
初めての法人税の確定申告を自分でやってみようと思い、税務署から郵送されてきた申告書類を確認してみた。
申告書類を一枚一枚確認していき別表6(1)(所得税額の控除に関する明細書)を手にする。
所得税額の控除に関する明細書?
所得税が法人税に関係することがあるのかな?
それに税額の控除って何だろう…
全員が提出する必要のあるものなのだろうか…
別表6(1)を見てみても全くわからない…
確かに初めて別表6(1)を見た場合、一体何を書けばいいものかよくわかりませんよね。
記入欄が多く、見るだけで嫌になる人もいるかと思います。
でも、安心してください。
多くの中小企業では、なんと!
記入が必要な欄は、別表6(1)全体の20%程しかないのです!
実は多くの中小企業は、別表6(1)は、法人税の別表の中でも簡単に作成できる書類の一つです。(投資を事業のメインにしている場合は、煩雑になりがちですが。)
しかも、その簡単な別表6(1)を作成することで会社は得をします。
税金が安くなるということです。
この記事では、別表6(1)を作成するとどのように税金が安くなるのか?
別表6(1)とはどのような書類で、どのように書くものか?
このような疑問を解消します。
別表6(1)を今まで見たことがない方でも、わかりやすく的を絞って解説していきます。
この記事の特徴
中小企業向けに初めて法人税の申告書を作成する初心者の方でも、申告書類の書き方がわかるように解説します。
源泉所得税の税額控除についての内容を、大企業に関するものまで含めて解説すると大変な分量になりますが、中小企業に的を絞ることで知らなければならない事項が激減します。
多くの中小企業にとっては、別表6(1)は最も簡単に作成できる書類の一つで、誰でも簡単に作成できるので安心してください。(株式投資を主に行なっている業種を除く)
数多くの税務調査を国税調査官として行ってきた経験を持つ私が、重要ポイントは押さえながらメリハリをつけてわかりやすく解説します。
繰り返しますが、この記事は中小規模の会社の法人税の申告を自力で行う方向けの記事です。
- 別表6(1)とは、どのような書類なのか
- 源泉所得税の税額控除というのはどのような制度なのか
- 別表6(1)の書き方
それでは、まずは別表6(1)(所得税額の控除に関する明細書)という書類はどのような書類なのかを解説していきたいと思います。
目次
- 1 別表6(1)(所得税額の控除に関する明細書)とは
- 2 別表6(1)の書き方
- 3 まとめ
1 別表6(1)(所得税額の控除に関する明細書)とは
別表6(1)(所得税額の控除に関する明細書)の解説を行っていきます。
まずは、別表6(1)という申告書類の役割について確認していきます。
1-1 別表6(1)の役割とは
まずは、別表6(1)という書類は、どのような役割を持った書類なのかを確認してみましょう。
別表6(1)の正式名称は「所得税額の控除に関する明細書」と言います。
なるほど、この別表6(1)という書類は「源泉所得税の税額控除」を行う場合に作成する書類ってことですね。
でも、所得税の税額控除といわれても正直ピンと来ないです…
それでは、次の章から源泉所得税の税額控除とは、どのようなものなのか詳しく見ていくことにしましょう。
1-2 源泉所得税の税額控除とは
「源泉所得税の税額控除」とはどのようなものなのかを確認していきます。
「源泉所得税の税額控除」…
そもそも「税額控除」ってどのようなものなんでしょうか?
では、まず「税額控除」とはどのようなものなのかを確認していきます。
1-2-1 税額控除とは
「税額控除」というのは、納付すべき法人税を計算する際に、法人税額から直接控除することをいいます。
税額控除とは別に「所得控除」というものがありますが、こちらは課税所得から控除するものであり、税額控除の方が、節税効果は高くなります。
イメージとしては、以下の画像のようになります。
所得控除は、課税所得を減らすことができます。
法人税額は、課税所得に一定の税率をかけて計算します。
法人税額を算出した後に、法人税額を直接減らせるのが税額控除です。
法人税額を直接減らせるので、税額控除は所得控除に比較してより節税効果が大きいと言えます。
そして、税額控除には、二重課税を排除する目的から設けられているものや、雇用促進等特定の政策目的から設けられているものなど数種類あり、例えば以下のようなものがあります。
主な税額控除の一覧
- 源泉所得税の税額控除
- 外国税額控除
- 試験研究費の特別控除
- 雇用者の数が増加した場合の特別控除
- 中小企業経営強化税制
- 中小企業投資促進税制 etc.
なるほど、税額控除についてはなんとなくわかりました。
では、源泉所得税の税額控除とはどのような内容なのでしょうか。
では、ここからは、源泉所得税の税額控除に的を絞ってその内容を確認していきたいと思います。
1-2-2 所得税額控除の制度の概要
法人が、利息や配当を受け取るといった一定の取引を行ったときに所得税を天引きされる場合があります。
法人なのに所得税??
法人に所得税がなんの関係があるのでしょうか?
法人が利子や配当を受け取る場合には、所得税が引かれて支払われます。
これは、利息や配当収入に対する源泉徴収制度で、所得税法で定められているからです。
しかし、所得税は個人に係る税金であり、法人の収益に対して掛かる税金は法人税です。
所得税額控除とは、本来所得税を納める義務のない法人が、源泉徴収で所得税を納付した場合、この所得税を「法人税の前払い」として法人税額から控除することを認める制度となります。
法人税法では所得税の損金算入は認められていますが、それに対して所得税法では、源泉所得税を必要経費とすることは認めれておらず、税額控除を行います。
ここで、法人税法と所得税法との間で、税額控除の有無による有利不利が出ることから、法人税法と所得税法との整合性を取るために設けられた制度です。
うーん、、なんか難しそうですね。
「源泉所得税の税額控除」って利子や配当がある会社は必ず行わなければならないのですか?
決してそういうわけではありません。
法人の場合は、天引きされた所得税額を損金に算入するだけの処理と税額控除を適用するいずれも選択できます。
では、別表6(1)というのは、どのような場合に作成する必要があるのか、また法人の確定申告を行う上で必ず必要になるような書類なのかを詳しく見ていくことにしましょう。
1-2-3 別表6(1)を作成する必要がある会社とは、どのような会社なのか?
まず、別表6(1)という書類というのは、どのような会社が作成するものなのかを確認していきます。
配当金といえば、以前、「別表8」という別表を作成したことがありますが、別表6(1)と別表8の違いって何ですか?
次のテキストを入力
コラム「別表6(1)と別表8って何が違うの?」
ここで、税務初心者の方が疑問に思うかもしれない点を取り上げます。
株式の配当がある場合には、別表6(1)とセットで別表8(1)を作成するケースがよくあります。
この別表6(1)と別表8(1)の違いについて簡単に解説します。
別表6(1)と別表8(1)の二つの別表はどちらも「受取配当金」に関係しており、何が違うのかと疑問に思う方もいるでしょう。
それぞれの別表の簡単な概要は以下のとおりです。
- 別表6(1)は、利子や配当金を受け取る際の源泉所得税を法人税から控除する際に作成する書類です。
- 別表8(1)は、受取配当等の益金不算入に関する明細書といい、受取配当等の益金不算入を適用するために求められる書類です。
どちらの別表についても、税額を少なくする書類ですが、この二つの別表は目的と効果が全く異なります。
別表8(1)について、詳しく知りたい方は次の記事をご覧ください。
1-2-4 利息や配当金を受け取っている会社は必ず別表6(1)を作成する必要があるのか。
次に、利息や配当金がある場合、必ず別表6(1)を作成しなくてはいけないのでしょうか。
別表6(1)を作成し、源泉所得税の税額控除を行うかどうかは、申告者の任意となります。
このため別表6(1)は、別表4や別表5(1)などの法人税申告において必ず作成しなければならない書類とは違い、納税者が「減額される税額」と「別表6を作成する手間」を考えて作成するかしないかを決めることができます。
法人が利息等を受け取る場合、源泉所得税が控除されて支払われます。
その源泉所得税を、損金経理するか、別表6(1)を作成して所得税額控除とするか、選択することができます。
通常は、前述のとおり、所得控除となる損金経理するよりも所得税額控除の方が有利ですが、その分、別表6(1)の作成が必要する手間がかかります。
利息の源泉所得税も通常は少額なので、別表6(1)は作成せず、源泉所得税の損金算入を選択している(「法人税、住民税及び事業税」などの勘定科目で費用として計上する)会社も多いです。
コラム「所得税額控除と所得税の損金算入はどのくらい税額が変わるのか。」
利子や配当などで徴収されている源泉所得税の金額が多くなればなるほど、所得税額控除が有利になります。
しかしながら、多くの中小企業の場合、天引きされる所得税といえば、預金利子から天引きされるケースがほとんどで株式投資をしているケースは稀といえます。
その場合、天引きされている税額は少額であるケースが多くなってきます。
場合によっては100円以下というケースも多いです。
別表6(1)を作成する手間と得する税額を考えて、税額控除と損金に算入させる方法といずれを選択するかを比較して決定されることをおすすめします。
源泉所得税の税額控除を行うことができるが、別表6(1)を作成せずに税額控除をしなかったとしても税務署から指摘を受けるということはありません。
なるほど、選択することができるんですね。
私の会社は、配当の受け取りがありますので、税額が少なくなるなら別表6(1)について勉強したいと思います。
先ほどから「利子や配当」とありますが、具体的にどのようなものが税額控除の対象となるのでしょうか。
1-2-5 所得税額控除の対象となる所得税とは
ここまで利子や配当がある場合に所得税額控除ができると述べてきましたが、具体的に所得税額の控除の対象となる利子や配当等の種類を確認していきましょう。
次の表をご覧ください。
№ | 控除される利子又は配当等の種類 |
1 | 公社債の利子 |
2 | 公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配 |
3 | 国外公社債又は国外公社債投資信託若しくは公募公社債等運用投資信託の収益の分配 |
4 | 利益の配当、剰余金の分配、基金利息 |
5 | 投資信託及び特定目的信託の収益の分配 |
6 | 国外投資信託の配当等 |
7 | 国外株式等の配当等 |
8 | 割引債の償還差益 |
9 | 預貯金の利子 |
10 | 合同運用信託の収益の分配 |
11 | みなし配当 |
12 | 日々決算を行い、その都度その決算収益の全額を未収収益分配金勘定に振り替えることとされている証券投資信託の収益の分配 |
13 | 定期積金に係る契約に基づく給付補てん金 |
14 | 銀行法の契約に基づく給付補てん金 |
15 | 抵当証券の利息で一定のもの |
16 | 金その他貴金属等の買入れ及び売戻しに関する契約で、その契約に定められた期日、金額により取り戻す旨の定めがあるものに基づく利益 |
17 | 外国通貨で表示された預貯金でその元本及び利子をあらかじめ約定した率により本邦通貨又は当該外国通貨ときは、その記載がなかつた金額につき第一項の規定を適用することができる。以外の外国通貨に精算して支払うこととされているものの差益 |
18 | 生命保険契約若しくは損害保険契約又はこれらに類する共済に係る契約で保険料率等を一時に支払う等一定の事項をその内容とするもののうち、保険期間等が 5 年以下のもの及び保険期間等が5年を超えるものでその保険期間等の初日から 5 年以内に解約されたものに基づく差益 |
19 | 匿名組合契約に基づく利益の分配 |
20 | 馬主が受ける競馬の賞金 |
21 | 懸賞金付預貯金等の懸賞金等 |
22 | 短期公募で一定のもの |
えっと…こんなにあるんですか…
では、この中で私の会社のような中小企業に関係がありそうなのはどれになりますか?
中小企業が別表6(1)を作成する理由となりそうなのは、以下の4つが多いでしょう。
- 預金の利子
- 公社債の利子
- 株式の配当
- 投資信託での配当金
これを押さえておけば、中小企業ではほとんどのケースをカバーできると思いますよ。
安心しました。
源泉所得税の税額控除を行える利子や配当についてわかりましたが、この利子や配当で差し引かれた所得税額を全額を法人税から控除できるということですか?
どうやって計算するんでしょうか?
それでは、源泉所得税の税額控除額の計算方法について確認していきましょう。
1-2-6 源泉所得の税額控除額の計算
税額控除の金額は基本的には、源泉徴収された税額が税額控除の金額となります。
ただし、
別表6(1)の作成が面倒と言われる理由はこの部分にあります。
元本の所有期間での按分計算を行う必要がある所得税は以下のとおりです。
№ | 元本の所有期間に応じて控除税額を按分する必要がある所得税 |
1 | 公社債の利子 |
2 | 公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配 |
3 | 国外公社債又は国外公社債投資信託若しくは公募公社債等運用投 資信託の収益の分配 |
4 | 利益の配当、剰余金の分配、基金利息 |
5 | 投資信託及び特定目的信託の収益の分配 |
6 | 国外投資信託の配当等 |
7 | 国外株式等の配当等 |
8 | 割引債の償還差益 |
預金利息は入っていませんね。
預金利息には面倒な按分計算をする必要がありません。
したがって、預金利息だけなら別表6(1)の作成は、決して難しくありません。
公社債の利子や配当等の税額控除額の所有按分の計算方法は「原則法」と「簡便法」の2通りあります。
この2つの方法は選択制となっており、法人が有利な方法を使って適用します。
個別法とは
個別法というのは、実際の元本の所有期間によって期間按分を行い、算出する方法のことをいいます。
算出式は以下の通りとなります。
簡便法とは
簡便法というのは、実際の取得日に関係なく、すべてが会計年度の真ん中で取得したものと仮定して算出する方法です。
算出式は以下の通りとなります。
なんか、すごく難しそうです…
算式だけ見るとわかりませんよね。
それでは、具体例を使って見ていくことにしましょう。
設例を用いて所得税額控除の元本所有期間による按分計算の方法を確認していきましょう。
計算例の前提
設例内容は以下の通りです。
設例内容
決算期:3月31日決算
株式の所有状況:A社株のみ保有し、取得状況は以下のとおり。
・1月1日の所有株式数:3,000株(配当の計算期間 1月1日から12月31日)
・6月20日取得株数:7,000株
・12月31日(基準日)時点の所有株数:10,000株(3,000株 + 7,000株)
受取配当金の内容:10,000株×@10円 = 100,000円(所得税額 20,000円)
個別法での計算
個別法では、所有期間に応じてそれぞれ期間按分を行います。
算出式は、以下の通りです。
A社の株式は、配当の計算期間中、継続して持っていた3,000株と配当の計算期間の途中である6月20日に取得した7,000株があります。
この株による、配当金の源泉所得税20,000円を期間按分すると以下のようになります。
手順としましては、
❶まず、天引きされた20,000を、1月1日から取得していた3,000株の分と途中取得した7,000株の分に按分します。
❷次に、❶で按分された所得税額に対してさらに保有期間で按分します。
次に、簡便法で計算していきます。
簡便法での計算
簡便法は、個別法とは違い、実際の取得日に関係なく、すべてが期の真ん中で取得したものと仮定して期間按分を行います。
算出式は以下の通りです。
設例は個別法と同じく、A社の株式は、配当の計算期間中、継続して持っていた3,000株と配当の計算期間の途中である6月20日に取得した7,000株があります。
しかしながら、簡便法の場合、期間中に増加した元本は、すべて期の真ん中(1/2)に取得したと仮定して按分することになります。
この株による、配当金の源泉所得税20,000円を期間按分すると以下のようになります。
となり、簡便法での源泉所得税の税額控除額は13,000円となります。
二つの計算方法の比較
個別法と簡便法の二つの方法で税額控除額を算出した場合、以下のような結果となります。
個別法での税額控除額 | 簡便法での税額控除額 |
14,162円 | 13,000円 |
よって、この設例の場合、個別法の方が有利となります。
このように、二つの算出方法を試して有利な方法を選択することでより大きい節税効果が望めます。
しかしながら、前述のとおり、中小企業の場合、節税効果はあまり多くならないことが多いです。
そのため、所得税額が少額の場合や、売り買いを頻繁に行う場合は、「個別法」、「簡便法」の二つの方法を試すのは、節税効果の割に手間がかかってしまうため、算出が簡単な「簡便法」のみを計算をして、その金額を税額控除額とするのも一つの手ですね。
なるほど、按分の計算方法はわかりました。
では、源泉所得税の税額控除を行うためには、別表6(1)を作成するだけでOKですか?
別表6(1)を作成するほかに、することがまだあります。
それをこれから解説していきましょう。
1-2-7 源泉所得税の税額控除を行うための流れ
源泉所得税の税額控除を行うには、以下のような流れとなります。
所得税額控除を行うための流れ
法人が受け取った利息等とその源泉税額を整理する
別表6(1)を作成して、控除税額を算出する
別表4で算出した控除税額を加算する
別表1で算出した法人税額から税額控除を行う
別表6(1)を作成した後に、「別表4で控除税額を加算」して、さらに「別表1で法人税額から税額控除」を行う必要があります。
順を追って確認していきましょう。
法人が受け取った利息等とその源泉税額を整理する。
まずは、受け取った利息や配当金の金額、その源泉徴収された税額の整理を行います。
日頃の経理から受取利息、受取配当金や有価証券等の情報を整理して、集計表を作成しておくと効率的に進められます。
ここでは、簡単に天引きされた所得税が預金利息だけのケースで確認していくことにします。
別表6(1)を作成して、控除税額を算出する
集計表等から、別表6(1)を作成して、税額控除額を算出します。
別表6(1)の書き方については、後ほど詳しく解説していきたいと思います。
別表4において、算出した控除税額を加算する
税額控除を受ける場合は、別表4でその税額控除額を所得金額に加算する必要があります。
どうして、加算する必要があるんですか?
加算したら税額が増えるんじゃないですか?
理由としては、別表4で税額控除分を所得金額に加算しないと、源泉所得税が損金になり(所得から差し引かれ)つつ、税額から控除もされるようなことになってしまいます。
このような理由で税額控除を行う場合は、必ず別表4で加算する必要があります。
別表1で算出した法人税額から税額控除を行う
最後に法人税額から算出した税額控除を差し引きます。
まずは、別表6(1)で算出した控除税額を別表1の16欄に転記します。
その後、別表1の16欄の金額を12欄に転記して、税額控除を行います。
なお、税額控除の金額より法人税額が少ない場合、還付となります。
税額控除を法人税の申告書類で行う流れの解説は、以上となります。
このように、源泉所得税の税額控除を行うためには、別表6(1)の作成が必要ということがわかっていただいたと思います。
別表6(1)についてや所得税の税額控除については、理解できました。
別表6(1)の書き方についても教えてください。
それでは、次の章で別表6(1)の書き方を解説していきたいと思います。
2 別表6(1)の書き方
別表6(1)の書き方の解説をしていきたいと思いますが、まずは別表6(1)という書類の全体像を見てみましょう。
記載例を見て全体的なイメージを持ってもられえればと思います。
一番簡単に別表6(1)が書ける例です。
別表6(1)記載例
え!?
たったこれだけですか?
中小企業の場合では、たったこれだけで別表6(1)が書き終えるというケースも少なくありません。
天引きされている所得税が、預金利息だけなら別表6(1)に記載する事項はたったこれだけです。
いかがでしょうか。記載している箇所が少なくて意外と難しそうには感じなかったのではないでしょうか。
こんなに書く欄が少なくていいの?、と思ったかもしれませんが、実は、別表6(1)という書類は、中小企業のものであれば、書くところがあまり多くない上に、計算するところも少なく簡単に書けてしまいます。
別表6(1)を書くことは恐るるに足りないとわかっていただいたところで、別表6(1)の書き方を解説していきたいと思います。
別表6(1)の書き方については、先ほどの記載例を基に解説していきたいと思います。
別表6(1)を書くには、預貯金の利子や受取配当金の整理が必要となります。
まずはその預貯金の利子や受取配当金の整理について簡単に解説していきたいと思います。
2-1 別表6(1)を書いていく前に
別表6(1)を作成するにあたり、会社が受け取った利子又は配当等の金額と徴収されている源泉所得税の金額を整理しておく必要があります。
受け取った利子又は配当等の金額と徴収されている源泉所得税の金額…
それって何でわかるんでしょうか
2-1-1 預貯金の利子の金額と源泉所得税を把握する方法
預貯金の利子の場合は、預貯金の通帳や金融機関の取引明細書で確認することが可能です。
金融機関によっては、利子の金額の他、徴収された源泉所得税が記載されているのものありますが、基本的に徴収された源泉所得税は計算して確認することになります。
利息に対する源泉所得税の税率は「15.315%」となっています。
「15.315%」、、、なんか中途半端な割合ですね。
所得税の他、復興特別所得税分の徴収がされているので、このような税率となっています。
少し覚えにくいですが、税率は変わることがほとんどありませんので、覚えておいて損はありません。
預貯金の利子の入金された金額から徴収された源泉所得税を算出する方法は以下のとおりです。
預貯金の利子の入金の金額から徴収された源泉所得税を確認する方法
❶ 入金された預貯金の利息の金額 ÷ 0.84685※ = 源泉所得税が差し引かれる前の利息の金額
❷ ❶で算出された金額 ー 入金された預貯金の利息の金額 = 徴収された源泉所得税
※ 「0.84685」は1から15.315%(税率)を差し引いた金額
【計算例】 利息の入金額:100円
❶ 100 ÷ 0.84685 = 118円(円未満切り捨て) 受取利息総額
❷ 118円(❶)ー 100円 = 18円 源泉所得税額
2-1-2 配当等の金額と源泉所得税を把握する方法
配当等の場合は、証券会社等から送られてくる配当金計算書で、投資信託の場合は、取引報告書や分配金のご案内等で収入金額と源泉所得税額を確認することが可能です。
配当金計算書というのは、以下のような書類となります。
この書類なら事務所に届いてますね。
出来れば、この配当金計算書の見方についても教えてください。
配当金計算書の見方について、以下のとおり簡単に解説します。
配当金計算書の見方
上記の画像に付番されている内容については以下のとおりとなります。
- ① 計算期間 ※
- ② 計算期末の所有株式数
- ③ 配当金額
- ④ 源泉徴収された所得税額
- ⑤ 振込金額
- ⑥ 銘柄名(法人名)
※ 計算期間の表示がない場合は、前回の配当基準日の翌日から今回の配当基準日までが計算期間となります。
入金された金額しかわからず、収入の総額と源泉所得税額がわからない場合は、次の方法で求めることができます。
配当等の金額から徴収された源泉所得税を確認する方法
・税込の配当等の金額からの算出
上場株式の場合
配当等の金額(税込み)× 15.315%(税率)= 徴収された源泉所得税
非上場株式の場合
配当等の金額(税込み)× 20.42%(税率)= 徴収された源泉所得税
投資信託の収益分配金の場合
配当金の金額(税込み)× 15.315%(税率)= 徴収された源泉所得税
・入金された金額から算出
上場株式の場合
入金された配当金の金額 ÷ 0.84685 = 徴収された源泉所得税
※ 「0.84685」は1から15.315%(税率)を差し引いた金額
非上場株式の場合
入金された配当金の金額 ÷ 0.7958 = 徴収された源泉所得税
※ 「0.7958」は1から20.42%(税率)を差し引いた金額
投資信託の収益分配金の場合
入金された配当金の金額 ÷0.84685 = 徴収された源泉所得税
※ 「0.84685」は1から15.315%(税率)を差し引いた金額
これで、預貯金の利子の金額と配当等の金額とその源泉所得税の把握するための方法の解説は以上です。
別表6(1)を作成するために必要な預貯金の利子の金額と配当等の金額とその源泉所得税が把握できたら、早速別表6(1)を実際に書いていきます。
別表6(1)はケースによって記載すべき欄に違いがありますので、ケース別に次の2つに分けて解説していきます。
解説する2つのケース
- 預貯金の利子のみの場合のケース
- 預貯金の利子と株式の配当、投資信託がある場合のケース
多くの中小企業が作成する2つのケースをご用意しました。
まずは、預貯金の利子のみがある場合の別表6(1)の書き方を解説していきます。
2-2 【ケース1】預貯金の利子のみの場合の別表6(1)の書き方
まず、最初のケースは、預貯金の利子のみの場合の別表6(1)の記載方法を解説していきます。
設例の内容は以下のとおりです。
例題内容
会社名:株式会社 一色ジャパン
事業年度:令和3年1月1日~令和4年12月31日
・当事業年度中の預貯金の利子の額:2,333円(源泉徴収税額込の総額)
預貯金の利子一覧表
なお、完成した別表6(1)は以下のとおりです。
え、、これしか、書く欄がないんですか、、?
これは、かなり簡単そうですね。
おっしゃる通り、利子のみがある場合の別表6(1)は法人税の申告書類の中でもかなり簡単な書類です。
では、記載欄を一つずつ確認していきましょう。
2-2-1 事業年度及び法人名の記載欄
まずは、事業年度及び法人名を必ず記載するようにしてください。
2-2-2 預貯金の利子に関する記載欄
預貯金の利子の金額及び徴収された源泉所得税並びに控除をうける所得税額を記載します。
預貯金の利子については、徴収された源泉所得税の全額を税額控除とすることができます。
預貯金の利子を記載する欄は、以下の赤枠の欄となります。
① 「収入金額」欄を記載する
この欄には、預貯金の利子として得た収入金額の合計を記載します。
② 「①について課される所得税額」欄を記載する
この欄には、①に記載した預貯金の利子の金額から徴収された源泉所得税の金額を記載します。
③ 「②のうち控除を受ける所得税額」欄を記載する
この欄には、②に記載した源泉所得税のうち、税額控除とすることができる金額を記載します。
預貯金の利子については、徴収された源泉所得税の全額を税額控除とすることができるため、②で記載されている金額と同額を記載してください。
2-2-3 それぞれの所得税額等の合計欄
「計 6」欄の①、②、③欄に各欄に合計額を記載します。
設例では、「公社債及び預貯金の利子・・・」1欄のみの記載であるため、「計」6欄に同額が記載されています。
預貯金の利子のみがある場合の別表6(1)の書き方の解説は以上となります。
これなら、私でも全然書き上げられそうです。
では、次は預貯金の利子と株式の配当、投資信託がある場合の別表6(1)の書き方を解説していきます。
この設例は、当然、預貯金の利子のみの場合よりは複雑になりますが、株式の配当や投資信託を行っている中小企業もあるかと思いますのでしっかりと解説していきます。
2-3 【ケース2】預貯金の利子と株式の配当、投資信託がある場合の別表6(1)の書き方
預貯金の利子と株式の配当、投資信託がある場合の別表6(1)の書き方の解説をしていきます。
設例の内容は以下のとおりです。
例題内容
会社名:株式会社 一色ジャパン
事業年度:令和3年1月1日~令和4年12月31日
・当事業年度中の預貯金の利子の額:2,333円(源泉徴収税額込の総額)
預貯金の利子一覧表
・当事業年度中の受取配当金の額:195,000円(源泉徴収税額込の総額)
受取配当金一覧表
投資信託の収益分配金一覧表
なお、完成した別表6(1)は以下のとおりです。
なるほど、、全体の半分程度の記載ということですね。
簡単ではなさそうですが、私でも書けそうです。
預貯金の利子のみの場合よりは複雑になりますが、一度書いてしまえば、すぐに要領を掴めると思います。
記載を行っていく前に、利子や配当金が複数ある場合は、まず収入の種類ごとに区分分けを行う必要があります。
その区分分けの方法について、解説していきます。
2-3-1 利子や配当等の収入の種類ごとに区分する
別表6(1)を作成するにあたり、複数の利子や株式等の配当等などがある場合は、その収入の種類ごとに区分する必要があります。
収入の種類は以下の5つに区分することになります。
区分1 | 公社債及び預貯金の利子、合同運用信託の収益の分配等 |
区分2 | 剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配 |
区分3 | 集団投資信託(合同運用信託、公社債等投資信託を除く)の収益の分配 |
区分4 | 割引債の償還差益 |
区分5 | その他(定期積立の給付補填金、抵当証券の利息、外貨建預金の為替差益など) |
例題では、預貯金の利子、株式等の配当金、投資信託の収益分配金の3つの収入がありますので、それぞれ、区分すると以下のようになります。
区分1 | 預貯金の利子 |
区分2 | 株式等の配当金 |
区分3 | 投資信託の収益分配金 |
区分4 | 該当なし |
区分5 | 該当なし |
なぜ、収入ごとに区分する必要があるのでしょうか
収入ごとに区分する理由としては、それぞれの区分ごとに別表6(1)の記載欄に違いがあるためです。
また、所得税額控除の元本所有期間による按分計算を行う際、「個別法」と「簡便法」のうち有利な方法を選択して適用することになりますが、この区分の収入ごとに有利な方法を選択し、所得税額控除を算出することができます。
それでは、設例に当てはめて実際に各欄を書いていきたいと思います。
まずは、預貯金の利子に関する記載欄の解説を行います。
2-3-2 預貯金の利子に関する記載欄
預貯金の利子の金額及び徴収された源泉所得税並びに控除をうける所得税額を記載します。
収入区分としては、「区分1」の内容の記載です。
預貯金の利子については、徴収された源泉所得税の全額を税額控除とすることができます。
なお、このケースの記載例は、ケース1「預貯金の利子のみの場合の記載例」の預貯金の利子に関する記載欄と内容が一緒になりますので、こちらの記載方法については、割愛させていただきます。
・解説を割愛する記載する箇所
次は、株式等の配当等に関する記載欄についての解説です。
2-3-3 株式の配当等に関する記載欄
株式の配当等の金額及び徴収された源泉所得税並びに控除をうける所得税額を記載します。
なお、収入区分としては、「区分2」の内容の記載です。
株式の配当等については、徴収された源泉所得税を所有期間に応じて按分計算する必要があります。
所有期間の按分計算は、「個別法」と「簡便法」の2つの方法があり、有利な計算方法で算出した税額控除に関する記載欄を記載することになります。
なるほど、「個別法」と「簡便法」の有利な方を使えばいいということですね。
私の会社は数種類の株式をもっているのですが、株式ごとに有利な方法を使用することはできるのでしょうか?
実は銘柄ごとに選択することはできません。
ただし、先ほど、収入の区分分けをしたと思いますが、その収入の区分ごとに選択することは可能です。
例えば、以下のような収入があったとします。
- A社株式の配当金(区分2)
- B社株式の配当金(区分2)
- C投資信託の収益分配金(区分3)
この収入を区分分けを行うと、上記のようにA社株式の配当金とB社株式の配当金は区分2となり、C投資信託の収益分配金については、区分3となります。
この場合、区分2全体で個別法と簡便法のどちらか有利な方法を適用し、区分3についても区分3全体で有利な方法を選択することができるということです。
では、どうやって計算するのでしょうか。
計算用の用紙のようなものはありますか?
所有期間の按分計算を行うための用紙はありません。
別表6(1)に「個別法」と「簡便法」それぞれの計算を行うための記載欄があるので、そこを使用するか、別で計算を行い、有利な方法の記載欄だけを記載することになります。
今回の解説では、別で2つの計算を行い、有利な方法の記載欄にだけ記載していたいと思います。
それでは、設例内容を基に「個別法」及び「簡便法」の2つの方法で所有期間の按分計算を行った場合、以下のようになります。
設例内容の所有期間の按分計算
受取配当金一覧表
・個別法での計算
計算式は以下の通りです。
個別法での計算式
設例における個別法での計算式等
銘柄等 | 計算式 | 控除を受ける所得税額 |
㈱ 北条ジャパン | 3,828円×12/12(1.000)=3,828円 | 3,828円 |
ウエスギ ㈱ | 12,252円×12/12(1.000)=12,252円 | 12,252円 |
㈱ 武田物産(H30.8.3 取得分) | 7,657円×12/12(1.000)=7,657円 | 7,657円 |
㈱ 武田物産(R3.6.15 取得分) | 4,594円×10/12(0.834)=3,831円 | 3,831円 |
個別法での控除を受ける所得税
3,828円+12,252円+7,657円+3,831円=27,568円
・簡便法での計算
計算式は以下の通りです。
簡便法での計算式
設例における簡便法での計算式等
銘柄等 | 計算式 | 控除を受ける所得税額 |
㈱ 北条ジャパン | 3,828円×200株+(200株-200株)×1/2÷200株=3,828円 | 3,828円 |
ウエスギ ㈱ | 12,252円×200株+(300株-300株)×1/2÷300株=12,252円 | 12,252円 |
㈱ 武田物産 | 11,488円×500株+(800株-500株)×1/2÷500株=9,190円 | 9,190円 |
簡便法での控除を受ける所得税
3,828円+12,252円+9,190円=25,270円
・有利な方法の選択
27,568円(個別法)>30,479円(簡便法)
個別法が有利なため、個別法を適用する。
上記の計算から「個別法」が有利なことが判明したため、下の図で言うと、赤枠になっている「個別法による場合」欄の記載を行います。
「個別法に関する記載欄」を記載する
この欄には、個別法で算出した所得税額控除の計算を結果を記載していきます。
① 「銘柄」欄の記載する
この欄には、配当等の基となった株式等の銘柄を記載してください。
個別法では、所有期間ごとの計算を行いますので、同一銘柄であっても所有期間ごとに記載を行います。
② 「収入金額(7欄)」を記載する
この欄には、株式の配当等として得た収入金額の合計を記載します。
③ 「所得税額(8欄)」を記載する
この欄には、①に記載した株式の配当等の金額から徴収された源泉所得税の金額を記載します。
④ 「配当等の計算期間(9欄)」を記載する
この欄には、配当等の計算期間を記載します。
配当を行う会社によっては、計算期間が6か月などに設定していることもありますので、期末配当計算書で確認してください。
⑤ 「(9)のうち元本所有期間(10欄)」を記載する
この欄には、配当等の計算期間において、元本を所有していた期間を記載します。
⑥ 「所有期間割合(11欄)」を記載する
この欄には、所有期間割合を記載します。
所有期間割合は、「配当等の計算期間÷元本所有期間」で算出することができます。
例えば、配当等の計算期間が「12か月」で元本所有期間が「10か月」である場合、「0.834」(少数点3位未満は切り上げ)となります。
⑦ 「控除を受ける所得税額(12欄)」を記載する
この欄には、個別法で算出した控除を受ける所得税額を記載します。
控除を受ける所得税額は、「所得税額(8欄)×所有期間割合(11欄)」で算出することができます。
算出した株式等の配当等の控除税額の合計欄を記載する
この欄には、株式の配当等の金額及び徴収された源泉所得税並びに控除をうける所得税額を記載します。
先程算出した、株式の配当等の税額控除の金額をそれぞれ、集計して下記のように記載します。
今回の例では簡便法の書き方については、省略していますが、次の例で簡便法の書き方については、解説していますので、そちらを参考にしてください。
次に、投資信託の収益分配金等に関する記載欄の書き方について解説していきます。
2-3-4 投資信託の収益分配金等に関する記載欄
投資信託の収益分配金等の金額及び徴収された源泉所得税並びに控除をうける所得税額を記載します。
なお、収入区分としては、「区分3」の内容の記載です。
投資信託の収益分配金等についても、株式等の配当で徴収された源泉所得税と同様に所有期間割合の按分計算が必要となります。
設例内容を基に「個別法」及び「簡便法」の2つの方法で所有期間の按分計算を行った場合、以下のようになります。
設例内容の所有期間の按分計算
受取配当金一覧表
・個別法での計算
計算式は以下の通りです。
個別法での計算式
設例における個別法での計算式等
銘柄等 | 計算式 | 控除を受ける所得税額 |
㈱今川証券投信 | 4,594円×4/12(0.334)=1,534円 | 1,534円 |
個別法での控除を受ける所得税
4,594円×4/12(0.334)=1,534円
・簡便法での計算
計算式は以下の通りです。
簡便法での計算式
設例における簡便法での計算式等
銘柄等 | 計算式 | 控除を受ける所得税額 |
㈱今川証券投信 | (0株+(2,000株-0株)×1/2)÷2,000株)=0.500 4,594円×0.500=2,297円 | 2,297円 |
簡便法での控除を受ける所得税
4,594円×0.500=2,297円
・有利な方法の選択
1,534円(個別法)<2,297円(簡便法)
簡便法が有利なため、簡便法を適用する。
上記の計算から投資信託の収益分配金等については、「簡便法法」が有利なことが判明したため、「簡便法による場合」欄の記載を行います。
「簡便法に関する記載欄」を記載する
この欄には、簡便法で算出した所得税額控除の計算を結果を記載していきます。
① 「銘柄」欄の記載する
この欄には、配当等の基となった株式等の銘柄を記載してください。
個別法では、所有期間ごとの計算を行いますので、同一銘柄であっても所有期間ごとに記載を行います。
② 「収入金額(13欄)」を記載する
この欄には、株式の配当等として得た収入金額の合計を記載します。
③ 「所得税額(14欄)」を記載する
この欄には、①に記載した株式の配当等の金額から徴収された源泉所得税の金額を記載します。
④ 「配当等の計算期末の所有元本数等(15欄)」を記載する
この欄には、配当等の計算期間の期末において所有していた元本数を記載します。
配当を行う会社によっては、計算期間が6か月などに設定していることもありますので、期末配当計算書で確認してください。
なお、記載例の投資信託の計算期間は、令和2年12月1日から令和3年11月30日までであり、令和3年11月30日時点の所有元本数である「2,000」を記載します。
⑤ 「配当等の計算期首の所有元本数等(16欄)」を記載する
この欄には、配当等の計算期間の期首において所有していた元本数を記載します。
なお、記載例の投資信託の計算期間は、「令和2年12月1日から令和3年11月30日まで」であり、令和2年12月1日時点の所有元本数を記載することになりますが、この投資信託は、令和3年8月1日に取得したものであるため、令和2年12月1日時点では、所有していないため、「0」と記載します。
⑥ 「(15)-(16)/2又は12(17欄)」を記載する
この欄には、所有元本数の増減数に1/2又は1/12を掛けたものを記載します。
具体的にはは、「(配当等の計算期間の期末での所有株数-配当等の計算期間の期首での所有株数)×1/2(又は1/12)」で算出すること ができます。
なお、1/12は、配当等の計算期間が12か月を超えている場合に行う計算ですので、基本的には、1/2を行います。
例題では、「2,000-0)×1/2」で算出した「1,000」を記載しています。
⑦ 「所有元本割合(18欄)」を記載する
この欄には、所有元本割合を記載します。
所有元本割合は、「(配当等の計算期間の期首での所有元本数+17欄の値)÷配当等の計算期間の期末での所有元本数」で算出すること ができます。
例題では、「(0+1,000)÷2000」となり、「0.500」(小数点3位未満は切り上げ)が算出されています。
⑧ 「控除を受ける所得税額(19欄)」を記載する
この欄には、個別法で算出した控除を受ける所得税額を記載します。
控除を受ける所得税額は、「所得税額(14欄)×所有元本割合(18欄)」で算出することができます。
例題では、「4,594円×0.500」を行い、「2,297円」が算出されています。
算出した投資信託の収益分配金等の控除税額の合計欄を記載する
この欄には、投資信託の収益分配金等の収入金額及び徴収された源泉所得税並びに控除をうける所得税額を記載します。
先程算出した、株式の配当等の税額控除の金額をそれぞれ、集計して下記のように記載します。
以上のように、記載できたら、最後に6欄を記載します。
2-3-5 それぞれの所得税額等の合計欄
「計 6」欄の①、②、③欄に各欄に合計額を記載します。
この設例では、区分の1欄、2欄及び3欄の記載があるため、6欄には、1欄から3欄の合計金額が記載されています。
預貯金の利子と株式の配当、投資信託がある場合の別表6(1)の書き方の解説は以上となります。
税額控除を行う場合は、税額控除の流れで解説したとおり、別表6(1)の作成の後に、別表4で加算、別表1で税額控除の計算までやって所得税額控除が完遂されます。
ここまで別表6(1)について解説してきましたが、ここで、最後の復習として、記事の内容について振り返りましょう。
3 まとめ
ここまで解説してきたことを簡単に振り返ります。
- 別表6(1)という書類は「源泉所得税の税額控除」を行う場合に必要な書類です。
- 「源泉所得税の税額控除」というのは、源泉徴収(天引き)された所得税を、法人税から控除することができる制度のことをいいます。
- 「源泉所得税の税額控除」を行うかどうかは、法人の任意であり、行わない場合は、別表6(1)の作成は不要です。
- 税額控除の金額は基本的には、源泉徴収された税額が税額控除の金額となりますが、元本の所有期間に応じて按分計算が必要な場合があります。
- 元本の所有期間に応じて按分計算の方法は、「個別法」と「簡便法」の2つがあります。
- 「源泉所得税の税額控除」を行う方法は、別表6(1)を作成し、別表4で税額控除額を所得に加算、その後、別表1において算出した法人税額から控除するという流れでした。
別表6(1)は、一見記載するところ多く、難しいと思われがちですが、中小企業に関係ない部分を無視することで、一度書き方や制度について理解することが出来れば、高い専門知識などなくても十分自力申告が可能であることがわかっていただけたと思います。
また、別表6(1)に限らず、他の別表に関する全力経理部の法人税の書き方の記事を読みながら、最短距離で自力申告をやり遂げてもらえると、たいへん嬉しく思います。
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