
初めての法人税の確定申告を自分でやってみようと税務署から郵送されてきた申告書類を一枚一枚確認していくと、別表16(2)(旧定率法又は定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書)という書類があった。
別表16(2)?
なんだか記載する欄がいっぱいだぞ…
これは面倒そうだな…
「旧定率法又は定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」ということは、減価償却に関係する書類かな?
「減価償却」って言葉は聞いたことがあるけど、実はよくわからないんだよな…
それに「定率法」ってなんだろう?
会社を設立して新しいパソコンや応接セットを買ったけど、自分の会社に関係する書類なのかな??
よくわからない…
お察しのとおり、別表16(2)は減価償却に関する書類です。
減価償却というのは、簡単に言うと、建物や車両などの購入した資産が、使用することで時間の経過にしたがって価値が減少するという考え方です。買った時に一度に費用にするのではなく、その価値が減った分を段階的に費用にすることをいいます。
「定率法」というのは、その減価償却として費用とする金額を計算するやり方のひとつです。
その「定率法」という方法を使って減価償却費を計上した場合に作成する必要がある書類が、別表16(2)ということになります。
別表16(2)は書く欄がたくさんあって「難しそうだな」と感じる方も多いかもしれません。
しかし、ご安心ください。この記事を読みながら一緒に書き進めてもらえれば減価償却の基礎はもちろん、別表16(2)が初心者の方でもかならず書き上げることができます。
それは頼もしい。
よーし、勉強だ!
この記事の特徴
中小企業向けに初めて法人税の申告書を作成する初心者の方でも、申告書類の書き方がわかるように解説します。
大企業に関する事項も含めて解説すると大変な分量を説明することになりますが、中小企業に絞ることで知らなければならない事項が激減します。
別表16(2)は書かなければならない欄が多い書類の一つですが、中小企業にとっては、多くの場合、書く欄は限られますので、決して難しいというものではありませんので安心してください。(ただ面倒ではありますが…)
数多くの税務調査を国税調査官として行ってきた経験を持つ私が、重要ポイントは押さえながらメリハリをつけてわかりやすく解説します。
繰り返しますが、この記事は中小規模の会社の法人税の申告を自力で行う方向けの記事です。
まずは、別表16(2)は、どのような場合に必要になるのかを判断できるよう、別表16(2)を書く必要があるかどうかの判定の仕方から解説していきます。
目次
1 別表16(2)とは
まず別表16(2)がどういった書類なのかのイメージを持つために、別表16(2)の記載例から確認してみましょう。
1-1 別表16(2)の記載例
ご欄のとおり、たくさんの欄があって難しそうだと思いますよね。
でもよく見ていただくとわかるように、使用しない欄も多く、また同じ金額を転記したり、足し算や割合の掛け算など簡単な計算で行うものがほとんどです。
該当の資産が少なければ、書く列も少なくなります。
別表16(2)は決して難しいというものではありません。(面倒ではありますが…)
この別表16(2)が自社に必要なものかどうかはすぐにわかります。
この面倒そうな別表16(2)をすべて理解して結局自社に必要ないとなったらがっかりですよね。
そんなことがないよう冒頭で別表16(2)を作成する必要があるかどうかの判定の仕方から解説します。
1-2 別表16(2)が必要かどうかの判定の仕方
先程、少し触れたとおり、別表16(2)の正式名称は「旧定率法又は定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書」といいます。
つまり「定率法」で減価償却した資産がなければ、この別表16(2)は作成する必要はないということです。
資産を持っていても作成しなくてもよいこともあるんですね。
ところで、定率法で減価償却した資産というのは、どうやってわかるのでしょうか?
定率法で減価償却した資産があるかどうかは、実は会社で持っている資産の種類で簡単にわかります。
以下の種類を持っている会社は、定率法で減価償却した資産を所有していることになります。
(ただし、減価償却資産の償却方法の届出を出して、償却方法を自社で決めていない場合に限ります。(ほとんどの中小企業が出していません。)この言葉の意味がわからない方は、無視して大丈夫です。つまり届出は出していないわけですから。)
定率法が適用される資産一覧(定率法が法定償却方法である資産一覧)
資産の種類 | 具体例 |
---|---|
車両運搬具 | 自動車、バイク、トラック、タンク車、大型特殊自動車など |
器具備品 | パソコン、コピー機、プリンター、事務机、キャビネット、応接セット、陳列棚、エアコンなど |
工具 | 検査工具、測定工具、建築工具、加工工具、切削工具、取付工具など |
機械装置 | コンプレッサー、プレス機、クレーン機、切断機、ベルトコンベヤー、ブルドーザー等自走式作業用機械設備、旋盤、溶接機、工作機械、動力設備、冷凍設備など |
船舶 | 輸送船、漁船、はしけ、ヨット、モーターボートなど |
航空機 | 飛行機、ヘリコプターなど |
これらの資産を持っていなければ別表16(2)を作成する必要がないのですね。
我が社は、会社の営業で使うための自動車を購入しています。
ということは、別表16(2)の作成が必要ということですよね。
そのとおりです!自動車を所有しているということは、新米社長さんの会社も別表16(2)を作成する必要があります。
ちなみに10万円に満たない資産は減価償却自体する必要がありません。
上の表に該当する資産で10万円以上のものが、別表16(2)を作成する必要のある対象に入ります。
また、資産の価額が30万円に満たない場合は、特別に別表16(2)を作らず、もっと簡単な別表16(7)という書類を作成すれば、減価償却せず、購入した年度で全額費用にできるという制度があります。詳しくは、こちらをご覧ください。
さらに、資産の価額が20万円未満の場合は、別表16(2)よりも簡単な別表16(8)を作成することにより一律3年間で費用にできるという制度もあります。詳しくは、こちらをご覧ください。
別表16(2)を作らなくてもいいような制度がいくつもあるんですねー
我が社の車両は、30万円未満でないから別表16(2)は作成だな。
別表16(2)が必要かどうかの判定の仕方がわかりましたので、別表16(2)を作成する必要があるとなった場合の解説をここから始めていきます。
そもそも別表16(2)の役割とは何かのそもそものところから理解していくことにしましょう。
1-3 別表16(2)の役割とは
別表16(2)という別表の役割について確認していきます。
冒頭で解説しましたが、
これを理解するためには、旧定率法と定率法とは何か?ということを理解する必要があります。
定率法と旧定率法が何かを知るためには減価償却とは何か?ということを理解する必要がありますので、減価償却についてまず理解することにしましょう。
1-3-1 減価償却とは
減価償却というのは、簡単に言うと「資産の価値が減った分を、使用できる期間にわたって費用にする」ということです。
会社が事業で必要な資産を10万円以上で購入した場合には、その購入代金の全額を購入した事業年度で経費にすることは、原則できません。
資産というのは、購入後すぐに消費される消耗品などと違い、数年または、数十年にわたって使用するため、購入時に全額を経費することはできないということになっています。
そこで、資産の購入代金は、使用することによって、時間の経過によりその資産の価値が減少した分を段階的に費用にしていくというのが減価償却の考え方です。
300万円の自動車を買った例で考えれみましょう。
この車両が3年しかもたないものと仮定します。
なるほど、これが減価償却の考え方なんですね。
では、資産の価値が減った分だけ費用にするとなっていますが、自分たちで資産の価値が減ったと思う分だけ費用にしていいということでしょうか。
実は、そうではありません。
「資産の価値が減った金額」は法人税法に規定されている算出方法で行う必要があります。
ここで、法人税法に基づいて算出した「資産の価値が減った金額」のことを、「償却限度額」といいます。
次は、この「償却限度額」について、解説していきます。
1-3-2 償却限度額とは
法人税の規定では、公平な課税の観点から減価償却費として損金(法人税法で経費と認められる金額)とできる金額の範囲に制限が設けられています。
この減価償却費として、損金にすることができる金額を、償却限度額と言います。
会社の好きに費用とする金額を決めていいとすると、「今年度は利益がたくさん出たから減価償却費を増やして利益を減らして税金を減らそう」となりかねません。そこで、償却限度額の範囲内なら費用としていいよ、という仕組みにしてるわけです。
なるほど、償却限度額の金額だけ、費用として認められるということですね。
では、どうやって、償却限度額を計算するのでしょうか?
税務上の償却限度額というのは、次の4つの要素から算出することができます。
- 償却方法
- 取得価額
- 法定耐用年数
- 償却率
一つずつ簡単に解説していきたいと思います。
【1】償却方法とは
償却方法というのは、償却限度額を算出する「式」にあたるもので、どのくらいのペースで減価償却費を計上するのかを定めるものです。
償却限度額の計算方法(償却方法)には、以下の方法あります。
- 定額法
- 定率法
2種類あります。
ここで、定率法が出てくるんですね!
償却方法というのは、2種類ありますが、どっちを使えばいいんでしょうか?
先ほども少し触れましたが、資産の種類ごとに適用できる償却方法が決められています。
複数の償却方法が認められている資産の場合は税務署へ届出(減価償却資産の償却方法の届出)を提出することで、会社自身が決めることができます。
しかし、この届出をしなかった場合、資産の種類ごとにその償却方法を選択したとみなすというものがあります。これを「法定償却方法」といいます。
なお、資産の種類ごとの選択可能な償却方法及び法定償却方法は下表のとおりです。
資産の種類ごとの選択可能な償却方法及び法定償却方法一覧表
資産の種類 | 法定償却方法 |
建物 | 定額法 |
建物付属設備、構築物 | 定額法 |
車両運搬具 | 定率法 |
工具、器具備品、機械装置 | 定率法 |
船舶、航空機 | 定率法 |
特許権、商標権、営業権、ソフトウェア、その他の無形減価償却資産 | 定額法 |
生物 | 定額法 |
なるほど!この表に書いてある「法定償却方法」が定率法になっている資産の減価償却を行うときに別表16(2)を作ることになるということですね。
冒頭の解説にあった、別表16(2)が必要かどうかの判定のときに出てきた「定率法が適用される資産一覧」は、法定償却方法が定率法のものということですね。
なお、定率法の償却費の特徴としては、耐用年数の初期においては、多額の償却限度費を計上でき、年々減少してような償却方法です。
他方、定額法は、毎年同じ金額を均等に償却する方法です。
定率法は、最初は大きいが、年々少なくなるというイメージを持っていれば大丈夫です。
【2】取得価額とは
取得価額というのは、正式には、取得価額 = 購入代金+購入するためにかかった費用(付随費用)+使用するためにかかった費用(事業共用費用)で算出します。
えーっと、、「取得価額 = 購入代金+購入するためにかかった費用(付随費用)+使用するためにかかった費用(事業共用費用)」….
この式って覚えるべきですか…
簡単に言うと、購入した際や使用の際にかかった費用も取得価額に入れてもいいですということです。
ですが、購入代金が取得価額になることがほとんどです。
ですので、取得価額=購入代金と思って差し支えありません。
【3】法定耐用年数とは
耐用年数というのは、購入した減価償却資産が何年間使用できるものなのかというものです。
なるほど。持っている資産が使用できる期間ということですね。
自分はあまり物持ちが良くないので、会社の車は3年くらいでダメになりそうなので、耐用年数を3年にすることにします。
実は耐用年数は実質的には、自分たちで決めることができません。
資産というのは、使用の状況などでそれぞれの会社ごとに違いが出るのが普通です。
ということは、会社がどのように使用しているのかやどのくらい稼働しているかなどから耐用年数を見積もることが一番実情に近いはずです。
しかしながら、多くの企業がこれをしていません。
なぜなら、税法において、資産の種類や構造によって、その資産の耐用年数を一律に規定しており、その決まった耐用年数以外で計算しても、税金の計算をする際には法定耐用年数で減価償却費を計算し直して申告する必要が出てきてしまうからです。
そのため、はじめから税法で定められた耐用年数を採用して減価償却費を計算することを選択する会社がほとんどなのです。
この税法で定められた耐用年数のことを、法定耐用年数といいます。
なお、耐用年数について、詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。
法定耐用年数については、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で別表第一から別表第六で定められており、ここから自分が取得した資産の耐用年数を調べることになります。
大量にあってどうやって調べていいかわけがわからないなぁ
正しく耐用年数が調べられるかなぁ…
この別表第一から別表第六に当てはめてください。
はい、やって。では誰もできないですよね。
でも安心してください。次の章の別表16(2)の書き方のところで具体的な効力方法を詳しく解説していますので。
【4】償却率とは
償却率というのは、減価償却限度額を算出する上で必要な割合のことを指す用語です。
償却率??
耐用年数で割ればいいんじゃないですか?
減価償却限度額は、基本的には次のように計算します。
そうなんですね。
えっーと、その償却率ってどうやってわかるんですか?
償却率は、「減価償却資産の償却率等表」から確認することができます。
耐用年数に応じて決まっています。
具体的な償却率の確認の仕方についても、これから解説する「別表16(2)の書き方」で詳しく説明します。
以上が税務上の償却限度額算出の4つの要素でした。
これらを使ってどうやって償却限度額を算出するんでしょうか。
償却限度額の算出方法については、例を出して簡単に解説していきたいと思います。
償却限度額の算出方法
先程、説明したとおり定率法の償却限度額を算出式は、「取得価額(期首帳簿価額)× 償却率」が基本となっています。
ですが、初めて償却限度額を計算する方だとイメージが付きにくいと思いますので、定率法での償却限度額の算出方法について、具体例を見ながら確認していくことにしましょう。
償却限度額の算出の方法具体例
償却資産:自動車
取得価額 | 2,000,000円 |
耐用年数 | 6年 |
償却率 | 0.333 |
【減価償却限度額の計算式】
2,000,000円(取得価格)× 0.333(償却率)=666,000円(減価償却限度額)
これが1年目の減価償却限度額の計算方法です。
2年目以降は、改定償却率や保証率などといったものを考慮する必要が出てきて、複雑なのですが、安心してください。
定率法の細かい計算の仕方を覚える必要は実はありません。
別表16(2)は、これまで解説した償却方法、取得価額、法定耐用年数、償却率がわかっていれば、別表16(2)を書いていくと自然と減価償却限度額の計算ができるような作りになっているのです。
1-3-3 別表16(2)の役割まとめ
減価償却は、法人税法では償却限度額の範囲内でしか損金(法人税法上の経費)として認められない仕組みになっています。
そこでそのように計算されているかを確認するための書類として別表16(2)が存在するのです。
別表16(2)は、取得価額や耐用年数、償却率、償却限度額などを記載し、償却限度額を超えて減価償却費を計上していると償却限度超過額を記載するといったように、法人税法の規定に則して定率法の計算がされているかを一覧で確認できるようになっています。
そして実は別表16(2)は、法人税法で決められた定率法での計算方法が書かれているので、そのとおりに書き進めていけば償却限度額が計算できるようになっているのです。
これも別表16(2)の大きな役割といえます。
それでは、ここからは実際に別表16(2)を書いていきましょう。
初心者にもわかるように丁寧に解説していきます。
2 別表16(2)の書き方
それではここまで解説してきた「別表16(2)」の書き方についてここから具体的に説明していきます。
別表16(2)は記載欄が多く、書くのが大変そうな別表と思われるかもしれませんが、すべての欄を使うわけではなく、半分程度しか使わない場合もあります。
自分で作成するには骨の折れる別表の部類には入りますが、決して難しいわけではなく、耐用年数を調べたり、償却率を調べたりと手間がかかり面倒な別表だと言えると思います。
まずは、多くの中小企業が別表16(2)を作成したときにどのようなものになるか記載例を見てイメージを最初に持っておきましょう。
今回の例は、多くのパターンに対応するために、償却超過額があったり、認容額があったりという記載例になっている分、より複雑になった例になっています。
実務では、最初の3列のように40番以降は空欄になる例がほとんどです。
そうなると用意された欄の半分ほどしか記載するところがありません。
購入した資産が少なれければそれだけ簡単になります。
どうでしょう。それなら書けそうと思えませんか?
それでは、別表16(2)の具体的な書き方を解説していきます。
次のような例を用意しました。
例題内容
決算期:令和4年1月1日から令和4年12月31日
償却方法:法定償却方法を採用
その他:期中に取得した資産は、直ちに事業の用に供されている。
資産の種類 | 車両運搬具1 | 車両運搬具2 | 器具備品 | 器具備品 | 器具備品 |
構造・用途 | 中型車 | 中型車 | 陳列棚 | 冷暖房機器 | 応接セット |
取得日・使用開始日 | R3.11.1 | R4.4.1 | H29.1.1 | R3.5.5 | R4.3.15 |
耐用年数 | 6年 | 4年 | 8年 | 6年 | 8年 |
取得価額 | 3,500,000円 | 1,650,000円 | 600,000円 | 800,000円 | 600,000円 |
期首現在帳簿価額 | 3,305,750円 | 1,650,000円 | 142,383円 | 622,400円 | 600,000円 |
当期償却額 | 1,100,815円 | 618,750円 | 47,556円 | 207,260円 | 150,000円 |
備考 | 中古資産: |
この例題を一目見てもわからない用語があるぞーという方も安心してください。
別表16(2)の書き方で一つ一つ詳しく解説していきますので読み終わった時点ではすべてわかるようになっていますので。
2-1 「資産区分」及び「取得価格」欄の記載
まず最初は、所有している「資産区分」と「取得価額」に関する情報を記載します。
❶ 種類(1欄)、構造(2欄)、細目(3欄)、耐用年数(6欄)を記載する
この四つの欄については、いわゆる先に解説した耐用年数表(耐用年数省令別表第一から別表第六)に記載があります。
ただこの耐用年数省令別表から探すのはたいへんです。
効率的に耐用年数を探す方法を解説します。
耐用年数を効率的に決定する2つの方法
この面倒な耐用年数を効率的に決定する2つの方法を紹介します。
- 階層選択式耐用年数表を利用する
- 全力耐用年数を利用する
いずれも耐用年数をなんとか簡単に探し当てて欲しいという気持ちで弊社が開発した便利ツールです。
普通自動車(プリウス)を購入した例にこの2つの方法を利用して耐用年数を決定する方法を解説していきます。
階層選択式耐用年数表を利用して耐用年数を決定する方法
階層選択式耐用年数表←こちらのリンクを開いてみましょう。
すると下のようなサイトが開きます。
この表を見て自社の資産が当てはまるものをクリックしていくことで耐用年数がわかります。
今回例は、普通自動車なので「車両及び運搬具」と書かれている行をクリックします。
すると、下のような画面が出てきますので、会社が保有する資産に該当する行を選択できなくなるまでクリックしていきましょう。
例題に当てはめると「>車両及び運搬具」⇒「>前掲のもの以外のもの」⇒「>自動車(二輪又は三輪自動車を含み、乗合自動車を除く。)」⇒「>その他のもの」」⇒「>その他のもの」で耐用年数は6年とわかります。
この表で種類、構造、細目もわかります。
上記の図にも記載があるとおり1番最初が種類で、2番目が構造、3番目が細目になります。
まとめると次の表のようになります。なお、記載例では、欄の幅も考え省略して記載しています。
耐用年数表 | この記事の記載例 | |
---|---|---|
種類 | 車両及び運搬具 | 車両運搬具 |
構造 | 前掲のもの以外のもの | その他のもの |
細目 | 自動車(二輪又は三輪自動車を除く) | 自動車 |
というような形で、種類、構造、細目、耐用年数までをも一気に確認することができます。
ちょっと、階層が深くて難しいなと思われる方もいるとは思いますが、それほど耐用年数は細かく分類されているということです。
耐用年数の確認を誤ってしまうと、正しく償却限度額は算出されませんので、よく確認しながら調べてみてください。
全力耐用年数を利用して耐用年数を決定する方法
次の方法の全力耐用年数は、資産の名称で耐用年数表を検索できるという優れものです。
先の例と同様に普通自動車を検索していきます。
全力耐用年数にアクセスしてください。
次のようなサイトが開きますので、「一般資産の検索」か「機械装置の業種検索」か「建物の検索」かから選択します。
今回の例は自動車ですので、機械装置でもなく、建物でもないことから「一般資産の検索」を選択します。
普通自動車で検索してみます。
次のような検索結果が表示されます。
普通自動車がプリウスだと仮定すると3ナンバーなので、一番下のものが該当し、耐用年数が6年であることがわかります。
種類、構造、細目も表示されていますので、この画面ですべて把握できます。
判定対象資産 | 普通自動車 |
---|---|
種類 | 車両運搬具 |
構造 | その他のもの |
細目 | 自動車 |
このような方法で、別表16(2)の❶種類、❷構造、❸細目、耐用年数が決定されます。
これを今回の例題に当てはめると次のようになります。
コラム「耐用年数省令を見ても「種類」「構造」「細目」に何を書くかわかりません」という方へ
「種類」「構造」「細目」についての誤り等を、税務署から指摘することは、ほとんどありません。(耐用年数は誤っていると減価償却費の金額が変わりますので、指摘を受ける可能性は極めて高いです。)
そのため、実務においては、耐用年数省令にとらわれず、税務調査等で記載した資産がどの資産であるのか、尋ねられた時に、しっかり回答できるように把握できていれば問題が生じることはないでしょう。
したがって、この書き方がわからないから税理士に依頼するというようなことまで不要で、構造、細目がどうしてもわからなければ、空欄でも大きな問題にはなりません。
例えば、パソコンを購入した場合、「種類」欄に「器具備品」、「種目」欄に「パソコン」と記載するということでも問題はないでしょう。
❷ 取得年月日(4欄)を記載する
この欄には、資産を取得した年月日を記載します。
基本的に購入した日を記載することになります。
❸ 事業の用に供した年月(5欄)を記載する
この欄には、その資産を事業の用に供した年月を記載します。
事業の用に供した年月日というのは、簡単に言うと事業で使い始めた日のことを言います。
ほとんどの場合は、「事業の用に供した年月日=納品された日」で差し支えありません。
ただし、決算期末において、資産を購入する際に、資産が自分の手元に届くのが翌期になってしまうような場合は、翌期の経費となるので注意が必要です。
事業の用に供した年月日について、詳しく知りたい方は次の記事を参考にしていただければと思います。
❹ 取得価額または制作価額(7欄)を記載する
この欄には、該当する資産の取得価額または、制作価額を記載します。
取得価額及び製作価額というのは、以下の式で算出されます。
取得価額 = 購入代金+購入するためにかかった費用(付随費用)(※1)+使用するためにかかった費用(事業供用費用)(※2)
製作価額 = 原材料、労務費、経費+使用するためにかかった費用(事業供用費用)(※2)
※1 購入するためにかかった費用とは
送料、購入手数料、関税等、購入するためにかかった「付随費用」のことです。
※2 使用するためにかかった費用とは
購入した資産を事業に使用できるようにするための費用のことです。(事業共用費用)
例)設置費、試運転や調整に要した費用等
また、取得価額を算出する上で、注意すべきことは、消費税の取り扱いです。
取得価額を算出する際に、消費税はどのように考えるべきでしょうか。
税込経理方式を採用していれば税込金額で、税抜経理方式を採用していれば税抜金額で記載することになります。
❺ (7)のうち積立金方式による圧縮記帳の場合の償却額計算の対象となる取得価額に算入しない金額(8欄)を記載する
この欄には、圧縮記帳による圧縮額を積立金として積み立てる方法により経理したときに、その積み立てた金額を記入します。
中小企業において、圧縮記帳を適用するケースはまれであるため、多くは空欄になってくるかと思います。
下記の方法で、資産を取得した場合は、関係する欄になるので、圧縮記帳について詳しく知りたい方は国税庁HPに説明がありますので、そちらをご確認ください。
【圧縮記帳の対象となる資産の取得方法】
- 国庫補助金等の支給額で固定資産を取得した場合
- 保険金等で固定資産を取得した場合
- 交換等により固定資産を取得した場合
- 特定の資産の買換え等により固定資産を取得した場合
❻ 差引取得価額(9欄)を記載する
この欄には、7欄「取得価額または制作価額」と8欄「(7)のうち積立金方式による圧縮記帳の場合の償却額計算の対象となる取得価額に算入しない金額」の金額の差額を記載します。
2-2 「償却額計算の基礎となる額」欄を記載する
ここで償却額計算の基礎となる額を算出します。
ただし、下記の欄については、後ほど記載することになります。
- 10欄「償却額計算の対象となる期末現在の帳簿記載金額」
- 13欄「差引帳簿記載金額」
- 14欄「損金に計上した当期償却額」
なぜかというと、この記載例の解説は、当期の償却限度額(=当期に計上すべき減価償却費の金額)を別表16(2)を作成することで算出しようとしているものだからです。
当期の償却限度額は、別表16(2)の「当期分の償却限度額」の「合計」(38)欄で確定しますので、ここまで計算できたらまた戻ってきてから上記3つの欄を書くことになります。
それでは、記載方法を解説していきます。
❶ 固定資産台帳から資産の期首残高か取得した年度は取得価額を把握する
まずは、固定資産の取得の状況により、下記のとおりその固定資産の期首帳簿残高または取得価額を把握してください。
固定資産の取得状況 | 把握すべき金額 |
---|---|
前期以前に取得した場合 | 期首帳簿残高 |
今年度に取得した場合 | 取得価額 |
例題の固定資産台帳だと、上記の記載されている金額となります。
こちらの金額から償却限度額を算出していきますので、確認できるよう用意しておきます。
❷ 期末現在の積立金の額(11欄)及び積立金の期中取崩額(12欄)の記載する
この欄は、圧縮記帳の積立金がある場合に使用する欄です。
圧縮記帳について詳しく知りたい方は国税庁HPに説明がありますので、ご参照ください。
❸ 前期から繰り越した償却超過額(15欄)を記載する
この欄には、前期から繰り越した償却超過額を記載します。
前期の別表16(2)の45欄「差引合計翌期への繰越額」の金額を転記します。
設立初年度の場合は、空欄になります。
❹ 合計(16欄)を記載する
この欄には、先ほど固定資産台帳で確認した資産の期首帳簿残高(または取得価額)の金額から11欄「期首現在の積立金の額」と12欄「積立金の期中取崩額」を差し引き、15欄「前期から繰り越した償却超過額」を足した金額を記載します。
16欄 = 期首帳簿残高(または取得価額) ー 11欄 ー 12欄 + 15欄
記載例での16欄を一つ確認してみます。
一番左の列の自動車を例とすると、期首帳簿価額が、3,305,750円であり、11欄、12欄及び15欄がいずれも0円ですので、上の式に当てはめると下記のようになります。
3,305,750円(期首帳簿価額)ー 0円(11欄) ー 0円(12欄) + 0円(15欄)=3,305,750円(16欄)
なぜ償却額計算の基礎となる額を期末現在の帳簿記載金額から求めるのか
減価償却費というのは、本来は会社の実態に即してどれくらいの価値の減少が起きているかを会社それぞれが適正に見積もるという方法が合理的なやり方です。したがって、別表16(2)でもこの別表を作成する時点で、会社計算上の減価償却が終わっているという前提に立っています。そのため、減価償却が済んだ期末の帳簿価額から計算がスタートしているのです。
しかしながら、前にも少し触れましたが、自社で減価償却費を計算しても、法人の確定申告時に必ず税法で決めた方法で計算した減価償却費である償却限度額を計算し、それを超えていると所得金額に加算するという手間が生じるため、自社で見積もるのも手間という実情もあり、実務ではほとんどのケースで税法で定められた方法で計算しています。
この記事では実務に即して、自社で減価償却費を計算しているという前提に立っておらず、始めから税法に則った計算をすべく別表16(2)で減価償却費を計算するという前提に立っているため、償却額計算の基礎となる額は当初は空欄の部分があり、償却費の計算が終わってから戻って埋めるという方法をとっています。
❺ 前期から繰り越した特別償却不足額又は合併等特別償却不足額(17欄)を記載する
この欄には、前期から繰り越した特別償却不足額又は合併等特別償却不足額を記載します。
前期の別表16(2)の48欄「差引翌期への繰越額」の金額を転記します。
この欄は、前期から繰り越した特別償却不足額に関する内容を記載します。
これまでの申告において、特別償却を行なっていなければ関係のない欄ですので、多くの場合空欄になります。
設立初年度も空欄です。
❻ 償却額計算の基礎となる金額(18欄)を記載する
この欄には、16欄「合計」の金額から17欄「前期から繰り越した特別償却不足額又は合併等特別償却不足額」の金額を差し引いた金額を記載します。
「償却額計算の基礎となる額」欄の記載は、一旦ここまでとなります。ここからは償却限度額計算に入っていきます。
2-3 「当期分の普通償却限度額等」欄を記載する
ここからは、最も重要と言える当期分の普通償却限度額を算出します。
償却限度額の計算は、その固定資産が平成19年3月31日以前に取得したものか以降に取得したものかで計算方法が変わります。
計算方法というのは、以下の二つとなります。
- 旧定率法・・・平成19年3月31日以前に取得した資産に適用される計算方法
- 定率法・・・平成19年4月1日以降に取得した資産に適用される計算方法
旧定率法?
定率法と計算方法が違うんですか??
なぜそのように呼ばれているかというと、平成19年3月までに取得された資産に適用される定率法の計算方法を「旧定率法」と呼び、それ以降に取得された資産に適用される定率法の計算方法を「定率法」と呼び両者を区分しているのです。
ただ、旧定率法、定率法のいずれの償却限度額も、この欄に記載していくと自然に計算されるようになっているため、何が違うかを知る必要はありません。
これから申告書を作成する場合は、平成19年3月以降に取得している資産が多いはずですから、多くがブルーの下の部分を記載することになります。
それでは、各欄の解説を行っていきたいと思います。
よく使うブルーの下の方の定率法から解説していきます。
2-3-1 平成19年4月1日以降取得分の償却限度額の算出
平成19年4月1日以降に取得した資産はこちらの欄で償却限度額の計算を行います。
❶ 定率法の償却率(25欄)を記載する
この欄には、定率法の償却率を記載します。
定率法の償却率をどのように決定すればいいかを詳しく解説していきます。
償却率の確認の仕方
定率法の償却率は、償却率表を参照します。
例としてこの記載例の一番左の列の普通自動車(2021年11月取得、耐用年数6年)を例に見ていくことにしましょう。
まず、「減価償却資産の償却率等表」のリンクを開いてみましょう。すると下のような表が開きます。
この中から、会社が所有している減価償却資産の償却率を探すことになりますが、表の左側(1 旧定額法、定額法の償却率表)が定額法に関するものなので、今回は使用しません。
また、ご覧のとおり、その減価償却資産の取得年月日で償却率が変わりますので、注意が必要です。
今回の例では、平成24年(2012年)4月1日以降取得した固定資産として確認していきます。
耐用年数は、この表の左端に書いてありますので、該当する耐用年数の行を見て償却率を確認してください。
ここでも、一つ注意ですが、「200%定率法」と書かれた欄の下に、「償却率」、「改定償却率」、「保証率」と書かれています。
今回、説明しているのは、「償却率」ですので、この欄(↓)を確認しますので、間違えないようにしましょう。
今回の例では、耐用年数が「6年」なので、該当する行を見ていくと、償却率「0.333」ということがわかります。
償却率はこのように決定します。
❷ 調整前償却額(26欄)を記載する
この欄には、18欄「償却額計算の基礎となる金額」に25欄「定率法の償却率」を乗じた金額を記載します。
❸ 保証率(27欄)及び償却保証額(28欄)を記載する
この欄には、償却保証額の算出に関する内容を記載します。
保証率というのは、先ほど償却率を決定した同じ「減価償却資産の償却率等表」に記載があります。
先程の自動車の例で言えば、一番右の0.009911です。
償却保証額は、差引取得価額(9欄)× 保証率(27欄)で計算します。
一番左の列を例にすると、3,500,000(9) × 0.09911(27) = 346,885
なお、計算の結果生じる少数点未満は切り捨てます。
(26)<(28)の場合 (29欄から31欄)を記載する
これらの欄は、調整前償却額(26欄)< 償却保証額(28欄)である場合、この欄で改定償却額を算出します。そうならない場合は記載の必要はありません。
❹ 改定取得価額(29欄)を記載する
この欄には、改定取得価額を記載します。
改定取得価額とは、調整前償却額が初めて償却保証額に満たないこととなる年の期首未償却残高をいいます。
例題では、3列目の資産が、「調整前償却額(26欄)」と「償却保証額(28欄)」を比べて、28欄が多いため、「償却額計算の基礎となる金額(18欄)」の金額(この例では142,382)を記載します。
➎ 改定償却率(30欄)を記載する。
この欄には、改定償却率を記載します。
改定償却率とは、改定取得価額に対しその償却費の額がその後同一となるように当該資産の耐用年数に応じた償却率をいいます。
改定償却率は、先ほど償却率を決定した同じ「減価償却資産の償却率等表」に記載があります。
この例で言えば、「改定償却率」を見てみると「0.334」というのがわかります。
この表には、「償却率」、「保証率」についても記載がありますので、注意してください。
❻ 改定償却額(31欄)を記載する。
この欄には、改定償却額を記載します。
改定取得価額(29欄)の金額に改定償却率(30欄)を乗じた金額を改定償却額(31欄)に記載します。
例題では、142,382(29欄)に0.334(30欄)を乗じた金額である47,556円が記載されています。
改定取得価額が難しいなぁ…
改定取得価額の計算が必要になる(26)<(28)のケースはその資産の償却が終盤に差し掛かってくるときに生じてきます。
したがって、資産を購入して数年はこの計算をする必要はありません。
(26)<(28)となった時にじっくり考えるでもよいかもしれません。会社を設立して間もなくは他にすることもたくさんあるでしょうから。
改定取得価額の計算周辺については、次の記事で詳しくわかりやすく解説しています。
❼ 増加償却額(32欄)を記載する
32欄「増加償却額」に、増加償却額を記載します。(中小企業の多くの場合で空欄になります。)
増加償却額とは、機械装置において、法定耐用年数を決定する際に見積もった通常の平均使用時間を上回って使用している場合に、予め定められた法定耐用年数に基づいた減価償却額を上回る償却を行うことをいいます。
26欄「調整前償却額」と31欄「改定償却額」を比べて多い金額の欄の金額に32欄「増加償却額」を足した金額を記載します。
増加償却額がなければ、空欄となります。
❽ 計(33欄)を記載する
この欄には、調整前償却額(26欄)に増加償却額(32欄)を足した金額を記載します。
なお、改定償却額(31欄)に金額が入っていれば、改定償却額(31欄)に増加償却額(32欄)を足した金額を記載します。
ここまでが平成19年4月1日以後取得分の定率法の計算方法でした。
続いては旧定率法である、平成19年3月31日以前分の償却限度額の計算に関する部分です。
2-3-2 平成19年3月31日以前取得分の償却限度額の算出
平成19年3月31日以前に取得した資産はこちらの欄で償却限度額の計算を行います。
この期間に取得した資産がない場合は、すべて空欄になります。
通常この期間に取得した資産はないことが多いので、最近設立した法人は基本的に使用しません。
例題では、平成19年3月31日以前に取得した資産はないため、記載がありませんが、以下に平成19年3月31日以前取得分の資産がある場合の例題を設けて解説していきます。
❶ 差引取得価格×5%(19欄)を記載する
この欄には、9欄「差引取得価額」×5%の金額を記載します。
例題では、25,000,000(9欄)×5%の金額である1,250,000が19欄に入っています。
(16)>(19)の場合(20欄から23欄)を記載する
これらの欄は、期首帳簿価額(16欄)>償却可能限度額(19欄)である場合、この欄で償却限度額を算出します。
例題では、13,000,000(16欄)と1,250,000(19欄)とを比べると、16欄の金額が多いため、20欄から23欄を使用することになります。
❷ 旧定率法の償却率(20欄)を記載する
20欄「旧定率法の償却率」に旧定率法の償却率を記載します。
旧定率法の償却率についても、「減価償却資産の償却率等表」で確認できます。
❸ 算出償却額(21欄)を記載する
21欄「算出償却額」で、償却額計算の基礎となる金額(18欄)×旧定率法の償却率(20欄)で算出した金額を記載します。
例題では、13,000,000(18欄)×0.057(20欄)で算出される741,000が21欄に記載します。
❹ 増加償却額(22欄)を記載する
22欄「増加償却額」に、増加償却額を記載します。
増加償却額とは、機械装置において、法定耐用年数を決定する際に見積もった通常の平均使用時間を上回って使用している場合に、予め定められた法定耐用年数に基づいた減価償却額を上回る償却を行うことをいいます。
増加償却額がなければ、空欄となります。
❺ 計(23欄)を記載する
23欄「計」に、21欄「算出償却額」に22欄「増加償却額」を足した金額と償却額計算の基礎となる金額(18欄)と償却可能限度額(19欄)の差額のうち、金額が多いほうを記載します。
(16)≦(19)の場合、算出償却額(24欄)を記載する
この欄は、期首帳簿価額(16欄)≦償却可能限度額(19欄)である場合、この欄で償却限度額を算出します。
この欄には、差引取得価格×5%(19欄)から「1円」を差し引いた金額に12/60を乗じた金額を記載します。
例えば19欄が1,250,000円だとすると、以下の計算になります。
1,250,000円(19欄)ー1円=1,249,999円
1,249,999円×12/60=249,999円
となり、249,999円が24欄に記載されることになります。
2-4 「当期分の償却限度額」欄を記載する
ここからは、当期分の償却限度額をを算出します。
❶ 当期分の普通償却限度額(34欄)を記載する
この欄には、23欄「計」、24欄「算出償却額」又は、33欄「計」の金額を転記します。
❷ 35欄から37欄を記載する
この欄は、特別償却を行う場合にのみ、使用する欄となっています。
特別償却というのは、減価償却の場合は、例えば「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除」という制度がありますが、一定の条件を満たす場合は、償却限度額を増やしてあげるという制度です。
35欄には、適用する特別償却に関する租税特別措置法の適用条項を記載します。
例えば「中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)」の適用条項は、「措置法 42 の 12 の4」となっています。
36欄には、特別償却限度額を記載します。
特別償却限度額の算出には、特別償却等の償却限度額の計算に関する付表 を作成し、算出した償却限度額を記載します。
37欄には、前期から繰り越した特別償却不足額又は、合併等特別償却不足額を記載してます。
❸ 合計(38欄)を記載する
この欄には、34欄「当期分の普通償却限度額等」、36欄「特別償却限度額」及び37欄「前期から繰り越した特別償却不足額又は合併等特別償却不足額」の金額を足した金額を記載します。
2-5 「償却額計算の基礎となる額」欄を完成させる
ここで、「償却額計算の基礎となる額」部分で、後回しにした3つの欄を埋めてこの欄を完成させます。
具体的には以下の欄となります。
- 10欄「償却額計算の対象となる期末現在の帳簿記載金額」
- 13欄「差引帳簿記載金額」
- 14欄「損金に計上した当期償却額」
❶ 損金に計上した当期償却額(14欄)を記載する
この欄には、固定資産ごとの損金に計上した減価償却費を記載する欄です。
しかしながら、今回の例題では別表16(2)を作成しながら、償却限度額を計算していますので、この欄には、38欄「合計」の金額を転記してください。
❷ 差引帳簿記載金額(13欄)を記載する
差引帳簿記載金額(13)欄は次のように逆算して求めます。
13欄 = 16欄 ー 15欄 ー 14欄
記載例での13欄の逆算方法を確認してみます。
左から4列目の資産を例にして、上の式にそれぞれ欄の金額を当てはめると以下のようになります。
711,400円(16欄)ー 89,000円(15欄) ー 207,260円(14欄) = 415,140円(14欄)
❸ 「償却額計算の対象となる期末現在の帳簿記載金額」(10欄)を記載する
この欄は、当決算期末の帳簿残高が入ることになりますが、逆算して次のように計算します。
10欄 = 13欄 + 12欄 + 11欄
記載例での10欄の逆算方法についても確認してみます。
同じく左から4列目の資産を例にして、上の式にそれぞれ欄の金額を当てはめると以下のようになります。
415,140円(13欄)+ 0円(12欄) + 0円(11欄) = 415,140円(14欄)
これで、「償却額計算の基礎となる額」欄が完成しました。
次は、「当期償却額」欄、「償却超過額」欄及び「特別償却不足額」欄を記載していきます。
2-6 「当期償却額」欄、「償却超過額」欄及び「特別償却不足額」欄を記載する
ここには、当期償却額、償却超過額及び特別償却不足額に関する事項を記載します。
❹ 当期償却額(39欄)を記載する
この欄には、それぞれの資産について、当期の決算において計上した「減価償却費」の金額を記載します。
別表16(2)を利用して減価償却費を求めている場合は、38欄の値がそのまま39欄に入ります。
❺ 償却不足額(40欄)、償却超過額(41欄)を記載する
この欄は、別表16(2)を使って減価償却費を計算している場合は、38欄 = 39欄となるので、使用することはありません。
しかしながら会計ソフト等を使って減価償却費を計算した場合は、38欄が償却限度額なので、この金額と会計ソフト側で計上した減価償却費を比較することになります。
38欄>39欄の場合 | 40欄に記載する |
38欄<39欄の場合 | 41欄に記載する |
38欄=39欄の場合 | 記載不要 |
この欄には、38欄(合計)から39欄(当期償却額)を引いた金額が40欄に、39欄から38欄を引いた金額を41欄に記載します。
当期償却額(38欄)より償却限度額(39欄)が大きい場合、償却不足額(40欄)に記載し、償却限度額(39欄)より当期償却額(38欄)が大きい場合、償却超過額(41欄)に金額が記載ということになります。
❶ 42欄から45欄の償却超過額に関する事項を記載する
この4つの欄は、償却超過額に関する欄となります。前期も含め償却超過額が発生していない場合は関係のない欄です。
基本的には償却限度額と同額を決算書上でも費用としていきますので、通常この欄は使わないことがほとんどです。
42欄「前期からの繰越額」は、前期の別表16(2)の45欄「差引合計翌期への繰越額」を転記します。
43欄「償却不足によるもの」は、償却不足額(40欄)と前期からの繰越額(42欄)のうち、少ない金額を記載します。
44欄「積立金取崩しによるもの」は、圧縮額を積立金として経理している場合に使用する欄です。
その積立金を取り崩して益金に算入したときは、その積立金の設定の基礎となった資産の償却超過額を記載します。
45欄は、償却超過額(41欄)と前期からの繰越額(42欄)を足した金額から、同上のうち償却不足によるもの(43欄)と積立金取崩しによるもの(44欄)の金額を差し引いた金額を記載します。
❷ 46欄から50欄の特別償却不足額に関する事項を記載する
この欄は、特別償却不足額に関する内容を記載します。
特別償却を行なっていなければ関係のない欄です。
46欄には、償却不足額(40欄)と償却不足によるもの(43欄)を償却特別限度額(36欄)と前期から繰り越した特別償却不足額又は合併等特別償却不足額(37欄)を足した金額との二つの金額を比べて少ない方を記載します。
47欄は、当期において切り捨てる特別償却不足額又は合併等特別償却不足額を記載します。
48欄には、翌期に繰り越すべき特別償却不足額(46欄)から当期において切り捨てる特別償却不足額又は合併等特別償却不足額(47欄)の金額を差し引いた金額を記載します。
49欄と50欄には、翌期への繰越額の内訳を記載します。
49欄には、当期分不足額を記載し、50欄には当期分以外を記載します。
❸ 適格組織再編成により引き継ぐべき合併等特別不足額(51欄)を記載します
51欄には、償却不足額(40欄)と償却不足によるもの(43欄)の金額と償却特別限度額(36欄)の金額を比べて少ない方を記載します。
以上で、別表16(2)の書き方の解説は終了です。
別表16(2)は、記載する欄や専門的な用語が多いことから、難しい書類だと感じる方も多いと思います。
しかし、記載する欄は多くの中小企業では全体の半分ほどとなることが多く、その記載内容も転記や簡単な足し算引き算をすることで、作成することができる書類であるため、この書き方を参照しながらであれば、そこまで難しくなく完成させることができると思います。
なんとなく書けそうな気もするけど、耐用年数や償却率を調べたり、計算をしたり、転記したりと結構ミスしそうな作業が多いですね…
やっぱり書き方を見ながら別表16(2)を作るのは面倒だな。というか法人税の申告書を自力で書くこと自体が面倒に思えてきた…
やっぱ高いけど税理士に依頼するしかないか…とほほ…
このくらいのことで税理士に依頼するのはもったいないですよ。
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別表16(2)を手書きした場合と、全力法人税で別表16(2)を作成した場合とで比較してみます。
【手書きと全力法人税利用の比較】
ちょっと比較になりませんよね。
いずれも無料だったら使わない手はないと思いませんか。
両者で比較して全力法人税にデメリットがあるとすれば、クラウドソフトなので、利用するのにアカウント登録がいるというくらいです。
ここからは、全力法人税を使って実際に別表16(2)を作成する方法を紹介します。
まずは次のページにアクセスしていただき、新規アカウント登録(メールアドレスとパスワードの登録)をする必要があります。
アカウント登録は、全部の書類を印刷したい場合にのみ有料会員となる必要があるだけで、それ以外の機能をすべて無料で利用することができますのでご安心ください。
❶ 全力法人税にログインする
全力法人税は、クラウドソフトであるため、アカウントを作成して、ログインする必要があります。
❷ トップ画面で「申告書を作成する」を選択する
❸ 基本情報を入力後「保存」して「次へ」を選択する
法人名や決算期等の法人の基本的な情報を入力してください。所要時間5分程度
別表16(2)の作成のみであれば、申告書に表示される「法人名」欄だけ正確に入力しておけば、残りの必須部分は適当な文字を入力しておけばOKです。
「株主(社員)名簿」は別表2を作成するために必要な画面なので、別表16(2)のみ作成できればいいという場合は「次へ」ボタンでとばしてください。
❹ 「申告情報」を入力後「保存」して「次へ」を選択する
作成を行う申告書の情報を入力してください。所要時間5分程度
❺ メニューバー「固定資産台帳」>「固定資産台帳」画面で購入した資産の金額等を入力する
メニューバー「固定資産台帳」>「固定資産台帳」画面に移ります。
「新規登録」クリックし、入力フォームに必要な情報を入力します。
入力が終わったら「保存」ボタンを押します。
因みに、この入力画面で、耐用年数も簡単に調べることができます。すでに説明した全力耐用年数と連動しています。
「耐用年数を調べる」欄の「検索する」か「耐用年数表から探す」のいずれかの方法から調べることができます。
「検索する」は減価償却資産の名称を入力して検索する方法で、「耐用年数表から探す」は耐用年数表から指定の耐用年数を調べる方法となります。
今回は、「検索する」から耐用年数を確認してみます。
「検索する」をクリックすると、「検索する資産の種類を選択してください」という欄が現れますので、検索したい資産のの種類をクリックします。
「建物・機械装置以外の固定資産」をクリックすると画像のような、入力フォームが開きます。
ここで、検索した資産名を入力し、検索マークボタンをクリックすると下の画像のように予測される資産と耐用年数が出てきます。
この資産の一覧から確認したい資産に当てはまるものを探して、「決定」をクリックすると完了です。
なお、償却率等の減価償却限度額の算出に必要の割合は、自動で入力されますので、確認する必要もありません。
❻ 別表16(2)を出力する
最後に別表16(2)を出力します。
出力する方法は、メニューバー「申告書」>「別表16(2)」画面で「個別表示」をクリックし、その後、「PDF出力」をクリックすると別表16(2)が出力することができます。
次のように印刷されます。
別表16(2) 記載例
以上で別表16(2)が完成しました。
手書きでは、耐用年数、償却率等の確認や償却限度額を算出するための計算など自分で行う必要がありますが、全力法人税を使用して作成するとその必要はなく、固定資産台帳を作成することで自動で別表16(2)が出来上がります。
また、そもそも減価償却について内容を知らなったとしても正しい申告書を作成することができるようになっています。
記事を作成するために別表16(2)を全力法人税で作成しましたが、簡単すぎて説明するところが本当に少ないです。
このように全力法人税を使用して法人税の別表を作成するとかなり効率的にそして転記漏れもありませんので正確に作成できます。
全力法人税は別表16(2)を作成、出力を無料で行うことができます。そのため、別表16(2)を作成するためだけに無料で利用していただいても、もちろん大丈夫です。
また、法人税の知識がなくても申告に必要な書類一式が作成でき、無料で出力できる書類も多く、無料で出力できなくても別表4や別表5(1)、別表7など画面で確認できるものも多くありますので、全力法人税で作成したものをe-Taxソフトに入力することもできます。
申告書に手書きで写す方法でも何もないところから申告書を作るよりずっと効率的です。
なお、有料版では、作成したすべての申告書類を出力することができ、税理士に申告書の作成依頼をするよりも手間も掛からず、かつ低コストです。(有料版と無料版での出力可能書類の違い)
是非効率的でかつ、低コストで申告書を作成したいという方はこの法人税の申告書作成支援ソフト「全力法人税」を試して損はないと思います。(全力法人税のお支払いシステムについて)
これまで、別表16(2)とはどのような書類か、そしてその作成の仕方について解説してきましたが、ここで、最後の復習として、別表16(2)について振り返りましょう。
4 まとめ
ここまで解説してきたことを簡単に振り返ります。
- 法人税の申告書である別表16(2)とは、減価償却資産(固定資産)を取得していて、それを旧定率法又は定率法によって償却(費用化=損金経理)した場合に、作成が必要となる別表でした。
- 別表16(2)の役割は、定率法の計算が法人税法で決められた内容となっているかを確認するために作成する書類でした。
- 「減価償却」というのは、「資産の価値が減った分だけ使用できる期間にわたって費用にする」ということでした。
- 「減価償却費」として損金できる金額の上限を「償却限度額」といい、「償却方法」「取得価額」「耐用年数」「償却率」の4つの要素から算出するものでした。
- 「定率法」というのは、償却方法の一つであり、車両運搬具、器具備品、機械装置などが法定償却方法となっていました。
- 別表16(2)は作成することで、償却限度額を算出することができる形式となっていました。
- 全力法人税という申告ソフトを使うと正確かつ、短時間で綺麗な別表16(2)を作成することができました。
別表16(2)のように、一度書き方や制度について理解することが出来れば、高い専門知識などなくても十分自力申告が可能であることがわかっていただけたと思います。
そして申告ソフトを使えば、もっと簡単、効率的に進めることも可能です。
全力経理部の法人税の書き方の記事を読みながら、最短距離で自力申告をやり遂げてもらえると、たいへん嬉しく思います。
他にも法人税の別表の説明や書き方の解説をわかりやすく行なっていますので、よろしければそちらもご覧いただけたらと思います。
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