税務調査は拒否できる?任意調査とは?元国税調査官が解説

税務調査 拒否 アイキャッチ

通常行われる税務調査が「任意調査」と呼ばれていることをお聞きになったことがある方は多いと思います。国税局の査察部が行う令状のある「強制調査」に対してこのように呼ばれます。

しかしながら任意調査が具体的にどのようなものかまでご存知の方は少ないのではないでしょうか。

今回はそんな任意調査にスポットを当てて元国税調査官の経験を基に解説したいと思います。

早速ですが、任意という言葉からこんなことを思いませんか?

任意調査というのだから税務調査は拒否できるのでは?

結論から言うと

拒否はできますが、その代わりに1年以下の懲役又は50万円以下の罰金をという罰則を受ける可能性があります。

つまり、拒否できなくはないありませんが、拒否すると罰則があるので、間接的に調査は強制されていると一般的に言われています。

それでは詳しく見ていくことにしましょう。

まずは任意調査とはどういうものなのか?という点から見ていきましょう。

この記事を書いた人

税理士(元国税調査官)

税務署に12年間勤務。主に法人税の調査に従事。

現在は、クラウド税務ソフト「全力法人税」、「全力消費税」や「全力電子帳簿」等を提供するジャパンネクス株式会社の代表を務める。

税務署側の視点を交えながら、主に法人税・消費税について一般の方に向けて実務に直結した税務情報を分かりやすく解説します。

ジャパンネクス株式会社

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任意調査とは

堅苦しい話になりますが、まずは条文を紐解いてみましょう。

任意調査を根拠条文から理解する

国税通則法第74条の2が税務職員が税務調査で質問ができる根拠条文となっています。内容は以下のとおりですが、わかりやすいように省略等少し手を加えています。

国税庁、国税局若しくは税務署の当該職員(以下税務職員という。)は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、調査対象者ほか一定の者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件(その写しを含む。)の提示若しくは提出を求めることができる

ここでのポイントはこの規定の最後の部分の「できる」という表現です。「提出しなければならない」といった強制的な表現となっていません。

では、それを拒むことができるのでしょうか。

税務調査は拒否できるのか?

冒頭で触れていますが、法律上は、拒否は可能ではあるが、罰則があるという立て付けになっています。

任意調査は間接的に強制されている

前述した条文国税通則法第74条の2で規定している税務職員が質問できる権利を質問検査権といいますが、これを拒むと罰則があります

罰則の条文もみてみることにしましょう。こちらもわかりやすいように少し手を加えています。

国税通則法第127条

「次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

一 省略

二 税務職員の質問検査権の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者(執筆者注:要するに従わない者)

  税務職員の質問検査権の規定による物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出した者」

以上のように調査官の求めに応じない場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金ということになります。

結論

したがって、拒否はできるが罰則を受ける、というのが結論です。

しかしながら、通常罰則を受けたい人などいないので拒否できないと言ってよいのではないかと思います。

結局調査官の言いなりで全部協力しなけ

そういうわけではありません。

調査官の質問検査を拒めるケースも実はあります。

 

 

税務調査はまったく拒否できないのか

調査官の質問検査に対してすべて協力しなければならないかというとそうではありません。

調査官の質問検査が正当なものでなければならないのです。つまり正当なものでなければ拒否することができるのです。

詳しく見ていきましょう。

 税務職員は勝手に何もできない

質問検査権は申告納税制度を支える重要なものです。これを拒否していいはずがありません。

しかしながら、もう一度前述の国税通則法第74条の2を見てほしいのですが、その条文では「調査について必要があるとき…提示若しくは提出を求めることが求めることができる」となっており、「提示若しくは提出をしなければならない」とはなっていません。

そのために税務職員は何かを確認するときには必ず代表者の方あるいは税理士の方などしかるべき人にそれをして良いか確認を取ります
許可をもらわない限りそれをすることができないからです。

なぜなら許可を経ずに行えば違法調査となり、証拠能力が失われます。また、調査対象者はそれを拒否して罰則を受けるという選択肢を持っていると言えば持っているからです。

しかし税務職員がそれならばといってその罰則を適用することはまずありません。

税務職員の使命の一つが適正公平な課税です。
罰則を適用したのではそれが実現できません。ですので税務職員はそれが必要とあらば執拗に許可をもらえるまで求め続けることになります。

 正当な理由がなければ拒否できる

正当な理由があれば「調査官の望むもの=質問検査権の範囲」となります。
紹介した条文の中に「調査について必要があるとき」と規定されています。必要があるときとは、それをする正当な理由があるときであることを意味します。

逆を言えば正当な理由がなければ拒否できます。
例えばまったく理由なく調査官の趣味でその箪笥の引き出しを開けて見せてくださいなどと言えば、断れるのは当然です。必要があると言えないからです。

税務調査は拒否できるか まとめ

いかがだったでしょうか。任意調査というものがご理解いただけましたでしょうか。

質問検査に対して従うかどうかの判断が調査を受けている者に一応委ねられているがために、そうでない強制調査に対して「任意」と呼ばれているということでした。

ただし拒否すると罰則があるために「任意調査」と呼ばれていても実質的に強制力を持っているのでした。

税務調査のときには、調査官は求めるものがあれば必ず許可を求めてきますので、その理由をよく考えて、調査官の立場に立って、それは確認する必要があるなと思えばそれに応じ、わからなければよく理由を聞いてみましょう。理由に正当性がなければ応じなくてもよいからです。

質問検査の理由がわからなければ、調査官に質問し、自分がそれを確認する必要があるか納得できたら応じ、できなかったら納得できるまで聞いてみましょう。確認する権利は持っているからです。
そうすれば必要以上のものを開示しなくてすむ場合が出てこようかと思います。

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