
もう今年も11月に入ったのかー1年経つのは早いな、、
それはそうと、そろそろ、年末調整の準備をしないとなー
そういえば、今年は定額減税があったけど、年末調整のときに何かしなくちゃいけないと聞いたな。
去年までの年末調整と今年の年末調整ってどう違うんだろう?
去年までの年末調整と今年の年末調整で改正された点は基本的に定額減税についての内容の部分です。
やっぱり、年末調整で定額減税の調整を行うことになるんですね。
それって結構難しいですか?私にもできます?
もちろんできますよ。
年末調整で行うのは定額減税の精算の作業になるのですが、面倒ではありますが、決して難しくはありません。
そうなんですね。
今年の年末調整も自分で乗り越えたいと思うので、是非内容を教えてください!
それでは、年末調整で行う定額減税の精算について解説していきたいと思います。
よろしくお願いします!
この内容は動画でも解説しています。動画の方がお好みの方はこちらをご覧ください。
1 年末調整時で行う定額減税の精算(年調減税)とは
年末調整時で行う定額減税の精算について解説していきます。
まずは定額減税とはどのようなものだったかを簡単に振り返っていきたいと思います。
(知っているという方は読み飛ばしてください。)
それでは、まずは定額減税の概要から解説していきたいと思います。
ちょっと忘れていることがあるかもしれないのでよろしくお願いします。
1-1 定額減税の概要
ここでは、定額減税の簡単な概要について解説していきたいと思います。
まずは、定額減税で減税の対象者について確認して行きます。
1-1-1 定額減税の対象者
定額減税を受けることができる対象者は、次のいずれにも該当する人です。
- 定額減税前の計算で所得税が発生する人
- 居住者※
- 令和6年分の所得税の所得金額が、1,805万円以下である人
※居住者とは、国内に住所を有する個人または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいう。
1-1-2 定額減税で減税される金額
続いて定額減税でいくら減税されるのかを確認します。
定額減税は、毎月の給与から天引きされている所得税と個人住民税から、配偶者や扶養親族を考慮して、次の表のように減税がされます。
税目 | 計算対象者 | 減税額 |
---|---|---|
所得税 | 本人 | 30,000円 |
同一生計配偶者※1 | 30,000円 | |
扶養親族※2 | 30,000円/人 | |
個人住民税 | 本人 | 10,000円 |
同一生計配偶者※1 | 10,000円 | |
扶養親族 | 10,000円/人 |
※1:同一生計配偶者とは、本人と生計を一にする配偶者のうち、合計所得金額が48万円以下(給与収入だけの場合は、収入103万円以下)の者。
※2:所得税法上の控除対象扶養親族だけでなく、16歳未満の扶養親族も含む。
例えば、本人と配偶者と扶養親族が2人の場合の所得税と住民税の減税額を計算してみます。
所得税 | 30,000円(本人)+ 30,000円(配偶者) + 60,000円(扶養親族30,000円×2人)= 120,000円 |
---|---|
個人住民税 | 10,000円(本人)+ 10,000円(配偶者) + 20,000円(扶養親族10,000円×2人)= 40,000円 |
1-1-3 定額減税はどのように行われるのか
次にこの定額減税は、実際にどのように行われるのかを確認します。
この定額減税を実際に行うのは、給与を支払っている会社です。
つまり、給与担当者が計算することになります。
減税の仕方は、所得税と個人住民税で異なり、次のように行います。
所得税 | 前述の式で計算した所得税の定額減税分を、天引きする所得税から減額する |
---|---|
個人住民税 | 自治体が減額した住民税額を決定してくるので、それに基づいて住民税を減税する |
まずは、令和6年6月1日以後に最初に支給する給与または賞与で天引きする所得税と個人住民税から行い、減税額が差し切れなくなるまで行います。
これを「月次減税」と呼びます。
ただ、定額減税の本来の基準日は令和6年12月31日であり、令和6年6月2日以降で所得や扶養の状況が変わった者については、月次減税で行った定額減税を年末調整時に、定額減税額を再計算し、所得税の過不足額を精算することになります。
これが定額減税のしくみです。
「定額減税」についての詳しい解説を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
1-2 年調減税とは
年末調整のときに行う定額減税の精算とはどのようなものでしょうか?
定額減税ついての内容は解説できましたので、次は今年の年末調整で行う定額減税の精算(年調減税)についての内容の解説に移っていきます。
1-2-1 年調減税の概要
定額減税は、令和6年分の所得税から減税を行うことになります。
そのため、本来は令和6年12月31日を基準日として所得、扶養の状況から定額減税額を算出することになります。
ただ、今回の定額減税では令和6年6月1日にも仮の判定基準日が設定されており、令和6年6月1日の所得、扶養の状況から定額減税額を算出し、令和6年6月以降の給与や賞与の所得税等から減税を行っています。
その後、年末調整で改めて本来の基準日である令和6年12月31日の所得及び扶養の状況から定額減税を算出し、減税額を精算するという手順になっています。
なぜ、2つの基準日が設定されているのでしょうか?
2つの基準日が設定され減税される理由としては、減税の効果の実感を早めに感じてほしいという政府の思惑があったとしか言いようがありません。
この仮の判定基準日である令和6年6月1日を基準日として、先に給与や賞与の所得税等から減税されることを「月次減税」と言い、本来の基準日である令和6年12月31日をもって減税額を算出し、年末調整において減税されることを「年調減税」と言います。
なんか、とてもややこしいですね。
簡単に言うと、とりあえず大まかに減税をしておいて、年末調整で正しい減税額に修正すると考えてもらえればいいでしょう。
なるほど、、そういうことなんですね。
そういえば、引き切れなった定額減税は調整給付金としてもらえましたが、これも精算するってことですか?
1-2-2 調整給付金の年末調整時の対応について
今年の年末調整で、調整給付金に関する清算を行うことはありません。
調整給付金は、年調減税で精算する必要はない理由としては、従業員が受け取った調整給付金については、事業者はいくらもらっているか知らないため、清算しようがないためです。
そのため、調整給付金については、事業者側で行うことはありませんので、無視して問題ありません。
なお、調整給付金の精算は、市役所等が令和6年度の所得税を基に調整給付金を受け取った従業員に対して直接、精算を行うことになります。
そうなんですね。どういう場合に定額減税の金額が変わることになるのでしょうか?
1-2-3 年調減税で精算されるケース
月次減税で行った減税額を年調減税で調整されるケースとしては以下のようになります。
- 令和6年6月2日以降に入社した場合
- 令和6年6月2日以降で扶養の変更があった場合
- 所得合計額が1,805万円以下(給与収入のみの場合は2,000万円以下)である場合
月次減税で行った減税額を年調減税で調整されるケースを一つずつ解説していきます。
・令和6年6月2日以降に入社した場合
月次減税は令和6年6月1日に在職していた人が対象となります。
したがって令和6年6月2日以降に入社した従業員の場合、月次減税を行うことができません。
この部分をフォローするために年調減税で一括して減税を行うことになります。
よって、令和6年12月31日に在職している方はすべて年調減税の対象者となります。
・令和6年6月2日以降で扶養の変更があった場合
月次減税の場合は、令和6年6月1日の扶養状況で定額減税の金額を算出するため、令和6年6月2日以降に扶養の人数に変更があっても減税額を訂正することができません。
そのため、令和6年6月2日以降において扶養の増減があった場合は年調減税において減税額を精算することになります。
・所得合計額が1,805万円以下(給与収入のみの場合は2,000万円以下)である場合
定額減税の対象者は、所得合計額が1,805万円以下(給与収入のみの場合は2,000万円以下)である場合という所得制限があります。
しかしながら、令和6年12月31日にならないと年間の所得金額が確定しないため、月次減税ではこの所得の制限はありませんでした。
例えば、令和6年6月1日には所得制限を達していたり、令和6年12月31日に所得制限を超えることが決まっていても関係なく月次減税がされていました。
そのため、この対象者については定額減税分を返金することになりますが、給料が2,000万円以上の方は年末調整できませんので、年調減税ではなく確定申告で精算することになります。
年調減税の内容については理解できました!
この年調減税は具体的にどのような作業を行うことになるんでしょうか?
では、今年の年末調整で行う定額減税の作業の手順について解説します。
2 例年の年末調整からの変更点
今年の年末調整では、以下のような点が変更になりました。
- 定額減税額を差し引くための一人別源泉徴収簿の様式変更
- 源泉徴収に係る定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書の作成
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書の様式の変更
改正された内容について簡単に一つずつ確認していきます。
2-1 定額減税額を差し引くための一人別源泉徴収簿の様式変更
一つ目の改正点としては、定額減税に係る事務が増えたことにより年調年税額の算出方法が変わっています。
これまで年末調整時に使用してきた源泉徴収簿の様式が変更されています。
変更になった源泉徴収簿というのは以下のような書類となります。
様式は国税庁ホームページからダウンロードしてください。
源泉徴収簿の内容としては、申告書の左側に1年間の給与等の支払い金額や源泉所得税などの金額を記載し、右側で控除額の計算と年調年税額の算出を行う作りとなっています。
この様式は例年と一緒みたいですけど、どこが変わったんでしょうか?
おっしゃるとおり、源泉徴収簿の様式自体は去年と変わりがありません。
ただ、申告書の枠外にある赤字で記載されている部分で、年調減税に係る計算を行うことになります。
ここですね、、、ってなんで枠外なんですか?
確かに不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、年調減税があるのは、今年の年末調整のみであり、経費削減のために様式を年調減税に対応したものを作らなかったかもしれませんね、、
真偽は分かりませんが、今年の年末調整で使用する源泉徴収簿はこちらを使用することになります。
そうなんですね、、、
でも、欄外に書いて計算するのは少し大変な気がしますね。
そうですね。そのような方のために国税庁ホームページで年調減税の計算ができる「年末調整計算シート」が手書き用とExcel入力用の2つが用意されていますので、源泉徴収簿の欄外で年調減税額の計算を行うのが大変だなという方はこちらを使用してください。
- 年末調整計算シート(Excel用)
給与所得者(従業員)の給与の総額や控除対象扶養親族の人数などを入力することで、その給与所得者(従業員)の年末調整の税額計算を効率的に行うことができます。
2-2 源泉徴収に係る定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書の作成
二つ目の改正点としては、「源泉徴収に係る定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書」が新しく創設されました。
こちらの申告書の内容としては、定額減税の対象となる配偶者及び扶養親族の簡単な情報とその見込みの所得金額を記載するものとなります。
「源泉徴収に係る定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書」というのは以下のような書類となります。
様式は国税庁ホームページからダウンロードしてください。
あれ?配偶者と扶養親族の内容を確認する申告書?
これって「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と同じ内容じゃないですか?
そうですね。
この申告書に記載するのは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載していない配偶者、扶養親族の状況を記載することになります。
ですので、従業員の全員が作成する必要がない申告書です。
記載していない配偶者、扶養親族の状況?
どのようなときに記載するんですか?
この書類が想定しているのは、配偶者の所得が103万円以下で配偶者控除の対象となるが、従業員の本人の給与収入が1,195万円を超えている場合は、扶養控除等(異動)申告書の配偶者欄に記載を行いませんので、そのようなケースです。
他には、扶養控除等(異動)申告書において、扶養控除対象とならない年少の扶養親族欄に記載漏れがあったり、書き切れなかった場合に、この申告書に追加で記載することになります。
そのため、配偶者または扶養親族に変更がある都度、扶養控除等(異動)申告書を提出している場合は、この様式を提出する必要はありません。
では基本的には、この書類が作成されるのはかなり稀なケースということになりまね!
2-3 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書の様式の変更
三つ目の改正点としては、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の様式の内容が変更されました。
この申告書は例年、基礎控除額、配偶者者控除等及び所得金額調整控除に関する内容を記載するものでしたが、今年の様式はそれらの内容に加えて定額減税の対象となるかどうかの判定欄が追加されました。
「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の様式は以下のとおりです。
様式は国税庁ホームページからダウンロードしてください。
確かにこの様式は見たことがありますね。
でも、どこが変わったんですか?
この申告書に追加された欄は下の画像の赤枠の箇所となります。
従業員本人が定額減税の対象者である場合は申告書の左側にある欄にチェックを行い、従業員の配偶者が定額減税の対象者である場合、右側にある欄にチェックを行うことになります。
以上が今年の年末調整から変更になった点となります。
3 年末調整で行う定額減税(年調減税)の手順
年調減税の大まかな手順としては以下の通りになります。
- 定額減税の対象者の確認
- 定額減税額の算出
- 年調年税額の算出
- 年調年税額から定額減税額を控除する
- 源泉徴収票の作成
3-1 定額減税の対象者の確認
まずは、対象者を確認することから始まります。
定額減税の対象者を確認するには、どうするんでしょうか。
対象者を確認するには、従業員から提出された書類の内容を確認する必要があります。
従業員から提出された書類?
年末調整のときに従業員に書いてもらう書類のことですね。
ではどの書類のどこを見ればいいのでしょうか?
具体的には、3つの書類を見ながら対象者の確認していきます。
こちらの申告書は従業員に記載してもらう書類ですが、どのような書類なのかまた、今年の年末調整で変更された点について少し解説します。
- 令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 令和6年分 源泉徴収に係る定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書
- 令和6年分給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書
なんか、難しそうな書類ですね。
こんな書類ありましたか?
2番目と3番目は先ほど解説した書類で、定額減税の関係で2番目の「源泉徴収に係る定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書」が増えています。
1番目のものは例年の年末調整でもあった書類です。
それぞれの申告書について解説していきたいと思います。
3-1-1 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
一つ目の申告書は「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。
こちらの申告書の内容としては、従業員本人とその配偶者及び扶養親族の簡単な情報とその見込みの所得金額を記載するものとなります。
今年の年末調整において、変更された点はとくにありませんので、例年通り記載してください。
様式は国税庁ホームページからダウンロードしてください。
この申告書で従業員の見込みの所得や配偶者、扶養親族の状況がわかるってことですね。
その通りです。
まずは、この申告書の内容を確認して、配偶者や扶養親族の状況を確認することになります。
様式はこちらのリンクからダウンロードしてください。
3-1-2 令和6年分 源泉徴収に係る定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書
二つ目の申告書は「令和6年分 源泉徴収に係る定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書」です。
こちらの申告書の内容としては、定額減税の対象となる配偶者及び扶養親族の簡単な情報とその見込みの所得金額を記載するものとなります。
様式は国税庁ホームページからダウンロードしてください。
先ほど解説した通り、この「定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書」に記載するのは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載していない配偶者、扶養親族の状況を記載しているため、こちらの申告書も確認が必要となります。
扶養控除等(異動)申告書だけを確認すると漏れが出てしまう可能性があるってことですね!
気を付けます!
3-1-3 令和6年分給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書
三つ目の申告書は「令和6年分給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」です。
こちらの申告書には、新たに定額減税の対象となるかどうかの判定欄が追加されました。
そのため、定額減税の対象者を判定する際に内容の確認が必要となります。
なるほど、これらの申告書で対象者を確認するんですね。
それでは、次に何をするんでしょうか?
次は、対象者の定額減税額を算出して、それを基に年末調整を行っていきます。
3-2 定額減税額の算出
年末調整で従業員から提出された申告書の内容を確認して、年調減税の対象者である従業員の「同一生計配偶者」と「扶養親族」の人数を確認します。
定額減税は「同一生計配偶者」と「扶養親族」の人数に応じて減税額が算出されます。
例えば、従業員に同一生計となる配偶者と16歳未満の子供が2人いる場合の年調減税額の計算式は、以下とおりです。
計算式 | 従業員本人+同一生計配偶者+扶養親族2名 |
定額減税の金額 | 30,000円+30,000円+30,000円+30,000円=120,000円 |
従業員から提出された書類を確認しながら、従業員それぞれの定額減税額を算出します。
提出された書類のうち、基礎控除申告書で本人分の合計所得金額を判断し、配偶者控除申告書で、源泉控除対象配偶者を判断、扶養控除等申告書で本人が甲欄適用者であることと扶養親族を判断することになります。
これで減税額がわかりましたね。
ここからは、例年通り従業員各人の源泉徴収簿を作成して、年調年税額を算出します。
3-3 源泉徴収簿を作成し、年調年税額を算出する
定額減税の金額が算出できたら、次に源泉徴収簿を作成し、年調年税額の算出します。
年調年税額というのは、年末調整で算出された1年間に納めるべき所得税および復興特別所得税の額をいいます。
ここで源泉徴収簿を作成するんですね。
算出した年調減税額はどこで控除するんでしょうか?
それでは、ここで設例を用いて源泉徴収簿の作成を行ってみましょう。
なお、源泉徴収簿の㉒欄「算出所得税額」までは例年の年末調整と書き方に変更がないため、解説は割愛させていただきます。
源泉徴収簿の詳しい記載方法については、国税庁ホームページよりご確認ください。
3-3-1 源泉徴収簿の記載例
設例に沿って源泉徴収簿を作成していきます。
設例内容は以下のとおりとなります。
【設例内容】
扶養親族等の状況 配偶者あり 扶養親族 2名
今回は分かりやすいように「年末調整計算シート」を使用していきたいと思います。
「年末調整計算シート」は以下のようなものとなります。
これが「年末調整計算シート」なんですね。
あれ?これって源泉徴収簿の右側の部分に似ていますね。
おっしゃるとおり、この手書き用の「年末調整計算シート」は源泉徴収簿の様式の右側部分に年調減税の計算欄が含まれた形となっています。
今回使用する箇所は以下の部分です。
❶ 定額減税額の計算に関する内容を記入する
この欄には、定額減税の対象者と定額減税の金額を記載します。
例題では、本人定額減税対象欄、配偶者定額減税対象欄にチェックし、扶養親族定額減税対象欄に2人と記載し、定額減税額欄に120,000円と記載しています。
❷ 年調所得税額(㉔欄)を記載する
「年調所得税額(㉔欄)」には、「算出所得税額(㉒欄)」から「住宅借入金等特別控除額(㉓欄)の金額を差し引いた金額を記入します。
記載例では、㉔欄の金額を150,000円と算出されたとして記載しています。
❸ 年調減税額(㉔-2欄)を記載する
㉔-2の欄には、定額減税額を記載します。
記載例では、定額減税の対象者が本人含めて4人であり、120,000円が定額減税額となっているため、120,000を記載しています。
➍ 年調減税額控除後の年調所得税額(㉔-3欄)を記載する
㉔-3の欄には、「年調所得税額(㉔欄)」の金額から「年調減税額(㉔-2欄)」の金額を差し引いた金額を記入します。
なお、算出結果がマイナスの場合は「0」を記入します。
設例では、「150,000円(㉔欄)-120,000円(㉔-2欄)」で算出した30,000円が記載されています。
➎ 控除外額(㉔-4欄)を記載する
㉔-4の欄には、「年調所得税額(㉔欄)」の金額から「年調減税額(㉔-2欄)」の金額を差し引いた金額がマイナスの場合に、そのマイナスの金額を記入します。
記載例では、「年調所得税額(㉔欄)」の金額から「年調減税額(㉔-2欄)」の金額を差し引いた金額がマイナスではないため、記載は不要となります。
なお、この「控除外額(㉔-4欄)」に記載された金額は所得税の調整給付金の金額となり、先に支給された調整給付金より多ければ、その差額が改めて市役所等から支給されることになります。
❻ 年調年税額(㉕欄)を記載する
㉕の欄には、 年調減税額控除後の年調所得税額(㉔-3欄)の金額に「102.1%(復興特別所得税の税率の上乗せ)」を乗じた金額を記入します。
記載例では、「30,000円(㉔-3欄)×102.1%」で算出した「30,600円(100円未満切り捨て)」が記載されています。
❻ 差引超過額又は不足額(㉕欄-⑧欄)を記載する
㉖の欄には、年調年税額(㉕欄)の金額から従業員が徴収されている源泉所得税(⑧欄)の金額を差し引いた金額を記載します。
記載例では、源泉所得税の合計金額(⑧欄)を仮に80,000円として計算し、「30,600円(㉕欄)-80,000円(⑧欄)」で算出した「△49,400円」を記載しています。
以上が源泉徴収簿の記載の解説でした。
年末調整で行う定額減税の手順の最後は源泉徴収票の作成です。
3-4 源泉徴収票の作成
続いては、年末調整で所得税の精算が終わった後に従業員に対して源泉徴収票を配布しますが、その際の定額減税の表示についての内容となります。
例年の源泉徴収票の作成方法との違いは摘要欄に「源泉徴収時所得税減税控除済額」と「控除外額」の記載が必要となった点です。
「源泉徴収時所得税減税控除済額」は、月次減税において、源泉所得税から減税を行った金額を記載します。
「控除外額」は、源泉徴収簿の「控除外額(㉔-4)」欄の金額を転記してください。
年末調整後に源泉徴収票を各従業員に配布しますが、その際に、定額減税の対象者には定額減税をした旨を記載し、これで定額減税事務は完了です。
4 まとめ
以上で、今年の年末調整で行う定額減税の精算事務(年調減税)についての解説は終了です。
これまでの内容を簡単に確認していきましょう。
年末調整で行う定額減税の精算事務(年調減税)のポイント
❶令和6年6月以降の給与や賞与の所得税等から減税を行ってきた月次減税を、年末調整で改めて本来の基準日である令和6年12月31日の所得と扶養の状況で計算し直し、精算を行うことを「年調減税」と言いました。
❷年調減税で定額減税が精算されるのは以下のようなケースでした。
1.令和6年6月2日以降に入社した場合
2.令和6年6月2日以降で扶養の変更があった場合
3.所得合計額が1,805万円以下(給与収入のみの場合は2,000万円以下)である場合
❸例年の年末調整からの変更点は以下のとおりでした。
- 定額減税額を差し引くための一人別源泉徴収簿の様式変更
- 源泉徴収に係る定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書の作成
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書の様式の変更
これまで、解説してきたように今年の年末調整は、定額減税の精算に係る事務処理があるため例年の年末調整とは様式や計算方法、手順に変更がありますので、思わぬミスなどが生じやすい状況となっています。
そのため、できるだけ早めに年末調整事務を行い、誤りがないかをしっかり確認しながら年末調整事務を進めていただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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