
初めての法人税の確定申告を自分でやってみようと思い、税務署から郵送されてきた申告書類を確認してみた。
申告書類を一枚一枚確認していき別表16(7)(少額減価償却資産の取得価格の損金算入の特例に関する明細書)を手にする。
少額減価償却資産の取得価格の損金算入の特例に関する明細書?
なんか、難しそうな書類が出てきたな、、、
面倒そうだし、まぁ、自分の会社に関係ないでしょ!
ちょっと、待ってください!
別表16(7)は、設立したての会社や売上規模がそこまで大きくない会社は絶対に無視してはいけない書類です。
なぜなら、この書類を申告書に添付して、申告するだけで、節税効果や事務負担を軽くできる可能性があるからです!
このように、別表16(7)を今まで見たことがない方でも、別表16(7)とはどのような書類で、どのように書くものかをわかりやすく解説します。
始めに言いますが、別表16(7)申告書の中でもっとも簡単な書類の一つです。
この記事の特徴
中小企業向けに初めて法人税の申告書を作成する初心者の方でも、申告書類の書き方がわかるように解説します。
減価償却費について、大企業も含めて解説すると大変な分量を説明することになりますが、中小企業に絞ることで知らなければならない事項が激減します。
中小企業にとっては、別表16(7)は最も簡単に作成できる書類の一つで、誰でも簡単に作成できるので安心してください。
数多くの税務調査を国税調査官として行ってきた経験を持つ私が、重要ポイントは押さえながらメリハリをつけてわかりやすく解説します。
繰り返しますが、この記事は中小規模の会社の法人税の申告を自力で行う方向けの記事です。
※この記事で中小企業者という場合は、資本金(出資金)1億円以下の普通法人(資本金または出資金の額が5億円以上の法人等の100%子法人を除く)を指します。
ただし、資本金又は出資金の額が1億円以下の法人等であっても、次の法人はこの特例の適用を受けることができません。
- 大規模法人(資本金又は出資金の額が1億円超の法人等)から2分の1以上の出資を受ける法人
- 2以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人
- 常時使用する従業員の数が500人を超える法人※
- 税制の適用を受けようとする事業年度における平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年 15 億円を超える法人 (平成31年4月1日以降に開始する事業年度決算から適用)
- 連結法人
判定の仕方を国税庁が公表していますので、詳しくはこちらをご覧ください。
まずは、別表16(7)という書類は、どのようなものなのか、確認していきましょう。
目次
1 別表16(7)(少額減価償却資産の取得価格の損金算入の特例に関する明細書)とは
1-1 別表16(7)の役割とは
別表16(7)という書類は、いったいどのような書類なのでしょうか。
別表16(7)の正式名称は「少額減価償却資産の取得価格の損金算入の特例に関する明細書」と言います。
それでは、少額減価償却資産の取得価格の損金算入の特例とは、どのような制度なのでしょうか。
詳しく見ていくことにしましょう。
1-2 少額減価償却資産の取得価格の損金算入の特例とは
別表16(7)という別表は、少額減価償却資産の取得価格の損金算入の特例を適用するため必要であることがわかりましたので、次にその少額減価償却資産の取得価格の損金算入の特例というのは、どのような制度かを確認していきます。
1-2-1 少額減価償却資産の取得価格の特例の概要
まずは、少額減価償却資産の取得価格の損金算入の特例の制度の概要から見ていきましょう。
「少額減価償却資産(※1)の取得価格の損金算入(※2)の特例」というのは、一言で言うと、中小企業者のみ適用できる特例であり、取得価格が30万円未満の資産を取得し、事業で使い始めた事業年度に、その取得した減価償却資産の全額を、減価償却することなく費用化できる制度です。
※1 「少額減価償却資産」とは、少額減価償却資産の特例の対象となる取得価額が30万円未満の減価償却資産を指します。
減価償却資産とは、使用することによって価値が減っていく資産のことを指します。
身近なもので例を挙げるなら、建物、車両やパソコンなどの器具備品などが、減価償却資産です。
減価償却資産について、もっと詳しく知りたい方は、次の記事でわかりやすく解説していますので、ご確認ください。
※2 「損金算入」とは、法人税法上、法人が収入を得るために費やした費用を必要経費(損金)として計上することをいいます。
損金についてよくわからないという方は、次の記事をご覧ください。
この概要部分では、なんとなくのイメージを掴んでもらえればOKです。
後でこの特例を適用するための要件部分で詳しく解説していきます。
ここでは、30万円未満の資産は減価償却することなく全額費用にできるんだ。くらいに理解していれば大丈夫です。
それでは、次になぜこの特例があるのか、特例を使うべき理由について、見ていきます。
1-2-2 特例がある理由
なぜ、このような特例があるのでしょうか?
それは、小規模な事業者が、すべての少額な資産を耐用年数に応じて費用計上することは、大変な手間が掛かってしまうというのが最大の理由の一つです。
そのため、その事務的な手間を軽減するために創設された特例が「少額減価償却資産の取得価格の損金算入の特例」です。
例えば、特例を適用せずに、会社Aが28万円のカメラを購入したとします。
カメラは器具備品で一般的には耐用年数が5年なので、5年かけて減価償却する必要があります。
耐用年数5年の定率法の償却率は0.5ですので、この例での、1年目に経費として計上できる減価償却費は「280,000円(取得価額) × 0.5(定率法・償却率) = 140,000円(償却限度額)」という式で算出され、140,000円となります。
2年目に経費として計上できる減価償却費は、「140,000円(残存価格)×0.5(定率法・償却率)=70,000円(償却限度額)」という式で70,000円となります。
この計算を5年間行い、費用化していくことになります。
原則通りの減価償却を行った場合、イメージは下の図のようになります。
原則通りの減価償却のイメージ図

こんな少額な資産を5年かけて管理・計算していくのはかなり事務コストがかかりますよね。
ですから、「30万円未満の固定資産はその使い始めた日に全額費用にしていいですよ。」という中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入制度の規定が設けられました。
先程の例と同じく、会社Aが28万円のカメラを買ったとします。
これを、特例適用した場合、以下の図のようなイメージとなります。
少額減価償却資産の取得価格の損金算入の特例の制度のイメージ図

以下の表が、特例を適用した場合と通常の減価償却を行った場合の費用化に関する比較表になります。
結果として、同じ金額の費用化ができますが、より早く経費とすることで管理も簡単になります。

また、特例を適用することで、実は節税効果もあります。
例えば先程の例を使って解説すると、会社Aが28万円のカメラを通常の減価償却を行ったとした場合で、今期の所得が140,000円だったとします。
中小企業を例に実効税率が30%だとすると、140,000×30%で42,000円納付することになります。
しかし、140,000円の減価償却費のかわりに280,000を全額費用とした場合、140,000円費用が増えますので、会社Aの所得金額は0になり、税金も0になります。42,000円節税したことになります。
| 特例を適用した場合 | 通常の減価償却をした場合 | |
|---|---|---|
| 償却費差引前利益 | 280,000円 | 280,000円 |
| 償却費 | 280,000円 | 140,000円 |
| 所得金額 | 0円 | 140,000円 |
| 税額 | 0円 | 42,000円 |
いかがでしょうか?
中小企業者としては、便利かつ節税効果もある特例であると、ご理解いただけたでしょうか?
このような、便利な特例ですが、この特例を適用するためには条件があります。
では、特例を適用するには、どのような条件があるかを見てましょう。
1-2-3 特例を適用するための6つの条件
これまでの解説で多くの中小企業者の場合、「中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入制度」を適用することで、事務量を減らし、かつ購入した資産を一時の損金にすることができ、大変便利な特例であることが分かったと思います。
それでは、この特例を適用するためにどのような条件があるのでしょうか。
中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入制度を適用するには、全部で以下の6つの条件があります。
- 中小企業者であること
- 青色申告書を提出する法人であること
- 取得した資産の取得価額又は製作価額が30万円未満であること
- 特例を適用する資産の取得価額の合計金額が300万円を超えないこと
- 購入した資産を、経費として計上していること
- 別表16(7)を申告書に添付していること
それでは、条件の内容を一つずつ見ていきましょう。
特例適用のための、条件フローチャート

【条件1】中小企業者であること
まず最初の条件は、特例を適用しようとする法人が中小企業者であるということです。
中小企業者の説明は、記事冒頭で説明していますが、ここでもう一度確認しておきます。
中小企業者とは
中小企業者というのは、資本金(出資金)1億円以下の普通法人(資本金または出資金の額が5億円以上の法人等の100%子法人を除く)を指します。
ただし、資本金又は出資金の額が1億円以下の法人等であっても、以下の法人はこの特例の適用を受けることができません。
- 大規模法人(資本金又は出資金の額が1億円超の法人等)から2分の1以上の出資を受ける法人の場合
- 2以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人の場合
- 常時使用する従業員の数が500人を超える法人の場合
- 税制の適用を受けようとする事業年度における平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年 15 億円を超える法人 (平成31年4月1日以降に開始する事業年度決算から適用)の場合
- 連結法人の場合
【条件2】青色申告書を提出する法人であること
青色申告書を提出する法人であることが特例適用の条件の一つとなっています。
青色申告というのは、法人税の申告方法の人で、複式簿記に基づいて決算を行うことで、白色申告と比べて節税面で大きなメリットがある制度です。
この特例を適用できることについても、「青色申告」のメリットの一つとなります。
なお、「青色申告制度」や「青色申告書」について、詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。
【条件3】取得した資産の取得価額又は製作価額が30万円未満であること
次の条件は、取得した資産の取得価額又は製作価額が30万円未満であることです。
取得価額及び製作価額というのは、以下の式で算出されます。
- 取得価額 = 購入代金+購入するためにかかった費用(付随費用)(※1)+使用するためにかかった費用(事業共用費用)(※2)
- 製作価額 = 原材料、労務費、経費+使用するためにかかった費用(事業共用費用)(※2)
取得価額等の算出方法に関する詳しい解説については、後述します。
ここで一つ注意が必要です。
それは、取得価額10万円未満の資産については、特例適用外となります。
理由は、以下の通りになります。
コラム「なぜ、取得価格10万円未満の減価償却資産は特例の対象ではないのか」
それは、取得価額が10万円未満の資産を購入した場合は、そもそも減価償却が必要ないためです。
どういうことかというと、取得価額が10万円未満の資産を買った場合、もともと事業で使い始めた事業年度で全額を費用とすることが出来ます。
何の条件もなしに、「消耗品費」などの勘定科目で、本や消しゴムを買った時のように、経費に入れてもよいということになります。
適用外というより、適用しなくても全額費用化できるから適用しないという方が正しいかもしれません。
総括すると、以下の図のようになります。

【条件4】特例を適用する資産の取得価額等の合計金額が300万円を超えないこと
次の条件は、特例を適用できる資産の限度額に関するものです。
なお、会計期間が1年に満たない場合には300万円を12で割り、これにその会計期間の月数を掛けた金額。月数は、暦に従って計算し、1月に満たない端数を生じたときは、これを1月となります。
1年未満の限度額の計算式
300万円÷12か月×その事業年度の月数=限度額
例えば、28万円のカメラを10台購入した場合は、以下の図のように、10台の合計280万円全額を特例で費用化できます。
しかしながら28万円のカメラを11台購入した場合、下の図のように、10台の合計金額である280万円については、当期において、全額を経費にできますが、11台目については、限度額を超えてしまっているため、通常の減価償却で費用化していくことになります。

【条件5】取得した資産を経費として計上していること
次の特例を適用の条件は、帳簿上において、取得した資産を経費として計上しているというものがあります。(損金経理要件)
ほとんど、気にしなくてよいのですが、要件となっているので一応解説します。
損金経理要件というのは、単純に購入した資産を、費用として計上しているかどうかを言っています。
例えば、20万円のパソコンを購入して、すぐに使い始めたとした場合、損益計算書において、パソコンの購入費用を「消耗品費」として計上していれば、良いということです。
【条件6】別表16(7)を申告書に添付していること
次の特例適用の条件は、別表16(7)「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書」を申告書に添付する必要があります。
これについては、冒頭から別表16(7)の役割として「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を適用するために必要である旨説明しました。
それが正にここで要件となっているわけです。
いくらこの特例を理解して他の5つの要件を満たしていたとしても、この別表16(7)を添付していなければ税務調査ですべて否認されてしまうということが起こりえますので、とても大切な別表ということが理解いただけると思います。
次の章では、この別表16(7)の書き方について、詳しく解説していきたいと思います。
コラム「取得価額10万円未満の資産を全額損金にするには、何か書類は必要?」
取得価額10万円未満の資産を全額損金にするために、書類等は必要ありません。
因みに取得価額が10万円未満の資産の購入の場合は、この別表16(7)に記載する必要ありません。
単純に「消耗品費」等の経費で経理するだけで結構です。
10万円未満の資産を入れてしまうと、入れたことにより300万円の限度額を超過する場合には損してしまうことになります。
2 別表16(7)の書き方
それでは、特例を適用するために必要や書類である「別表16(7)」の書き方について、解説していきます。
別表16(7)は法人税の別表の中でも最も簡単に作成できる書類の一つです。
まずは、別表16(7)が、いかに簡単な書類なのかを理解して頂くために、多くの中小企業が別表16(7)を作成したときにどのようなものになるか記載例をお示しします。
例題内容
購入した資産:パソコン 1台 220,000円(税込み)
経理方法:税込経理
資産を購入した日:令和4年4月30日
一般的な中小企業が作成する別表16(7)の記載例

別表16(7)は、これしか記載するところがありません。
購入した資産が増えれば、2列目以降に書き足していくような形になります。
いかがでしょうか?
これだけを記載し、申告書に添付するだけで、節税できると考えると絶対この特例を使った方がいいですよね。
次は、別表16(7)の具体的な書き方を解説していきます。
2-1「種類」「構造」「細目」を書く
耐用年数省令別表第一から別表第六までに定める種類、構造及び細目に従って記載します。
機械及び装置については、耐用年数省令別表第二の番号を「構造」に記載してください。
パソコンを例にすると、別表第一では次のように分類されています。
| 種類 | 器具及び備品 |
|---|---|
| 構造 | 事務機器及び通信機器 |
| 細目 | パーソナルコンピュータ その他のもの |
国税庁が公表している手引きにはこのように記載することになっていますが、実は実務ではここまで詳しく書かなくても問題なく通っています。
実務での記載例は次のとおりです。

コラム「耐用年数省令を見ても「種類」「構造」「細目」になにを書くかわかりません」という方へ
「種類」「構造」「細目」についての誤り等を、税務署から指摘することは、ほとんどありません。
そのため、実務においては、耐用年数省令にとらわれず、税務調査等で記載した資産がどの資産であるのか、尋ねられた時に、即答できるよう、自分自身が分かるように書いておく方が重要です。
例えば、パソコンを購入した場合、「種類」欄に「器具備品」、「種目」欄に「パソコン」と記載するだけで、充分です。
2-2「事業の用に供した年月日」を書く
当期の中途で事業の用に供した資産について、その事業の用に供した年月を記載します。

事業の用に供した年月日というのは、簡単に言うと事業で使い始めた日のことを言います。
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