初めての法人税の申告が近づいてきた。
コストをかけずに法人税の確定申告書を自分で書きたい。
でも法人税の確定申告書は税理士でないとできないと巷だは言われているようだ。
私にできるか不安だ。
そう思いながらこのサイトにたどり着けたあなた。
そんなあなたは、幸運です。
巷の噂に惑わされず、自力での法人税の確定申告書の作成を諦めることなく、自社の法人税の確定申告書が書けるようになるという意味で幸運です。
この記事は、この記事のとおりに書いていくと本当に法人税の確定申告書を書き上げることのできる日本で初めてのブログです。
(法人税の確定申告書の書き方を知らない弊社の社員にこの記事を見ながら実際に書いてもらったところ、「すごい!これを読めば本当に書ける」と言って実際に書き上げていました。)
今現在ある法人税の確定申告書の書き方を解説しているブログの中で本当に申告書を書けるようになる内容のものは皆無でした。このブログが登場するまでは。
この記事に早く辿り着ければ着けただけ無駄な時間を費やさなくて済んだという意味でより幸運です。
(この記事では以下「確定申告書」のことを「申告書」と省略して表記します。)
法人税の申告書は税理士でないとできないと聞きました。
それはうそです。
現に自力で作成している人は大勢います。
初心者の私でも法人税の申告書が書けますか?
中小企業の申告であれば十分可能です。
※1 この記事で中小企業という場合は、資本金(出資金)1億円以下の普通法人(資本金または出資金の額が5億円以上の法人等の100%子法人と適用除外事業者※2に該当する法人を除く)を指します。以下同じ
※2 適用除外事業者とは、過去3年間の平均の所得金額が15億円超の法人をいいます。適用除外事業者については、「法人税法上の適用除外事業者の判定の仕方」で詳しく解説しています。
なぜ中小企業に的を絞るかというと、そうすることによって解説がシンプルになるからです。
これが初心者でも法人税の申告書が書けるキーポイントです。
それではなぜこれまで難しいものと考えられていたか。
大多数を占める中小企業には、これだけの説明で十分のに、すべての法人をカバーするように解説しようとしていたため解説する量が膨大になり、分厚い解説書が出来上がるか、解説を諦めていたのです。
だからこの記事では中小企業に的を絞ることによって、中小企業に無関係なものを削ぎ落とし、シンプルな解説になっています。
処理の仕方が複数あったとしても一択で示しています。これもよりシンプルに理解しやすいようにするためです。
これらの工夫により初心者の方でも十分理解できる内容になっています。
私は国税調査官として税務署で多くの法人の申告書を見てきましたが、様々な法人から提出される申告書にどういう印象を持っていると思いますか?
どの法人の申告もだいたい一緒だな
税務署に提出される中小企業の申告書の内容はだいたい一緒です。
租税特別措置法の税額控除を適用している法人はまれですし、賞与引当金、退職給付引当金もほぼ見ないですし、貸倒引当金すらまれです。
法人税の別表は300種類を超えてきますが、このような経験から判断して中小企業で押さえておくべき申告書(別表)は14種類ほどだと言えます。
この中で使ったり使わなかったりと会社によって使う別表が違うだけというイメージです。
少ないケースだと5枚で終わる場合もあります。
たった5枚なら書けるような気がしていきませんか?
指南書がなければ初心者の方には必要な別表がどれなのかを判断することすら難しいでしょう。
でもご安心ください。この記事では初心者向けに0から法人税の申告書(別表)の書き方を解説していきます。
法人税の申告書の書き方を知っている私からすれば決まりきった申告書を書くのは難しくありません。
ただこれまでは、決まりきった中小企業の申告書の書き方をシンプルに解説してくれるものがなかっただけです。
それを解説するのが日本で初めてやっと登場したこの記事です。
それでは元国税調査官である税理士の私が、法人税初心者に向けて法人税の申告書の書き方をわかりやすく解説していきます。
ここで1点だけ確認したい点があります。もしあなたの目的が自力で法人税の申告書を書くための書き方を知りたいのではなく、どういう方法でも自社の法人税の申告書が完成したものをより早く手にしたいという場合は、申告書を超効率的に作成する方法を「4 最速3分で法人税申告書(別表)を作成する方法」で解説していますので、そちらに飛んでください。
法人税申告書の書き方を知りたいという方はこのまま読み進めてください。
目次
- 1 法人税の申告書を書く準備をする
- 2 法人税申告書(別表)の書き方
- 2-1【ケース1】法人税申告書(別表)の書き方〜設立初年度の赤字編〜
- 2-2 【ケース2】法人税申告書(別表の書き方)〜設立2年目以降 黒字編〜
- 2-3 【ケース3】法人税申告書(別表)の書き方〜設立2年目以降 還付編〜
- 3 法人税申告書(別表4と別表5(1))を検算する
- 4 法人税・地方法人税の納付書の書き方
- 5 最速3分で法人税申告書(別表)を作成する方法
- 6 法人税申告書(別表)の書き方 まとめ
1 法人税の申告書を書く準備をする
早速法人税の申告書を書き始めたいところですが、その前にまず法人税の申告書を書き上げるまでの全体像を確認しておくことから始めましょう。
実は、法人税の申告書はそれ単体で書き上げることができるものではなく、次のような複数の書類を作成しながら段階を踏んで作成していくものであることを最初に理解しましょう。
法人税確定申告書完成までの全体像
1 仮決算書を作る※1
2 消費税の確定申告書を完成させる※2
3 勘定科目内訳明細書を完成させる
4 法人税の確定申告書のドラフトを作成する
5 地方税の確定申告書を完成させる
6 法人税の確定申告書を完成させる
7 決算書を完成させる
8 法人事業概況説明書を完成させる
※1法人税の申告書を作らなければわからない未払法人税等だけ決算に反映されていない状態の決算書を完成させておきます。
※2消費税の納税義務がある場合のみ作成が必要。消費税の申告書が完成したら未払消費税等の必要な仕訳を決算書に反映させておきます。
決算書と法人税の申告書が2回登場していることに気づいたと思います。
決算書がこの表の1と7で2度登場するのは、法人税の申告書が出来上がったところで初めて納税すべき当期分の法人税等の額がわかります。それを最後に未払法人税等として決算書に反映する必要があるため、法人税の申告書ができた後に完成することになります。
法人税の申告書が4と6で2度登場するのは、地方税の申告書が完成して初めてわかる地方税の金額が法人税の申告書作成には必要になるためです。地方税の申告書が完成して当期分の地方税の金額がわかったところで、それを法人税の申告書に反映させます。
法人の確定申告を完成させるまでの全体像を示しましたが、この記事は法人税の申告書の書き方に関する記事なので、法人税の申告書の書き方に焦点を当てて解説していくことになります。
他の書類(決算書、勘定科目内訳明細書、地方税の申告書、法人事業概況説明書)については、この記事では軽く触れるだけになります。
これから法人税の申告書を作成していくのですが、その前に手元に準備しておく必要のある書類が3つありますので、まずはそれを確認するところから始めていきましょう。
1-1 事前に必要な書類を用意する
法人税の申告書を作成するために事前に用意しておく必要のある書類は次の3つです。
法人税の申告書作成前に用意する書類
- 決算書(財務諸表)
- 勘定科目内訳明細書
- 前年度の法人税の申告書(別表)(前年度に提出している場合のみ)
一つ一つ見ていくきましょう。
1-1-1 決算書(財務諸表)
決算書がないと、法人税の申告書を作成することはできません。
法人税の申告書作成前に決算書は完成している必要があります。完成しておく必要のある決算書(財務諸表)は、次のとおりです。
事前に完成している必要のある決算書
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 販売費及び一般管理費
(製造業関係の場合は、製造原価報告書が、建設業関係の場合は、完成工事原価報告書が必要)
これらの決算書ができていないと法人税の申告書を作成することができませんので、まだこれらの書類が完成していない場合は、まずはこれらの書類を完成させることが先決です。
株主資本等変動計算書と個別注記表は?と思われた方がいるかもしれませんが、これらは法人税の申告書が完成し、当期の未払法人税等が確定し、決算が確定した後に作成します。
なお、ここでいう決算書に関しては以下の2点に注意してください。
- 消費税の納税義務がある法人の場合は、消費税の申告書の作成が終わって、未払消費税等の仕訳等が決算に反映されている状態のもの
- 法人税の申告書を完成することでわかる当期の未払法人税等の仕訳以外すべての取引が決算に反映されている状態のもの
(当期の未払法人税等の金額は、これから作成する法人税の申告書ができないとわかりませんので、それ以外の会計処理はすべて終わっている決算書を用意してください。)
1-1-2 勘定科目内訳明細書
次に事前に必要な書類2点目は勘定科目内訳明細書です。
勘定科目内訳明細書とは、法人税の申告書が税務署から郵送されている場合は、同封されているもので、法人税の確定申告の際に添付が義務付けられている書類の一つです。
例えば、決算の段階で売掛金に残高1,000,000あった場合、その売掛金の内訳を取引先ごとに取引先の情報と共に記載する書類が勘定科目内訳明細書というイメージです。
決算期末に売掛金が1,000,000あり、それが2社の売掛金を合わせたものだった場合の勘定科目内訳明細書の記載例
これを売掛金だけでなく買掛金、貸付金、借入金の残高についても記載したり、人件費の内訳や地代家賃の内訳等を記載したり、決算書の勘定科目だけでは表現されない、その勘定科目の明細を記載するものと考えてください。
勘定科目内訳明細書をまだ作成していない場合は、法人税の申告書を作成する前に用意してください。
書き方がわからないという方は次の記事でわかりやすく解説していますので、こちらを参照して作成してください。
1-1-3 前年度の法人税の申告書(別表)
法人税の申告書(別表)を作成するにあたって、前年度末の値が必要なケースがありますので、前年度の法人税の申告書(別表)を手元に用意しておく必要があります。
なお、申告する年度が設立初年度で前年度がない場合はもちろん不要です。
次の書類は、前年度に提出している場合は、必ず必要になります。
法人税申告書作成に必ず必要な前年度の別表
- 別表5(1)
- 別表5(2)
- 別表7(1)
別表5(1)と別表5(2)は設立2年目以降は必ずあります。
別表7(1)は前年度に別表7(1)を作成していなければ必要ありません。
法人税の申告書の作成に必要な3つの書類が用意できていることが確認できたら次のSTEPに移っていきましょう。
1-2 法人税確定申告書の作成手順を確認する
法人税の確定申告を最も効率的に作成するために、次のSTEPを踏んでいきます。
法人税申告書を効率的に作成するためのSTEP
STEP1 自社に必要な別表を選別する
STEP2 選別した別表を決まった順序で作成する
それぞれのSTEPについて詳しく見ていきましょう。
1-2-1 必要な別表を選別する
法人税の申告書を作成する上でまず第一にやるべきことは、どの申告書(別表)が自社に必要かを選別することです。
法人税の申告書は「別表」というものの集合体です。その数は300を超えます。
でも実はどの法人にも絶対に必要な必須の別表は次の5つしかありません。
法人税の申告に必須の別表
- 別表1 (各事業年度の所得に係る申告書)
- 別表1次葉 (各事業年度の所得に係る申告書 次葉)
- 別表4 (所得の金額の計算に関する明細書)
- 別表5⑴ (利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書)
- 別表5⑵ (租税公課の納付状況等に関する明細書)
別表が一番少ないケースだとこの5枚だけで法人税の確定申告が完結する場合もあります。
法人税の申告書の核となる部分はこのようにシンプルな作りになっていますので、初心者でも十分作成は可能です。
続いて多くの中小企業で使う可能性が高い別表を抽出し、それらの別表がそれぞれどのようなケースで必要になるかを一覧にしてみました。
それぞれの別表が必要なケースが、表の右側の「作成が必要なケース」に書かれています。これを見て各別表が自社に必要かどうか一つ一つ判断していってください。
中小企業が使用する代表的な「別表の選別表」
別表 | 作成が必要なケース |
---|---|
別表2 | 株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、合同会社が必要 |
別表6⑴ | 源泉所得税の天引きがあり、かつ所得税額控除をするときだけ必要 |
別表7⑴ | 青色申告で赤字がある。過去に青色申告で赤字があった場合に必要 |
別表8⑴ | 配当金の受け取りがあり、益金不算入にするときだけ必要 |
別表11⑴ | 貸倒引当金があり、かつ不良債権があるときだけ必要 |
別表11(1-2) | 貸倒引当金があり、かつ別表11⑴に当てはまらないときだけ必要 |
別表14⑵ | 寄附金があった場合に必要 |
別表15 | 交際費があった場合に必要 |
別表16⑴ | 有形固定資産があり、定額法を適用している場合に必要 |
別表16⑵ | 有形固定資産があり、定率法を適用している場合に必要 |
別表16⑹ | 繰延資産がある場合に必要 |
別表16⑺ | 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例を適用している場合に必要 |
別表16⑻ | 有形固定資産があり、一括償却を適用している場合に必要 |
適用額明細書 | 黒字または別表16⑺を作成した場合に必要 |
これらの別表以外にも中小企業でも場合によっては必要になる別表がありますが、私見ですが9割以上の中小企業はこの別表だけでカバーされるはずです。
中でも頻出の別表にアンダーラインを引きました。
これ以外に必要になるケースは、税額控除を適用する場合や、セーフティ共済の掛金を損金算入するケースが考えられます。
では、例を使って「別表の選別表」をもとに実際に必要となる別表を選別してみましょう。
法人名 | 株式会社清洲興産 |
---|---|
青色白色 | 青色申告 |
第何期か | 第1期(設立初年度) |
資産の保有状況 | 固定資産はなく、繰延資産の創立費のみある |
利益の状況 | 赤字 |
その他の特徴 |
|
上の法人の特徴をもとに前述の「別表の選別表」に当てはめて選別していきます。
別表名 | 作成が必要なケース | 選別(:必要/:不要) |
---|---|---|
別表2 | 株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、合同会社が必要 | 株式会社なので |
別表6⑴ | 所得税額控除をするときだけ必要 | 所得税額控除しないので |
別表7⑴ | 青色申告で赤字がある。過去に青色申告で赤字があった。この2つの場合に必要 | 青色申告で赤字なので |
別表8⑴ | 配当金の受け取りがあり、益金不算入にするときだけ必要 | 配当金の受け取りはないので |
別表11⑴ | 貸倒引当金があり、かつ不良債権があるときだけ必要 | 貸倒引当金の設定ないので |
別表11(1-2) | 貸倒引当金があり、かつ別表11⑴に当てはまらないときだけ必要 | 同上 |
別表14⑵ | 寄附金があった場合に必要 | 寄附金の支出はないので |
別表15 | 交際費があった場合に必要 | 交際費の支出あるので |
別表16⑴ | 有形固定資産があり、定額法を適用している場合に必要 | 有形固定資産ないので |
別表16⑵ | 有形固定資産があり、定率法を適用している場合に必要 | 同上 |
別表16⑹ | 繰延資産がある場合に必要 | 繰延資産はあるので |
別表16⑺ | 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例を適用している場合に必要 | 少額減価償却資産はないので |
別表16⑻ | 有形固定資産があり、一括償却を適用している場合に必要 | 有形固定資産ないので |
適用額明細書 | 黒字または別表16⑺を作成した場合に必要 | 赤字で別表16⑺を作成していないので |
「別表の選別表」から選別した結果次の別表が必要なことがわかりました。
それに必須の別表を加えると、この例の法人では次の別表を作成する必要があることがわかります。
全部で9枚です。これは実際の法人でも大いにありうるケースです。300以上ある別表がたった9枚に絞ることができました。
それでは、自社に必要な別表がわかりましたので、続いて法人税の申告書を効率的に作成するSTEP2の「選別した別表を決まった順序で作成する」をやっていきます。
どのように作成する順番を決めるかを見ていきましょう。
1-2-2 作成する別表の順番を決める
1-2-1で選別した別表をどのような順番で作成していくのかをここで見ておくと、法人税申告書作成の全体像を把握でき、道標になると思いますので、申告書の作成に移る前にここで申告書を作成する順番を確認しましょう。
法人税の別表は次の順番で作成していきます。
上から順に見ていき、自社で作成が必要でない別表の場合は、それは飛ばして次に移ってください。
別表の作成の順番一覧
順番 | 別表 | 別表名称 |
---|---|---|
1 | 別表2 | 同族会社等の判定に関する明細書 |
2 | 別表11⑴ | 個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書 |
3 | 別表11(1-2) | 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書 |
4 | 別表15 | 交際費等の損金算入に関する明細書 |
5 | 別表16⑴ | 旧定額法又は定額法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書 |
6 | 別表16⑵ | 旧定率法又は定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書 |
7 | 別表16⑹ | 繰延資産の償却額の計算に関する明細書 |
8 | 別表16⑺ | 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書 |
9 | 別表16⑻ | 一括償却資産の損金算入に関する明細書 |
10 | 別表6⑴ | 所得税額の控除に関する明細書 |
11 | 別表8⑴ | 受取配当等の益金不算入に関する明細書 |
12 | 別表5⑵① | 租税公課の納付状況等に関する明細書 |
13 | 別表5⑴① | 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書 |
14 | 別表4① | 所得の金額の計算に関する明細書 |
15 | 別表14⑵ | 寄附金の損金算入に関する明細書 |
16 | 別表7⑴※1 | 欠損金又は災害損失金の損金算入に関する明細書 |
17 | 別表4② | 前述のとおり |
18 | 別表7⑴※2 | 前述のとおり |
19 | 別表1次葉 | 各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分(次葉) |
20 | 別表1 | 各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分 |
21 | 別表5⑵② | 前述のとおり |
22 | 別表5⑴② | 前述のとおり |
23 | 別表4③ | 前述のとおり |
24 | 適用額明細書 | 適用額明細書 |
- ※1 青色繰越欠損金がある場合
- ※2 赤字の場合
青色繰越欠損金については、よくわからない方は次の記事で詳しく解説しています。
先ほどの例では作成が必要な別表は次のように選別していました。
作成する順番を「別表の作成の順番一覧」で確認しながら並べ替えると次のような順番で作成していくことになります。
法人税の申告書を最短ルートで作成する具体的な手順をまとめると次のように要約できます。
法人税申告書を最短で作成する手順
- 法人税の申告書を実際に作成するときは、1-2-1の「中小企業が使用する代表的な別表の選別表」を見ながら自社に必要な申告書類を選別する。
- それを1-2-2の「別表の作成の順番一覧」を見ながら1つ1つ順番にしたがって作成する。
2 法人税申告書(別表)の書き方
それではいよいよここからは法人税の申告書(別表)の具体的な書き方を解説していきます。
この記事では、法人税の申告書(別表)の書き方を次の3つのケース別に解説していきます。
ケース別に解説する理由は、法人税の申告書(別表)は赤字や黒字等の要因によって使う・使わない欄が出てくるため、それをまとめて説明するとわかりにくくなるからです。
この3つのケースでおおむねすべての法人税の申告書の書き方を網羅しています。
自社がどのような状況にあるかによって見る解説を選択してもらえればと思います。
急いでいる方は、自分にあった申告書の書き方の解説を読むもよし。法人税の申告書の書き方全般を学びたい場合は最初からすべてのケースの解説を読むもよしです。
ここでどのケースの解説を見れば良いかを判断する材料として会社の状況別に一覧でお示ししたいと思います。
申告対象の会社の状況 | 参照する解説 |
---|---|
設立初年度赤字 | ケース1 |
設立初年度黒字 | ケース2 |
設立2年目以降赤字(還付なし) | ケース3 |
設立2年目以降赤字(還付あり) | ケース3 |
設立2年目以降黒字(中間申告なし) | ケース2 |
設立2年目以降黒字(中間申告あり) |
さらに細かいケースごとの申告内容の特徴を示しておきますので、法人税の申告に関する知識を持っている方には、どのケースの解説が自社に該当するかを判断する参考にしてもらえればと思います。
申告の特徴 | ケース1 | ケース2 | ケース3 |
---|---|---|---|
所得の状況 | 所得なし(欠損) | 所得あり | 所得なし(欠損) |
法人税額 | なし | あり | なし |
税金の還付 | なし | なし | あり |
中間申告 | なし | なし | あり |
繰越欠損金の控除 | なし | あり | なし |
青色欠損金の繰越し | あり | なし | あり |
それではここからは【ケース1】設立初年度の赤字の申告書を作成する方法から解説していきます。
2-1【ケース1】法人税申告書(別表)の書き方〜設立初年度の赤字編〜
個人事業主から法人成りした場合でない限り、設立1期目は赤字になるケースが多いでしょう。
多くの法人が通る道といえる設立初年度が赤字であった場合の法人税申告書(別表)の書き方から解説していきたいと思います。
ここでも先ほどの具体例を使って実際に別表を手順にしたがって作成していきます。
法人名 | 株式会社清洲興産 |
---|---|
青色白色 | 青色申告 |
第何期か | 第1期(設立初年度 2021.4.5に設立/令和4年3月決算) |
資産の保有状況 | 固定資産はなく、繰延資産の創立費(300,000円)のみある |
利益の状況 | 1,000,000円の赤字 |
その他の特徴 |
|
株主の状況 | 一人社長 株式数100 資本金1,000,000円 |
この例のケースでは1-2-2で確認したとおり、別表を次の順番で作成することになるのでした。
それでは実際に別表を一つ一つ作成していきます。
まずは別表2からスタートです。
2-1-1 別表2(同族会社等の判定に関する明細書)を書く
この例では、一人社長のマイクロ法人となっています。
イメージしやすいようにこのケースの別表2の完成形の記載例をまずは見てしまいましょう。
2-1-1-1 別表2記載例
出来上がりはこのようになります。
全体像を把握できたところで、どのように書いていけばいいかを見ていきましょう。
2-1-1-2 別表2の具体的な書き方
別表2は、まず下半分に位置する「判定基準となる株主等の株式数等の明細」部分から書き始めます。
手順1 「判定基準となる株主等の株式数等の明細」の書き方
❶ 「順位」欄
「株式数等」欄の方に「1」と記載します。
株主が「織田 信雄」一人しかいませんので、1位の意味で「1」と記載します。
隣の「議決権数」欄は「株式数=議決権数」となっている場合は、空欄にします。
1株に対して1個の議決権が原則なので、議決権が行使できないなどの種類株式がない限り「株式数=議決権数」となり、「議決権数」欄は空欄になります。
中小企業の多くは「株式数=議決権数」となっているケースがほとんどなので、「議決権数」欄は空欄になるケースが多いでしょう。
❷ 「判定基準となる株主(社員)及び同族関係者」欄
- 「住所又は所在地」欄に株主の住所を記載します。
- 「氏名又は法人名」欄に株主の氏名を記載します。
❸「判定基準となる株主等の続柄」欄
株主が一人なので、「本人」になります。
❹「株式数又は出資の金額等 19〜22」欄
今回の例は株主が個人なので、「被支配会社でない法人株主等」には入らず、「その他の株主等」の方に記載します。
- 「株式数又は出資の金額」欄は、今回の例は株式会社なので株式数を記載します。合同会社等の持株会社の場合は、出資の金額を記載します。
- 「議決権の数」欄は、「順位」欄同様「株式数=議決権数」となっている場合は、空欄にします。
手順2 「同族会社の判定」の書き方
次に別表2の左上の部分「同族会社の判定」を書いていきます。
❶「期末現在の発行済株式の総数又は出資の総額 1」欄
1欄には、決算期末現在の発行済み株式総数を記載します。
今回の例では織田信雄が100株がすべてなので「100」と記載します。
合同会社等の持株会社の場合は、出資の金額の合計を記載します。
❷「(19)と(21)の上位3順位の株式数又は出資の金額 2」欄
すでに記載した「株式数又は出資の金額等」の(19)欄と(21)欄に記載した数字を全て合計します。
今回の例では(21)欄に100のみなので(2)欄には「100」と記載します。
合同会社等の持株会社の場合は、(19)欄と(21)欄に記載した出資の金額の合計金額を記載します。
❸「株式数等による判定 3」欄
(2欄 ÷ 1欄) × 100という計算をします。
今回の例では ( 100[2欄] ÷ 100[1欄] ) × 100 = 100% となるので「100」と記載します。
❹「同族会社の判定割合 10」欄
3欄、6欄又は9欄のうち最も高い割合を記載します。
今回の例では3欄にしか値がありませんので、3欄の値「100」と記載します。
空欄になっている4〜9欄の補足解説
(4)〜(6)欄は、(20)と(21)の「議決権の数」欄に値がある場合に記載が必要ですが、今回の例では(20)と(21)の「議決権の数」欄に記載がありませんので、こちらの欄も空欄になります。
(7)〜(9)欄は、合同会社等の持株会社の場合は、その社員の数を記載することになります。今回の例では空欄になります。
仮に今回の例が合同会社の場合は、社員が1人なので、(7)と(8)欄には「1」が入り(9)欄は(1/1)×100=100となり、「100」を記載することになります。
手順3 「特定同族会社の判定 11〜17」の書き方
続いて別表2の右上の「特定同族会社の判定」欄です。
この欄は中小企業は、特定同族会社の判定をしなくてよいことになっています。
特定同族会社の判定は、留保金課税をするかどうかの判定に使われますが、中小企業は留保金課税されないこととなっているので、判定自体必要ないのです。
繰り返しになりますが、この記事で「中小企業」という表現を使う場合は、資本金(出資金)1億円以下の普通法人(資本金または出資金の額が5億円以上の法人等の100%子法人と適用除外事業者※2に該当する法人を除く)を指します。以下同じ。
この例では資本金が100万円の株式会社なので、記載不要です。
手順4 「判定結果 18」欄の書き方
最後に「判定結果」欄です。
資本金又は出資の金額が1億円以下の法人は特定同族会社にはならないことになっていますので、中小企業が特定同族会社に○をつけることはありません。
したがって残るは同族会社か非同族会社のいずれになるかの判定になります。
次のように判定します。
同族会社の判定
「同族会社 の判定割合 10」が 50%超 ……同族会社
「同族会社 の判定割合 10」が 50%以下 ……非同族会社
今回の例では、「同族会社 の判定割合 10」欄は100%なので、「同族会社」に◯をつけることになります。
これで別表2は完成です。
このようにマイクロ法人の場合は、別表2を簡単に作成できると思います。
また別表2は翌年度は作成が圧倒的に楽になるという特徴があります。
別表2は一度作成すれば、翌年度以降に株主に変化がなければ毎年同じ内容になりますので、昨年度作成した別表2を写せばいいのです。
今回の例では株主が一人という単純だったので、別表2の作成例としては最も簡単な部類に入ります。
株主が複数いる場合や合同会社等の持株会社のケース等別表2の詳しい書き方については、次の記事で詳しく解説していますので、こちらをご参照ください。
また別表2の記載の手引きを国税庁が公表していますので、本家の書き方を参照したい場合は、次のリンクからどうぞ。
別表二 「同族会社等の判定に関する明細書」
2-1-2 別表15(交際費等の損金算入に関する明細書)を書く
続いては別表15の書き方です。
別表15は税務上の交際費の支出がある場合に作成が必要になる書類です。
今回の例では交際費を200,000円計上しているので、別表15を作成します。
また別表15の記載例を先に紹介します。
2-1-2-1 別表15の記載例
2-1-2-2 別表15の具体的な書き方
手順1 「支出交際費等の額の明細」の書き方
別表15はまず「支出交際費等の額の明細」(「科目」+6〜9)欄から書いていきます。
❶ 「科目」欄
この欄は、税務上の交際費を支出した場合に何の勘定科目で経理したかを記載します。
税務に詳しくない方は、交際費を交際費以外の科目で経理することがあるの??などなど「??」と思うことがあるかもしれません。しかし
法人税法では、中小企業の場合は、税務上の交際費が800万円を超えた場合、超えた金額については損金(法人税法上の経費)にならないという決まりがあります。
損金については、次の記事で詳しく解説しています。法人税の申告書を書く際に「損金」や「損金不算入」という用語が頻出してきますので、一読をお勧めします。
税務上の交際費とは何かが問題になるのは、交際費の支出が800万円に迫るような状況のみです。そのような中小企業は決して多くないでしょう。
交際費の支出が600万円を超えるような法人の場合は、税務上の交際費について詳細を理解する必要がありますが、そうでない法人は社会通念上の交際費と捉えて実務上は問題ありません。(交際費であろうと福利厚生費であろうとどちらも損金になることに変わりないので)
参考までに税務上の交際費について簡単に解説します。
税務上の交際費は法律では次のように規定されています。
交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの
どのような支出が税務上の交際費になるかを詳しく解説しているのが次のリンク先のページです。
❷ 「支出額 6」欄
勘定科目「交際費(接待交際費)」として経理した合計金額を記載します。例では200,000が入ります。
❸「交際費等の額から控除される費用の額 7」欄
交際費で経理したが、その中に税務上の交際費でない内容の支出があった場合にその額を記載しますが、先に解説したように多くの中小企業は交際費と経理した金額と税務上の交際費の金額を区別する意味がありませんのでここは空欄となるケースがほとんどでしょう。
❹「差引交際費等の額 8」欄
[ 6欄 ー7欄 ]の計算結果を記載します。
例では200,000 – 0 = 200,000になります。
❺「⑻のうち接待飲食費の額 9」欄
多くの中小企業の場合は、0と記載してOKです。
交際費に該当する飲食費用だけで1,600万円超の場合は、接待飲食費の額を記載すると税金が特になりますが、そのような中小企業はたいへん稀でしょう。
したがってこの欄は飲食費用の交際費が1,600万円を超えるケースのみ記載する必要があります。
そうでない場合は、集計しても時間の無駄になるだけなので0と記載しましょう。
最後に別表15の一番下の合計欄を記入して「支出交際費等の額の明細」は完了です。
続いて別表15の上段部分の計算です。
手順2 「損金不算入額計算部分」の書き方
❶ 「支出交際費等の額 1」欄
別表15の最下部の「支出交際費等の額の明細」の「差引交際費等の額 8」の「計」欄の値を転記します。
今回の例では「差引交際費等の額 8」の「計」欄には200,000が入っていますので、200,000と記入します。
❷ 「支出接待飲食費損金算入基準額 2」欄
別表15の最下部の「支出交際費等の額の明細」の「⑻のうち接待飲食費の額 9」の「計」欄に50/100を乗じて計算します。
前述のとおりほとんどの中小企業が「⑻のうち接待飲食費の額 9」欄は0なので、今回の例でも0と記入します。
❸ 「中小法人等の定額控除限度額 3」欄
次の2つの値を比較して少ない金額を記入します。
- 1欄の金額
- 800万円 × ※当期の月数/12
※当期の月数…暦に従って計算し、1月未満の端数は切り上げます。
今回の例で3欄に入る値を整理すると次のようになります。
「支出交際費等の額 1」欄 | 200,000 |
---|---|
当期の月数 | 2021.4.5〜2022.3.31→11ヶ月と25日→12ヶ月 |
⑴の金額と800万円×当期の月数/12の比較 | 200,000 < 8,000,000(8,000,000×12/12) |
「中小法人等の定額控除限度額 3」欄 | 200,000 |
❹ 「損金算入限度額 4」欄
2欄と3欄を比較して多い金額を4欄に記入します。
今回の例では、0(2)< 200,000(3)となりますので、200,000を記入します。
❺ 「損金不算入額 5」欄
[ 1欄 ー 4欄 ]で計算した金額を記入します。
今回の例では、200,000(1) ー 200,000(4) = 0となりますので、0と記入します。
中小企業の多くは、この書き方で別表15を完成させられると思いますが、法人税法上の交際費がどんなものかや損金算入制度、交際費の支出が800万円に迫る場合や超える局面ではどのように対応するかなど別表15についてより詳細なことを知りたい場合は、次の記事で詳しく解説しています。
別表15の詳しい記載方法は「令和3年版 法人税申告書・地方法人税申告書の記載の手引 別表15 国税庁」をご覧ください。
続いて3枚目の別表16(6)の書き方を解説します。
2-1-3 別表16(6)(繰延資産の償却額の計算に関する明細書)を書く
設立初年度の場合は、繰延資産である創立費を計上しているケースが多いと考えられるため、ここで別表16(6)の書き方を取り上げます。
冒頭で別表16(6)の記載例を確認しておきましょう。
2-1-3-1 別表16(6)の記載例
2-1-3-2 別表16(6)の具体的な書き方
別表16(6)の下段「Ⅱ 一時償却が認められる繰延資産の償却額の計算に関する明細書」の書き方から解説します。
この欄は次の一時償却が認められる繰延資産がある場合に記載します。
一時償却が認められる5つの繰延資産
- 創立費
- 開業費
- 開発費
- 株式交付費
- 社債等発行費
今回の例では創立費がありますので、「Ⅱ 一時償却が認められる繰延資産の償却額の計算に関する明細書」の方に記載していきます。
具体的な書き方に入る前に、創立費に関しては設立初年度において次のような節税法が使えるケースが多いので冒頭で解説します。今回の例もこの例に準じています。
繰延資産による節税法
設立初年度が赤字の場合は、創立費として資産計上して、黒字になったら費用にするのが法人税では得
創立費とは、法人の設立登記までに法人の設立のために要した費用をいいます。
具体的には定款作成費用や定款認証費用、登記に必要な登録免許税、設立事務に使用する使用人の給与、その他法人設立に要した費用が該当になります。
設立初年度にはこれらの支出が必ず出てきます。これらを全額費用として経理してしまっても税務上は問題ないのですが、赤字の時に費用を多く出してもメリットがありませんので、一旦繰延資産として資産計上します。
資産計上した創立費を費用にする方法は以下のとおり3つあります。
創立費の3つの費用化の方法
- 5年で均等償却
- 一時の費用とする即時償却
- 好きな時に好きな金額を費用とする随時償却
節税の観点からは、黒字になった時に費用にする方法が得になりますので、随時償却を選択します。
つまり当期は赤字なので、費用としません。黒字になった時点で創立費を償却(費用化)し、利益を少なくする方法をとります。このように償却する方法を一般的に随時償却と呼びます。」
法人税法上の繰延資産についての詳細は、法人税の申告書の書き方という趣旨からずれてしまいますので、ここではここまでにしてそれ以外の事項については割愛します。
法人税法の実務において、繰延資産周辺で重要な事項は次の記事で詳しく解説していますので、そちらを参照してください。
では、具体的な書き方について今回の例を使って解説を始めていきます。
「Ⅱ 一時償却が認められる繰延資産の償却額の計算に関する明細書」の書き方
❶ 「繰延資産の種類 23」欄
繰延資産の種類を記入します。
今回の例では「創立費」と記入します。
❷ 「支出した金額 24」欄
創立費として計上した合計額を記載します。
今回の例では合計で300,000円なので、「300,000」と記入します。
❸ 「前期までに償却した金額 25」欄
前期(前年度)までに償却(費用化)した金額があれば、その合計額を記載します。
この例では、設立初年度になりますので、前期までに償却した金額はありません。したがって空欄または0を記入します。
❹ 「当期償却額 26」欄
当期(今期・当会計年度)に償却した金額がある場合は、その金額を記載します。
今回の例では、赤字であるため黒字まで繰越す意図がありますので、空欄または0を記入します。
❺ 「期末現在の帳簿価額 27」欄
17欄には、期末現在の帳簿価額を記載します。
この表で計算する場合は、次の計算式で求められます。
期末現在の帳簿価額 = 支出した金額(14)ー 前期までに償却した金額(15)ー 当期償却額(16)
今回の例では 300,000 – 0 – 0 = 300,000となりますので、「300,000」と記入します。
続いて別表16(6)の上段「Ⅰ 均等償却を行う繰延資産の償却額の計算に関する明細書」に移ります。
今回の例では実は、この欄は記載不要です。
この欄は、先に紹介した会計ではお馴染みの5つの繰延資産とは別に法人税法で規定された繰延資産があった場合にのみ記載が必要になります。
この欄に記載が必要となるケースは多くなく、先ほど紹介した記事「実務で税務上重要な繰延資産は創立費、権利金の2つだけ!元国税・税理士が解説」にあるとおり多くの中小企業では権利金くらいですのでそちらの記事を一読していただき、ここでは重要度を考えて割愛します。
これで別表16(6)が完了しました。
別表16(6)の詳しい記載方法は「令和3年版 法人税申告書・地方法人税申告書の記載の手引 別表16(6) 国税庁」をご覧ください。
ここからどの法人でも必ず記載が必要な超重要別表群の別表5(1)、別表5(2)、別表4が登場します。
2-1-4 別表5(2)を書く(その1)
別表5(2)を作成していきます。別表5(2)は必ず必要な別表でした。
設立初年度の別表5(2)のその1では、次の「その他」欄のみ記載します。
この欄は法人税+地方法人税、道府県民税、事業税+特別法人事業税、市町村民税以外の租税公課を処理する欄です。
次の表を参照して、表にある租税公課を支払った場合は、損金算入のものと損金不算入のものに分けてその他欄に記載します。
租税公課分類表
租税公課種類 | 備考 | |
---|---|---|
損金算入のもの | 利子税(国) | 申告納付期限延長した場合の延滞税 |
延滞金(地方) | 申告納付期限延長した場合の延滞金 | |
源泉所得税 | 税額控除を適用しない場合 | |
固定資産税 | ||
不動産取得税 | ||
自動車税 | ||
印紙税 | ||
登録免許税 | ||
消費税 | 税込経理のみ | |
損金不算入のもの | 延滞税・延滞金 | 延滞税は国、延滞金は地方 |
過少申告加算税・過少申告加算金 | 加算税は国、加算金は地方 | |
無申告加算税・無申告加算金 | 加算税は国、加算金は地方 | |
重加算税・重加算金 | 加算税は国、加算金は地方 | |
不納付加算税 | 源泉所得税を期限内に納めなかった場合 | |
過怠税 | 印紙税を適切に納めなかった場合 | |
源泉所得税 | 税額控除を適用する場合 | |
交通反則金 |
具体例を使って実際に書いていきたいと思いますが、始める前に一つ重要な注意点があります。
租税公課の処理方法は、実は3つあります。
- 費用計上処理
- 仮払経理
- 納税充当金(=未払法人税等)処理
いずれの処理の方法でもいいのですが、費用計上する方法が断トツに簡単です。
必ず費用計上しましょう。この記事ではそれ以外の方法の解説は行いません!
要するに、勘定科目で源泉所得税の場合は、「法人税・住民税及び事業税」で経理し、それ以外は「租税公課」で借方で経理すればいいのです。
それでは、預貯金の利息65円を受け取り、そのうち9円税金が天引きされて56円が口座に入金になったケースを例にしてみましょう。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
現金預金 | 56 | 受取利息 | 65 |
法人税・住民税及び事業税 | 9 |
この9円は税額控除する場合、別表6(1)を作成しなければなりませんが、この数円を獲得するための労力とその結果が見合いませんので、税額控除を適用しないこととします。
別表6(1)の書き方を調べて、実際に作成して、1時間を要しました。その結果がこの利息9円分税金が安くなった。時給9円。これは飛ばすべきだと思いませんか?
もちろん源泉所得税の額が多額に及ぶ場合はやるべきですが、そうでないならやらない方が合理的ではないでしょうか。
上の租税公課分類表をみると源泉所得税で税額控除を適用しない場合は、損金算入のものに分類されますので次のように記載します。
源泉所得税等は復興特別所得税も含むので「等」とつけます。
❶「期首現在未納税額①」欄
期首(会計年度開始時点)にはこの9円は発生していませんので、①には何も記載しません。
❷「当期発生税額②」欄
この9円は当期中に発生したものなので、②欄に「9」を記載します。
❸「当期中の納付税額」欄
租税公課を処理する原則でお伝えしたように源泉所得税については、費用計上するよう伝えていますのでそのとおり経理されているという前提で、「損金経理による納付⑤」欄に9を記入します。
損金経理とは、「費用計上している」というほどの意味です。
❹「期末現在の未納税額⑥」欄
同じ行の値を次のように計算します。
[ ①欄 + ②欄 ー ③欄 ー ④欄 ー ⑤欄 = ⑥欄 ]
この式に当てはめると0 + 9 – 0 – 0 – 9 = 0となるので「0」と記入します。
税務調査官視点での注意点
この別表5(2)の「その他」欄で重要なのは、損金不算入のものの記載は忘れてはいけない!という点です。
損金不算入のものは税金の計算に影響があるためです。つまり税金の額が変わりますので、必ず記入が必要です。
損金算入のものが記載もれになっていても実は、税金の計算には影響がありません。
したがって税務調査官は、「その他」欄の「損金算入のもの」の記載には注意を払っていません。
設立初年度の別表5⑵はこれで一旦は終了です。
さらに詳しい別表5(2)の書き方については、こちらの記事をご覧ください。
公式が公表している別表5(2)の詳しい記載方法は「令和3年版 法人税申告書・地方法人税申告書の記載の手引 別表5(2) 国税庁」をご覧ください。
続いては別表5(1)を作成していきます。
2-1-5 別表5(1)を書く(その1)
別表5(1)は必ず必要な別表でした。
まずは別表5(1)の記載例を紹介します。
2-1-5-1 別表5(1)の記載例
2-1-5-2 別表5(1)の具体的な書き方(その1)
設立初年度はこの時点では別表5(1)の下部の「Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書」だけ記載します。
今回の例では資本金が1,000,000という設定なので「資本金又は出資金 32」の行に記載が必要です。
① 「期首現在資本金等の額 ①」欄
設立初年度なので、会計期間の開始日にはなにも会社にはありませんので、「期首現在資本金等の額 ①」欄は記載不要です。
② 「当期の増減」欄
資本金又は出資金が減少したのであれば「減②」欄にその減少した額を記載し、増加した場合は、「増③」欄にその増加した金額を記載します。
今回の例では1,000,000資本金がありますので、「増③」欄に「1,000,000」と記入します。
③「差引翌期首現在資本金等の額」欄
[ ①欄 ー ②欄 + ③欄 ] で計算します。
今回の例では、0 – 0 + 1,000,000 = 1,000,000となるので、「1,000,000」と記入します。
別表5(1)のその1はここまでです。
別表5(1)のより詳しい記載方法を知りたい方は次の記事をご覧ください。
公式が公表している別表5(1)の詳しい記載方法についても紹介しておきます。
令和3年版 法人税申告書・地方法人税申告書の記載の手引 別表5(1) 国税庁
2-1-6 別表4を書く(その1)
別表4は必ず必要な別表でした。所得金額を算出するための計算書的役割を果たす重要な別表です。
所得金額に影響を与えるものはすべてこの別表4に集まってきます。
ここでも冒頭で別表4の記載例をまず確認してしまいましょう。
別表4には、様式が2種類あり、正規の別表4と簡易様式があります。中小企業は迷わず簡易様式を使用します。
2-1-6-1 別表4の記載例
2-1-6-2 別表4の具体的な書き方(その1)
❶ 「当期利益又は当期欠損の額」欄
今回の例では、これから計算する当期分の法人税等以外の処理がすべて終わった状態の決算書では当期純利益が1,000,000の赤字でした。
損益計算書の一番下に表示されている「当期純利益金額」を別表4の「当期利益又は当期欠損の額」に転記します。
赤字1,000,000の場合は、マイナスで転記することに注意です。
❷ 「配当」欄
当期中にその支払の効力が生ずる配当を記入します。
これは株主資本等変動計算書の「剰余金の配当」と一致します。
ここに値が入った場合は、1の②欄は[ 1の①欄 – 1の③配当 ] で計算した値に書き換えます。
設立初年度は2から5は通常何も入ることはありませんので、飛ばします。
❷ 「減価償却の償却超過額 6」欄
減価償却の償却超過額があった場合に①②いずれにも超過額を記入します。
2−1で紹介した「別表の選別表」の別表の中では別表16(1)と別表16(2)で計算された償却超過額の合計を記載します。
基本的には会計ソフトを利用していれば「償却限度額=減価償却費」として計算しますので、耐用年数を間違えたり、償却方法を間違えたりということがない限り償却超過額が出ることはありません。
今回の例では有形固定資産を保有しておらず、別表16(1)と別表16(2)を作成していませんので、空欄になります。
❸ 「役員給与の損金不算入額 7」欄
ここで勘定科目内訳明細書の一つである「役員給与等の内訳書」を確認します。
別表4の7欄は、下図のように勘定科目内訳明細書の「役員給与等の内訳書」の「その他」の列の「計」欄に数字があった場合に、7欄の①と③にその数字を記入します。
基本的にはここも中小企業の場合は、役員報酬は定期同額給与として支給し、賞与は事前確定届出給与としてその範囲内で支給しますので、空欄になります。。
定期同額給与??事前確定届出給与??となってしまった方は次の記事で詳しく記載していますので、こちらをご覧ください。
❹ 「交際費等の損金不算入額 8」欄
8欄は、別表15の「損金不算入額 5」欄に値があれば、①と③欄に転記します。
こちらも多くの中小企業では800万円を超える交際費を支出することは少ないと思いますので、空欄になることが多くなるかと思います。
今回の例も別表15の 5欄は0なので、別表4の8欄は空欄になります。
今回の例では受取配当がない設定であることに加え、減算部分(12〜19欄)のその他の欄は設立初年度では入ることはありませんのでここでは飛ばします。
❹ 「仮計 22」欄の算出
まず、「加算」の「小計 11」を求めます。
①〜③のそれぞれの列について2〜11の直前の行までを合計します。
今回の例では何も値がありませんので、すべて空欄になります。
続いて「減算」の「小計 21」を求めます。
①〜③のそれぞれの列について12〜21の直前の行までを合計します。
今回の例ではこちらも何も値がありませんので、すべて空欄になります。
最後に「仮計」の行の値を求めます。
①〜③のそれぞれの列について[ 1欄 + 11欄 ー 21欄 = 22欄 ]という計算をします。
今回の例では仮計を次のように求めます。
①の列:-1,000,000 + 0 – 0 = -1,000,000
②の列:-1,000,000 + 0 – 0 = -1,000,000
③の列:0 + 0 – 0 = 0
❺ 「仮計 25」欄の算出
23欄は、別表17(2の2)から転記、24欄は、別表17(2の3)から転記してきます。
いずれも2−1で紹介した「別表の選別表」にない別表で通常は作成されない別表なのでここには値が入らず「仮計 22」の値がそのまま入ります。
❻ 「寄附金の損金不算入額 27」欄
別表14(2)の24欄または40欄に値があった場合は、27欄の①と③にその値を転記します。
今回の例では寄附金の支出はなく、別表14(2)を作成していませんのでここは空欄になります。
29欄は、所得税額控除がある場合に記載しますが、今回の例では所得税額控除を適用しないこととしていますので、空欄になります。
30〜31欄を使用する例は中小企業では稀ですので、ここでは説明を割愛します。
❽ 「合計 34」欄
25欄〜31欄をそれぞれの縦の列で合計をします。
今回の例では27欄〜31欄が全て空欄ですので、25の行の値がそのまま34行に下りてきます。
❾ 「所得金額又は欠損金額 48」欄他の算出
「差引計 39」欄は、35〜38が2−1で紹介した「別表の選別表」にないものなので、空欄になります。
その結果「合計 34」の値が「差引計 39」欄にそのまま下りてきます。
「欠損金又は災害損失金等の当期控除額 40」欄も設立初年度では出てきませんので、空欄となります。
その結果「総計 41」の値は「差引計 39」の値がそのまま下りてきます。
42欄と47欄についても2−1で紹介した「別表の選別表」にないものなので、空欄になります。
その結果「所得金額又は欠損金額 48」の値は「総計 41」の値がそのまま下りてきます。
今回の例では、39、41、48行は記載例のとおりすべて①に-1,000,000が、②に-1,000,000が入ります。
これで別表4の作成(その1)は完了です。
別表4の役割や別表4の詳しい書き方(税額控除、留保や社外流出)を知りたい場合は、次の記事で詳しく解説していますので、こちらをご覧ください。
別表4の公式の記載の手引きを確認したい場合は、「令和3年版 法人税申告書・地方法人税申告書の記載の手引 別表4 国税庁」をご覧ください。
続いては、別表7の作成になります。
2-1-7 別表7(1)を書く
別表7(1)は、青色申告で赤字がある場合と、過去に青色申告で赤字があった場合に必要でした。
今回の例では、青色申告で赤字のケースの別表7(1)を書いていきます。
まず、冒頭でこのケースの別表7(1)の完成形を確認しておきましょう。
2-1-7-1 別表7(1)の記載例(初年度赤字)
2-1-7-2 別表7(1)の具体的な書き方
❶「控除前所得金額 1」欄
別表4の「差引計 39」の①の値を転記します。
❷「所得金額控除限度額」欄
中小企業※の場合は、「控除前所得金額 1」× 100/100と計算します。
今回の例では-1,000,000 × 100/100の計算はマイナスになりますので、0または空欄になります。
(参考)多くの中小企業は100/100で計算することになると思いますが、100/100と計算できる税務上の中小法人等の判定は次のように行います。
出典 法人税申告書の記載の手引(令和3年6月 国税庁)のP83
❸ 「事業年度〜翌期繰越額 5」欄
次の赤で囲った部分は、前期以前に控除されていない繰越欠損金がある場合に記載します。
今回の例は、設立初年度であり、設立初年度には前期がありませんし、当然に前期以前の控除されていない繰越欠損金もありませんので、全て空欄になります。
「災害により生じた損失の額の計算」部分
次の赤で囲った部分は、白色申告の法人が災害により生じた損失の額の計算をするのに使用する部分ですが、この計算を行うのは非常に稀なケースのためここでは説明を割愛します。
❹「当期分 欠損金額」欄
別表4の「所得金額又は欠損金額 48」の①の値をマイナスをプラスにして転記します。
今回の例では別表4の「所得金額又は欠損金額 48」の値が-1,000,000なので「欠損金額」欄はプラスにして1,000,000と記入します。
❺「当期分 災害損失金」の行
災害損失金は「災害により生じた損失の額の計算」結果を転記する部分であるため解説は割愛します。
今回の例は青色申告であるため当然に空欄になります。
❺「当期分 青色欠損金」の行
「当期分 欠損金額」の値を「青色欠損金」の行の3欄に転記します。
その値を「青色欠損金」の行の5欄にも転記します。
❻ 「合計」欄
仕上げの「合計」欄は下の図の[ ① + ② = ③ ]で求めます。
今回の例では0 + 1,000,000 = 1,000,000となりますので、「合計」欄には1,000,000と記入します。
これで別表7(1)は完成です。
赤字と黒字では別表7(1)の書き方は変わってきます。今回のケースに限らず別表7(1)の書き方を詳しく知りたい場合は、次の記事をご覧ください。
別表7(1)の詳しい記載方法は「令和3年版 法人税申告書・地方法人税申告書の記載の手引 別表7(1) 国税庁」をご覧ください。
2-1-8 別表1(次葉)を書く
別表1(次葉)は法人税と地方法人税額を計算する別表です。
別表1(次葉)は、税額を計算するものなので、赤字の場合は実は記載するところは「事業年度等」欄と「法人名」欄のみになります。
今回の例も赤字なので、書き方は次のようになります。
別表1(次葉)の記載例
別表1(次葉)は、別表1とセットとなる別表なので、赤字で記載する箇所がなかったとしても提出するようにしましょう。
別表1(次葉)はこれで完成です。続いては、別表1です。
2-1-9 別表1を書く
法人税の申告書の表紙となる別表が別表1です。
法人税額をいくら納付するのか、欠損金をいくら繰越すのかといった法人税の申告をするにあたって最終的な数字を示す役割を持っています。
別表1に書かれた内容に基づいて税金を納めたり、還付されたりが行われます。
冒頭で別表1の記載例をみて全体像を把握しましょう。
2-1-9-1 別表1の記載例
2-1-9-2 別表1の具体的な書き方〜赤字編〜
❶ 青色と白色の区別
別表1には様式が青色申告用と白色申告用の2種類ありますので、自社に対応する別表1を使用します。
今回の例は、青色申告なので、「青色申告」と記載されている別表1を使用します。
(1) 「法人の住所・法人税等+代表者名・住所」欄
「納税地(法人の本店所在地)」、「法人名」「法人番号(13桁)」、「代表者」の氏名(+フリガナ)、「代表者住所」を記載します。
提出年月日と税務署長殿の部分は書いても書かなくてもどちらでも構いません。(紙で提出した場合は、税務署の収受印に両方表示されますし、電子申告の場合も両方の情報が表示されるため。)
(2) 「法人区分」から「添付書類」まで
❶ 法人区分
次の表の⑴〜⑸までの法人に当てはまる場合は、「法人区分」欄の左側に◯を付し、それ以外の法人は右側に◯を付します。
出典 令和3年版 法人税申告書・地方法人税申告書の記載の手引 P11
今回の例では左側に○を付します。
❷ 事業種目
次の「事業種目・業種番号一覧表」から自社の営む業種に近いものを選び記載します。
単体法人における適用額明細書の記載の手引(令和3年4月1日以後終了事業年度分) 事業種目・業種番号一覧表(国税庁)
❸ 期末現在の資本金の額又は出資の金額
文字どおり株式会社や有限会社の場合は、期末現在の資本金の額を、それ以外の出資のある法人の場合は、期末現在の出資の金額を記載します。
❹ 同上が1億円以下の普通法人 のうち中小法人に該当しないもの
当期末における資本金の額・出資金の額が1億円以下(または資本若しくは出資を有しない)普通法人が、次のいずれかの法人に該当する場合には、「非中小法人」を○で囲んで表示します。
- ⑴ 相互会社
- ⑵ 次のいずれかの法人(以下「大法人」といいま す。)との間にこれらの大法人による完全支配関係 がある法人
- ① 資本金の額又は出資金の額が5億円以上であ る法人
- ② 相互会社(外国相互会社を含みます。)
- ③ 法第4条の7⦅受託法人等に関するこの法律 の適用))に規定する受託法人(以下「受託法人」 といいます。)
- ⑶ その普通法人との間に完全支配関係がある全ての 大法人が有する株式及び出資の全部をいずれか一の大法人が有するものとみなしたときにそのいずれか一の大法人による完全支配関係があることとなる法 人
- ⑷ 投資法人
- ⑸ 特定目的会社
- ⑹ 受託法人
今回の例では普通法人で上の⑴から⑹のいずれにも該当しないので、何も記載しません。
❺ 同非区分
同族会社の区分をする欄で、別表2の「判定結果 18」で判定した区分を○で囲みます。
今回の例では同族会社なので、「同族会社」に○を付します。
❻ 旧納税地及び旧法人名等
当期中に納税地若しくは法人名に異動があった場合には旧納税地又は旧法人名を記載し、本店又は主たる事務所の所在地と納税地とが異なる場合には本店又は主たる事務所の所在地を記載するなど参考となる事項を記載します。
❼ 添付書類
「添付書類」欄に記載の書類のうち提出するものに◯を付します。
今回の例の場合は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、勘定科目内訳明細書、事業概況書に○を付します。
(3) 税務署処理欄
税務署処理欄は基本的には記載不要ですが、「売上金額」欄だけは記載が必要です。
損益計算書の 売上金額の合計額(雑収入、営業外収益及び 特別損益を除きます。)を100 万円単位で記載します。100万円未満の端数は切り上げます。
(4) 事業年度欄と申告種類欄
上段に会計年度の開始年月日を記載し、下段に会計年度の終了年月日を記載します。
今回の例では会計年度の開始年月日に令和3年4月5日と記載し、会計年度の終了年月日に令和4年3月31日と記載します。
法人税[ ]申告書、地方法人税[ ]申告書にそれぞれ確定申告の場合は「確定」、修正申告の場合は「修正確定」、中間申告の場合は「中間」、期限後申告書の場合は、「期限後確定」と記載します。
今回の例では確定申告なので「確定」と記載します。
⑸ 「所得金額又は欠損金額 1」欄
「所得金額又は欠損金額 1」欄には、別表4の「所得金額又は欠損金額 48」の①の値を転記します。
(6)「差引確定法人税額 16」欄までの計算
①「法人税額 2」欄は、別表1次葉の53欄、54欄と55欄の値を合算した金額を記載しますが、赤字の申告の場合必ず0になります。
②「差引法人税額 4」欄は、別表1の「2欄 ー 3欄」で計算します。
3欄は別表6(6)の値を転記してきますが、今回の例では税額控除を適用しませんので、「差引法人税額 4」欄は2欄の値がそのまま下りてきます。
③「法人税額計 10」欄は、4欄+5欄+7欄+9欄で計算しますが、5欄は一般的な中小企業が関係することは希有ですし、7欄の土地譲渡利益金は現在課税が止まっています。9欄の留保金課税は中小企業は対象外です。
10欄はほぼ100%の確率で「差引法人税額 4」欄の値を転記することになります。
④「差引所得に対する法人税額 14」欄は、10欄 ー 11欄 ー 12欄 ー 13欄と計算しますが、中小企業で11欄と12欄に値が入ることは相当稀です。
13欄は所得税額控除と外国税額控除を行うときは値が入りますので、中小企業でも値が入るケースがありますが、今回の例では税額控除を適用しませんので空欄にします。
⑤「差引確定法人税額 16」欄は、初年度に中間申告が出てくることはありませんので、「中間申告分の法人税額」欄は空欄になるため、14欄と同じ数字が入ります。
(7) 控除税額の計算
控除税額の計算の17欄〜21欄は所得税額控除または外国税額控除を適用する場合に使用します。
今回の例では税額控除を適用しないので飛ばします。
(8) 土地譲渡税額の内訳
土地の譲渡益に対する特別課税が現在止まっているためこの欄も飛ばします。
(9) この申告による還付金額
税額控除による還付、中間還付、欠損金の繰り戻し還付がある場合に使用しますが、今回の例ではいずれも該当がありませんので飛ばします。
(10) この申告が修正申告である場合
修正申告である場合に使用する部分なので今回の例は確定申告であるため飛ばします。
(11) 「欠損金又は災害損失金等の当期控除額 31」欄
31欄には、次のように別表7(1)の「当期控除額 4」列の計を転記します。
今回の例では、0を転記または空欄になります。
(12) 「翌期へ繰り越す欠損金又は災害損失金 32」欄
32欄は、次のように別表7(1)の「翌期繰越額 5」列の「合計」行を転記します。
この例では「翌期へ繰り越す欠損金又は災害損失金」欄に1,000,000と記入します。
(13)「この申告書による地方法人税額の計算」欄
初年度赤字決算の場合は、次のように赤で囲った33、35、36、38、42、44欄に0が入ります。
①「所得の金額に対する法人税額 33」欄は、4欄 + 5欄 + 7欄 + 10の外書で計算します。
②「課税標準法人税額 35」欄は、33欄 + 34欄で計算します。34欄は課税留保金は中小企業には関係ありませんので、空欄になります。したがって33欄の値がそのまま35欄に入ります。
③「地方法人税額 36」欄は、別表1次葉の58欄の値を転記します。赤字なので税額は0になります。
④「所得地方法人税額 38」欄は、36欄 + 37欄で計算します。37欄は課税留保金は中小企業には関係ありませんので、空欄になります。したがって36欄の値がそのまま38欄に入ります。
⑤「差引地方法人税額 42」欄は、38欄 – 39欄 – 40欄 – 41欄で計算します。100円未満は切り捨てます。40欄は税額控除を適用しないので、空欄。39欄と41欄は関係することはほぼありませんので空欄。
⑥「差引確定地方法人税額 44」欄は、42欄 – 43欄で計算します。43欄は中間申告で納めた地方法人税額が入ります。今回の例では初年度なので、43欄は空欄になりますので、42欄の値がそのまま44欄に下りてきます。
(14)「この申告書による還付金額 45」欄
45欄は、[ 43欄 – 42欄 ]で計算します。
つまり中間申告した分が還付になるケースに45欄に記載することになります。
今回の例では43欄に値が入りませんので、空欄になります。
(15)「この申告書が修正申告である場合 46〜49」欄
次の部分は、修正申告を提出する場合に記入する欄です。
今回の例は確定申告であるため空欄になります。
(16)「剰余金・利益の配当(剰余金の分配)の金額 」欄
「剰余金・利益の配当(剰余金の分配)の金額 」欄は、次のように別表4の配当欄の値を転記します。
(17)「決算確定の日」欄
決算確定の日とは、決算書がしかるべき機関(例えば株主総会)で承認された日を指します。
例えば株式会社の場合は、定時株主総会で決算の承認を行いますので、定時株主総会日が「決算確定の日」になります。
(18)「還付を受けようとする金融機関等」欄
別表1で計算した結果還付となる場合、つまり28欄に値が入る場合は、この欄に還付金を入金して欲しい金融機関情報を記載します。
口座名義は、申告書に記載した法人名義の口座を書きます。口座名義 に店舗・事務所名などが含まれている場合や商号変更前の名称である場合には、振込みができないことがあるので注意しましょう。
今回の例では還付になりませんので、空欄にします。
(19)「税理士署名」欄
税理士の関与がある場合は、署名とありますので「税理士署名」欄に自筆で署名してもらいます。(電子申告の場合は、自署不要)
以上で別表1は完成です。
別表1の見方やより詳しく書き方を知りたい場合は、次の記事をご参照ください。
別表1と別表1次葉の本家の記載方法の解説については、「令和3年版 法人税申告書・地方法人税申告書の記載の手引 別表1 国税庁」をご覧ください。
別表1が完成したら、次は法人税の申告書作成から一旦離れて都道府県や市町村に提出する地方法人税の申告書を作成する必要があります。
2-1-10 第6号様式と第20号様式を作成する
今回の記事は法人税の申告書の書き方なので、地方法人税の申告書の書き方については、今回の例で作成した申告書の記載例をお示しするにとどめます。
まずは都道府県に提出する第6号様式の記載例から見ていくことにしましょう。
2-1-10-1 第6号様式の記載例
この例では均等割率を標準税率の20,000円として計算しています。
第6号様式を作成したことにより道府県民税が(22)欄18,300円、事業税が(51)欄0円、特別法人事業税が(61)欄0円とわかりました。
次のように仕訳を登録し決算に反映してください。
日付 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
2022/3/31(会計年度終了日) | 法人税、住民税及び事業税 | 18,300 | 未払法人税等 | 18,300 |
続いて市町村に提出する第20号様式の記載例を確認しましょう。
2-1-10-2 第20号様式の記載例
この例では均等割率を標準税率の50,000円として計算しています。
第20号様式を作成したことにより市町村民税が(21)欄45,800円とわかりました。
次のように仕訳を登録し決算に反映してください。
日付 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
2022/3/31(会計年度終了日) | 法人税、住民税及び事業税 | 45,800 | 未払法人税等 | 45,800 |
なお、東京23区が納税地になっている場合は、6号様式でまとめて計算しますので、20号様式を作成・提出する必要はありません。
2-1-11 別表5(2)を書く(その2)
第6号様式と第20号様式を作成し、次の情報がわかると別表5(2)を完成させることができます。
税金種類 | 税額 |
---|---|
道府県民税 | 18,300 |
市町村民税 | 45,800 |
事業税+特別法人事業税 | 0 |
この情報をもとに別表5(2)に次のように記載します。
当期分の道府県民税と市町村民税の書き方
❶ 「道府県民税」の「当期分」9の②と9の⑥に未払いとなっている道府県民税(この例では18,300円)を記入します。10の②⑥にも同額を記入します。
❷ 「市町村民税」の「当期分」14の②と14の⑥に未払いとなっている市町村民税(この例では45,800円)を記入します。15の②⑥にも同額を記入します。
なお、事業税は申告書を提出した日に費用計上する決まりになっているため、別表5(2)に当期の事業税と特別法人事業税はこの年度では記載しません。別表5(2)にも事業税及び特別法人事業税にだけ「当期分」の行がないことがわかると思います。
「納税充当金の計算」欄の書き方
別表5(2)の下段の「納税充当金の計算」部分は、設立初年度の場合は、次のように記載します。
納税充当金という法人税独特の表現ですが、勘定科目でいうと「未払法人税等」のことをいいます。「納税充当金=未払法人税等」と理解しましょう。
納税充当金について次の記事で詳しく解説しています。
❶「損金経理をした納税充当金 31」欄
道府県民税(18,300)と市町村民税(45,800)が確定したところで、次のように仕訳をしてもらっています。
法人税、住民税及び事業税 64,100 / 未払法人税等 64,100(←合計金額で仕訳)
繰入額の方の「損金経理をした納税充当金 31」欄に64,100円を記載します。
繰入れとは法人税等を未払法人税等として費用計上することと理解してもらえれば結構です。
損金経理をした納税充当金 = 法人税、住民税及び事業税として費用計上した金額(相手勘定科目が未払法人税等)
❷ 繰入額の方の「計 33」欄
33欄には31欄の値を転記します。
❸「期末納税充当金 41」欄
41欄は、[ 30欄 + 33欄 – 40欄 ]で計算します。
設立初年度の場合に納税充当金を取崩す(未払法人税等を借方に仕訳する)ことはありませんので、34欄〜40欄は空欄になります。
この例では0(設立初年度なので期首納税充当金は0) + 64,100 – 0 = 64,100となり、64,100を記入します。
これで別表5(2)が完成しました。
もう一度完成した記載例を確認します。
別表5(2) 完成形の記載例
別表5(2)のさらに詳しい書き方については、次の記事をご覧ください。
別表5(2)の本家の記載方法の解説については、「令和3年版 法人税申告書・地方法人税申告書の記載の手引 別表5(2) 国税庁」をご覧ください。
続いて別表5(1)を完成させます。
2-1-12 別表5(1)を書く(その2)
❶「繰越損益金 26」行
26の③と④に下の図のように「貸借対照表」「純資産の部」の「繰越利益剰余金」の値をそれぞれ転記します。
❷ 「納税充当金 27」行
27の③と④の値は別表5(2)の「納税充当金の計算」箇所から次のように転記します。
❷ 「未納道府県民税 29」欄
29の③の「確定」と④には別表5(2)の「道府県民税」行の値をそれぞれ次のように転記します。
なお、「未納法人税及び未納地方法人税 28」行は、別表1を作成した結果、法人税と地方法人税ともに0であったため記載しません。
❸ 「未納市町村民税 30」欄
30の③の「確定」と④には別表5(2)の「市町村民税」行の値をそれぞれ次のように転記します。
❹ 「差引合計額 31」行
31の行は、それぞれ縦の列の1〜31の値を合計していきます。△は差し引きます。
この例では「増③」の列は-1,064,100 + 64,100 – 18,300 – 45,800 = -1,064,100となります。
これで別表5(1)が完成しました。
別表5(1)の完成版をもう一度確認しておきましょう。
別表5(1) 完成形の記載例
別表5(1)のより詳しい記載方法を知りたい方は次の記事をご覧ください。
別表5(1)の本家の記載方法の解説については、「令和3年版 法人税申告書・地方法人税申告書の記載の手引 別表5(1) 国税庁」をご覧ください。
いよいよ最後です。別表4を完成させます。
2-1-13 別表4を書く(その2)
別表4を仕上げていきます。
❶ 「当期利益又は当期欠損 1」の金額を修正
「当期利益又は当期欠損 1」の値は、損益計算書の税引後当期純利益金額と一致します。
第6号様式と第20号様式を作成し、道府県民税(18,300)と市町村民税(45,800)が確定したところで、次のように仕訳をしてもらっています。
法人税、住民税及び事業税 64,100 / 未払法人税等 64,100(←合計金額で仕訳)
これが決算に反映されたことによって税引後当期純利益金額が変わっています。
今回の例では△1,000,000 △1,064,100に変わりました。
確定した税引後当期純利益金額に「当期利益又は当期欠損 1」の値も修正します。
❷ 「損金に算入した納税充当金 4」欄
4の①と②には、別表5(2)の「納税充当金の計算」の31の値を転記します。
❷ 「(加算)小計 11」欄
「小計 11」は縦の列①〜③に対して2〜10までの合計を行います。
この例ですと、①列、②列ともに4欄に64,100があるだけなので、①列、②列の11欄はそれぞれ「64,100」を記入します。③列は何もありませんので空欄にします。
これで別表4が完成しました。
別表4の完成形をもう一度ここで確認しましょう。
別表4 完成形の記載例
別表4の役割や別表4全体の詳しい書き方(税額控除、留保や社外流出)を知りたい場合は、次の記事で詳しく解説していますので、こちらをご覧ください。
別表4の本家の記載方法の解説については、「令和3年版 法人税申告書・地方法人税申告書の記載の手引 別表4 国税庁」をご覧ください。
初年度赤字の法人税の申告書の書き方はこれですべて解説しました。いかがだったでしょうか。別表、決算書と勘定科目内訳明細書を手元に置いて、この記事のとおりに記載していたったら「難解だから税理士しかできない」と言われていた法人税の申告書が、今まさに出来上がった状態で手元にあるのではないでしょうか。
初年度赤字の申告書は出来上がりました。2年目以降はどうなるのかという不安は残っているかと思います。
ご安心ください。2年目以降の法人税の別表の書き方も第二弾として次の章で行なっていきます。
2-2 【ケース2】法人税申告書(別表の書き方)〜設立2年目以降 黒字編〜
2-1では設立初年度の赤字のケースの申告書の解説を行なってきました。これだけでは、それ以外のケースでは書けない部分がありますので、ここでは次のケースを想定して法人税の申告書の書き方を解説していきます。
- 設立2年目以降
- 黒字決算
それでは早速設立2年目以降の黒字決算の法人税の別表の書き方を解説していきます。
次のような法人を前提に解説します。
法人名 | 株式会社清洲興産 |
---|---|
青色白色 | 青色申告 |
第何期か | 第3期(令和6年3月決算) |
資産の保有状況 | 保有資産なし。 |
利益の状況 | 10,000,000円の黒字 |
その他の特徴 |
|
株主の状況 | 一人社長 株式数100 資本金1,000,000円 |
「1-2-1 必要な別表を選別する」で解説した「別表の選別表」でこの会社で必要になる別表を判断すると次のようになります。
必要な別表 | 必要となる理由 |
---|---|
別表1 | 必須の別表 |
別表1次葉 | 必須の別表 |
別表4 | 必須の別表 |
別表5(1) | 必須の別表 |
別表5(2) | 必須の別表 |
別表2 | 株式会社だから |
別表7(1) | 繰越欠損金があるから |
適用額明細書 | 黒字 |
続いて、「2-2-2 作成する別表の順番」で解説した「別表の作成の順番一覧」によって作成する順番を示すと次のようになります。
この順番で別表を作成していきます。
2-2-1 別表2(同族会社等の判定に関する明細書)を書く
設立3年目の決算なので、これまで別表2は作成してきているはずです。
最も簡単なのは、株主(または社員)に前年度末から変動がなければ同じ内容になりますので、同じものをもう一度作ればよいことになります。
別表2の書き方を一人社長のマイクロ法人を例に解説していきます。
2-1-1と同じ内容のものを掲載しますので、すでに読んでいる方はこの別表2の書き方は飛ばしてください。
別表2という書類がどのようなものかをイメージできるよう冒頭で記載例を見ていきたいと思います。
2-2-1-1 別表2記載例
記載例を確認したら、別表2の具体的な書き方をみていきます。
2-2-1-2 別表2の具体的な書き方
別表2は、まず下半分に位置する「判定基準となる株主等の株式数等の明細」部分から書き始めます。
手順1 「判定基準となる株主等の株式数等の明細」の書き方
❶ 「順位」欄
「株式数等」欄の方に「1」と記載します。
株主が「織田 信雄」一人しかいませんので、1位の意味で「1」と記載します。
隣の「議決権数」欄は「株式数=議決権数」となっている場合は、空欄にします。
1株に対して1個の議決権が原則なので、議決権が行使できないなどの種類株式がない限り「株式数=議決権数」となり、「議決権数」欄は空欄になります。
中小企業の多くは「株式数=議決権数」となっているケースがほとんどなので、「議決権数」欄は空欄になるケースが多いでしょう。
❷ 「判定基準となる株主(社員)及び同族関係者」欄
- 「住所又は所在地」欄に株主の住所を記載します。
- 「氏名又は法人名」欄に株主の氏名を記載します。
❸「判定基準となる株主等の続柄」欄
株主が一人なので、「本人」になります。
❹「株式数又は出資の金額等 19〜22」欄
今回の例は株主が個人なので、「被支配会社でない法人株主等」には入らず、「その他の株主等」の方に記載します。
- 「株式数又は出資の金額」欄は、今回の例は株式会社なので株式数を記載します。合同会社等の持株会社の場合は、出資の金額を記載します。
- 「議決権の数」欄は、「順位」欄同様「株式数=議決権数」となっている場合は、空欄にします。
手順2 「同族会社の判定」の書き方
次に別表2の左上の部分「同族会社の判定」を書いていきます。
❶「期末現在の発行済株式の総数又は出資の総額 1」欄
1欄には、決算期末現在の発行済み株式総数を記載します。
今回の例では織田信雄が100株がすべてなので「100」と記載します。
合同会社等の持株会社の場合は、出資の金額の合計を記載します。
❷「(19)と(21)の上位3順位の株式数又は出資の金額 2」欄
すでに記載した「株式数又は出資の金額等」の(19)欄と(21)欄に記載した数字を全て合計します。
今回の例では(21)欄に100のみなので(2)欄には「100」と記載します。
合同会社等の持株会社の場合は、(19)欄と(21)欄に記載した出資の金額の合計金額を記載します。
❸「株式数等による判定 3」欄
(2欄 ÷ 1欄) × 100という計算をします。
今回の例では ( 100[2欄] ÷ 100[1欄] ) × 100 = 100% となるので「100」と記載します。
❹「同族会社の判定割合 10」欄
3欄、6欄又は9欄のうち最も高い割合を記載します。
今回の例では3欄にしか値がありませんので、3欄の値「100」と記載します。
空欄になっている4〜9欄の補足解説
(4)〜(6)欄は、(20)と(21)の「議決権の数」欄に値がある場合に記載が必要ですが、今回の例では(20)と(21)の「議決権の数」欄に記載がありませんので、こちらの欄も空欄になります。
(7)〜(9)欄は、合同会社等の持株会社の場合は、その社員の数を記載することになります。今回の例では空欄になります。
仮に今回の例が合同会社の場合は、社員が1人なので、(7)と(8)欄には「1」が入り(9)欄は(1/1)×100=100となり、「100」を記載することになります。
手順3 「特定同族会社の判定 11〜17」の書き方
続いて別表2の右上の「特定同族会社の判定」欄です。
この欄は中小企業は、特定同族会社の判定をしなくてよいことになっています。
特定同族会社の判定は、留保金課税をするかどうかの判定に使われますが、中小企業は留保金課税されないこととなっているので、判定自体必要ないのです。
繰り返しになりますが、この記事で「中小企業」という表現を使う場合は、資本金(出資金)1億円以下の普通法人(資本金または出資金の額が5億円以上の法人等の100%子法人と適用除外事業者※2に該当する法人を除く)を指します。以下同じ。
この例では資本金が100万円の株式会社なので、記載不要です。
手順4 「判定結果 18」欄の書き方
最後に「判定結果」欄です。
資本金又は出資の金額が1億円以下の法人は特定同族会社にはならないことになっていますので、中小企業が特定同族会社に○をつけることはありません。
したがって残るは同族会社か非同族会社のいずれになるかの判定になります。
次のように判定します。
同族会社の判定
「同族会社 の判定割合 10」が 50%超 ……同族会社
「同族会社 の判定割合 10」が 50%以下 ……非同族会社
今回の例では、「同族会社 の判定割合 10」欄は100%なので、「同族会社」に◯をつけることになります。
これで別表2は完成です。
このようにマイクロ法人の場合は、別表2を簡単に作成できると思います。
また別表2は翌年度は作成が圧倒的に楽になるという特徴があります。
別表2は一度作成すれば、翌年度以降に株主に変化がなければ毎年同じ内容になりますので、昨年度作成した別表2を写せばいいのです。
今回の例では株主が一人という単純だったので、別表2の作成例としては最も簡単な部類に入ります。
株主が複数いる場合や合同会社等の持株会社のケース等別表2の詳しい書き方については、次の記事で詳しく解説していますので、こちらをご参照ください。
また別表2の記載の手引きを国税庁が公表していますので、本家の書き方を参照したい場合は、次のリンクからどうぞ。
別表二 「同族会社等の判定に関する明細書」
2-2-2 別表5(2)を書く(その1)
続いては別表5(2)の作成に移ります。
ここでは、次の前提で別表5(2)を作成していくことにします。
前提1 当期首(=前期末)に未納となっていた法人税等
(前期は赤字だった)
当期首に未納となっている税目 | 未納金額 |
---|---|
法人税 | 0 |
道府県民税 | 20,000 |
市町村民税 | 50,000 |
事業税 | 0 |
前提2 【経理方法】前提1の金額を前年度末に次のように仕訳している
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
法人税、住民税及び事業税 | 70,000 | 未払法人税等 | 70,000 |
この記事では、期末に未払法人税等を計上する方法のみを採用します。法人税等の経理処理方法は複数ありますが、この未払法人税等を計上する方法に統一することをおすすめします。法人税の申告書を単純化できます。色々な方法の処理方法を解説するとそれだけでわかりにくくなります。専門家でない方は複数の処理方法を知っているメリットはほぼありませんので、是非未払法人税等で処理で一本化してください。
すでに前期の法人税等を当期に納めたときに費用計上している場合は、この記事では残念ながらその方法の解説をしませんので、この記事を読むだけでは申告書を作成することはできません。
これらのことを前提に記載した別表5(2)の記載例をまずは確認し、完成形をイメージします。
2-2-2-1 別表5(2)の記載例
記載例を確認したところで、これから実際に別表5(2)を作成していきます。
2-2-2-2 別表5(2)の具体的な書き方
では、実際に別表5(2)を書いていきましょう。
❶ 前期末の値を当期首に転記する
まず、前期の別表5(2)を用意します。
そして前期の別表5(2)の法人税等と納税充当金の期末の値を次のように当期の別表5(2)に転記します。
❷ 「当期中の納付税額」欄に記入する
① 前期末に次のように法人税等を仕訳しているという前提でした。
取引年月日 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
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2023/3/31 | 法人税、住民税及び事業税 | 70,000 | 未払法人税等 | 70,000 |
② 当期中に未払法人税等70,000(道府県民税 20,000 + 市町村民税 50,000)を納めたときに次のような仕訳をしています。
取引年月日 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
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2023/5/31 | 未払法人税等 | 70,000 | 現金預金 | 70,000 |
これを別表5(2)の「当期中の納付税額」欄に記載すると次のように、納めた金額を「充当金取崩しによる納付③」列に記載することになります。
「充当金」とは「納税充当金」のことで、これは法人税独特の表現ですが、勘定科目でいうと「未払法人税等」のことをいいます。「納税充当金=未払法人税等」と理解しましょう。
「納税充当金取崩しによる納付」とはつまり、未払法人税等の科目を使って納付したという意味で、仕訳としては、税金を納付したときに次の仕訳をしていることを意味します。
未払法人税等 70,000 / 現金預金 70,000
納税充当金については、次の記事で詳しく解説していますのでよくわからない場合は、こちらをご覧ください。
❸ 「期末現在未納税額⑥」欄に記入する
⑥欄は、次の図のように同じ行の中で「① + ② ー ③ ー ④ ー ⑤」という計算を行います。
実際に計算するとこの例では次のようになります。
7行目は①20,000 + ②0 – ③20,000 – ④0 – ⑤0 = 0
13行目は①50,000 + ②0 – ③50,000 – ④0 – ⑤0 = 0
❹ 「その他」欄を記入する