法人の青色申告とは?全法人の99%が採用する節税メリットがある制度|元国税・税理士が徹底解説!

法人の青色申告とは?全法人の99が採用する節税メリットがある制度|元国税・税理士が徹底解説!

法人の青色申告って難しいんじゃないかと思っていませんか?

そんな方に朗報です。

実は、令和2年の国税庁の統計で、国内の全法人のうち99.2%が青色申告という発表がされています。

令和2年国税庁標本調査結果 青色申告

国税庁令和2年会社標本調査から抜粋)

99.2%もの法人が青色申告になっているものが難しいでしょうか?

そうです、青色申告法人になることは難しいことではありません。もちろんあなたの法人もこの記事のとおりに手続きを進めれば当然青色申告の承認を得ることができます。

そしてこれだけ多くの法人が青色申告するのは、簡単であるという理由以外にも、青色申告するメリットがとても大きいという理由があります。

是非元国税調査官で税理士の私が解説するこの記事を読んで、手続きだけでなく、青色申告法人のメリットや青色申告となるための要件、そして取り消しとなる事由等法人の青色申告について必要な事項を余すところなく、しかもわかりやすく解説しておりますので、是非法人の青色申告をマスターしてください。


目次

1 法人の青色申告とは

法人の青色申告とは

法人の青色申告とはどのような制度なのか、というイメージを持てるよう冒頭でその概要から説明していきます。

1-1 法人の青色申告の概要

法人の青色申告とは、複式簿記に基づいて決算を行うことで、白色申告と比べて節税面で大きなメリットがある制度です。

税務署に確定申告を提出するにあたって、申告には青色申告と白色申告の2種類が存在します。
法人でなく個人では、毎年3月15日までに確定申告する所得税の申告に青色申告があることはよく知られていますが、法人にも青色申告が存在します。

法人は、会計期間が終了したら、決算を確定し、会計期間終了から原則2ヶ月以内に法人税の確定申告書を所轄の税務署に提出する必要があります。

複式簿記に基づいて決算を行うのは会計ソフトを使用していれば自ずとそうなりますし、税務署への手続きも簡単です。
白色申告と比較して労力としては大きく変わらないにもかかわらず大きなメリットが得られるので、青色申告は、法人を設立したら必ず行うべき手続きだ

と声を大にして言います。

1-2 個人の青色申告と法人の青色申告との違い

個人事業主から法人成りしたケースでよくある間違いがありますので、ここで確認しておきます。

よくある間違い

  • 10万円控除や65万円控除はない
  • 青色申告決算書という様式はない

所得税の青色申告には10万円控除や65万円控除という特典がありますが、法人にはありません。
また個人事業主が青色申告の場合は、「収支内訳書」ではなく「青色申告決算書」を提出する必要がありますが、法人に「青色申告決算書」というものはありません。

個人事業主が青色申告の場合は、青色申告決算書を提出する必要があります。

所得税の青色申告決算書

青色申告決算書用式

 

 

 

 

 

所得税の場合は、青色申告は青色申告決算書を提出し、白色申告は収支内訳書を提出しますが、法人の場合は、様式は同じで、青色申告と白色申告の区別は、下の画像のとおり法人税の確定申告書の表紙的な意味合いのある「別表1」という書類の右上の表示で行います。

法人の青色申告書と白色申告書の違い

このように所得税の場合は、青色申告と白色申告で様式に大きな違いがありますが、法人税の場合は、様式自体に大きな違いはありません。

個人事業主であった方が、法人の青色申告にあるのではないかと思ってしまう点について確認したところで、これから法人の青色申告の本題に入っていきたいと思います。

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2 青色申告法人の4大メリット

青色申告法人の4大メリット

冒頭で、全法人のうち実に99.2%が青色申告であることをお伝えしました。

なぜ法人のほとんどが青色申告するのでしょうか。

それはやはり前述のとおり、青色申告法人になると、多くの場合、それほどの負担なくかなりの節税効果が得られるからです。

それでは青色申告法人となるメリットからみていくことにしましょう。

どの規模の法人にも関係する青色申告法人の主なメリットとしては、以下の4つが挙げられます。

法人の青色申告の4大メリット
  1. 欠損金(赤字)を最長10年間繰り越せる
  2. 欠損金の繰戻し還付が受けられる
  3. 30万円未満の少額減価償却資産の取得価額の全額を損金算入できる
  4. 推計による更正又は決定がされない

それでは、この4つのメリットについて、詳しくみていきます。

2−1 欠損金(赤字)を最長10年間繰り越せる

この欠損金の繰越しが何にも増して青色申告のメリットの中で節税面で最大のインパクトがあります。このメリットのためだけでも青色申告をするべきです。

欠損金の繰り越しとは大まかに言うと、赤字の繰り越しです。

欠損金の繰越し制度を具体例を使って説明します。

青色申告法人と白色申告法人で同じ利益を稼いだ場合の税金を考えてみます。

下の表を見てください。

白色申告法人のケース】

会計年度第1期第2期
利益△100200
課税所得 200
税金(税率30%)60

青色申告法人のケース】

会計年度第1期第2期
利益△100200
繰越欠損金 △100
課税所得 100
税金(税率30%)30

納める税金が白色申告法人が60で青色申告法人が30となり、青色申告法人は白色申告法人に比べ税金が半分になっています。

両者とも決算後の最終の利益が第1期は100の赤字となり、第2期は200の黒字です。

まず白色申告法人をみてみましょう。

第1期は利益がないので、税金も0です。

第2期は利益が200出ましたので、それに30%を乗じて税金を60納付しています。

200 × 30% = 60

次に青色申告法人を見てみましょう。

第1期は利益がないので、税金も0です。

青色申告法人の場合は、赤字100を繰り越すことができるので、繰越欠損金として100を次の決算期に繰り越します。

第2期は、利益は200ですが、繰越欠損金100がありますので、これを利益から差し引き、課税所得※が100になります。この100に30%を乗じて納める税金が30になります。

※課税所得:税率を乗じるベースとなる金額

100 × 30% = 30

この例では白色申告法人(60)と青色申告法人(30)との税金の差が倍違ってきています。

このように黒字となっている決算期以前に赤字の決算があればその赤字を繰り越して黒字から差し引くことができるのが欠損金です。これを青色繰越欠損金と呼びます。

青色繰越欠損金があるとないとでは、納める税金にかなりの差が生じます。

この一つのメリットのためだけでも、青色申告法人にならない手はないということを理解いただけると思います。

なお、赤字が発生した会計年度に青色申告法人であれば、この青色繰越欠損金を最長10年間※繰り越すことができます。

※平成20年4月1日以後に終了した事業年度に生じた欠損金は9年間。平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年間。

青色申告法人の時に生じた欠損金は、次の年度が白色申告であったとしてもなくなったりせず、欠損が生じた会計年度が青色申告であれば、その後白色申告であったとしても青色繰越欠損金として最長10年繰り越すことができます。

繰越欠損金制度については、次の記事で詳しく解説しています。

2−2 欠損金の繰戻し還付が受けられる

青色申告法人のメリット2つ目は繰戻し還付制度です。

繰戻し還付制度とは、簡単にいうと、法人税を納めた次の年度が赤字だったらその赤字額に対応した前期に納めた金額が還付されるという制度です。

前期は黒字で納税したけど、今期は赤字だった。悪いから前期の税金お返しします。というイメージです。

下の表をご覧ください。わかりやすいように大雑把な計算を例に説明します。

会計年度第1期第2期
所得金額100△80
納める税金20 
還付税金 16

第1期に100の利益が出て20の税金を納め、翌年度は80の赤字だった場合

20 × 80/100 = 16

ざっとこのような計算式で還付金を求め、第1期、第2期ともに青色申告の場合に税務署に請求することができるのです。

なお、欠損金の繰戻し還付は法人税にのみ存在する制度なので、法人住民税は翌年度以降で還付法人税分を課税標準から控除する方法をとります。

欠損金の繰越しと繰戻し還付の違い
    • 欠損金の繰越し控除の特徴:赤字が出た場合、将来に渡って税金を減らす
    • 繰戻し還付請求の特徴:黒字決算の直後の赤字決算ですぐに還付金を受け取ることができる
    欠損金の繰越し控除に比べ、繰り戻し還付の方が、その資金をすぐに事業に投下できるという点でよりメリットが大きいといえます。

    2-3 30万円未満の少額減価償却資産の取得価額の全額を損金算入できる

    資本金1億円以下の青色申告法人(一部例外あり)であれば30万円未満の固定資産を減価償却をすることなく全額費用とすることができます。(全額費用は、会計期間1年の中で300万円が限度)

    具体例を使って解説します。

     通常の減価償却を適用少額減価償却資産の特例を適用
    償却費差引前利益280,000円280,000円
    償却費140,000円2倍)280,000円
    所得金額140,000円0円
    税額42,000円0円

    上の例のようにある法人が28万円のパソコンを通常の耐用年数5年で減価償却を行い、今年度の所得が140,000円だったとします。

    中小企業を例に実効税率が法人税や地方税を含め30%だとすると、140,000×30%で42,000円納付することになります。

    しかし、140,000円の減価償却費のかわりに280,000を全額費用とした場合、140,000円費用が増えますので、所得金額は0になり、税金も0になります。つまり、42,000円節税したことになります。

    少額減価償却資産の数が、10あったとすればいくらの節税になるでしょう? このようにこの規定は費用の先出し効果があり、節税効果があります。

    30万円未満の少額減価償却資産の特例については、次の記事で詳しく解説しています。

    どの規模の法人でも享受できる節税メリットを3つ解説しました。この3つに比べれば利用できる法人は限定的ですが、比較的利用できる機会のある節税メリットを参考までに2つ挙げておきます。

    その他の節税メリット

    次の2つの規定は要件が厳しいので適用できる会社は限定的ですが、該当すれば節税効果は少なくありません。

    2−3−1 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除

    新品の機械及び装置などを取得し又は製作して国内にある製造業、建設業などの指定の事業の用に供した場合に、基準取得価額の30%を普通償却額に上乗せできる特別償却又は基準取得価額の7%の税額控除を認めるという制度。

    詳しくは以下の国税庁の解説を参照

    中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除

    2−3−2 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除

    国内の新規雇用者に対して給与を支給する場合に、所定の適用要件を満たすときは、その事業年度の控除対象新規雇用者給与等支給額の15%相当額の法人税額の特別控除ができる制度。

    詳しくは以下の国税庁の解説を参照

    給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(旧:給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の法人税額の特別控除)

     

    続いて4つ目のメリットです。節税とは違う観点で、青色申告法人であると税務調査時にメリットがあります。

    2−4 青色申告法人には推計による更正又は決定はできない

    青色申告の法人は、税務調査の時に、税務調査官に帳簿に基づかない所得計算をされることはないというものです。

    法人税法131条に次のような規定があります。

    税務署長は、内国法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合には、その内国法人の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその内国法人に係る法人税の課税標準または欠損金額を推計して、これをすることができる

    ただし、この推計による更正・決定は青色申告書が提出されている場合にはできないこととなっています

    これはどういうことかというと、調査官が税務調査をしている中で、帳簿の真実性を裏付ける取引書類がない(あるいは提出しない)などの理由で、申告の元となる帳簿が信頼できない場合やそもそも帳簿を確認できない場合などに、法人税の課税標準を推計することができることになっています。しかしながら、それは白色申告法人にのみ適用できるのです。

    余談ですが、帳簿がないや保存すべき証拠書類がないという悪質な場合は後述する青色申告の要件を満たしていないので、青色申告を取り消されて推計されるということは考えられます。

    青色申告で、保存すべき帳簿書類があれば、調査官が勝手に推計計算を採用することはできません。青色申告の場合は、税務調査においてこの点は守られることになります。

     

    以上が青色申告となるメリットになります。青色申告法人になるメリットは白色申告と比較して相当大きいということが理解いただけたと思います。このメリットを知れば青色申告にならない手はないですよね。

    それでは次にこれほどのメリットがある青色申告法人となるにはどうすればいいのでしょうか。

    法人が青色申告になるためには要件があります。どんな法人でもなれるわけではありません。

    ここで「え?どんな法人でもなれるわけではない?難しいのかな?」と思う必要はありません。冒頭であったように99.2%の法人が青色申告法人なわけです。そこから推測するに簡単なはずです。

    そのとおりで要件は簡単で、たった2つしかありません。


    3 青色申告法人になるためのたった2つの要件

    青色申告法人になるためのたった2つの要件

    法人が青色申告になるための要件は、端的に言うと以下の2つしかありません。

    青色申告法人になるための2要件
    1. 法定の帳簿書類を備え付けて取引を記録し、その書類を一定期間保存すること
    2. 税務署に青色申告承認申請書を提出して、あらかじめ承認を受けること

    それぞれ詳しく見ていくことにしましょう。

    3−1 要件1 帳簿書類の備え付けと一定期間の保存

    まずは帳簿書類の備え付けの要件から確認していきましょう。

    3−1−1 帳簿書類の備え付け

    青色申告法人となるためには次に挙げる帳簿を備え付ける必要があります。

    法人の青色申告は次の要件にあった帳簿付けをする

    1. 資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を複式簿記の原則にしたがって、整然と、かつ明瞭に記録し、その記録に基づいて決算を行うこと
    2. 仕訳帳、総勘定元帳その他の必要な帳簿を備え、取引に関する一定事項(法人税法施行規則別表二十に規定する事項)を記載すること
    3. 仕訳帳には、取引の発生順に、取引の年月日、内容、勘定科目及び金額を記載し、総勘定元帳には、その勘定ごとに記載の年月日、相手勘定科目及び金額を記載すること
    4. 棚卸表を作成すること
    5. 一定の科目をもって貸借対照表及び損益計算書を作成すること

    これだけ見ると難しそうに感じるかもしれませんが、上記の1〜3と5は会計ソフトを使っていれば基本的にはこの要件はクリアされると考えて大丈夫です。

    それに加え、在庫を抱える商売をしている場合は、棚卸し表を作成します。

    注意が必要なのは⒉の取引に関する一定事項です。これは法人税法施行規則別表二十に規定する事項を参照して詳しく会計ソフトに入力する必要はあります。

    基本的には「取引の内容と相手先」を確実に仕訳帳の摘要に入力する必要があります。

    青色申告法人が保存しなければならない帳簿書類については、次の記事で詳しく解説していますので、一読してください。

    青色申告と白色申告の帳簿の備え付けでの違い

    申告区分 青色申告白色申告
    記帳の仕方複式簿記複式簿記でなくてもよい
    帳簿の記載事項※
    • 現金、売上、仕入、売掛金、買掛金で日々の合計金額を一括での記載が原則認められない
    • 減価償却資産と繰延資産についてはその種類ごとに区分が必要
    • 現金、売上、仕入、売掛金、買掛金で日々の合計金額を一括での記載が認められる
    • 減価償却資産と繰延資産についてはその種類ごとに区分が不要

    ※その他の事項については、青色申告と白色申告とで記載が必要な事項にほとんど変わりがない。
    繰り返しになりますが、複式簿記は会計ソフトを使用していれば必ずそうなります。現在は簿記を知らなくても使用できる会計ソフトが出てきていますので、そんなに高いハードルではないと思います。

     さらにこれらの帳簿書類を一定期間保存する必要があります。

    3−1−2 帳簿書類の保存

    青色申告・白色申告を問わず法人は、備え付けが必要な帳簿書類を原則7年間保存しなければなりません。
    保存が必要な帳簿書類とは

    青色申告である法人が保存しなければならない帳簿書類は以下のとおりです。

    • 前述の「帳簿の備え付け」で挙げた2〜5の帳簿書類に加え、取引に関して作成されたその他の帳簿
    • 取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書、請求書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し

    青色申告である法人が保存しなければならない帳簿書類について、詳しくはすでに紹介済みの次の記事を参照してください。
    青色申告法人が保存すべき国税関係帳簿書類とは

    (参考)白色申告法人が保存すべき国税関係帳簿書類とは

    要するに会計ソフトで作成した帳簿と受取手形記入帳や支払手形記入帳など、取引に関して作成された帳簿、そして取引の際に取引先との間でやり取りされる書類すべてを取っておくというイメージです。

    例えば、商品を納品するときに、納品書を相手方に交付し、複写の受領書を受け取る場合は手元に残る受領書を保存する。また、請求書を相手方に交付した場合は、通常控えを作成しますのでその控えを保存するといった具合です。

    帳簿書類を保存する期間

    上記帳簿書類は、原則確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要があります。

    原則7年ですが、青色申告の法人で、繰越欠損金がある場合は、最長10年まで保存する必要があります。

    青色申告を提出している場合で、平成20年4月1日以後に終了した事業年度に欠損金がある場合には帳簿書類の保存期間は9年間、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年間とされています。

    言い換えれば青色繰越欠損金が7年より前になければ保存期間は7年ということになります。

    帳簿の保存期間についての詳細は次の記事で解説しています。

    帳簿書類を長期にわたって保存するのは、会社を経営する以上は、常識と考えてください。

    帳簿が正しいかを確認するときに、その元となる資料が何一つなければ、記載されている帳簿の内容が正しいかどうか検証することができません。決算書が正しいという証拠が何一つなければ誰も信用しませんよね。金融機関も信用しません。お金を貸しません。税務署も信用しません。

    というように帳簿書類を保存するのは当然だということはご理解いただけるかと思います。

    3−2 要件2 青色申告承認申請書を事前に提出する

    法人が青色申告になるための2つ目の要件は、

    税務署に青色申告の承認の申請書を事前に提出すること

    事前に申請書を提出するというのがポイントです。事後に申請書を提出しても承認されないというところに注意です。

    青色申告承認申請書の様式を紹介しておきます。

    青色申告の承認申請書の様式サンプル

    青色申告の承認申請書の様式サンプル

    (参考)青色申告の承認申請書様式(国税庁HP)

    3−2−1 青色申告承認申請の手続き

     

    ❶ 青色申告承認申請書を所定の期限内に所轄の税務署に提出する

    ❷ 青色申告を開始する会計期間終了の日までにその申請の却下処分がなかったら承認されている

    青色申告の承認申請の手続きはこのように税務署から承認されたという通知があるわけではありません。

    申請書に正しい内容が記載されていれば、原則承認されないということはありません。

    「申請書を提出して却下されなければ自動的に承認されます」というシステムになっています。

    青色申告の取り消しを受けて間もないなど青色申告の適用を受けられない理由がない限り却下されることはありませんので、事実上提出期限までに申請書を提出すれば晴れて青色申告法人になったということになります。

    繰り返しになりますが、ここで大事なのは、事前に提出することだということを理解してください。

    3−2−2 青色申告承認申請書の提出期限

    事前に提出はわかったと、では具体的にはいつまでに申請書を提出しなければならないのでしょうか。

    原則、次のとおりです。

    申請する対象の会計期間提出期限
    ① 法人を設立した会計期間設立の日以後、3ヶ月を経過した日の前日まで
    ② ①以外の会計期間青色申告の承認を受けようとする会計期間開始の日の前日まで
    ⒈ 法人を設立した会計期間

    設立した年度から青色申告の適用を受けたい場合は、設立の日以後、3ヶ月を経過した日の前日までただし、設立後3ヶ月を経過した日より前に会計年度終了の日が到来する場合は会計年度終了の日の前日まで。

    例えば、12月決算の法人を2021年4月1日に設立した場合なら、2021年6月30日までに提出する必要があります。2021年5月31日が決算の場合は、2021年5月30日になります。

    ⒉ ⒈以外の会計期間

    青色申告の承認を受けようとする会計期間開始の日の前日まで

    例えば2021年4月1日から2022年3月31日の会計期間の申告から青色申告を適用したい場合には、2021年3月31日までに承認を受けなければなりません。

    青色申告の承認申請は、前述のとおり事前に提出していれば、ほぼ承認されます。

    その後税務調査のときに必要な書類を保存していないと指摘されたり、悪質な不正計算を行っていたことが発覚するといった場合や、連続して期限内に申告書を提出しない等の取り消し事由が発覚しない限り青色申告は続いていくことになります。

     

    青色申告のデメリット

    青色申告法人になるためのメリットと手続きが簡単だということを説明してきました。では、青色申告法人のデメリットはあるのか?ということを確認したいと思うかもしれません。

    青色申告法人となる要件として複式簿記による帳簿付け、所定の帳簿書類の備え付けとその保存というものがあります。

    複式簿記による帳簿付けは会計ソフトを使えば自動的にできています。また、帳簿書類の備え付けについては会社経営上なくてはならないものです。

    これのことが面倒だということであれば、青色申告法人のデメリットといえるかもしれません。

    それでも一つ言わせてもらえば、99.2%が青色申告法人なわけですから、みんなやっています。

    青色申告の承認申請書を提出して事前に承認が得られなければ青色申告法人になれないことがわかりましたので、続いてその申請書の書き方について、説明していきます。

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    4 青色申告承認申請書の書き方を記入例を使って解説

    青色申告承認申請書の記入例と書き方 青色申告法人

    4−1 青色申告承認申請書の記載例

    青色申告承認申請書 記載例 青色申告法人

    4−2 青色申告承認申請書の書き方

    ① 代表者の印
    令和3年の新しい様式から代表者印の押印は不要になりました。
    ② 適用する事業年度

    「自」には青色申告書を提出したい事業年度の開始年月日を、「至」にその事業年度の終了年月日を記入します。
    設立1期目から青色申告を適用したい場合は「自」には設立年月日を記入します。

    ③ 次に該当するときには

    記載されている事由に該当があるときは□に✔を付し、指定の年月日を記入します。
    該当がある最も多いケースは、上から2つ目の設立1期目に該当する場合かと思います。その場合は、設立年月日を記入します。

    ④ 帳簿組織の状況
    伝票や各種帳簿から総勘定元帳までの帳簿書類等の種類、形態及び記帳の時期を記入します。
    「左の帳票の形態」欄には、例えば、会計ソフト、3枚複写伝票、ノート、ルーズリーフ、装丁帳簿のように記入し、「記帳の時期」欄には、例えば、毎日、1週間ごと、10日ごと、1月ごとのように記入します。
    ⑥ 税理士が関与している場合におけるその関与度合
    例えば、「総勘定元帳の記帳から一切の事務」、「伝票整理から一切の事務」のように具体的に記入します。
    ⑦ 税理士署名押印

    この書類を税理士が作成した場合は、税理士自ら署名します。 令和3年の新様式からは押印は不要になっています。

    ⑧ ※税務署処理欄
    記入不要です。税務署の職員が使用する欄になります。
    ⑨ 提出日

    提出日は提出期限内に提出できていることを確認する意味で重要です。
    前述した提出期限より前に提出できているかを最後に確認しましょう
    実務ではこの欄は空欄でも、税務署では受領印が押され提出日が入りますし、電子申告では受信した日が記録され、そちらが優先されるので特に問題はありません。

    (参考)次のリンクにある青色申告の承認申請書(PDF/260KB)の2枚目に国税庁解説の記載要領があります。

    青色申告書の承認の申請(国税庁HP)

    4−3 青色申告承認申請書をソフトを使って簡単に作成する

    青色申告承認申請書を無料で簡単に作成するためのツールがありますので、紹介します。

    法人税の知識不要のクラウド税務ソフト「全力法人税」を使用します。

    全力法人税 青色申告法人になるため

    アカウントを作成する必要がありますが、無料で青色申告承認申請書を簡単に作成できます。

    法人税の知識がなくてもかんたんに法人税の申告書が作成できるというものをコンセプトとしたソフトです。かなりの高機能にもかかわらず一部の申告書類の出力を除きすべて無料で利用できます。これまでアカウントの登録数は16,000を超えています。

    元国税調査官・税理士が監修しており、お客様レビューでの高評価数550件越えで信用できます。

    全力法人税レビュー(同族会社の判定がすぐにできる)

    全力法人税レビューページ

    全力法人税では、青色申告承認申請書以外にも法人設立時に必要となる以下の届出を作成できますので、効率的です。

    1. 法人設立届出書(税務署用)
    2. 青色申告の承認申請書
    3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
    4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

    全力法人税を使って届出を作成する方法については以下の記事をご覧ください。

    全力法人税の青色申告承認申請書入力画面

    全力法人税の青色申告承認申請書入力画面

     

    ここまで法人が青色申告になる方法について解説してきました。

    青色申告法人になるのは簡単でした。ただし反対に青色申告を取り消されるケースがありますので、油断は禁物です。

    青色申告を取り消されるケースについても確認しておきましょう。


    5 青色申告が取り消される3つのケース

    青色申告が取り消される3つのケース 青色申告法人

    青色申告が取り消されるのは次の3つのケースに当てはまった場合です。

    1. 帳簿書類の備え付け、記録、保存が法令どおりに行われていない場合
    2. 帳簿書類に取引の全部または一部を隠蔽または仮装して記載し、その他記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由がある場合
    3. 確定申告書を提出期限までに提出しなかった場合

    このケースに当てはまった場合には、その違反している会計期間に遡って取り消されます。

    この3つについて実務ではどうなのかという点も踏まえて詳しく説明します。

    5−1 帳簿備え付け・保存の不備

    青色申告の要件として、法定の帳簿の備え付けと一定期間の帳簿書類の保存が必要になりますが、それが法令どおりに行われていない場合、要件に違反しているわけですので当然に取消しの理由になります。

    しかしながら、元国税で取り消しを行う側だった経験から、実務ではよほど悪質でなければこの理由で取り消されることはありません。注意を受けて今後は適切に行うよう指導されるに止まることが多いです。

    ただ、法律はこのように規定しているので、この理由で取り消されても文句は言えません。

    5−2 帳簿書類の仮装・隠蔽

    架空の請求書を作成して着服したり、売上の記載された書類を隠蔽するなどして法人税を不当に免れていることが発覚した場合、青色申告の取消要因となります。

    しかしながらこの規定も税務署の内部的な指針(法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)3⑴、⑵及び⑸)で500万円以上の不正所得があった場合に取り消しを検討し、一定の要件の法人が今後適正な申告をする旨の申し出を提出されば取り消さないという取り扱いをしていますので、500万円以上の不正計算をしても一発で取り消されることはありません。

    5−3 期限内申告を怠る

    期限内申告を怠った場合は法律上は青色申告が取り消されることになっていますが、これも前述の税務署の内部指針(法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)4)で2事業年度連続して期限内に申告書を提出しない場合に取り消す旨が規定されています。

    取り消される場合も2年目の事業年度から取り消すとされています。

    したがって、1回期限に間に合わなくても取り消されませんし、1度遅れて次の年は期限内、その次の年にまた遅れたとしても取り消されません。

    実務では、税務署は「青色申告の承認の取消通知書」というものを該当の法人に送付して通知します。「いついつの事業年度以後これを取り消したから通知します。」という内容のもので、これを受け取ったから何かしなければいけないものではありません。ただ通知書にあるとおり、該当の事業年度以降は白色申告になります。

    私が税務署で現役の頃は、事業を止めたが精算結了の申告をせず、そのままにしていたりする法人に送付していました。

    青色申告が取り消された場合の再申請

    青色申告を取り消された日から1年間は、青色申告の承認申請をすることができません。(法人税法123条1項三号

    12月決算の会社で,令和3年2月に取消通知を受け取ったケースを考えてみます。

    通知を受け取った日から1年間は申請しても却下されるため、実質令和4年2月までは申請できません。令和4年3月から承認申請が可能となるので、令和4年12月末日までに青色申告承認申請をすれば,令和5年1月から青色申告することができます。

    まとめ

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    6 法人の青色申告まとめ

    法人の青色申告のメリットをここでおさらいします。

    青色申告法人の4大メリット

    1. 欠損金(赤字)を最長10年間繰り越せる
    2. 欠損金の繰戻し還付が受けられる
    3. 30万円未満の少額減価償却資産の取得価額の全額を損金算入できる
    4. 推計による更正又は決定がされない

    この大きなメリットを獲得する要件は決して高いものではありませんでした。

    要件は大きく次の2つのみでした。

    青色申告法人になるための2つの要件

    • 法定の帳簿書類を備え付けて取引を記録し、その書類を一定期間保存すること
    • 税務署に青色申告承認申請書を提出して、あらかじめ承認を受けること

    法定の帳簿書類を備え付けについては、会計ソフトを利用していればそう難しいものではありませんでした。

    このように青色申告となるための手続きと要件のハードルは高くないにもかかわらず、その恩恵は計り知れないので、法人を設立したら青色申告法人になるべきだということは何度も言ってきました。

    国内法人の99%以上が青色申告をしているのです。

    法人を設立したなら、必ず申請することをおすすめします。

    万が一取り消されたとしても一定の期間が経過すれば、また申請することができますので、法人を経営される方は、青色申告にこだわって可能な限り青色申告書を提出するよう努めることがが肝要です。

    (当記事は執筆時時点の法令に基づいています。)

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