
最近、まわりの人に『そろそろ法人化した方がいいんじゃない?』って言われるんですけど……
そもそも法人化ってなんですか?個人事業主のままじゃダメなんでしょうか?
ある日、知り合いの経営者からの話の中に出てきた「法人化(法人成り)」という言葉。
何となく「会社をつくること」くらいは分かるけれど――
「一人でやってる自営業でも会社って作れるの?」
「法人化すると節税になるって本当?」
「法人化すると社会保険が充実するって聞いた」
「税金とか手続きって、むしろ面倒になるんじゃないの?」
「法人化」という言葉一つで色々な疑問や思い方が出てくると思います。
たしかに、「法人化(法人成り)」と聞くと、従業員がいて、立派なオフィスがあって、という「会社らしい会社」をイメージしがちです。
ですが、実際には個人で活動しているフリーランスや一人親方のような方でも、法人化することは可能であり、むしろその方が有利になるケースも多くあります。
とはいえ、法人化にはメリットもあればデメリットもあります。
また、「誰でも自由に法人化できる」と思い込んで安易に進めてしまうと、想定外の落とし穴にハマってしまうこともあります。
たとえば――
- 法人にしたらかえって税金や社会保険料が高くなった
- 赤字でも毎年7万円以上の住民税を払うことになった
- 経理が難しくなって、毎月の顧問料や会計ソフトの使用料が重荷に……
こうした「法人化の落とし穴」は、事前に仕組みを理解しておけば防ぐことができます。
本記事では、「法人化とは何か?」という基本から、個人事業主との違いや、実際に法人化すべきタイミング・判断基準、手続きの流れまで、元国税調査官の視点からやさしく丁寧に解説していきます。
読み終える頃には、あなたが法人化すべきかどうかの判断ができるようになり、もし進める場合でも、迷わず手続きを始められる知識が手に入ります。
ぜひ最後までご覧いただき、税金で損しない税務に強い経営の第一歩を踏み出してください。
会社を設立してもうすぐ1月になるそんなある日・・・
最近よく法人化した方がいいって言われるんですけど……。
そもそも法人化って、どういう意味なんでしょう?
自分ひとりで仕事してるだけなんで、関係ないと思ってたんですけど……
法人化とは、個人で行っていた事業を、法律上独立した“会社”という形にすることを言います。
つまり、あなた個人の存在と法人格を、はっきり分けるということですね。
いわゆる“ひとり社長”でも法人は設立できますし、むしろその形態は近年とても一般的です。
なるほど……でも、法人化すると何か得があるのでしょうか。
なんとなく節税になるって聞いたんですけど、逆に損することもありますか?
法人化には、税務や経営面でさまざまなメリットがある一方で、いくつかの重要な注意点もあります。
たとえば、次のような点は、法人化後に想定外の負担となることがあるため、事前に理解しておくことが大切です。
一人社長でも社会保険への加入義務が発生し、負担が増す。
法人は赤字でも住民税(均等割)の納税義務がある
決算・申告が複雑になり、税理士へ依頼する傾向があり会計処理の負担が増す
こうした点を知らずに法人化してしまうと、
「思ったほど節税できなかった」
「維持費がかさみ、かえって負担が増えた」
といった後悔につながる可能性もあります。
そうなんですね、、ちょっと不安です。
ただし、ご安心ください。
これらの制度や違いには明確な基準と仕組みがあり、正しく理解していれば、冷静に判断し、十分に対応可能です。
もちろん、メリットも多くあります。例えば以下のようなものが主なメリットです。
- 節税の可能性が広がる
- 法人の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できる
- 社会的信用力が高まりやすい
- 経営上の責任が限定される
- 事業年度を自由に決められる
本記事では、法人化を検討するうえで押さえておきたいポイントを、初心者の方にもわかりやすく整理して解説していきます。
「法人化とは何か?」その仕組みと意味
個人事業主と法人の違い(税金・保険・信用など)
法人化に向いている人・検討すべきタイミング
法人化によるメリットとデメリットの具体例
手続きの流れと必要な準備、注意点
正しい知識を持つことで、あなたの事業にとって“法人化が本当に必要かどうか”を判断できるようになります。
そして、もし法人化を選ぶのであれば、確かな準備をもってスムーズに進めることができるでしょう。
わかりました!ちゃんと知っておかないと…
解説よろしくお願いします!!
目次
1 法人化(法人成り)の基礎知識と仕組み

ここでは、「法人化(法人成り)」の基礎知識として、その概要、個人事業主との違いなどを解説していきたいと思います。
1-1 法人化(法人成り)とは何か?
「法人化」という言葉はよく聞くんですけど……
法人化って、つまりどういうことなんですか?
個人で仕事してるのと何が違うんでしょうか?
簡単に言えば、「事業をやっているあなた自身」と、「その事業を行う会社」とを法律上まったく別の存在として分けることが、法人化です。
つまり、あなた個人とは別に、法人(会社)という人格を作るんです。
これにより、法人は個人とは異なる人格(法人格)を持ち、法人名義で契約をしたり、銀行口座を開設したり、税金を納めたりできるようになります。
たとえば、フリーランスのエンジニアが株式会社を設立すると、その会社が業務の受託者となり、契約書も会社名で締結されるようになります。
取引の主体が「事業主個人」から「法人」に変わるわけです。
この「人格の分離」によって、税務、責任、契約関係が明確に区分されるようになり、ビジネス上の信用性や安全性が高まるなどのメリットがあります。
個人事業主からの法人化は、「法人成り」とも呼びます。
1-2 個人事業主と法人の違いとは?
個人のまま事業してても困ってないんですが……
法人と個人とはどのような違いがあるのでしょうか。
一番大きな違いは、「責任の範囲」「税金」「社会保険」そして「信用力」ですね。
具体的に見ていきましょう。
| 比較項目 | 個人事業主 | 法人(株式会社・合同会社など) |
|---|---|---|
| 税金 | 所得税(累進課税) | 法人税(一定税率) |
| 社会保険 | 国民健康保険・国民年金 | 社会保険(健康保険・厚生年金) |
| 責任範囲 | 無限責任(全財産が対象) | 有限責任(出資額の範囲) |
| 信用力 | やや劣る | 高まりやすい |
| 設立・維持コスト | ほぼ不要 | 登記費用・地方税の均等割額(最低年7万円程度)などが発生。会計ソフトが高額化しがち。税理士の顧問料が必要になる場合も。 |
一方、法人にすると、税務や会計の管理が求められる反面、税率は一定で経費処理の柔軟性も増します。社会的信用も向上し、融資や取引のチャンスが広がる点もメリットといえます。
それぞれのメリットとデメリットの詳しい内容については、後述します。
1-3 一人社長・フリーランス、副業でも法人化(法人成り)できるのか?
法人っていうと、社員が何人もいるイメージなんですけど……
私のようなな一人でやってる人でも、会社って作れるんですか?
もちろん可能ですよ。実際、今は「一人社長」や「マイクロ法人」と言ってとても増えています。社長1人だけでも株式会社や合同会社は設立できます。
例えば、株式会社や合同会社は、代表者ひとりでも設立可能です。取締役や社員、株主を1人で兼ねることもできます。
特にフリーランスや個人事業主から法人化する理由は以下のケースが多く見られます。
- 所得が増えて税負担が大きくなってきた
- 法人の社会保険(健康保険・厚生年金)への加入を検討している
- 大手企業との取引条件に法人格が必要
- 信用力を高めて金融機関から融資を受けたい
このように、「ひとりでも法人化できる」というのは、多くの個人事業主にとって大きな選択肢の一つとなっています。
法人と聞くと、従業員が多数いる企業や組織を想像しがちですが、実際には一人でも株式会社や合同会社を設立することは可能です。
たとえば、フリーランスのエンジニア、個人経営の飲食店主、インストラクターなど、個人事業主として活動していた方が、一定の収益や信用を得た段階で法人化するケースは非常に一般的です。
反対に、「法人化できない人」は存在するのでしょうか?
結論から言えば、日本に住んでいる成人であれば、基本的に誰でも法人を設立することが可能ですが、以下のような法律上の制限・注意点がある場合には、法人化が認められなかったり、設立後に不利益を被ることもあります。
| 状況 | 内容 |
|---|---|
| 未成年者のみでの設立 | 会社設立時には定款の作成・登記が必要ですが、未成年者のみでは契約行為が制限されるため、単独で法人を設立することはできません(親権者の同意が必要)。 |
| 被後見人・被保佐人 | 精神的・判断能力に制限のある方は、法律上の制限により役員(取締役など)になることができません。 |
| 反社会的勢力の関係者 | 暴力団関係者など、反社会的勢力との関係が明らかな場合は、登記が拒否される可能性があります。 |
| 一定の法令違反歴がある者 | 過去に会社法違反・破産などで特定の制限を受けている場合、一時的に法人の役員になれないことがあります。 |
| 設立要件を満たしていない者 | 会社設立には最低限の資本金や登記住所、事業目的などが必要です。これらが整っていないと、登記が受理されません。 |
| 居住資格のない外国人のみでの設立 | 外国籍の方でも法人設立は可能ですが、代表取締役が日本に居住していない場合、銀行口座開設や登記に支障が出ることがあります。 |
このように、「誰でも自由に法人化できる」と思い込んで進めてしまうと、思わぬ落とし穴に直面することがあります。
とはいえ、一般的な個人事業主であれば、ほとんどの場合スムーズに法人化できるのも事実です。
重要なのは、「自分の状況で本当に法人化が可能かどうか」をあらかじめ確認し、必要な準備を整理したうえで、法人化の手続きを進めることです。
2 法人化(法人成り)するメリットとデメリット

この章では、法人化(法人成り)によって得られる主なメリットと、その裏返しともいえるデメリットについて、具体的に解説していきます。
まずは、法人化(法人成り)のメリットから見ていくことにしましょう。
2-1 法人化(法人成り)の主なメリット
法人化(法人成り)することで得られる代表的なメリットは、次のとおりです。
- 節税の可能性が広がる
- 法人の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できる
- 社会的信用力が高まりやすい
- 経営上の責任が限定される
- 事業年度を自由に決められる
法人化すると良いことがあるって聞きますけど、実際にはどんなメリットがあるんですか?
やっぱり節税できるっていうのが一番大きいんですかね?
それもあります。法人化のメリットは、節税以外にも、“信用力の向上”や“責任の分離”など、経営上のプラス要素がいくつもあります。順番に見ていきましょう。
【メリット1】節税の可能性が広がる
節税になるというのは、一番気になります。
どんなところが個人事業主と違うのでしょうか?
法人化における最大の関心事として、「節税につながるかどうか」という点を挙げる方が多いと思います。
実際に法人化によって受けられる税制上の優遇は何点かあります。
その代表的なポイントを4つに整理して説明しましょう。
税率によるメリット
- 赤字をより長く繰り越せることによるメリット
- 社長の収入が給与所得や退職所得となることによるメリット
- 保険料を費用にできることによるメリット
法人化によるメリットを一つ一つ解説していきます。
【節税メリット1】税率によるメリット
- 所得税は、所得が多くなればなるほど税率が大きくなる累進課税で最大税率45%
- 法人税は、税率が約16.5%または約25.6%で税率が一定
利益が増えるほど法人化による節税の効果が期待できる
所得税と法人税では、税率の設定の仕方が異なっています。
所得税の方は、所得が多くなればなるほど税率が大きくなる累進課税となっていて、最大税率は45%となっています。
一方、法人税は、中小企業は所得の800万円までは約16.5%(地方法人税を含む)で、それ以上は約25.6%(地方法人税を含む)と固定されています。
このように法人税の方が最大税率が圧倒的に低いので、利益が増えるほど法人化による節税の効果が期待できます。
| 個人事業主 | 法人(中小法人) | |
|---|---|---|
| 課税方法 | 累進課税 | 比例課税 |
| 税率 | 5%〜45% | 約16.5%(所得800万円以下・軽減税率) 約25.6%(800万円超・標準税率) |
| 備考 | 所得が大きいほど税率が上がる | 税率が一定で計算しやすい |
上の表の通り、一定以上の利益を上げる事業者にとっては、法人化することで税負担を抑えやすいという大きなメリットがあります。
個人事業主の場合、所得に応じて税率が上がる累進課税制度のもとで所得税を納める必要があります。
この仕組みでは、事業所得の最高税率が45%にまで達するため、所得が大きくなるほど税負担が重くなるのです。

(引用 国税庁HP 所得税の税率)
一方で法人の場合は、原則として比例課税方式が採用されており、税率は中小法人で所得金額800万円までは約16.5%。それ以降は約25.6%というように安定しています。
(参考)国税庁HP 法人税の税率
このように、法人化すると税率が一定で計算しやすく、高額所得に対しては個人事業より有利に働く仕組みです。
たとえば、事業所得が2,000万円を超えるようなケースでは、個人事業主は、900万円以上は33%の税率が課され、1800万円以上は税率が40%が適用されます。
しかし、法人化すれば大部分が20%前後の法人税で済むため、同じ利益でも納税額に大きな差が生まれるのです。
このように、利益(所得)が増えるほど法人化によって節税の効果が期待できるという点は、多くの事業者にとって法人化を検討する大きな動機になります。
実際の例を使って、両者の違いを見ていきましょう。
【所得金額600万円のケース】
| 項目 | 個人事業主 | 法人(中小法人) |
|---|---|---|
| 課税対象所得 | 600万円 | 600万円 |
| 所得税/法人税 | 約61万円(累進課税・最高20%) | 約99万円(約16.5%) |
| 住民税 | 約56万円 | 約13万円 |
| 事業税 | 約15万円 | 約33万円 |
| 合計税負担額 | 約132万円 | 約145万円 |
| 差額 | 約13万円負担減 | – |
【所得金額700万円のケース】
| 項目 | 個人事業主 | 法人(中小法人) |
|---|---|---|
| 課税対象所得 | 700万円 | 700万円 |
| 所得税/法人税 | 約87万円(累進課税・最高20%) | 約115万円(約16.5%) |
| 住民税 | 約66万円 | 約14万円 |
| 事業税 | 約20万円 | 約41万円 |
| 合計税負担額 | 約173万円 | 約170万円 |
| 差額 | – | 約3万円の負担減 |
【所得金額800万円のケース】
| 項目 | 個人事業主 | 法人(中小法人) |
|---|---|---|
| 課税対象所得 | 800万円 | 800万円 |
| 所得税/法人税 | 約109万円(累進課税・最高23%) | 約132万円(約16.5%) |
| 住民税 | 約76万円 | 約15万円 |
| 事業税 | 約25万円 | 約48万円 |
| 合計税負担額 | 約210万円 | 約195万円 |
| 差額 | – | 約15万円の負担減 |
【所得金額1,000万円のケース】
| 項目 | 個人事業主 | 法人(中小法人) |
|---|---|---|
| 課税対象所得 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 所得税/法人税 | 約160万円(累進課税・33%) | 約183万円(約16.5%,800万円超は約25.6%) |
| 住民税 | 約96万円 | 約19万円 |
| 事業税 | 約35万円 | 約67万円 |
| 合計税負担額 | 約291万円 | 約269万円 |
| 差額 | – | 約22万円の負担減 |
【所得金額1,200万円のケース】
| 項目 | 個人事業主 | 法人(中小法人) |
|---|---|---|
| 課税対象所得 | 1,200万円 | 1,200万円 |
| 所得税/法人税 | 約228万円(累進課税・最高33%) | 約234万円(約16.5%,800万円超は約25.6%) |
| 住民税 | 約116万円 | 約21万円 |
| 事業税 | 約45万円 | 約86万円 |
| 合計税負担額 | 約389万円 | 約341万円 |
| 差額 | – | 約48万円の負担減 |
※個人事業主の所得税と住民税の計算は、所得控除を基礎控除だけと仮定して計算しています。
所得金額が700万円あたりで法人の方が有利になり始めて、それ以降は、所得金額が大きくなるほど個人と法人との差の開き方が大きくなっていますね。
もう一度下の所得税の税率表を見てもらうと、所得税の計算は、所得金額が約195万円までは5%。それ以上から約330万円までは10%というように900万円を超えたら900万円全体に33%をかけるわけではなくて、900万円を超えた金額に33%がかかっていて、195万円までは5%の税率がかかっているような計算になっています。
900万を超える金額が多ければ多いほど33%で計算される税金が大きくなって、その分法人よりも税金が多くなるといった形になっているのです。

【節税メリット2】赤字をより長く繰り越せることによるメリット
- 個人事業主:事業で発生した赤字を最大3年間繰り越すことが可能
- 法人:事業で発生した赤字を最大10年間繰り越すことが可能
赤字を繰り越せるというのは、去年100万円赤字で、今年200万円の黒字だった場合に、黒字を200万円ー100万円=100万円にできる制度のことですよね。
この赤字を10年間も繰り越せるというのはすごいですね!
これはかなりのメリットだ!
はい。例えば初年度に1,000万円の大きな欠損金(赤字)が出ても、個人事業だと3年以内で使い切らなければ、以降繰越できませんが、法人であれば最大10年間かけて段階的に利益と相殺できるのです!
| 区分 | 個人事業主 | 法人(中小法人) |
|---|---|---|
| 赤字の繰越期間 | 最大3年 | 最大10年 |
| 必要な申告手続 | 損失申告を含めた青色申告が必要 | 損失申告を含めた青色申告が必要 |
| 節税効果の活用タイミング | 翌年~3年以内の黒字と相殺可能 | 翌年~10年以内の黒字と相殺可能 |
法人化することで、万が一事業が赤字になった場合でも、その損失を長期間にわたって有効に活用できる仕組みがあります。
個人事業の場合、赤字(純損失)を繰り越せるのは最長で3年に限られています。
一方、法人では最長10年間にわたって繰り越しが認められており、将来の黒字と相殺して課税所得を抑えることができます。
この制度により、事業が一時的に不調で赤字となった場合でも、次の黒字化したタイミングで税負担を軽減できる可能性が大きくなるのです。
たとえば、新規事業の立ち上げ初年度に大きな投資を行い赤字となったとしても、その赤字を10年間繰り越し、2年目以降の黒字に充当できれば、余分な税負担を回避することができます。
繰越年度の違いによってどのような違いが出てくるか、例を見ながら確認していきましょう。
【例1】5年間赤字で6年目から黒字になったケース
| 個人事業主 | 法人 |
|---|---|
| 3年前の赤字しか6年目の黒字と相殺できない | 5年前の赤字を6年目の黒字と相殺できる |
【例2】設立初年度が大赤字で2年目から黒字のケース
| 個人事業主 | 法人 |
|---|---|
| 大赤字分を3年間しか黒字と相殺できない (大赤字分を使い切れない可能性が高い) | 大赤字分を10年間黒字と相殺できる (大赤字分を使い切る可能性が高い) |
このように、法人化することで赤字繰越期間が長期に及ぶため、過去に生じた赤字をそれ以降の黒字と相殺できる可能性が高く、事業期間全体を通じて正味で黒字になった分だけ税負担をする形に近くなります。
個人事業主は、3年間しか赤字を繰り越せないので、過去の赤字を黒字と相殺できない可能性も高く、その分余計に税負担が大きくなる可能性があるということですね。
【節税メリット3】給与所得や退職所得となることによるメリット
給与所得控除?
退職所得控除?
どういうことでしょう?
個人事業主の場合、自分の取り分はすべて「事業所得」として課税対象となり、経費以外に所得から差し引かれるような事業所得控除というものはありません。
法人で、経営者の取り分を給与や退職金という形で支払うだけで給与所得控除や退職所得控除というもの収入から差し引けるので、節税になるということです。
| 事業所得(個人事業主) | 給与所得・退職所得(法人が支給) |
|---|---|
| 経費以外に所得から差し引けるものはない。 |
|
法人化することで、個人事業主にはない役員報酬や退職金制度を活用し、節税と老後資金の確保を同時に実現できます。
個人事業主の場合、自分の取り分はすべて「事業所得」として課税対象となり、控除の幅が限られます。
一方、法人にすると、社長自身に役員報酬として給与を支払い、その給与について給与所得控除を適用できるため、課税所得を抑えることが可能です。
さらに法人であれば、将来的に退職金制度を整えることもできます。
退職金は分割で受け取れる方法もあり、所得税法上も大きく優遇されており、老後の資金準備として非常に有効です。
たとえば、個人事業主のままだと引退時に多額の資金を一度に取り崩すと、その分がそのまま課税対象になってしまいます。
しかし、法人化して退職金制度を設ければ、退職所得控除の適用により税負担を大きく軽減できます。
このように、法人化によって役員報酬の給与所得控除や退職金の税優遇を活かしながら、老後に向けた資産形成を効率的に行えることは大きな魅力です。
個人事業主で事業所得で申告するよりも、自分の取り分を給与や退職金で支給することによって控除できるものがあるから得になるというのは、わかってきました。
具体的にどのくらい節税になるのかを教えてもらえますか?
それでは、具体例を使ってどの程度節税効果があるのかを見ていくことにしましょう。
個人で700万円の課税所得と法人で課税所得100万円と役員報酬600万円(合計700万円)のケースを比較します。
法人化の税負担比較
| 項目 | 個人事業主 | 法人(会社) | 社長個人(役員報酬分) |
|---|---|---|---|
| 課税所得 | 700万円 | 100万円(法人利益部分) | 436万円(役員報酬600万円−給与所得控除164万円) |
| 税金 | 約87万円(所得税) | 約16万円(法人税+地方法人税) | 約31万円(所得税) |
| 住民税 | 約66万円 | 約8万円(市民税+県民税) | 約40万円 |
| 事業税 | 約20万円 | 約5万円(事業税+特別法人事業税) | 0円 |
| 合計税負担額 | 約173万円 | 約29万円 | 約71万円 |
税負担の比較表(個人事業主VS法人+社長(給与分))
| 項目 | 個人事業主 | 法人+社長個人の合計 |
|---|---|---|
| 課税対象所得 | 700万円 | 100万円(法人)+436万円(社長) |
| 所得税/法人税等 | 約87万円 | 法人:約16万円+社長:約31万円 |
| 住民税 | 約66万円 | 法人:約8万円+社長:約40万円 |
| 事業税 | 約20万円 | 法人:約5万円+社長:0円 |
| 税額合計 | 約173万円 | 約29万円(法人)+約71万円(社長)=約100万円 |
| 差額(節税メリット) | – | 約73万円の節税効果 |
※個人事業主と社長の所得税と住民税の計算は、所得控除を基礎控除だけと仮定して計算しています。
個人事業主の所得では、給与所得控除を差し引けない分、税額に差額が出るということですね。
その通りです。
個人事業主の所得は『事業所得』として扱われるため、原則として必要経費を差し引いた残り全額が課税対象です。
一方で、法人化して社長が給与を受け取る形になると、その給与は『給与所得』になります。給与所得の場合には、『給与所得控除』という一定の控除額を差し引いてから課税されるということになります。
では、次は退職所得控除について、簡単に解説します。
退職金?
個人事業主の場合って、退職って言うか引退ですよね。
なぜ、退職金で税金の有利不利が出るのでしょうか?
おっしゃるとおり、個人事業主に退職金という考え方はありません。
引退時に、口座に残っている資金は全額が所得税の課税済みのお金です。
そのため、個人事業主が引退後に使う資金は、現役時代に事業所得としてすでに課税され、その後に自ら貯蓄したものであり、引き出しても追加課税はされません。
しかしその分、老後資金の準備には毎年の高い税率を負担しながら積み立てる必要があります。
一方、法人では役員退職金として会社が計画的に積み立てることで、支給時に「退職所得控除+1/2課税」が適用され、大幅に税負担を軽減できます。
| 比較視点 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 老後資金の形成方法 | 事業所得から自力で貯蓄が必要 | 役員退職金として会社が積立・支給する |
| 税務上の扱い | 毎年の所得で課税済みであり、貯蓄には優遇なし | 積立中は損金算入でき、支給時は「退職所得扱い」で税優遇がある |
| 節税効果 | 年ごとに高い課税負担(特に高所得時) | 退職時に「控除+1/2課税」で圧倒的に有利になる |
法人から退職金を支出したときの税額計算の具体例は以下の通りとなります。
退職金2,000万円の支給例(法人から社長へ)
社長の勤続年数:19年2カ月(月は切り上げとなり、「20年」で計算)
退職金額:2,000万円
他の所得なし(その年は退職金のみ)
退職金は一括で支給
① 退職所得の金額を算出
退職金に対する課税所得は、以下のように計算されます。
| 計算式 | 結果 |
|---|---|
| 退職所得控除額(勤続20年) | 40万円 × 20年 = 800万円 |
| 課税対象退職所得 = (2,000万円 − 800万円) × 1/2 | 600万円 |
退職金の課税対象となる所得を計算するためには、退職所得控除の金額を算出することになります。算出式は以下の通りとなります。
退職所得控除額の計算の表
| 勤続年数 (A) | 退職所得控除額の計算式 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × A(最低80万円) |
| 21年超 | 800万円 + 70万円 ×(A−20) |
今回の例題の場合は、勤続年数が20年なので、
40万円×20年=800万円
となり、800万円が退職所得控除の金額となり、受け取った退職金額から差し引き、その金額の1/2が課税される所得金額となります。
② 税額の計算(概算)
退職金の課税対象は600万円となるため、これに通常の所得税・住民税の税率を当てはめて計算します。
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 所得税(課税所得600万円の場合) | 約120万円 |
| 住民税(10%程度) | 約60万円 |
| 合計税額 | 約180万円 |
③ 節税効果の比較
仮にこの2,000万円が個人事業主の所得として課税されていたと仮定すると、以下のような比較となります。
| 比較項目 | 個人事業主 | 法人化して退職金で受給 |
|---|---|---|
| 税務上の扱い | 事業所得として課税済み(取り崩し時は非課税) | 退職所得として課税(※退職所得控除・1/2課税あり) |
| 所得控除 | すでに課税済みのため控除なし | 退職所得控除:1,200万円(勤続30年)+1/2課税 |
| 実際の税負担 | 現役時代の累計税額:約600〜700万円(所得税(税率20%想定)・住民税) | 約180万円(所得税+住民税) |
| 税金のタイミング | 現役時に毎年課税 | 引退時に一括課税(優遇措置あり) |
| メリット | 手元資金は自由に使える(ただし税引後) | 退職所得として税務優遇+法人の損金にも計上可能 |
| 節税効果 | − | 約400万円の節税効果 |
ふむふむ。
個人事業主は引退時には課税はされないけど、既に高い所得税を払ったお金が残ることになるけど、法人の場合は、退職金のために積み立てておき、退職金を支払った際に、控除がある分大きな税金の有利があるということですね。
そういうことになります。
よって法人化は、老後資金を「効率よく準備し、最終的に有利な税制で受け取る」ための有効な選択肢でもあるということです。
【節税メリット4】保険料を費用にできることによるメリット
え!?法人化すると支払った保険料を経費にすることができるんですか?
そのとおりです。
個人事業主の場合、生命保険料は原則として経費にできません。所得控除として『生命保険料控除』を使うくらいで、年間の上限も小さいです。
一方、法人になると、法人契約で保険に加入することで、その保険料の一部、あるいは全額を損金に算入できるケースがあるんです。
つまり、課税所得を減らして、節税効果を生み出せるというわけです。
法人化すると、法人契約の生命保険を活用して節税の幅を広げられるという大きなメリットがあります。
個人事業では、生命保険料を必要経費として計上することは原則認められず、所得控除として「生命保険料控除」を使う程度にとどまります。
この控除額は限度が低く、大きな節税効果は期待しにくいのが現実です。
一方で法人の場合は、法人契約の生命保険や掛け捨て保険に加入すれば、その保険料の一部または全額を損金として計上でき、結果的に法人の課税所得を抑える仕組みを利用できます。
たとえば、役員の退職金準備や万一の事業保障として法人で保険に加入した場合、その保険料の一部または全部を損金扱いにできるため、個人よりも柔軟に節税を図ることが可能です。
このように、法人ならではの保険を活用した損金計上の仕組みを上手に使うことで、節税の選択肢が大きく広がる点は法人化の大きな魅力といえます。
生命保険料の取扱い比較
年間保険料100万円の場合※掛け捨て保険とした例で比較します。
| 項目 | 個人事業主 | 法人(会社) |
|---|---|---|
| 保険料の扱い | 必要経費にはできない | 損金算入(条件を満たす法人契約であれば一部〜全額可能) |
| 所得控除の適用 | 生命保険料控除:最大12万円程度 | 保険料の一部または全額を損金に算入でき所得から控除できる |
| 節税効果 | 最大12万円×税率で数万円の節税にとどまる | 最大100万円×法人税率(約23%)で約23万円の節税効果 |
このように、個人事業主は保険料を「控除」できても、ごく一部だけで節税効果は限定的ですが、法人化して法人契約にすれば、保険料を「経費」として落とせるので、節税効果が大きくなります。
法人の場合は、保険料の一部か全額という説明をしていますが、保険料のすべてを経費にできるわけではないのですね。
掛け捨ての保険や解約返戻金が半分以下の保険は、その保険料の全額を損金(法人の経費)にできます。ただし、解約返戻金が半分以上だと解約返戻金分を資産に計上して、それ以外の部分を損金(法人の経費)にするというイメージです。
なるほど。
それでも個人事業主の場合は、所得から差し引ける金額が12万円が上限ということを考えれば、法人で契約した方が断然節税効果が高いということですね!
【メリット2】社会保険に加入できる
法人化すると社会保険に入らないといけないって聞いたんですけど、
それって実際どうなんですか?
法人になると、たとえ一人社長であっても、健康保険や厚生年金といった社会保険への加入が義務付けられます。
一方、個人事業主の場合は、国民健康保険と国民年金への個人単位での加入となり、扶養制度も限定的です。家族がいる場合は、家族それぞれが別々に保険料を負担することになります。
ただし、それを考慮しても法人の社会保険料は個人事業主より高くなるケースが多いです。
特に、役員報酬がある程度以上になると、法人・個人で折半する保険料の負担は相応に重くなります。
その一方で、法人の社会保険制度には個人事業主にはない保障の厚さという大きなメリットがあります。
たとえば、
厚生年金に加入できるため、将来の年金受取額が国民年金より多くなる
傷病手当金・出産手当金・高額療養費などの手当が充実
配偶者や子どもを扶養に入れることができれば、世帯全体での保険料負担が抑えられる可能性もある
といった点が挙げられます。
法人成りにより社会保険の加入が義務となることで、たしかに負担は増えますが、その分保障が充実し、会社にも従業員にもメリットがある仕組みです。
個人事業主の場合は国民健康保険・国民年金に加入しますが、法人化すると健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険といった社会保険の適用を受けることになります。
これにより、単に保険料が高くなるだけでなく、保障内容が拡充し、万一の病気やケガ、出産、失業のリスクに備えやすくなる仕組みです。
また、社会保険加入によって従業員の働く環境が整備され、会社としての社会的信用が高まる点も大きな魅力です。
なお、社会保険料の負担額が増える点はデメリットと言えますので、具体的な負担額の比較については「デメリット」の章で詳しく解説しています。そちらをご参照ください。
ふむふむ。
負担額が大きくなることがあるけど、保障内容が良くなるということですね。
ちなみにどのくらい保障内容が違うのでしょうか?
社会保険に加入することで、負担額は確かに増えることがありますが、保障内容は個人事業主の頃と比べて格段に充実します。
具体的にどう違うか、下表のとおりとなります。
| 項目 | 個人事業主(国保・国年) | 法人(社保・厚生年金) | 違いのポイント |
|---|---|---|---|
| 医療費 | 国民健康保険(3割負担) | 健康保険(3割負担) | 一見同じだが法人は付加給付や独自制度ありで実質負担が軽い場合もある |
| 出産手当金 | なし | あり(出産で会社を休んだ期間の給与の約2/3を支給) | 最大で数十万円の差になることもある |
| 傷病手当金 | なし | あり(病気・けがで働けない間、給与の約2/3を最長1年6か月支給) | 自営業にはない収入補償制度ある |
| 年金 | 国民年金(基礎年金) | 厚生年金(報酬比例で上乗せ) | 将来もらえる年金額が倍以上に違うこともある |
| 雇用保険 | 基本加入不可 | 従業員・要件満たす役員は加入可 | 失業や育児休業中も給付金が出る可能性ある |
| 労災保険 | 原則加入なし(任意) | 強制加入(業務災害・通勤災害に対応) | 通勤中の事故でも補償が受けられる |
つまり、個人事業主の保障は最低限なのに対し、法人の保障は「いわゆる会社員と同等」の手厚さになります。
特に出産や病気での休業時、万一のケガや将来の年金といった人生のリスクに対する備えが全く違います。
このことから、単純に保険料だけで比較するのではなく、「受けられる保障の中身」で比べてみると、法人化の社会保険加入は大きな安心を得られる手段と言えます。
なお、個人事業主と法人それぞれの社会保険の主な内容は以下の通りです。
個人事業主の社会保険の主な保障
| 保険の種類 | 主な保障内容 |
|---|---|
| 国民健康保険 | ● 医療費は原則3割負担 ● 高額療養費制度あり ● 出産育児一時金あり |
| 国民年金 | ● 65歳から老齢基礎年金が支給(定額) ● 障害・遺族年金も「基礎年金部分のみ」支給 |
| 介護保険 | ● 要介護認定で介護サービスが利用可能(法人と保障内容は同じ) |
法人成り後の社会保険の主な保障
| 保険の種類 | 主な保障内容 |
|---|---|
| 健康保険 | ● 医療費は原則3割負担 ● 出産手当金・出産育児一時金あり ● 傷病手当金あり(病気やケガの休業中) ● 高額療養費制度あり |
| 厚生年金 | ● 国民年金よりも受取額が多い(老後の年金が増える) ● 障害・遺族への年金も上乗せされる |
| 労災保険 | ● 通勤・仕事中のケガ・病気に対する医療・休業補償 ● 障害・死亡時の遺族給付も手厚い |
| 雇用保険 | ● 失業時の手当 ● 育児・介護休業中の給付金もあり |
| 介護保険 | ● 要介護認定で、訪問介護や施設サービスなどが利用可能 |
このように、法人成りによる社会保険加入は「負担が増える」というネガティブな側面だけでなく、
・社会保障の厚み
・従業員への安心感
・企業としての信用力
といったメリットを得られる投資と考えることができます。
結果として 優秀な人材の確保や会社の成長基盤づくりにもつながるため、
保険料負担だけでなく、トータルでの価値を評価して判断することが大切です。
【メリット3】社会的信用力が高まりやすい
法人化によって社会的信用が向上し、以下のような将来的に事業成長へつながるさまざまなメリットがある。
・売上の増加
・融資条件の改善
・人材採用の円滑化など
法人化による大きなメリットのひとつが、社会的信用の向上です。
これは事業を安定して発展させていくうえで、欠かせないポイントといえるでしょう。
法人は「会社」としての存在が明確になるため、取引先や金融機関からの信頼性が高まりやすくなります。
法人は登記されることでその存在が明確になり、誰が代表者で、どのような事業を行っているかといった情報が公開されます。
そのため、透明性が高く、金融機関や取引先にとっても安心して取引できる相手として認知されやすくなります。
また、法人としての登記には一定のコストや手続きが必要である分、「本気で事業を続ける意思がある」と見られるのも信頼を得やすいポイントです。
さらに、取引先によっては契約相手を法人に限定しているケースもあるため、新たなビジネスチャンスの拡大にもつながります。
例えば以下のような場面で有利になります。
- 法人口座の開設や融資審査
- 大企業・官公庁との業務委託契約
- 補助金・助成金の申請
- 採用活動や新規取引先の開拓
- 免許・許認可の取得や公共事業の入札
さらに法人であれば、社長に万一のことがあっても会社として事業を続けることができるため、長期的な契約先からの信用も維持しやすくなります。
結果的に、金融機関からの融資面でも有利になり、安定的に優秀な人材を確保できる点も大きなメリットです。
このように、法人化することで社会的信用力や取引の幅が広がり、将来的なビジネスチャンスや人材確保にもつながるのは非常に大きな魅力です。
| 比較項目 | 個人事業主 | 法人(会社) |
|---|---|---|
| 銀行融資の評価 | 取引履歴や個人資産に頼るケースが多い | 決算書や法人格をもとに融資審査され、金利面でも有利になることがある |
| 官公庁との契約 | 登録や契約の対象にならないケースが多い | 法人であれば入札参加資格や契約の幅が広がる |
| 取引先の評価 | 規模が小さい・継続性に不安があると見られることも | 信用調査会社の情報にも載り、対外的に安心感が増す |
| 採用・人材確保 | 信用・福利厚生面で不利になりやすい | 社会保険完備などの体制が整いやすく、応募者からの評価も高い |
「株式会社」や「合同会社」という肩書があるだけで、「きちんとした事業者」という印象を与えることができます。
【メリット4】経営上の責任が限定される
- 個人事業主 無限責任を負う 自宅や貯金などの私財まで差し押さえられるリスクあり
- 法人の株主 有限責任を負う 原則として出資額の範囲でしか責任を負わない
経営上の責任というのはどういうことですか?
経営上の責任というのは、事業の運営で生じるすべての債務や義務について
「誰が最終的に責任を負うか」
ということを指します。
法人化することで、事業の失敗による影響を最小限に抑え、個人の財産を守ることができるという大きなメリットがあります。
個人事業主の場合は無限責任となり、事業で発生した負債について最終的には自分の私有財産で弁済する必要があります。
たとえ仕入先への未払い金や銀行借入の返済、税金の滞納が発生した場合でも、自宅や預貯金といった個人の財産にまで責任が及ぶリスクがあるのです。
一方で法人は有限責任が原則で、出資した資本金の範囲内でのみ責任を負う仕組みです。
そのため、会社が抱えた債務を社長個人が支払う必要は基本的にありません。
もちろん、個人保証を条件にした銀行借入などの例外はありますが、法人化することで原則として個人の生活資産を守れるのは大きな違いです。
たとえば事業が大きく失敗して多額の負債が残ったとしても、法人であれば会社の資産を超える部分まで社長個人が返済する義務は生じません。
結果として、社長個人の自宅や預金などの私有財産を守りつつ、事業を進めることが可能になります。
このように、法人であれば有限責任の仕組みによって個人の生活資産を守り、より思い切った経営判断や挑戦をしやすくなるというのは法人化の大きなメリットです。
| 比較項目 | 個人事業主 | 法人(株式会社) |
|---|---|---|
| 法的な立場 | 個人が直接事業を営む | 会社が事業を営み、個人はその経営者・出資者 |
| 倒産・負債発生時の責任 | 個人資産も含めて返済義務(無限責任)が生じる | 原則として出資額の範囲内(有限責任)のみ |
| 影響範囲 | 自宅・車・預金など私有財産も差し押さえの可能性がある | 法人の資産内で清算され、個人資産への影響は限定的である |
| 家族への波及 | 個人と事業が一体化しているため生活全体に影響が及ぶことも | 個人財産が守られやすく、家族の生活も守られやすい |
「事業のリスク」と「個人の生活」をきちんと切り離せることは、経営者にとって大きな安心材料です。
法人化を検討する際は、この責任の範囲についてもぜひ覚えておいてください。
【メリット5】事業年度を自由に決められる
- 個人事業主:1月1日~12月31日(固定)
- 法人の場合:設立時に事業年度(例:4月~翌年3月)を自由に設定可能
税金支払いの資金繰りや煩雑な決算処理の事務コストを考慮して一番好ましい時期を選択できる
個人事業主の場合は、事業年度が1月から12月までと決められていて、毎年必ず年末で区切って申告しなければなりません。
ところが法人は、自分たちの都合に合わせて自由に決算月を設定できる仕組みになっています。
法人化すると、決算期を自由に設定できるため、税金の支払いや売上の計上タイミングを柔軟に管理できるという大きなメリットがあります。
法人では決算期を自ら選択できる仕組みがあるため、個人事業のように暦年ベースで固定されることがありません。
そのため、繁忙期を避けた時期に決算を迎えることで、経理業務の負担を抑えつつ、納税計画や資金繰りをスムーズに進めることができます。
たとえば、繁忙期の3月決算を避けて、比較的落ち着いた9月を決算期に設定することで、決算処理に集中しやすくなり、節税の検討や金融機関との調整も余裕を持って行えます。
このように、法人ならではの決算期設定の柔軟さを活かせば、経営の自由度が高まり、戦略的に事業をコントロールしやすくなるのは大きなメリットといえます。
| 比較項目 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 事業年度 | 1月~12月(固定) | 任意(例:4月~翌年3月など) |
| 繁忙期と決算の関係 | 繁忙期と重なってしまうと業務の負担が一時的に大きくなる | 繁忙期を避けて設定できる |
| 決算業務のしやすさ | 年末年始の多忙期に準備が重なることが多い | 業務が落ち着いた時期にまとめて対応可能 |
2-2 法人化のデメリット
ふむふむ、たしかにいいことは多そうですね。でも逆に、デメリットや面倒なことってないんですか?
もちろんありますよ。特に、設立の手続きの煩雑さや、費用の負担感は、法人化を後悔するポイントになることもあるので注意が必要です。
法人化することで得られる代表的なデメリットは、次のとおりです。
- 設立・維持にコストがかかる
- 会計・税務管理の手間が増える
- 社会保険への加入が義務で保険料の負担が増える
それでは、一つずつ解説していきたいと思います。
【デメリット1】設立・維持にコストがかかる
法人は、設立時にも運営時にもさまざまなコストが発生し、個人事業主と比べて負担が大きくなる。
法人化ってお金がかかるって聞いたんですけど、
実際にはどのくらい必要なんですか?
確かに、法人を作るには最初の費用と、維持のコストがかかることを理解しておく必要があります。
具体的に説明しましょう。
会社を設立するには、登記費用・定款認証費用・印紙代など、初期費用で約20万円前後がかかります。
設立時の一般的なコスト
| 費用項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 登録免許税 | 15万円(最低) |
| 定款認証費用 | 約5万円(公証人手数料含む) |
| 印紙代 | 約4万円(電子定款なら不要) |
| その他書類作成費用 | 数千円から数万円 |
また、設立後も以下のような固定コストが発生します。
- 決算書や申告書を作成するための費用(顧問税理士への報酬(月額1万〜5万円)など)
- 社会保険料(会社負担分あり)
法人を設立する際には、まず定款作成や登記の手続きに関わる費用が発生します。
たとえば株式会社を自分で設立した場合でも、上記のような費用がかかります。
「資本金1円でも設立できる」とは言われますが、このような費用が最初にかかります。また、金融機関や取引先からの信用を考えると、ある程度まとまった資本金を用意しておくのが現実的です。
加えて、オフィスの契約や設備投資、最初の仕入れに必要な運転資金なども考慮すると、設立時には思った以上のまとまった資金が必要になります。
一方で、設立後の維持費にも注意が必要です。
個人事業の場合、赤字であれば所得税や住民税はゼロになりますが、法人は赤字であっても法人住民税の均等割(最低7万円程度)が必ず発生します。
均等割は資本金や従業員数によって金額が変わりますが、
「赤字なら税金は払わなくていい」という個人事業の感覚でいると、法人化後に戸惑う方も多いのが実情です。
このように、法人化には
- 「設立の初期費用」
- 「維持に必要な固定的コスト」
- 「赤字でも発生する均等割」
といった負担があることを理解し、しっかり資金計画を立てた上で進めることが大切です。
【デメリット2】会計・税務管理の手間が増える
法人になると会計とか税金の手続きが面倒になるって聞いたんですけど、
個人事業とそんなに違うんですか!?
そうですね。
法人では会計のルールも厳しくなりますし、税務の管理も複雑になります。
特に帳簿のつけ方についても個人事業と大きく変わりますので、しっかり押さえておきましょう。
法人化すると、多くのケースで帳簿作成や決算申告などの会計・税務業務が複雑になり、専門的な対応が求められることになります。
個人事業主は単式簿記で簡易的にお金の出入りだけを記録することも可能で、確定申告も比較的シンプルに済ませられます。
しかし、法人は、基本的には複式簿記による帳簿管理が必要になり、確定申告もとても難解になります。
複式簿記では、取引の流れを「借方」と「貸方」の二面で把握しなければならず、資産・負債・純資産の増減を正確に記録する必要があります。
さらに決算では法人税申告の申告書作成は難解です。さらに法人住民税の計算が必要です。法人の確定申告時に提出しなければならない書類も多岐にわたります。
例えば法人の場合、決算時には貸借対照表・損益計算書のほか、勘定科目内訳書や法人事業概況説明書といった詳細資料まで作成が求められます。
また役員報酬の設定など、法人特有のルールにも従わなければなりません。
法人も白色申告の場合は、複式簿記が必須ではなく簡易な方法による記帳も認められてはいますが、個人事業主と違う点は、青色申告で55万円以上の控除を行う場合に必須となる貸借対照表の作成が、法人の場合は白色申告でも必須になっています。
簡易な方法で貸借対照表を作れなくはないですが、それはそれで色々な帳簿を参照して数字を集めてくることになると手間で正確性もかなりあやしくなります。
それだったら日々の取引を始めから複式簿記で行う方が得策ですし、青色申告を申請して青色申告の絶大なメリットを取りに行くのが賢いと思います。
白色申告の場合に必要となる帳簿書類については、次の記事で詳しく解説しています。
このように法人の会計や税務管理は、個人事業に比べて大幅に負担が増えるため、法人化(法人成り)のデメリットと言えるでしょう。
法人になると、決算・法人税申告・法定調書の作成など、税務・会計業務がより複雑かつ厳格になります。
個人の青色申告決算よりも事務作業が増え、人によっては税理士の関与やより専門的な会計ソフトの利用が必要になるでしょう。
【デメリット3】社会保険への強制加入が発生する
法人化すると、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務になる
この社会保険の保険料は、個人事業主が加入する国民健康保険・国民年金に比べて上限額が高く設定されており、負担が大きくなるケースが多い
法人化したら、ひとり社長でも社会保険に入らないといけないんですか?
はい、法人である以上は社長おひとりだけでも社会保険への加入が義務になります。
詳しく説明しましょう。
法人化すると、たとえ社長ひとりだけの会社であっても、健康保険・厚生年金といった社会保険への加入が法律で義務付けられます。
一方、個人事業主の場合は、基本的に国民健康保険と国民年金に加入することで済みます。
とくに従業員が4人以下であれば、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入は任意となっており、加入の有無は事業者自身が選ぶことができます。
このため、法人の場合は「たとえ本人1人だけでも、社会保険への加入が強制される」という点で、個人事業主よりも負担が重くなる可能性があります。
ただし、前述の通り、社会保険には厚生年金による老後の年金額の増加や、傷病手当金・出産手当金などの手厚い給付制度があり、保障内容の充実という大きなメリットがあります。
なお、個人事業主であっても、従業員が5人以上であれば原則として健康保険・厚生年金への加入が義務化されます。
とはいえ、この場合でも、事業主本人は加入対象外であるため、老後の年金や保障面での恩恵を受けにくい構造です。
社会保険の加入はコスト面で負担になる一方、経営者自身の保障の充実や従業員に対する福利厚生の整備、そして求職者からの信用力向上といった側面もあるため、将来的に事業を成長させる見込みがあるのであれば、社会保険を単なるコストではなく「投資」と捉える視点も重要です。収益の見通しや人員計画なども含めて、法人化の判断は総合的に行うのがよいでしょう。
個人事業主と法人の社会保険料比較(年収600万円想定)
| 項目 | 個人事業主 | 法人(社長1人、扶養なし)会社折半分含む | 差額(法人−個人) |
|---|---|---|---|
| 国民健康保険料と健康保険料の比較 | 約700,000円(月約58,000円) | 約600,000円(月約50,000円) | -100,000円 |
| 国民年金・厚生年金の比較 | 約200,000円(月約16,500円) | 約1,100,000円(月約92,000円) | 900,000円 |
| 年間保険料合計 | 約900,000円 | 約1,700,000円 | +800,000円(法人の場合の方が多い) |
なるほど……。法人化すれば節税もできて信用も上がるけど、それなりにお金と手間もかかるってことですね。
おっしゃるとおり。大事なのは今の事業規模と将来のビジョンにとって法人化が本当に必要かどうかをしっかり見極めることです。次章では、法人化のタイミングについて詳しく見ていきましょう。
3 法人化すべきタイミングとは?

法人化には、節税や信用力向上などのメリットがある一方で、コストや手間も増えるため、慎重な判断が必要です。
ここでは、法人化すべきタイミングについて解説していきたいと思います。
法人化って、いつするのがベストなんでしょうか?
『稼げるようになったら法人化』って聞きますけど、それってどれくらいのタイミングなんですかね?
個人事業主としてある程度の収益を上げていると、「そろそろ法人化した方がいいのでは?」と悩む瞬間が訪れます。ですが、「いつがベストタイミングか」は人によって異なり、一概には言えません。
その人が法人化によって何を望んでいるかによるでしょう。
ここでは、多くの事業者が法人化を考える“きっかけ”となる代表的なタイミングを、わかりやすく整理してご紹介します。
- 課税所得が1,000万円を超えそうなとき
- 家族を給与で働かせたいとき
- 売上が1,000万円を超えそうなとき
- 事業の規模が拡大したいと思ったとき
- 利益が安定して出てきたとき
3-1 課税所得が1000万円を超えそうなとき
最近、売上も伸びてきて、経費を差し引いた後の所得が1,000万円に近づいてきたのですが、法人化って今がタイミングなんでしょうか?
課税所得が900万円を超えると、個人の所得税率は33%に跳ね上がるので、そのタイミングで法人化すれば、多くの法人で法人税率は約16.5%または約25.6%一定水準となり、より低い税率を適用できて節税になる。さらに役員報酬として支払えば給与所得控除も使えるため、節税効果が期待できるとよく言われます。
ただし、節税を考える時、キャッシュアウトを抑えるという意味では社会保険料の負担についても考慮する必要があります。
まずは、税金だけに焦点を当てて、節税効果を考えた時、どのタイミングが良いのかを考えてみましょう。
3-1-1 税金だけを考慮した判断
個人事業主には「累進課税制度」が適用され、所得が増えるほど所得税率も急激に上昇します(最大で45%)。たとえば、課税所得が900万円を超えると、900万円を超えた所得金額にかけられる税率は23%から33%に跳ね上がります。
一方、法人の場合は利益に対してかかる法人税率が概ね約16.5%〜約25.6%に安定しており、所得が高くなっても急激な税率の上昇がありません。
したがって、課税所得が900万円を超えるような段階になったら、税負担の観点から法人化を本格的に検討すべきタイミングといえるでしょう。
所得税と法人税の税率の特徴
| 個人事業主の税率 | 法人の税率 |
所得に応じて5%〜45%の累進課税 ※一部抜粋 | 株式会社や合同会社の例 所得800万円以下:約16.5%(中小企業) |
さらに、法人から経営者自身に支払う役員報酬は「給与所得」として扱われ、前述のとおり給与所得控除を適用することができるため、課税所得をさらに減らすことができます。
また、法人であれば退職金制度も整備でき、退職時にまとまった金額を支払っても退職所得控除+1/2課税により、税負担を大幅に軽減できます。
例えば、年800万円の役員報酬なら約190万円の控除があり、課税対象が大きく減ります。
| 区分 | 個人事業主 | 法人(+社長) |
|---|---|---|
| 課税対象所得 | 900万円 | 法人100万円+社長610万円(報酬800万円−給与所得控除) |
| 所得税・法人税等 | 約133万円 | 法人:約16万円+ 社長:約68万円 |
| 住民税 | 約86万円 | 法人:約8万円+ 社長:約57万円 |
| 事業税 | 約30万円 | 法人:約5万円+ 社長:0円 |
| 合計税負担額 | 約249万円 | 約154万円 |
| 差額(節税効果) | ― | 約95万円の節税効果 |
※個人事業主と社長の所得税と住民税の計算は、所得控除を基礎控除だけと仮定して計算しています。
課税所得が900万円を超えるあたりから、、個人事業主では税率が一気に跳ね上がるため、法人化によって節税の選択肢が一気に広がります。
法人税率の安定性に加え、給与所得控除や退職金制度の整備によって、より柔軟で効果的な節税が可能になります。
なるほど、税金だけみるとかなりの節税効果ですね!
ただ……やっぱり気になるのは「社会保険料」です。
社会保険料の負担も考慮した場合のトータルでは、法人化するタイミングは変わってくるのでしょうか。
社会保険料を考慮すると少しタイミングは変わってきます。
実際にどれくらいの負担差が出るのかを知るには、税金と社会保険料の両方を含めたシミュレーションを見るのが一番確実です。
今回はいくつかの所得金額のパターンで、個人事業主と法人の合計負担額を比較してみましょう。
3-1-2 税金と社会保険料を考慮に入れた判断
節税効果がトントンくらいでも法人には社会保険の手厚い保障というメリットがあることも考慮しよう。
法人化が実際にどれほどの節税効果をもたらすのか、「所得300万円」「所得1,000万円」「1,400万円」「2,000万円」の4つのケースで、個人事業主と法人(社長個人+法人)それぞれの税金・社会保険料の合計額を比較してみましょう。
今回のシミュレーションは、個人事業主の課税所得を法人では、おおむね2割を法人の課税所得とし、残りを役員報酬として計算しています。
また、個人事業主と社長の税金計算は、基礎控除と社会保険料控除のみを考慮した計算となっています。
所得金額が300万円のケースでの比較
まずは、所得金額が300万円の場合だった場合のシミュレーションを行います。
このケースでは、まだ利益がそれほど出ていない段階です。個人事業主と法人のどちらが有利かを試算します。
| 項目 | 個人事業主 | 法人(会社+社長) |
|---|---|---|
| 課税所得 | 300万円(事業所得) | 法人:50万円 社長報酬:250万円 |
| 所得税・法人税等 | 約8万円 | 法人:約8万円 社長:約2万円 |
| 住民税 | 約20万円 | 法人:約7万円 社長:約9万円 |
| 事業税 | 約22万円 | 法人:約2万円 社長:0円 |
| 社会保険料 | 約57万円(国保+国年) | 約68万円(会社・社長で折半) |
| 合計負担額 | 約107万円 | 約96万円 |
→ 結果: 所得が300万円の段階では、法人の方が約11万円負担が少なく有利です。
所得金額が1,000万円のケースでの比較
次に、しっかり利益が出ているケースでの比較です。
課税負担と社会保険料の合計を見ていきましょう。
| 項目 | 個人事業主 | 法人(会社+社長) |
|---|---|---|
| 課税対象所得 | 1,000万円 | 法人:200万円 社長報酬:800万円 |
| 所得税・法人税等 | 約129万円 | 法人:約33万円 社長:約44万円 |
| 住民税 | 約85万円 | 法人:約9万円 社長:約45万円 |
| 事業税 | 約35万円 | 法人:約10万円 社長:0円 |
| 社会保険料 | 約113万円(国保+国年) | 約229万円(会社・社長で折半) |
| 合計負担額 | 約362万円 | 約370万円 |
→ 結果: 所得が1,000万円の場合は、個人事業主の方が約8万円負担が少なく有利です。
所得金額が1,400万円のケースでの比較
次に、さらに利益が出ているケースでの比較です。
| 項目 | 個人事業主 | 法人(会社+社長) |
|---|---|---|
| 課税対象所得 | 1,400万円 | 法人:280万円 社長報酬:1120万円 |
| 所得税・法人税等 | 約257万円 | 法人:約46万円 社長:約107万円 |
| 住民税 | 約184万円 | 法人:約10万円 社長:約75万円 |
| 事業税 | 約125万円 | 法人:約13万円 社長:0円 |
| 社会保険料 | 約113万円(国保+国年) | 約260万円(会社・社長で折半) |
| 合計負担額 | 約679万円 | 約511万円 |
→ 結果: 所得が1,400万円の場合は、法人の方が約168万円負担が少なく有利です。
所得金額が2,000万円のケースでの比較
次に、利益を相当程度稼ぎ出ているケースでの比較です。
| 項目 | 個人事業主 | 法人(会社+社長) |
|---|---|---|
| 課税対象所得 | 2,000万円 | 法人:400万円 社長報酬:1600万円 |
| 所得税・法人税等 | 約461万円 | 法人:約66万円 社長:約243万円 |
| 住民税 | 約184万円 | 法人:約11万円 社長:約120万円 |
| 事業税 | 約85万円 | 法人:約19万円 社長:0円 |
| 社会保険料 | 約113万円(国保+国年) | 約311万円(会社・社長で折半) |
| 合計負担額 | 約843万円 | 約770万円 |
→ 結果: 所得が2,000万円の場合は、法人の方が約73万円負担が少なく有利です。
※ 所得税、住民税、事業税及び社会保険料の算定においては、以下のシミュレーションサイトを利用しています。
使用シミュレーションサイト「税金・社会保障教育 税金・保険料シミュレーション」
※ 法人に賦課されている税金のシミュレーションについては、税務ソフト「全力法人税」を使用しています。
使用した税務ソフト「全力法人税」はこちら
比較のまとめ
以上の結果をまとめると下表のとおりとなります。
| 所得 | 個人事業主の負担 | 法人(会社+社長)の負担 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 約107万円 | 約96万円 | 法人が11万円有利 |
| 1,000万円 | 約362万円 | 約370万円 | 個人が8万円有利 |
| 1,400万円 | 約679万円 | 約511万円 | 法人が168万万円有利 |
| 2,000万円 | 約843万円 | 約770万円 | 法人が73万円有利 |
1,000万円くらいでは、社会保険料を含むと確実に法人が負担額で有利とは言えないのですね。
そして、所得が多いほど法人が有利とも言えないのですね。
そのとおりです。
税金面だけを見れば、所得が増えるほど法人の方が有利になります。
ただし、法人にすると社会保険料の負担が大きくなるケースが多く、結果として個人事業主よりトータルの負担が重くなることもあります。
とはいえ、この負担額は「社長の給与額」や「家族の扶養の有無」などによっても変わりますし、社会保険には万が一のときの手厚い保障があるため、単純な比較で損得を断言できません。その事業者の状況によって決まる部分も多くあります。
もう一つ、注意が必要なのは、課税所得が900万円以上になると税率は33%に上がるのですが、実際に33%の税率がかかるのは、900万円を超える部分です。したがって、課税所得が900万円であれば、税率は、5%、10%、20%と23%しか適用されていません。
例えば課税所得が1,000万円であれば、1,000万円ー900万円=100万円部分にしか33%は適用されません。
したがって、900万円を超えてくるとその超えた分に33%はかかってくるので、900万円から離れて多くなればなるほど、法人化することによって節税効果が大きくなってきます。この節税効果が大きくなればなるだけ社会保険料の負担を超えてきやすくなるとも言えます。
また、役員報酬の所得税率が33%になってくる場面では、そちらの負担も急進してくるので節税効果が弱まるとも言えます。
したがって、ある程度シミュレーションしたところで、以下で解説する他のタイミングも踏まえてトータルで法人化を判断する必要があります。
3-2 家族を給与で働かせたいとき
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