
法人税の申告書に「同族会社」という文言があるけど、これはどういう意味?
同族会社の判定ってどういうこと?
初めての確定申告、税務署から申告書が送られてきて、パラパラと見てみると「同族会社」「同族会社の判定」という文言が目に入る。
「これはどういう意味?」
「家族経営じゃないし、自分ひとりの会社だから大丈夫でしょ」
確かに、「同族会社」という言葉からは、親族で経営するような会社をイメージしがちです。
しかし、同族会社というのは「少人数の株主等が、会社を実質的に支配している状態にある会社」をいいます。
例えば、株式を一人で保有している一人社長の会社は、同族会社の典型例です。
もっとも、中小企業の実務においては、「同族会社に該当するから困る」という場面は、実際のところそう多くはありません。
とはいえ、同族会社にだけ適用される特有の税務ルールが存在しており、場合によっては大きなミスにつながり、余計な税金を納めることになるケースもありますので、自社に不利益があるものかどうかを確認しておく必要は大いにあります。
たとえば、同族会社に適用される注意を要するルールには以下のものがあります。
- 「みなし役員に認定されて、報酬や賞与が損金不算入になるリスクがある」
- 「使用人兼務役員の給与が原則として経費に認められない」
- 「利益連動給与が損金不算入になる」
- 「行為計算否認のリスクがある」
これらは少し専門的で難しく感じるかもしれませんが、本記事の中で順を追って、初心者の方にもわかりやすく丁寧に解説していきますのでご安心ください。
今回は、そんな「同族会社とは?」という定義から、フローチャートを使った同族会社の判定方法や同族会社に該当する場合には、税務上でどのような影響があるのか、
さらに同族会社に関する法人税申告書(別表2)を簡単に作成する方法まで、元国税調査官の視点でわかりやすく解説していきます。
この記事を読み終える頃には、「自社が同族会社に該当するのかどうか」の判断ができるようになり、万が一、該当していた場合でも冷静に対処するための知識が身につき、税務リスクに備えた経営判断ができるようになります。
ぜひ最後までご覧いただき、税金で損しない税務に強い経営の第一歩を踏み出してください。
会社を設立してもうすぐ1月になるそんなある日・・・
確定申告書に「同族会社」を判定する書類があるけど、「同族」というくらいだし、家族が役員になっている会社が該当するくらいの意味かな。
うちは役員に親族がいない一人社長の会社だから関係ないよね?
ちょっと待ってください!!
「同族会社」かどうかは、「家族経営」かどうかではなく、株主構成や実質的な支配関係によって判断されるんです!
例えば、新米社長さんのように株式のすべてを一人で保有している一人社長の会社であれば、基本的には「同族会社」に該当しますよ!
えっ!?一人社長でも!?
じゃあ、もし該当してたら、どうなるんですか!?
同族会社に該当すると、いくつかの税務上の取り扱いに注意が必要になります。
たとえば、
- 使用人が「役員」とみなされる場合がある
- 使用人兼務役員の給与が原則として経費に認められない
- 利益に連動した役員給与は経費にできない
- 同族会社の行為計算否認という規定がある
「特定同族会社に該当すると、留保金課税という仕組みが適用される可能性がある」
など、「同族会社ではない会社」にはない独自のルールが設けられています。
こうした制度は、あらかじめ知っていれば問題なく対応できますが、知らずに放置してしまうと、後になって税務署からの指摘を受けたり、想定外の税額が発生したりする可能性もあります。
とはいえ、ご安心ください。これらのルールには明確な条件があり、正しい知識さえあれば一人社長でも十分に対応できます。
本記事では、次のようなポイントを初心者向けにわかりやすく整理してご紹介します。
- 同族会社とはどのような会社か?(定義と背景)
- 自社が同族会社に該当するかどうかをフローチャートで判定
- 同族会社と判定された場合、法人税上でどんな影響があるのか?
- 法人税申告書の別表2「同族会社等の判定に関する明細書」とはどのような書類か?別表2を簡単に作成する方法
正しい知識を身につけて、税務署にも自信を持って対応できる準備をしておきましょう。
わかりました!ちゃんと知っておかないと…
解説よろしくお願いします!!
目次
1 同族会社とは(同族会社の概要)
ここでは、「同族会社」の基本的な概要から確認していきたいと思います。
1-1 同族会社の定義とは?
同族会社って、家族で経営してる会社のことですよね?
うちは自分ひとりで全部やってるから関係ないと思ってたんですけど……。
実はそこが落とし穴なんです。
「同族会社」というのは、単に“家族が経営している会社”という意味ではありません。
簡単に言うと、同族会社とは、会社を少数の株主が実質的に掌握している会社のことを言います。
同族会社とは、会社を少数の株主が実質的に掌握している会社のこと。
税法では、「会社の株主の3人以下、並びにこれらと特殊な関係にある個人や法人が議決権の50%超を保有している会社」と表現されています。
株主のうちで3人が、出資金の50%超を負担していれば同族会社になるんですね。
以外に簡単ですね。
3人の中には、その人の親族を加えるといったルールもあるので、単純にそうとは言い切れませんが、最初はそのように考えてもらえればOKです。
一見すると、「同族会社=家族で経営している会社」と思いがちですが、実はそうとは限りません。
たとえば、次のようなケースでも同族会社に該当します。
- 一人社長が100%株を保有している
- 友人同士で会社を設立し、その3人だけで株式の大半を持っている
このように、経営を動かしているのが親族かどうかは関係なく、「経営権が少数の人に集中しているかどうか」が同族会社の判断ポイントになります。
同族会社の判定の仕方についての詳しい内容は後述します。
逆に、株主が広く分散していて、経営への影響力が偏っていない会社は、同族会社でない「非同族会社」と呼びます。
つまり、「同族会社」と「非同族会社」の違いは、株主構成と経営の支配構造にあるということです。
1-2 なぜ「同族会社」という制度があるの?
でも、なぜ同族会社という区分があるんですか?
普通の会社と何が違うんでしょうか?
同族会社のメリットとしては、経営の自由さがあります。
ただ、その経営の自由さにより、一部の経営者が、会社の利益を自分に有利に動かせてしまうという構造上のリスクが発生します。
だからこそ、同族会社には、不適切な節税や利益操作を防ぐための特別な税務ルールが設けられているんです。
この「同族会社」という枠組みが設けられている理由としては、法人と個人の境界を曖昧にしないためです。
同族関係者で会社を支配していると、次のような問題が起きやすくなります。
- 高額な役員報酬で法人の利益を調整
- 法人の利益を意図的に圧縮して節税する
- 家族を役員や社員にして、形式的な給与を支払う
- 利益を会社にため込み、配当や課税を先延ばしにする
こうした操作を防ぐために、同族会社にだけ特別な制限や課税制度を設けることで、税務の公平性を保とうとしています。
制度があることで生じる主な制約
- 行為計算否認
- 使用人がみなし役員となる可能性
- 使用人兼務役員になりにくい
- 利益連動給与の損金不算入
- 特定同族会社の留保金課税
これらについては、後の章で詳しく解説していきます。
同族会社になると、税務上は不利になりそうですね。
同族会社は、税金を減らす行為を少数で決められるので、税務当局は、それに一定の制限をかけたいというイメージですね。
2 同族会社の判定方法
この章では同族会社の判定について解説していきたいと思います。
2-1 同族会社の判定の基本
「同族会社」とはどういう会社なのかがわかってきました。
実際にうちの会社が該当するのかって、どうやって判断するんでしょうか?
同族会社に該当するかどうかは、発行済株式の所有割合と、その株主がどういう関係にあるかで判断します。
まずは、その判定方法の基本を押さえましょう。
株式会社と持分会社で判定の仕方が変わってきますよ。
■ 株式会社や有限会社の場合(最も一般的な会社の形態)
株式会社については、次の2つの基準で判定されます。
- 3人以下の株主グループとその同族関係者が、会社の発行済株式の50%超を所有しているかどうか
- 上記のグループが、会社の議決権の過半数(50%超)を有しているかどうか
この2つのいずれかに該当すれば、「同族会社」と判定されます。
■ 合名会社・合資会社・合同会社など(持分会社)
これらの持分会社では、次のように判定されます。
- 3人以下の社員グループとその同族関係者の出資割合が、50%超を超えているかどうか
- 上記のグループに所属する社員数が、その会社の社員総数の過半数を占めているかどうか
この条件に該当する場合、「同族会社」とされます。
ここの「3人以下」というのは、会社の支配に関わる上位3人の株主のことです。
この「3人以下+その同族関係者」のグループで、会社の株式や議決権の過半数を持っているかどうかを判断することになります。
ふむふむ。
この3つの内容から同族会社かどうかを判定するということですね。
でも、なんか難しそうですね。もっと簡単に「うちは該当するかどうか」を見極める方法ってありますか?
自分の会社が同族会社かどうか、はい・いいえで進めるフローチャートにまとめてみました。
同族会社の判定に活用してください。
2-2 フローチャートでわかる同族会社の判定方法
同族会社の判定は、税法に慣れていない方は、文字だけ見てもよくわからないと思いますので、同族会社かどうかを判定できるフローチャートを用意しました。
フローチャートに当てはめていけば自ずと同族会社かどうかの判定ができてしまいます。
同族会社の判定の第1ステップを見てみましょう。
2-2-1 【STEP1】株主(社員)が3人以下か?
最初のステップは、まず出資者が3人以下かどうかです。
→「はい(3人以下の場合)」 →✅ あなたの会社は「同族会社」です
→「いいえ(4人以上の場合)」 →「ステップ2」次へ進む
株主(社員)が3人以下の会社の場合は、同族会社であることが確定します。そう、判定終了です!
とても簡単ですね。
このステップで確定しない株主(社員)が4人以上の会社だけ、次のステップに進みます。
2-2-2 【STEP2】株主(社員)が4人以上の場合
ここからは、株主(社員)が4人以上の会社の場合の判定となりますが、会社の形態によって、判定の方法が異なります。
「株式会社・有限会社」といった株式を発行する会社と、「合同会社・合名会社・合資会社」などの持分会社とでは、同族会社に該当するかどうかの基準や手順が変わります。
株式会社・有限会社の判定
まずは、「株式会社・有限会社」といった株式を発行する会社の判定を行っていきます。
STEP2もフローチャートで進んでいきます。
STEP2での第1ステップは、株式数で判定していきます。
・【株式数での判定】
【ステップ❶】株主のグループ化を行う
グループ化というのは、大まかに言うと、ある株主と親族であるような、ある株主と関係の深い株主は1つの株主グループとして考えるというイメージです。
この関係者を「同族関係者」といいます。
株主Aと株主Bが親族の場合は、株主Aと株主Bは、株主Aグループとして捉えるイメージです。
親族以外にもグループ化する関係者もいるんですよね。
そのほかの「同族関係者」も教えてください。
同族関係者とは、株主本人と特別に関係の深い個人や法人を指します。
その同族関係者の範囲は次のように整理されます。
同族関係者の範囲
■ 特別な関係にある「個人」
株主の親族(配偶者、子・孫・親・祖父母・兄弟姉妹など) → 血縁は6親等内、姻族は3親等内が対象
株主と事実婚の相手(戸籍上は婚姻していなくても同居し生活を共にしている人)
個人である株主等の使用人((家事手伝いや運転手など)
個人株主等から生活支援を受けている人(仕送りなど)
上記2から4の人と生計を一にしているこれらの人の親族
■ 特別な関係にある「法人」
株主が単独で50%超の株式・議決権を持っている会社
株主と上記1の会社が他の会社(A)を支配している場合におけるその会社(A)
株主の1人と上記1と2の会社が他の会社(B)を支配している場合におけるその会社(B)
(社長A → 会社X(支配) → 会社Y(支配) → 会社Z(支配) → このような連鎖でも、会社Zまで同族関係者に含まれます)
ある株主とこれらの同族関係者にある株主がいたら、同じグループにしていくのですね。
なんとなくわかるのですが、具体的な判定例がほしいですね。
待ってました!
では、例を見ながら株主のグループ化の手順を確認していきましょう。
「株式会社清州興産」という会社を例に株主のグループ化を実際に順を追ってやっていきたいと思います。
株式会社清州興産の株主を整理したものが次の表です。
STEP1
まず、株式数の一番多い株主を選択します。
株式会社清州興産の株主の中で、株式数の一番多い「織田信雄」を最初に選択します。
STEP2
「織田信雄」と同族関係者に該当する株主を探します。
「織田孝子」は、「織田信雄」の妻なので、株主等の親族であるため、同族関係者となります。
したがって「織田孝子」は、織田信雄グループ(以下「織田グループ」と言います。)に分類します。
「織田法幸」は、「織田信雄」の長男なので、株主等の親族であるため、同族関係者となります。
したがって「織田法幸」も、織田グループに分類します。
織田信雄と関係のある者はもういませんので、織田グループは3人ということになります。
STEP3
続いて、まだ他の株主のグループに分類されていない株主の中で株式数の一番多い株主を選択します。
株式会社清州興産のグループに分類されていない株主の中で株式数が一番大きい「羽柴秀一」を選択します。
STEP4
「羽柴秀一」と前述の同族関係者に該当する株主を探します。
「羽柴長次郎 」は、「羽柴秀一」の弟なので、株主等の親族であるため、同族関係者となります。
したがって「羽柴長次郎 」を羽柴秀一グループ(以下「羽柴グループ」と言います。)に分類します。
他に羽柴秀一と関係のある者はいませんので、羽柴グループは2名ということになります。
STEP5
続いて、これまでのSTEP同様、まだ他の株主のグループに分類されていない株主の中で株式数の一番多い株主である「柴田権司」を選択します。
STEP6
「柴田権司」と前述の同族関係者に該当する株主を探します。
該当者がいないため、柴田権司グループ(以下「柴田グループ)と言います。)は、「柴田権司」のみとなります。
STEP7
「丹羽五郎」と同族関係者に該当する株主を探します。
該当者がいないため、池田勝也グループは、「丹羽五郎」のみとなります。
以上で、株主のグループ化が完了しました。
グループ化された株主を整理すると次のとおりとなります。
【ステップ❷】株主グループの順位付け
次のステップは、株主グループの持株数を合計して、多い順に株主グループの順位付けを行います。
なお、株主グループの順位付けを行うのは、持株数が上位第3位までです。
先程、作成した株式会社清州興産のグループ化した株主の整理表から、「織田グループ」の構成員は妻である織田孝子と長男である織田法幸となり、株主の整理表に記載のあるとおり「織田グループ」の持株数は全部で40株ということになります。
同様に他の株主グループの持株数を整理し、株主グループの持株数の順位付けを行った場合以下の通りになります。
グループ分け結果
グループ順位 | グループ名 | 株式数 |
第一位グループ | 羽柴グループ | 45株 |
第二位グループ | 織田グループ | 40株 |
第三位グループ | 柴田グループ | 10株 |
【ステップ❸】上位3グループの株式数の合計が発行株式数の50%超か判定する
ここで、グループ化した上位3グループの保有株式数の合計が発行株式数の50%超えているかで判定を行います。
→「はい(50%を超えている)」 →✅ あなたの会社は「同族会社」です
→「いいえ(50%超えていない)」 →「議決権」での判定に進む
※ 議決権に制限のある種類株式を発行していない場合は、ここで「非同族会社」に該当することが確定します。
なお、例題の場合は以下のとおり、上位3グループの保有株式数の合計が発行株式数の50%超えているため、同族会社に該当することになります。
上位3グループの株式保有割合
グループ順位 | グループ名 | 保有株式数 | 保有割合 |
第一位グループ | 羽柴グループ | 45株 | 45% |
第二位グループ | 織田グループ | 40株 | 40% |
第三位グループ | 柴田グループ | 10株 | 10% |
合 計 | - | 95株/100株 | 95% |
・【議決権での判定】
グループ化した上位3グループの保有株式数の合計が発行株式数の50%超えておらず、かつ議決権に制限がある種類株式を発行している場合は、議決権で判定を行っていくことになります。
【ステップ❹】議決権に制限のある種類株式を発行しているか?
→「いいえ(発行していない)」 →あなたの会社は「非同族会社」に該当します。
→「はい(発行している)」 →議決権ベースで再度株主グループ化して、議決権数で判定します。
このとき、議決権に制限がある種類株式(例:無議決権株式など)を発行している場合には、「議決権ベース」での判定が必要です。
つまり、株式数ではなく、実際に経営判断に関与できる議決権をもとに、順位づけからやり直します。
グルーピングは終わってますので、クループの中で、株式数をカウントするのではなく、議決権数をグループ内でカウントし直します。
そして順位づけを行い、上位3グループが保有する議決件数が、会社全体の議決権の過半数(50%超)を超える場合には同族会社として判定されます。
以上が株式会社(有限会社)の同族会社の判定方法になります。
続いて持分会社の社員が4人以上いる場合の同族会社の判定方法を確認していきます。
持分会社(合同会社など)の場合の判定
合同会社などの持分会社の場合は、株式を発行しない会社形態であるため、株式数、議決権の代わりに出資金の比率や社員数(業務執行役員)で同族会社の判定を行います。
持分会社の社員が4人以上いる場合のフローチャートは以下のとおりです。
持分会社の場合は、まず出資金で判定していきます。
・【出資比率での判定】
【ステップ❶】社員のグループ化を行う
まずは、株式会社、有限会社の判定と同様に出資者のグループ化を行います。
持分会社では「社員(業務執行役員)」という立場の者が出資して会社を構成しています。
この社員についても、株式会社と同様に「同族関係者」のグループ化が必要です。
持分会社だと「社員」って言うんですね。
でも、グループ化の考え方は、株式と同じようにできるんですか?誰が同族関係者なんでしょうか?
そうですね。株式会社と同じ内容になります。
持分会社でも、社員本人と関係の深い個人・法人を同族関係者として扱います。
以下のとおり、同族関係者の範囲は同様に整理されます。
同族関係者の範囲(持分会社の場合も共通)
■ 特別な関係にある「個人」
- 社員の親族(配偶者、子・孫・親・祖父母・兄弟姉妹など) → 血縁は6親等内、姻族は3親等内が対象
- 社員と事実婚の相手(戸籍上は婚姻していなくても同居し生活を共にしている人)
- 個人である社員の使用人(家事手伝いや運転手など)
- 個人の社員から生活支援を受けている人(仕送りなど)
- 上記2から4の人と生計を一にしているこれらの人の親族
■ 特別な関係にある「法人」
- 社員が単独で50%超の株式・議決権を持っている会社
- 社員と上記1の会社が他の会社(A)を支配している場合におけるその会社(A)
- 社員の1人と上記1と2の会社が他の会社(B)を支配している場合におけるその会社(B)
(社長A → 会社X(支配) → 会社Y(支配) → 会社Z(支配) → このような連鎖でも、会社Zまで同族関係者に含まれます)
また具体例を使っての説明をお願いします!
わかりました!
それでは、持分会社の例で見ていきましょう。
今回は「合同会社ウエスギ」という会社を例に、社員のグループ化を順に説明していきます。
STEP1 最も出資金の多い社員をピックアップ
出資割合の最も多い社員を探します。
今回の例題だと、出資金額が最も多い者の出資金額5,000,000円で、同額の者が6人いるため、同族関係者が多そうな「上杉 輝虎(代表社員)」を選択します。
→ 上杉 輝虎(代表社員)が5,000,000円を出資しており、出資割合は約16%で最大。
STEP2 同族関係者の社員をピックアップ
「上杉輝虎」と同族関係にある者をグループ化します。
→ 長男:上杉 景勝(出資250,000円)
→ 次男:上杉 景虎(出資250,000円)
この3名で 「上杉グループ」 を構成します。合計出資額は 5,500,000円(18%)
STEP3 グループ化されていない社員の中で一番出資金の多い社員をピックアップ
次に、未分類の中で出資額が最も多い者を選びます。
次に出資額が多く、かつ同族関係者が多い者を選択しますが、例題では、「上杉輝虎」以外は親族関係がない単独グループであるため、それぞれグループ化します。
以上で、株主のグループ化が完了しました。
グループ化された株主を整理すると次のとおりとなります。
グループ名 | 構成員 | 出資合計額 | 出資割合 |
---|---|---|---|
上杉グループ | 上杉 輝虎・景勝・景虎 | 5,500,000円 | 18% |
柿崎グループ | 柿崎 景家 | 5,000,000円 | 16% |
直江グループ | 直江 景綱 | 5,000,000円 | 16% |
宇佐美グループ | 宇佐美 定満 | 5,000,000円 | 16% |
斎藤グループ | 斎藤 朝信 | 5,000,000円 | 16% |
甘粕グループ | 甘粕 景持 | 5,000,000円 | 16% |
【ステップ❷】グループの順位付け
次に行うのは、社員グループの出資金の額を合計して、多い順に社員グループの順位付けを行う必要があります。
なお、社員グループの順位付けを行うのは、出資金額の合計が上位第3位までです。
ただし、今回の例題では上杉グループ(18%)以外に 同額出資(16%)のグループが5つ存在しています。
そのため、残り2つのグループは、以下の5グループの中から任意に選定することになります。
グループ分け結果
グループ順位 | グループ名 | 出資金額 | 出資割合 |
第一位グループ | 上杉グループ | 5,500,000円 | 18% |
第二位グループ | 柿崎グループ | 5,000,000円 | 16% |
第三位グループ | 直江グループ | 5,000,000円 | 16% |
【ステップ❸】上位3グループの出資割合の合計が50%超か判定する
ここで、グループ化した上位3グループの出資金の合計が会社全体の出資金の額の50%を超えているかで判定を行います。
→「はい(50%を超えている)」 →✅ あなたの会社は「同族会社」です
→「いいえ(50%超えていない)」 →「社員数」での判定に進む
なお、例題の場合は以下のとおり、上位3グループの出資割合の合計が50%超えていないため、社員数判定に進むことになります。
上位3グループの出資割合
グループ順位 | グループ名 | 出資割合 |
第一位グループ | 上杉グループ | 18% |
第二位グループ | 柿崎グループ | 16% |
第三位グループ | 直江グループ | 16% |
合計 | - | 50% |
えっ!?「18%+16%+16%で50%」になるから同族会社になるんじゃないんですか?
同族会社の判定は「上位3グループの出資割合が50%超えている」ことが要件ですから、ぴったり50%では同族会社とはなりません。
この点は、間違いやすいのでご注意ください。
それでは、引き続き社員数での判定を行っていきましょう。
社員数判定(業務執行社員の過半数か)
持分会社では、出資割合による判定で同族会社に該当しなった場合は、「社員数ベース」での同族会社の判定を行います。
【ステップ❹】上位3グループの社員数が総社員数の50%を超えているか?
→「はい(50%を超えている)」 →✅ あなたの会社は「同族会社」です
→「いいえ(50%を超えていない)」 →あなたの会社は「非同族会社」に該当します。
なお、例題の場合は以下のとおり、上位3グループの社員数が総社員数の50%超えているため、同族会社に該当します。
上位3グループの社員構成一覧(合同会社ウエスギ)
グループ順位 | グループ名 | 社員名 | 社員数 | 総社員数 | 割合(%) |
---|---|---|---|---|---|
第1位グループ | 上杉グループ | 上杉 輝虎、上杉 景勝、上杉 景虎 | 3人 | 8人 | 37.5% |
第2位グループ | 柿崎グループ | 柿崎 景家 | 1人 | 8人 | 12.5% |
第3位グループ | 直江グループ | 直江 景綱 | 1人 | 8人 | 12.5% |
合計 | ― | ― | 5人 | 8人 | 62.5% ✅ |
以上が持分会社の同族会社の判定方法でした。
2-3 同族会社の判定の具体例
もう少し同族会社の判定の例を挙げてみます。
慣れていってください。
ケース1 社長ひとりで100%所有している場合
株主構成:社長 100%
判定:株主構成が社長だけで株主が3人以下であるため、同族会社に該当する。
ケース2 家族で出資している場合
株主構成:社長(50%)、配偶者(30%)、子ども(20%)
判定:株主構成が3人以下であるため、 同族会社に該当する。
ケース3 友人3人で出資している場合
株主構成:社長(35%)、友人A(25%)、友人B(20%)、その他(20%)
判定:上位3人で全株式数の80%を保有している状況であるため、株主の間に同族関係がなくても、 同族会社に該当する。
ケース4 持ち株が分散して出資している場合
株主構成:株主10人がそれぞれ10%ずつ保有(それぞれの株主に同族関係なし、種類株式の発行なし)
判定:上位3人で50%を超える構成がないため、 同族会社には該当しない(非同族会社)
3 同族会社となった場合の影響(中小企業は4つのデメリットに注意)
同族会社に該当した場合は、何かメリットがありますか?
「同族会社に該当すると何か得なことがあるんじゃないか?」と思われる方もいるかもしれませんが、実は税務上のメリットはほとんどなく、むしろ特有のルールによってデメリットが多くなっています。
えっ、そうなんですか!?
メリットはなく、デメリットばかり…
どんなデメリットがあるのかを教えてもらえますか。
同族会社のデメリットの代表例は以下の5つと言えます。
ただし、中小企業の場合は、留保金課税がありませんので、実質デメリットは4つです。
- 行為計算否認の対象となる
- みなし役員として扱われやすい
- 利益連動給与が損金不算入
- 使用人兼務役員の給与が認められにくい
- 特定同族会社は留保金課税の対象になる」
こんなにあるんですね。
なんか難しそうな言葉が多いし、、
それに全部デメリットなんですよね。
確かに税務的にデメリットとなるものばかりですが、実は、小規模の法人には影響がないものがかなり多いんです。
では、それぞれについて順を追って解説していくことにしますので、一つ一つ自社に関係があるかを確認していってください。
3-1 行為計算否認の対象となる
「行為計算否認」…?なんか物騒な名前ですね。
何を否認されるんですか?
「否認」と聞くとドキッとしますよね。
でも、これは法人税法の中でも同族会社に特有のルールです。
簡単に言うと、税金を減らすために不自然な取引をしたと税務署に見なされた場合、その取引をなかったことにされる制度なんです。
なるほど、、
でも、これって会社としては正当な取引だと思っていても、税務署が不当だと思われると否認されるってことですよね。
こんなの避けようがない気がしますけど、、
もちろん、すべての取引が否認されるわけではありません。
ポイントになるのは、「その取引が、会社の所得を不当に減らしていないか」という点です。
実際には、「行為計算否認」は“伝家の宝刀”とも呼ばれるほど、税務当局がめったに適用しない強力な制度です。
そのため、通常の中小企業が、通常どおりの経済活動を行っていれば、基本的に適用されることはほとんどありません。
どのような取引が行為計算否認になるのかを具体例を挙げてみます。これでイメージが湧くのではないかと思います。
例えば、ある人Aが不動産を個人事業主としてしょゆうしていて、その不動産を管理する会社Bを作った。
その法人Bが赤字なことをよいことに、その法人Bへの管理費を相場の何倍も高い金額をAが支払っているというケースを考えてみましょう。
ちょっとわかりづらいかもしれませんので図解して解説します。
次の図のケース1が通常の取引だとします。
個人Aの利益は800で、法人Bは600の赤字です。個人Aは800に対して税金が課されます。
ケース2は法人Bが600の赤字を利用するために、個人Aが法人Bに払う管理費を600増やして800にします。法人Bの収入も600増えます。
個人Aの利益は800→200になり、法人Bは利益0のままです。
個人Aの利益200に対して税金が課されます。
ケース1 | ケース2 | |||
---|---|---|---|---|
個人A | 法人B | 個人A | 法人B | |
収入 | 1000 | 400 | 1000 | 1000 |
費用 | 200 | 1000 | 800 | 1000 |
利益 | 800 | -600 | 200 | 0 |
トータル利益 | 800 | 200 |
このように費用を意図的に関係会社に移し、利益を操作するような行為を同族会社の行為計算といいます。
このように意図的に税金を減らすような行為をするような悪徳の法人でなければこの規定が適用されることはありません。したがって悪徳邦人ではないみなさまはこの規定を無視して構わないということになります。
私は税務署に10年以上勤務し法人税の調査をしてきましたが、未だかつてこの規定を適用した話を聞いたことがありません。これが伝家の宝刀と言われていた所以です。伝家の宝刀は抜かないですよね。牽制の規定という意味合いです。
その他にも行為計算否認が適用される可能性のある具体例を挙げておきます。
行為計算否認として否認される可能性がある取引例
- 実際の価値よりも高く評価した資産を出資してもらう行為
- 自社の不動産などを親族に格安で売却する取引
- 同族関係者から物や設備を時価より高く購入する取引
- 使い道のない土地・建物などを会社に出資または譲渡する取引
- 親族等に対して職務に見合わない高額な役員報酬する行為
- 親族や子会社などの借金を会社が肩代わりする行為 etc.
これらの取引は、「形式的には合法だが、実質的には節税目的の取引」とみなされれば、税務署によってなかったことにされ、結果として課税される法人税が増加する恐れがあります。
そうなんですね、、、
これは怖いです。
前述の通り、行為計算否認は「伝家の宝刀」とも呼ばれ、実際に適用されるケースは多くはありません。
しかし、一度適用されるとこの制度に限らず、納税者が国と争って勝訴するのは極めて困難とされています。
同族会社である以上、身内だからこそ、普通の会社より慎重に取引等を行う意識が大切です。
3-2 使用人がみなし役員になる可能性がある
「みなし役員」??
それはどのような役員を指すのでしょうか?
みなし役員というのは、簡単に言うと、「肩書きは役員ではないが、実質的に役員と同じような立場や影響力を持っている人」は、税務上では「役員」として扱われることがあります。
税務上、「みなし役員」とされる可能性があるのは以下のような者です。
「みなし役員」の定義
税務上の「みなし役員」とは、以下のいずれかに該当する者を指します。
- 顧問・相談役など、法人の使用人(植生状の使用人としての地位だけを持つ人)以外の人で、形式上の役員ではないが、実質的に役員と同等の立場で経営に関与している者
- 同族会社の使用人(職制上の使用人としての地位だけを持つ人に限る)で、以下の3つの「株式所有割合の要件」のすべてを満たし、かつ、経営に従事している者
■ 株式所有割合の要件
要件 | 内容 |
---|---|
上位株主グループに属している | 株主グループ1~3位の合計で50%超の所有割合を持つ株主グループに所属していること |
所属グループの保有割合が10%超 | 自分が属している株主グループ全体で10%超を保有していること |
自身(と配偶者など)で5%超 | 本人、配偶者、およびそれらが支配する法人で合計5%超の株式を所有していること |
1の例は、顧問や相談役以外にも、以下のような例を挙げられます。
・取締役または理事となっていない総裁、副総裁、会長、副会長、理事長、副理事長、組合長等
・合名会社、合資会社および合同会社の業務執行社員
・人格のない社団等の代表者または管理人、
なるほど。
会社の形式上は、役員じゃないけど、税務上では実質的に役員とみなされるから「みなし役員」ということですね!
でも、この「みなし役員」になったら何か問題があるのでしょうか?
そうですね。
税務上、大きな影響があります。
「みなし役員」と判定されると、給与の扱いがガラッと変わることになります。
まず前提として、従業員(使用人)と役員では、会社から支払う給与の税務上の扱いが大きく異なります。
従業員(使用人)と役員の給与の税務上の取り扱いの違い
【従業員(使用人)の給与】
給料・賞与・インセンティブなどは原則すべて損金(法人の経費)として認められる
【役員の給与】
- 損金算入が認められるのは以下の3種類に限られる
① 定期同額給与(毎月一定額の給与)
② 事前確定届出給与(所定の期日に支給し、事前に税務署に届出)
③ 利益連動給与(非同族会社に限る) - 上記以外の役員賞与等の支給は原則として損金不算入(=経費にできない)
このように、従業員と役員では給与の取り扱いが違います。
「肩書きは従業員」でも、「税務上は役員」と判定された場合、給与の取り扱いは「役員報酬」として扱われることになります。
そうなると、「みなし役員」となった従業員の給与が定期同額でなければ損金不算入になる可能性があるということです。
つまり、みなし役員とされることで、従業員と同じつもりで支払っていた給与が否認されてしまい、余計な税金を納める必要がでる可能性があるということになります。
損金というワードは、法人税では避けて通れないワードです。知らない方は、次の記事でわかりやすく解説していますので、一読をお勧めします。
3-3 利益連動給与は損金不算入なる
うちは業績が良かったら役員にも業績に応じて利益の何割かをボーナスとして支給したいと思ってるんですけど、それって節税になりますよね?
実は、その考え方には落とし穴があるんです。
特に「同族会社」の役員に対する利益連動型の報酬には、税務上の厳しいルールがあります。
次の3つのいずれかに該当する場合のみ役員への給与は、損金算入が認められます。
損金とすることができる役員報酬
区 分 | 内 容 |
定期同額給与 | 毎月同じ金額を支給する報酬 |
事前確定届出給与 | 支給日・金額を事前に税務署に届出したうえで支払う賞与 |
利益連動給与 | 一定の要件のもとで業績に連動して支給するもの |
あれ……?利益連動給与も認められてるじゃないですか?
うちも利益に応じて出すようにできないんですか?
はい、たしかに法人税法では利益連動給与も損金算入が可能とされています。
ですが、それは上場企業などの特定の大企業に限られた特例です。
残念ながら、中小企業や同族会社では、使えない制度と考えておいた方がいいでしょう。
法人税法上、利益連動給与は一定の条件を満たす法人に限って損金算入が認められています。
ということは、同族会社は、利益連動給与で支給した役員報酬は損金にすることができないということですか?
そのとおりです。
利益連動給与が認められる法人は以下の通りです。
利益連動給与が認められる法人
内国法人であること(=日本国内に本店・主たる事務所を有する法人)
かつ、同族会社に該当しないこと
もしくは、同族会社であっても、非同族会社によって完全に支配されている法人であること
このように、利益連動給与は、そもそも制度上、同族会社には原則として適用できない設計になっています。
3-4 使用人兼務役員の給与が原則として認められない
使用人兼務役員??これはどういうものなのでしょうか?
使用人兼務役員とは、取締役などの役員でありながら、部長や工場長など従業員の仕事も兼ねている人のことを指します。
たとえば、「取締役だけど、営業部長の業務も担当している」というようなケースが典型です。
使用人兼務役員とは、会社の役員でありながら、使用人(従業員)としての職務も兼ねている人のことをいいます。
具体的には、取締役・監査役・理事などの役員として登記されている人物が、日常的に部門長や現場責任者として業務を担当しているようなケースです。
ふむふむ、、これが使用人兼務役員ということですね。
でも、この使用人兼務役員になれると何かいいことがあるんですか?
通常、役員報酬は、毎月同額を支給する「定期同額給与」などの厳しい条件を満たさない限り、損金算入できません(=会社の経費として認められません)。
しかし、使用人兼務役員の「使用人としての業務部分の給与」は、損金として扱うことができます。
それはいいですね。
では、社長が営業部長を兼任していたら、その使用人分の給与は役員報酬じゃないことにできるってことでしょうか?
使用人兼務役員とは、役員でありながら現場の従業員的な業務も担っている人を指しますが、そもそも制度上「使用人兼務役員になれない役員」というものも存在します。
以下の役職に該当する者は、原則として使用人兼務役員にはなれません。
使用人兼務役員になれない役員の一覧
- 代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人
- 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
- 合名会社、合資会社及び合同会社の業務を執行する社員
- 指名委員会等設置会社の取締役、監査等委員である取締役、会計参与、監査役及び監事
- 同族会社の「みなし役員」の規定により、一定の株式所有割合の判定要件を満たす者
ふむふむ、、社長や副社長、専務、常務も使用人兼務役員にはなれないんですね。
じゃあ、自分の家族を使用人兼務役員にして、その使用人分の給料を支給するってことはできるんでしょうか?
社長の家族が役員でその者を使用人兼務役員にすることはできます。
ただ、それは、同族会社ではない会社の場合の話です。
「同族会社」の場合はほとんどできません。
え!?そうなんですか?
それは何故でしょう?
その理由としては、「使用人兼務役員になれない役員」の中に、次のような者が含まれるからです。
「みなし役員」の規定により、一定の株式所有割合の判定要件を満たす者
この「みなし役員」の規定により、一定の株式所有割合の判定要件を満たす者というのは具体的には以下のような者のことを言います。
「みなし役員」の規定により、一定の株式所有割合の判定要件を満たす者とは(すべて満たす場合)
株主グループに関する判定:
以下いずれかの「同族グループ」に属している[1] 第1位グループだけで50%超
[2] 第1位+第2位グループで50%超
[3] 第1位〜第3位グループ合計で50%超属する株主グループの持株割合が10%超
本人・配偶者・関連会社の合計持株割合が5%超
この所有割合の条件に当てはめると、株式保有割合の上位3グループに属する株主の関係者の多くが「みなし役員」として判定されることになります。
つまり、同族会社に該当する場合、使用人兼務役員として認められる役員は極めて限られており、実務上、使用人兼務役員がほとんど存在しないということになります。
使用人兼務役員とは何か、から実務で知っておかなければいけない点までを詳しくわかりやすく解説した記事がありますので、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
3-5 特定同族会社に該当する場合、留保金課税の対象になる
「特定同族会社」とは何でしょうか?
普通の同族会社と何が違うんですか?
「特定同族会社」とは、株式をほとんど社長とその同族関係者で保有していて、特定の個人が会社をほぼ完全に支配しているような状態の会社のことです。
もう少し具体的に言うと、ある株主とその同族関係者で90%以上の株式を持ち、そのうち1人が50%超を持っているような会社を指します。
「特定同族会社」とは、次の2つの条件を満たす会社のことです。
- 同族関係者で株式の90%以上を保有している
- その中の1人が50%超を保有している
つまり、オーナー一族だけで会社をほぼ完全に支配している会社が該当します。
私は一人社長なのでうちの会社も「特定同族会社」ってことですね。
でも「特定同族会社」になったら何か問題があるんでしょうか?
その場合、「特定同族会社」に該当するでしょう。
この「特定同族会社」に該当すると、「留保金課税」という制度の対象になる場合があります。
会社が利益を出しても配当や報酬などで社外に資金を流さず、利益を社内に溜め込みすぎると、個人課税を逃れているのではと判断されることがあります。
そこで、そのような場合に、一定以上の留保金に対して追加の法人税が課税される制度が「留保金課税」です。
えっ……うちは将来のために内部留保してるんですけど、その留保金にも課税されるということですか!?
安心してください。
この「留保金課税」は、資本金1億円超の大企業の特定同族会社が対象なので、中小企業は制度の対象外です。
この点は、制度を誤解しやすいので特に注意が必要です。
ああ、よかった……中小企業は除外されてるんですね。
じゃあ、しばらくは課税されることはなさそうです。
そうです。ただし、将来的に事業拡大して資本金が1億円を超えた場合は課税されることになりますので、将来、増資をする場合は頭の片隅に入れておくといいですね。
4 法人税申告書 別表2「同族会社等の判定に関する明細書」について
この章では、法人税の申告書のひとつである「別表2(同族会社等の判定に関する明細書)」について解説していきます。
別表2とは、会社が同族会社に該当するかどうかを税務署に報告するための重要な書類です。
4-1 「別表2」とは
同族会社が気になったそもそものきっかけが、法人税の申告書の「別表2(同族会社等の判定に関する明細書)」で同族会社の判定という用語を目にしたところからなのですが、この書類は作らないといけないですよね。
はい、そのとおりです。
「別表2(同族会社等の判定に関する明細書)」は、これまで解説してきた自分の会社が同族会社かどうかを税務署に申告するための書類です。
ふむふむ、、提出が義務付けられているってことは必ず作成が必要ってことですね。
この別表2の作成は自分でもできますでしょうか?
もちろん作成することできます。
中小企業の申告内容であれば、税務初心者の方でも十分に作成可能です。
特に株主の人数が限られている会社や家族経営の会社であれば、構成もシンプルなので、落ち着いて整理すれば問題ありません。
れでも不安な場合は、「別表2の書き方」を丁寧に解説した記事がありますので、そちらを参考にして確認すると安心です。
図解や記入例もありますから、初めてでもスムーズに進められるはずですよ。
読むの面倒だな…
ダメ元で聞いてみよう…
あの…この別表2を超簡単に作成できる方法があったりしませんか?
はい、普通にありますよ!
なんですってー!?
4-2 最短5分で同族会社の判定ができるたった1つの方法
別表2を作成するには、まず株主をグループ化し、次に株主グループごとの持株割合に応じた順位付けを行い、最終的に同族会社に該当するかどうかの判定を行うというステップが必要です。
この一連の作業は慣れていないと少し煩雑に感じるかもしれませんが、実は、株主のグループ化・順位付け・判定・別表2への転記までをすべて自動で行ってくれる税務ソフトが、たったひとつだけ存在します。しかも無料で。
そのソフトでは、案内に沿って必要事項をフォームに入力するだけで、最後には自動的に別表2が完成する仕組みになっています。
さらに、2年目以降は株主の異動がなければ、決算期を繰り越した時点で既に別表2は完成済みという状態になります。
そのため、実質的には印刷するだけ、所要時間ほぼ0秒で別表2を出力可能という、非常に効率的な運用が可能です。
それが、
ちなみにこの記事で別表2の記載例を多数掲載しましたが、それもすべて全力法人税でちゃちゃっと作成したものです。
全力法人税は、法人税の知識がなくてもかんたんに法人税の申告書が作成できるをコンセプトとしたソフトです。かなりの高機能にもかかわらず無料で利用できます。これほど高機能で無料で利用できるものを他に知りません。これまでアカウントの登録数は30,000を超えています。
元国税調査官・税理士が監修しており、お客様レビューでの高評価数件1,000件越えで信用できます。
【手書きと全力法人税利用の比較】
手書き | 全力法人税を利用 | |
---|---|---|
別表2の書き方の知識 | 必要 | 不要 |
グループ化と順位付け | 必要 | 不要 |
見た目 | 字による | 整然としている |
初めて別表2を作成する時間 | 最低30分 | 最低10分(基本情報等の入力時間含む) |
2年目以降の別表2作成時間※ | 最低10分 | 10秒(印刷時間のみ) |
価格 | 0円 | 0円 |
※前年度と株主(または社員)の変更がない時
以下同族会社の判定方法の知識なく全力法人税で別表2(同族会社等の判定に関する明細書)を作成する方法をご紹介します。
まずは次のページにアクセスしていただき、新規アカウント登録をする必要があります。
アカウント登録は、全部の書類を印刷したい場合にのみ有料会員となる必要があるだけで、それ以外の機能をすべて無料で利用することができますのでご安心ください。
4-2-1 全力法人税にログインする
4-2-2 トップ画面で「申告書を作成する」を選択
4-2-3 基本情報を入力後「保存」して「次へ」を選択
同族会社の判定だけなら別表2に表示される「法人名」欄だけ正確に入力しておけば、残りの必須部分は適当な文字を入力しておけばOKです。
4-2-4 「株主(社員)名簿」画面で「新規登録」ボタンを選択
ここからが同族会社の判定の画面になります。
4-2-5 株主新規登録
「新規登録」ボタンを押して遷移する画面のフォームに値を入力していきます。
必須部分はすべて入力してください。
各フォームにフォーカスすると吹き出しが出てくるのでその部分は良く読んで入力します。
入力が終わったら「登録」ボタンを押します。
入力する上での注意点
❶ 他の株主との関係
「他の株主との関係」欄は入力中の株主以外の株主の中で、選択肢に該当する関係を持つ者がいるかを判定します。
①を良く読みましょう。②〜⑦に該当するような株主がいない、またはいても入力中の株主の方がその株主よりも保有する株式数が多ければ①を選択することになります。
❷ 特殊関係のある株主
直前の「他の株主との関係」欄で答えた特殊関係のある株主が誰かを選択します。株式数が多い順から入力していればこの選択肢に該当の株主が出てくるはずです。もし出てこないようなら、その株主を先に入力しましょう。
❸ 続柄
続柄は表示されているとおり、今回の例で言えば「税金一郎」からみた「税金花子」の続柄なので「妻」というようになります。税金一郎の続柄を答えるのではないことに注意してください。表示どおりの続柄を入力しましょう。
以上の要領ですべての株主の登録が済んだら「株主(社員)名簿」画面に戻って「次へ」ボタンを押します。
4-2-6 申告情報を入力後「保存」して「次へ」を選択
同族会社の判定をするだけなら会計期間のみ別表2に表示されるので、「会計期間」以外の必須部分は適当な文字を入力しておけばOKです。
入力が済んで保存ボタンを押したら「戻る」ボタンを押して「株主(社員)名簿」画面に戻ります。
4-2-7 別表2の出力
「同族会社の判定明細書出力」を押してください。PDF形式で別表2が出力されます。
次のように印刷されます。
別表2「同族会社等の判定に関する明細書」記載例
以上で別表2が完成しました。
画面の案内にしたがって入力を進めるだけで同族会社の判定が簡単にできます。
このように同族会社の判定を自動で行うソフトは全力法人税以外にありません。
5 まとめ
「同族会社」は、該当するかどうかで法人税の扱いが変わる重要な概念です。
特に家族経営や中小企業では、意識していないうちに「同族会社」に該当していることも多く、知らずにいると税務上の不利益を被る可能性もあります。
本記事では、同族会社の判定方法からその影響、そして法人税申告書における具体的な記載方法までを、新米社長と元国税調査官の対話形式でわかりやすく解説しました。
以下、この記事のポイントを整理しておきましょう!
同族会社とは?
同族会社とは、会社を少数の株主が実質的に掌握している会社のこと。
税法では、「会社の株主の3人以下、並びにこれらと特殊な関係にある個人や法人が議決権の50%超を保有している会社」と表現さるなぜ「同族会社」という制度があるの?
「同族会社」というのは、不当な節税や利益操作を防ぎ、税負担の公平性を保つための制度です。株式会社、有限会社の同族会社の判定方法は?
【STEP1】株主が3人以下なら同族会社確定
【STEP2】株主が4人以上なら株主のグループ化・順位付けを行い、上位3グループの保有株式割合や議決権割合などから50%超を超えるかで判定します。
(フローチャートあり)持分会社の同族会社の判定方法は別方法で行う
【STEP1】社員が3人以下なら同族会社確定
【STEP2】社員が4人以上なら出資額や社員数でグループ化・順位付け・割合判定を行う。
(フローチャートあり)同族会社になった場合の影響とは?
行為計算否認の対象となる
みなし役員として扱われやすい
利益連動給与が損金不算入となる
使用人兼務役員の給与が認められにくい
特定同族会社は留保金課税の対象になる
「別表2」は同族会社の判定を記載するための申告書の一部
株主構成・議決権割合等を記入し、同族会社に該当するかを明示する書類で、申告書の必須添付書類の1つである。
「全力法人税」という無料の税務ソフトを使うとあっという間にできる。
以上が、当記事のまとめです。
同族会社は、経営の意思決定に直結する株主構成が税制上の取り扱いに大きな影響を与えるという点で、非常に重要な制度です。
「うちは小さな会社だから関係ない」と思っていても、制度を知らずに放置すると思わぬ税務リスクや損金の否認などに繋がることもあります。
正しい理解と的確な申告対応で、余計な税負担を回避し、健全な経営を続けていきましょう。
なお、全力経理部では、同族会社をはじめとした中小企業向けの税務実務や法人税申告に役立つ記事を多数公開しています。
ご自身で経理や申告を進めていきたい方は、ぜひ他の記事もご覧いただければ幸いです。
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