
この記事では、法人税の別表5(1)「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」について、別表5(1)とはどういう性質の書類なのか、という基本的なところから必ず書き上げられる書き方まで0から初心者向けに元国税調査官で税理士がわかりやすく解説していきます。
確定申告する時期になり、税務署から申告書類一式が送られてきて、初めてそれらを見たときは愕然としますよね。
別表5(1)についても、初見ではいったいどのようなことを書けばいいかわからない、そんな申告書類のうちの一つだと思います。
別表5(1)?なんだこれは!?
何を書けばいいかさっぱりわからない!
利益積立金額?繰越損益金?納税充当金?うーん….
そうなりますよね。
でも安心してください。多くの中小企業ではすべての欄を使うことはありません。書く必要のある欄はほぼ決まっていて書き方も決まっていますので、一度書き方が分かってしまえば楽勝の別表のうちの一つです。
元国税調査官で税理士の私が、ポイントを絞ってわかりやすく解説していきます。初心者の方でも必ず完成させられます!
初心者でも中小企業の別表5(1)なら誰でも書き上げられるという証拠を冒頭でお見せしたいと思います。
設立1期目が赤字であった一般的な中小企業の別表5(1)の完成例です。
え!?たったこれだけ?ほぼ空欄?
これでいいの!?
これなら余裕でできそう
そうですよね。簡単そうですよね。
設立初年度が赤字の中小企業なら95%以上がこの形になるでしょう。
別表5(1)がそんなに難しくなく書けそうだということがわかっていただけたところで、早速始めていきましょう。
この記事の特徴(難解な法人税の申告書が誰でも書ける秘訣)
中小企業向けに初めて法人税の申告書を作成する初心者の方でも、申告書類の書き方がわかるように解説します。
別表5(1)について、大企業が作成することを考慮した留意点まで解説すると複雑な処理の解説も必要になります。しかしながら、中小企業が別表5(1)を間違いなく完成させることに的を絞れば、その解説は相当シンプルなものになります。
中小企業にとって別表5(1)は、比較的簡単に作成できる書類の一つですので、安心してください。
数多くの税務調査を国税調査官として行ってきた経験を持つ私が、重要ポイントは押さえながらメリハリをつけてわかりやすく解説します。
繰り返しますが、この記事は中小規模の会社の法人税の申告を自力で行う方向けの記事です。
別表5(1)の解説に入る前に、法人税の別表を書いていく上での大前提を確認しておきます。
これから法人税の申告書を作成して、当期の税額を算出するのにその金額がわかっているはずがありませんよね。だからこれから計算する法人税や地方税の未払法人税等の仕訳を除いて仕訳がすべて登録されている状態であることが前提という意味です。
まだ決算調整が終わっていないとか、消費税の申告書ができていないとか、登録していない仕訳があるといったような決算が終わっていない場合は、まずは税金の計算以外の決算を終えるのが先決です。
それではこれらの処理が終わっている方は、先に進みましょう。
別表5(1)とはどのような書類なのかという全体像から始めていきたいと思います。
目次
1 別表5(1)とは
別表5(1)は法人税の確定申告をする上でなんのために必要なのでしょうか。
まずは法人税の確定申告書の中の別表5(1)のポジションを理解してしまいましょう。
1-1 別表5(1)の構成
別表5(1)の構成から見ていくことにしましょう。
別表5(1)は次のとおり2つのパートに分かれています。
❶ 上段は「Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書」と題打たれているとおり、利益積立金額を計算するパート
❷ 下段は「Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書」と題打たれているとおり、資本金等の額を計算するパート
別表5(1)はこのように大きく2つに分かれて構成されています。
文字どおり解釈すると別表5(1)は、利益積立金額と資本金等の額を計算するための別表であるということになります。
利益積立金額?資本金等の額?
なんのこと?? グニャグニャ
そうなりますよね。この部分は税理士でもよく知らない人がいるくらい難解な部分なので、ここでは別表5(1)は2つに分かれているんだということだけ理解してもらえれば十分です。
「別表5(1)を書き上げる」という最大の目的を果たすことを考えればまったく知らなくてよい用語です。これから用語の説明をしますが、用語の意味を知らなくても別表5(1)はかけますので、この部分は軽く読み飛ばしてもらって構いません。
(参考)利益積立金額・資本金等とは
利益積立金額は、企業会計上の利益剰余金に当たるもので、資本金等の額は、企業会計上の資本金と資本剰余金に当たるものです。
利益積立金額と資本金等の額は、企業会計上の純資産の部に相当するというイメージを持つとわかりやすいと思います。
しかしながら企業会計上の利益と法人税法上の所得が一致しないことから、両者は必ずしも一致しません。
企業会計上の利益と法人税法上の所得が一致しないということについて詳しく知りたい方は次の記事をご覧ください。
企業会計上の利益と法人税法上の所得が一致しないことから、企業会計の決算を前提に税務上の貸借対照表を別表5(1)で算出するというイメージです。
(出典:税大講本 法人税法 基礎編 令和3年度版)
別表5(1)の役割を端的に表現するなら次のように言えます。
よくわかりませんが、ただ申告書を書き上げて税金を納付したいという場合は、この辺りは知らなくても問題ないということでいいですか?
はい、知らなくてもまったく問題ありません。
これを知らない税理士も税務職員もいくらでもいるくらいです。
ぶっちゃけて言うとこの別表5(1)が正しく作られていなくてもほとんどの中小企業では税額計算に影響がありません。
(利益積立金額は留保金課税の計算で使用されますが、現在中小企業のほとんどで留保金課税は適用されない状況なので中小企業にとっては利益積立金額は税額計算という意味でも重要度は低くなっています。)
税額計算に影響がないということは、税務署から指摘を受けることもないということで、税金を多く納めることも少なく納めるという心配もありません。
別表5(1)は、利益積立金額と資本金等の額(とやら)を計算する別表ですが、これらの意味はさておき、これをどのように計算するかということを見ていくことにしましょう。ここから重要な部分に入ってきます。
「Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書」の次の部分で確認しましょう。
左から「区分」「期首現在利益積立金額①」「当期の減②」「当期の増③」「差引翌期首現在利益積立金額④」という構成になっています。
次に別表5(1)の全体を確認しましょう。次の図を見てください。左から見てください。
左から「❶何の科目が」「❷今年度の始め(=期首)にいくらあって」「❸今年度中にいくら減って」「❹今年度いくら増えて」「❺今年度の終わりには差引していくらあるのか」このように利益積立金額を一つ一つ計算して最後に表の最下部の「差引合計額(31)」の行ですべて合計して利益積立金額の残高を計算するという流れになっています。
別表5(1)の利益積立金額の計算部分を整理してみます。
別表5(1)の表示 | 意味 |
---|---|
❶区分 | 何の科目が |
❷期首現在利益積立金額の額 | 今年度の始めにいくらあって |
❸当期の減 | 今年度中にいくら減って |
❹当期の増 | 今年度中にいくら増えて |
❺差引翌期首現在利益積立金額の額 | 今年度の終わりにいくらあるのか |
次に具体的な数字を使ってここまでのところを確認していきます。
例えば資本金が当初1,000,000であった会社が今年度中に1,000,000増資して2,000,000になったケースを考えてみます。
このようになります。
決算書の株主資本等変動計算書に似ていますよね
別表5(1)の全体像はこのようになっています。大まかに捉えてもらえれば結構です。
それでは続いておさえておいてほしい別表5(1)の特徴をチェックしましょう。
1-2 別表5(1)の特徴
別表5(1)の特徴としておさえてほしい点があります。それは、
別表5(1)は法人税法上の貸借対照表の役割があるということから必ず作成する必要があります。
例えば、税務上の交際費等の支出がなければ別表15は不要です。また欠損金の繰越しがなければ別表7(1)を作成する必要がありません。
一方、別表5(1)は必ず作成する必要がありますので、作成漏れのないよう注意しましょう。
それでは別表5(1)という書類がどのようなものかが掴めたところで、ここからが最も大切なところ、別表5(1)の書き方を理解していきましょう。
2 別表5(1)の書き方
ここからは別表5(1)をどのように書いていくかをわかりやすく順序立てて解説していきます。
別表5(1)を作成する前に知っておかなければならない点を説明します。法人税の申告書を作成する上での全般に関することです。
法人税の確定申告書(別表)は、作成する順番があります。
別表5(1)は実は2回登場します。
つまり、別表5(1)は一度に書き上げることができないのです。
中小企業で登場する可能性の高い別表を挙げ、それを作成順に並べてみます。
別表の作成順一覧
順番 | 別表 | 別表名称 |
---|---|---|
1 | 別表2 | 同族会社等の判定に関する明細書 |
2 | 別表11⑴ | 個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書 |
3 | 別表11(1-2) | 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書 |
4 | 別表15 | 交際費等の損金算入に関する明細書 |
5 | 別表16⑴ | 旧定額法又は定額法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書 |
6 | 別表16⑵ | 旧定率法又は定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書 |
7 | 別表16⑹ | 繰延資産の償却額の計算に関する明細書 |
8 | 別表16⑺ | 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書 |
9 | 別表16⑻ | 一括償却資産の損金算入に関する明細書 |
10 | 別表6⑴ | 所得税額の控除に関する明細書 |
11 | 別表5⑵① | 租税公課の納付状況等に関する明細書 |
12 | 別表5⑴① | 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書 |
13 | 別表4① | 所得の金額の計算に関する明細書 |
14 | 別表14⑵ | 寄附金の損金算入に関する明細書 |
15 | 別表7⑴※1 | 欠損金又は災害損失金の損金算入に関する明細書 |
16 | 別表4② | 前述のとおり |
17 | 別表7⑴※2 | 前述のとおり |
18 | 別表1次葉 | 各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分(次葉) |
19 | 別表1 | 各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分 |
20 | 別表5⑵② | 前述のとおり |
21 | 別表5⑴② | 前述のとおり |
22 | 別表4③ | 前述のとおり |
23 | 適用額明細書 | 適用額明細書 |
作成する必要のない別表は飛ばして次に移っていきます。
上記の表では、別表5(1)は12番目と21番目に出てきています。
なんだか難しそうー
諦めたくなるー
ここでは、別表5(1)は一度に書け上げられるものではなく、1度書いたら別の申告書類を作ってまた戻ってくるということを理解してもらえれば十分です。
それでは、実際に別表5(1)を作りながら理解していきましょう!
それでは早速実際に別表5(1)を書いていきましょう。
よりシンプルでわかりやすい「Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書」から確認していきましょう。
2-1 別表5(1)「Ⅱ資本金等の額の計算に関する明細書」部分の書き方
「Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書」を書くためには、当期の株主(社員)資本等変動計算書を用意します。
⑴ 資本金又は出資金の記入
まずは、資本金(又は出資金)について、株主(社員)資本等変動計算書から次のように転記していきます。
株主資本等変動計算書を作成する必要のない法人もありますので、その場合のやり方についてもふれておきます。
株主(社員)資本等変動計算書を使用しない場合のやり方
株主資本等変動計算書を使用しない場合は、次の表のとおりに転記します。左側が転記元で右側が転記先(当期の別表5(1))です。
転記元 | 転記先(別表5(1)) |
---|---|
前年度の別表5(1)の差引翌期首現在資本金等の額④の値 | 期首現在資本金等の額① |
貸借対照表 | 差引翌期首現在資本金等の額④ |
差額があれば当期の増減②③欄に総勘定元帳や仕訳帳等の帳簿を参照して記載します。
⑵ 資本剰余金(資本準備金)(33)〜(35)欄の記入
資本準備金があれば「資本準備金」の行に⑴の資本金又は出資金同様に記入します。
その他「資本剰余金」があれば同様に記載します。
今回の例では資本剰余金はありませんので、空欄になります。
⑶ 差引合計額(36)欄の記入
一番下の行「差引合計額(36)」にそれぞれの列について縦計を計算してその計算結果を記入します。
資本金と資本剰余金は、多くの会社で毎年変わることがありませんので、一度「Ⅱ資本金等の額の計算に関する明細書」を書いてしまえば毎年同じものになるというケースがかなり多くなります。
「Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書」の書き方についての解説はここまでです。
続いて「Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書」の書き方について解説していきます。
2-2 別表5(1)「Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書」部分の書き方
別表5(1)の「Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書」部分は、別表1で法人税が確定し、第6号様式と第20号様式で地方税が確定し、決算書と別表5(2)が完成しないとすべてを完成させることができません。その点を踏まえて順を追って解説していきます。
STEP1 期首現在利益積立金額①の列を書く
まずは「期首現在利益積立金額①」の列から書いていきます。
前年度の別表5(1)を用意します。
「期首現在利益積立金額①」は、次のように、前年度の別表5(1)の「差引翌期首現在利益積立金額④」の列の値をそのまま当期の別表5(1)「期首現在利益積立金額①」に転記します。
ここで用語を確認しておきましょう。
別表5(1)の用語 | 意味 |
---|---|
繰越損益金(26行目) | 貸借対照表の「繰越利益剰余金」 |
納税充当金(27行目) | 貸借対照表の「未払法人税等」 |
つまり、次の図のように繰越損益金の「期首現在利益積立金額」の値は、前期の貸借対照表の繰越利益剰余金と一致(又は当期の株主資本等変動計算書の前期末残高)し、納税充当金の「期首現在利益積立金額」の値は、前期の貸借対照表の未払法人税等と一致します。
STEP2 当期の増減を書く(税金以外)
続いて、利益準備金(1)から繰越損益金(26)の行の当期の増減を記載します。
1行目から25行目については、該当があれば記載します。
例えば、利益準備金が当期に増えたとすれば、「当期の増減」の「増③」にその増えた金額を記載するといった要領です。
上の例では「賞与引当金」が記載されています。
賞与引当金は法人税法では所得金額に反映させませんので、当期中に繰入れた金額1,500,000円は損金不算入にして利益積立金額を増やし、戻入益1,000,000円は益金不算入にして利益積立金額を減らすということをやります。
うぇ〜
全然わからない〜
利益剰余金が繰越利益剰余金以外になく、別表4の加算・減算項目がなければ書く必要がありません。
安心してください。1行目から25行目については、多くの中小企業では空欄になることがほとんどです。
ただし、26行目の繰越損益金は必ず記載が必要です。とても簡単です。
次の図のように26行目の「期首現在利益積立金額①」の値を隣の「減②」欄に転記します。
多くの中小企業では、この部分でやるべきことは、左から右に繰越損益金を転記するくらいです。
はぁ、よかった
STEP3 未納法人税等の当期の減と中間を書く
続いては(27)〜(30)行目の書き方です。
⑴ 未納税額の「中間」欄を書く
「法人税及び地方法人税」「道府県民税」「市町村民税」について、中間納税の義務があった場合は、納付すべき金額(納めている納めていないにかかわらず)を次のように対応する欄に記載します。
中間税額の税目 | 転記先(別表5(1)) |
---|---|
法人税及び地方法人税の中間税額 | 「未納法人税及び未方地方法人税(28)」行の「中間」欄 |
道府県民税の中間税額 | 「未納道府県民税(29)」行の「中間」欄 |
市町村民税の中間税額 | 「未納市町村民税(30)」行の「中間」欄 |
事業税は別表5(1)には記載しません。
「未納事業税」という行はありませんよね。
⑵ 未納税額の「当期の減②」欄を書く
「法人税及び地方法人税」「道府県民税」「市町村民税」について、当期に納めた金額を「当期の減②」欄に記載します。
基本的には同じ行の①列の値と③列の「中間」の値を合算した値が②列に入ります。
納めていない金額があれば、①列の値と③列の「中間」の値を合算した値にはなりません。全て納めていれば①と③を足した値が②に入ります。
⑶ 納税充当金の「当期の減②」欄を書く
納税充当金とは、未払法人税等のことです。
当期に未払法人税等が減少した(仕訳で借方に切られた)合計額を「当期の減②」欄に記載します。
今回の例では、合計で1,705,300を現金預金で支払って次のように仕訳したという意味です。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
未払法人税等 | 1,705,300 | 現金預金 | 1,705,300 |
この場合、次のように「納税充当金(27)」行の「減②」列に記載します。
一つ一つ意味合いを確認しながら未納税額と納税充当金の部分の書き方を解説してきましたが、一般的には別表5(2)を先に作成しますので、その別表5(2)ができていれば単純に次のように別表5(1)に転記します。
別表5(2)から別表5(1)への転記による方法
ここまでが、1回目に作成できる別表5(1)の書き方です。
この続きは、別表1で法人税が確定し、第6号様式と第20号様式で地方税が確定し、決算書と別表5(2)が完成しないと別表5(1)を書き進めることができません。
これらの申告書類が完成してからまた戻ってきて書き上げることになります。
STEP4 別表1、第6号様式、第20号様式、決算書、別表5(2)を完成させる
別表5(1)を完成させるためには、別表1、第6号様式、第20号様式、決算書、そして別表5(2)が完成していないと書き上げることができないので、これらの書類を完成させます。
完成させたらまた別表5(1)に戻り、「利益積立金額の計算に関する明細書」部分を完成させます。
STEP5 「繰越損益金」以下「当期の増③」欄を書く(「中間」除く)
⑴ 繰越損益金(26)の「当期の増③」と「差引翌期首現在利益積立金額④」を書く
貸借対照表が完成したら「繰越利益剰余金」の値を「繰越損益金(26)」行の「当期の増③」と「差引翌期首現在利益積立金額④」に転記します。
転記元【貸借対照表】 | 転記先【別表5(1)】 |
---|---|
繰越利益剰余金の値 | 「繰越損益金(26)」行ー「当期の増③」 |
「繰越損益金(26)」行ー「差引翌期首現在利益積立金額④」 |
⑵ 納税充当金(27)と未納税金(28)〜(30)の「当期の増③」と「差引翌期首現在利益積立金額④」を書く
納税充当金(27)と未納税金(28)〜(30)の「当期の増③」と「差引翌期首現在利益積立金額④」は、別表5(2)から転記してきます。
つまり、別表5(2)が先に完成している必要があります。
別表5(2)の作成方法がわからない方は、次の記事のとおりに書いていくことで完成させることができます。
別表5(2)から次のように転記します。
別表5(2)から別表5(1)への転記図
ここまでで別表5(1)はほぼ完成ですが、最後に「差引翌期首現在利益積立金④」の列のうち、記載がされていない行の値を計算して完了です。
STEP6 「差引翌期首現在利益積立金④」を書く
別表5(1)全体を確認し、「差引翌期首現在利益積立金④」の列が記載されていない行があったらその行の中で次の計算をして記載します。
①列の値 – ②列の値 + ③列の値
これで別表5(1)は完成しました。
記載例を最後に確認しておきましょう。
別表5(1)記載例
別表5(1)が完成しました。
別表5(1)を作成するにあたって決算書や別表5(2)などからたくさん転記してきました。
そこで不安になるのが転記が正しくできたか、別表5(1)が正しく書けたか、この点になると思います。
それを確認する方法があります。その方法を紹介します。
3 別表4と別表5(1)で検算
別表5(1)は法人税法上の貸借対照表の役割があると説明しました。
法人税法上は決算書の貸借対照表から加算減算して作成します。その調整が正しく行われたかを別表4と別表5(1)の一定の値を使って検算することができます。
この検算の方法が、実は別表5(1)の「御注意」の部分に記載されています。
別表4と別表5(1)の検算式は次のとおりです。
別表4と別表5(1)の検算式
期首現在利益積立金額合計(31)行ー①
+
別表4の所得金額又は欠損金額(48)ー②
ー
中間分、確定分法人税、県民税、市町村民税の合計額
=
差引翌期首現在利益積立金額合計(31)ー④
この式に当てはめて実際に別表4と別表5(1)を使って検算してみましょう。
このように❶〜❽を検算式に当てはめて足し引きすると、10,114,900という結果になり、これが❾と一致するので、正しく転記がされていることがわかります。
これで別表4と別表5(1)と決算書の整合性が取れていることが確認できます。
検算をすることで別表5(1)の転記が正しく行われていることが確認でき、一安心です。
続いては、別表5(1)は、還付の場合は書き方がこれまで解説してきた書き方と多少異なることもあり、これで合ってるかな?と初めて書く方は悩むこともあるかと思いますので、ここで別表5(1)のバリエーションを紹介する意味で様々なケースの記載例を紹介したいと思います。
4 別表5(1)の様々なケース別記載例
自社が書いた別表5(1)が正しいものかどうかを確認してもらう意味で一般的な中小企業でありうべきケースを想定して、次の4パターンの別表5(1)の記載例を紹介します。
- (設立初年度)別表5(1)の記載例
- (設立2年目以降)納付の申告だった場合(中間なし)の別表5(1)記載例
- (設立2年目以降)納付の申告だった場合(中間あり)の別表5(1)記載例
- (設立2年目以降)還付金があった場合の別表5(1)記載例
まずは設立初年度の記載例から紹介します。
4-1 (設立初年度)別表5(1)記載例
この例は設立初年度が赤字であった場合の記載例です。
黒字の場合は、28行目の「確定」欄に設立初年度の別表1で算出された法人税と地方法人税の納付すべき金額を合計した値を記載すればOKです。
32行目の「資本金又は出資金」の行は、設立初年度は期首の段階で資本金はありませんので、設立時の資本金は「当期の増③」に記載します。
4-2 (設立2年目以降)納付の申告だった場合(中間なし)の別表5(1)記載例
設立2年目以降で還付ではなく、税金を納付しているケースの記載例です。
中間納付をしていない場合のいたってよくある中小企業の別表5(1)の記載例です。
この例は、前期の赤字に続いて当期も赤字のケースで地方税を均等割だけ納付しているケースです。
4-3 (設立2年目以降)納付の申告だった場合(中間あり)の別表5(1)記載例
この例は、中間税額が発生していて、黒字決算で法人税も納付しているケースの記載例です。
これも中間税額を納付している場合のいたって普通にある中小企業の別表5(1)の記載例になります。
4-4 (設立2年目以降)還付金があった場合の別表5(1)記載例
税金が還付となった場合は、前述の書き方で記載しなかった書き方が必要になるのでここで紹介します。
還付となった翌期の処理にも特徴がありますのでそちらの記載例も紹介します。
まず還付となった決算期の別表5(1)の記載例から紹介します。
【当期の別表5(1)記載例】
還付金があった場合は、還付となった税目を「未収還付○○税」として「当期の増」に還付金額を記載する必要があります。
上の記載例では3行目から5行目で確認できます。
28行目から30行目の「確定」欄については、還付となった場合は空欄になります。
また還付となった場合は、前述の検算式では一致しなくなります。
先ほど別表4と別表5(1)の検算式にもう一つ式が加わります。(下の式の太字赤ラインの部分)
還付となった場合の別表4と別表5(1)の検算式
期首現在利益積立金額合計(31)行ー①
+
別表4の所得金額又は欠損金額(48)ー②
ー
中間分、確定分法人税、県民税、市民税の合計額
+
未収還付法人税、県民税、市民税の合計金額
=
差引翌期首現在利益積立金額合計(31)ー④
続いて還付となった決算期の翌期の別表5(1)の記載例を紹介します。
次の記載例の3から5行目に注目してください。
【還付の翌期の別表5(1)記載例】
還付があった決算期の次の決算期の別表5(1)では、還付となった税目は、ここで解説した書き方どおりに書けば「期首利益積立金額①」に金額がありますので、その同額を同じ行の「当期の減②」に記載します。
この処理に例外はありません。なぜなら税務署や役所は必ず振り込んできます。必ず「当期の減②」に①の値と同額を記載します。
記載例の紹介は以上です。
中小企業でありうべきケースを想定して4パターンの記載例を紹介しました。
別表5(1)の書き方で別表5(1)を書き上げたあと、自社にあったケースの記載例を参考に別表5(1)を見直ししてみてください。
ここまで、別表5(1)の書き方を解説し、別表5(1)は一度に作成できないとか、法人税や地方税を算出して別表5(2)や決算書を作成してから転記するとか、書き終わったら検算してとか、記載例で還付金があった場合の書き方に注意とか色々解説してきました。一つ一つは決して難しいものではなかったと思います。
ただこう思う方も少なからずいるのではないでしょうか。
難しい!ということはなかったけど、いろいろ確認すべきことがあって正直面倒だなぁ
間違えても嫌だし
やっぱ税理士に頼んだ方がいいのかなぁ
そんな方にぴったりな方法があります。その方法なら
・計算不要
・検算不要
・還付金も自動調整
・申告書の作成手順を気にする必要なし
手書きの何倍も簡単に高速に正確に別表5(1)を作成することができます。
5 別表5(1)を10倍早く正確に簡単に作成する方法
手書きの何倍も簡単に高速に正確に別表5(1)を作成する方法、それは、クラウド税務ソフト「全力法人税」を使うという方法です。
完成した別表5(1)を次のようになんと無料で画面上で確認できてしまいます。
上記画面上はすべて自動計算されており、この画面上で別表5(1)のために入力したものはまったくありません。
これまでたくさん別表5(1)の記載例を掲載してきましたが、すべてこの全力法人税で難なく量産してきました。
全力法人税を使ったからこそ、ほとんど自動で別表類を作成してくれるので、これだけ豊富な記載例を掲載することができたのです。
別表5(1)と密接に関係している別表4と別表5(2)の画面も確認してみましょう。
全力法人税の別表4画面
全力法人税の別表5(2)画面
実は、別表5(2)画面に対応するこの「法人税等の納付状況」画面で前期以前の税金の納付状況や当期の中間税額の納付状況を画面の案内どおりに入力すると、別表4と別表5(1)、別表5(2)を自動で計算する仕組みになっています。別表5(1)と別表5(2)を完成するために必要な法人税の申告書の別表1、地方税の申告書の第6号様式や第20号様式も自動で計算されます。
なお、この別表5(1)の入力画面までに次のように、法人の基本情報の登録や、当期の決算の状況を入力する必要があります。
❶ 基本情報を入力後「保存」して「次へ」を選択する
法人名や決算期等の法人の基本的な情報を入力してください。
❷ 「申告情報」を入力後「保存」して「次へ」を選択する
作成を行う申告書の情報を入力してください。
❸ 「決算情報」の会計データのインポートもしくは、入力を行う。
全力法人税で申告書の作成を行うには、「決算情報」を会計ソフトから出力した会計データをインポートするか、または入力する必要があります。
弥生会計(弥生オンライン含む)、MFクラウド会計、freee、会計王の会計データを全力法人税に取り込むことができます。
またその他の会計ソフトの場合は会計データを全力法人税に取り込める形に整形することでインポートすることも可能です。
全力法人税へインポートするマニュアルを参考までに以下に挙げておきます。
弥生会計からデータをインポートする方法
Freee(フリー)の会計データをインポートする方法
マネーフォワードの会計データをインポートする方法
弥生会計オンラインの会計データをインポートする方法
会計王の会計データをインポートする方法
あらゆる会計ソフトの会計データをインポートする方法
今回はイメージがしやすい会計ソフトのデータを読み込まずに申告書を作成する方法をご紹介します。
その場合は、次の画面で「その他の方法で作成する」を選択します。
手入力が増えますが、それでも簡単に申告書を作成することができます。
法人税の申告書を作成するのに必要な決算情報を入力します。
このデータだけで法人税の確定申告に必要な別表を簡単に作成できます。
入力が終わったら「登録」ボタンを押します。
このように法人税の申告に必要な法人の状況や決算の状況を入力し、そして先ほどの別表5(2)の入力画面で必要事項を入力すれば、面倒な別表4、別表5(1)、別表5(2)への必要な転記も完了しているのです。
全力法人税は、法人税の知識がなくても誰でもかんたんに法人税の申告書が作成できるをコンセプトとしたソフトです。
かなりの高機能にもかかわらず一部の申告書の出力を除いてすべての機能を無料で利用できます。これほど高機能で無料で利用できるものを他に知りません。
実績は、これまでアカウントの登録数は18,000を超えています。
元国税調査官・税理士(というか私)が監修しており、お客様レビューでの高評価数550件越えで信用できます。
レビューの詳細をご覧になりたい方は次のボタンをクリックしてください。
別表5(1)を手書きで作成し、別表5(2)や別表4に転記した場合と、全力法人税を使って別表5(1)の作成と別表5(2)や別表4への転記をした場合の比較をしてみます。
別表5(1)の作成を手書きでした場合と全力法人税でした場合の比較表
手書き | 全力法人税 | |
---|---|---|
申告書の書き方の知識 | いる | いらない |
作成時間(別表4 別表5(1)転記含む)※ | 約60分 | 最短5分 |
転記ミスの可能性 | あり | なし |
申告書の見た目 | 字による | 印字 → 整然としている |
価格 | 無料 | 無料 ただしすべての申告書類を出力したい場合 年間10,000円+税(初年度19,620円+税) |
電子申告 | できない | できる |
全力法人税は、一部の申告書の出力を除いてすべての機能を無料で利用できますが、別表4と別表5(1)、別表5(2)は有料版でないと出力はできません。(全力法人税の有料版と無料版の違い)
ただし、無料版でも画面上で多くの部分を確認することができますので、無料版の全力法人税の画面を見ながら別表を書くことで何倍も早く正確に別表4と別表5(1)、別表5(2)を作成することに役立てることができます。
全力法人税は、無料版でも法人税の確定申告書作成にかなり貢献してくれます。
アカウント登録は、全部の書類を印刷したい場合にのみ有料会員となる必要があるだけで、それ以外の機能をすべて無料で利用することができますので、どんな感じで作成されるかをしっかり確認した上で、購入することが出来るので、ご安心ください。
法人税の知識不要で法人税の申告書類一式が作成でくるクラウドソフト「全力法人税」を試してみたい方は次のボタンをクリックして詳細を確認してみてください。
6 法人税の別表5(1)のまとめ
いかがだったでしょうか。
この記事を見ながら実際に別表5(1)を書いていった方は、別表5(1)を書き上げることができたと思います。
初心者でも中小企業の別表5(1)なら十分自力で作成できるということが理解いただけたかと思います。
最後にここまで解説してきた内容をおさらいしたいと思います。
- 別表5(1)は税務上の貸借対照表の役割を持っていました。
税務上の所得と会計上の利益が一致しないことから別表5(1)によって調整する必要がありました。
(この辺りを完全に理解するのはたいへん難しいのですが、別表5(1)を書き上げるだけを考えればこの辺りのことを知らなくても何ら問題ありませんでした。) - 別表5(1)を作成する前に決算を終えている必要がありました。(当期の未払法人税の仕訳帳への登録を除く)
- 別表を作成するには順番があり、別表5(1)は他の別表が完成していないと書き上げられませんでした。
- 別表5(1)を図解しながら転記すべき事項を一つ一つ確認していきました。
- 別表5(1)の記載例を多数紹介し、自社のケースに当てはめて確かめとして使えるようにしました。
- 別表5(1)を手書きするには手間がかかりましたが、何倍も早く正確に簡単に作成する方法がありました。(税務ソフト「全力法人税」を使う)
全力経理部では、このほかにも初心者でも法人税の申告書を自力で作成できるよう法人税の申告書類の書き方を多数紹介しています。
これまでブログで本当に法人税の申告書を書き上げることのできるサイトは皆無でした。
全力経理部では、ブログで初めて初心者でも自分で申告書を書けるをコンセプトにこれを有料級の記事で実現しています。
自力で法人税の申告書を書き上げたいと思っている方は是非ご活用ください。
法人設立初年度、お金もなく、税理士に頼めず個人で法人税申告ですが、なかなか分からずに苦労していました。
ここのHPはどこよりも詳しく書かれていて、本当に助かりました。
ありがとうございました。
いつか恩返しができればいいなと思います。
お礼が言いたかっただけですので、返信不要です。
本当にありがとうございました。