2024年(令和6年)に開始する令和5年改正電子帳簿保存法では、電子取引データを一定の要件で電子保存することが義務化されました。
電子取引データの電子保存の要件の一つに、次の検索機能を設けることが規定されています。
- 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索できる
- 日付又は金額については、その範囲を指定して検索できる
- 2以上の任意の項目を組み合わせて検索できる
この3つの要件が、基準期間の売上高が5,000万円以下の場合には、すべて不要になります。
この検索要件が免除となる要件である「基準期間の売上高」とはそもそもどういう意味か?この記事では、この疑問に回答します。
まずは、電子帳簿保存法でいうところの「基準期間」とは何かから確認していきましょう。
1 電子帳簿保存法の「基準期間」とは
基準期間という用語は、元々消費税法で使われている用語で、それを電子帳簿保存法にも流用した用語です。
基準期間とは、個人事業主と法人で次のようになります。
個人事業主 | 法人 |
電子取引が行われた日の属する年の前々年 | 電子取引が行われた日の属する事業年度の前々事業年度 |
具体的な日付を当てはめてみましょう。
個人事業主または12月決算の法人が、2024.1.1〜2024.12.31の間に電子取引データをやり取りした場合、その基準期間は次のように判定します。
年度 | 基準期間(前々年度) | 前年度 | 電子取引が行われた日 |
---|---|---|---|
会計期間 | 2022.1.1〜2022.12.31 | 2023.1.1〜2023.12.31 | 2024.1.1〜2024.12.31の間 |
2 基準期間の売上高の「売上高」とは
消費税の場合は、「基準期間の課税売上高」が重要になりますが、電子帳簿保存法では、「課税売上高」ではなく「売上高」が5,000万円以下がどうかで判定します。
この売上高とは、会計上の「売上高」を意味しています。
つまり、損益計算書で「売上高」と経理する本業によって得た収益を意味し、雑収入等の営業外収入や特別利益を指しません。
個人事業者の売上高 | 法人の売上高 |
「商品製品等の売上高、役務提供に係る売上高、農産物の売上高(年末において有する農産物の収穫した時の価額を含みます。)、賃貸料又は山林の伐採又は 譲渡による売上高」をいい、家事消費高及びその他の収入は含まれません。 | 「一般的に売上高、売上収入、営業収入等として計上される営業活動から生ず る収益」をいい、いわゆる営業外収益や特別利益は含まれません。 |
(電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問45(国税庁)から引用)
売上高の返品、値引き、割戻しは、この売上高からは控除して判定します。
3 基準期間の売上高を判定する上での注意点
基準期間の売上高を計算する原則はこれまで解説してきたとおりですが、基準期間がない場合や、基準期間が1年に満たない場合は、どのように判定すれば良いかを解説します。
3-1 基準期間がない場合の判定
基準期間がない新規開業者、新設法人の初年度や翌年度に電子取引データのやり取りがあった場合は、すべての検索機能の確保の要件が不要になります。
新規開業者や新設法人は、2年前は開業していませんので、基準期間がありません。こういった基準期間がない場合は、すべての検索機能の確保の要件が不要になります。
3-2 基準期間が1年に満たない場合の判定
基準期間が1年に満たない場合は、個人事業主と法人でその売上高の計算方法が異なります。
法人 | 個人事業主 |
基準期間の売上高を基準期間に含まれる事業年度の月数で除し、これに12を乗じて算出した金額 | その基準期間の売上高 |
基準期間が6月1日から12月31日で600万円であった場合の基準期間の売上高を考えてみます。
法人 | 個人事業主 |
600万円 ÷ 6月 × 12月 = 1,200万円 | 600万円 |
4 まとめ
2024年開始の電子取引データの電子帳簿保存の要件の1つである検索機能の保持については、基準期間の売上高が5,000万円以下である事業者は、検索機能の保持自体が免除となります。
この基準期間の売上高の計算方法を解説してきました。
基準期間の考え方は、基本的には、消費税法と同じで、売上高については、損益計算書で売上高として経理する収益であるという点が原則になります。
この基準期間の売上高が5,000万円以下であれば、電子取引データの電子帳簿保存の要件の1つである検索機能の保持する必要はありません。
電子取引データの電子保存は、法改正で2転3転している点も多くありますので、基準期間の売上高については、しっかりおさえておきましょう。
コメント