この前、知り合いから近いうちに確定申告書の控えに収受印が押されなくなるという話を聞いたんだけど、どういうことなんだろう?
令和7年1月から、申告手続き等のオンライン化に伴い、申告書等の控えへの収受日付印の押なつが廃止になります。
税務署内の事務手続きの内容となりますが、これまで紙で申告書類を提出してきた方にはかなり大きな影響がある内容です。
やっぱり、申告書の控えに収受印が押されなくなるんですね。
と言いながら、そもそも、収受印ってどんなものでしたっけ?
それに、具体的に私にどのような影響が出るのでしょうか?
それでは、収受日付印とは何か?から収受日付印が廃止になったらどのような影響があるのか、そしてそれにどのように対応する場いいかまでをわかりやすく解説していきたいと思います。
お願いします!
- 収受印(収受日付印)とは何か
- 申告書の控えが必要となるのは、どのような場合か
- 収受印押なつの廃止の概要
- 今後、申告書を提出した事実及び提出年月日を確認するにはどうすればいいのか
それでは、まずは収受日付印(以下、「収受印」と表示する)とは、どのようなものかについて解説します。
この記事の内容は動画でも解説しています。
動画の方がお好みの方はこちらをどうぞ。
目次
1 収受印(収受日付印)とは
そもそも、収受印というのは、どんなものですか?
実物は、各国税局によって、若干の違いありますが、以下のようなものになります。
法人税、所得税などの税目に関係なく、同じ収受印です。
収受印には、提出された税務署名、提出された年月日、収受印番号(複数収受印があるので、それを管理するための番号)が表示されます。
あー!この青いスタンプのことですね。
見たことがあります!
この収受印には、どのような意味があるんですか?
収受印には、主にその申告書等が税務署に提出された日を証明する意味があります。
税務署は、この日付をもとに、期限内に提出されたかどうかを判定しています。
また、税務署側が提出者の控えに収受印を押す場合は決まっていて、次の条件があります。
- 提出書類と同時に「控え」が提出される
- 提出書類と「控え」が同じ内容であること
以上のことが確認された時に、受付したことの証明となる「収受印」を押なつされ、控えが返されることになります。
なるほど、控えに収受印が押されていることで同じ内容の申告書類がその日付で提出されていることの証明になるってことですね。
ちなみに提出したすべての書類の控えに押されることになるんでしょうか?
収受印が押される書類は、主に申告書、届出書、申請書などの一定の場所に押なつされることになっています。
添付書類などには押さないことが多いですね。
また、収受印は、前述のとおり提出書類と同時に提出された「控え」に押されることになるので、控えの提出を忘れてあとから税務署へ「控え」を持っていってそれに収受印を押してほしいといっても収受印を押してもらえることはありません。
なるほど。
その「控え」に収受印が押されなくなると。
でも、申告書の控えが必要になることってそんなにあるんでしょうか?
では、次にどのような場合で、申告書の控えが必要となるのかを確認していきしょう。
2 申告書の控えが必要となる場合について
申告書の控えを提出が必要な場合は、主な理由は以下のとおりです。
申告書の控えを提出が必要な場合
- 金融機関で融資を受ける際
- 国、県、市などからの助成金や補助金を申請する際
- 奨学金の申請手続き
- 保育園の入園の手続きの際 etc.
確定申告書の控えは、第三者がその者の所得金額を把握したい場合や収入があることを把握したい場合に、その者の申告書で確認する場面で必要になってきます。
上記で必要な申告書の控えは、必ず収受印が押されたものの提出が求めれらます。
なるほど、融資を受けるときにも提出が求められるんですね。
これは、私にも関係がありそうです。
これまでずっとやってきた提出の事実と提出年月日の証明になるような収受印がなぜ廃止されることになったんですか?
次は、収受印が廃止になった経緯やいつから申告書等に収受印が押されなくなるのかについて確認していきます。
3 収受印押なつの廃止の概要
申告書等への収受印が廃止になった経緯について、解説していきます。
国税庁は以下のような説明をしています。
国税庁においては、政府の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和5年6月9日閣議決定)等を踏まえ、納税者の利便性の向上等の観点から、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」を目指し、申告手続等のオンライン化、事務処理の電子化、押印の見直し等、国税に関する手続や業務の在り方の抜本的な見直し(税務行政のDX)を進めているところです。
今後もe-Taxの利用拡大が更に見込まれるほか、「申告書等情報取得サービス」などのDXの取組の進捗も踏まえ、国税に関する手続等の見直しの一環として、令和7年1月から書面で提出された申告書等の控えに収受日付印の押なつを行わないことといたしました。(一部抜粋)
参照元 国税庁ホームページ 申告書等の控えへの収受日付印の押なつの見直しに関するQ&A
このように、e-Tax利用率の向上やDX(税務行政のデジタル・トランスフォーメーション)の取組みから、申告書等の控えに収受印の押なつを行わないことになりました。
税務署等において、収受印が押なつされなくなるのは、令和7年1月からです。
そのため、個人の確定申告の場合は、令和6年3月15日が提出期限となっている令和5年分の確定申告書の控えには、収受印が押なつされますが、来年の令和6年分の確定申告書には、押なつがないことになります。
なるほど、令和7年1月から収受印が押されなくなるってことですね。
今まで押されていたすべての申告書等に押されなくなるってことですか?
基本的にすべての申告書等に押されなくなると考えて大丈夫です。
一部、例外として、担保提供関係書類と遺産分割協議書(相続税の申告書の添付書類)には、引き続き収受印が押なつされることになります。
ということは、私に関係しそうな申告書類はすべて受領印の押印がなくなったってことですね。
でも、今後、銀行などに申告書を提出する際に、提出の事実を証明するにはどうしたらよいのでしょうか?
では、次に今後、申告書の控えの提出を求められた時には、どのような対応を取ればいいのかについて解説していきます。
4 今後の対応について
令和7年1月までは、税務署窓口で収受日付印が押され、これによって、提出した事実及び提出年月日を確認することができます。
では、収受日付印が押されなくなる令和7年1月以降において、金融機関等で、申告書の控えを求められた際に、どのような対応を取ればいいのかについて、解説していきます。
まず、前提として、国税庁ホームページのQ&Aでは、以下のように説明をしています。
(問4) 金融機関や行政機関等から収受日付印の押なつされた控えを求められる場合がある。
(答) 国税当局から、金融機関や補助金・助成金などを担当する行政機関などに対して、今般の見直しについては事前に説明を行っております。
とりわけ、令和7年1月以降は、各種の事務において収受日付印の押なつされた申告書等の控えを求めないようにお願いしてきたところです。
今後も、令和7年1月までの間、丁寧な周知・広報に努めてまいります。
なお、令和7年1月以降においても、収受日付印の押なつされた控えの提出を求める各種の機関を把握した場合、国税当局から個別に説明を行う予定です。参照元 国税庁ホームページ 申告書等の控えへの収受日付印の押なつの見直しに関するQ&A
とあるように、今後は、融資や補助金申請等の際には、収受印の押なつされた申告書を求めないように指導するとあります。
ただ、あくまで指導、周知であるため、令和7年1月以降においても、金融機関によっては、引き続き申告書の提出の事実を証明する必要があることが考えられます。
では、今後、銀行から申告書の提出の事実を求められたらどうしたらいいのでしょうか?
提出した事実及び提出年月日を証明するためには、下記の方法のいずれかで対応することになります。
- リーフレット交付を受ける
- 申告書等情報取得サービスを利用する(法人不可)
- 保有個人情報の開示請求を行う(法人不可)
- 納税証明書の交付請求を行う
この5つの対応方法について、一つずつ確認していきましょう。
4-1 リーフレット交付を受ける
まず、一つ目の方法は、リーフレットの交付を受ける方法です。
リーフレットというのは、収受印の廃止に関する内容と申告書等の提出した事実等を確認する方法が記載された案内書類です。
案内書類?
これで、申告した事実が証明できるんですか?
これはまだ検討段階のもので、国税庁の申告書等の控えへの収受日付印の押なつの見直しに関するQ&Aの問3で述べられている方法です。
申告書等の控えへの収受日付印の押なつの見直しに関するQ&Aの問3において、令和7年1月以降、申告書等を提出する際に、希望者に対して、このリーフレットに税務署が申告書を提出した日付、税務署名を記載して渡すことを検討しているとのことです。
これが実施されれば、当面の間、申告書等の提出した事実の証拠とすることができるようになります。
なお、窓口で提出するのと同様に、郵送等で申告書を提出する際には、返信用封筒と申告書の控えが同封していれば、このリーフレットを申告書の控えと同封して返送されるようになっています。
この方法の特徴をまとめてみます。
個人 | 法人 | メリット | デメリット | 手数料 |
---|---|---|---|---|
|
| 無料 |
4-2 申告書等情報取得サービスを利用する
次の方法としては、申告書等情報取得サービスを利用する方法です。
申告等情報取得サービスというのは、申告書等を書面により提出している場合であっても、パソコン・スマートフォンからe-Taxを利用してPDFファイルを無料で取得することができるサービスのことです。
申告等情報取得サービスで出力できる書面
- 所得税及び復興特別所得税確定(修正)申告書
- 青色申告決算書
- 収支内訳書
このサービスを利用するには、パソコン又はスマートフォンからインターネット接続する必要があり、また、取得にはマイナンバーカードが必要となります。
なお、法人の申告書等には利用することができません。
申告等情報取得サービスの特徴は以下のとおりです。
個人 | 法人 | メリット | デメリット | 手数料 |
---|---|---|---|---|
|
| 無料 |
申告書等情報取得サービスの詳細については、、申告書等情報取得サービス(e-Taxホームページ)(e-Taxホームページ)からご確認ください。
う、、なんか、、難しそうですね。
申告書等情報取得サービスの手順のマニュアルってありますか?
申告書等情報取得サービスの手順については、こちらのリンク(国税庁HP)申請の方法から、ダウンロードの奉納まででわかりやすく解説されていますよ。
4-3 保有個人情報の開示請求を行う
次の方法は、保有個人情報の開示請求を行う方法です。
保有個人情報の開示請求というのは、納税者が税務署が保有する個人情報の開示を請求することにより、税務署がそれを開示し、提出した申告書等の内容を確認することができる方法のことをいいます。
提出した申告書を確認できても、収受印が押されてなければ、意味ないですよね。
収受日付印が押されなくなるといっても、それは、納税者控えのものだけで、税務署で保管している提出した申告書については収受印が押なつされています。
そのため、開示請求をした場合、税務署に保管されている収受印が押されている申告書を確認することができます。
開示請求に必要なものは、以下のとおりです。
請求方法 | 必要なもの |
---|---|
税務署窓口で行う場合 |
|
郵送等で行う場合 |
|
なお、開示請求はオンラインでも可能です。
詳しくは開示請求等の手続(国税庁HP)をご覧ください。
ただ、注意点としては、個人情報の開示請求を行うには、手数料300円(オンライン申請の場合は200円)が必要で、写しの交付までに2週間から1か月程度かかります。
また、法人の申告書等には利用することができません。
保有個人情報の開示請求の特徴についてまとめると次のようになります。
個人 | 法人 | メリット | デメリット | 手数料 |
---|---|---|---|---|
|
| 300円(オンライン申請の場合は200円) |
4-4 納税証明書の交付請求を行う
次の方法は、納税証明書の交付請求を行う方法です。
納税証明書というのは、税務署が発行するその年度の納税額や、滞納がないことを証明する書類のことをいいます。
なお、オンラインでの発行することが可能です。
詳しくは納税証明書の交付請求手続をご覧ください。
注意点としては、手数料は、税目ごと1年度1枚につき400円(オンライン申請の場合は370円)が必要なことです。
ただし、納税証明書は、納税額と滞納の有無しか表示されませんので、第三者に申告書を提出していてその内容を主張する場合は、納税証明書と受付印が押されていない「控え」を持参し、その控えに記載されている納税額と納税証明書の税額が一致しているということになるでしょう。
それにより収受印が押されていない申告書の内容で申告したらしい。という程度のことは言えると思われます。
しかし、税額を同じにして決算の内容を変えるということは容易にできるので、証明書類としては弱いと言えるでしょう。
個人 | 法人 | メリット | デメリット | 手数料 |
---|---|---|---|---|
|
| 税目ごと1年度1枚につき400円 オンライン申請の場合は、370円 |
以上が、提出した事実及び提出年月日を証明する方法の紹介でした。
結構、色々な選択肢があって悩んじゃいますね。
ちなみに、どの方法がオススメなんでしょうか。
申告書類の内容を確認したいという第三者がどのレベルのものを求めているかによってどのレベルの証明を必要とするかが違ってくると思いますので、なんとも言えません。
なので、証明力の強さと手続きの手軽さを評価してみましょう。
証明の種類 | 証明力の強さ | 手続きの手軽さ |
---|---|---|
リーフレット | 低い:申告書をその日に提出したことがわかる程度 | 簡単:提出したらもらえる |
申告書等情報取得サービス | 高い:収受印が押された申告書を取得できる | 比較的面倒:e-Taxの申請なのでネットリテラシーが高い人は普通。苦手な人は難しい。 |
保有個人情報の開示請求 | 高い:収受印が押された申告書の写しを取得できる | 面倒:申請書を書いたり、税務署とのやりとりが2回、時間がかかる。 |
納税証明書 | 低い:申告書を提出したことと税額がわかるのみ | 簡単:所定の書類と手数料を支払えばすぐ。 |
私なら、証明力も高くて個人の電子申告には慣れているので、申告書等情報取得サービスですかね。
あ!これまで法人の申告書を紙で提出してたけど、法人の場合はリーフレットだけってことか…証明力は弱いって話ですよね、、、
確かに、リーフレットの交付を受ける方法では、証明力的に少し心許ないですよね。
ここは、資本金1億円庁の法人は電子申告が義務化されているように法人には電子申告圧力が強まってますから、これは年貢を納めて電子申告をするしかないんじゃないですか?
そうですね。
これを機にトライしてみます。
最後にここまで、記事で解説した内容について振り返っていきたいと思います。
5 まとめ
ここまで解説してきたことを簡単に振り返ります。
- 収受印(収受日付印)というのは、税務署がその申告書等の受領を行った際に、押す印のことで、主にその申告書等が税務署に提出された日を証明する意味がありました。
- 収受印が押されている収受印は、申告書の提出した事実を証明するものであるため、融資や助成金、補助金などの申請に必要になる。
- 令和7年1月以降、申告書等の控えには、収受印が押なつされなくなります。
- 収受印が廃止されたあとは、申告書の控えの代わりに、税務署が発行するリーフレットや申告書等情報取得サービスなどで申告書の提出した事実を証明することができる。
- 個人の申告の場合は、電子申告に慣れていれば「申告等情報取得サービス」が証明力を考えればおすすめで、法人の申告の場合は、現状としてリーフレットの交付を受ける方法しかないなく、その証明力を考慮すれば電子申告するのが賢明。
収受印が廃止になると、自身が作っただけの申告書のコピーだけでは、申告書を提出した事実を証明することができなくなります。
国税庁は、金融機関等に周知を行うことで、少しずつ変わっていくとは思いますが、それまでは、当記事に書かれている内容のとおり対策をしておくことが大事です。
今後もデジタル化が進むことは明らかで、税務も色々と手続き面が変わっていきます。
置いていかれないようしっかり勉強していきましょう。
なお、全力経理部では、他にも税務に関する内容を中心にわかりやすく解説している記事がありますので、よろしければそちらもご覧いただけたらと思います。
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