税理士の署名がない申告は税務調査に入られやすいのか?元国税調査官が解説!

税理士署名欄

税理士の署名押印がない申告に対しては、税務調査が入りやすいのか?という不安の声を聞くことがあります。

この噂の実際のところはどうなのでしょうか。

元国税調査官がお答えします。

なお、以下記すことに関しては法人税に関する申告に限らせていただきます。私は法人課税部門に属していたため、その経験から法人税の調査に関してはお伝えできますが、その他の所得税や相続税等の税目に関しては言及していないものとしてご理解ください。

税理士の署名押印があるとなぜ税務調査に入られにくいと考えるのか

税理士の署名があるということは、税理士がその申告書を作成しているということを意味します。

税理士が作成しているということは、法人税法に則った処理が行われているということが推測されます。

例えば、脱税や個人的経費のつけこみなどの行為は、税理士がわかっていればそれをそのままにすることはありませんし、役員報酬を損金にするには、定期同額にするといった当たり前のことは当たり前に処理されていると推測されます。消費税の可否判定(消費税がかかる取引なのか否か)なども、通常であれば正しく行われていると推測されます。

そう考えれば税理士がいる方が申告書の信頼性がぐっと上がると考えるのが当然です。

理由はこんなところになるかと考えられます。

実際に税務署では税理士の署名押印の有無で調査するしないに影響を与えているのか

それでは、実際のところ、税務署では税理士の署名があるという理由で調査をしないということがあるのでしょうか。

答えは、はっきり否です。

はっきり言って考慮していません。

税理士が顧問している法人は全法人のうち9割程度と言われています。

そう考えると税務署サイドから考えると会社にはほとんど税理士がついているという感覚があります。その中で税理士がついていない会社をピックアップするということは一切やっていません。

それはなぜか。

税理士が見ていないところを見に行くのが税務調査

税務調査というものは、税理士が見ていないところを見に行くものだからです。

税務調査では、総勘定元帳や仕訳帳を見て調査などしません。

まず会社の概況を聞き取ります。例えば売上が計上されるまでにどのような書類や電子データのやりとりがされるかを聞き取り、これを確認すれば正確な売上が把握できるというものを特定し、それと帳簿の売上を確認していきます。

建設業の売上を例にすれば、税理士が請求書を確認しているとすれば、それは確認しないか、サラッとしか確認しません。納品書や発注書、契約書、工事台帳、出面帳等々を確認し、税理士が確認していないものを探してそれと売上を照合していきます。

売上を帳簿に載せずに横領する場合は、税理士にもバレないように当然行います。

税務調査は、まずは脱税を探しに行きます。それは税理士が知らないところで行われますので、税理士がいるから脱税しない、というものではありません。やる時はやるものです。

したがって、税理士がついているからといって税務調査が行われないとは税務調査官は考えていません。

裏話 どちらかというと、、、

さらに申し上げると、税務調査官は税理士がいない方が税務調査に行きたくないと考える面もあります。

経理の精度

なぜなら、税理士がいれば、帳簿の整理は当たり前に行われていて、書類もあるべきものが揃っています。帳簿自体も通常間違えはありませんし、申告書の別表の作成なども間違いなく行われています。

税理士がいれば、そういうことは当たり前に正しく行われて、不正や所得を不当に少なくしていないか等の調査の真の目的に集中できます。

しかしながら、税理士がいない場合、仕訳すら正しく行われていない場合や、あるべき書類がなく出てくるまでに時間がかかったり、調べていったら、売上も計上していなければ、仕入も計上していなかったということすらでてきます。

別表に謎の数字があったりして、何年も遡らないと解消されない恐怖の申告書と出会ったりすることもあります。

そうなると調査どころではありません。調査の時間は限られていますので、会社の経理を一から教えるなんてこともできませんし、そもそもそれでは税務調査ではありません。

修正申告書を作れない

経理はそれなりに行われている会社でも、税務調査の結果誤りが把握された場合に、通常は修正申告書の書き方を知っている方はいません。

そうなると必然的に税務調査官が作成することになります。それも一手間です。

税務調査官は、年間の調査件数が決まっていますので、一件に時間がかかるほど、自分の調査時間を圧迫します。

不正を把握するために、銀行調査や反面調査に時間を費やすならともかく、修正申告書作りに時間を割きたくはないのです。

どちらかといえば税理士がいない方がやりたくないという面も

以上2点から、税務調査官の中には税理士がいない方が面倒だなと考える側面が感覚的にあります。

もちろん、税理士がいる方が緊張感を持ってやらなければならない部分もあります。

税理士がいない方がやりやすい面も

一般の税務調査は、任意調査ですので、会社の書類や電子データを確認する際には、必ず会社に許可を求めます。

例えば、メールで取引のやりとりを行っている場合には、今でこそ当たり前に「パソコンのメールを見せてください」と税務調査官はいうかと思いますが、「メールは個人的なものもあるから見せる必要はない」という税理士もいたりします。

そういう場合は、税理士を説得するといったことも出てきますので、そういう面では会社さんだけとやっている方が見せてもらいやすいという面もあるかと思います。

しかしながら、先にも記したように税理士がついているのが当たり前なので、それが理由で税理士のついていない会社を選ぶということはありません。

(おまけ)33条の2の書面添付の場合は話は別

しかしながら33条の2の書面添付があれば話は別です。

本制度は税理士がこの申告は大丈夫だ!という太鼓判を押し、それならば、と税務当局はそれを尊重し、調査を省略することにより税務執行の円滑化を図るという趣旨のものですので、よっぽど誤りが想定されなければ、手をつけません。

こちらはあれば明らかに調査が入りにくくなります。

結 論

以上のことから、33条の2ではない、通常の税理士の署名押印の有無が、税務調査を受ける受けないに影響を与えることはほぼありません。

税務調査というのは、税務当局と接触のない人たちからすると不安を抱くものだと思いますので、色々な噂が飛び交うのかもしれません。税理士がついていない会社からすると、「税理士の署名がないと、、」と言われると不安を掻き立てられるものだと思います。

しかしながら実務の上ではそういったことは、税務署の中にいた人間の経験から「ない」と言えます。

執筆者 ジャパンネクス株式会社代表・税理士・元国税専門官 海野 耕作

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