
最近、個人事業もようやく安定してきたんですけど、ネットで「マイクロ法人」ってよく聞くようになって……。節税になるって本当なのかな?
最近よく、SNSやニュース記事で目にする「マイクロ法人」という言葉。
何となく「小さな会社のことかな?」くらいは分かるけれど――
「一人でやってるフリーランスでも会社を作れるの?」
「マイクロ法人にすると節税できるって本当?」
「社会保険料が安くなるって聞いたけど、そんなうまい話あるの?」
「そもそも法人を作るって、手続きとか費用が大変なんじゃないの?」
「マイクロ法人」という言葉ひとつで、いろんな疑問やイメージが浮かんできます。
たしかに、「会社を作る」と聞くと、従業員を雇い、オフィスを構えるような「本格的な企業」を想像しがちです。
ですが実際には、自分ひとりで仕事をしているフリーランスや個人事業主でも、マイクロ法人という形で会社を設立することは十分に可能です。
しかも、そのほうが税金や社会保険の面で有利になるケースも少なくありません。
とはいえ、マイクロ法人にはメリットばかりではなく、当然デメリットや注意点もあります。
「節税できる」と聞いて安易に設立してしまうと、思わぬ落とし穴にハマってしまうこともあるのです。
たとえば――
- 法人化したのに、社会保険料の負担がかえって増えてしまった
- 売上が少なくても、毎年最低7万円以上の住民税(均等割)を払う必要があった
- 会計や申告が複雑になり、税理士報酬や会計ソフトの費用が思った以上にかさんだ
こうした「マイクロ法人の落とし穴」は、仕組みを正しく理解しておけば未然に防ぐことができます。
本記事では、マイクロ法人の基本的な仕組みから、節税効果・社会保険の考え方・設立の流れ・維持費までを、元国税調査官の視点からわかりやすく解説していきます。
読み終える頃には、
「自分はマイクロ法人を作るべきか、それとも個人事業主のままでいるべきか」
を判断できるようになり、もし設立を検討する場合でも、スムーズに一歩を踏み出せるようになるはずです。
ぜひ最後までお読みいただき、「税金で損しない賢い働き方」を一緒に考えていきましょう。
最近、「マイクロ法人を作ると節税になる」ってよく聞くんですけど……
正直、マイクロ法人って何なんでしょう?
ひとりで仕事してる自分にも関係あるんですか?
マイクロ法人とは、「代表者ひとり、もしくは家族など少人数で運営する“極めて小規模な会社」のことを言います。
最近では、フリーランスや個人事業主の方が、税金や社会保険の負担を減らすために
「個人事業+マイクロ法人」という形を取るケースも増えているんですよ。
そうなんですね。なんとなく節税できる仕組みっぽいけど、違法とかリスクもあるって聞いたこともあって……
そのあたりを整理して、自分に合っているのかどうかを判断できるように、マイクロ法人の仕組み・メリット・注意点を順を追ってわかりやすく解説していきましょう。
目次
- 1 マイクロ法人の基礎知識と仕組み
- 2 マイクロ法人のメリットとデメリット
- 3 マイクロ法人を設立すると節税できるのか?
- 4 マイクロ法人が支払うことになる社会保険料とは?
- 5 マイクロ法人の維持費
- 6 マイクロ法人の活用事例とおすすめ事業
- 7 マイクロ法人を検討すべき人・やめた方がいい人
- 8 マイクロ法人の設立の流れ
- マイクロ法人のまとめ
1 マイクロ法人の基礎知識と仕組み

「マイクロ法人」とは何か、その基本的な仕組みや、個人事業主との違いについて解説していきます。
最近では、フリーランスや個人事業主が節税や社会保険の最適化を目的としてマイクロ法人を設立するケースが増えています。
SNSやYouTubeなどでも「マイクロ法人で節税」「二刀流スキーム」などのキーワードを見かけることが多くなりました。
しかし、「マイクロ法人を作れば必ず得をする」というわけではありません。
制度の仕組みを正しく理解せずに設立してしまうと、
かえって社会保険料の負担が増えたり、維持費がかさんだりする可能性もあります。
この章では、まずマイクロ法人の基本的な意味と考え方を整理し、
その上で、個人事業主との違いやなぜ今注目されているのかを順を追って見ていきましょう。
1-1 マイクロ法人とは何か?
そもそも「マイクロ法人」とはどのようなものなんですか?
一般的には、代表者ひとり、または家族などの少人数で運営する小規模な会社を指す言葉として使われています。
つまり、マイクロ法人とは「ひとり社長の会社」。
従業員を雇っていなくても、資本金1円からでも設立できる法人のことです。
マイクロ法人とは、最小限の規模で設立された法人のこと。1人(または家族)で運営し、節税や社会保険料の最適化を目的とするケースが多いです。
なお、法律上に「マイクロ法人」という言葉があるわけではなく、あくまで通称です。
一般的には、代表者ひとりで経営している株式会社や合同会社をそう呼びます。
そうなんですね。
社長がひとりでも、マイクロ法人って作れるんですか?
はい、もちろんできます。マイクロ法人の多くは、代表者ひとりで運営している会社なんです。
社員を雇わず、自分ひとりで経営・実務を行う形が一般的ですね。
事務所を持たず、自宅やコワーキングスペースを拠点にしている人も多いですよ。
「一人社長」の会社と呼んだりしますね。
マイクロ法人の特徴としては以下のようなものがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 人員構成 | 代表者1人、または家族中心 |
| 活動場所 | 自宅・コワーキングスペースなど |
| 主な目的 | 節税、社会保険料の軽減、信用力確保 |
| 主な形態 | 株式会社または合同会社 |
| 資本金 | 1円から設立可能 |
マイクロ法人は、いわゆる「ひとり社長の会社」です。
社員を雇わず、代表者自身が経営と実務をすべて行うスタイルが多く、事務所を構えず自宅やコワーキングスペースで活動しているケースもあります。
フリーランスや個人事業主が、自分のビジネスを法人化して「マイクロ法人」として運営することで、税金・社会保険・信用力の面で一定のメリットを得られることが注目されています。
また、マイクロ法人も、形式上は株式会社または合同会社と同じ「法人格」を持つ組織です。
つまり、個人とは別の人格として扱われるのが大きな特徴です。
法人格を持つということは、以下のような特徴があります。
| 比較項目 | 個人事業主 | マイクロ法人 |
|---|---|---|
| 法的地位 | 個人 | 独立した法人格 |
| 契約・預金口座 | 個人名義 | 会社名義 |
| 税金 | 所得税 | 法人税 |
| 責任範囲 | 無限責任 | 有限責任(出資額まで) |
| 社会保険 | 国民健康保険・国民年金 | 社会保険(会社+代表) |
法人格を持つことで、会社名義で契約を結んだり、銀行口座を開設したりでき、個人とは別に経営活動を行えるようになります。
1-2 なぜマイクロ法人が注目されているのか
そうなんですね。
マイクロ法人が増えていると最近聞きますが、それはなぜでしょうか?
近年、マイクロ法人が注目を集めている背景には、
働き方の多様化と税・社会保険制度の最適化があります。
テレワークや副業の広がりにより、個人で収入を得る人が増えた一方、
「個人事業主のままだと税金や社会保険料の負担が大きい」と感じる人も増えています。
そうした人たちが、節税・保険料の調整・社会的信用の確保を目的に、マイクロ法人という選択肢を取るようになってきたのです。
マイクロ法人が増えている背景
近年、マイクロ法人の設立が増えている背景には、働き方の多様化と税・社会保険制度の影響があります。
副業・フリーランスの増加
テレワークや副業が一般化し、個人で複数の収入源を持つ人が増えました。
個人事業主として活動するよりも、法人化したほうが取引の信用を得やすく、節税の選択肢も広がります。社会保険料の最適化
個人事業主の国民健康保険や国民年金は負担が大きく、
所得に応じて保険料が高くなる仕組みです。
そこで、個人事業主とは別に法人を設立して、法人側で社会保険に加入し、代表者の給与を抑え、保険料負担を軽減する方法が注目されています。節税・資産管理の柔軟化
法人にすることで、経費計上の範囲が広がり、
事業用資産を会社名義に移すことで税務上の管理がしやすくなります。
フリーランスが増えてきたことや節税ができるということで、設立する人が増えたんですね。
ちなみに、マイクロ法人って、どんな形で設立するんですか?
株式会社とか合同会社とか、いろいろありますよね。
そうですね。マイクロ法人は、主に株式会社か合同会社(LLC)として設立されるのが一般的です。
なお、昔は「有限会社」という形もありましたが、今は新しく設立することはできません。
マイクロ法人の主な設立形態
マイクロ法人は、主に以下の2つの形態で設立されます。
- 株式会社:信頼性が高く、取引先や融資で有利。設立費用はやや高め。
- 合同会社(LLC):設立費用が安く、手続きが簡単。小規模運営に向いている。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社(LLC) | 有限会社(旧制度) |
|---|---|---|---|
| 特徴 | もっとも一般的な会社形態。社会的信用が高い。 | 2006年の会社法改正で誕生した新しい形態。柔軟で低コスト。 | 2006年の会社法施行前に設立された会社形態。現在は新設不可。 |
| メリット | 取引先や金融機関からの信頼が得やすい。役員報酬の設定も柔軟。 | 設立費用が安く、内部ルールを自由に設定できる。維持コストも低い。 | 株式会社より設立手続きが簡単で、維持も容易だった。 |
| 注意点・デメリット | 設立費用がやや高く、手続きがやや複雑。 | 社会的信用度は株式会社に比べてやや低い。 | 新設不可。現存する有限会社は「特例有限会社」として存続中。 |
| 向いているケース | 取引先との関係を重視する人・信頼性を優先したい人 | コストを抑えて法人化したい人 | 過去に設立済みの会社がそのまま残るケースのみ |
どちらも「ひとり」で設立可能であり、資本金1円からでも始められます。
つまり、個人事業と同じような規模でも“会社”を持つことができるのです。
このように、マイクロ法人は「ひとりで運営する小さな会社」という形態でありながら、
法律的にはしっかりとした法人格を持ち、節税・信用・社会保険の面で活用される新しい働き方のかたちです。
次節では、マイクロ法人と個人事業主の具体的な違いについて見ていきましょう。
1-3 個人事業主と法人の違いとは?
個人のまま事業してても困ってないんですが……
法人と個人とはどのような違いがあるのでしょうか。
一番大きな違いは、「責任の範囲」「税金」「社会保険」そして「信用力」ですね。
具体的に見ていきましょう。
| 比較項目 | 個人事業主 | 法人(株式会社・合同会社など) |
|---|---|---|
| 税金 | 所得税(累進課税) | 法人税(一定税率) |
| 社会保険 | 国民健康保険・国民年金 | 社会保険(健康保険・厚生年金) |
| 責任範囲 | 無限責任(全財産が対象) | 有限責任(出資額の範囲) |
| 信用力 | やや劣る | 高まりやすい |
| 設立・維持コスト | ほぼ不要 | 登記費用・地方税の均等割額(最低年7万円程度)などが発生。会計ソフトが高額化しがち。税務の手続きが煩雑であるため税理士の顧問料が必要になる場合も。 |
一方、法人にすると、税務や会計の管理が求められる反面、税率は一定で経費処理の柔軟性も増します。社会的信用も向上し、融資や取引のチャンスが広がる点もメリットといえます。
なるほど…やっぱりマイクロ法人って、個人事業主よりもメリットが多そうですね。
そこが大事なポイントです。もちろんメリットも多いですが、注意すべきデメリットもあります。
次はそのあたりを整理して見ていきましょう。
2 マイクロ法人のメリットとデメリット

これまで見てきたように、マイクロ法人は現代の働き方や税制の変化に合った柔軟な仕組みとして注目されています。
この章では、マイクロ法人を設立することで得られる主なメリットと、その裏返しともいえるデメリットについて、具体的に解説していきます。
まずは、マイクロ法人の大きな魅力である「メリット」から見ていきましょう。
2-1 マイクロ法人のメリット
マイクロ法人の最大の魅力は、「個人事業主では得られない制度上のメリットを小さな規模でも享受できる」点にあります。
ここでは、代表的な5つのメリットを具体的に見ていきましょう。
- 節税の可能性が広がる
- 法人の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できる
- 社会的信用力が高まりやすい
- 経営上の責任が限定される
- 事業年度を自由に決められる
マイクロ法人を設立すると良いことがあるって聞きますけど、実際にはどんなメリットがあるんですか?
やっぱり節税できるっていうのが一番大きいんですかね?
それもあります。マイクロ法人を設立するメリットは、節税以外にも、“信用力の向上”や“責任の分離”など、経営上のプラス要素がいくつもあります。順番に見ていきましょう。
【メリット1】 節税の可能性が広がる
また、収入を会社と個人に適切に振り分けることで、累進課税による税率の上昇を抑えることができるようになり、税負担を安定させることが可能です。
さらに、法人にしか認められない制度や経費を活用できるようになり、全体として節税の可能性がぐっと高まる点が大きな魅力です。
法人と個人事業主の一番の違いは、税率に関する点です。
個人事業主は、所得が増えるほど税率が上がる「累進課税制度」によって課税されます。
そのため、売上(所得)が増えると急激に税負担が重くなる傾向があります。
所得が増えれば増えるほど、適用される税率が階段状に上がっていきます。
| 課税所得 | 税率 |
|---|---|
| 〜195万円 | 5% |
| 〜330万円 | 10% |
| 〜695万円 | 20% |
| 〜900万円 | 23% |
| 〜1,800万円 | 33% |
| 〜4,000万円 | 40% |
| 4,000万円超 | 45% |
つまり、売上や利益が伸びるほど「頑張った分だけ税率も上がる」構造になっているため、税金が重く感じやすいというデメリットがあります。
一方、マイクロ法人を設立し、売上の一部や業務を法人側に移すと、「法人税」が適用されます。
法人税の税率は以下の通りです(資本金1億円以下を想定)。
- 年間所得800万円以下の部分:15%
- 800万円超〜全体:23.2%
個人の最大45%と比べても税率が低く、場合によっては個人よりも大幅に税負担を抑えられる可能性があります。
また、法人化すると、代表者であるあなたは、法人から「役員報酬(給与)」という形でお金を受け取ることになります。
この役員報酬には、給与所得控除が適用されます。
たとえば、役員報酬が年間162万5,000円以下であれば、55万円の給与所得控除が使えます(2025年3月時点)。
給与所得は、55万円差し引けて1,075,000になるということです。
給与にするだけで所得を減らすことができるのです。
給与所得控除は、個人事業主の事業所得にはありません。
つまり、
- 会社に利益を残す(法人税)
- あなたが給与として受け取る(所得税)
このバランスを調整することで、全体の税負担を最適化できるというわけです。
さらに、以下のような法人ならではの節税策があります。
- 役員報酬の最適化による所得分散
- 社宅制度(家賃の一部を法人負担にできる)
- 生命保険・退職金の活用(長期的節税)
- 旅費規程を使った交通費・出張費の経費化
など、経費の選択肢が広がることで節税の可能性が広がります。
個人事業主では使いにくい、または使えない制度が多数あるため、節税の選択肢、そのものが大きく増える点がメリットです。
なお、マイクロ法人の具体的な節税の内容等については、後で詳しく解説します。
【メリット2】法人の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できる
マイクロ法人を設立すると、代表者1人であっても健康保険(協会けんぽ)+厚生年金への加入が原則義務になります。
これは個人事業主が加入する国民健康保険+国民年金とは大きく異なる点で、保険料の負担は基本的に “増えます”。
しかし、その分だけ保障の厚さを受けられるのがメリットです。
マイクロ法人(=法人として社会保険に加入した場合)が受けられる「保障」と個人事業主の受けられる保障では主に以下のような内容の違いがあります。
| 保障内容 | 法人(社会保険:健康保険+厚生年金) | 個人事業主(国民健康保険+国民年金) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 傷病手当金 | あり(最長1年6ヶ月、収入の約2/3を支給) | なし | 病気・けがで働けない時の強力な保障 |
| 出産手当金 | あり(産前産後の給与補填) | なし | 個人にはない大きなメリット |
| 出産育児一時金 | あり | あり | どちらも利用可能 |
| 扶養制度(健康保険) | あり(家族の保険料ゼロ) | なし(家族全員分の保険料が必要) | 家族の社会保険料が大幅に削減可能 |
| 厚生年金(老齢年金) | 受給額が増える(2階建て) | 1階建てで一定 | 将来の年金額が安定・増加 |
| 遺族厚生年金 | あり(家族の保障が厚い) | 国民年金の遺族年金のみ | 受給額の差が大きい |
| 障害厚生年金 | あり(手厚い) | 国民年金の障害基礎年金のみ | 保証額に大きな差 |
| 高額療養費制度 | あり(所得に応じた負担上限) | あり | 医療費負担はほぼ同じ仕組み |
| 介護保険(40歳以上) | あり | あり | 40歳以上はどちらも加入 |
| 労災保険 | 従業員を雇えば加入 | 労災保険に原則未加入 | 代表者のみだと対象外 |
| 雇用保険 | 雇用条件を満たす従業員を雇えば加入 | 原則加入不可 | 代表者のみでは対象外 |
マイクロ法人を設立すると法人の社会保障を利用することができて、これだけの保障が受けられるということですね。
社会保険料は確かに増えますが、
「負担の増加」と引き換えに得られる保障が大幅に強化される
というのが、個人事業主との大きな違いです。
なお、社会保険料をどこまで抑えられるか、負担に見合うかどうかについてなど、詳しい解説は後述します。
【メリット3】社会的信用力が高まりやすい
法人化によって社会的信用が向上し、以下のような将来的に事業成長へつながるさまざまなメリットがある。
・売上の増加
・融資条件の改善
・人材採用の円滑化など
マイクロ法人として登記すると、大小を問わず「法人」であること自体が大きな信用につながります。
実際、取引先の企業は個人事業主よりも法人を契約相手として安定していると判断する傾向があります。
これは感覚的な話だけでなく、制度面・取引慣行からくる 明確な理由 があります。
そういうものなんですか?
なぜ法人の方が信用されるのでしょうか?
まずは比較表をご覧ください。
| 個人事業主 | 法人(マイクロ法人) | |
|---|---|---|
| 公的な存在証明 | 開業届のみ | 法務局で登記され、情報が公開 |
| 契約上の立場 | 個人名義の契約 | 会社として契約 → 責任が明確 |
| 金融サービス | 審査が厳しいことも | 法人カード・口座が作りやすい |
| 取引できる案件の幅 | 個人NGあり | 法人限定案件にも応募可能 |
| 事業の安定性 | 個人の延長に見られがち | 「事業体」として信頼される |
表だけだと分かりにくいので、それぞれの理由をシンプルに補足します
1. 法務局で登録される=「確認できる会社」
法人は、以下の内容が公的に登録されており、誰でも検索できる状態になります。
- 会社名
- 所在地
- 代表者名
- 事業内容
「実在する会社だ」と客観的に確かめられるため、企業は安心して取引できます。
個人事業主ではこの公的確認ができないため、初めての取引先ほど法人の方が安心と判断する傾向があります。
2.事業融資・設備資金が通りやすくなる
法人化の信用メリットで最も大きいのは融資が通りやすいことです。
- 個人事業主の融資 → 個人の属性が強く反映される
- 法人の融資 → 事業計画・法人格・決算書を基準に審査される
つまり、法人の方が“事業としての継続性”が評価されるため、資金調達がしやすくなります。
特に有利な場面
- 運転資金借入
- 補助金・助成金の申請
- 設備投資(PC・機材・車両など)
3.法人限定・法人優遇の仕事が明確に存在する
意外と知られていませんが、
世の中には「法人でないと応募できない」「個人事業主は対象外」という案件が多くあります。
例えば以下のようなものがあります。
- 官公庁の委託業務
- 大企業の外注契約(コンプライアンス上、法人のみ)
- 継続契約・年間契約 など
これらは会社の仕組み上、「法人のみ受け入れ」が規定化されている場面が多いのです。
マイクロ法人であっても法人格さえあれば応募できるため、受注できる仕事の幅が一気に広がります。
【メリット4】経営上の責任が限定される
- 個人事業主 無限責任を負う 自宅や貯金などの私財まで差し押さえられるリスクあり
- 法人の株主 有限責任を負う 原則として出資額の範囲でしか責任を負わない
経営上の責任というのはどういうことですか?
経営上の責任というのは、事業の運営で生じるすべての債務や義務について
「誰が最終的に責任を負うか」
ということを指します。
法人で事業を行うことで、事業の失敗による影響を最小限に抑え、個人の財産を守ることができるという大きなメリットがあります。
個人事業主の場合は無限責任となり、事業で発生した負債について最終的には自分の私有財産で弁済する必要があります。
たとえ仕入先への未払い金や銀行借入の返済、税金の滞納が発生した場合でも、自宅や預貯金といった個人の財産にまで責任が及ぶリスクがあるのです。
一方で法人は有限責任が原則で、出資した資本金の範囲内でのみ責任を負う仕組みです。
そのため、会社が抱えた債務を社長個人が支払う必要は基本的にありません。
もちろん、個人保証を条件にした銀行借入などの例外はありますが、法人化することで原則として個人の生活資産を守れるのは大きな違いです。
たとえば事業が大きく失敗して多額の負債が残ったとしても、法人であれば会社の資産を超える部分まで社長個人が返済する義務は生じません。
結果として、社長個人の自宅や預金などの私有財産を守りつつ、事業を進めることが可能になります。
このように、法人であれば有限責任の仕組みによって個人の生活資産を守り、より思い切った経営判断や挑戦をしやすくなるというのは法人化の大きなメリットです。
| 比較項目 | 個人事業主 | 法人(株式会社) |
|---|---|---|
| 法的な立場 | 個人が直接事業を営む | 会社が事業を営み、個人はその経営者・出資者 |
| 倒産・負債発生時の責任 | 個人資産も含めて返済義務(無限責任)が生じる | 原則として出資額の範囲内(有限責任)のみ |
| 影響範囲 | 自宅・車・預金など私有財産も差し押さえの可能性がある | 法人の資産内で清算され、個人資産への影響は限定的である |
| 家族への波及 | 個人と事業が一体化しているため生活全体に影響が及ぶことも | 個人財産が守られやすく、家族の生活も守られやすい |
「事業のリスク」と「個人の生活」をきちんと切り離せることは、経営者にとって大きな安心材料です。
法人化を検討する際は、この責任の範囲についてもぜひ覚えておいてください。
【メリット5】事業年度を自由に決められる
- 個人事業主:1月1日~12月31日(固定)
- 法人の場合:設立時に事業年度(例:4月~翌年3月)を自由に設定可能
税金支払いの資金繰りや煩雑な決算処理の事務コストを考慮して一番好ましい時期を選択できる
個人事業主の場合は、事業年度が1月から12月までと決められていて、毎年必ず年末で区切って申告しなければなりません。
ところが法人は、自分たちの都合に合わせて自由に決算月を設定できる仕組みになっています。
法人で事業を行うと、決算期を自由に設定できるため、税金の支払いや売上の計上タイミングを柔軟に管理できるという大きなメリットがあります。
法人では決算期を自ら選択できる仕組みがあるため、個人事業のように暦年ベースで固定されることがありません。
そのため、繁忙期を避けた時期に決算を迎えることで、経理業務の負担を抑えつつ、納税計画や資金繰りをスムーズに進めることができます。
たとえば、繁忙期の3月決算を避けて、比較的落ち着いた9月を決算期に設定することで、決算処理に集中しやすくなり、節税の検討や金融機関との調整も余裕を持って行えます。
このように、法人ならではの決算期設定の柔軟さを活かせば、経営の自由度が高まり、戦略的に事業をコントロールしやすくなるのは大きなメリットといえます。
| 比較項目 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 事業年度 | 1月~12月(固定) | 任意(例:4月~翌年3月など) |
| 繁忙期と決算の関係 | 繁忙期と重なってしまうと業務の負担が一時的に大きくなる | 繁忙期を避けて設定できる |
| 決算業務のしやすさ | 年末年始の多忙期に準備が重なることが多い | 業務が落ち着いた時期にまとめて対応可能 |
ここまでが、マイクロ法人を設立することで得られる主なメリットでした。
節税・社会保険・信用・家族活用・継続性と、個人事業主にはない魅力が多いことが分かったと思います。
ただし、メリットがある一方で、当然ながらデメリットや注意点も存在します。
仕組みを十分に理解しないまま進めてしまうと、思わぬ負担が増えたり、「こんなはずじゃなかった…」と後悔してしまうケースも少なくありません。
次の章では、マイクロ法人のデメリットや気をつけるべきポイントを、できるだけわかりやすく整理して解説していきます。
2-2 マイクロ法人を設立するデメリット
ふむふむ、確かに良いことは多そうですね。
でも逆に、デメリットや面倒なことってないんですか?
もちろんありますよ。特に、設立の手続きの煩雑さや、費用の負担感は、法人化を後悔するポイントになることもあるので注意が必要です。
法人化することで得られる代表的なデメリットは、次のとおりです。
- 設立・維持にコストがかかる
- 会計・税務管理の手間が増える
- 社会保険への加入が義務で保険料の負担が増える
それでは、一つずつ解説していきたいと思います。
【デメリット1】設立・維持にコストがかかる
法人は、設立時にも運営時にもさまざまなコストが発生し、個人事業主と比べて負担が大きくなる。
法人を設立するとお金がかかるって聞いたんですけど、
実際にはどのくらい必要なんですか?
確かに、法人を作るには最初の費用と、維持のコストがかかることを理解しておく必要があります。
具体的に説明しましょう。
会社を設立するには、登記費用・定款認証費用・印紙代など、初期費用で約20万円前後がかかります。
設立時の一般的なコスト
| 費用項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 登録免許税 | 15万円(最低) |
| 定款認証費用 | 約5万円(公証人手数料含む) |
| 印紙代 | 約4万円(電子定款なら不要) |
| その他書類作成費用 | 数千円から数万円 |
また、設立後も以下のような固定コストが発生します。
- 決算書や申告書を作成するための費用(顧問税理士への報酬(月額1万〜5万円)など)
- 社会保険料(会社負担分あり)
法人を設立する際には、まず定款作成や登記の手続きに関わる費用が発生します。
たとえば株式会社を自分で設立した場合でも、上記のような費用がかかります。
「資本金1円でも設立できる」とは言われますが、このような費用が最初にかかります。また、金融機関や取引先からの信用を考えると、ある程度まとまった資本金を用意しておくのが現実的です。
加えて、オフィスの契約や設備投資、最初の仕入れに必要な運転資金なども考慮すると、設立時には思った以上のまとまった資金が必要になります。
一方で、設立後の維持費にも注意が必要です。
個人事業の場合、赤字であれば所得税や住民税はゼロになりますが、法人は赤字であっても法人住民税の均等割(最低7万円程度)が必ず発生します。
均等割は資本金や従業員数によって金額が変わりますが、
「赤字なら税金は払わなくていい」という個人事業の感覚でいると、法人化後に戸惑う方も多いのが実情です。
このように、法人化には
- 「設立の初期費用」
- 「維持に必要な固定的コスト」
- 「赤字でも発生する均等割」
といった負担があることを理解し、しっかり資金計画を立てた上で進めることが大切です。
【デメリット2】会計・税務管理の手間が増える
法人になると会計とか税金の手続きが複雑になるって聞いたんですけど、個人事業とそんなに違うんですか!?
そうですね。
法人では会計のルールも厳しくなりますし、確定申告書の作成が圧倒的に複雑になります。
特に帳簿のつけ方についても個人事業と大きく変わりますので、しっかり押さえておきましょう。
法人化すると、多くのケースで帳簿作成や決算申告などの会計・税務業務が複雑になり、専門的な対応が求められることになります。
個人事業主は単式簿記で簡易的にお金の出入りだけを記録することも可能で、確定申告も比較的シンプルに済ませられます。
しかし、法人は、基本的には複式簿記による帳簿管理が必要になり、確定申告もとても難解になります。
複式簿記では、取引の流れを「借方」と「貸方」の二面で把握しなければならず、資産・負債・純資産の増減を正確に記録する必要があります。
さらに法人税申告の申告書作成は難解です。さらに法人住民税の計算が必要です。法人の確定申告時に提出しなければならない書類も多岐にわたります。
例えば法人の場合、決算時には貸借対照表・損益計算書のほか、勘定科目内訳書や法人事業概況説明書といった詳細資料まで作成が求められます。
また役員報酬の設定など、法人特有のルールにも従わなければなりません。
法人も白色申告の場合は、複式簿記が必須ではなく簡易な方法による記帳も認められてはいますが、個人事業主と違う点は、青色申告で55万円以上の控除を行う場合に必須となる貸借対照表の作成が、法人の場合は白色申告でも必須になっています。
簡易な方法で貸借対照表を作れなくはないですが、それはそれで色々な帳簿を参照して数字を集めてくることになると手間で正確性もかなりあやしくなります。
それだったら日々の取引を始めから複式簿記で行う方が得策ですし、青色申告を申請して青色申告の絶大なメリットを取りに行くのが賢いと思います。
白色申告の場合に必要となる帳簿書類については、次の記事で詳しく解説しています。
このように法人の会計や税務管理は、個人事業に比べて大幅に負担が増えるため、法人化(法人成り)のデメリットと言えるでしょう。
法人になると、決算・法人税申告・法定調書の作成など、税務・会計業務がより複雑かつ厳格になります。
個人の青色申告決算よりも事務作業が増え、人によっては税理士の関与やより専門的な会計ソフトの利用が必要になるでしょう。
【デメリット3】社会保険への強制加入が発生する
法人化すると、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務になる
この社会保険の保険料は、個人事業主が加入する国民健康保険・国民年金に比べて上限額が高く設定されており、負担が大きくなるケースが多い
法人化したら、ひとり社長でも社会保険に入らないといけないんですか?
はい、法人である以上は社長おひとりだけでも社会保険への加入が義務になります。
詳しく説明しましょう。
法人化すると、たとえ社長ひとりだけの会社であっても、健康保険・厚生年金といった社会保険への加入が法律で義務付けられます。
一方、個人事業主の場合は、基本的に国民健康保険と国民年金に加入することで済みます。
とくに従業員が4人以下であれば、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入は任意となっており、加入の有無は事業者自身が選ぶことができます。
このため、法人の場合は「たとえ本人1人だけでも、社会保険への加入が強制される」という点で、個人事業主よりも負担が重くなる可能性があります。
ただし、前述の通り、社会保険には厚生年金による老後の年金額の増加や、傷病手当金・出産手当金などの手厚い給付制度があり、保障内容の充実という大きなメリットがあります。
なお、個人事業主であっても、従業員が5人以上であれば原則として健康保険・厚生年金への加入が義務化されます。
とはいえ、この場合でも、事業主本人は加入対象外であるため、老後の年金や保障面での恩恵を受けにくい構造です。
社会保険の加入はコスト面で負担になる一方、経営者自身の保障の充実や従業員に対する福利厚生の整備、そして求職者からの信用力向上といった側面もあるため、将来的に事業を成長させる見込みがあるのであれば、社会保険を単なるコストではなく「投資」と捉える視点も重要です。収益の見通しや人員計画なども含めて、法人化の判断は総合的に行うのがよいでしょう。
個人事業主と法人の社会保険料比較(年収600万円想定)
| 項目 | 個人事業主 | 法人(社長1人、扶養なし)会社折半分含む | 差額(法人−個人) |
|---|---|---|---|
| 国民健康保険料と健康保険料の比較 | 約700,000円(月約58,000円) | 約600,000円(月約50,000円) | -100,000円 |
| 国民年金・厚生年金の比較 | 約200,000円(月約16,500円) | 約1,100,000円(月約92,000円) | 900,000円 |
| 年間保険料合計 | 約900,000円 | 約1,700,000円 | +800,000円(法人の場合の方が多い) |
なるほど……。法人化すれば節税もできて信用も上がるけど、それなりにお金と手間もかかるってことですね。
おっしゃるとおり。大事なのは今の事業規模と将来のビジョンにとって法人化が本当に必要かどうかをしっかり見極めることです。次章では、法人化のタイミングについて詳しく見ていきましょう。
3 マイクロ法人を設立すると節税できるのか?

マイクロ法人が注目される理由のひとつに、「節税ができるらしい」という言葉があります。
SNSや動画などでも、「マイクロ法人で税金が半分に!」「社会保険料を最適化できる!」といった情報を見かけることがあるでしょう。
しかし実際のところ、マイクロ法人を作れば誰でも自動的に節税できるわけではありません。
節税効果が得られるかどうかは、
- どのような業種や規模の事業を行っているか?
- 法人と個人の所得をどう分けるか
- 社会保険とのバランスをどう取るか
といった「仕組みの理解と設計」によって大きく変わります。
つまり、マイクロ法人の節税は「魔法の方法」ではなく、
制度を正しく使いこなす知恵なのです。
この章では、
- なぜマイクロ法人で節税できるのか
- どのような仕組みで負担が軽くなるのか
- どの程度の所得なら効果が出るのか
といった点を、具体的な数字やシミュレーションを交えてわかりやすく解説していきます。
3-1 マイクロ法人で節税できる理由
役員報酬・所得分散・社会保険料負担軽減の仕組みを図解。
マイクロ法人の最大の魅力として語られるのが「節税効果」です。
とはいえ、単に「法人の方が税金が安い」という話ではありません。
マイクロ法人で節税できる理由は、税金の仕組みそのものが個人と法人で違うことにあります。
実際に法人化によって受けられる税制上の優遇は何点かあります。
その代表的なポイントを4つに整理して説明しましょう。
税率によるメリット
- 赤字をより長く繰り越せることによるメリット
- 社長の収入が給与所得や退職所得となることによるメリット
- 保険料を費用にできることによるメリット
法人化によるメリットを一つ一つ解説していきます。
【節税メリット1】税率によるメリット
- 所得税は、所得が多くなればなるほど税率が大きくなる累進課税で最大税率45%
- 法人税は、税率が約16.5%または約25.6%で税率が一定
利益が増えるほど法人化による節税の効果が期待できる
所得税と法人税では、税率の設定の仕方が異なっています。
所得税の方は、所得が多くなればなるほど税率が大きくなる累進課税となっていて、最大税率は45%となっています。
一方、法人税は、中小企業は所得の800万円までは約16.5%(地方法人税を含む)で、それ以上は約25.6%(地方法人税を含む)と固定されています。
このように法人税の方が最大税率が圧倒的に低いので、利益が増えるほど法人化による節税の効果が期待できます。
| 個人事業主 | 法人(中小法人) | |
|---|---|---|
| 課税方法 | 累進課税 | 比例課税 |
| 税率 | 5%〜45% | 約16.5%(所得800万円以下・軽減税率) 約25.6%(800万円超・標準税率) |
| 備考 | 所得が大きいほど税率が上がる | 税率が一定で計算しやすい |
上の表の通り、一定以上の利益を上げる事業者にとっては、法人化することで税負担を抑えやすいという大きなメリットがあります。
個人事業主の場合、所得に応じて税率が上がる累進課税制度のもとで所得税を納める必要があります。
この仕組みでは、事業所得の最高税率が45%にまで達するため、所得が大きくなるほど税負担が重くなるのです。

(引用 国税庁HP 所得税の税率)
一方で法人の場合は、原則として比例課税方式が採用されており、税率は中小法人で所得金額800万円までは約16.5%。それ以降は約25.6%というように安定しています。
(参考)国税庁HP 法人税の税率
このように、法人化すると税率が一定で計算しやすく、高額所得に対しては個人事業より有利に働く仕組みです。
たとえば、事業所得が2,000万円を超えるようなケースでは、個人事業主は、900万円以上は33%の税率が課され、1800万円以上は税率が40%が適用されます。
しかし、法人化すれば大部分が20%前後の法人税で済むため、同じ利益でも納税額に大きな差が生まれるのです。
このように、利益(所得)が増えるほど法人化によって節税の効果が期待できるという点は、多くの事業者にとって法人化を検討する大きな動機になります。
実際の例を使って、両者の違いを見ていきましょう。
【所得金額600万円のケース】
| 項目 | 個人事業主 | 法人(中小法人) |
|---|---|---|
| 課税対象所得 | 600万円 | 600万円 |
| 所得税/法人税 | 約61万円(累進課税・最高20%) | 約99万円(約16.5%) |
| 住民税 | 約56万円 | 約13万円 |
| 事業税 | 約15万円 | 約33万円 |
| 合計税負担額 | 約132万円 | 約145万円 |
| 差額 | 約13万円負担少ない | – |
【所得金額700万円のケース】
| 項目 | 個人事業主 | 法人(中小法人) |
|---|---|---|
| 課税対象所得 | 700万円 | 700万円 |
| 所得税/法人税 | 約87万円(累進課税・最高20%) | 約115万円(約16.5%) |
| 住民税 | 約66万円 | 約14万円 |
| 事業税 | 約20万円 | 約41万円 |
| 合計税負担額 | 約173万円 | 約170万円 |
| 差額 | – | 約3万円の負担少ない |
【所得金額800万円のケース】
| 項目 | 個人事業主 | 法人(中小法人) |
|---|---|---|
| 課税対象所得 | 800万円 | 800万円 |
| 所得税/法人税 | 約109万円(累進課税・最高23%) | 約132万円(約16.5%) |
| 住民税 | 約76万円 | 約15万円 |
| 事業税 | 約25万円 | 約48万円 |
| 合計税負担額 | 約210万円 | 約195万円 |
| 差額 | – | 約15万円の負担少ない |
【所得金額1,000万円のケース】
| 項目 | 個人事業主 | 法人(中小法人) |
|---|---|---|
| 課税対象所得 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 所得税/法人税 | 約160万円(累進課税・33%) | 約183万円(約16.5%,800万円超は約25.6%) |
| 住民税 | 約96万円 | 約19万円 |
| 事業税 | 約35万円 | 約67万円 |
| 合計税負担額 | 約291万円 | 約269万円 |
| 差額 | – | 約22万円の負担少ない |
【所得金額1,200万円のケース】
| 項目 | 個人事業主 | 法人(中小法人) |
|---|---|---|
| 課税対象所得 | 1,200万円 | 1,200万円 |
| 所得税/法人税 | 約228万円(累進課税・最高33%) | 約234万円(約16.5%,800万円超は約25.6%) |
| 住民税 | 約116万円 | 約21万円 |
| 事業税 | 約45万円 | 約86万円 |
| 合計税負担額 | 約389万円 | 約341万円 |
| 差額 | – | 約48万円の負担少ない |
※個人事業主の所得税と住民税の計算は、所得控除を基礎控除だけと仮定して計算しています。
所得金額が700万円あたりで法人の方が有利になり始めて、それ以降は、所得金額が大きくなるほど個人と法人との差の開き方が大きくなっていますね。
もう一度下の所得税の税率表を見てもらうと、所得税の計算は、所得金額が約195万円までは5%。それ以上から約330万円までは10%というように900万円を超えたら900万円全体に33%をかけるわけではなくて、900万円を超えた金額に33%がかかっていて、195万円までは5%の税率がかかっているような計算になっています。
900万を超える金額が多ければ多いほど33%で計算される税金が大きくなって、その分法人よりも税金が多くなるといった形になっているのです。

【節税メリット2】赤字をより長く繰り越せることによるメリット
- 個人事業主:事業で発生した赤字を最大3年間繰り越すことが可能
- 法人:事業で発生した赤字を最大10年間繰り越すことが可能
赤字を繰り越せるというのは、去年100万円赤字で、今年200万円の黒字だった場合に、黒字を200万円ー100万円=100万円にできる制度のことですよね。
この赤字を10年間も繰り越せるというのはすごいですね!
これはかなりのメリットだ!
はい。例えば初年度に1,000万円の大きな欠損金(赤字)が出ても、個人事業だと3年以内で使い切らなければ、以降繰越できませんが、法人であれば最大10年間かけて段階的に利益と相殺できるのです!
| 区分 | 個人事業主 | 法人(中小法人) |
|---|---|---|
| 赤字の繰越期間 | 最大3年 | 最大10年 |
| 必要な申告手続 | 損失申告を含めた青色申告が必要 | 損失申告を含めた青色申告が必要 |
| 節税効果の活用タイミング | 翌年~3年以内の黒字と相殺可能 | 翌年~10年以内の黒字と相殺可能 |
法人化することで、万が一事業が赤字になった場合でも、その損失を長期間にわたって有効に活用できる仕組みがあります。
個人事業の場合、赤字(純損失)を繰り越せるのは最長で3年に限られています。
一方、法人では最長10年間にわたって繰り越しが認められており、将来の黒字と相殺して課税所得を抑えることができます。
この制度により、事業が一時的に不調で赤字となった場合でも、次の黒字化したタイミングで税負担を軽減できる可能性が大きくなるのです。
たとえば、新規事業の立ち上げ初年度に大きな投資を行い赤字となったとしても、その赤字を10年間繰り越し、2年目以降の黒字に充当できれば、余分な税負担を回避することができます。
繰越年度の違いによってどのような違いが出てくるか、例を見ながら確認していきましょう。
【例1】5年間赤字で6年目から黒字になったケース
| 個人事業主 | 法人 |
|---|---|
| 3年前の赤字しか6年目の黒字と相殺できない | 5年前の赤字を6年目の黒字と相殺できる |
【例2】設立初年度が大赤字で2年目から黒字のケース
| 個人事業主 | 法人 |
|---|---|
| 大赤字分を3年間しか黒字と相殺できない (大赤字分を使い切れない可能性が高い) | 大赤字分を10年間黒字と相殺できる (大赤字分を使い切る可能性が高い) |
このように、法人化することで赤字繰越期間が長期に及ぶため、過去に生じた赤字をそれ以降の黒字と相殺できる可能性が高く、事業期間全体を通じて正味で黒字になった分だけ税負担をする形に近くなります。
個人事業主は、3年間しか赤字を繰り越せないので、過去の赤字を黒字と相殺できない可能性も高く、その分余計に税負担が大きくなる可能性があるということですね。
【節税メリット3】給与所得や退職所得となることによるメリット
給与所得控除?
退職所得控除?
どういうことでしょう?
個人事業主の場合、自分の取り分はすべて「事業所得」として課税対象となり、経費以外に所得から差し引かれるような事業所得控除というものはありません。
法人で、経営者の取り分を給与や退職金という形で支払うだけで給与所得控除や退職所得控除というもの収入から差し引けるので、節税になるということです。
| 事業所得(個人事業主) | 給与所得・退職所得(法人が支給) |
|---|---|
| 経費以外に所得から差し引けるものはない。 |
|
法人化することで、個人事業主にはない役員報酬や退職金制度を活用し、節税と老後資金の確保を同時に実現できます。
個人事業主の場合、自分の取り分はすべて「事業所得」として課税対象となり、控除の幅が限られます。
一方、法人にすると、社長自身に役員報酬として給与を支払い、その給与について給与所得控除を適用できるため、課税所得を抑えることが可能です。
さらに法人であれば、将来的に退職金制度を整えることもできます。
退職金は分割で受け取れる方法もあり、所得税法上も大きく優遇されており、老後の資金準備として非常に有効です。
たとえば、個人事業主のままだと引退時に多額の資金を一度に取り崩すと、その分がそのまま課税対象になってしまいます。
しかし、法人化して退職金制度を設ければ、退職所得控除の適用により税負担を大きく軽減できます。
このように、法人化によって役員報酬の給与所得控除や退職金の税優遇を活かしながら、老後に向けた資産形成を効率的に行えることは大きな魅力です。
個人事業主で事業所得で申告するよりも、自分の取り分を給与や退職金で支給することによって控除できるものがあるから得になるというのは、わかってきました。
具体的にどのくらい節税になるのかを教えてもらえますか?
それでは、具体例を使ってどの程度節税効果があるのかを見ていくことにしましょう。
個人で700万円の課税所得と法人で課税所得100万円と役員報酬600万円(合計700万円)のケースを比較します。
法人化の税負担比較
| 項目 | 個人事業主 | 法人(会社) | 社長個人(役員報酬分) |
|---|---|---|---|
| 課税所得 | 700万円 | 100万円(法人利益部分) | 436万円(役員報酬600万円−給与所得控除164万円) |
| 税金 | 約87万円(所得税) | 約16万円(法人税+地方法人税) | 約31万円(所得税) |
| 住民税 | 約66万円 | 約8万円(市民税+県民税) | 約40万円 |
| 事業税 | 約20万円 | 約5万円(事業税+特別法人事業税) | 0円 |
| 合計税負担額 | 約173万円 | 約29万円 | 約71万円 |
税負担の比較表(個人事業主VS法人+社長(給与分))
| 項目 | 個人事業主 | 法人+社長個人の合計 |
|---|---|---|
| 課税対象所得 | 700万円 | 100万円(法人)+436万円(社長) |
| 所得税/法人税等 | 約87万円 | 法人:約16万円+社長:約31万円 |
| 住民税 | 約66万円 | 法人:約8万円+社長:約40万円 |
| 事業税 | 約20万円 | 法人:約5万円+社長:0円 |
| 税額合計 | 約202万円 | 約29万円(法人)+約71万円(社長)=約100万円 |
| 差額(節税メリット) | – | 約102万円の節税効果 |
※個人事業主と社長の所得税と住民税の計算は、所得控除を基礎控除だけと仮定して計算しています。
個人事業主の所得では、給与所得控除を差し引けない分、税額に差額が出るということですね。
その通りです。
個人事業主の所得は『事業所得』として扱われるため、原則として必要経費を差し引いた残り全額が課税対象です。
一方で、法人化して社長が給与を受け取る形になると、その給与は『給与所得』になります。給与所得の場合には、『給与所得控除』という一定の控除額を差し引いてから課税されるということになります。
では、次は退職所得控除について、簡単に解説します。
退職金?
個人事業主の場合って、退職って言うか引退ですよね。
なぜ、退職金で税金の有利不利が出るのでしょうか?
おっしゃるとおり、個人事業主に退職金という考え方はありません。
引退時に、口座に残っている資金は全額が所得税の課税済みのお金です。
そのため、個人事業主が引退後に使う資金は、現役時代に事業所得としてすでに課税され、その後に自ら貯蓄したものであり、引き出しても追加課税はされません。
しかしその分、老後資金の準備には毎年の高い税率を負担しながら積み立てる必要があります。
一方、法人では役員退職金として会社が計画的に積み立てることで、支給時に「退職所得控除+1/2課税」が適用され、大幅に税負担を軽減できます。
| 比較視点 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 老後資金の形成方法 | 事業所得から自力で貯蓄が必要 | 役員退職金として会社が積立・支給する |
| 税務上の扱い | 毎年の所得で課税済みであり、貯蓄には優遇なし | 積立中は損金算入でき、支給時は「退職所得扱い」で税優遇がある |
| 節税効果 | 年ごとに高い課税負担(特に高所得時) | 退職時に「控除+1/2課税」で圧倒的に有利になる |
法人から退職金を支出したときの税額計算の具体例は以下の通りとなります。
退職金2,000万円の支給例(法人から社長へ)
社長の勤続年数:19年2カ月(月は切り上げとなり、「20年」で計算)
退職金額:2,000万円
他の所得なし(その年は退職金のみ)
退職金は一括で支給
① 退職所得の金額を算出
退職金に対する課税所得は、以下のように計算されます。
| 計算式 | 結果 |
|---|---|
| 退職所得控除額(勤続20年) | 40万円 × 20年 = 800万円 |
| 課税対象退職所得 = (2,000万円 − 800万円) × 1/2 | 600万円 |
退職金の課税対象となる所得を計算するためには、退職所得控除の金額を算出することになります。算出式は以下の通りとなります。
退職所得控除額の計算の表
| 勤続年数 (A) | 退職所得控除額の計算式 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × A(最低80万円) |
| 21年超 | 800万円 + 70万円 ×(A−20) |
今回の例題の場合は、勤続年数が20年なので、
40万円×20年=800万円
となり、800万円が退職所得控除の金額となり、受け取った退職金額から差し引き、その金額の1/2が課税される所得金額となります。
② 税額の計算(概算)
退職金の課税対象は600万円となるため、これに通常の所得税・住民税の税率を当てはめて計算します。
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 所得税(課税所得600万円の場合) | 約120万円 |
| 住民税(10%程度) | 約60万円 |
| 合計税額 | 約180万円 |
③ 節税効果の比較
仮にこの2,000万円が個人事業主の所得として課税されていたと仮定すると、以下のような比較となります。
| 比較項目 | 個人事業主 | 法人化して退職金で受給 |
|---|---|---|
| 税務上の扱い | 事業所得として課税済み(取り崩し時は非課税) | 退職所得として課税(※退職所得控除・1/2課税あり) |
| 所得控除 | すでに課税済みのため控除なし | 退職所得控除:1,200万円(勤続30年)+1/2課税 |
| 実際の税負担 | 現役時代の累計税額:約600〜700万円(所得税(税率20%想定)・住民税) | 約180万円(所得税+住民税) |
| 税金のタイミング | 現役時に毎年課税 | 引退時に一括課税(優遇措置あり) |
| メリット | 手元資金は自由に使える(ただし税引後) | 退職所得として税務優遇+法人の損金にも計上可能 |
| 節税効果 | − | 約400万円の節税効果 |
ふむふむ。
個人事業主は引退時には課税はされないけど、既に高い所得税を払ったお金が残ることになるけど、法人の場合は、退職金のために積み立てておき、退職金を支払った際に、控除がある分大きな税金の有利があるということですね。
そういうことになります。
よって法人化は、老後資金を「効率よく準備し、最終的に有利な税制で受け取る」ための有効な選択肢でもあるということです。
【節税メリット4】保険料を費用にできることによるメリット
え!?法人化すると支払った保険料を経費にすることができるんですか?
そのとおりです。
個人事業主の場合、生命保険料は原則として経費にできません。所得控除として『生命保険料控除』を使うくらいで、年間の上限も小さいです。
一方、法人になると、法人契約で保険に加入することで、その保険料の一部、あるいは全額を損金に算入できるケースがあるんです。
つまり、課税所得を減らして、節税効果を生み出せるというわけです。
法人化すると、法人契約の生命保険を活用して節税の幅を広げられるという大きなメリットがあります。
個人事業では、生命保険料を必要経費として計上することは原則認められず、所得控除として「生命保険料控除」を使う程度にとどまります。
この控除額は限度が低く、大きな節税効果は期待しにくいのが現実です。
一方で法人の場合は、法人契約の生命保険や掛け捨て保険に加入すれば、その保険料の一部または全額を損金として計上でき、結果的に法人の課税所得を抑える仕組みを利用できます。
たとえば、役員の退職金準備や万一の事業保障として法人で保険に加入した場合、その保険料の一部または全部を損金扱いにできるため、個人よりも柔軟に節税を図ることが可能です。
このように、法人ならではの保険を活用した損金計上の仕組みを上手に使うことで、節税の選択肢が大きく広がる点は法人化の大きな魅力といえます。
生命保険料の取扱い比較
年間保険料100万円の場合※掛け捨て保険とした例で比較します。
| 項目 | 個人事業主 | 法人(会社) |
|---|---|---|
| 保険料の扱い | 必要経費にはできない | 損金算入(条件を満たす法人契約であれば一部〜全額可能) |
| 所得控除の適用 | 生命保険料控除:最大12万円程度 | 保険料の一部または全額を損金に算入でき所得から控除できる |
| 節税効果 | 最大12万円×税率で数万円の節税にとどまる | 最大100万円×法人税率(約23%)で約23万円の節税効果 |
このように、個人事業主は保険料を「控除」できても、ごく一部だけで節税効果は限定的ですが、法人化して法人契約にすれば、保険料を「経費」として落とせるので、節税効果が大きくなります。
法人の場合は、保険料の一部か全額という説明をしていますが、保険料のすべてを経費にできるわけではないのですね。
掛け捨ての保険や解約返戻金が半分以下の保険は、その保険料の全額を損金(法人の経費)にできます。ただし、解約返戻金が半分以上だと解約返戻金分を資産に計上して、それ以外の部分を損金(法人の経費)にするというイメージです。
なるほど。
それでも個人事業主の場合は、所得から差し引ける金額が12万円が上限ということを考えれば、法人で契約した方が断然節税効果が高いということですね!
3-2 マイクロ法人の節税効果を試算する
これだけ法人化による節税メリットがあるということは、
法人を設立すると税金が大幅に安くなるということなのでしょうか?
では、実際に法人化するとどの程度税金が変わるのか、
シミュレーションで確認してみましょう。
ここでは、所得金額が600万円の場合 と 1,200万円の場合 の2パターンを例に比較していきます。
まずは、所得金額が600万円の場合のシュミレーションから確認していきます。
所得金額が600万円のケース
シミュレーション結果は以下のようになります。
| 項目 | 個人事業主 | 法人(中小法人) |
|---|---|---|
| 所得税/法人税 | 約61万円 | 約99万円 |
| 住民税 | 約56万円 | 約13万円 |
| 事業税 | 約15万円 | 約33万円 |
| 合計税負担額 | 約132万円 | 約145万円 |
➡ 個人事業主の方が約13万円負担が軽い結果となりました。
あれ!?個人事業主の方が13万円有利になっていますね。
なぜなんでしょうか?
そうですね。
この所得帯では、
・個人の所得税率はまだ高くない(20%程度)
・一方で法人化すると、事業税や法人税の負担が増える
という理由から、トータルでは個人の方が有利になりやすいのです。
つまり、600万円前後では、節税目的で法人化してもあまりメリットは出にくい
ということが数字で確認できます。
続けて、所得金額が1,200万円の場合を見てみましょう。
所得金額が1,200万円のケース
次に、所得1,200万円のシミュレーションを見てみましょう。
| 項目 | 個人事業主 | 法人(中小法人) |
|---|---|---|
| 所得税/法人税 | 約228万円 | 約234万円 |
| 住民税 | 約116万円 | 約21万円 |
| 事業税 | 約45万円 | 約86万円 |
| 合計税負担額 | 約389万円 | 約341万円 |
➡ 法人化すると約48万円の負担減という結果になりました。
今度は法人が有利になりましたね。
理由は明確で、
・ 個人事業主は所得税率が33%まで跳ね上がる
・ 法人税率は一定で、個人のように急増しない
・役員報酬にすることで給与所得控除が使える
こうした要素が組み合わさり、所得が1,000万円を超えるあたりから法人の方が有利になりやすいのです。
所得金額が低いと法人を設立する必要はないのか?
このシュミレーションだと、所得金額が低いと法人を設立しても不利になるんですよね。
これだと、あまり意味がないような、、
あくまで今回の比較は、「所得金額が同じだった場合」 のシミュレーションです。
前述のとおり、法人の場合は個人事業主より 経費として認められる範囲が広い ため、実際の手取りはシミュレーションどおりにはなりません。
たとえば、
退職金を経費にできる
生命保険料を法人契約にして損金算入できる場合がある
家族への給与を柔軟に支払える
など、法人独自の節税手段を活用することで結果的に所得を圧縮し、税負担を減らせるケースも多くあります。
そのため、単純に「所得が低い=法人化が不利」とは言えず、状況によって大きく変わる点には注意が必要です。
つまり、法人化のメリットは 税率の比較だけでは判断できない ということです。
大切なのは、
- どのくらい経費を使える事業なのか
- 将来的にどの程度の所得(利益)を見込んでいるのか
- 家族に給与を出すのか
- 退職金や保険などの法人特有の制度を活用する予定があるか
といった 事業の全体像を踏まえて判断すること です。
そのため、所得が600万円前後でも法人化が有利になる場合がありますし、逆に1,000万円を超えていても、社会保険料の負担がネックとなり個人事業のままの方が良いケースもあります。
4 マイクロ法人が支払うことになる社会保険料とは?

社会保険料って、法人になると金額が変わるって話ですけど、
実際、どんなふうに変わるんですか?
保障内容や保険料はどうなるのでしょうか?
はい、大きく変わります。個人事業主と法人では、そもそもの社会保険の制度が異なりますので、
負担額も保障内容も大きく変わってまいります。
特に、「費用が増える」と感じる方もいれば、
「保障内容が大幅に手厚くなるため納得できる」という方もいらっしゃいます。
この点は、法人化を検討されるうえで非常に重要なポイントです。
法人化すると避けて通れないのが「社会保険」です。
実はここが、節税や信用力だけでなく、法人化のメリット・デメリットを左右する最大の分岐点になります。
この章では、社会保険について押さえておきたい次のポイントを整理していきます。
- なぜ法人は社会保険への加入が義務になるのか?
- 個人事業主と比べて、保障内容はどれだけ変わるのか?
- 社会保険料は本当に高くなるのか?“損か得か”の実際のところは?
これらを理解すると、
「法人化すると社会保険料が高いって聞くけど、本当に損なの?」
「負担と保障をどう比較すれば正しい判断ができるのか?」
といった疑問がスッキリ解決でき、法人化の全体像がよりつかみやすくなります。
それではまず、マイクロ法人における社会保険の仕組みについて確認していきましょう。
4-1 マイクロ法人の社会保険料の仕組み
ひとり社長でも社会保険に入らないといけないって聞いたんですが…
なぜ法人だと強制になるんですか?仕組みが全然イメージできなくて…。
はい。法人になると、経営者ご自身も「会社で働く人(=役員)」とみなされるため、
たとえお一人の会社でも、健康保険・厚生年金への加入が義務になるんです。
マイクロ法人(社長1人の会社)を設立する際に、まず押さえておくべき最大のポイントが、「法人である以上、たとえ一人社長でも社会保険への加入が義務になる」という点です。
個人事業主の場合は、国民健康保険・国民年金に個人として加入すれば足り、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入は原則として任意です(※従業員が5人以上の特定業種を除く)。
一方、法人になると事情は大きく変わります。法人格を持つことで、雇用関係の有無にかかわらず、経営者本人(役員)も「会社に雇われる立場」として扱われるため、健康保険・厚生年金といった社会保険への加入が強制されます。
この違いにより、個人事業主の社会保険が「最低限の保障」にとどまるのに対し、法人の場合はいわゆる会社員と同等の手厚い保障を受けられるようになります。
特に、
・病気やケガで働けなくなったときの傷病手当金
・出産時の出産手当金
・将来受け取る老齢年金
といった人生のリスクに対する備えは、個人事業主と法人とで大きな差があります。
そのため、マイクロ法人を検討する際は、単純に「保険料が高い・安い」で比較するのではなく、「どのような保障を受けられるのか」という視点で考えることが重要です。
社会保険への加入は確かに負担増となる側面もありますが、見方を変えれば、法人化によって強制的に「手厚い保障を備える仕組み」を持てるとも言えます。
なお、個人事業主と法人それぞれの社会保険の主な内容は、以下の通りです。
個人事業主の社会保険の主な保障
| 保険の種類 | 主な保障内容 |
|---|---|
| 国民健康保険 | ● 医療費は原則3割負担 ● 高額療養費制度あり ● 出産育児一時金あり |
| 国民年金 | ● 65歳から老齢基礎年金が支給(定額) ● 障害・遺族年金も「基礎年金部分のみ」支給 |
| 介護保険 | ● 要介護認定で介護サービスが利用可能(法人と保障内容は同じ) |
法人に適用される社会保険制度
| 保険の種類 | 主な保障内容 |
|---|---|
| 健康保険 | ● 医療費は原則3割負担 ● 出産手当金・出産育児一時金あり ● 傷病手当金あり(病気やケガの休業中) ● 高額療養費制度あり |
| 厚生年金 | ● 国民年金よりも受取額が多い(老後の年金が増える) ● 障害・遺族への年金も上乗せされる |
| 労災保険 | ● 通勤・仕事中のケガ・病気に対する医療・休業補償 ● 障害・死亡時の遺族給付も手厚い |
| 雇用保険 | ● 失業時の手当 ● 育児・介護休業中の給付金もあり |
| 介護保険 | ● 要介護認定で、訪問介護や施設サービスなどが利用可能 |
このように、法人となった瞬間に「会社として」負担する保険制度が増えるため、社会保険料の負担は個人事業主と比べると大きく変わってきます。
もちろん、「制度が増える=負担が増える」面もありますが、その代わりに個人事業主にはない強力な保障を得られる点が重要です。
なるほど、、
保障の内容が良いのはわかりました。
法人の社会保険料はどのような計算で算出されるんでしょうか?
国民年金は誰でも同じ定額保険料ですが、厚生年金は 役員報酬が高いほど保険料も高くなる仕組み になっています。
このため、ある程度の役員報酬を設定している場合は、個人事業主の頃より年間保険料が高くなるケースが多いのが現実です。
なお、社会保険は 会社と個人で折半 する制度であるため、マイクロ法人の場合、会社側の負担も新たに発生します。
そのため、結果的に「社会保険料が高い」と感じやすいわけです。
ここが法人成りの社会保険の最大のポイントです。
ただし、負担が増えるのは制度が強化される証拠でもあり、個人事業主には存在しない以下の制度が、法人で社会保険に加入することで利用できます。
| 保障内容 | 個人事業主 | 法人(社保加入) | 解説 |
|---|---|---|---|
| 傷病手当金 | なし | あり(給与の2/3を最長1年6ヶ月支給) | 病気・ケガで働けない期間の収入が守られる。自営業にはない大きな補償。 |
| 出産手当金 | なし | あり(産休中の給与の約2/3) | 出産で仕事を休んだときの生活が安定する。特に女性経営者には大きなメリット。 |
| 厚生年金 | 基礎年金のみ | 老齢・障害・遺族すべてが上乗せ支給 | 老後の年金受取額が大きく増える。障害や遺族年金も強化。 |
| 労災保険 | 任意加入 | 業務災害・通勤災害を補償(※社長は特別加入) | 自営業では補償されない「通勤中の事故」にも備えられる。 |
| 雇用保険 | 原則不可 | 一定条件で加入可 | 失業手当や育児休業給付金を受けられる可能性も。 |
この比較から明らかなように、個人事業主の保障は最低限であるのに対し、法人の保障は会社員と同じレベルまで一気に引き上がることが分かります。
特に次の3つは個人事業主にとって大きな差になります。
- 病気・ケガで働けない時の収入補償(傷病手当金)
- 出産で休業する時の手当金
- 老後の年金額が大きく増える厚生年金
これらはすべて「個人事業主には一切ない」保障であり、法人として保険料を払う理由そのものとも言える制度です。
① 病気・ケガの際の「収入補償」がまるごと追加される
個人事業主には傷病手当金がないため、
病気やケガで働けなくなると、収入がゼロになるリスクがあります。
しかし法人の社会保険に加入すると、
- 給与の約2/3を最長1年6ヶ月支給
- 自営業には全く存在しない大きな補償
となり、生活面の不安が一気に軽減されます。
② 出産時の手当金が付く(自営業にはゼロ)
自営業でも「出産育児一時金」はありますが、
出産休業中の収入補償である 出産手当金は一切ありません。
法人では、産休期間の給与の2/3を支給(出産手当金)が受けられるため、女性経営者・役員にとっては特に大きなメリットになります。
③ 老後にもらえる年金が大幅に増える
国民年金は定額のため、
将来の受取額は約6.5万円程度(変動あり)に固定されています。
しかし厚生年金は報酬比例のため、
- 受取額が増える
- 障害年金・遺族年金も上乗せされる
など、老後や万一の際の生活を支える力が格段に違います。
社会保険料だけで比較すると、
一見「法人のほうが高い」と思われることも多いですが、
その裏側で得られる保障内容は個人事業主とは比べものになりません。
マイクロ法人にすることで
老後の年金
出産時の支援
病気・ケガで働けない期間の収入補償
業務災害の保護
失業や育児休業への給付
といった人生のリスクに対する“守り”が一気に強くなります。
つまり、社会保険は費用ではなく「リスクに備えるための投資」という見方が重要です。
4-2 社会保険料はそんなに高くなるのか?
法人になると社会保険料が高くなるって話ですけど……
実際、そんなに負担が増えてしまうんでしょうか?
役員報酬の設定次第ではございますが、一般的には個人事業主より高くなるケースが多いですね。
ただし、保障内容も大きく変わりますので、単純に負担だけで判断するのはおすすめいたしません。
マイクロ法人を設立すると、社会保険への加入が義務になりますが、
「では実際、保険料は高くなるのか?安くなるのか?」という点は、多くの人が最初に気になるポイントです。
【結論】安くなるケースもあるが、多くは個人事業主より高くなる
結論としては以下のとおりです。
- 安くなるケースもある(役員報酬を低く抑えた場合)
- 基本的には個人より高くなる(厚生年金の影響が大きい)
つまり、「絶対に高くなる」「絶対に安くなる」と言い切れるものではなく、役員報酬の設定額や経営方針によって大きく変わるというのが正解です。
マイクロ法人でよくあるパターンとしては、「役員報酬を極限まで低く設定して社保を安く抑える方法」も存在しますが、ここでは一般的なケースとして、年収(役員報酬)600万円の比較を示します。
個人事業主と法人の社会保険料比較(年収600万円想定)
| 項目 | 個人事業主 | 法人(社長1人、扶養なし)会社折半分含む | 差額(法人−個人) |
|---|---|---|---|
| 国民健康保険料と健康保険料の比較 | 約700,000円(月約58,000円) | 約600,000円(月約50,000円) | -100,000円 |
| 国民年金・厚生年金の比較 | 約200,000円(月約16,500円) | 約1,100,000円(月約92,000円) | 900,000円 |
| 年間保険料合計 | 約900,000円 | 約1,700,000円 | +800,000円(法人の場合の方が多い) |
差額:法人の方が約80万円高い
一見すると「法人化は損」に見えますが……
実は 安くなるパターンも存在します。
特に安くなるケースとして代表的なのが、法人と個人事業主の働き方を 役割分担して併用する方法 で、いわゆる「二刀流スキーム」というものです。
「二刀流スキーム」!?
なんか、かっこいいですね。
どんな方法なんでしょうか?
二刀流スキームとは?
法人と個人事業主の働き方を 役割分担して併用する方法 です。
例えば、以下のように法人と個人事業主の事業の内容を分担させるということです。
- 法人 → 経営管理・事務作業など、最低限の役員報酬を設定
- 個人事業 → 本業部分を個人で行う(営業・クリエイティブなど)
このように 事業を分割することで、法人の役員報酬を低く抑えられる のが特徴です。
法人の社会保険料は 役員報酬(給与)を基準に計算 されます。
そのため、
- 法人の役員報酬を低く設定
- 本業の収入は個人事業として受け取る
という構造にすると、法人の社会保険料を最安帯(月3万円台~)まで抑えることが可能になる場合があります。
個人事業主側では国民健康保険・国民年金に加入しますが、自治体によっては国保の方が安い地域も多く、結果として個人+法人の合計の社会保険負担が軽くなるケースがあるというわけです。
こちらのスキームについての詳しい解説は後述します。
5 マイクロ法人の維持費

マイクロ法人を設立するときに見落とされがちなポイントが、**「設立後に毎年必ず発生する維持費(ランニングコスト)」**です。
法人化には節税や信用力アップといったメリットがある一方で、
社会保険料や固定費など「事業が赤字でも、売上がゼロでも必ず支払う必要がある費用」が存在します。
会社運営にかかる費用は、
- 法定費用(設立時)
- 維持費(ランニングコスト)
- その他の変動費(事務所家賃、人件費など)
に分かれますが、特にマイクロ法人では 維持費の把握が最重要 です。
この章では、マイクロ法人に必要な維持費を体系的に整理し、
事業計画や資金繰りに役立つ「固定費の全体像」をわかりやすく解説します。
5-1 マイクロ法人にかかる固定費
マイクロ法人を作ると、たとえ社長ひとりの会社であっても、
固定費(ランニングコスト)は毎年必ず発生します。
これらは売上がなくても発生するため、法人運営をする上で最初に理解すべきポイントです。
以下に、会社形態に関わらず必要な固定費、そして株式会社だけ発生する固定費を整理しました。
① 会社形態を問わず必ず発生する固定費
| 費用項目 | 解説 |
|---|---|
| 事務所の家賃・光熱費 | 自宅兼オフィスで抑えることも可能だが、完全にゼロにはならないケースが多い。 |
| 給与(役員報酬・従業員給与) | マイクロ法人でも社長へ役員報酬を支払う必要がある。資金計画に大きく影響する。 |
| 福利厚生費・社会保険料 | 会社負担分の社会保険料は必ず発生。健康保険・厚生年金・労災・雇用保険が含まれる。 |
| 税金(住民税均等割) | 黒字・赤字に関係なく発生。資本金1,000万円以下なら年間約7万円。 |
| 税理士報酬 | 依頼する場合は年間30万〜50万円が相場。自社で申告する場合は不要。 |
これらは会社の規模に関係なく発生するため、どんなマイクロ法人でも最低限必要なコストです。
② 株式会社だけが負担する固定費(合同会社には不要)
| 費用項目 | 解説 |
|---|---|
| 決算公告費用(官報公告) | 官報掲載で約6万円。新聞の場合は10万〜100万円。電子公告なら無料。 |
| 役員変更登記(重任登記) | 任期満了に伴い必要。司法書士依頼で3〜6万円。 |
| 株主総会関連の費用 | 会場費、資料印刷、お茶代など。規模により変動。 |
以下が、マイクロ法人を運営するうえで押さえておきたい維持費のポイントです。
マイクロ法人の維持費のポイント
- 売上がなくても支払いが必要
- 個人事業主とは異なり住民税の均等割が必ず発生
- 社会保険料の会社負担が大きい(給与の約14.6%)
- 法人形態によって維持費に差が出る
マイクロ法人の固定費は、事業の状況に関わらず 必ず支払う必要がある費用 です。
そのため、設立前に綿密な資金計画を立てておくことが非常に重要 となります。
5-2 売上がない・赤字でも必要な維持費
マイクロ法人を検討する人に最も多い勘違いが、「売上がなければ費用もほぼゼロだろう」という考えです。
しかし、現実はまったく違います。
株式会社でも合同会社でも、売上がゼロでも赤字でも、必ず次の費用は発生します。
売上ゼロでも必ず支払う必要がある費用一覧
| 費用項目 | 金額の目安 | 解説 |
|---|---|---|
| 住民税均等割 | 7万円/年〜 | “赤字でも必ず発生”。会社の最低税負担。 |
| 社会保険料(会社負担分) | 給与の約14.6% | 「ひとり社長」でも加入義務あり。最も大きい固定費。 |
| 役員報酬 | 任意だがゼロ不可 | 原則として「役員報酬0円」は非現実的。生活費も必要。 |
| 事務所費・光熱費 | 数千〜数万円 | 自宅兼でも完全ゼロにはできないケースが多い。 |
| 税理士報酬(依頼した場合) | 年30万〜50万円 | 小規模でも発生するプロへの依頼コスト。 |
| 株式会社の決算公告費 | 約6万円 | 株式会社の義務。合同会社は不要。 |
実際には、マイクロ法人を維持するだけで、年間20〜40万円程度は最低限必要となります(社会保険料、家賃、均等割など)。
さらに、役員報酬を設定し、税理士を依頼すると、年間50〜100万円の固定費になることも珍しくありません。
それは、「法人は事業を行う主体」であり、その存続自体に法律上の義務やコストが伴うからです。
個人事業主は「何もしていなければ費用ゼロ」もあり得ますが、法人はその仕組み上、維持費が必ず発生する構造になっています。
マイクロ法人は節税・信用力など大きなメリットがありますが、
維持費が必ず発生する点はデメリットであり、設立前に必ず把握しておくべきポイントです。
特に重要なのは次の2点です。
- 売上ゼロ・赤字でも費用は発生する
- 社会保険料の会社負担が大きい
これらを踏まえた上で、
事業規模・収益見込み・将来計画に合わせて、
「法人化すべきかどうか」を総合的に判断することが非常に重要です。
6 マイクロ法人の活用事例とおすすめ事業
マイクロ法人は「節税のための器」としてだけでなく、実際の働き方や家族構成に合わせてさまざまな形で活用できる柔軟性の高い仕組みです。
ここでは、マイクロ法人を活かしやすい職業・業種や、個人事業との組み合わせパターン、家族での活用方法、さらには投資用として使う際の注意点まで、実例を交えながらわかりやすく解説します。
6-1 マイクロ法人が向いている働き方・業種
どんな仕事がマイクロ法人と相性がいいんですか?
結論から言うと、「人件費・仕入れが少なく、利益が残りやすい仕事」と相性が抜群です。
マイクロ法人は、1人〜少人数で、小さなリスクで事業を始めたい人向けの法人形態です。
大きな初期費用をかけず、リスクをできるだけ抑えて事業をしたい人に向いています。
ポイントは次の2つです。
- 設備投資がほとんどいらないこと
- 自分のスキルや経験をそのまま収入に変えられること
まず、マイクロ法人に特に向いているのが、自分の知識やスキルを提供するタイプの仕事です。
わかりやすくまとめると、次のような働き方がマイクロ法人向きです。
| 向いている理由 | 該当する働き方の例 |
|---|---|
| 設備投資がほぼ不要 | コンサル、デザイン、プログラミング、ライティング |
| オンラインで完結しやすい | コンテンツ販売、オンライン講座、SNS・YouTube、アフィリエイト |
| 継続収入で安定しやすい | 顧問契約、月額サービス、オンラインスクール |
これらの業種は、
- パソコン1台で始められる
- 在庫や店舗が不要
- 法人として取引することで信用が得やすい
といったメリットがあり、マイクロ法人との相性がとても良いです。
逆に、飲食店のように実店舗が必要なビジネスや、設備投資が大きい製造業、多くの従業員を雇う業種などは、費用や手間が増えるため、マイクロ法人とはあまり相性が良くありません。
マイクロ法人にあまり向いていない業種
- 実店舗が必要な飲食・小売
- 大規模な設備投資が必要な製造業
- 多くの従業員を抱える事業
こうした業種は固定費が高く、マイクロ法人のメリットが活かしにくいといえます。
6-2 個人事業+マイクロ法人の二刀流スキームとは?
個人事業とマイクロ法人を同時に運営する「二刀流スキーム」とは、個人事業の自由度と、法人の信用力・社会保険・税制のメリットを組み合わせて、収入やコストを最適化する方法です。
二刀流は「節税スキーム」と言われることもありますが、実際には、
- 社会保険料の調整がしやすくなる
- 税金も状況によって軽くなることがある
というように、複数のメリットがバランスよく働くスタイルです。
ふむふむ。事業を法人と分担するということですね。
メリットとありましたが、どんなメリットなんでしょうか。
「二刀流スキーム」のメリットは以下のとおりです。
「二刀流スキーム」を活用するメリット
- 所得を分散できるため、税率が下がることがある
- 社会保険料を低く抑えられる可能性がある
① 税金面のメリット
個人事業主の税金は累進課税のため、所得が上がるほど負担が大きくなります。
そこで、業務内容や契約形態に応じて「個人で行う仕事」と「法人で行う仕事」をきちんと分ける と、結果として次のようなメリットが生まれます。
税金面のメリットのポイント
個人側の所得が自然に抑えられ、税率が高くなりすぎない
(事業内容を適切に区分した結果として負担が平準化される)法人側は一定税率(15〜23%)のため、利益を計画的に管理しやすい
法人は経費計上の幅が広く、業務に必要な支出を整理しやすい
法人の赤字は将来に繰り越せるため、長期的な収益調整にも活用できる
つまり二刀流は、「個人と法人の事業を正しく分けて運営することで、全体の負担をバランスよく整える方法」という考え方に近いものです。
本来分けるべき業務をきちんと整理して運用することで、結果として税率が高くなる所得額を避けられ、全体の負担が少なくなりやすいという仕組みです。
② 社会保険面のメリット
- 役員報酬を低くすることによって国民健康保険料を低くすることができる
- 健康保険の保障が厚くなる
- 役員報酬を高くすることによって将来もらえる年金の額を増やすことができる
個人事業主のまま社会保険料を負担する場合と比べて、個人事業主と法人を併用する「二刀流」にすることで、社会保険の面ではいくつか大きなメリットが生まれます。
社会保険料の負担を抑えやすくなる点だけでなく、保障内容や将来の年金にまで影響する点が特徴です。
ここでは、二刀流にすることで得られる社会保険面の3つのメリットについて、順に見ていきましょう。
【メリット1】国民健康保険料を低くすることができる
個人事業主の場合、国民健康保険料は「所得」に応じて計算されるため、事業が軌道に乗って所得が増えるほど、保険料の負担も重くなっていきます。
一方で、二刀流として法人を設立し、役員報酬を低く調整することで、この国民健康保険料の負担を抑えることが可能になります。
個人事業主だと、所得が増えるほど国民健康保険料もどんどん高くなりますよね。正直、そこが一番きつく感じています……。
そのとおりです。
国民健康保険料は所得連動のため、事業が軌道に乗るほど負担が重くなります。
ただし、二刀流で法人を設立し、役員報酬を設定し所得を分散することで、この健康保険料の負担を抑えることが可能になります。
二刀流では収入の取り方を工夫することで、健康保険料を抑える設計ができる点が大きな特徴です。
では、実際にどのように健康保険料が変わるのか、具体例を見ていきましょう。
具体例:個人事業主だけの場合の二刀流スキームを使用した場合の比較
以下の内容が説例の内容となります。
【設例内容】
フリーランスの Web デザイナー A さんは、もともと すべてを個人事業として運営していた。
A さんの仕事は大きく次の2種類に分けられる。
- 受注を受けて行うWebデザイン
- Webデザイナーになるためのオンライン講座販売
当初はこれらすべてを個人事業として請け負っていたが、業務の性質や顧客の違いを踏まえ、次のように個人と法人で事業を分担した。
- 個人事業 … 受注を受けてWebデザイン・Webサイトの保守
- 法人(マイクロ法人) … オンライン講座販売
その結果、年間の所得は次のとおりとなった。
- 個人事業の年間所得:700万円
- 法人(マイクロ法人)の年間所得:300万円
合計で 1,000万円。
法人では役員報酬を 月8万円(年96万円) に設定し、社会保険に加入している。(国民健康保険、国民年金の支払いはやめている)
A:個人事業のみの場合(所得1,000万円)
個人事業主のみで事業を行っていた場合、税金と社会保険料の負担は概算で以下のとおりとなります。
| 項目 | 金額(概算) |
|---|---|
| 所得 | 1,000万円 |
| 所得税+住民税 | 約240万円 |
| 社会保険料(国保+国民年金) | 約113万円 |
| 年間負担合計 | 約353万円 |
→ 所得が1,000万円になると、税率も社会保険料も負担が大きくなりやすい。
続いて、個人事業主とマイクロ法人の二刀流スキームの場合を見ていきます。
B:二刀流(個人700万円 + 法人300万円)
二刀流スキームを用いて個人事業と法人に事業を分担した場合、税金と社会保険料の負担は概算で以下のとおりとなります。
■ 個人事業(所得700万円)
個人側の税金は次のとおりです。
| 項目 | 金額(概算) |
|---|---|
| 所得 | 700万円 |
| 税金(所得税+住民税) | 約108万円 |
■ 法人(所得300万円)※所得200万円+役員報酬96万円
法人に掛かる主な税金の金額は以下の通りです。
法人税等は、この役員報酬控除後の法人所得をもとに計算しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法人所得 | 200万円 |
| 役員報酬 | 月8万円(年96万円) |
| 法人税 | 約33万円 |
| 法人住民税 | 約20万円 |
法人では軽い業務を扱い、役員報酬を月8万円に設定しています。
利益が大きく残らないため、法人税は軽い水準となります。
■ 法人の社会保険料(年間)
社会保険料は法人として支払うことになります。
なお、役員報酬8万円を基準に社会保険料が決まり、本人と会社で折半します。
支払うべき金額の概算は以下の通りです。
| 負担区分 | 年間金額 |
|---|---|
| 本人負担 | 約15万円 |
| 会社負担 | 約15万円 |
| 社会保険料合計 | 約30万円 |
■ A(個人だけ)と B(二刀流)の比較
最後に、A(個人だけ)と B(二刀流)の比較を行うと以下の通りとなります。
| 項目 | 個人のみ(所得1,000万円) | 二刀流(個人700万+法人300万) |
|---|---|---|
| 個人の税金 | 約240万円 | 約108万円 |
| 法人税 | ― | 約33万円 |
| 法人住民税 | ― | 約20万円 |
| 社会保険料(個人 or 法人) | 約113万円(国保) | 約30万円(法人加入) |
| 総負担合計 | 約353万円 | 約191万円 |
このように、個人事業主が加入する国民健康保険と国民年金から、法人を設立して、協会けんぽなどの健康保険と厚生年金に加入することで、所得が増えるほど自動的に上がっていく国民健康保険ではなく、役員報酬の設定を通じて健康保険料の負担を調整できる形に変更することができます。
特に、事業が成長途中の段階では、「手取りを確保したい」「資金繰りを優先したい」という場面も多く、そのような時期に社会保険料を抑えながら法人を維持できる点は、大きなメリットと言えるでしょう。
【メリット2】健康保険の保障が厚くなる
個人事業主と法人では、加入する健康保険・社会保険の制度そのものが異なります。
法人の社会保険に加入することで、個人事業主の国民健康保険にはない保障が一気に追加される点が大きなメリットです。
まずは、個人事業主と法人(社会保険加入)の保障内容の違いを整理してみましょう。
| 保障内容 | 個人事業主 | 法人(社保加入) | 解説 |
|---|---|---|---|
| 傷病手当金 | なし | あり(給与の2/3を最長1年6か月) | 病気・ケガで働けない期間も収入が確保される。自営業にはない重要な補償。 |
| 出産手当金 | なし | あり(産休中の給与の約2/3) | 出産で仕事を休んでも生活が安定する。女性経営者にとって特に大きな差。 |
| 厚生年金 | 基礎年金のみ | 老齢・障害・遺族年金が上乗せ | 老後だけでなく、万一の際の保障も大きく強化される。 |
| 労災保険 | 任意加入 | 業務・通勤災害を補償(※社長は特別加入) | 通勤中の事故も補償対象。個人事業主には原則ない保障。 |
| 雇用保険 | 原則不可 | 一定条件で加入可 | 失業手当や育児休業給付金を受けられる可能性がある。 |
この比較から分かるとおり、個人事業主の保障は最低限にとどまるのに対し、法人の保障は会社員とほぼ同等の水準まで引き上げられます。
法人の社会保険に加入することで、このように保障の幅と保障内容の厚みが大きく変わります。
社会保険料は確かに負担として増える面がありますが、その分、リスクに対する備えが一段階強化される点が、このメリットの本質と言えるでしょう。
【メリット3】将来もらえる年金の額を増やすことができる
二刀流で法人を設立し、法人の社会保険(厚生年金)に加入することで、将来受け取れる年金額を増やすことができます。
これは、国民年金だけに加入している個人事業主にはない、大きなメリットの一つです。
個人事業主の場合(国民年金のみ)
個人事業主が加入する国民年金は、保険料を定額となっており、将来の受給額は支払った期間によって決まります。
40年間すべて保険料を納めた場合でも、年金額は**年額約83万円(満額)**で頭打ちになります。
つまり、収入が増えても、事業が拡大しても、将来もらえる年金額は増えません。(支払う保険料も変わりません。)
この点が、国民年金の大きな特徴でもあり、限界でもあります。
二刀流(法人あり)の場合(国民年金+厚生年金)
一方、二刀流で法人を設立し、法人の社会保険に加入すると、国民年金に加えて厚生年金が上乗せされます。
厚生年金は、役員報酬(標準報酬月額)に応じて年金額が積み上がる仕組みです。
そのため、役員報酬の設定次第で、将来の年金額を調整できます。
役員報酬を低く抑えている間は、厚生年金の上乗せは小さく、年金水準は国民年金に近い形になります。
一方で、事業が安定し、役員報酬を引き上げていけば、その分だけ厚生年金が増え、将来の年金額もはっきりと増えていきます。
年金額のイメージ(概算)
以下は、65歳から年金を受給し、22歳から64歳まで継続して加入した場合の一例です。
| 区分 | 役員報酬の設定 | 年金の内訳 | 将来の年金受給額(年額) |
|---|---|---|---|
| 個人事業主のみ | 役員報酬なし | 国民年金のみ | 約83万円 |
| 二刀流(最低限) | 月8.5万円(年101万円) | 国民年金+厚生年金(少額) | 約108万円前後 |
| 二刀流(中間) | 月20万円(年240万円) | 国民年金+厚生年金 | 約132万円前後 |
| 二刀流(多め) | 月30万円(年360万円) | 国民年金+厚生年金 | 約157万円前後 |
※ 国民年金は満額加入、厚生年金は記載の役員報酬水準で継続加入した前提です。
※ 実際の年金額は加入期間、報酬の変動、制度改正等により変わるため、あくまで目安です。
このように二刀流の大きな強みは、役員報酬を抑えれば負担を抑えたまま法人を維持でき、必要に応じて役員報酬を上げることで、将来の年金額を増やせる点にあります。
国民年金だけでは不可能だった「年金額を増やす選択肢」を持てることが、二刀流ならではのメリットと言えるでしょう。
このように、法人を設立して社会保険に加入することで、個人事業主のままでは得られない選択肢が生まれますが、二刀流の場合は、この社会保険の仕組みをより柔軟に活用できる点が大きな特徴です。
二刀流では、売上や利益のすべてを個人事業主に集約するのではなく、個人事業と法人で役割を分けることで、社会保険料の設計に幅を持たせることが可能になります。
たとえば、生活費の大部分を個人事業側の収入で確保し、法人では役員報酬をあえて低めに設定することで、社会保険の加入要件は満たしつつ、健康保険・厚生年金の保険料負担を抑えるといった設計が考えられます。
一方で、将来の老後資金を重視したい場合には、法人側の役員報酬を段階的に引き上げることで、厚生年金の報酬比例部分を増やし、将来の年金受給額を意図的に高めることも可能です。
つまり二刀流では、
「今の手取りを重視する設計」
「将来の年金を重視する設計」
このどちらにも対応することができ、
今の生活費の状況や、将来への考え方に合わせて、社会保険料と保障内容のバランスを調整できる点が大きなメリットとなります。
個人事業主一本の場合は、「国民健康保険・国民年金」という決まった制度の中で負担せざるを得ません。
一方、二刀流では法人の社会保険制度を取り入れることで、保険料をただ支払うものとして受け入れるのではなく、状況に合わせて調整できるものとして考えられるようになります。
この柔軟性こそが、二刀流が社会保険面で注目されている最大の理由だと言えるでしょう。
報酬を少なめにすれば社会保険料を抑えられて、逆に報酬を増やせば将来もらえる年金も増やせるんですね。
なるほど、これはかなり魅力的です。仕組みがよく分かりました。
私も二刀流スキーム、実際に取り入れてみようと思います。
二刀流スキームは非常に柔軟性の高い方法ですが、注意すべき点も確実に存在します。
次は、注意点についても確認していくことにしましょう。
所得税法第12条と法人税法第11条に「実質所得課税の原則」という規定があります。
資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。
例えば、Webデザイナーをしていて、同じリソースを使って収入を得ていて、仕事内容も同様であって、売上先を任意に分けて一方を個人事業主の収入にし、他方を法人の収入に分けて申告していたとします。
このように収入を分散して申告していたことにより、個人事業主一本で申告していたとした場合よりも、税金が不当に安くなっていると認定された場合には、この実質所得課税の原則が適用され、法人の損益は否認され、個人事業主に一本化した申告を迫られる可能性があります。
また、消費税には、2年前の売上が1,000万円以上の場合は、消費税の納税義務がありますが、収入を分散することにより、分散していなければ消費税の納税義務があった場合には、これも個人事業主に一本化され、消費税の申告を迫られるというケースも考えられます。
このように同じ事業をおこなっている場合は、この実質所得課税の原則が適用される可能性があります。
税務署からの指摘を受けないためにも、個人事業主と法人の事業内容は明確に分ける必要があります。
そのためには、オフィスが分かれている、雇っている人が違う、業態が違うといったように明らかに違う事業をしていることを客観的に説明できる状態で事業を行うことが肝要です。
不動産投資を物件ごとに個人と法人で行っているという話を聞いたことがありますが、これは同じ事業だからダメということになるのですか?
実質課税の原則には、「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人」とあります。
不動産という資産を取得する場合には、法人の資金から拠出して取得し、あらやる契約を法人でするわけです。そしてその資金が完全に個人事業主と分かれていた場合に、それが単なる名義人でしょ?と言われることはまずないと考えられます。
事業から生じる収益の帰属は単なる名義人として法人に分けることは容易だけど、不動産という資産から生じる収益の帰属を単なる名義人として法人に分けるというのは実態として考えにくいということですね。
本当は自分の資金で不動産を購入しているのに、収入を分散させるために妻名義で購入させたという場合では単なる名義人となるかもしれませんが、実態のある法人を否認するのはこれとは訳が違うということです。
つまり、二刀流スキームは単なる名義分けや帳簿操作で成立するものではありません。
- 事業内容・役割・責任・リスクが明確に分かれていること
- それぞれが独立した事業として実態を有していること
これらが揃ってはじめて、税務上も認められる余地があります。
二刀流は、「本業の整理」と「実質に基づいた正しい運用」ができる人にこそ向いているスキームなのです。
6-3 サラリーマン+マイクロ法人で節税できる?
サラリーマンのままマイクロ法人を作れば、結構節税できるんですか?
そうですね。場合によりますね。
仕組みを理解して使えばメリットはありますが、誰でも得するわけではありません。
では、ここでは、サラリーマンが副業のためにマイクロ法人を設立する場合について確認していきましょう。
サラリーマンが本業を続けながらマイクロ法人を併用するケースは、近年かなり増えています。
副業が一般化し、副収入の管理や経費計上の柔軟性を求める人が増えたことが背景にあります。
ただし、「節税になるのか?」という問いに対する結論はシンプルです。
ケースによっては節税になるが、全員に当てはまるわけではない。
そして実際には、節税効果よりも「経費管理の最適化」や「信用力の向上」が主なメリットになるケースが多いです。
会社員の収入はすべて「給与所得」として扱われ、原則として経費を自由に差し引くことはできません。
一方で、マイクロ法人として副業を行えば、その売上に対して法人の経費を計上できます。
つまり、
- 会社員の収入は「安定収入(給与所得)」
- 法人は「副業収入を管理する箱(事業所得)」
という役割分担が可能になります。
この構造が、サラリーマン+マイクロ法人のメリットの理由となります。
主なメリットとしては以下の通りです。
サラリーマンがマイクロ法人を設立するメリット
- 副業の経費を法人経費することができるため、節税に繋がる
- 副業の利益に法人税の税率を適用することができる
- 法人の信用力が副業を後押しになることがある
メリットについて一つずつ簡単に確認していきます。
メリット①:副業の経費を法人経費することができるため、節税に繋がる
会社員だけの状態では、仕事に使ったパソコンや教材費を経費にするのは難しい場合があります。
しかし、副業を法人で行っていれば、その副業に必要な支出は法人の経費として整理しやすくなります。
たとえば、パソコンやモニター、業務用ソフトの利用料、打ち合わせの交通費、事業用スマホなどは、法人の必要経費として管理できます。
その結果、「給与では経費化できない支出を、法人を通じて事業経費として処理できる」という柔軟性が生まれます。
メリット②:副業の利益に法人税の税率を適用することができる
法人で得た利益には法人税がかかりますが、小規模法人の場合、法人税と地方法人税を合わせても おおむね15%前後 に収まります。
副業の利益が一定額を超えると、給与に合算して課税されるよりも、法人の利益として管理したほうが税率が低くなるケースがあります。
ただし、副業の規模が小さい場合は、法人住民税(均等割)などの固定費のほうが重くなる点には注意が必要です。
メリット③:法人の信用力が副業を後押しする
副業の内容によっては、法人名義であること自体が大きな強みになります。
特に、企業向けの業務委託やWeb制作、コンサル、動画制作、SNS運用代行などでは、法人であることが前提になることも少なくありません。
この場合、節税以上に「仕事を受けやすくなる」「単価が上がる」といった実務上のメリットが大きくなります。
ただ、注意点もあります。
サラリーマンがマイクロ法人を設立する際の注意点についても解説していきます。
注意点:社会保険のメリットはほぼない
マイクロ法人の二刀流(フリーランス+法人)と違い、サラリーマンの場合はすでに会社の社会保険に加入しています。
そのため、
- 法人側で社会保険料が下がることは基本的にない
- 役員報酬を支払うと、法人でも社会保険加入が必要になる
- 結果として保険料が増える可能性もある
という点は必ず押さえておく必要があります。
サラリーマン+マイクロ法人は、社会保険の最適化を目的にする仕組みではありません。
デメリットもあるんですね。
よく考えて設立しないと損することもありそうですね。
サラリーマン+マイクロ法人には、
- 副業の経費管理がしやすくなる
- 法人としての信用力が得られる
- 将来的な事業拡大の土台を作れる
といったメリットがあります。
一方で、節税効果は限定的で、固定費や手続きの負担も確実に発生します。
そのため、
- 副業の売上や業務内容が法人に向いているか
- 副業規模が今後大きくなる見込みがあるか
こうした点を冷静に整理したうえで判断することが重要です。
「節税できそうだから」という理由だけで法人を作ると、
思ったよりコストがかかって後悔する というケースも少なくありません。
6-4 夫婦や家族でマイクロ法人を運用する方法
マイクロ法人って、家族で一緒にやるといいことがあるでしょうか?
はい、正しく運用すれば非常に相性が良い形態です。
ただし、家族だからこそ注意すべき点もあります。
マイクロ法人は「小規模で柔軟に動ける会社」という特徴があるため、夫婦や家族で協力して事業を行うケースと非常に相性が良いです。
暮らしの延長線上で経営をサポートしやすく、役割分担がしやすいことから、実際に家族経営のマイクロ法人は多く存在します。
一方で、家族を関与させる場合には、税務・社会保険・報酬の扱いに一定のルールがあります。
これを軽視すると、思わぬ税務リスクにつながる可能性があるため注意が必要です。
ここでは、家族でマイクロ法人を運用する際のメリットと注意点を整理していきます。
まず、家族運営によって得られる代表的なメリットは次の3点です。
家族でマイクロ法人を運用する主なメリット
- 家族に給与や役員報酬を支払い、事業の役割分担ができる
- 家族内で所得を分散し、税率を抑えやすくなる
- 運営コストが小さく、意思決定が速い
それぞれ内容について、簡単に確認していきましょう。
メリット①:家族に給与や役員報酬を支払い、事業の役割分担ができる
家族に実際の業務を手伝ってもらい、それに応じた給与や役員報酬を支払うことで、家庭全体の収入バランスが整い、事業運営もスムーズになります。
特に、経理・事務・SNS更新などの裏方業務を家族が担うことで、代表者は本来の業務に集中しやすくなります。
マイクロ法人では、こうした補助業務の分担が経営効率に直結します。
なお、実際の労働に基づく対価であれば、家族であっても給与や報酬の支払いは認められます。
メリット②:家族内で所得を分散し、税率を抑えやすい
所得税は累進課税のため、1人に所得が集中すると税負担が重くなります。
そのため、事業に合理的な役割分担がある場合には、家族への給与支払いによって、家庭全体の税負担を抑えられるケースがあります。
ただし、これはあくまで「本当に働いた分のみが対象」です。
実態のない給与や名義だけの報酬は、法人の経費として認められません。
メリット③:家族経営は運営コストが小さく、意思決定が速い
家族だけで運営するマイクロ法人は、人件費を必要最小限に抑えやすく、意思決定も非常に速いのが特徴です。
外注に頼らず家族内で問題などを解決しやすいため、小規模事業との相性が非常に良いと言えます。
「必要なときだけ手伝ってもらう」といった柔軟な体制を取りやすい点も、家族運営ならではの強みです。
ただ、同じく注意点もあります。
マイクロ法人を設立して、家族だ運営していく上での注意点についても解説していきます。
注意点:家族で運用する際の注意点
一方で、家族運営には注意すべき点もあります。
特に、次の3点は必ず押さえておく必要があります。
- 実態のない給与・役員報酬は認められない
- 社会保険の加入ルールを正しく理解する必要がある
- 家族間の金銭管理は特に厳しく見られる
① 実態のない給与(名ばかり社員・名ばかり役員)は経費の否認の対象となる
家族であっても、実際に働いていないのに給与を支払うことは認められません。
また、労務内容に対して不相当に高額な報酬や、業務の証拠が残っていない場合も法人の経費として認められない可能性が高くなります。
税務調査に来て、実態のない給与や不相当に高額な給与が判明すれば、その支払いは法人の経費として認められず、その金額×税率の税金を追徴課税されることになります!
重要なのは、
「働いた事実」と「報酬の妥当性」
この2点です!
② 社会保険の加入ルールに注意
家族を役員にした場合、原則として
法人の社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が必要になります。
扶養の範囲に収まるのか、パート扱いが可能か、年間収入はいくらになるのかなど、事前の確認が不可欠です。
特に、扶養から外れるかどうかは家計全体に大きく影響します。
夫婦や家族でマイクロ法人を運用すると、業務を柔軟に分担でき、家庭全体の税負担を調整しやすくなるという大きなメリットがあります。
一方で、家族だからといって形式を省略すると、税務・社会保険上の問題につながる可能性があります。
- 実際に働いていること
- 報酬が妥当であること
- 記録がきちんと残っていること
これらの基本ルールを守りながら運用すれば、
家族で運営するマイクロ法人は、負担が少なく、小回りの利く非常に強い経営スタイルになります。
6-5 マイクロ法人で資産運用・株式投資を行う場合の注意点
マイクロ法人を作ったら、法人名義で株式投資すれば節税になるんじゃないですか?
その発想は多いですが、マイクロ法人は投資向きとは言い切れません。むしろ注意点の方が多いですね。
マイクロ法人を持つと、「法人名義で株式投資や資産運用をすれば節税できるのでは?」と考えがちです。
しかし結論から言うと、マイクロ法人は投資に必ずしも向いているわけではなく、注意点も多いのが実情です。
個人投資と法人投資では、税金の仕組みやリスクの構造が大きく異なるため、事前に正しく理解しておく必要があります。
法人で投資を行う場合、次のようなメリットが語られることがあります。
- 事業利益と投資損益をまとめて管理できる
- 繰越欠損金など、法人特有の税制が使える場合がある
- 事業資金と投資資金を法人内で整理しやすい
確かに、これらは制度上のメリットです。
ただし、これらが本領を発揮するのは、ある程度規模のある法人の場合であり、マイクロ法人では効果が限定的になりやすい点には注意が必要です。
注意点としては以下のようなものがあります。
投資のためにマイクロ法人を設立する際の注意点
- 法人税率は必ずしも低くない
- 法人設立・運用にコストがかかる
- 含み益に課税される可能性がある
注意点については、それぞれ内容について確認していくことにしましょう。
注意点①:法人税率は必ずしも低くない
投資における税率の違いは、非常に重要なポイントです。
個人の株式投資は、原則として一律20.315%(所得税+住民税)で課税されます。
一方、法人の場合は、投資利益も事業所得と合算され、
- 約15%(中小企業の軽減税率)
- 〜約23%(利益が増えると上昇)
という形で、利益に応じて税率が変動します。
つまり、「法人だから必ず税率が低い」ということはありません。
投資利益が大きくなるほど、法人税の負担が重くなるケースも十分にあり得ます。
さらに、法人税は地方税も含めて計算されるため、個人投資よりも計算が複雑で、見通しを立てにくいという側面もあります。
注意点②:法人設立・運用にコストがかかる
投資家に限った話ではありませんが、マイクロ法人を設立・運営するには、
資金面・時間面のコストが必ず発生します。
設立時には登録免許税や定款作成費用などがかかり、
設立後も、
- 赤字であっても発生する法人住民税(均等割)
- 原則として加入が必要となる社会保険料
- 決算・申告・記帳などの事務作業の増加
といった 継続的な運営コスト が発生します。
法人化による節税メリットを検討する際には、これらの固定費・管理コストも含めたうえで、本当にメリットがあるかを冷静に判断することが重要です。
注意点③:含み益に課税される可能性がある
個人投資家の場合、株式などに含み益があっても、売却しない限り課税されることはありません。
一方、法人の場合、保有している有価証券が「売買目的有価証券」と区分されると、期末時点の時価評価により、含み益にも課税される可能性があります。
売買目的有価証券とは、短期的な価格変動によって利益を得ることを目的として保有している有価証券のことをいいます。
保有目的や取引実態によって扱いが変わるため、
- 自分の投資スタイルがどの区分に該当するのか
- 含み益課税のリスクがあるのか
については、法人化を検討する段階で、税理士などの専門家に一度相談することをおすすめします。
以上を踏まえると、法人投資が認められるのは次のようなケースです。
- 本業の事業が安定して回っている
- 明確に余剰といえる資金で運用している
- 投資資金と事業資金をきちんと区別して管理できる
この条件を満たしていれば、「限定的な範囲での法人投資は良い選択」といえます。
一方で、「投資をするなら法人の方がかっこいい」、「節税目的だけで法人投資を行う」という考え方は、マイクロ法人にはあまり向いていません。
マイクロ法人で資産運用や株式投資を行うこと自体は可能です。
しかし、税金・管理・リスクの面では個人投資よりも複雑で、節税につながるケースは限定的です。
- 法人税率は必ずしも低くない
- 法人設立・運用にコストがかかる
- 含み益に課税される可能性がある
これらを理解したうえで、投資はあくまで余剰資金で、事業が本業である姿勢を崩さないこと。
これが、マイクロ法人で投資を行う際の最も重要な考え方です。
ここまで、フリーランスとの二刀流、サラリーマンとの併用、家族経営、資産運用まで、さまざまな マイクロ法人の活用事例 を見てきました。
これらに共通して言えるのは、マイクロ法人は「節税の魔法」ではなく、「設計次第で効果が変わる道具」 だという点です。
うまく活用できている人は、
- 事業の内容と法人の役割がはっきりしている
- 税金や社会保険の仕組みを理解したうえで使っている
- 無理な節税ではなく、現実的なメリットを積み重ねている
という共通点があります。
一方で、「節税できそうだから」「なんとなく有利そうだから」という理由だけで法人を作ってしまうと、思ったほどの効果が出ず、かえって負担が増えるケースも少なくありません。
つまり、マイクロ法人は、「誰が・どんな目的で使うか」によって、結果が大きく分かれる仕組み なのです。
7 マイクロ法人を検討すべき人・やめた方がいい人

マイクロ法人は、コストを最小限に抑えながら事業を柔軟に運営できる反面、社会保険料や届出、維持費などの負担も伴う仕組みです。そのため、誰にとってもメリットがあるわけではなく、「向いている人」と「やめておいた方がいい人」がはっきり分かれる特徴があります。
この章では、これまで解説してきた仕組みやメリット・デメリットを踏まえ、どのような人がマイクロ法人を活用しやすいのか、逆にどのような人が適さないのかを整理していきます。
事業規模や働き方、収入の構造によって判断が大きく変わるため、マイクロ法人を検討する際の“判断基準”として役立ててください。
7-1 マイクロ法人に向いている人の特徴
マイクロ法人って、結局どんな人が作ると得なんですか?
はい、向いている人はかなりはっきりしています。
全員におすすめできる制度ではありません。
マイクロ法人は、規模の小さい事業や副業を柔軟に運営できる一方で、
社会保険料や法人住民税など、一定のランニングコストが必ず発生します。
そのため、「誰にでも向いている制度」ではなく、特に相性の良いタイプが明確に存在します。
ここでは、マイクロ法人を設立することでメリットを感じやすい人の特徴を整理していきます。
マイクロ法人のメリットは、
税金・社会保険・信用力・経費管理といった要素が複雑に絡み合って発生します。
そのため、
- どんな仕事内容なのか
- 売上や利益がどの程度安定しているか
- 個人のまま不便を感じている点は何か
によって、法人化の効果は大きく変わります。
なるほど、、具体的にはどんな人が向いてるのでしょうか?
まず、マイクロ法人に向いている人の特徴は次のとおりです。
マイクロ法人設立に向いている者
- 自分のスキルや経験を武器に仕事をしている人
- 一定以上の売上や利益が安定している人
- 法人としての信用力が必要になる仕事をしている人
- 経費管理をより柔軟に行いたい人
- 社会保険料の仕組みを活用したいフリーランスの人
1. 自分のスキルや経験を中心に仕事をしている人
デザイン、プログラミング、動画制作、コンサルティングなど、自分のスキルや知識そのものが商品になる仕事は、マイクロ法人と非常に相性が良い分野です。
これらの仕事は、大きな設備投資が不要で、固定費も小さいため、小規模法人のメリットを無理なく活かすことができます。
また、企業相手の取引では、個人よりも法人のほうが信用されやすいという現実があり、仕事の幅や単価が広がるケースも少なくありません。
2. 一定以上の売上・利益が安定している人
個人事業の売上や利益が継続して安定している人は、法人化によって税金や社会保険の負担を調整しやすくなります。
特に、所得が大きくなると個人の累進課税による税負担が急に重くなるため、法人と個人で役割を分けることでメリットが出やすくなります。
一方で、売上が不安定な段階では、法人維持コストが重荷になる可能性がある点には注意が必要です。
3. 法人の信用力が必要となる仕事をしている人
企業向けの業務では、法人であることが前提条件になっているケースも少なくありません。
特に、業務委託・顧問契約・継続契約などでは、マイクロ法人を作ることで取引がスムーズになり、受注機会が広がることがあります。
この場合、節税以上に「仕事が取りやすくなる」という実務上のメリットが大きくなります。
4. 経費管理を柔軟にしたい人
法人では、個人事業よりも事業との関連性を前提に、経費を整理しやすいという特徴があります。
外注費や業務委託費、ソフトウェア利用料などを法人経由で管理することで、事業の数字が見えやすくなり、経営判断もしやすくなります。
5. 社会保険料の仕組みを最適化したいフリーランス(一人個人事業主)
フリーランスの場合、国民健康保険・国民年金は所得が増えるほど保険料が上がる仕組みです。
一方、法人の社会保険は役員報酬を基準に保険料が決まるため、報酬設計次第で保険料を安定させやすいというメリットがあります。
前述の二刀流スキームを活用して戦略的に社会保険料を削減するというのが典型的といえます。
なお、この点は会社員の副業法人では勤めている会社で社会保険に加入しているために基本的に当てはまりません。
マイクロ法人は、
スキル型の仕事をしている
売上や利益が安定している
法人としての信用や管理体制を重視したい
こうした条件がそろっている人にとって、非常に強力な選択肢になります。
一方で、条件が合わない場合は、コストや手間のほうが大きくなり、後悔につながる可能性もあります。
次の章では、マイクロ法人を作らない方がよいケースと、実際によくある「後悔する人の特徴」を見ていきます。
7-2 マイクロ法人を作らない方が良いケース
マイクロ法人って便利そうですけど、作らない方がいい人もいますよね?
そうですね。
状況によっては法人化が逆効果になるケースも少なくありません。
マイクロ法人は便利な制度ですが、すべての人にメリットがあるわけではありません。
むしろ、状況によっては 法人化によって手間やコストが増え、結果的に損をしてしまう こともあります。
そのため、「節税できそう」「なんとなく有利そう」という理由だけで法人を作るのは危険です。
ここでは、マイクロ法人を作らない方が良い典型的なケースを整理します。
マイクロ法人であっても、
- 法人住民税(均等割)
- 会計・申告・届出といった管理業務
- 社会保険や税務のルール遵守
といった負担は必ず発生します。
これらを上回るメリットが見込めない場合、法人化はプラスではなくマイナスになりやすいのです。
そうですね。
では、具体的にはどんな人がマイクロ法人を設立するのはやめておいた方がいいのでしょうか?
マイクロ法人を作らない方が良いケースをまとめると次のとおりとなります。
マイクロ法人を作らない方が良い代表的なケース
- 売上や利益が安定しておらず、法人維持費の負担が重くなる人
- 事業内容を個人と法人に分けられない人
- 社会保険料を下げる目的だけで法人化を考えている人
- 副業の規模が小さすぎて法人化のメリットが出ない人
- 法人の管理・運営が苦手、または時間が取れない人
それでは、一つずつ解説していきます。
1. 売上や利益が安定しておらず、法人維持費が負担になる人
マイクロ法人でも毎年必ず発生する費用があります。
代表的なものは次のような維持コストです。
- 法人住民税(均等割)約7万円
- 会計ソフト・顧問料などの管理費
- 事務所費や通信費などの経費
売上が不安定な人や、黒字が出るかどうか分からない段階で法人化すると、これらの維持費が重くのしかかります。
特に「とりあえず法人を作ってみよう」という判断は危険で、費用だけが先に増えてしまうケースが少なくありません。
2. 事業内容を個人と法人に分けられない人
事業内容を個人と法人で明確に区分できない人は、マイクロ法人の活用には向いていません。
マイクロ法人は、「どの事業を個人で行い、どの事業を法人で行うのか」を実態に即して合理的に分けられていることが前提となるからです。
業務内容・提供価値・収益の生まれ方が実質的に一体となっており、契約先や請求先、責任の所在を明確に分けられない場合、法人化による節税効果は成立しにくくなります。
たとえば、個人で行っている業務と法人で行う業務がほぼ同一で、 E
- 業務内容に違いがない
- 顧客や契約先が同じである
- 実質的な責任者が同一である
といった状況にもかかわらず、節税目的だけで名義上の法人を設立させた場合、所得税法第12条および法人税法第11条に基づく実質所得者課税の原則により、「形式だけで実態が伴っていない」と判断され、所得の分散が税務署から否認されるリスクがあります。
マイクロ法人は、単に帳簿や名義を分ければ成立するものではありません。
事業内容・役割・負担するリスク・収益構造がそれぞれ独立しており、税務署などの第三者に対しても自然に説明できる実態があって初めて有効に機能します。
そのため、事業を実態として切り分けられない人や、合理的な説明ができない人は、マイクロ法人の活用には慎重になるべきでしょう。
3. 社会保険料を抑える目的だけで法人化を考えている人
フリーランスの場合は社会保険の最適化がメリットになることがありますが、「保険料を安くするためだけに法人を作る」という考え方はおすすめできません。
法人には必ず法人住民税や事務コストが発生するため、
社会保険料を下げたつもりが、トータルでは負担が増えるケースもあります。
また、会社員が副業として法人を作る場合は、会社の社会保険に加入しているため、法人側で保険料が下がる仕組みは原則適用されません。
4. 副業の規模が小さすぎる人
副業として少し収入がある程度では、法人化のメリットがコストを上回りません。
年間利益が数万円〜数十万円程度であれば、個人の雑所得・事業所得として申告したほうが負担が小さくなります。
マイクロ法人は、利益が一定規模に達しているか が判断のポイントになります。
5. そもそも法人運営が苦手、または管理する時間が取れない人
法人を持つと、以下のような事務処理が必ず発生します。
- 給与計算・源泉徴収
- 法人税の申告
- 社会保険・労働保険の手続き
- 各種届出書類の管理
これらを「面倒」「時間が取れない」と感じる場合は、法人化がストレスになり、メリットよりデメリットのほうが大きくなる可能性があります。
個人事業主のままシンプルに運営するほうが向いているケースです。
マイクロ法人は、条件が合えば非常に有効な仕組みですが、合わない人が作ると、負担とリスクだけが増える制度でもあります。
- 売上や利益が安定していない
- 事業を切り分けられない
- 社会保険料だけを目的にしている
- 管理や手続きが苦手
こうした要素に当てはまる場合、「今は作らない」という判断も立派な選択です。
次の章では、実際にマイクロ法人を作って「後悔してしまう人の特徴」について、もう一歩踏み込んで見ていきます。
7-3 マイクロ法人で後悔する人の特徴
ここまで読んできて、マイクロ法人って結構メリットも多いなって思ったんですが……失敗する人も多いんですよね?
はい。実は、後悔される方にははっきりした共通点があります。
マイクロ法人には、税金・社会保険・信用力・経費管理など、うまく使えば確かにメリットがあります。
しかし一方で、実際に設立してから「思ったより大変だった」「費用ばかりかかった」と後悔する人が少なくないのも事実です。
重要なのは、マイクロ法人が悪いのではなく、設立前の理解や判断が不十分だったケースが多いという点です。
マイクロ法人は、
- 社会保険料
- 法人住民税などの固定費
- 申告・手続きといった管理負担
といった 避けられないコストと義務 を伴います。
これらを十分に理解しないまま「節税できそう」「何となく有利そう」という理由だけで法人を作ってしまうと、後から負担の重さに気づき、後悔につながりやすくなります。
そうですね、、
では、実際にどのようなケースで後悔が生じてしまうのでしょうか?
それでは、実際によく見られる「マイクロ法人で後悔してしまう人の特徴」 を確認していくことにしましょう。
具体的には以下のようなケースとなります。
マイクロ法人を設立して後悔したパターン
- 法人維持コストを十分に理解せずに設立してしまうケース
- 社会保険料が必ず下がると誤解していたケース
- 個人と法人の業務区分が曖昧なまま運用してしまったケース
- 管理業務の負担を甘く見ていたケース
- 事前のシミュレーションを行わずに判断してしまったケース
1. 法人維持コストを理解せずに設立してしまう人
マイクロ法人であっても、毎年必ず発生する固定費があります。
代表的なものが、法人住民税(均等割)の約7万円に加え、会計ソフト代や税理士費用などの管理コストです。
これらは、売上や利益が出ていなくても必ず支払う必要がある費用であり、個人事業にはない負担です。
そのため、「とりあえず法人を作れば節税できるはず」と考えてしまうと、思った以上に固定費が重く感じられることになります。
実際には、年間で10万円〜数十万円程度の固定費が発生するケースも珍しくありません。
売上規模や利益水準と見合っていない状態で法人を維持すると、節税どころか赤字の法人を抱える結果になり、後悔につながりやすくなります。
2. 社会保険料が必ずしも安くなるわけではないことを知らない人
フリーランスの場合、法人化によって社会保険料を安定させられるケースは確かに存在します。
しかし、すべての人が保険料を下げられるわけではありません。
特に会社員が副業で法人を作る場合、すでに本業で健康保険・厚生年金に加入しているため、法人側で社会保険料が下がる仕組みは原則としてありません。
むしろ、法人から役員報酬を支払うと、法人でも社会保険への加入義務が発生し、結果として保険料が二重に増えるというケースさえあります。
社会保険の仕組みを正しく理解しないまま法人化すると、「思っていたより負担が重い」「こんなはずではなかった」という後悔に直結しやすくなります。
3. 個人と法人で業務区分が曖昧なまま運用してしまう人
個人と法人の業務区分を曖昧なまま運用してしまう人は、マイクロ法人に向いていません。
マイクロ法人は、個人事業と法人それぞれの役割分担を明確にできる場合にこそ効果を発揮する仕組みだからです。
どの業務を個人で行うのか、どの業務を法人が担当するのかが曖昧なままだと、運営面・税務面の両方で問題が生じやすくなります。
たとえば、同じ取引先に対して個人名義と法人名義の両方で請求を行っていたり、売上や経費をその都度「都合のよいほう」に振り分けているようなケースでは、帳簿上は分かれていても、実態として事業が一体と見なされやすくなります。
その結果、会計処理が煩雑になるだけでなく、税務調査の際に「実態に即していない」と判断されるリスクが高まります。こうした状況では、節税やリスク分散といった法人化本来の効果はほとんど期待できません。
このような状態では、法人を持つ意味が薄れ、管理の手間と税務リスクだけが増える結果になってしまいます。
自然に業務を切り分けられない場合、マイクロ法人は有効な選択肢とは言えず、かえって負担を増やす可能性が高いと言えるでしょう。
4. 法人の管理業務(申告・手続き)に負担を感じやすい人
法人を設立すると、個人事業にはない事務作業が発生します。
- 給与計算や源泉徴収
- 年末調整
- 法人税・消費税の申告
- 社会保険・労働保険の手続き
これらは、外注するにしても管理する手間はゼロになりません。
想像以上に時間や労力を取られ、「結局、個人事業のほうが楽だった」と感じる人も少なくありません。
特に、事務作業が苦手な人や、事業に使える時間が限られている人の場合、法人化そのものが日常的なストレスになることがあります。
所得税の確定申告も自分でやってたし、法人の申告も自分でできるんですよね。
法人の確定申告書の作成は、基本的には、自分で勉強してできるレベルではないと考えてください。
そのために我が社が提供している、専門知識なしでも法人の確定申告書を作成できるソフト「全力法人税」が皆様のご愛顧を受けているわけです。
全力法人税HP
https://japanex.jp/HojinFinalReturns
このような税務ソフトを使わないとまず自力で作成することは無理です。だから法人化すると税理士を雇うケースが多いのです。
5. 「法人にしたら節税できる」と思い込み、事前に試算していない人
マイクロ法人は、使い方によっては税金面で有利になることがあります。
しかし、必ず節税できる制度ではありません。
法人にすると、
- 法人住民税(均等割)の固定費
- 会計や事務コスト
- 社会保険の負担増の可能性
- 役員報酬に対する源泉徴収
といった新たな負担が発生します。
これらを事前に試算せず、「なんとなく法人のほうが得そう」という感覚だけで設立してしまうと、
想定以上に負担が増え、後悔するケースが非常に多いのが実情です。
ここまで、
マイクロ法人に向いている人の特徴、作らない方がよいケース、そして 後悔しやすい人の共通点 を見てきました。
これらを通してお伝えしたかったのは、マイクロ法人は良い・悪いで語れる制度ではない という点です。
マイクロ法人は、条件が合えば、税金・社会保険・信用力・経費管理の面で大きなメリットをもたらします。
一方で、条件が合わないまま設立してしまうと、固定費や事務負担だけが増え、結果的に後悔につながるケースも少なくありません。
重要なのは、「マイクロ法人を作るかどうか」ではなく、自分の事業内容・収入規模・生活スタイルに本当に合っているかを冷静に見極めることです。
「節税になりそうだから」「周りがやっているから」といった理由だけで判断するのではなく、売上の安定性、業務の切り分け方、社会保険の仕組み、そして管理にどれだけ時間と労力をかけられるかまで含めて検討する必要があります。
マイクロ法人は、正しく設計すれば非常に有効な選択肢になりますが、設計を誤ると、かえって負担が増えてしまう制度でもあります。
そこで最後に、マイクロ法人を検討するうえで押さえておきたい「設立までの基本的な流れ」について、順を追って解説していきます。
8 マイクロ法人の設立の流れ

法人化すると、節税や信用力アップといったメリットがある一方で、
設立費用・維持コスト・社会保険料の負担増なども発生します。
しかも、法人化といっても
- 株式会社
- 合同会社
- 合資会社
- 合名会社
と複数の形態があり、選ぶ形によって その後の運営コストや必要な手間が大きく変わる 点にも注意が必要です。
特にマイクロ法人(ひとり社長の小さな会社)の場合は、
- どの法人形態を選ぶか
- どんな手順で進めるか
- 自分でどこまでできるのか、専門家に何を任せるか
を事前に整理しておくことで、「思ったよりお金と時間がかかった…」という失敗を防ぐことができます。
この章では、マイクロ法人の設立の流れを ステップ形式 で整理しつつ、
株式会社と合同会社のどちらが向いているか、税理士・専門家が必要か まで含めて解説します。
8-1 マイクロ法人の作り方をステップで解説
法人を作るには、具体的にどんな手続きと流れになるんですか?
大まかな流れは、普通の法人設立と同じです。
マイクロ法人でも、
①法人形態の選択 → ②事前準備 → ③定款作成 → ④定款認証(株式会社) → ⑤資本金の払込 → ⑥登記申請 → ⑦各種届出
というステップで進めていきます。早くて10日、余裕をもてば1ヶ月程度を見込んでおきましょう。
ステップ1:どの法人にするか決める(法人形態の選択)
まずは、どの種類の法人にするか を決めるところからスタートします。
日本で設立できる主な法人形態は次の4つです。
主な法人の形態
- 株式会社
- 合同会社(ごうどうがいしゃ)
- 合資会社(ごうしがいしゃ)
- 合名会社(ごうめいがいしゃ)
このうち、実務でほとんどの人が選ぶのは「株式会社」と「合同会社」 の2つです。
合資会社・合名会社は「無限責任」を負う社員が含まれるため、特殊な事情がない限り、マイクロ法人で選ばれることはほぼありません。
マイクロ法人を作るなら、
株式会社か合同会社のどちらかを選ぶ、というイメージでOKです。
(それぞれの違いは 5-2 で詳しく解説します)
ステップ2:事前準備(会社の基本事項を決める)
会社設立の第一歩は、会社の「設計図」を決めることです。
この段階で決めておくことは、そのまま「定款」や「登記申請書」の内容になります。
法人の設立時に決めておくべき主な内容
| 項目 | 何を決める? | 実務ポイント | よくある注意点 |
|---|---|---|---|
| 社名(商号) | 会社の名前 | 事業や理念が伝わる名前に。個人事業の屋号を引き継いでもOK 「株式会社」等の法人形態は社名の前後どちらかに必ず付記することになります。 | 銀行・学校など特定団体を想起させる名称や、有名企業に紛らわしい名称はNGの可能性があります。 類似商号の有無を法務局・オンラインで調査する必要あり。 同一住所・同一商号は登記できないので注意が必要 |
| 所在地(本店所在地) | 登記上の住所 | 自宅・賃貸オフィス・レンタル/バーチャルオフィスいずれも可能です。 | 後の移転は変更登記+登録免許税が必要となります |
| 資本金 | 出資額(1円~可) | 設立直後は決算書がないため、資本金が信用・融資判断の目安になります。 事業規模や資金繰りから逆算。 | 極端に小さいと資本力不足と見なされ融資が通りにくいこともあります |
| 設立日 | 会社を「設立」する日 | 法務局が申請を受理した日が設立日(郵送は到着・受理日) 記念日狙いの場合は、スケジュールを逆算してください。 | 休日や書類不備があると希望日に設立できないため注意が必要です |
| 会計年度(事業年度) | 決算期(月) | 繁忙期を避けた月に設定するのがおすすめです。 なお、1年を超えなければ自由に設定することが可能です | 決算業務(棚卸・集計)が重なると作業の負担が増えることも 取引先の決算期に合わせるなどすると便利になることもあります |
| 事業目的 | 何をする会社か | 取引先・金融機関のチェックすることが多い項目です。 将来予定する事業も一貫性を保ちつつ広めに設定することをおすすめ。 | 後から変えると定款変更+登記(登録免許税3万円)が必要となるので注意が必要 羅列し過ぎの不自然さに注意 |
| 株主の構成(株式会社) | 誰が何株持つか | 設立前は発起人と呼ぶ。 発起人は初期の取締役を選任(自分を選任して可) | 将来の持株比率・議決権設計を見据えて配分すること |
| 役員の構成 | 経営を担う人 | 最低取締役1名で設立可能です。 代表取締役も決定することになります。 | 取締役会を置くなら体制づくり必要です 大会社(水準が高い規模)や体制次第で監査役等が必須になります |
| 公告方法(株式会社) | 決算公告の媒体 | 官報・日刊新聞・電子公告から選択する(一般に官報が多い) | 公告コストを事前に把握 |
| 株式の譲渡制限(株式会社) | 株の移動ルール | 中小は譲渡制限付きが一般的です | 後からの規程変更は手間と費用が掛かるので注意が必要です |
| 社員/業務執行社員(合同会社) | 出資者と経営者 | 出資者=経営者の設計も可能。 利益配分も柔軟に定められる。 | 役割分担と合意形成のルールを定款で明確にする |
大体内容は理解できました。
他に決めておくべきことはありますか?
株式会社を設立する際には、会社の意思決定や管理を担う「機関」をどう設計するかを決める必要があります。
会社法で必ず設置しなければならないのは株主総会と取締役です。取締役会は必須ではなく、会社の規模や運営方針によって任意で設けます。さらに必要に応じて、会計参与、監査役、会計監査人などを置くことも可能です。
会社の機関設計(株式会社の基本)
必須:株主総会、取締役(取締役会は任意)
任意:会計参与、監査役、会計監査人 等
※一人社長の会社なら、「発起人=株主=代表取締役」を兼ねて設立可能。
※合同会社は機関設置義務なし(社員の合意で機動的に運営)。
会社設立の準備では、資本金の額や事業目的、持株比率、株式譲渡の可否といった重要事項をあいまいにせずにしっかり決めて進めることが大切です。
途中で決定事項が変わると、定款や書類の作り直しが必要になり、時間も手間も余分にかかってしまいます。
また、手続きに慣れていない場合は、司法書士や税理士などの専門家に早い段階で相談すると、必要な書類や要件を漏れなく整えることができます。
さらに、設立時だけでなく3年後、5年後の会社の姿をイメージしておくと、資本金や株式の設計も戦略的に決めやすくなります。
なお、会社設立には会社実印や銀行印などの印鑑作成も必要です。印鑑の準備を事前にしておくことで、登記や銀行口座開設の手続きがスムーズになります。
会社設立は、最初の設計図がすべてです。
どんな体制で始めるのか、将来どこまで広げたいのかを明確にしたうえで準備を進めれば、手続きは驚くほどスムーズに進みます。
焦らず計画的に進めることが、良いスタートを切るための一番の近道です。
ステップ3:定款作成(会社のルールを文書にする)
定款ってよく聞きますけど、何者なんですか?
定款は、会社の組織や運営ルールをまとめた「会社の憲法」です。
株式会社でも合同会社でも、この定款を作らないと設立できません。
定款に書く内容は大きく2種類 に分かれます。
1.絶対的記載事項(必ず記載が必要)
これらが欠けると定款自体が無効になります。
- 商号(会社名)
- 目的(事業目的)
- 本店所在地
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 発起人の氏名および住所
- 発行可能株式総数(株式会社の場合)
2.任意的記載事項(会社の基本ルール)
会社の運営を円滑にするために自由に定められる項目です。
例:事業年度、公告方法、役員の任期、利益配分のルール など
款を作成する際には、記載漏れや誤りがないように十分注意することが大切です。もし不備があると、公証人から認証を受けられず、手続きをやり直すことになってしまいます。
また、定款に記載する事業目的はなるべく幅広く設定しておくことをおすすめします。将来的に新しい事業を始める可能性がある場合でも、あらかじめ含めておけば、後から定款を変更する手続きや登録免許税(3万円)が不要になるからです。
さらに、会社名(商号)を決める際には、同じ名称が既に使われていないかを事前に確認することも重要です。法務局やオンラインサービスを利用すれば簡単に調べることができ、登記できないというトラブルを防ぐことができます。
特にマイクロ法人では、
- 事業目的を狭くしすぎない
- 利益配分や業務執行のルールをシンプルに
- 将来の事業展開を見越して定めておく
ことが、後からの手続コストを減らすポイントになります。
なお、定款は、会社の「設計図」そのものです。
後から修正すると時間も費用もかかりますから、この段階で将来の事業計画まで見据えて、漏れなく丁寧に作り込みましょう。
ステップ4:定款認証(株式会社のみ)
次に行う手続きが 「定款認証」 です。株式会社を設立する際には、作成した定款を公証役場に持参し、公証人の認証を受けなければなりません。
認証手続きは比較的スムーズで、所要時間はおおむね30分から1時間程度です。この認証を経て、定款は正式に効力を持つことになります。
なお、合同会社には定款認証の義務はありませんが、定款自体は作成します。
■ 定款認証に必要な時間・持ち物
所要時間:30分〜1時間程度
必要なもの:
- 定款(紙または電子)
- 発起人の印鑑証明書
- 実印
- 身分証明書
- 収入印紙4万円(※紙定款の場合のみ必要) など
■ 定款認証では何をするのか(作業の流れ)
定款認証とは、会社の基本ルールをまとめた「定款」を公証役場で正式な書類として認証してもらう手続きです。
株式会社を設立するうえで必ず必要となるステップです。
定款認証の主な作業内容は以下の通りです。
❶ 公証人による内容チェック
提出した定款について、公証人がを確認します。
- 法律に違反していないか
- 記載漏れや不備がないか
- 設立要件を満たしているか
これにより、定款が法的に有効な書類として保証されることになります。
❷ 発起人の本人確認と押印
発起人の身分証明書と印鑑証明書を使って本人確認が行われ、問題がなければ定款へ実印を押印します。
電子定款の場合は、電子署名による本人確認となります。
❸ 認証済み定款の受け取り
公証人による認証が完了すると、
- 認証済みの定款(紙またはPDF)
- 登記申請時に必要な書類
が交付されます。
これにより、会社設立の次のステップである 資本金の払い込み → 法務局での登記申請 に進めるようになります。
最近は、電子定款 を使うことで印紙代4万円を節約する方法が一般的になっています。
そのぶん、電子署名や専用ソフトが必要になるため、司法書士・行政書士に依頼してしまうケースも多いです。
なお、合同会社は定款認証が不要 なので、このステップはスキップできます。
ステップ5:資本金の払込と払込証明書の作成
定款認証が完了したら、次は 資本金の払い込み を行います。
この段階ではまだ会社名義の口座を開設できないため、
発起人(あなた)の個人口座
へ、定款で定めた資本金を振り込む形で手続きを進めます。
振り込みが完了したら、
- 通帳のコピー(入金が確認できるページ)
- 払込証明書(所定の様式に記入し、押印したもの)
を準備し、「資本金を確かに払い込みました」という証拠書類 を作成します。
これらの書類は、後の法人設立登記で必ず必要になります。
■ 資本金の目安
資本金はいくらでも設定できますが、運営開始後の資金繰りを考えると、
次の費用をまかなえるだけの金額を用意しておくと安心です。
- 初期費用(登録免許税、印紙代、備品購入など)
- 数ヶ月分の運転資金(家賃・光熱費・役員報酬など)
これらを合計した金額以上を資本金として設定しておくと、設立後のキャッシュが不足しにくく、安定したスタートが切れます。
ステップ6:登記申請(ここでようやく会社が生まれる)
ここまで準備が整ったら、いよいよ 法務局に登記申請 を行います。
登記申請を行う上での基本的なポイントは以下のとおりです。
会社の設立日
法務局が登記申請書を 受理した日=会社の設立日 となります。
設立日を希望の日にしたい場合は、その日に合わせて提出する必要があります。申請方法
法務局への提出は
窓口/郵送/オンライン申請(商業登記システム) のいずれでも行えます。
オンライン申請は24時間受付なので、設立日を調整しやすい点がメリットです。登録完了までの期間
申請から完了までは 1週間〜10日ほど が一般的です。
混雑期(3月・4月など)はやや長くなることがあります。
登記申請に必要な主な必要書類は、以下のとおりとなります。
登記申請に必要な主な書類
登記申請には、以下の書類をまとめて提出します。
- 登記申請書(会社の基本情報を記載したメイン書類)
- 認証済み定款(公証役場で認証された正式な定款)
- 払込証明書(資本金を払い込んだ証拠)
- 役員の就任承諾書(代表取締役・取締役が就任を承諾した証明)
- 印鑑届出書(会社の実印を登録するための書類)
- 印鑑カード交付申請書(取得する法務局もあり)
- その他必要に応じた添付書類
書類に不備があると補正が必要になり、設立が遅れることがあるため、
提出前に一度チェックしておくと安心です。
登記が完了すると、会社は 正式な法人としてスタート します。
同時に、次の書類が取得できるようになります。
・登記事項証明書(登記簿謄本)
→ 会社の「住所・目的・資本金・役員など」を証明する公式文書
・会社の印鑑証明書
→ 契約や口座開設などで必須の身分証明に相当する書類
なお、各証明書は以下の手続きなどで必要となる書類です。
- 法人名義の銀行口座開設
- 社会保険の加入手続き
- 税務署への各種届け出
- 取引先との契約締結 など
会社として活動を始めるあらゆる場面で必要となる重要書類です。
ステップ7:設立後の各種届出と口座開設
登記が終わったら、もうやることは終わりですか?
いえ、ここからも大事な手続きが続きます。
税務署・自治体・年金事務所などへの届出を忘れないようにしましょう。
会社を設立した後は、事業を正式に開始するために、いくつかの重要な手続きを進める必要があります。
主な手続きは次のとおりです。
法人設立後に行う主な手続き
税務署への届出
・法人設立届出書
・青色申告の承認申請書 など都道府県・市区町村への届出
・法人設立届 など社会保険(健康保険・厚生年金)の新規適用手続き
労働保険(労災保険・雇用保険)の手続き
※従業員を雇用する場合に必要法人口座の開設
必要に応じた許認可申請
(飲食業・建設業・古物商など、業種によって異なる)
ここまで完了して、ようやく「マイクロ法人として実際に事業を回せる状態」になります。
8-2 株式会社と合同会社、どちらが向いている?
法人ってほとんど株式会社ですよね?
自分も株式会社を作ろうかなと思っています。
確かに株式会社が主流ですが、最近は合同会社(LLC)もかなり増えています。
マイクロ法人なら、株式会社と合同会社のどちらが自分に合うかを基準に選ぶのが良いでしょう。
改めて整理すると、日本で設立できる会社は次の4種類です。
設立できる主な法人形態
- 株式会社
- 合同会社(LLC)
- 合資会社
- 合名会社
このうち、合資会社・合名会社は「無限責任」を負う社員がいるため、リスクの高い特殊なケース を除き、マイクロ法人ではまず選びません。
したがって、実務的な選択肢は
「株式会社」か「合同会社」 です。
株式会社と合同会社の違いは以下のような点となります。
株式会社と合同会社の違いをざっくり比較する下表のとおりとなります。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 設立費用 | 約20万〜25万円 | 約6万〜10万円 |
| 社会的信用 | 高い(日本で最も一般的) | 徐々に浸透中(Google合同会社など有名例も) |
| 経営の仕組み | 株主と取締役が分かれる(所有と経営の分離) | 出資者=経営者(全員が「社員」として関与) |
| 利益配分 | 出資割合に応じて配当 | 出資割合と無関係に自由に決められる |
| 決算公告 | 必須(官報等で公告) | 不要 |
| 上場の可否 | 上場可能 | 上場不可 |
| 機関設計 | 株主総会・取締役など | 特別な機関設置義務なし |
ふむふむ。
それぞれどんな人が向いているのでしょうか。
株式会社の設立に向いているのは、次のような方です。
株式会社が向いている人
- 将来的に会社を大きくしたい
- 外部の投資家から出資を受ける可能性がある
- 銀行・大企業との取引が多く、信用力を重視する
- 上場や株式公開までは考えていなくても、「成長志向」が強い
合同会社の設立に向いているのは、次のような方です。
合同会社が向いている人
- なるべく設立・維持コストを抑えたい
- ひとり〜少人数で、スピード感のある経営をしたい
- 外部からの大規模な出資や上場は考えていない
- 決算公告などの手間を減らし、シンプルに運営したい
合同会社でスタートしてから、必要に応じて株式会社へ組織変更することも可能です。
「まずは低コスト・自由度重視の合同会社」
「事業が大きくなったら株式会社へ」
という二段階の戦略もよく使われるパターンです。
8-3 自分でできる?税理士は必要?
ここまで聞くと大変そうですね…。
自分で全部やるのは無理でしょうか?税理士さんって最初から必要ですか?
結論から言うと、登記や定款作成は「自分でやる」ことも可能です。
ただし、慣れていないと時間も手間もかかるので、
「どこまで自分でやるか」「どこから専門家に任せるか」を決めておくのがおすすめです。
① 自分でできる部分
- 会社の基本事項を決める(商号・本店・資本金・事業目的など)
- 定款の内容を検討する
- 印鑑を作る
- 資本金の振込・払込証明書の作成
- 登記申請書類の作成・提出
- 税務署・自治体への設立届出書の提出 など
書式は法務局や国税庁のサイトからダウンロードできますし、
最近は「会社設立キット」やオンラインサービスも充実しているため、
時間さえかければ、ひとりで設立までたどり着くことは十分可能です。
② 専門家(司法書士・行政書士)に任せると楽になる部分
- 定款作成・電子定款の手続き
- 登記申請に必要な書類の作成・チェック
- 法務局とのやり取り
司法書士や行政書士に依頼すると、
報酬として 5万〜10万円程度 かかるのが一般的ですが、
- 印紙代4万円が不要になる(電子定款)
- 書類の不備で設立が遅れるリスクが減る
- 自分の作業時間を大きく節約できる
といったメリットがあり、「トータルで見れば高くない」と感じるケースも多いです。
③ 実務上、小規模な法人であれば税理士は必須ではない
結論から言うと、マイクロ法人のような規模が小さい法人であれば、税理士は必ずしも必要ではありません。
理由はシンプルです。
小さな法人は、そもそも取引の数が少なく、日々の仕訳も限定的だからです。
作成が必要な法人税申告書の別表も多くはなく、構造自体はそれほど複雑ではありません。
実際、
・役員は社長1人
・売上や経費の内容もシンプル
・取引先も限られている
といったマイクロ法人であれば、会計処理や申告の難易度は個人事業主と大きく変わらないケースも少なくありません。
さらに、最近の会計ソフト・税務ソフトは非常に優秀です。
仕訳の入力から決算書、法人税申告書の作成まで、画面の案内に従って進めるだけで、小規模法人であれば十分対応できるレベルにまで簡素化されています。
「法人になると急に難しくなる」と思われがちですが、仕訳が少なく、別表も少ない法人であれば、実務的なハードルはそれほど高くありません。
まずは自分でやってみる、という選択は十分に合理的です。
とはいえ、すべてを自己流で進めることには注意も必要です。
特に、
・消費税や法人税の考え方
・役員報酬と社会保険料のバランス
・赤字(欠損金)の扱い
・将来の融資を見据えた決算の組み方
といった「最初の設計」が重要な部分は、後から修正がききにくいポイントでもあります。
そのため、税理士と毎月顧問契約を結ぶ必要はなくても、設立前〜設立直後に一度だけ相談しておくという使い方は、コストを抑えつつリスクを減らす現実的な選択と言えるでしょう。
自分でできる部分は多いが、「最初の設計」と「税務・社保の考え方」はプロの知恵も借りた方が安心
マイクロ法人は、うまく設計すれば非常にコスパの良い仕組み になりますが、
- 会社の形態
- 資本金や持株比率
- 役員報酬の決め方
- 社会保険の加入タイミング
など、最初の意思決定がその後の数年に大きく影響します。
「全部自分でやる」か「全部専門家に丸投げするか」の二択ではなく、
- 自分でできるところは自分でやる
- リスクが大きいところだけ専門家に相談する
というバランスを取るのが、マイクロ法人にとっては最も現実的な選択肢と言えるでしょう。
以上で、マイクロ法人についての解説は終了です。
これまでの内容を簡単に振り返って確認しましょう。
マイクロ法人のまとめ
❶ マイクロ法人とは、1人または少人数で運営する小規模な法人であり、個人事業主や副業を行う人が、税務・社会保険・信用面を最適化する目的で活用するケースが増えている。
❷ マイクロ法人の主なメリットには、次のような点がある。
- 個人と法人で所得を分けることによる節税の可能性
- 法人の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できることによる保障の充実
- 法人名義による社会的信用力の向上
- 出資額の範囲で責任が限定されるというリスク管理面のメリット
- 事業年度を自由に設定できることによる税務・資金繰りの調整
❸ 一方で、マイクロ法人にはデメリットも存在する。
法人住民税(均等割)などの固定費が必ず発生し、会計・税務・社会保険といった管理業務の手間も増える。
特に、社会保険への強制加入や事務負担を軽視すると、想定以上のコスト増につながる。
❹ マイクロ法人は「誰にでも向いている制度」ではない。
売上や利益が安定していない段階、事業内容を個人と法人で切り分けられない場合、あるいは「社会保険料を下げたい」という理由だけでの法人化は、後悔につながりやすい。
❺マイクロ法人を検討すべき代表的なタイミング・状況としては、次のようなケースが挙げられる。
- 課税所得が一定水準を超え、個人の税負担が重くなってきたとき
- フリーランスとして収入が安定し、社会保険の仕組みを活用したいとき
- 企業との取引が増え、法人としての信用力が必要になったとき
- 家族と協力して事業を行い、役割分担や所得分散を考えたいとき
- 将来的な事業拡大を見据えて、経営の器を整えたいとき
❻ マイクロ法人の設立は、「法人形態の選択 → 定款作成・認証 → 資本金の払込 → 法務局での登記 → 各種届出」という流れで進み、最短で数週間、通常は1か月前後で完了する。
❼ 法人を設立した後は、毎期必ず決算・申告が必要となり、法人税・住民税・社会保険料などの支払いも継続的に発生する。
そのため、資金繰りを見据えた設計と、日々の経理管理が非常に重要となる。
❽ マイクロ法人を成功させる最大のポイントは、「節税になるかどうか」だけで判断せず、事業内容・収入規模・社会保険・管理負担まで含めて総合的に設計することである。
制度を正しく理解し、自分の働き方に合った形で活用できれば、マイクロ法人は 事業と生活の両方を安定させる強力なツール となる。
以上が、本記事で解説した内容のまとめとなります。
マイクロ法人は「作れば得をする制度」ではありませんが、正しいタイミングで、正しい目的のもとに設立・運用すれば、大きな武器になります。
なお、「全力経理部」では、マイクロ法人に限らず、法人税・消費税・役員報酬・社会保険など、経営とお金に関する実務テーマを数多く解説しています。
マイクロ法人を検討中の方や、判断に迷っている方は、ぜひ他の記事もあわせて参考にしてみてください。




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