定額減税については、調べて準備はできた。
従業員から減税で引き切れなかった分は無駄になるのか聞かれたけど、減税だから、所得税から引ききれない分は仕方ないよな。
そんなことはありません!
所得税や住民税から引ききれない金額は、その差額を調整給付金として6月以降自治体ごとに順次支給されることに決まっています。
え!?そうなんですか!?
詳しい内容をぜひ教えてください!
従業員にも教えてあげなくちゃ!
本記事は給与所得者の定額減税に関する補足給付金(調整給付金)の内容に絞って解説します。
特に給与所得者が受ける定額減税が所得税額、住民税から引き切れなかった場合の給付金に関する内容に的を絞って解説していきます。
なお、同様の内容を動画でも解説しています。
動画の方が良い方は、こちらをご覧ください。
- 定額減税における調整給付金とは
- 調整給付金を受けられる対象者
- 調整給付金を受けられる時期
- 調整給付金の算出方法
- 調整給付金を受けるための方法
目次
1 定額減税の概要
今回のテーマは、給与から天引きされる所得税額が、定額減税される金額より少なかった場合にどうなるのか?というものです。
つまり、定額減税が元になっている制度であるため、定額減税がどういう制度なのかをここで簡単に振り返っておきます。
(知っているという方は読み飛ばしてください。)
それではまずは、定額減税の対象となる人はどのような人か、というところから確認していきます。
1-1 定額減税で減税される対象者
定額減税を受けることができる対象者は、次のいずれにも該当する人です。
定額減税の対象者
- 定額減税前の計算で所得税が発生する人
- 居住者※
- 令和6年分の所得税の所得金額が、1,805万円以下である人
※居住者とは、国内に住所を有する個人または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいう。
1-2 定額減税で減税される金額
続いて定額減税でいくら減税されるのかを確認します。
定額減税は、毎月の給与から天引きされている所得税と個人住民税から、配偶者や扶養親族を考慮して、次の表のように減税がされます。
税目 | 計算対象者 | 減税額 |
---|---|---|
所得税 | 本人 | 30,000円 |
同一生計配偶者※1 | 30,000円 | |
扶養親族※2 | 30,000円/人 | |
個人住民税 | 本人 | 10,000円 |
同一生計配偶者※1 | 10,000円 | |
扶養親族 | 10,000円/人 |
※1:同一生計配偶者とは、本人と生計を一にする配偶者のうち、合計所得金額が48万円以下(給与収入だけの場合は、収入103万円以下)の者。
※2:所得税法上の控除対象扶養親族だけでなく、16歳未満の扶養親族も含む。
例えば、本人と配偶者と扶養親族が2人の場合の所得税と住民税の減税額を計算してみます。
所得税 | 30,000円(本人)+ 30,000円(配偶者) + 60,000円(扶養親族30,000円×2人)= 120,000円 |
---|---|
個人住民税 | 10,000円(本人)+ 10,000円(配偶者) + 20,000円(扶養親族10,000円×2人)= 40,000円 |
1-3 定額減税はどのように行われるのか
次にこの定額減税は、実際にどのように行われるのかを確認します。
この定額減税を実際に行うのは、給与を支払っている会社です。
つまり、給与担当者が計算することになります。
減税の仕方は、所得税と個人住民税で異なり、次のように行います。
所得税 | 前述の式で計算した所得税の定額減税分を、天引きする所得税から減額する |
---|---|
個人住民税 | 自治体が減額した住民税額を決定してくるので、それに基づいて住民税を減税する |
この減税は、令和6年6月1日以後に最初に支給する給与または賞与で天引きする所得税と個人住民税から行います。
これが定額減税のしくみです。
「定額減税」についての詳しい解説を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
2 調整給付金の概要
まずは、調整給付金の概要から確認してみましょう。
2-1 調整給付金とは
定額減税は、そういう内容でした。
問題なのはこの減税分よりも所得税や住民税が少ない人はどうなるのかというところでしたね。
そういう内容でした。
具体的な数字で確認してみましょう。
先ほどの例を使って、納税者本人が配偶者と子供2人を扶養している場合、減税額が所得税、住民税合わせて一人4万円だから合計16万円となりました。
令和6年分の所得税と住民税合計の金額が20万円と仮定してみましょう。
となり、16万円すべて減税されます。
令和6年分の所得税と住民税合計の金額が10万円と仮定してみましょう。
10万円(税額) - 16万円(減税額) = 0万円(納付すべき税額)→ 6万円が引ききれない
減税された額は10万円で、6万円が引ききれません。
そう、問題の箇所はここです。
この6万円が支給されるのですか?
そうなんです。
この6万円は、自治体から令和6年6月下旬から7月にかけて支給されることに決まりました。これを「調整給付金(補足給付金)」と呼んでいます。
この定額減税の対象者のうち、定額減税される金額が、実際に支払う税額を超えて、減税しきれないと見込まれる者に対し、その差額が自治体から支給されることになりました。これを「調整給付金(補足給付金)」と呼びます。
ちょっと待ってくださいよ。
令和6年分の所得税から引ききれないって。まだ令和6年ってまだ全然終わってないですよね、、
それなのにどうやって、減税額が令和6年分の税額を超えるってわかるんですか?
令和6年分の所得税額は、令和6年1月から12月までの所得に対して課税されるため、現時点ではその支払う所得税額が減税額を超えているかどうかわかりません。
今回の調整給付金の支給の対象となるかどうかは、前年である令和5年分の所得税と同額として判定することになります。
なるほど、、令和5年分の所得や扶養状況から予測するってことですね。
そう言えば、私の令和5年分の申告のことなんですけど、住宅借入金特別控除があって結果的に税額が「0」になっているような場合って調整給付金はもらえるんですか?
そうですね。住宅借入金特別控除やふるさと納税があり、所得税額から税額控除されているような人でも、令和5年分の所得税額が、減税額より少ないような場合、調整給付金は支給対象者になります。
そうでしたか!
あくまで令和5年分の所得税や扶養状況から予測するってことですね。
ん、、、でもちょっと待ってください!
人によっては令和5年の所得に比べて令和6年の所得が全然違うって場合もありますよね?
そういう場合はどうするんですか?
確かにそうですね。
先ほど説明したとおり、調整給付金は定額減税される金額が前年の所得税額を超えている場合にその差額を支給することになります。
そのため、令和6年分の所得税額が確定した際に、結果として納付すべき所得税額が増減し、支給されるべき調整給付金の金額も変わってしまうことは十分考えられます。
その場合、令和7年夏ごろに再度、給付金の算出を行い、支給が足りなかった給付金については、その時に支給されることになります。
イメージとしては、以下の画像のようになります。
そうですよね。
予測ですから給付金の金額が変わることもありますよね。
では、多く給付金を貰ってしまっていた場合は、返すことになるんですよね。
実は、多く調整給付金を受け取っていた場合は、返す必要はありません。
あくまで、給付金が少なかった場合のみ、調整を行うことになります。
なるほど、そういう人はラッキーということか…
では、調整給付金を貰える人に条件ってあるのでしょうか?
では、次の章では、調整給付金の対象者について確認してみましょう。
2-3 調整給付金の対象者
給与所得者で調整給付金を受給できる者は以下のとおりとなります。
調整給付金の支給対象者
- 定額減税可能額が、減税前の税額を上回る
- 令和6年分の所得税および令和6年度の住民税所得割のどちらか、もしくは両方が課税されている
基本的には令和6年度の個人住民税が課税されている方のうち、減税額が、令和6年分の推計所得税額または令和6年度分の個人住民税所得割額を上回る方が対象となります。
ただ、令和5年分の合計所得金額が1,805万円を超える方については、調整給付金の支給対象となりません。
定額減税可能額が、減税前の税額を上回るということは、給与収入103万円以下の所得税が0の人も調整給付金の対象者になりますか?
そういう人は、2つ目の条件の所得税か住民税所得割が課税されている人の中に入らないので、パート収入103万円以下という人は調整給付金の対象外になります。
その前の本来は所得税の負担があるけれど、住宅ローン控除で所得税が0の人は、住民税所得割を課税されているので調整給付金の対象者になります。
なるほど、所得税が0の場合は、住民税所得割が関係するのですね。
支給対象者については、わかりました。
では、調整給付金の計算はどのような方法で行われるのでしょうか?
それでは、調整給付金の計算方法について確認していきましょう。
2-4 調整給付金の算出方法
調整給付金は、所得税、個人住民税所得割それぞれに「控除不足額」(減税しきれない額)を算出し、その合計額を1万円単位(1万円未満は切り上げ)で支給されることになります。
算出式としては以下のようになります。
定額減税可能額(3万円×(本人+扶養親族数)) - 令和6年分推計所得税額 = 所得税控除不足額・・・①
定額減税可能額(1万円×(本人+扶養親族数)) - 令和6年分個人住民税所得割額 = 住民税控除不足額・・・②
うーん、、なんか難しそうですね。
用語は一見、難しそうですが、内容としては単純なものとなっています。
では、ここで一つの計算例を見て確認してみましょう。
2-4-1 調整給付金の算出の具体例
それでは、ここで調整給付金の算出の具体例を確認してみましょう。
具体例の内容(納税者本人が配偶者と子供2人を扶養している場合)
・所得税等の状況
令和6年分推計所得税額(減税前) 75,000円
令和6年度分個人住民税所得割額(減税前) 23,000円
定額減税可能額の計算
まずは、定額減税可能額の算出を行います。
所得税 | 本人、扶養家族(配偶者を含む) 1人あたり30,000円 |
市民税・道府県民税 | 本人、扶養家族(配偶者を含む) 1人あたり10,000円 |
(1)所得税の定額減税可能額の算出
30,000円 × 4名(本人、扶養親族数(配偶者を含む))= 120,000円
(2)住民税の定額減税可能額の算出
10,000円 × 4名(本人、扶養親族数(配偶者を含む))= 40,000円
調整給付金の計算
120,000円(定額減税可能額) - 75,000円(令和6年分推計所得税額)= 45,000円・・・①
(2)住民税の定額減税可能額の算出
40,000円(定額減税可能額) - 23,000円(令和6年分住民税額)= 17,000円・・・②
(3)調整給付金
45,000円(所得税の調整給付金①) + 17,000円(住民税の定額減税可能額) = 62,000円
→調整給付金の支給額は70,000円(一万円未満切り上げ)となります。
単純な計算だけど、まさか、これって覚える必要ありますか?
実際に自分で調整給付金を算出して申請することはありませんので、無理に覚える必要はありません。
ただ、後ほど解説しますが、地方自治体から給付金の支給の際に、通知が来ますので、支給金額が正しいか自分で確認できれば安心ですので、こんな感じで算出されているだという程度で覚えておくと良いでしょう。
給付金がいくらもらえるかについては、大体わかりましたが、給付を受けるには、いつまでに、どこになにをしたらいいのでしょうか?
支給を受ける人は、ただ入金を待っていればいいということですか?
次の章では、調整給付金の申請方法とその支給時期について解説していきます。
3 調整給付金の受給のための手続き
調整給付金の支給はお住まいの市区町村が対応することになっています。
そのため、給付金に関する手続きや給付の方法については、市区町村ごとに異なります。
まだ市区町村によっては、支給の手付きの詳細や支給日についての詳細な情報が未定のところもあります。
ただ、全国で行われるものではありますので、ここでは、ホームページで比較的、情報が出ている「東京都江戸川区】の内容で解説していきたいと思います。
支給を受ける手続きは、マイナンバーカードで「公金受取口座の登録」を済ませているかどうかで、手続きが変わります。
マイナンバーカードで「公金受取口座の登録」を済ませている場合は、手続きが不要で、入金になるのを待てばよい。
逆に「公金受取口座の登録」を済ませていない場合は、送付されてくる書類に基づいて申請が必要になります。
手続きの内容を表にすると次のようになります。
公金受取口座の有無 | 手続き内容 | 送付される書類 | 提出が必要な書類 |
有り | 手続き不要 | お知らせ | 提出書類無し |
無し | オンライン申請 | 確認書 | 1.口座名義人の氏名・住所がわかる本人確認書類の画像のアップロード 2.通帳やキャッシュカード等口座情報(金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、 口座名義人カナ)をすべて確認することができる画像のアップロード |
無し | 紙による申請 | 確認書 | 1.送付された「確認書」 2.口座名義人の氏名・住所がわかる本人確認書類の写し 2.「金融機関名・支店名・口座番号・口座名義(カナ)」がわかる通帳または キャッシュカードの写し |
それでは、手当金の受給の手続きに関する詳しい解説をしていきたいと思います。
5-1 公金受取口座を開設している場合の手続きについて
まず、給付金を受け取るにあたり、マイナンバーカードで「公金受取口座の登録」を済ませている場合には、支給に関する必要な手続きはありません。
この場合は、受給を受けることになる方には、令和6年6月以降に市区町村から「支給のお知らせ」が届くことになります。そのため、給付金の入金を待っているだけで問題ありません。
なお、江戸川区では、ファストパス申請というものができます。
ファストパス申請というのは、「お知らせ」に印刷してある二次元コードを読み取り、記載事項を確認したうえで、申請ボタンを押すだけ、支給時期を待たずに1週間前後で振り込みが行われるものとなっています。
本来の支給される日より1週間以上早く需給を受けることができます。
江戸川区では、ファストパスを申請していない場合は、6月27日が支給予定日ですが、ファストパスを申請することで6月19日が支給予定日となります。
マイナンバーカードの公金受取口座の登録??
そんなのしたかな、、忘れてしまいました、、
マイナンバーカードでの「公金受取口座」の確認方法は、マイナポータルにアクセスし、トップページの「公金受取口座の登録・変更」アイコンをタップし、ログインすると表示される「口座情報の登録状況」画面にて、ご確認できます。
マイナンバーカードでの「公金受取口座」は簡単に確認することができます。
確認の仕方を紹介します。
1.マイナポータルにアクセスする
2.ログインする
今回は、スマートフォンでQRコードを読み取ってログインするを選択します。
スマートフォンを使ってQRコードを読み取って下さい。
すると、マイポータルアプリが立ち上がります。
マイナポータルアプリをダウンロードしていない方はダウンロードしていただくことになります。
ここからはスマートフォンの画面です。
マイナポータルアプリを開くと、4桁のパスワードを求められます。
このパスワードはマイナンバーカードを発行した際に、設定したものになります。
入力すると、下の画像のように、スマートフォンをマイナンバーカードに乗せて「読み取り開始」を押してください。
これで、承認されればログインすることができます。
3.登録状況の確認をする
ログイン画面は下の画像の通りです。
このホーム画面にある登録状況の確認というところの「確認」(赤枠で強調してます)をタップしてください。
すると、下の画像のように、自身が公金受取口座登録が済んでいるかの確認ができます。
以上が、マイナンバーカードの公金受取口座の登録の確認方法でした。
公金受取口座の登録も簡単なので、この機に登録してしまうのがいいと思います。
5-2 公金受取口座を登録していない場合の手続きについて
マイナンバーカードで「公金受取口座の登録」を令和6年5月末時点で済ませていない場合は、市区町村から届く「確認書」に沿って手続きを行う必要があります。
手続きの内容としては、「確認書」の内容を確認し、内容が正しければ、以下の内容の手続きを行うことになります。
・オンライン申請
オンライン申請の方法は、「確認書」に記載されている二次元コードを読み取り、受給を受けたい口座情報等を入力することになります。
そして、併せて本人確認及び口座情報が確認できる画像をスマートフォン等で撮影して、アップロードすることになります。
・紙での申請
紙での申請方法は、「確認書」に需給を受けたい口座情報を記載し、本人確認及び口座情報が確認できる書類を同封して市区町村の担当部署に返送することになります。
以上が調整手当金の受給に関する手続きの解説になります。
この内容は、東京都江戸川区のものですので、詳細な情報は、お住まいの市区町村のホームページで順次公開されますので、そちらを参照し、不明点があれば市区町村に直接お問い合わせください。
支給の手続きについては、市区町村からの案内を待つことになりそうですね。
手続きが終わったら、入金がされると思いますが、いつ頃になるのかは決まっていますか?
支給時期についても、市区町村ごとで異なりますが、おおむね令和6年8月以降の支給になります。
3 まとめ
以上で、定額減税に係る調整給付金についての解説は終了です。
これまでの内容を簡単に確認していきましょう。
定額減税における調整給付金のポイント
以上が、当記事で解説した内容のまとめとなります。
調整給付金は、人によっては、手続きをしないと受け取ることができない場合もありますので、注意が必要です。
また、このような給付金の支給が始まるとこの制度を利用した詐欺等も増えますので、しっかり内容を理解しておきましょう。
なお、全力経理部では、定額減税についての内容の他に、法人税や消費税等に関する記事も多数掲載していますので、自分で申告したい、税法の知識をもっと深めたいと思っている方は是非、他の記事もご覧いただければたいへん嬉しく思います。
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