会社の決算書に売上の下に「売上原価」という言葉を目にします。サービス業などだと売上原価がない場合もありますが、物を仕入れて売ったり、物を作って売った場合に原価を計算する必要があります。
売上高の求め方を解説していきます。
売上原価とは
売上原価とは、端的に言うと売上に直接貢献した費用のことをいいます。
直接貢献とは、物を仕入れて売る場合は、その仕入れた物の代金がそれに当たります。物を作って打った場合は、その物を作るための原材料や部品、実際に作った人の人件費などがそれに当たります。
もう少し具体的な例で説明します。八百屋で次のような取引がありました。
❶ 50円のリンゴを10個仕入れました。仕入が合計500円です。
❷ 1個100円で10個売りました。売上が合計1,000円です。
これを損益計算書という決算書にすると次のようになります。
売上高 | 1,000 |
売上原価 | 500 |
売上総利益 | 500 |
売上原価は❶の50円×10個 = 500円と計算できます。
このように売上高1,000円に直接貢献したのはそのリンゴの仕入高500円です。そのリンゴの仕入高500円を売上原価と呼びます。
この例は最も単純な売上原価の求め方です。
売上原価は売上総利益を算出する上で欠かせないということに気づくと思います。
売上原価の求め方 その計算式とは
次に売上原価の求め方を計算式で見てみましょう。次の式になります。
売上原価の計算式
【商品販売の場合】
【製造業の場合】
売上原価を求める手順
具体的には、次の二つの段階を経て原価を求めます。
- 債務を確定させる
- 売上に対応する原価だけを抜き出す(費用収益対応の原則)
まず、「⒈債務を確定させる」から見ていきましょう。
⒈ 買掛金、未払金、未払費用を拾い出す
「債務を確定させる」とは、つまり
「会社が支払うべき債務で決算期末までに確定しているものをすべて拾い出す」
ということです。
これについては次の記事で詳しく解説していますので、そちらをご覧ください。
⒉ 売上に対応する原価だけを抜き出す
債務が確定できたら次に、売上に対応する原価を抜き出します。これが今期の売上原価になるわけです。
詳しく見ていきましょう。
費用収益対応の原則【最重要】
会計の考え方の一つに「費用収益対応の原則」というものがあります。費用収益対応の原則とは
【重要ポイント1】
という考え方です。
これは自力で経理をしていく上で最重要の会計の考え方になりますので必ず覚えましょう。この考え方が常識となるまで染み込ませてください。
逆を言えば「今期の収益獲得に貢献しない費用は今期の費用から除く」ということになります。
売上に対応する原価だけを抜き出すとは、最初に記した計算式の期末棚卸高の部分を差し引くことによって導きだします。
期首製品棚卸高 + 製造原価 ー 期末製品棚卸高 = 売上原価
具体的にもう一度売上原価を求めてみましょう。
期首に商品が倉庫に20個あったとしましょう。今期中に110個仕入れ、期末の時点で倉庫に30個残っていたとします。商品の仕入値が100円の場合、当期の売上原価はいくらになるでしょう。
答えはこうです。
今期中に売ることができた商品数は期首に倉庫にあった20個と今期中に仕入れた110個の合計130個です。これが全部売れたのでしょうか?
まだ倉庫に30個残っています。つまりこの30個は売れていないのですから売上に貢献していません。したがって、この30個は売上原価から除かなくてはいけません。
期中の売上原価は次のようになります。
(20 + 110 – 30 )個 × 100円 = 10,000円
なぜ棚卸しをするか
売上に対応する原価を抜き出すために期末棚卸高を差し引くというのは裏を返せば、なぜ棚卸をするのかという問いに答えることになります。
もうお分りだと思います。そう、当期の売上原価がいくらになるかを算出するために棚卸しをする必要があるのです。棚卸しをしなければ期末商品棚卸高を求めることがわからないので、売上原価がわからないのです。それだけ大事な作業だといえます。
まとめ
売上原価の求め方について解説しました。お分かりになりましたでしょうか。今回の重要なポイントは次の2つです。
- 売上原価を算出するには期末棚卸高を差し引くということ
- 費用収益対応の原則
会計をやっていくにあたって費用収益対応の原則の考え方はマストです。逆にこの感覚を持っていると経理処理の際にかなり役に立ちます。
例えば10年分前払した地代をすべて今期の費用として良いでしょうか?
いや今期に関係しない9年分は今期の売上に貢献していないのだから除かないといけない、と気づくでしょう。
実際は前払費用として資産計上するわけですが、この考え方はあなたの羅針盤となり感覚的に費用がどの決算期に属するのかがわかるようになるのです。
執筆者 ジャパンネクス株式会社代表 元国税調査官 税理士 海野 耕作
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