
法人税の申告書である別表1とは、いったいどのような性質の書類なのでしょうか。
それは、ずばり!
法人税の申告書の表紙となる別表、それが別表1です。
別表1が、どのような役割を持っているかを端的に表すと次の2つに集約されるでしょう。
- 申告書の表紙としての役割
- 最終的な税額計算を行う役割
つまり、次のことを行うために別表1を作成するのです。
- 法人の基本情報を示すため
- 法人税額の計算をするため
- 地方法人税額を計算するため
別表1は、どのような会社の申告かを示し、そして法人税額をいくら納付するのか、欠損金をいくら繰越すのかといった法人税の申告の最終的な結果を示す役割を持っています。
そして別表1に書かれた内容に基づいて税金を納めたり、還付されたりが行われます。
実際に法人税の別表1を手に取って見てみると、小難しい用語が大量に書いてあり、記載する欄の多かったりと、別表1のどこを見たら何がわかるのか、よくわからない、と言った方や自分で別表1を書いてみようと思ったものの、何を用意して、どこに何を書くのかがわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、別表1は書くところが多く、初めての時はどこに何を書いたらいいかがわかりにくいということは間違いありません。
しかし、一度わかってしまえば、別表1のここを見ればどういう申告内容かが一目でわかるようになります。
また、別表1を書くために必要な書類が揃っていれば、単純な転記や簡単な計算を行うだけで、完成させることができるのです。
この記事を読み終えた頃には、例え初めてであっても、誰でも別表1のことを理解でき、かつ、簡単に作成できるようになっていることと思います。
ぜひ、当記事を参考に、自分の会社の申告をご自身で作成してみてください。
この記事は、中小企業にとって要点を絞って解説を行います。
中小企業に絞ると書く必要のない箇所がいくつも出てきます。それを無視することができるので、より別表1をシンプルに捉えることができ、より簡単に作成できる効果があります。
中小企業が書く箇所はパターンによってだいたい決まっていますので安心してください。
因みに手書きで別表1を書くための所要時間は、必要書類が揃っている状態で約15分から1時間程度であるのに対して、オススメの税務ソフトを使った場合は、会社情報などの基本情報やその他の別表作成に必要な入力が終わっていれば、何もする必要がなく自動で作成されますので、言ってしまえば0秒で別表1を作成することができます。
お急ぎの場合や、とにかく正しい別表1が完成できればよい、というような、書き方を知らずとも最速で別表1を完成させたいという方は、オススメの税務ソフトを使って最速に別表1を完成させる方法を第3章で紹介していますので、そちらに飛んでもらえればと思います。
それでは、早速始めていきましょう。
まずは、別表1の見方から解説していきます。
目次
1 法人税 別表1の見方
こんな思いをしたことはありませんか?
税理士から法人税の申告書を受け取ったが、最初に綴られている別表1を見ても結局いくら納めればいいかわからない。とか
税務ソフトで申告書が出来上がってみたものの、結局いくら納めればわからない、あるいは欠損がちゃんと繰り越されているかわからない。とか
当期の申告で、いくら納付になるのか、いくら還付になるのか、いくら欠損が繰り越されたか、これらを知るためには、真っ先に別表1を見ればわかります。
では実際に別表1のどこを見ればその内容を知ることができるのか?
まずは、この点にフォーカスして、別表1というのはどこを見たら何がわかるのかをわかりやすく解説していきます。
別表1には、(一)(二)(三)と三種類があります。
それぞれ使用する法人により次のようになっています。
別表一(一)……普通法人(特定の医療法人を除く。)、一般社団法人等及び人格のない社団等の分
別表一(二)……公益法人等(一般社団法人等を除く。)及び協同組合等の分
別表一(三)……特定の医療法人の分
当記事で解説するのは、最も一般的で、大多数の企業が作成することになる別表1(一)に絞って解説していきます。この記事で「別表1」という場合は別表1(一)のことを指しているとご理解ください。
また別表1には、「次葉」というものが存在あり、2枚構成となっています。
別表1と別表1次葉は、いずれも法人税及び地方法人税を算出するための申告書です。
そのため、別表1、別表1次葉は二つで一つの書類と考えて差し支えありません。
単純に法人税及び地方法人税を算出するのに、1枚では足りなかったということです。
それでは、別表1及び別表1次葉の記載例をみてしまいましょう。
記載例から全体的なイメージを持ってもれえればと思います。
別表1 記載例
別表1次葉 記載例
いかがでしょうか?
初めて別表1を見た方は、自分の知りたい内容についても、この書面から探すことすら難しいのではないのでしょうか。
これから、別表1のどこを見れば申告内容を理解できるかをわかりやすく解説します。
1-1 納付すべき税額はどこを見たらわかるのか
別表1というのは、税額計算を行う書類です。
別表1のどの部分を見たら納付すべき税額が直ぐにわかるのか。
納付すべき税額は、次の2つの欄を見ることで把握できます。
- 納付すべき法人税は、(16)「差引確定法人税額」欄
- 納付すべき地方法人税は、(44)「差引確定地方法人税額」欄
納付額のトータルは、「16欄 + 44欄」で計算できます。
今回の例で計算すると、50,000 + 8,100 = 58,100
この例では、この金額が確定申告で納付することになる金額であることがわかります。
1-2 還付金額はどこを見たらわかるのか
次に、還付申告になるときに、その還付金額(戻ってくる金額)がいくらになるのか、気になるところですよね。
そもそも、初めて別表1を見た方は、還付申告なのかも解からないはずです。
還付となる金額は、次の2箇所を確認することで把握できます。
- 還付される法人税額は、(28)「この申告による還付金額 計」欄
- 還付される地方法人税額は、(45)「この申告による還付金額」欄
還付となる金額のトータルは、「28欄 + 45欄」で計算できます。
今回の例で計算すると、1,000,000 + 100,000 = 1,100,000
この例では、この金額が確定申告で戻ってくる金額であることがわかります。
1-3 繰越欠損金の当期控除額と翌期に繰越す欠損金の金額はどこを見たらわかるのか
欠損金の当期控除額は、(31)欄を見ることでわかります。
翌期へ繰越す青色欠損金の金額は、(32)欄を見ることでわかります。
わかってしまえばとても簡単ですよね。
(16)「差引確定法人税額」欄と(44)「差引確定地方法人税額」欄に値があれば、納付金額がわかります。
(28)「この申告による還付金額 計」欄と(45)「この申告による還付金額」欄に値があれば、還付金額がわかります。
青色繰越欠損金の金額は、(32)「翌期へ繰り越す欠損金又は災害損失金」欄を確認することでわかります。
このことがわかっていれば、別表1を目にしたときに、自社の確定申告がどのような内容のものなのかをすぐに把握できるでしょう。
2 法人税 別表1の書き方
別表1というのは、申告書の表紙のようなもので、かつ、法人税額と地方法人税税額を算出するものであることは、ご理解いただけたと思います。
続いては、別表1を実際に書いていきたいと思います。
別表1を作成する際は、税額計算を行う書類であるため、実は別表1から書き始めて完成させることはできません。
他の別表を作成し、最後の最後の方で作成される書類です。
一般的な中小企業において、別表1を作成するまでにどれほどの書類が必要になるかを一覧にしました。
下記の表が、法人税申告書の全体のイメージ図となります。
作成する順番で並んでいます。
作成する必要のない書類は飛ばします。
例えば、別表2を作成して、貸倒引当金の計上がなければ、4番目の別表15に飛ぶイメージです。
法人税申告書の作成過程全体を見ると、別表1はかなり後半に出てくることがわかっていただけたと思います。
法人税の申告書の書き方全体を知りたい場合は、次の記事が参考になります。この表もこの記事から抜粋しています。
2-1 別表1を書くための書類を準備する
税務署から申告書類が郵送され、封を開けて最初に目にする別表は、別表1なのですが、別表1から書き始めることはできないのです。
それでは、別表1を書くためにはどの別表が作成されている必要があるのでしょうか。
書類の名称 | 必要性 | 目的 |
---|---|---|
別表4「所得の金額の計算に関する明細書か | 必須 | 1欄「所得金額又は欠損金額」の記入のため |
別表7「欠損金又は災害損失金の損金算入に関する明細書」 | 作成している場合、必要 | 31欄「欠損金又は災害損失金等の当期控除額」及び32欄「翌期へ繰り越す欠損金又は災害損失金等」の記入のため |
別表6(1)「所得税額の控除に関する明細書」 | 作成している場合、必要 | 13欄「控除税額」、17欄から21欄「控除税額の計算」の記入のため |
別表6(6)「法人税の額から控除される特別控除額に関する明細書」 | 作成している場合、必要 | 3欄「法人税額の特別控除額」 |
別表1を書き上げるためには、別表4は必ず必要で、他の3つの別表は、作成している場合は、それを参照します。
⑴ 別表4「所得の金額の計算に関する明細書」 必須
別表4は、税額計算の基になる所得金額を最終的に計算するためのとても重要な別表です。
別表4の記載方法がわからないという場合は、こちらの記事を参考にしてください。
⑵ 別表7「欠損金又は災害損失金の損金算入に関する明細書」 場合によって必要
別表7は、青色繰越欠損金の控除額と繰り越し額を計算する別表です。
当期首に青色繰越欠損金があるか、当期が欠損の場合に作成が必要になります。
別表7の記載方法を知りたいという場合は、こちらの記事をご覧ください。
⑶ 別表6(1)「所得税額の控除に関する明細書」 任意
所得税額控除を適用する場合に必要になる別表です。
※所得税額の控除とは、法人が当期中に支払を受ける利子及び配当等について課された所得税の額について、当期の所得に対する法人税の額からその所得税の額の控除を受ける場合に使用します。
⑷ 別表6(6)「法人税の額から控除される特別控除額に関する明細書」 任意
法人税額の特別控除を適用する場合は、別表6(6)を作成します。
※法人税額の特別控除額とは、産業政策や経済政策のため、租税特別措置法において特別に設けられた税額控除制度です。
例えば、試験研究費の特別控除やエネルギー需給構造改革推進設備等の特別控除などがあります。
詳しくは、国税庁HPを参照にしてください。
特別償却・特別税額控除|国税庁 (nta.go.jp)
別表1を作成するために必要な書類が揃ったら、別表1を実際に書いていきます。
別表1は申告内容によって書き方が多少変わっていきますので、ケース別に次の3つに分けて解説していきます。
- 決算が黒字で、納付税額が発生するケース
- 決算が赤字で、還付金額が発生するケース
- 修正申告をするケース
ケース1と2については、頭からすべてを解説しています。
つまり、知りたいケースを選んでケース2から読み始めてもすべてが解説されています。
したがってご自身が知りたいケースを選んでそこだけ読んでいただくことが可能です。
逆を言えば、ケース1とケース2を通読した場合、重複した解説がありますので、その場合は、飛ばしてもらえるよう記載がありますので、飛ばして読んでいただければと思います。
なお、ケース3については、修正申告特有の部分のみの解説となっています。
それではまず第一に「決算が黒字で、納付税額が発生する」ケースの別表1の書き方から始めていきます。
2-2【ケース1】「黒字法人、納付申告」の別表1の書き方
まず、最初のケースは、黒字法人(所得が発生している法人)で、かつ、納付すべき税額が発生している法人の別表1の記載方法を解説していきます。
別表1には様式が青色申告用と白色申告用の2種類ありますので、自社に対応する別表1を使用します。
今回の例は、青色申告なので、「青色申告」と記載されている別表1を使用します。
次のように5STEPで別表1を作成していきます。
STEP1 | 法人名、納税地などの法人の基本情報を記入する |
---|---|
STEP2 | 別表4「48の①欄」を別表1の「1欄」に記入する |
STEP3 | 別表1と別表1次葉で法人税額の計算を行う |
STEP4 | 別表1と別表1次葉で地方法人税の計算を行う |
STEP5 | その他の記載箇所の記入を行う |
2-2-1 STEP1 法人名、納税地などの法人の基本情報を記入する
税額等の計算に入る前に、別表1は申告書の表紙の役割を果たしますので、法人の基本的な情報を最初に記載します。
① 「法人の住所・法人名・法人番号+代表者名・住所」欄
「納税地(法人の本店所在地)」「法人名」「法人番号(13桁)」「代表者」の氏名(+フリガナ)「代表者住所」を記載します。
② 法人区分
「法人区分」欄の「普通法人(特定の医療法人を除く。)、一般社団法人等、 みなし公益法人等又は人格のない社団等」に〇を付けます。
次の表の⑴〜⑸までの法人に当てはまる場合は、「法人区分」欄の左側に◯を付します。
それ以外の法人は右側に◯を付します。
出典 令和3年版 法人税申告書・地方法人税申告書の記載の手引 P11
今回の例では左側に○を付します。
③ 事業種目
事業種目を記載します。
事業種目は、「建設業」や「小売業」等、簡単に書いても問題ありません。
次の「事業種目・業種番号一覧表」から自社の営む業種に近いものを選んで記載する方法でも構いません。
単体法人における適用額明細書の記載の手引(令和3年4月1日以後終了事業年度分) 事業種目・業種番号一覧表(国税庁)
④ 期末現在の資本金の額又は出資の金額
「期末現在の資本金の額又は出資金の額」欄に、資本金の金額を記載します。
文字どおり株式会社や有限会社の場合は、期末現在の資本金の額を、それ以外の法人で、出資のある場合は、期末現在の出資の金額を記載します。
⑤ 同上が1億円以下の普通法人 のうち中小法人に該当しないもの
当期末における資本金の額・出資金の額が1億円以下(または資本若しくは出資を有しない)普通法人が、次のいずれかの法人に該当する場合には、「非中小法人」を○で囲んで表示します。
⑴ 相互会社
⑵ 次のいずれかの法人(以下「大法人」といいます。)との間に、これらの大法人による完全支配関係がある法人
① 資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人
② 相互会社(外国相互会社を含みます。
③ 法第4条の7⦅受託法人等に関するこの法律 の適用))に規定する受託法人(以下「受託法人」 といいます。)
⑶ その普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部をいずれか一の大法人が有するものとみなしたときにそのいずれか一の大法人による完全支配関係があることとなる法人
⑷ 投資法人
⑸ 特定目的会社
⑹ 受託法人
今回の例では普通法人で上の⑴から⑹のいずれにも該当しないので、何も記載しません。
⑥ 同非区分
別表2「同族会社等の判定に関する明細書」で判定した区分に〇を付けます。
別表2の同族会社の区分をする欄で、別表2の「判定結果 18」で判定した区分を○で囲みます。
今回の例では同族会社なので、「同族会社」に○を付します。
別表2についての詳しい内容は以下のリンクからご確認ください。
⑦ 旧納税地及び旧法人名等
当期中に納税地若しくは法人名に異動があった場合には旧納税地又は旧法人名を記載し、本店又は主たる事務所の所在地と納税地とが異なる場合には本店又は主たる事務所の所在地を記載するなど参考となる事項を記載します。
⑧ 添付書類
「添付書類」欄に記載の書類のうち提出するものに◯を付します。
一般の中小企業の場合は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、勘定科目内訳明細書、事業概況書に○を付すことになります。
⑨ 税務署処理欄 「売上金額」
「税務署処理欄」は原則記載しませんが、「売上金額」のみ売上金額を100万円単位(端数切り上げ)で記載します。
例:売上高 「999,999,999円」とした場合、売上金額欄には、「1,000」と記載する。
⑩ 事業年度
上段に会計年度の開始年月日を記載し、下段に会計年度の終了年月日を記載します。
今回の例では会計年度の開始年月日に令和3年1月1日と記載し、会計年度の終了年月日に令和3年12月31日と記載します。
⑪ 申告書種類欄
法人税[ ]申告書、地方法人税[ ]申告書に、次のように記載します。
- 確定申告の場合は「確定」
- 修正申告の場合は「修正確定」
- 中間申告の場合は「中間」
- 期限後申告書の場合は、期限後確定」
今回の例では確定申告なので「確定」と記載します。
⑫ 翌期以降送付要否
翌事業年度以降、税務署から別表や勘定科目内訳書などの申告書用紙を送付の要否を記入します。
必要であれば、「要」に〇を付け、不要の場合は、「否」に○を付けます。
⑬ 適用額明細書の有無
適用額明細書の添付を行っている場合、「有」に〇を付けます。
「適用額明細書」について、詳しく知りたい方はこちらの「国税庁ホームページ」でご確認ください。
適用額明細書に関するお知らせ(国税庁)
⑭ 税理士法に関する書面の添付有無
税理士法第30条又は、第33条の2の書面添付を行っている場合は、該当する欄に〇を付けます。
こちらの書面は顧問税理士がいる場合に作成される書類です。
2-2-2 STEP2 別表4「48の①欄」を別表1の「1欄」に記入する
ここから、税額の計算を始めていきます。
別表4で算出した所得金額を別表1に転記するところからスタートします。
別表1の「所得金額又は欠損金額 1」欄には、別表4「48の①欄」の値を転記します。
2-2-3 STEP3 別表1と別表1次葉で法人税額の計算を行う
次に別表1次葉で、法人税額の計算を行っていきます。
① (50)「別表1の「1欄」のうち中小法人等の年800万円相当額以下の金額((1)と800万円×_/12のうち少ない金額)」 欄
別表4の48の①の値と8,000,000※とを比較して少ない金額を別表1次葉の50欄に記入します(1,000円未満切り捨て)。
※正確には8,000,000×当期の月数/12(当期の月数は1月未満の端数は切上げ)
この例では当期は12月なので8,000,000×12/12
基本的には設立初年度と解散以外は当期の月数は12になりますので、8,000,000×12/12となり、8,000,000と比較することになります。
この例では、16,005,000と8,000,000を比較して少ない8,000,000の方を50欄に記載します。
② (53)「(50)の15%又は19%相当額」欄
この記事は中小法人を対象としていますので、税率は15%になります。
法人税率について詳しくはNo.5759 法人税の税率(国税庁)をご確認ください。
今回の例では、8,000,000 × 15% = 1,200,000となり、1,200,000を53欄に記入します。
③ (52)「その他の所得金額」欄
所得金額が年800万円を超える場合は、「所得金額-年800万円」の金額(1,000円未満の端数切捨て)を別表1次葉の52欄に記入します。
この例では、16,005,000– 8,000,000 = 8,005,000と計算します。
なお、(51)欄は特定の協同組合等の規定であるため今回の中小法人に該当しないため空欄になります。
④(55)「(52)の19%又は23.2%相当額」欄
別表1次葉の(52)欄の金額(年800万円相当額を超える部分)に、23.2%を乗じた金額を55欄に記入します。
(協同組合等や公益法人等の場合は、19%ですが、普通法人は、23.2%を乗じます。No.5759 法人税の税率(国税庁)参照)
なお、前述の大法人の場合は、年800万円相当の15%の税率が使えません。
(50)欄には記載せず、所得金額(別表1の1欄)を1,000円未満の端数を切り捨てて(52)欄に転記して、(52)欄の金額×23.2%を乗じた金額を(55)欄へ記載します。
⑤ (2)「法人税額」欄
別表1の(53)欄と(55)欄を足した金額を(2)欄に記入します。
⑥ (4)「差引法人税額」欄
「法人税額の特別控除額」がある場合、つまり、別表6(6)を作成している場合は、別表6(6)の4欄の値を、別表1の(3)欄に転記します。
(4)欄は、(2)欄 – (3)欄で計算します。
今回の例では、(3)欄に値がありませんので、(2)欄の3,057,160をそのまま(4)欄に記入します。
⑦ (10)「法人税額計」欄
(10欄(法人税額計)は、(4)欄+(5)欄+(7)欄+(9)欄で計算します。
しかしながら、実は中小企業の場合は、(4)欄の値をそのまま(10)欄に記載することになります。
(5)欄は一般的な中小企業が関係することは希有です。
(7)欄の土地譲渡利益金は現在課税が止まっています。
(9)欄の留保金課税は中小法人は対象外です。
したがって、(10)欄(法人税額計)は、ほぼ100%の確率で(4)欄(差引法人税額)の値を転記することになります。
⑧ (17)「所得税の額」欄
別表6(1)「所得税額の控除に関する明細書」の6欄③の金額を、別表1の(17)欄に記入します。
「外国税額控除」がある場合は、別表6(2)を作成し、その(20)欄の値を(18)欄に記載します。
続いて「(17)+(18)」計算し、(19)欄に記入します。
⑨ (13)「控除税額」欄と(20)「控除した金額」欄
(10)欄が(19)欄より多い場合(10>19)は、(19)欄の金額を、(20)欄と(13)欄の両方に記入します。
⑩ (14)「差引所得に対する法人税額」欄
10欄から13欄を控除して、100円未満を切り捨てて(14)欄に記入します。
((11)欄と(12)欄は、中小企業では値が入ることが非常に稀なため説明を割愛します。)
なお、この金額が当事業年度のトータルの法人税額を示しています。
⑪ (15)「中間申告分の法人税額」欄
中間申告分の法人税額がある場合は、15欄にに記入します。
⑫ (16)「差引確定法人税額」欄
(14)欄が(15)欄より多い(14>15)場合は、(14)欄から(15)欄を差し引いた金額を(16)欄「差引確定法人税額」に記入します。
(16)欄は、この確定申告書で今回納付すべき法人税額を表しています。
前述のとおり、今回の確定申告でいくら納付するのかを知りたい場合に見る必要のある2つの欄のうちの1つです。
これで法人税額の計算は終わりました。続いて地方法人税額を計算します。
2-2-4 STEP4 別表1と別表1次葉で地方法人税の計算を行う
法人税申告書の下部は、地方法人税の申告書となっています。
法人税の申告書を提出することで、地方法人税の申告書も提出したことになります。
① (33)「所得の金額に対する法人税額」欄
別表1の(10)欄の金額を(33)欄に転記します。
② (33)「所得の金額に対する法人税額」欄
別表1の(33)欄の金額を1,000円未満切り捨てて、別表1次葉の(56)欄に転記します。
なお、別表1次葉の(57)欄及び(59)欄は「課税留保金に対する法人税額」に関する欄ですが、中小企業では使用しませんので、ここでは説明を割愛します。
③ (58)「(56)の10.3%相当額」欄
(58)欄に、(56)欄に10.3%(地方法人税税率)を乗じた金額を記載する。
※令和元年9月30日以前開始事業年度の税率は4.4%です。
④ (36)「地方法人税額」欄 (38)「所得地方法人税額」欄
別表1の(36)欄に(58)欄の金額を転記します。
(36)欄と同額を(38)欄に転記します。
なお、(37)欄は「課税留保金に対する法人税額」に関する欄であり、中小企業には関係がないため空欄になります。
⑤ (42)「差引地方法人税額」欄
(42)欄は、(38)欄-(39)欄-(40)欄-(41)欄の金額を記入します。(100円未満切り捨て)
(39)欄、(41)欄は中小企業では、使用しませんので割愛します。
(40)欄は、別表6(2)を作成している場合は、別表6(2)の(50)欄の値を転記します。
今回の例では使用していません。
⑥ (43)「中間申告分の地方法人税額」欄
(43)欄には、中間申告した地方法人税額がある場合、記載します。
今回の例では、中間申告はしていない場合の申告のため使用しませんが、上の図が中間申告がある場合の申告書の形になります。
⑦ (44)「差引確定地方法人税額」欄
(42)欄が(43)欄より多い(42>43)場合は、(42)欄から(43)欄を差し引いた金額を(44)欄「差引確定地方法人税額」に記入します。
(44)欄は、当確定申告書で納付すべき地方法人税額のことを指します。
前述のとおり、今回の確定申告でいくら納付するのかを知りたい場合に見る必要のある2つの欄のうちの1つです。
(43)欄「中間申告分の地方法人税額」に金額が入っている場合は、下記のような申告書になります。
2-2-5 STEP5 その他の記載箇所の記入を行う
次に、これまで解説していない別表1の右側にある(22)欄から(32)欄について、説明していきたいと思います。
① (22)欄から(24)欄「土地譲渡税額の内訳」
土地の譲渡益に対する特別課税が現在止まっているためこの欄は、使用しません。
② (25)欄から(28)欄「この申告のよる還付金額」
税額控除による還付や中間還付(中間申告分の金額が確定分の金額より多いため還付になる)、欠損金の繰り戻し還付がある場合に使用します。
今回の例ではいずれも該当がありませんので記載しません。
③ (29)欄と(30)欄「この申告が修正申告である場合」
修正申告である場合に使用する部分なので今回の例は確定申告であるため記載しません。
④ (31)欄「欠損金又は災害損失金等の当期控除額 」
(31)欄には、別表7(1)の「計」の4列の値を転記します。
今回の例では、0を転記または空欄になります。
⑤(32)「翌期へ繰り越す欠損金又は災害損失金 」欄
(32)欄は、別表7(1)の「翌期繰越額 5」列の「合計」行を転記します。
今回の例では0になりますが、記載される例として(32)欄に995,000が記入される例をお示しします。
⑥「剰余金・利益の配当(剰余金の分配)の金額」欄
別表4の「配当」欄の値を転記します。
この金額は、当期にその支払いの効力が生じる剰余金の配当、利益の配当若しくは剰余金の分配又は金銭の分配の額、みなし配当の金額を含めた金額を記載します。
この金額は、株主資本等変動計算書の「剰余金の配当」と一致します。
⑦「残余財産の最後の分配又は引き渡しの日」
解散した法人の申告書で記載が必要になる欄です。
今回の例では空欄になります。
⑧ 「決算確定の日」
「決算確定の日」とは、決算書がしかるべき機関(例えば株主総会)で承認された日を指します。
例えば株式会社の場合は、定時株主総会で決算の承認を行いますので、定時株主総会日が「決算確定の日」になります。
⑨ 還付を受けようとする金融機関等
還付申告となっている場合は、還付口座を記入します。
別表1の28欄に記入がある場合は、還付申告に該当するため、還付金の振込口座を記入します。
口座名義は、申告書に記載した法人名義の口座を書きます。
口座名義に店舗・事務所名などが含まれている場合や商号変更前の名称である場合には、振込みができないことがあるので注意しましょう。
⑩「税理士署名」欄
税理士の関与がある場合は、署名とありますので「税理士署名」欄に自筆で署名してもらいます。(電子申告の場合は、自署不要)
これで、別表1が完成しました。
これまでのところを振り返る意味で、もう一度別表1と次葉の記載例を確認しましょう。
別表1の記載例
別表1次葉記載例
ケース1では、所得金額が発生している法人(黒字法人)の別表1の書き方について説明してきました。
続いては、赤字法人(欠損金額が発生している法人)で、かつ、還付金(所得税還付と中間還付)が発生している法人の別表1の記載方法を解説していきます。
2-3【ケース2】「赤字法人、還付申告」の別表1の書き方
それでは、赤字で還付金が発生する別表1の記載の方法を説明していきます。
なお、設例で使っていく法人は「青色申告法人」とします。
よって、当期で発生した欠損金は「青色繰越欠損金」として翌期に繰越しを行います。
この青色繰越欠損金控除の制度についてよくわからないという場合は、以下の記事で詳しく説明していますので、そちらをご参照ください。
今回の説例においても、青色申告なので、「青色申告」と記載されている別表1を使用します。
次の5STEPで別表1を作成していきます。
STEP1 | 法人名、納税地などの法人の基本情報を記入する |
---|---|
STEP2 | 別表4「48の①欄」を別表1の「1欄」に記入する |
STEP3 | 別表1と別表1次葉で法人税額の計算を行う |
STEP4 | 別表1と別表1次葉で地方法人税の計算を行う |
STEP5 | その他の記載箇所の記入を行う |
2-3-1 STEP1 法人名、納税地などの法人の簡単な概要を記入する
STEP1については、ケース1のSTEP1と全く同じ内容になります。
赤字法人の別表1の書き方から見ても記載できるようにこのようにしています。ケース1を読んでいる場合は、STEP2に移ってください。
税額等の計算に入る前に、別表1は申告書の表紙の役割を果たしますので、法人の基本的な情報を最初に記載します。
① 「法人の住所・法人名・法人番号+代表者名・住所」欄
「納税地(法人の本店所在地)」「法人名」「法人番号(13桁)」「代表者」の氏名(+フリガナ)「代表者住所」を記載します。
② 法人区分
「法人区分」欄の「普通法人(特定の医療法人を除く。)、一般社団法人等、 みなし公益法人等又は人格のない社団等」に〇を付けます。
次の表の⑴〜⑸までの法人に当てはまる場合は、「法人区分」欄の左側に◯を付します。
それ以外の法人は右側に◯を付します。
出典 令和3年版 法人税申告書・地方法人税申告書の記載の手引 P11
今回の例では左側に○を付します。
③ 事業種目
事業種目を記載します。
事業種目は、「建設業」や「小売業」等、簡単に書いても問題ありません。
次の「事業種目・業種番号一覧表」から自社の営む業種に近いものを選んで記載する方法でも構いません。
単体法人における適用額明細書の記載の手引(令和3年4月1日以後終了事業年度分) 事業種目・業種番号一覧表(国税庁)
④ 期末現在の資本金の額又は出資の金額
「期末現在の資本金の額又は出資金の額」欄に、資本金の金額を記載します。
文字どおり株式会社や有限会社の場合は、期末現在の資本金の額を、それ以外の法人で、出資のある場合は、期末現在の出資の金額を記載します。
⑤ 同上が1億円以下の普通法人 のうち中小法人に該当しないもの
当期末における資本金の額・出資金の額が1億円以下(または資本若しくは出資を有しない)普通法人が、次のいずれかの法人に該当する場合には、「非中小法人」を○で囲んで表示します。
⑴ 相互会社
⑵ 次のいずれかの法人(以下「大法人」といいます。)との間に、これらの大法人による完全支配関係がある法人
① 資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人
② 相互会社(外国相互会社を含みます。
③ 法第4条の7⦅受託法人等に関するこの法律 の適用))に規定する受託法人(以下「受託法人」 といいます。)
⑶ その普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部をいずれか一の大法人が有するものとみなしたときにそのいずれか一の大法人による完全支配関係があることとなる法人
⑷ 投資法人
⑸ 特定目的会社
⑹ 受託法人
今回の例では普通法人で上の⑴から⑹のいずれにも該当しないので、何も記載しません。
⑥ 同非区分
別表2「同族会社等の判定に関する明細書」で判定した区分に〇を付けます。
別表2の同族会社の区分をする欄で、別表2の「判定結果 18」で判定した区分を○で囲みます。
今回の例では同族会社なので、「同族会社」に○を付します。
別表2についての詳しい内容は以下のリンクからご確認ください。
⑦ 旧納税地及び旧法人名等
当期中に納税地若しくは法人名に異動があった場合には旧納税地又は旧法人名を記載し、本店又は主たる事務所の所在地と納税地とが異なる場合には本店又は主たる事務所の所在地を記載するなど参考となる事項を記載します。
⑧ 添付書類
「添付書類」欄に記載の書類のうち提出するものに◯を付します。
一般の中小企業の場合は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、勘定科目内訳明細書、事業概況書に○を付すことになります。
⑨ 税務署処理欄 「売上金額」
「税務署処理欄」は原則記載しませんが、「売上金額」のみ売上金額を100万円単位(端数切り上げ)で記載します。
例:売上高 「999,999,999円」とした場合、売上金額欄には、「1,000」と記載する。
⑩ 事業年度
上段に会計年度の開始年月日を記載し、下段に会計年度の終了年月日を記載します。
今回の例では会計年度の開始年月日に令和3年1月1日と記載し、会計年度の終了年月日に令和3年12月31日と記載します。
⑪ 申告書種類欄
法人税[ ]申告書、地方法人税[ ]申告書に、それぞれ確定申告の場合は「確定」、修正申告の場合は「修正確定」、中間申告の場合は「中間」、期限後申告書の場合は、「期限後確定」と記載します。
今回の例では確定申告なので「確定」と記載します。
⑫ 翌期以降送付要否
翌事業年度以降、税務署から別表や勘定科目内訳書などの申告書用紙を送付の要否を記入します。
必要であれば、「要」に〇を付け、不要の場合は、「否」に○を付けます。
⑬ 適用額明細書の有無
適用額明細書の添付を行っている場合、「有」に〇を付けます。
「適用額明細書」について、詳しく知りたい方はこちらの「国税庁ホームページ」でご確認ください。
適用額明細書に関するお知らせ(国税庁)
⑭ 税理士法に関する書面の添付有無
税理士法第30条又は、第33条の2の書面添付を行っている場合は、該当する欄に〇を付けます。
こちらの書面は顧問税理士がいる場合に作成される書類です。
2-3-2 STEP2 別表4「48の①欄」を別表1の「1欄」に記入する
ここから、税額の計算を始めていきます。
まずは、別表4で算出した所得金額を別表1に転記していきます。
別表4「48の①欄」を別表1の「1欄」に転記します。
2-3-3 STEP3 別表1と別表1次葉で法人税額の計算を行う
次に別表1次葉で、法人税額の計算を行っていきます。
① (2)「法人税額」欄
(2)欄は、別表1次葉の(53)欄、(54)欄と(55)欄の値を合算した金額を記載しますが、赤字の申告の場合必ず0になります。
② (4)「差引法人税額」欄
(4)欄は、別表1の「(2)欄 ー (3)欄」で計算します。
(3)欄は別表6(6)を作成している場合は、(4)欄の値を転記してきます。
今回の例では税額控除を適用しませんので、(4)欄「差引法人税額」は(2)欄の値がそのまま下りてきます。
③ (10)「法人税額計」欄
(10)欄は、(4)欄+(5)欄+(7)欄+(9)欄で計算します。
(5)欄は一般的な中小企業が関係することは希有です。
(7)欄の土地譲渡利益金は現在課税が止まっています。
(9)欄の留保金課税は中小企業は対象外です。
したがって(10)欄はほとんどの場合は(4)欄「差引法人税額」の値を転記することになります。
④ (14)「差引所得に対する法人税額 」欄
(14)欄は、(10)欄 ー (11)欄 ー (12)欄 ー (13)欄と計算します。
赤字法人の場合、(11)欄から(13)欄に値が入ることはありませんので空欄になります。
⑤ (15)「中間申告分の法人税額 」欄、(16)「差引確定法人税額」欄
(15)欄には法人税の中間申告金額を記載します。
法人税と地方法人税は分けます。ここでは地方法人税を含まない法人税のみの中間申告額を記載します。
(16)欄は、[ (14) ー (15) ]という計算をします。
この例では0 – 658,000 = -658,000になりますが、0未満は0となり、ここでは空欄になります。
2-3-4 STEP4 別表1と別表1次葉で地方法人税の計算を行う
次に別表1次葉で、地方法人税額の計算を行っていきます。
法人税申告書の下部は、地方法人税の申告書となっています。
したがって、法人税の申告書を提出することで、地方法人税の申告書も提出したことになります。
① (33)「所得の金額に対する法人税額 」欄
(33)欄は、(4)欄 + (5)欄 + (7)欄 + (10)の外書で計算します。
今回の例では、(4)欄 、 (5)欄 、 (7)欄 、 (10)の外書とすべて0ですので、(33)欄も0を記載します。
② (35)「課税標準法人税額」欄
(35)欄は、(33)欄 + (34)欄で計算します。
(34)欄は課税留保金は中小企業には関係ありませんので、空欄になります。
したがって(33)欄の値がそのまま(35)欄に入ります。
③ (36)「地方法人税額 」欄
(36)欄は、別表1次葉の(58)欄の値を転記します。
赤字なので税額は0になります。
④ (38)「所得地方法人税額」欄
(38)欄は、(36)欄 + (37)欄で計算します。
(37)欄は課税留保金は中小企業には関係ありませんので、空欄になります。
したがって(36)欄の値がそのまま(38)欄に入ります。
⑤ (42)「差引地方法人税額 」欄
(42)欄は、(38)欄 – (39)欄 – (40)欄 – (41)欄で計算します。
100円未満は切り捨てます。
(40)欄は別表6(2)を作成している場合は、その(50)欄の値を転記します。
根茎の例では、税額控除を適用しないので空欄とします。
(39)欄と(41)欄は中小企業では関係することはほぼありませんので空欄になります。
⑥ (44)「差引確定地方法人税額 」欄
(44)欄は、(42)欄 – (43)欄で計算します。
(43)欄は中間申告で納めた地方法人税額が入ります。
(42)欄から(43)欄を差し引いた金額を(45)欄「この申告による還付金額」に記入します。
なお、この場合は、中間申告分の地方法人税額が年間分の地方法人税額を超えたということで、「中間還付」ということになります。
2-3-5 STEP5 その他の記載箇所の記入を行う
次に、これまで解説していない別表1の右側にある(17)欄から(32)欄について、説明していきたいと思います。
①「 控除税額の計算」欄を記入する
控除税額の計算の(17)欄〜(21)欄は所得税額控除または外国税額控除を適用する場合に使用します。
別表6(1)を作成している場合は、その6の③の金額を、別表1の(17)欄に記入します。
別表6(2)を作成している場合は、その20欄の金額を(18)欄に記入します。
(17)欄と(18)欄との合計額を19欄に記入します。
②「土地譲渡税額の内訳」欄
土地の譲渡益に対する特別課税が現在止まっているためこの欄は空欄になります。
③「この申告による還付金額」欄を記入する
税額控除による還付、中間還付、欠損金の繰り戻し還付がある場合に使用します。
今回の例では、所得税額還付5,000円と中間還付1,000,000円があるため、記入しています。
(25)欄には、(21)欄の値を転記します。
(26)欄は、「(15) – (14)」という計算をします。
今回の例では、「1,000,000 – 0 = 1,000,000」と計算します。
(27)欄は、欠損金の繰戻還付請求税額がある場合に記入します。
(28)欄は、「(25) + (26) + (27)」と計算します。
今回の例では、「5,000 + 1,000,000 + 0 = 1,005,000」と計算します。
④「この申告が修正申告である場合」欄
修正申告である場合に使用する部分なので今回の例は確定申告であるため空欄とします。
⑤ (31)「欠損金又は災害損失金等の当期控除額」欄を記入する
(31)欄には、次のように別表7(1)の「当期控除額 4」列の計を転記します。
今回の事例では、欠損金又は災害損失金等の当期控除額がないため、0を転記または空欄です。
⑥ (32)「翌期へ繰り越す欠損金又は災害損失金」欄を記入する
(32)欄は、次のように別表7(1)の「翌期繰越額 5」列の「合計」行を転記します。
この例では「翌期へ繰り越す欠損金又は災害損失金」欄に995,000と記入します。
⑦ (45)欄「この申告書による還付金額 」欄を記入する
(45)欄は、[ (43)欄 – (42)欄 ]で計算します。
つまり中間申告した分が還付になる場合に(45)欄に記載することになります。
今回の例では(43)欄に100,000円入っているため、(45)欄に100,000円記入することになります。
⑧「この申告書が修正申告である場合」欄
次の部分は、修正申告を提出する場合に記入する欄です。
今回の例は確定申告であるため空欄になります。
⑨「剰余金・利益の配当(剰余金の分配)の金額」を記入する。
別表4の「配当」欄の値を転記します。
この金額は、当期にその支払いの効力が生じる剰余金の配当、利益の配当若しくは剰余金の分配又は金銭の分配の額、みなし配当の金額を含めた金額を記載します。
この金額は、株主資本等変動計算書の「剰余金の配当」と一致します。
⑩「残余財産の最後の分配又は引き渡しの日」を記入する
解散した法人の申告書にて記載が必要な個所なため、今回の例では空欄になります。
⑪「決算確定の日」を記入する
「決算確定の日」とは、決算書がしかるべき機関(例えば株主総会)で承認された日を指します。
例えば株式会社の場合は、定時株主総会で決算の承認を行いますので、定時株主総会日が「決算確定の日」になります。
⑫ 「還付を受けようとする金融機関等」を記入する
還付申告となっている場合は、還付口座を記入します。
別表1の28欄に記入がある場合は、還付申告に該当するため、還付金の振込口座を記入します。
口座名義は、申告書に記載した法人名義の口座を書きます。
口座名義に店舗・事務所名などが含まれている場合や商号変更前の名称である場合には、振込みができないことがあるので注意しましょう。
⑬「税理士署名」欄を記入する
税理士の関与がある場合は、署名とありますので「税理士署名」欄に自筆で署名してもらいます。(電子申告の場合は、自署不要)
以上で赤字法人の別表1は完成です。
次は、最後のケースです。
修正申告の場合の別表1の書き方についてみていきましょう。
2-4【ケース3】修正申告の別表1の書き方
修正申告とは、確定申告書の提出後に、税額の過小や欠損金や還付金が過大であることが分かった場合に作成する申告書のことです。
なお、逆に税額の過大や欠損金、還付金が過小だった場合は、修正申告ではなく、更正の請求という手続きになります。
ここでは、修正申告の別表1の書き方について、解説していきます。
別表1の修正申告の記載例を確認しましょう。
赤枠で囲われた(29)欄、(30)欄、(46)〜(49)欄以外は、これまで解説したケース1とケース2同様に修正後の別表4等の書類から転記する形で別表1を作成します。
修正申告の別表1次葉の記載例も確認します。
赤枠で囲われていない(50)欄から(59)欄は、これまで解説したケース1とケース2同様に修正後の別表1から転記して通常通り作成します。
つなり、別表1と別表1次葉共に赤枠で囲った部分が修正申告特有の部分になります。
赤枠で囲った部分をどのように書いていくかを解説していきます。
① 修正申告前の当初の確定申告書の別表1から修正申告書別表1次葉に法人税額を転記する
転記元 | 転記先 |
---|---|
修正申告前の別表1の(1)欄 | 修正申告の別表1次葉の(60)欄 |
修正申告前の別表1の(16)欄 | 修正申告の別表1次葉の(63)欄 |
② (65)「この申告により納付すべき法人税額又は減少する還付請求税額」欄
今回の例では、「(16)欄 – (63)欄」で(65)欄を計算します。
つまり、「修正申告で計算された法人税額 ー 当初申告で計算された法人税額」で差引き納付が必要な金額を計算しています。
1,664,000 – 750,000 = 914,000
③ 修正申告前の当初の確定申告書の別表1から修正申告書別表1次葉に地方法人税額を転記する
転記元 | 転記先 |
---|---|
修正申告前の別表1の(33)欄 | 修正申告の別表1次葉の(68)欄 |
修正申告前の別表1の(44)欄 | 修正申告の別表1次葉の(71)欄 |
④ (74)「この申告により納付すべき地方法人税額」欄
今回の例では、「(44)欄 – (71)欄」で(74)欄を計算します。
つまり、「修正申告で計算された地方法人税額 ー 当初申告で計算された地方法人税額」で差引き納付が必要な金額を計算しています。
171,300 – 77,200 = 94,100
これで修正申告の別表1次葉の記載は完了です。
続いて別表1次葉から別表1へ転記します。
⑤ 法人税額について、別表1次葉から別表1に転記する
転記元 | 転記先 |
---|---|
修正申告の別表1次葉の(60)欄 | 修正申告の別表1の(29)欄 |
修正申告の別表1次葉の(65)欄 | 修正申告の別表1の(30)欄 |
⑤ 地方法人税額について、別表1次葉から別表1に転記する
転記元 | 転記先 |
---|---|
修正申告の別表1次葉の(68)欄 | 修正申告の別表1の(46)欄 |
修正申告の別表1次葉の(74)欄 | 修正申告の別表1の(49)欄 |
これで、修正申告の別表1は完成です。
修正申告で実際に納める必要がある金額は、(30)欄と(49)欄の合計金額です。
ここまで、別表1の書き方を具体例や記載例を用いて解説してきましたが、別表4や別表7等の他の別表から転記することが多く難しくはないけれど少し面倒な点が多いです。
また記載例がないケースなどでは記載漏れや転記漏れがないかなど不安になることもあるかもしれません。
この面倒な転記作業や計算を自動で行い、最速でしかも正確に別表1を作成できる方法があったらどうでしょう?
できることなら法人税の申告書の作成をできるだけ効率的に、楽に、早く、終わらせたいものですよね。
そんな方法が実は一つあります。
3 もっと早く正確に法人税の別表1を作成する方法
他の別表から転記したり、別表1次葉と別表1を行ったり来たりしての作成が面倒だ。
転記ミスが不安だ。
どの別表のどの箇所から転記するかを理解することすら面倒だ。
とにかく簡単に早く正確に別表1を作成したいという方にぴったりの方法があります。
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ちなみにこの記事で別表1の記載例をいくつか掲載しましたが、それもすべて全力法人税でちゃちゃっと作成したものです。
全力法人税は、法人税の知識がなくても誰でもかんたんに法人税の申告書が作成できるをコンセプトとしたソフトです。
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【手書きと全力法人税利用の比較】
ここからみなさんに実際に全力法人税を使ってより早く、より正確に別表1を完成させる方法を紹介します。
❶ 全力法人税にログインする
全力法人税は、クラウドソフトであるため、アカウントを作成して、ログインする必要があります。
❷ トップ画面で「申告書を作成する」を選択する
❸ 基本情報を入力後「保存」して「次へ」を選択する
法人名や決算期等の法人の基本的な情報を入力してください。所要時間5分程度
❹ 「申告情報」を入力後「保存」して「次へ」を選択する
作成を行う申告書の情報を入力してください。所要時間5分程度
❺ 「決算情報」の会計データのインポートもしくは、入力を行う。
全力法人税で申告書の作成を行うには、「決算情報」を会計ソフトから出力した会計データをインポートするか、または入力する必要があります。
弥生会計(弥生オンライン含む)、MFクラウド会計、freee、会計王の会計データを全力法人税に取り込むことができます。
またその他の会計ソフトの場合は会計データを全力法人税に取り込める形に整形することでインポートすることも可能です。
全力法人税へインポートするマニュアルを参考までに以下に挙げておきます。
弥生会計からデータをインポートする方法
Freee(フリー)の会計データをインポートする方法
マネーフォワードの会計データをインポートする方法
弥生会計オンラインの会計データをインポートする方法
会計王の会計データをインポートする方法
あらゆる会計ソフトの会計データをインポートする方法
今回はイメージがしやすい会計ソフトのデータを読み込まずに申告書を作成する方法をご紹介します。
その場合は、次の画面で「その他の方法で作成する」を選択します。
手入力が増えますが、それでも簡単に申告書を作成することができます。
法人税の申告書を作成するのに必要な決算情報を入力します。
このデータだけで法人税の確定申告に必要な別表を簡単に作成できます。
入力が終わったら「登録」ボタンを押します。
その後画面の案内にしたがって、申告内容によって必要な勘定科目内訳明細書や別表、事業概況説明書に関する入力を進めます。
すべての入力を終えたら申告書類を出力します。
❻ 別表1及び別表1次葉を出力する
有料版の場合は、すべての書類に関してPDF出力とeTaxソフトに組み込めるファイルを出力することが可能です。
メニューバー「印刷」をクリックすると、「申告書出力コントローラー」画面が表示されます。
別表1(1)と次葉のチェックボックスにチェックを入れて、「PDF出力」をクリックすると、作成した別表1(1)と次葉が出力されます。
次のように印刷されます。
別表1 記載例
別表1次葉 記載例
以上で別表1と別表1次葉が完成しました。
記事を作成するために別表1を全力法人税で作成しましたが、簡単すぎて説明するところが本当に少ないです。
このように全力法人税を使用して法人税の別表を作成するとかなり効率的にそして転記漏れもありませんので正確に作成できます。
無料版で出力できない申告書も画面で確認できる場合がありますので、全力法人税で作成したものをe-Taxソフトに入力したり、申告書に手書きで写す方法でも何もないところから申告書を作るよりずっと効率的に作成できます。
是非効率的に申告書を作成したいという方はこの法人税の申告書作成支援ソフト「全力法人税」を試して損はないと思います。
ここまで、別表1の書き方と別表1を効率的に作成する方法を解説してきました。
ここまでのところで別表1を作成することができるようになっていると思いますが、ケース別で解説してきたケース以外にも別表1のバリエーションがありますので、これまでの解説で紹介できていない別表1のバリエーションを紹介していきたいと思います。
それによりご自身の申告内容と同じ記載例を参照することで、不安が軽減されると思います。
是非ご自身が作成した別表1と照らし合わせてもらって最後の見直しに使用していただければと思います。
4 様々なケース別 法人税の別表1の記載例
それでは、実務でありうるであろう様々な別表1の記載例を挙げていきたいと思います。
2章でのケース別の記載例とこれから挙げていく記載例があれば、中小企業であれば、あらゆるバリエーションの別表1を完成させることができるでしょう。
4-1 青色欠損金控除があり、税額が発生する場合
当期に所得金額が発生したが、前期以前に青色繰越欠損金がある場合の別表1の書き方です。
なお、当設例は翌期に繰越される欠損金はすべて控除され、翌期へ繰り越される欠損金はないこととします。
別表1 記載例
この申告では、欠損金の控除を行った結果が、(32)欄「翌期へ繰り越す欠損金又は、災害損失金等」が「0」となり、翌期へ繰り越す欠損金額がなくなっていることがわかります。
別表1次葉 記載例
別表7 記載例
別表7の「(4)ー計」の値(3,000,000)が別表1の(31)欄に転記され、別表7の「(5)-合計」の値(0)が、別表1の(32)欄に転記されています。
4-2 青色欠損金控除があり、税額が発生しない場合
当期は所得金額が発生したが、前期以前の青色繰越欠損金がある場合の別表1の書き方2パターン目です。
今回のケースは、前回とは違い、翌期に繰越される欠損金はすべて控除されず、一部残ることとします。
この申告の場合、(31)「欠損金又は災害損失金等の当期控除額」欄と(32)「翌期へ繰り越す欠損金又は災害損失金等」欄の両方に金額が入っていることが特徴です。
(31)欄と(32)欄以外空欄か0しかありませんので、正しい別表1になっていないのではないかと疑問に思うかもしれませんが、正しい別表1となっています。
別表1 記載例
別表1次葉 記載例
別表7 記載例
4-3 赤字法人で還付がない場合
赤字法人の別表1の特徴は、別表1の1欄以降や別表1次葉で「0」が続く申告書になることです。
青色申告の場合は、「青色繰越欠損金」の翌期繰越額が(32)欄に記載されます。
また、今回のケースは赤字法人でかつ、還付がない場合の申告となります。
「赤字法人なのに、還付がないのはおかしい」と思う場合があるかもしれませんが、別表1の書き方や見方がわかっていれば、そのように思うことはないかと思います。
別表1 記載例
別表1次葉 記載例
別表7(1) 記載例
5 法人税申告書 別表1 まとめ
本記事では、別表1の具体的な書き方について、パターン別の記載例などを使って詳しく解説してきました。
最後に当記事を簡単におさらいしていきましょう。
- 別表1は、申告書の表紙と税額の計算を行うための書類でした。
- 別表1を作成するには、別表4を始めとする他の別表が必要でした。
- 別表1は、基本的に転記と簡単な計算を行うことで完成することができる書類でした。
- 確定申告書と修正申告書で、別表1の記載方法が若干違うところがありました。
- 無料の申告書作成ソフトを使うと正確性を担保しつつ別表1が一瞬でできるのでこのような方法を活用するのも便利でした。
中小企業であれば、このような解説を読みながら申告書作成作業を行えば、法人税のことをよく知らなくても、十分自力申告が可能です。
そして効率的に進めることも可能です。
全力経理部の法人税の書き方の記事を読みながら、最短距離で自力申告をやり遂げてもらえると、たいへん嬉しく思います。