
さて、法人の設立登記もできたぞ!
次に役員報酬をどうしようかなぁ?
とりあえずその月の稼ぎによってその都度決めればいいかな。
うん、そうしよう!
新米さん、それはとても危険でーす!!
中小企業の役員報酬は、毎月同額で支給する定期同額給与か、毎月支給でない場合は、賞与として事前に税務署に届出を提出しないと損金に算入されない!という知らないと大損のルールがあるんですよ!
損金?
算入?
どういう意味でしょう?
フリーランスの時はそんな言葉聞いたことありませんでしたよ。
法人の経理を税理士に頼らず自力でやりたいなら「損金」「損金算入」「損金不算入」というワードは避けては通れません!
逆にこのワードさえ理解してしまえば、法人特有のルール、例えば「定期同額給与」「事前確定届出給与」「交際費等の損金不算入」「減価償却費の償却超過額」といった、一見すると難解なルールもすっと頭に入ってくるようになるでしょう。
この記事では、法人税の超基本「損金とは」を法人税の知識を全く知らない方向けにどこよりもわかりやすく、簡単に解説していきますので、必ず理解できます!
「損金」や「損金不算入」というワードを理解して、法人税を得意にしてしまいましょう!
この記事の内容を動画でも解説しています。動画の方がお好きな方はこちらをご覧ください。
1 損金とは

法人税法上も
費用??経費??
どういうことでしょう??
このことを理解するために、次のようなステップを踏んで解説します。
「損金」を一言では説明できませんので、一つずつ理解していってください。そんなに難しい話ではありませんので、絶対に理解できますよ!
1-1 法人税額はどうやって計算されるのか?
法人税の税額は次の算式で計算します。
❷ 所得金額 × 税率 = 法人税額
具体例を使って実際に計算してみましょう。
❶ 所得金額を計算
1,000万円(益金) ー 800万円(損金) = 200万円(所得金額)
❷ 法人税額を計算
200万円(所得金額)× 20%(税率) = 40万円(法人税額)
損金もわかっていないうちに益金という謎ワードまで出てきて謎が深まってしまいましたー。
益金と損金は次で詳しく解説するので大丈夫ですよ!
ここでは以下の2点を覚えてください。
- 所得金額に税率をかけて法人税を算出する
- 所得金額は「益金 ー 損金」で計算される
1-2 所得金額はどうやって計算されるのか?
法人税額は、所得金額 × 税率という算式で求められます。
この税額決定の元になる所得金額は、以下の算式で算出されると解説しました。
益金 ー 損金 = 所得金額
さて、それでは、この税額決定に大きな影響を及ぼす益金と損金とは何なのかを解説します。
ここからが本番です。
1-2-1 所得金額と利益はほとんど同じ意味
益金 ー 損金 = 所得金額
これはほとんど次の式と同じ意味です。
収益 ー 費用 = 利益

収益から費用を差し引いて利益を出して、その利益に税率をかけて法人税を計算するというのなら理解できますよ!
利益が多ければ、その分税金が多くなり、利益が少なければ、その分税金が少なくなる。利益がなければ税金はなし。これはよくわかります。
これと同じと考えていいのですか?
税金の計算の仕方の基本は、その考え方でOKです。
ただし、両者には、少しだけ違うところがあります。
1-2-2 費用(経費)と損金の違い
今回のテーマは「損金とは」なので、損金と費用(経費)の違いを解説します。
基本的には、法人税の税額計算は、「収益ー費用=利益」(利益を計算して)「利益×税率=法人税額」(利益から税額を計算する)でよいのですが、法人税法では、利益を少なく操作して法人税額を減らされては困るという考えがあるために、会社計算(企業会計)では費用になっても、法人税法では費用と認めないものを決めています。
費用とは認められないものの代表例が、毎月同額に支給しない役員報酬や、事前に税務署に届けていない役員賞与です。
これらのものは、いくら以下のように会社計算で費用処理していても、法人税法では所得金額の計算で差し引くことができません。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 役員報酬 | 1,000,000 | 普通預金 | 1,000,000 |
会社計算(企業会計)では、費用として処理できるが、法人税法では、費用と認められないものがあるため、「費用」という言葉と区別する必要があるため、法人税法では「損金」という名前をつけて「収益ー費用=利益」ではなく、「益金ー損金=所得金額」としたわけです。
益金も同様です。会社計算では収益と認められるものも法人税法では収益と認められないものがあります。そのため、会社計算の「収益」という言葉と区別するために「益金」という名前をつけています。
2 損金不算入とは

会社計算(企業会計)では費用として処理されているが、法人税法ではそれを認めないことを「損金不算入」と呼びます。
ここまでの話を図解でまとめてみます。

この例では、会社の損益計算書には費用は合計で850万円が計上されているも、法人税法では、そのうち50万円は損金に算入されないものがあるため、所得金額から差し引ける損金の額は850万円-50万円で800万円に減っています。
別の例でもう少し詳しく説明します。
法人税の独自ルールで税務署に事前に届出ていない賞与は損金に認めないというルールがあります。
逆にいうと税務署に事前に届け出ている賞与だけ損金に認められます。これを「事前届出給与」と呼びます。
新米さんのように、賞与を利益が出たから支給したとします。
これは事前に税務署に届けでいないため損金と認められず、損金不算入になります。
そうしたらどうなるのでしょう?
| 会社計算(企業会計) | 法人税法 |
|---|---|
| 収益:1,000万円 | 益金:1,000万円 |
| 費用:800万円 (賞与100万円含む) | 損金:700万円 (費用800万円ー賞与100万円) |
| 利益:200万円 | 所得金額:300万円 |
事前に届け出ていないので、その100万円の賞与は損金に認めない!
だから損金は費用よりも100万円少なくなって損金は700万円だ!
ひえぇぇ
お許しを〜
賞与100万円は事前に届けられた賞与(事前確定届出給与)ではないので、損金に算入されない、つまり損金不算入の金額となります。したがって、損金は、会社計算の費用800万円のうち賞与分100万円を除いた700万円になります。それにより、所得金額も100万円増えて、その分税金も増えるという算段です。
おお、なんてことだ…
恐怖…
でも損金の意味はわかってきました。
3 損金算入とは

損金不算入の反対概念である損金算入の意味も確認しておきましょう。
「損金算入」とは、簡単にいうと、法人税法で「損金」に認められていることを意味します。

画像の例では、会社計算の費用850万円のうち、800万円は損金に算入されています。
損金不算入額が50万円です。
なるほど!
「損金」「損金算入」「損金不算入」がわかりました!
「損金」とは、法人税法上の費用のことで、会社計算の費用と区別するために「損金」という名前がついている。
会社計算のうちで損金と認められるものを「損金算入」と呼んで、会社計算では費用でも、法人税法の所得の計算で損金に認められないものを「損金不算入」と呼ぶのですね!
その理解で大丈夫です!
厳密には、会社計算のうちで損金と認められるものだけが「損金算入」ではありません。
減価償却認容額のようにその年度で費用としていなくても損金と認められる場合もあります。ただ、このようなケースは中小企業の実務ではほとんどお目にしないので、そういうレアケースが出てきた時に覚えればいいと思います。
ここでは、その理解でOKです!
ここまでの話をまとめます。
❷ 「所得金額 = 益金 ー 損金」は会社計算(企業会計)の「利益 = 収益 ー 費用」とほとんど同じ
❸ 会社が費用にしたすべてを法人税法では認められない部分があるので、便宜的に「費用」と区分するために「損金」とした。
❹ 会社計算の費用のうち認められない金額を「損金不算入」の金額として、認められる金額を「損金算入」の金額としている。
会社計算の費用はほとんどが損金となるが、一部損金不算入となるものがあると理解しよう!
「損金」とは、「損金不算入」とは、「損金算入」とは、という概念的な理解はここまでを理解していれば完璧です!
イメージは、バッチリ理解できたと思います!
ここからは、少し突っ込んだ話をします。
個別論点を話していきたいと思います。
「損金」とは、「損金不算入」とは、「損金算入」とはを理解したいという方はここまでのところで良いと思います。
これ以降は、さらっと読んでもらって、また実務で実際にぶつかった時に戻ってきて読んでもらった方がわかりやすいと思います。
わかりました!
私は頑張ったので、一旦失礼します。
コラム「なぜ利益に税率をかけて税金を算出するのではなく、「益金ー損金=所得金額」から税金を算出するのか?」
法人税法と企業会計はその目的が違う!
実は、法人税法と企業会計ではその目的が違います。
法人税法の規定は、課税の公平や適正な税負担等を目的として定められています。
企業会計は正しい経営成績と財産状態を開示することを目的としています。
目的が違うからといって企業会計の原則に従って日々経理してきた利益と法人税法が規定する所得金額が全然違うものだとしたら2つ帳簿をつけなくてはならずとてもたいへんです。
したがって法人税法は基本的には企業会計に基づいて算出された利益を採用するものとしています。法人税法の規定では益金と損金は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」によって計算されるものとしています。(法人税法第22条第4項)
基本的には企業会計の利益を法人税の所得計算のベースにするんだけど、それをそのまま当期純利益=法人税法の所得金額にはしないよという作りになっています。
少しわかりづらいと思いますので例を出して考えてみることにしましょう。
ある会社が決算期末が近づいてきて企業会計に基づいた利益を試算しました。利益が大きく出ることが予想されました。このままでは法人税を多く課せられてしまうと考え、決算期末に役員に賞与を支給して法人税を少なくしようと考えました。
これは企業会計上は何ら問題がありません。しかしながら法人税法では、利益を調整して法人税を少なくされることを嫌います。
そのため役員賞与に法人税法で規定を設けて、損金にするのに条件をつけよう、という考え方が出てくるわけです。それはずるい、不公平だ、だから規制しようということです。
会計上は費用だけど、法人税法上は費用(損金)にはしないぞ、となるわけです。(ズルをしていないものは、企業会計で計算したものでいいよ。というスタンスです。)
それでは、続いて法人税法で損金不算入となる具体例を紹介します。
4 損金不算入となる法人税の独自ルール

損金不算入とは、会社計算(企業会計)では費用処理していても、法人税額の計算上は費用と認めず、法人税額計算の元となる「所得金額=益金ー損金」の損金に認めないというものでした。
4-1 損金不算入となる具体例
その会社計算(企業会計)では、費用処理されていても法人税法では認められず損金不算入となる具体的な項目を例示します。
| 会社計算の勘定科目 | 損金不算入のルール |
|---|---|
| 役員報酬 | ・定期同額給与となっていない役員報酬は損金不算入 ・不相当に過大な役員給与の損金不算入 |
| 役員賞与 | 事前確定届出給与以外の賞与は損金不算入 |
| 給料手当 | 役員と特殊関係にある使用人に支給する不相当に過大な給与の損金不算入 |
| 交際費 | 税務上の交際費等の損金不算入 |
| 減価償却費 | 減価償却費の償却超過額 |
| 貸倒引当金繰入額 | 引当金の繰入限度超過額 |
| 寄附金 | 寄附金の損金不算入 |
| 租税公課 | 延滞税、加算税、過怠税、延滞税、加算金、延滞金、交通反則金等の地方自治体が課する罰金や過料等の損金不算入 |
| 法人税等 | 法人税、地方法人税、都道府県民税、市町村民税、法人税から控除する所得税額、法人税から控除する外国税の損金不算入 |
これ以外にも損金不算入となる事項はありますが、中小企業が実務で遭遇する損金不算入の代表例を挙げました。
4-2 損金不算入の代表例の解説
法人税法で損金不算入となるルールの中で特に注意しなければならない事項をピックアップしてその概要を解説します。
4-2-1 定期同額給与
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