防衛特別法人税とは?税額0円でも申告必須の落とし穴

会社員 新米社長

防衛特別法人税ってニュースで見たんですけど、うちみたいな小さい会社にも関係あるんですか?新しい税金が増えるなんて不安で…。

安心してください。売上3,000万円未満の中小企業なら、ほとんどの場合で税額は0円です。ただし、税額が0円でも申告書の提出は全法人に義務付けられています。これを知らないと無申告扱いになってしまいますよ。この記事を読めば、計算方法から申告書の書き方まで、すべてわかるようにしますね。

弁護士 元国税税理士
この記事の特徴
本記事は、税理士に頼らず自力で法人の経理処理から確定申告までを攻略したいという方向けの記事です。
中小企業向けに初心者にもわかりやすく元国税調査官で税理士が実務で必要となる知識に絞って可能な限り簡単に解説していきます。

まずは防衛特別法人税の概要と計算方法について解説し、その後で申告書(別表一次葉一)の具体的な書き方を記載例つきで解説していきます。


1 防衛特別法人税とは?

防衛特別法人税は、令和7年3月31日に公布された「令和7年改正法」により新たに創設された税金です。正式には「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法(防確法)」に基づいています。

令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、法人税を納めるすべての法人が対象となります。

防衛特別法人税のポイント
  • 対象:法人税の納税義務がある全法人
  • 税率:課税標準法人税額 × 4%
  • 基礎控除:500万円(基準法人税額から控除)
  • 開始時期:令和8年4月1日以後に開始する事業年度から
  • 申告義務:税額0円でも申告書の提出が必要

1-1 どんな法人が対象?

防衛特別法人税の納税義務者は、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人です(防確法8)。つまり、普通法人・協同組合等を問わず、法人税の確定申告をしているすべての法人が対象になります。

対象にならない法人
  • 公益法人等で収益事業を行っていない法人
  • 国内源泉所得を有しない外国法人
  • 清算所得に対する法人税を課される平成22年9月30日以前に解散した普通法人・協同組合等

1-2 課税事業年度はいつから?

防衛特別法人税の課税対象となる事業年度(課税事業年度)は、法人の令和8年4月1日以後に開始する各事業年度です(防確法11)。

ここで注意が必要なのは、決算期によって適用開始のタイミングが異なるという点です。

決算期最初の課税事業年度申告期限
3月決算令和8年4月〜令和9年3月令和9年5月末
9月決算令和8年10月〜令和9年9月令和9年11月末
12月決算令和9年1月〜令和9年12月令和10年2月末

3月決算法人が最も早く、令和9年5月末の確定申告から防衛特別法人税の申告が必要になります。


2 防衛特別法人税の計算方法

計算の全体像を図にすると、以下のようになります。

防衛特別法人税の計算フロー

2-1 基準法人税額とは

基準法人税額は、各事業年度の所得の金額につき、法人税の税額の計算に関する法令の規定により計算した法人税の額です(防確法10一)。

ここで最も重要なポイントがあります。

基準法人税額の計算で除外する控除
基準法人税額は、以下の税額控除を適用しない状態で計算します。
  • ①所得税額の控除(法法68)
  • ②外国税額の控除(法法69)
  • ③分配時調整外国税相当額の控除(法法69の2)
  • ④仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除(法法70)
  • ⑤税額控除の順序(法法70の2)
つまり、所得税額控除等を差し引く「前」の法人税額が基準法人税額です。
会社員 新米社長

えっと、つまり法人税の確定申告書で所得税額控除をした後の金額じゃなくて、する前の金額ってことですか?

その通りです。例えば法人税額が120万円で所得税額控除が5万円ある場合、法人税の納付額は115万円ですが、基準法人税額は控除前の120万円になります。ここを間違えやすいので要注意です。

弁護士 元国税税理士

2-2 基礎控除額と課税標準法人税額

基準法人税額から年500万円の基礎控除額を差し引いた金額が、課税標準法人税額です(防確法13①一、13③一)。

計算式
課税標準法人税額 = 基準法人税額 − 500万円
(0以下の場合は0円)

つまり、基準法人税額が500万円以下であれば、課税標準法人税額は0円になります。

法人税額が500万円になる所得金額を計算してみましょう。中小法人は800万円以下の所得に15%、800万円超の所得に23.2%の税率が適用されます。

法人税額500万円になる所得金額
800万円 × 15% +(X − 800万円)× 23.2% = 500万円
120万円 +(X − 800万円)× 23.2% = 500万円
(X − 800万円)= 380万円 ÷ 23.2% ≒ 1,638万円
X ≒ 2,438万円

つまり、所得金額が約2,400万円以下であれば防衛特別法人税は0円になります。ただし税額0円でも申告書の提出は必要です。

2-3 防衛特別法人税額の計算

防衛特別法人税額は、課税標準法人税額に4%の税率を乗じた金額です(防確法14①、15)。

計算式
防衛特別法人税額 = 課税標準法人税額 × 4%

2-4 留保金課税がある場合の計算(特定同族会社)

留保金課税は資本金1億円超の特定同族会社に適用される制度です。資本金1億円以下の中小企業の方は対象外ですので、防衛特別法人税の計算で留保金課税を気にする必要はありません。この部分は読み飛ばしていただいて大丈夫です。

弁護士 元国税税理士

特定同族会社の留保金課税(法法67①)の適用を受ける法人は、基礎控除額の計算が2段階になります。概要だけ記載しておきます。

留保金課税がある場合の計算概要
  • 基準法人税額を「加算前基準法人税額」と「基準法人税加算額(留保金課税による加算分)」に分解する
  • (イ) 加算前基準法人税額から基礎控除額(500万円)を控除
  • (ロ) 基準法人税加算額から基礎控除残額((イ)で控除しきれなかった残額)を控除
  • 課税標準法人税額 = (イ) + (ロ)
該当する法人は税理士に相談されることをおすすめします。

3 中小企業の具体例で理解する

ここでは、実際の数字を使って2パターンの計算例を見てみましょう。

3-1 パターン①:税額0円の場合(中小企業の典型例)

記載例① 中小企業の典型例(税額0円)

項目金額
所得金額800万円
法人税額(税率15%)120万円
所得税額控除5万円
法人税の納付税額115万円
基準法人税額(所得税額控除を適用しない法人税額)120万円
基礎控除額500万円
課税標準法人税額0円(120万 − 500万 = △380万 → 0円)
防衛特別法人税額0円
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