この記事は、専門家向けではなく、設立間もない会社や消費税を初めて申告する会社などの自分で消費税を理解したいという一般の方を対象としています。
すべての方のために向けて説明するといたずらに難しくなってしまうので、一般の方が消費税を自分で申告するために必要な情報に的を絞って元国税調査官がわかりやすく解説していきます。
今回は、輸入取引にかかる消費税とは?という全体的な話から、実際に消費税を申告する際の仕入税額控除をどのように行なっていくかまでを図解も入れながら丁寧に解説していきます。
最近では、輸入ビジネスが簡単にできるようになっており、実際、新しく事業を始める方でも輸入を行っている事業者も多いのではないでしょうか。
消費税というのは、原則「国内で、事業者が、事業として対価を得て行う資産の譲渡等」を課税対象としていますが、例外として外国貨物を輸入した時にも、消費税が課税されることになります。
なぜ、輸入は仕入なのに消費税が賦課されるのでしょうか
また、外国貨物の輸入にかかる消費税はいつ、どこに納付するのでしょうか。
一つずつ、解説していきます。
それでは、誰でもわかる素人のための消費税シリーズの19回目「輸入取引にかかる消費税とは?から仕入れ税額控除の方法まで全部解説」について始めていきましょう。
消費税法の輸入取引とは
消費税法における、三つの取引とは。
消費税法において、取引とは、
- 「国内取引」、
- 「国外取引」
- 「輸入取引」
の3種類に分けられます。
資産の譲渡の場合であれば、「国内取引」や「国外取引」の判定では、資産の譲渡時において資産の所在場所が国内であるか国外であるかで判定を行います。
また、国外から国内に資産を輸入する取引は「輸入取引」とされます。
図の内容をまとめると以下の通りになります。
- 国内から国内への取引=「国内取引」
- 国内から国外への取引=「国内取引」
- 国外から国外への取引 =「国外取引」
- 国外から国内への取引 =「輸入取引」
三つの取引のなかで、消費税の課税対象となる取引はどの取引なるでしょうか。
それは、「国内取引」と「輸入取引」が課税対象となります。
輸入取引に消費税が課税される理由
消費税というのは、国内において消費される物やサービスに対して課税する税金です。
ですから、国外から国内へ商品等の輸入された場合には、その商品等は日本国内で消費されることになるため輸入取引についても消費税が課されることなっているのです。
逆に、輸出の場合は、消費税の課税対象にしないのではなく、「免税取引」として区分し、課税取引だが、消費税を免除するということになっています。
輸入取引に係る消費税
輸入取引の納税義務者
「輸入取引」の課税の対象については、消費税法第4条第2項において次のように規定されています。
保税地域から引き取られる外国貨物には、この法律により、消費税を課する。
※ 保税地域とは…
税関の輸入許可がまだ下りていない外国貨物を一時的に保管する場所のこと
海外で商品を購入した時点では、消費税「不課税」ですが、日本の保税地域から引き取られる外国貨物には、原則として消費税がかかります。これが「輸入消費税」です。
国内取引では、消費税の納税義務者は事業者に限られますが、輸入取引の場合は事業者には限らず、「その輸入品を引き取る人が納税義務者」となりますから、事業者ではない一般の人が課税貨物を保税地域から引き取った場合でも消費税の納税義務者になります。(申告・納税方法については後述)
なお、輸入商品の引き取りの際に支払った輸入消費税は、消費税の確定申告時に控除することができます。
課税貨物に該当しない取引
輸入取引においても、国内取引と同様に課税取引、非課税取引、免税取引が存在し、区分されています。
非課税取引とされるもの
- 有価証券
- 郵便切手類
- 印紙、証紙
- 物品切手等
- 身体障害者物品
- 教科用図書
免税取引とされるもの
- 保税運送、難破貨物等の運送の承認を受け届け出たもの
- 特例輸出貨物制度により輸出許可を受けたもの
- 燃料、飲食物その他の消耗品等の貨物で船舶又は航空機において使用するもの。
- その他一定のもの
なお、保税地域から引き取られた外国貨物のうち、上記に該当しないもの(消費税のかかるもの)を消費税法では、課税貨物と呼んでいます。
消費税の確定申告時に控除することができるのは、課税事業者が税関に対して予め消費税を納付している(保税地域から引き取られる課税貨物にかかった消費税)その消費税額です。
輸入取引に係る消費税の申告納付方法
輸入取引に係る消費税の申告方法は、
- 申告納税方式(原則)…通常の輸入手続き
- 特例申告方式…税関へ特例申請を行い、許可を得た場合にできる申告方法
- 賦課課税方式…国内への入国する者の携帯品になどに行う手続き
がありますが、ほとんどケースでは「申告納税方式」を採用しますので、今回はほかの二つの方法は割愛します。
輸出商品を受け取る際の一般的な流れは以下の通りです。
- 所轄の税関において、関税及び消費税の計算を行い、「輸入申告」を行う。
- 算出された関税及び消費税を納付する。
- 税関より許可が出た場合、「輸入許可通知書」が発行される。
- 商品を受け取る。
会社が輸入申告者となり、輸入手続きを業者に代行させている場合は、事業者の方は、商品と輸入許可通知書を業者より受け取るような形になり、事業者の消費税の申告において、仕入控除を行うことになります。
しかし、事業者が輸入手続きを通関業者に委託して行う場合ですが、輸入申告者が代理業者であり、かつ代理業者が消費税を納めている場合は、当該会社はその消費税を負担したとしても仕入控除を行うことはできません。
消費税の計算方法
前述の通り、輸入品を受け取るには輸入申告書を記載し、税関の輸入許可を得て関税及び消費税の申告と納付を行うことになります。
「輸入消費税」の算定方法は、国内課税仕入の消費税の算出とは少し異なります。
輸出消費税の算出方法は以下のとおりになります。
(関税課税価格(CIF※価格)+関税)×消費税率=輸入消費税
関税課税価格(CIF※価格)とは…
Cost, Insurance and Freight の略で、日本語では関税課税価格です。
貿易取引規則の一つで、主に売主と買主の危険の移転の分岐点と費用負担を示す用語です。
なお、関税課税価格(CIF価格)は次の算式により求めます。
本体価格+輸送費+保険料等=関税課税価格(CIF価格)
(参考)輸入時に支払う関税や消費税の計算方法について
課税貨物における仕入控除
前述した式で算出した保税地域から引き取られる課税貨物に係る消費税は、国内の課税仕入れと同じく控除対象仕入税額の計算対象となります。
課税貨物に係る仕入税額控除の時期は、「申告納税方式」(原則)の場合は、課税貨物を引き取った日(輸入の税関から許可を受けた日)です。
税関で納付した消費税額を仕入税額控除する仕組みのイメージ図は下記のとおりです。
① 海外で商品600万円を仕入れ
② 海外から日本へ輸送し、保税地域から引き取り
③ 税関に商品600万円に対する消費税60万円を納付
④ 輸入した商品を1,000万円で販売(+消費税100万円を預かる)
⑤ 税務署に確定申告をして40万円を納付
100万円(④預かった消費税) – 60万円(③支払った消費税) = 40万円(申告納付額)
消費税の申告書への記載方法(「課税貨物に係る消費税額」へ記載 )
保税地域から課税貨物を引き取ったときに支払った消費税を仕入税額控除とするには、消費税確定申告の付表2-3の⑬「課税貨物に係る消費税額」欄に記入する必要があります。これにより仕入税額控除とすることができます。
なお、記載する金額は消費税のみで地方消費税は含みません。
「課税貨物に係る消費税額」欄の記載例
課税貨物に係る消費税が444,000円だった場合
国内課税仕入の場合は、付表2-3の⑨に記載されている金額に(支払対価の額)に7.8/110を乗じた金額を付表2-3の⑩(国内課税仕入に係る仕入税額控除の額)に記載しますが、課税貨物の場合は税関に賦課された消費税額を記載することになります。
保存書類及び保存期間
課税貨物に係る消費税を仕入税額控除に算入するには、税関より発行される「輸入許可通知書」が必要です。
「輸入許可通知書」の保存期間は、税関から同許可書が発行されて受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間となります。
まとめ
以上が、輸入取引の消費税の課税と課税貨物に係る仕入税額控除についての概要になります。
輸入取引の消費税は海外で商品を購入した時点では、「不課税」ですが、日本の保税地域から引き取られる外国貨物には、原則として消費税が賦課され、税関を通して国に納付することになり、のちに課税貨物に係る消費税は、消費税の確定申告を行った際に、仕入税額控除として税額から差し引くといった流れであると理解できたと思います。
しかし、輸入取引の消費税の算出や課税貨物に係る仕入税額控除の手続きはややこしく、また通関業務は税理士では行うことができない等、相談がしにくく馴染みが薄い事項ですが、税額に係ることには変わりはありませんので、しっかり理解しましょう。
最後まで記事をご覧いただきありがとうございました。
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