところに注意が必要です。

申請書に正しい内容が記載されていれば、原則承認されないということはありません。承認されたという連絡もありません。基本的にはその申請した青色申告を開始する会計期間終了の日までにその申請の却下処分がなかったときは、その提出日にその承認があつたものとみなされます。

青色申告の取り消しを受けて間もない等青色申告の適用を受けられない理由がない限り却下されることはありませんので、事実上提出期限までに申請書を提出すれば晴れて青色申告法人になったということになります。

繰り返しになりますが、ここで大事なのは、事前に提出することだということを理解してください。

いつまでに申請書を提出するか

事前に提出はわかったと、では具体的にはいつまでに申請書を提出しなければならないのでしょうか。

⒈ 法人を設立した会計期間

設立した年度から青色申告の適用を受けたい場合は、設立の日以後、3ヶ月を経過した日の前日まで。ただし、設立後3ヶ月を経過した日より前に会計年度終了の日が到来する場合は会計年度終了の日の前日まで。

例えば、12月決算の法人を2019年4月1日に設立した場合なら、2019年6月30日までに提出する必要があります。

⒉ ⒈以外の会計期間

青色申告の承認を受けようとする会計期間開始の日の前日まで

例えば2019年4月1日から2020年3月31日の会計期間に係る申告から青色申告を適用したい場合には2019年3月31日までに承認を受けなければなりません。

青色申告の承認申請は、前述のとおり事前に提出していれば、ほぼ承認されます。

その後税務調査のときに必要な書類を保存していないと指摘されたり、悪質な不正計算を行っていたことが発覚するといった場合や、連続して期限内に申告書を提出しない等の取り消し事由が発覚しない限り青色申告は続いていくことになります。

青色申告法人のデメリット

青色申告法人になるための手続きも簡単だということを説明してきました。

では、青色申告法人のデメリットは?と聞かれれば、青色申告法人となる要件として所定の帳簿書類の備え付けとその保存ということがあります。これは会社経営上なくてはならないものですが、これが面倒だということであれば、青色申告法人のデメリットといえるかもしれません。

それでも一つ言わせてもらえば、99.2%が青色申告法人なわけですから、みんなやっています。

青色申告の承認申請書を提出して事前に承認が得られなければ青色申告法人になれないことがわかりましたので、続いてその申請書の書き方について、説明していきます。

青色申告承認申請書の記入例と書き方

青色申告承認申請書の記載例

青色申告承認申請書記載例

青色申告承認申請書の書き方

① 代表者の印

通常は法人の実印を押印します。

ただし、特に指定はないので、そうでないからといってお咎めがあるわけではありません。

② 適用する事業年度

自に青色申告書で申告したい事業年度の開始年月日を、至にその事業年度の終了年月日を記入します。

設立1期目から青色申告を適用したい場合は自には設立年月日を記入します。

③ 次に該当するときには

記載されている事由に該当があるときは□に✔を付し、指定の年月日を記入します。

該当があるとすれば上から2つ目の設立1期目に該当する場合かと思います。その場合は、設立年月日を記入します。

④ 帳簿組織の状況

伝票や各種帳簿から総勘定元帳までの帳簿書類等の種類、形態及び記帳の時期を記入します。

「左の帳票の形態」欄には、例えば、会計ソフト、3枚複写伝票、ノート、ルーズリーフ、装丁帳簿のように記入し、「記帳の時期」欄には、例えば、毎日、1週間ごと、10日ごと、1月ごとのように記入します。

⑤ 特別な記帳方法の採用の有無

④で「左の帳票の形態」欄で会計ソフトと記入した場合には「ロ 電子計算機利用」に◯を付しましょう。

⑥ 税理士が関与している場合におけるその関与度合

例えば、「総勘定元帳の記帳から一切の事務」、「伝票整理から一切の事務」のように具体的に記入します。

⑦ 税理士署名押印

この書類を税理士が作成した場合は、税理士自ら署名押印をします。

⑧ ※税務署処理欄

記入不要です。税務署の職員が使用する欄になります。

(参考)

青色申告書の承認の申請(国税庁HP)

届出書類をシステムでスマートに作成しよう

青色申告承認申請書を無料で簡単に作成するためのツールがありますので、紹介します。

法人税の知識不要のクラウド税務ソフト「全力法人税」を使用します。

全力法人税

全力法人税では、青色申告承認申請書以外にも法人設立時に必要となる以下の届出を作成できますので、効率的です。

  1. 法人設立届出書(税務署用)
  2. 青色申告の承認申請書
  3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
  4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

全力法人税を使って届出を作成する方法については以下の記事をご覧ください。

全力法人税で法人の各種届出書を無料で作成する方法

上記の方法で青色申告法人になるのは、簡単ですが、青色申告を取り消されるケースがありますので、油断は禁物です。

青色申告が取り消される3つのケース

  1. 帳簿書類の備え付け、記録、保存が法令どおりに行われていない場合
  2. 帳簿書類に取引の全部または一部を隠蔽または仮装して記載し、その他記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由がある場合
  3. 確定申告書を提出期限までに提出しなかった場合

このケースに当てはまった場合には、その違反している会計期間に遡って取り消されます。

帳簿備え付け・保存の不備

青色申告の要件として、法定の帳簿の備え付けと一定期間の帳簿書類の保存が必要になりますが、それが法令どおりに行われていない場合、要件に違反しているわけですので当然に取消しの理由になります。

しかしながら、実務ではよっぽど悪質でなければこの理由で取り消されることはありません。注意を受けて今後は適切に行うよう指導されるに止まることが多いです。

ただ、法律はこのように規定しているので、この理由で取り消されても文句は言えません。

帳簿書類の仮装・隠蔽

架空の請求書を作成して着服したり、売上の記載された書類を隠蔽するなどして法人税を不当に免れていることが発覚した場合、青色申告の取消要因となります。

しかしながらこの規定も税務署の内部的な指針(法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)3⑴、⑵及び⑸)で500万円以上の不正所得があった場合に取り消しを検討し、一定の要件の法人が今後適正な申告をする旨の申し出を提出されば取り消さないという取り扱いをしていますので、500万円以上の不正計算をしても一発で取り消されることはありません。

期限内申告を怠る

期限内申告を怠った場合は法律上は青色申告が取り消されることになっていますが、これも前述の税務署の内部指針(法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)4)で2事業年度連続して期限内に申告書を提出しない場合に取り消す旨が規定されています。

取り消される場合も2年目の事業年度から取り消すとされています。

したがって、1回期限に間に合わなくても取り消されませんし、1度遅れて次の年は期限内、その次の年にまた遅れたとしても取り消されません。

まとめ

青色申告の恩恵は計り知れないので、法人を設立したら青色申告法人になるべきだということは何度もいってきました。

手続きも期限を守れば容易に青色申告法人になれますので、必ず申請することをおすすめします。万が一取り消されたとしても一定の期間が経過すれば、また申請することができますので、会社を経営される方は、青色申告法人にこだわって可能な限り青色申告書を提出するよう努めることがが肝要です。

(当記事は執筆時時点の法令に基づいています。)

執筆者 ジャパンネクス株式会社代表、税理士、元国税専門官 海野 耕作

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