特定課税仕入れとは?~誰でもわかる素人のための消費税20〜

特定課税仕入れ リバースチャージ方式

 

この記事は、専門家向けではなく、設立間もない会社や消費税を初めて申告する会社などの自分で消費税を理解したいという一般の方を対象としています。

すべての方のために向けて説明するといたずらに難しくなってしまうので、一般の方が消費税を自分で申告するために必要な情報に的を絞って元国税調査官がわかりやすく解説していきます。

今回取り上げるのは「特定課税仕入れ」です。

消費税法の規定により「特定課税仕入れ」を行った事業者は納税義務が発生するとされています。

国内において事業者が行った資産の譲渡等及び特定課税仕入れには、この法律により、消費税を課する。

消費税法第4条第1項

「特定課税仕入れ」と聞くと仕入れを行っただけなのに、なぜ消費税の納税する義務が発生するのか?と疑問に思われる方も多いと思いますので、なぜこのような制度があるのか等、図や例を出しながら解説していきます。

それでは、誰でもわかる素人のための消費税シリーズの20回目「特定課税仕入れ」について始めていきましょう。

この記事を書いた人

元国税調査官(税務署と東京国税局に併せて、14年間勤務)

特に法人調査での経験が長く、機能別調査部門と言われる繁華街担当調査部門、特別調査部門、特命機動調査部門、特別調査情報官部門など多くのセクションで調査事務に従事。また、東京国税局査察部にて査察調査にも従事。

調査事務を経験したことがない方には、わからない情報や手法をお伝えできる範囲で発信して行きたいと思います。

税務はとっつきにくい世界ですが、初心者の方にも解かり易く解説していきます。

ジャパンネクス株式会社

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特定課税仕入れとは

先程、特定課税仕入れを行った事業者は消費税を納税する義務があると、説明しましたが、「特定課税仕入れ」とはどのよう取引のことでしょうか。

特定課税仕入れというのは、

  1. 事業者向け電子通信利用役務の提供による課税仕入れ
  2. 特定役務の提供による課税仕入れ

の二つを取引のことをいいます。

なお、事業者が、上記の「事業者向け電気通信利用役務の提供」や「特定役務の提供」を受けた場合であっても、以下の場合は「特定課税仕入れ」はなかったものとされるため、納税義務は発生しません。

  • 簡易課税制度適用事業者
  • 課税売上割合95%以上
要するに上記2つのいずれかに該当していれば特定課税仕入れについては無視してよいこととなります。

⑴ 事業者向け電子通信利用役務の提供とは

事業者向け電子通信利用役務の提供というのは、外国法人や非居住者がインターネット等を介して行う電子書籍・広告の配信などのサービスのうち事業者のみに提供されるものをいいます。

「電気通信利用役務の提供」とは

「事業者向け電気通信利用役務の提供というのは、具体的には、

  • インターネットを介した広告の配信
  • インターネット上でゲームやソフトウエアの販売場所を提供するサービスなどがあります。

出典:国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A問3-1(国税庁)

等があります。

事業者のみに提供されるサービスとなっていますので、例えば、事業者のみに提供されるサービスである「Googleの広告サービス」などは「事業者向け電子通信利用役務の提供」に該当しますが、amazon等で買った電子書籍」は事業用として使用していても、事業者以外も利用できるサービスであるため、「事業者向け」とは言えず、「事業者向け電子通信利用役務の提供」には該当しません。

電子通信利用役務の提供は、国内取引なのか。

海外の事業者がインターネットを介して役務の提供を行うということは、一見、不課税である「国外取引」になりそうですが、平成27年の税制の改正により、国内取引の判定を役務の提供を行うもの居所、事務所ではなく、役務の提供を受ける者の住所等とするように見直されました。

課税方式(リバースチャージ方式)

そもそも、消費税において、課税取引を行った事業者が、消費税の申告や納税をするものですが、電気通信利用役務の提供については、国外事業者から役務の提供を受けた国内事業者が「特定課税仕入れを行った事業者」とされ、納税義務が発生し、申告・納税を行うことになっています。

これを「リバースチャージ方式」という課税方式といいます。

「国内において資産の譲渡等」を行った事業者の課税方式のイメージ図

特定課税仕入れ

「国内において資産の譲渡等」を行った事業者の納税義務のイメージ図

「特定課税仕入れを行った事業者」の課税方式「リバースチャージ方式」のイメージ図

特定課税仕入れ

「特定課税仕入れを行った事業者」の納税義務のイメージ図

事業者が「電気通信利用役務の提供」を受けた際の課税方法をリバースチャージ方式とする意味

なぜ、国外事業者から当該役務の提供を受けた国内事業者が申告・納税を行う「リバースチャージ方式」による課税方式が採用されているかというと、従来の方法により、国内の事業者が行う場合は「国内取引」として課税し、国外の事業者が行う場合は「国外取引」として課税しないとした場合、いずれも同様の取引であり、日本国内で消費されるものであるにもかかわらず、片方のみ課税される制度であるのは、課税上のバランスが取れていないため、採用された制度です。

⑵ 特定役務の提供による課税仕入れ

特定役務の提供とは

特定役務の提供というのは外国法人や非居住者が映画や演劇の俳優、音楽家その他の芸能人又は職業運動家の役務の提供を主たる内容として行うサービスのうち、他の事業者に対して行うものをいいます。

簡単に言いますと、国外にいる映画等の俳優や音楽アーティスト、スポーツ選手、芸能人などが、日本の事業者に対して、役務の提供を行うことを「特定役務の提供」とされています。

具体例としては、

  • 芸能人としての映画の撮影、テレビへの出演
  • 俳優、音楽アーティストとしての演劇、演奏
  • スポーツ競技の大会等への出場

出典:国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A(国税庁)問43-1

等があります。

課税方式

「特定役務の提供」についても、「事業者向け電気通信利用役務の提供」と同様に国外事業者から国内において当該役務の提供を受けた事業者が「特定課税仕入れ」として申告・納税を行う、「リバースチャージ方式」が導入されいます。

「特定役務の提供」の納税義務のイメージ図

特定課税仕入れ 特定役務の提供

「特定役務の提供」の納税義務のイメージ図

 

しかし、国外事業者が不特定多数の者に対して芸能、音楽演奏及びスポーツ競技等の役務の提供を行った場合は「特定役務の提供」に該当しません。

例えば、海外アーティストが国内事業者を介さずに不特定多数の観客に対して直接チケットを販売して行ったライブの場合は、不特定多数の観客が役務の提供を受けることになるため、当該ライブは「特定役務の提供」に該当せず、海外アーティスト自身が消費税の申告・納税義務を負います。

特定役務の提供は、他の事業者に対して行うものと規定されているため、不特定多数の観客に直接チケットを販売した場合は、特定役務の提供には、該当しません。

「国外事業者が不特定多数の者に対して芸能、音楽演奏及びスポーツ競技等の役務の提供を行った場合」の納税義務のイメージ図

特定課税仕入れ 特定役務の提供

「国外事業者が不特定多数の者に対して芸能、音楽演奏及びスポーツ競技等の役務の提供を行った場合」の納税義務のイメージ図

 

海外事業者が他の事業者に対する「特定役務の提供」の課税方法をリバースチャージ方式とする意味

消費税法上は、国内で音楽の実演やスポーツ競技大会等への出場などの役務の提供を行えば、役務の提供を行った事業者が国外事業者であっても国内取引になります。
以前は、このような取引についても、役務の提供を行う国外事業者が課税事業者であれば、役務の提供を行った国外事業者が申告・納税義務を行うような制度でした。
しかし、海外の芸能人やアーティスト、スポーツ選手等は、日本の消費税の申告を行わないことが多く発生してしまっていたため、国外事業者による芸能・スポーツ等の役務の提供についても、リバースチャージ方式での課税が行われるようになりました。

特定課税仕入れ

リバースチャージ方式の計算

リバースチャージ方式での、消費税の算出式

特定課税仕入れを行った事業者に対して適用される、リバースチャージ方式という課税方式について説明してきましたが、具体的にリバースチャージ方式での税額計算はどのように行うのでしょうか。

まず、簡単にリバースチャージ方式による消費税額計算式を見てみましょう。

≪リバースチャージ方式の計算式≫

上記の計算式のように、特定課税仕入れに係る消費税額」は一つの取引で納税に係る「課税資産の譲渡等に係る消費税額」控除に係る「課税仕入れ等に係る消費税額」の両方に登場してきます。

「特定課税仕入れを行った事業者」の納税義務のイメージ図

特定課税仕入れ

「特定課税仕入れを行った事業者」の納税義務のイメージ図

国内事業者が行うべき、消費税申告書のイメージ図

特定課税仕入れ

国内事業者が行うべき、消費税申告書のイメージ図

リバースチャージ方式による、税額計算例

リバースチャージ方式について、具体例を使って申告の方法を確認してみましょう。

≪具体例≫

課税売上高(税抜き)1億円
非課税売上高2,500万円
課税売上割合80%
課税仕入高(税込み)5,500万円
特定課税仕入2,000万円
 ≪消費税の計算≫

1.課税標準額に対する消費税額

① 課税売上高1億円
② 特定課税仕入れに係る支払対価の額2,000万円
課税標準額に対する消費税額(①+②)1,200万円

2.課税仕入れ等に係る消費税額

① 課税仕入れに係る消費税額5,500万円×10/110=500万円
② 特定課税仕入れに係る支払対価の額2,000万円×10/100=200万円
課税仕入れ等に係る消費税額(①+②)×80%(課税売上割合)560万円

3.納付税額

納付税額1,200万円-560万円=640万円

消費税の申告書への記載方法

「特定課税仕入れ」行った際の処理は、消費税確定申告の付表1-3の①-2「特定課税仕入れに係る支払い対価の額」を入力し、同時に付表2-3の⑪「特定課税仕入れに係る支払い対価の額」欄にも同額を記入します。

「特定課税仕入れに係る支払い対価の額」欄の記載例

「特定課税仕入れに係る支払対価の額」が2,000万円だった場合

「課税標準額」の計算おいて、「特定課税仕入れに係る支払い対価の額」を記載する例

「仕入税額控除」の計算において、「特定課税仕入れに係る支払い対価の額」を記載する例

リバースチャージ方式のイメージ

これまで、国内の事業者が、事業者向け電気通信利用役務の提供及び特定役務の提供を受ける場合に、特定課税仕入れを行った側(仕入れを行った者等)に、納税義務が発生すると説明してきましたが、リバースチャージ方式のイメージがなかなか難しいと思われる方もいらっしゃると思います。
多くの消費税の納税義務者は言わば資産の譲渡を行った側(売り上げを行った者等)になるからでは、ないでしょうか。
しかし、特定課税仕入れを「サービスを輸入した」と考えると少し解かり易いと思います。
消費税法において、「モノを輸入した」場合にも、納税義務が発生します。
これを「課税貨物に係る消費税」と言います。
「課税貨物に係る消費税」は、輸入した者(仕入れを行った者等)が、「課税貨物に係る消費税」の納税義務者となり輸入を行った際に消費税を納税したのちに、輸入時に納税した消費税を、確定申告の際に仕入税額控除を行います。
リバースチャージ方式というのは、「モノを輸入した」した際に行う確定申告と同様に、「サービスを輸入」したと認識して確定申告を行っていると考えてみてください。
「課税貨物に係る消費税」について、詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

まとめ

以上が、特定課税仕入れに係る納税義務とリバースチャージ方式についての概要になります。

特定課税仕入れというのは、言わば「サービスの輸出」であり、「モノの輸出」である「課税貨物に係る消費税」と同様に原則として消費税が賦課され、のちに特定課税仕入れに係る消費税は、消費税の確定申告を行った際に、仕入税額控除として税額から差し引くといった流れであると理解できたと思います。

特定課税仕入れは比較的新しい消費税の規定で少し馴染みが薄いかもしれませんが、Google広告やSNS広告などは最近ではよく利用されるものです。課税売上割合が95%未満の会社は、このような支出があれば影響がありますので、しっかり理解しておきましょう。

最後まで記事をご覧いただきありがとうございました。

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