0からわかる損金とは?損金算入と損金不算入をわかりやすく簡単解説

0からわかる損金とは?損金算入と損金不算入をわかりやすく簡単解説アイキャッチ
会社員 新米社長

さて、法人の設立登記もできたぞ!
次に役員報酬をどうしようかなぁ?
とりあえずその月の稼ぎによってその都度決めればいいかな。
うん、そうしよう!

 

新米さん、それはとても危険でーす!!

中小企業の役員報酬は、毎月同額で支給する定期同額給与か、毎月支給でない場合は、賞与として事前に税務署に届出を提出しないと損金に算入されない!という知らないと大損のルールがあるんですよ!

弁護士 元国税税理士

 

悩む会社員 新米社長

損金?
算入?

どういう意味でしょう?
フリーランスの時はそんな言葉聞いたことありませんでしたよ。

 

法人の経理を税理士に頼らず自力でやりたいなら「損金」「損金算入」「損金不算入」というワードは避けては通れません!

逆にこのワードさえ理解してしまえば、法人特有のルール、例えば「定期同額給与」「事前確定届出給与」「交際費等の損金不算入」「減価償却費の償却超過額」といった、一見すると難解なルールもすっと頭に入ってくるようになるでしょう。

この記事では、法人税の超基本「損金とは」を法人税の知識を全く知らない方向けにどこよりもわかりやすく、簡単に解説していきますので、必ず理解できます!
「損金」や「損金不算入」というワードを理解して、法人税を得意にしてしまいましょう!

弁護士 元国税税理士

 

この記事の特徴
本記事は、税理士に頼らず自力で法人の経理処理から確定申告までを攻略したいという方向けの記事です。
中小企業向けに初心者にもわかりやすく元国税調査官で税理士が実務で必要となる知識に絞って可能な限り簡単に解説していきます。

1 損金とは

損金とは

損金とは??
損金とは、簡単に言うと、
法人税法上も費用(経費)となる金額
を意味します。
悩む会社員 新米社長

法人税法上も
費用??経費??

どういうことでしょう??

このことを理解するために、次のようなステップを踏んで解説します。

「損金」を一言では説明できませんので、一つずつ理解していってください。そんなに難しい話ではありませんので、絶対に理解できますよ!

弁護士 元国税税理士
損金を理解するための2ステップ
【STEP1】法人税額はどうやって計算されるのか
【STEP2】所得金額はどうやって計算されるのか

1-1 法人税額はどうやって計算されるのか?

法人税の税額は次の算式で計算します。

法人税の税額の計算式
❶ 益金 ー 損金 = 所得金額
❷ 所得金額 × 税率 = 法人税額

具体例を使って実際に計算してみましょう。

❶ 所得金額を計算

1,000万円(益金) ー 800万円(損金) = 200万円(所得金額)

❷ 法人税額を計算

200万円(所得金額)× 20%(税率) = 40万円(法人税額)

悩む会社員 新米社長

損金もわかっていないうちに益金という謎ワードまで出てきて謎が深まってしまいましたー。

益金と損金は次で詳しく解説するので大丈夫ですよ!

ここでは以下の2点を覚えてください。

  • 所得金額に税率をかけて法人税を算出する
  • 所得金額は「益金 ー 損金」で計算される
弁護士 元国税税理士

1-2 所得金額はどうやって計算されるのか?

法人税額は、所得金額 × 税率という算式で求められます。
この税額決定の元になる所得金額は、以下の算式で算出されると解説しました。

益金 ー 損金 = 所得金額

さて、それでは、この税額決定に大きな影響を及ぼす益金と損金とは何なのかを解説します。
ここからが本番です。

弁護士 元国税税理士

1-2-1 所得金額と利益はほとんど同じ意味

益金 ー 損金 = 所得金額

これはほとんど次の式と同じ意味です。

収益 ー 費用 = 利益

所得計算と利益計算は法人税法ではほとんど同じ

説明する会社員 新米社長

収益から費用を差し引いて利益を出して、その利益に税率をかけて法人税を計算するというのなら理解できますよ!
利益が多ければ、その分税金が多くなり、利益が少なければ、その分税金が少なくなる。利益がなければ税金はなし。これはよくわかります。

これと同じと考えていいのですか?

税金の計算の仕方の基本は、その考え方でOKです。

ただし、両者には、少しだけ違うところがあります。

弁護士 元国税税理士

1-2-2 費用(経費)と損金の違い

今回のテーマは「損金とは」なので、損金と費用(経費)の違いを解説します。

弁護士 元国税税理士

 

基本的には、法人税の税額計算は、「収益ー費用=利益」(利益を計算して)「利益×税率=法人税額」(利益から税額を計算する)でよいのですが、法人税法では、利益を少なく操作して法人税額を減らされては困るという考えがあるために、会社計算(企業会計)では費用になっても、法人税法では費用と認めないものを決めています

費用とは認められないものの代表例が、毎月同額に支給しない役員報酬や、事前に税務署に届けていない役員賞与です。
これらのものは、いくら以下のように会社計算で費用処理していても、法人税法では所得金額の計算で差し引くことができません

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
役員報酬1,000,000普通預金1,000,000

会社計算(企業会計)では、費用として処理できるが、法人税法では、費用と認められないものがあるため、「費用」という言葉と区別する必要があるため、法人税法では「損金」という名前をつけて「収益ー費用=利益」ではなく、「益金ー損金=所得金額」としたわけです。

益金も同様です。会社計算では収益と認められるものも法人税法では収益と認められないものがあります。そのため、会社計算の「収益」という言葉と区別するために「益金」という名前をつけています。

小規模法人向けクラウド会計ソフト全力会計バナー

2 損金不算入とは

損金不算入とは

会社計算(企業会計)では費用として処理されているが、法人税法ではそれを認めないことを「損金不算入」と呼びます。

ここまでの話を図解でまとめてみます。

1「費用≒損金」だけど?法人税ルールで費用にしたくないものがある

この例では、会社の損益計算書には費用は合計で850万円が計上されているも、法人税法では、そのうち50万円は損金に算入されないものがあるため、所得金額から差し引ける損金の額は850万円-50万円で800万円に減っています。

別の例でもう少し詳しく説明します。

法人税の独自ルールで税務署に事前に届出ていない賞与は損金に認めないというルールがあります。
逆にいうと税務署に事前に届け出ている賞与だけ損金に認められます。これを「事前届出給与」と呼びます。

新米さんのように、賞与を利益が出たから支給したとします。

これは事前に税務署に届けでいないため損金と認められず、損金不算入になります。

弁護士 元国税税理士
悩む会社員 新米社長

そうしたらどうなるのでしょう?

 

会社計算(企業会計)法人税法
収益:1,000万円益金:1,000万円
費用:800万円
(賞与100万円含む)
損金:700万円
(費用800万円ー賞与100万円
利益:200万円所得金額:300万円

事前に届け出ていないので、その100万円の賞与は損金に認めない!
だから損金は費用よりも100万円少なくなって損金は700万円だ!

匿名男性 税務職員X
悩む会社員 新米社長

ひえぇぇ
お許しを〜

賞与100万円は事前に届けられた賞与(事前確定届出給与)ではないので、損金に算入されない、つまり損金不算入の金額となります。したがって、損金は、会社計算の費用800万円のうち賞与分100万円を除いた700万円になります。それにより、所得金額も100万円増えて、その分税金も増えるという算段です。

弁護士 元国税税理士
悩む会社員 新米社長

おお、なんてことだ…
恐怖…

でも損金の意味はわかってきました。


3 損金算入とは

損金算入とは

損金不算入の反対概念である損金算入の意味も確認しておきましょう。

弁護士 元国税税理士
損金算入とは
損金算入とは、法人税額の計算上、所得金額※を計算するにあたって、損金の額に算入されることをいう。
※ 所得金額 = 益金 ー 損金

 

「損金算入」とは、簡単にいうと、法人税法で「損金」に認められていることを意味します。

弁護士 元国税税理士

 

損金算入とは

画像の例では、会社計算の費用850万円のうち、800万円は損金に算入されています。

損金不算入額が50万円です。

弁護士 元国税税理士
説明する会社員 新米社長

なるほど!
「損金」「損金算入」「損金不算入」がわかりました!

「損金」とは、法人税法上の費用のことで、会社計算の費用と区別するために「損金」という名前がついている。
会社計算のうちで損金と認められるものを「損金算入」と呼んで、会社計算では費用でも、法人税法の所得の計算で損金に認められないものを「損金不算入」と呼ぶのですね!

その理解で大丈夫です!

厳密には、会社計算のうちで損金と認められるものだけが「損金算入」ではありません。
減価償却認容額のようにその年度で費用としていなくても損金と認められる場合もあります。ただ、このようなケースは中小企業の実務ではほとんどお目にしないので、そういうレアケースが出てきた時に覚えればいいと思います。

ここでは、その理解でOKです!

弁護士 元国税税理士

 

ここまでの話をまとめます。

損金とは?損金算入とは?損金不算入とは?のまとめ
法人税額=所得金額×税率
  この法人税額を決定する所得金額は「益金 ー 損金」で計算する。

「所得金額 = 益金 ー 損金」は会社計算(企業会計)の「利益 = 収益 ー 費用」とほとんど同じ

❸ 会社が費用にしたすべてを法人税法では認められない部分があるので、便宜的に「費用」と区分するために「損金」とした

会社計算の費用のうち認められない金額を「損金不算入」の金額として、認められる金額を「損金算入」の金額としている。

会社計算の費用はほとんどが損金となるが、一部損金不算入となるものがあると理解しよう!

 

「損金」とは、「損金不算入」とは、「損金算入」とは、という概念的な理解はここまでを理解していれば完璧です!

弁護士 元国税税理士
説明する会社員 新米社長

イメージは、バッチリ理解できたと思います!

ここからは、少し突っ込んだ話をします。
個別論点を話していきたいと思います。

「損金」とは、「損金不算入」とは、「損金算入」とはを理解したいという方はここまでのところで良いと思います。
これ以降は、さらっと読んでもらって、また実務で実際にぶつかった時に戻ってきて読んでもらった方がわかりやすいと思います。

弁護士 元国税税理士
会社員 新米社長

わかりました!
私は頑張ったので、一旦失礼します。

 

コラム「なぜ利益に税率をかけて税金を算出するのではなく、「益金ー損金=所得金額」から税金を算出するのか?」

法人税法と企業会計はその目的が違う!

実は、法人税法と企業会計ではその目的が違います。

法人税法の規定は、課税の公平や適正な税負担等を目的として定められています。

企業会計は正しい経営成績と財産状態を開示することを目的としています。

目的が違うからといって企業会計の原則に従って日々経理してきた利益と法人税法が規定する所得金額が全然違うものだとしたら2つ帳簿をつけなくてはならずとてもたいへんです。

したがって法人税法は基本的には企業会計に基づいて算出された利益を採用するものとしています。法人税法の規定では益金と損金は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」によって計算されるものとしています。(法人税法第22条第4項)

基本的には企業会計の利益を法人税の所得計算のベースにするんだけど、それをそのまま当期純利益=法人税法の所得金額にはしないよという作りになっています。

少しわかりづらいと思いますので例を出して考えてみることにしましょう。

ある会社が決算期末が近づいてきて企業会計に基づいた利益を試算しました。利益が大きく出ることが予想されました。このままでは法人税を多く課せられてしまうと考え、決算期末に役員に賞与を支給して法人税を少なくしようと考えました。

これは企業会計上は何ら問題がありません。しかしながら法人税法では、利益を調整して法人税を少なくされることを嫌います。

そのため役員賞与に法人税法で規定を設けて、損金にするのに条件をつけよう、という考え方が出てくるわけです。それはずるい、不公平だ、だから規制しようということです。

会計上は費用だけど、法人税法上は費用(損金)にはしないぞ、となるわけです。(ズルをしていないものは、企業会計で計算したものでいいよ。というスタンスです。)

それでは、続いて法人税法で損金不算入となる具体例を紹介します。

弁護士 元国税税理士
小規模法人向けクラウド会計ソフト全力会計バナー

4 損金不算入となる法人税の独自ルール

 損金不算入となる法人税の独自ルール

損金不算入とは、会社計算(企業会計)では費用処理していても、法人税額の計算上は費用と認めず、法人税額計算の元となる「所得金額=益金ー損金」の損金に認めないというものでした。

4-1 損金不算入となる具体例

その会社計算(企業会計)では、費用処理されていても法人税法では認められず損金不算入となる具体的な項目を例示します。

会社計算の勘定科目損金不算入のルール
役員報酬・定期同額給与となっていない役員報酬は損金不算入
・不相当に過大な役員給与の損金不算入
役員賞与事前確定届出給与以外の賞与は損金不算入
給料手当役員と特殊関係にある使用人に支給する不相当に過大な給与の損金不算入
交際費税務上の交際費等の損金不算入
減価償却費減価償却費の償却超過額
貸倒引当金繰入額引当金の繰入限度超過額
寄附金寄附金の損金不算入
租税公課延滞税、加算税、過怠税、延滞税、加算金、延滞金、交通反則金等の地方自治体が課する罰金や過料等の損金不算入
法人税等法人税、地方法人税、都道府県民税、市町村民税、法人税から控除する所得税額、法人税から控除する外国税の損金不算入

これ以外にも損金不算入となる事項はありますが、中小企業が実務で遭遇する損金不算入の代表例を挙げました。

4-2 損金不算入の代表例の解説

法人税法で損金不算入となるルールの中で特に注意しなければならない事項をピックアップしてその概要を解説します。

4-2-1 定期同額給与

役員報酬は、次の条件をいずれも満たしている部分の金額を損金に算入できるというルールがあります。これを定期同額給与と呼びます。

  1. 支給時期が1月以下の一定の期間ごと
  2. 会計期間内の各支給期間の支給額が同額

役員報酬は通常は毎月定額を支給する必要があります。
このルールを知らないと、毎月損金とならない役員報酬を支給することになってしまいますので、もし知らない方は必ず次の記事をチェックしてください!

弁護士 元国税税理士

4-2-2 事前確定届出給与

法人税法では、役員賞与を自由な時期に自由な額を支給するということができません。

例えば、決算期末間際になって利益が出ているので、利益を圧縮する目的で役員賞与を支給する、なんてことをするとその役員賞与の全額が損金にならないということになります。

この規定を知らないと役員賞与で所得税を支払った上に、法人税は一切安くならないという恐怖の事態に陥ります。

そうならないために、役員賞与を損金に算入するためにどうしたらいいのでしょうか?

それは、税務署に一定期間内に賞与を支給するという届出を提出する必要があります。

届出を出さなかったり、届出どおりに支給しない場合には、その全額が損金に算入されないというたいへんな事態になります。

ただし、この規定は同族会社に該当する法人のみに適用されますので、例えば非同族会社で定期給与を支給しない役員に対して所定の時期に数回支給する給与などは損金に算入されます。

事前に届出をして支給される賞与を法人税法では「事前確定届出給与」と呼んでいます。
事前確定届出給与は損金に算入されます。裏を返せば事前に届出を出していないのに役員賞与を支給するとその金額が損金不算入になります。

事前確定届出給与については、以下の記事で詳しく解説してますので、詳しい規定についてはこちらをご覧ください。

弁護士 元国税税理士

4-2-3 交際費の損金不算入

法人税法上の交際費は次の金額が損金不算入になります。

⑴ 期末の資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人は次のいずれかの金額

  1. 年間800万円を超える金額
  2. 飲食その他これに類する行為のために要する費用の合計の50%の金額を超える部分の金額

⑵ 期末の資本金の額又は出資金の額が1億円超の法人は次のいずれかの金額

飲食その他これに類する行為のために要する費用の合計の50%の金額を超える部分の金額

ただし、資本金の額又は出資金の額が100億円超の法人は全額が損金不算入。

また、法人税法上の交際費は、会計上の交際費よりも範囲が広く、帳簿上交際費に経理していなくても法人税法上の交際費に該当し、損金不算入となるケースもあります。

詳しくは次の国税庁のHPの解説をご覧ください。

No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算

次の記事では、交際費の損金不算入とは?から法人税の申告書である別表15でどのように交際費の損金不算入額を計算するかまでをわかりやすく解説しています。

弁護士 元国税税理士

別表15とは?交際費の損金算入から書き方まで0から元国税調査官が解説!

4-2-4 一定の税金等(租税公課)の損金不算入 + 損金算入となる税金等の具体例

国や地方自治体に納める税金等(租税公課)のうち一定のものは損金に算入できません。
その例を確認しましょう。

一定の税金等(租税公課)の損金不算入の具体例

損金の額に算入されない主な税金は次のとおりです。

損金不算入となる税金等

  • 法人税、地方法人税、都道府県民税および市町村民税の本税
  • 加算税、加算金、延滞税、延滞金、過怠税
  • 罰金、科料、過料
  • 法人税額から控除する所得税、復興特別所得税及び外国法人税

2と3は、罰則として支払っているものが損金になって税金が減るということは、国や地方公共団体が税金を一部肩代わりしていることになるので損金不算入です。

1と4は、税金を計算する上で損金になるのは望ましくないものなので、損金不算入となっています。

税金を計算するのに、前期に支払った税金を費用にしてしまったら循環を起こしてしまって正しい税金の額を計算できませんよね。

弁護士 元国税税理士
一定の税金等(租税公課)の損金算入の具体例

損金不算入の具体例で法人税や地方法人税、都道府県民税、市町村民税等の税金を挙げました。そうすると他の税金も全て損金不算入になるのかというとそうではありません。

地方税の中で頻出する事業税が損金に算入される代表格です。

損金に算入される租税公課の具体例

  • 事業所税
  • 酒税
  • 不動産取得税
  • 自動車税
  • 固定資産税
  • ゴルフ場利用税
  • 軽油取引税
  • 法人税から控除しない所得税

詳しくは次の国税庁のHPの解説をご覧ください。

No.5300 損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期


5 損金経理とは?

損金経理とは

 

法人税法では、「損金経理」という言葉があります。このこと自体は大事なことなのですが、実務では、通常は自動的にできていることなので、あまり意識することはありません。普通はみなさんできていることです。
「損金」という言葉の解説をここまでしてきましたので、一応「損金経理」についても触れておきたいと思います。
興味のある方だけ目を通してもらえればと思います。

弁護士 元国税税理士

5-1 損金経理とは?

損金経理とは
損金経理とは、法人が株主総会の承認等を受けて確定した決算の中で、費用又は損失として経理することをいいます。(法人税法第2条第25号

つまり、一言で言えば、「損金経理とは、決算で費用または損失として経理されていること」をいいます。

弁護士 元国税税理士
説明する会社員 新米社長

とっても普通のことですね!

つまり、出来上がった決算書に費用か損失で経理されていれば「損金経理」されていると言っていいということですね。

とっても簡単ですね!

 

損金経理は会社経理の現場では意識しない
「損金経理」を会社経理の現場で意識することはないし、その必要もない。
なぜなら、費用や損失に計上していれば、それは損金経理がされていることになるから。

5-2 損金経理の重要性

では、なぜ「損金経理」などという用語が存在するのでしょうか。

損金経理の重要性
損金経理が重要な理由:損金算入が認められるために「損金経理」が要件になっている場合があるため。

「損金経理」が重要である理由は、損金経理を要件として損金算入が認められる規定があるためです。

そもそも損金に算入する方法は2パターンあります。

5-2-1 損金に算入する2つのパターン

損金は、決算で費用として計上されているものをまず損金に算入して、その中から損金に認められないものを損金不算入にすると解説しました。
その損金に算入する方法が以下の2つあります。

損金に算入する方法
決算調整:決算書で損金経理をする方法
申告調整:申告書で減算処理する方法

1つ目の「決算調整」は、すでに解説した決算で費用または損失に経理する「損金経理」をして損金に算入する方法です。

2つ目の「申告調整」は、決算書では費用または損失に計上していないが、申告書で損金に算入する方法です。

これは、具体的には別表4という申告書類で所得金額から減算することになります。

これまでも損金不算入という話をしてきましたが、損金不算入は決算書に載るわけではなく、同様に法人税の申告書類の1つである別表4というもので所得金額に加算します。

別表4での加算減算 役員給与の損金不算入例

この別表4の「当期利益又は当期欠損の額1」欄に損益計算書の税引後当期純利益(例では1,379,700)が入り、「加算」欄に損金不算入の金額を記載して所得金額に加算し、「減算」欄で損金に算入して所得金額から減算するという方法で、申告調整を行います。

税務調整で所得金額を算出するイメージ

収益 ー 費用 = 当期純利益 + 損金不算入額 ー 損金算入額 = 所得金額

5-2-2 損金経理が要件となる損金算入の例

決算書に予め反映させていることで損金に算入される方法と、決算書の後に申告書の段階で損金に算入する方法の2つあり、1つ目の決算調整で損金に算入するためには損金経理が要件となっています

損金経理が損金算入の要件ということは、費用または損失として損益計算書に計上されていることで、損金に算入されるということです。

説明する会社員 新米社長

これは、当たり前のことだから特に「損金経理」を意識する必要はないと言っていたところですね。

そうです。
通常は気にしなくても自然と費用にしていれば損金に算入されるので特に気にすることはないのですが、会計にはないルールで法人税の規定で認められるもので、それが損金経理が要件になっているものもあったりします。

弁護士 元国税税理士

損金経理が要件として法人税の独自ルールが採用されるものの例を見てみましょう。

損金経理を要件に損金に算入することができる法人税の独自ルール
  • 少額の減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
  • 減価償却資産の償却費
  • 繰延資産の償却費
  • 貸倒引当金の繰入額
  • 一括償却資産の償却費
  • 少額の繰延資産の支出費用
  • 交換により取得した資産の圧縮額

例えば、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入の特例を例に見てみましょう。

少額の減価償却資産の取得価額の損金算入の特例は、中小企業者のみ適用できる特例で、30万円未満の資産のうち、その購入代金の合計金額が300万円に達するまでの金額を、その資産の使用を開始した事業年度に全額費用として計上することができる制度です。

例えばパソコンを28万円で取得したとしましょう。
通常は、4年かけて減価償却することになります。しかしながら、この特例を使えば、28万円を減価償却することなく、購入した年度に全額費用とすることができます。
ただし、これが認められるのは、消耗品費等で全額を費用処理(損金経理)している必要があります。つまり、その全額を損金経理することで初めて全額が損金として認められます。

後から気づいて申告書の別表4で減算することが認められません。

別の例をもう1つ挙げてみます。

減価償却費も、損金経理を要件として損金に算入されます。

決算の段階で減価償却費を計上しないということも認められます。個人事業主の場合は、減価償却は強制なのでこのようなことは認められませんが、法人税では認められます。

損金経理が要件なので、申告書で減算(損金に算入)するということは認められません。

したがって、当初決算では減価償却費を計上していない法人が、税務調査を受けて売上の計上漏れが見つかって所得金額が増えることになったからといって、やっぱり減価償却費を計上することはできません。
なぜなら減価償却費を損金に算入するには損金経理が要件となっているからで、決算の段階で損金経理されていないので、後から損金に算入することはできないからです。

5-2-3 決算調整と申告調整の主な例

最後に、参考までに決算調整と申告調整の具体例を挙げておきたいと思います。

決算調整申告調整
  1. 減価償却資産の償却費
  2. 繰延資産の償却費
  3. 圧縮記帳の圧縮損
  4. 引当金への繰入額
  • 受取配当等の益金不算入
  • 外国子会社から受ける配当等の益金不算入
  • 所得税額の控除
  • 資産の評価益の益金不算入
  • 還付金等の益金不算入
  • 資産の評価損の損金不算入
  • 役員給与の損金不算入
  • 過大な使用人給与の損金不算入
  • 寄附金の損金不算入
  • 法人税額等の損金不算入
  • 法人税から控除する所得税額の損金不算入
  • 不正行為等に関係する費用等の損金不算入
  • 繰越欠損金
  • 減価償却費の償却超過額、引当金の繰入限度超過額等
  • 交際費等の損金不算入
説明する会社員 新米社長

あのー、所得金額の計算で損金の説明は詳しくしてもらったのですが、益金について説明がなかったのですが…

「益金」は、損金とは逆に法人税法上の利益となる金額です。所得の計算上加算される金額です。

損金が分かっていれば、益金も容易に想像がつくと思います。

会計では利益になるものも法人税法上は利益にならない場合があるということです。それを益金不算入と呼ぶわけですが、益金不算入の規定は損金不算入の規定に比べれば微々たるものです。そのため、損金不算入を押さえてしまえば法人税の基本的考え方の一番大事な点を押さえたと言えるのです。

実務では、損金算入と損金不算入は必須の知識で押さえておかなければなりませんが、益金については、全然意識したことがないという会社も少なくなく、重要度がかなり低いです。

比較的よくある例としては、株式投資などをしていれば、受取配当等の益金不算入が関係します。税金が還付される場合は、益金不算入になります。

益金については、関係した時に調べるというスタンスでよいと思いますよ!

弁護士 元国税税理士
小規模法人向けクラウド会計ソフト全力会計バナー

6 損金のまとめ

損金まとめ

「損金」という言葉と「損金算入」「損金不算入」という言葉が出てきました。

「損金」という言葉が大切なのは、「損金不算入」という法人税独特の考え方があるからです。

要するに押さえるべきポイントは次のたった2つです。

  1. 会計では費用となるものが法人税法で費用にならないことがある。
  2. それを損金不算入と呼ぶ。

この二つの点を押さえれば法人税独特の法人税の基本的考え方をほぼ押さえることができたと言えると思います。

損金・益金の考え方を知っていると法人税の書籍や記事がかなり頭に入って気安くなります。これであなたも法人税の専門家の第一歩を踏み出したと言っても過言ではありません。

知識0でも自分でできる!法人税申告書作成ソフト「全力法人税」

中小企業向け法人税申告書作成ソフトの特徴

元国税・税理士が作った
・登録ユーザー25,000社を突破
・クラウド法人税ソフトで最安値
・法人税の知識不要で誰でもできる
無料でほぼすべての機能を利用できる
 (一部の申告書類の出力を除く)

クラウド税務ソフトで初めて自力申告を可能にした元祖「全力法人税」であなたも税理士なしで法人税の申告書をかんたんに作成できます!

 

無料で試せる!(無期限)

コメント

全力法人税おすすめスクエア
法人税申告書を自力で完成できる
クラウド税務ソフト「全力法人税」