
フリーランスとしてだいぶ軌道に乗ってきた今日この頃。
一番の得意先からインボイスを適用するのかどうかを確認され、できれば自分の会社もインボイスを発行できる会社になってほしいと言われた。
こんなことで仕事が不安定になるのは嫌だから、インボイスを発行できる会社になろうと思うけど、そうすると消費税の申告が必要なんだよな…
消費税の申告なんてしたことないよ…
消費税の申告って難しそうだし、消費税ってかなり負担も大きそうだ…
何かいい方法はないかな…
社長のように、インボイス制度の影響により、初めて消費税の申告を行うことになった事業者には、通常の消費税の申告方法より格段に事務負担と多くのケースで税額が少なくなる方法があります。
その制度は、「インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置」、いわゆる「2割特例」という制度です。
今回の記事では、この「2割特例」について解説していきたいと思います。
なお、「インボイス制度」自体にはほとんど触れませんので、インボイス制度についてよくわからない方、詳しく知りたいという方は、下記の記事からご覧ください。
税額と事務負担まで少なくなる、そんな制度があるんですか!?
ぜひ、2割特例について知りたいです。
それでは、まずは2割特例とはどういう制度なのかという概要についてから解説していきましょう。
- 2割特例とはどのような制度なのか
- 2割特例を適用した消費税の申告書の書き方
- 簡単・早く・正確に2割特例の申告書を作成する方法
目次
1 2割特例の概要

2割特例というのはどのような制度なのか?について詳しく解説していきます。
この部分を動画でも解説していますので、動画が良い方はこちらをご覧ください。
1-1 2割特例とは
私みたいに、申告義務がなかった事業者が、インボイス発行事業者となって、消費税の申告をしなくてはいけなくなった場合に限って、その消費税の税負担・事務負担を減らす制度ということですね。
冒頭で、この2割特例の特徴を挙げます。次のとおりです。
それでは、2割特例について詳しく解説をしていきます。
特徴の2番目に挙げた、計算が簡単になるとありますが、どのように簡単になるかを、2割特例を適用した場合の消費税の計算方法と一般的な消費税の計算方法と比較することで確認していきましょう。
1-2 2割特例を適用した場合の消費税の計算方法
消費税の納税額の計算方法には、原則課税・簡易課税の2つがあります。
そこに、2割特例が3つ目の計算方法として一時的に加わった形となります。
1-2-1 2割特例での消費税の計算方法
2割特例を適用した場合の消費税の計算方法は以下のような計算式となります。
具体的なケースで確認しましょう。
計算例
| 売上高 | 経費 |
|---|---|
| 9,900,000円 (内税 900,000円) | 3,300,000円(内税300,000円) |
990万円 × 10/110 × 20% = 180,000円
このように計算し、2割特例での消費税は180,000円となります。
従来の消費税の計算方法と比べてもかなり簡単な計算式となっています。
これは、シンプルで簡単そうですね。
では、特例を使わなかった場合の消費税の計算はどのような計算方法なんでしょうか?
1-2-2 原則課税での消費税の計算方法
まずは、原則課税方式の方から解説します。原則課税方式の消費税の計算式は以下のとおりです。
原則課税方式での消費税の算出式
売上の時に受け取った消費税額 ー 支払い時に支払った消費税額(「仕入税額控除額」と呼びます)= 納付すべき消費税額
原則課税方式での消費税の算出は、基本的に受け取った消費税額から支払った消費税額を差し引いた金額となります。
このように、シンプルで簡単そうに見えますが、全ての取引内容を消費税の課税取引・不課税取引・非課税取引・免税取引を区分する必要があり、また課税売上割合が95%未満の場合は、個別対応方式または一括比例配分方式を選択して…ぶらぶらぶら
あー、もういいですー
ぐにゃぐにゃぐにゃー
1-2-3 簡易課税での消費税の計算方法
続いて簡易課税方式で消費税を計算する方法は次のようになります。
簡易課税方式での消費税の算出式
受け取った消費税額 -(受け取った消費税額 × みなし仕入率)(「仕入税額控除額」と呼びます)= 納付すべき消費税額
簡易課税制度というのは、「受け取った消費税」の金額に、売上の事業区分に応じた「みなし仕入率」を乗じることで「支払った消費税」(仕入税額控除額)を差し引いて算出した金額を納付すべき消費税の金額とする方法です。
原則課税方式の場合、売上高などの「収入」に係る消費税額に加えて仕入、経費などの「費用」に係る消費税額についても請求書や領収書等の整理を行い、ようやく納付すべき消費税額を算出できますが、簡易課税方式の場合では、売上高などの「収入」に係る消費税額さえ整理できれば納付すべき消費税額を算出することが出来るのが特徴となっています。
原則課税よりも簡易な方法という意味で簡易課税という名称となっています。
簡易課税方式について、もっと知りたい方は次の記事で簡易課税制度とは?から申告書の書き方まで詳しく解説しています。
1-2-4 2割特例、原則課税、簡易課税との比較
2割特例、原則課税、簡易課税それぞれの消費税額の計算方法を見てきました。
ここで具体的な数字を使って実際にこの3つの計算方法で試しに消費税額を算出し、その特徴を再確認してみましょう。
原則課税、簡易課税との比較
設例内容
業種目:飲食業(第4種事業)みなし仕入率 60%
売上高:9,900,000円 (内税 900,000円) 経費:3,300,000円(内税 300,000円)
| 計算方法 | 計算式 | 消費税額 |
| 2割特例の場合 | 900,000 × 20% = 180,000 | 180,000円 |
| 原則課税の場合 | 900,000 - 300,000 = 600,000 | 600,000円 |
| 簡易課税の場合 | 900,000 -(900,000×60%)= 360,000 | 360,000円 |
設例の税額を見てみると、2割特例<簡易課税<原則課税の順となり、2割特例が一番、消費税額が少なくなっています。必ずしもこうはなりませんが、2割特例が一番納税額が少なくなる傾向にあります。
しかしながら、場合によっては原則課税方式や簡易課税方式のほうが有利となることもあるにはありますので、これについては、2割特例のデメリットとして後述します。
ここで2割特例と原則課税、簡易課税の3つを事務負担の観点で比較してみたいと思います。
| 比較内容 | 2割特例 | 原則課税 | 簡易課税 |
|---|---|---|---|
| 日々の取引 |
|
|
|
| 申告手続き | 売り上げた時の消費税に2割をかけて計算すればいい | 支払った時の消費税の計算が複雑 | 売り上げた時の消費税を事業内容に応じて区分してみなし仕入率を計算する。さらに事業区分の割合によって75%ルール等の特例計算がある。 |
なるほど、2割特例は事務負担が最も少なくて、なおかつ税額も少ないことが多いなんてとてもいい制度ですね。
消費税を申告する事業者は、みんなこの2割特例を適用できるのですか?
これはインボイス制度が始まったことで、消費税に関する負担を軽減する目的で新しく設けられた計算方法なので、適用できる事業者は限られている上に、適用できる期間も限られています。
詳しく解説していきます。
1-3 2割特例の適用要件とは
2割特例を適用できる事業者は、以下のような要件を満たす事業者です。
2023年10月から2026年9月の課税期間※1中に新たに消費税の申告義務が発生した事業者であること
適格請求書発行事業者(インボイスを発行できる会社)に登録している事業者であること
基準期間※2(前々年度)の課税売上高※3が1,000万円以下であること
- 用語解説
- 課税期間・・・消費税の納付税額を計算する基礎となる期間のことを指します。原則として個人事業者は暦年、法人は事業年度をいいます。
- 基準期間・・・基準期間とは課税事業者となるか免税事業者となるか、また簡易課税制度を適用できるかどうかの判断をする基準となる期間です。
個人事業者の方は原則「その年の前々年」、法人の方はその事業年度の「前々事業年度」をいいます。
課税売上高・・・消費税が課される取引の売上金額と輸出取引等の免税売上金額の合計額から、その取引に関する売上返品、売上値引、売上割戻にかかる金額を差し引いたものをいいます。
逆に2割特例を適用できない事業者は、以下のような要件を満たす事業者です。
- 基準期間(前々年度)の課税売上高が1,000万円を超える事業者
- 2023年10月1日の属する課税期間以前から消費税を申告する義務のあった事業者
- 課税期間の短縮をしている事業者
なお、一度、2割特例を適用できたとしても、次の年度に基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合などで条件を満たさなくなった場合、次の年度では、2割特例を適用することができなくなります。
先ほど、経過措置とありましたが、いつまで、この2割特例を適用することができるのでしょうか?
1-4 2割特例の適用可能期間とは
なお、法人か個人事業主かで適用期間が若干違いがあります。
| 適用期間 | |
| 個人事業主の場合 | 2023年10月1日から2026年12月31日までの4年間 |
| 法人の場合 | 2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する課税期間 |
個人事業主の場合は、とてもわかりやすいですが、法人の場合、法人の決算期によって適用期間が変わりますので、ご注意ください
法人の適用期間について
法人の2割特例の適用期間は、その法人の事業年度によって適用期間が変わります。
適用期間は2023年10月1日から2026年9月30日に1日でも属する事業年度であれば、適用することができます。
例えば、3月決算で2023年10月1日からインボイス発行事業者の登録を受けたとした場合、2割特例を適用できる期間は以下のように、2024年3月期から2027年3月期までの4期間となります。
| 2023年3月決算 | 2024年3月決算 | 2025年3月決算 | 2026年3月決算 | 2027年3月決算 | 2028年3月決算 |
| 適用できない | 適用可能 | 適用可能 | 適用可能 | 適用可能 | 適用できない |
2023年3月決算(2022.4.1-2023.3.31)は2023年10月1日が含まれませんので、適用外です。
2028年3月決算(2027.4.1-2028.3.31)も2026年9月30日が含まれませんので、適用外です。
なお、12月決算の法人の場合では、2023年12月決算から2027年12月決算までの4期間となります。
| 2023年12月決算 | 2024年12月決算 | 2025年12月決算 | 2026年12月決算 | 2027年12月決算 | 2028年12月決算 |
| 適用可能 | 適用可能 | 適用可能 | 適用可能 | 適用可能 | 適用できない |
3月決算の法人と比べて2割特例を適用できる期間にズレがありますが、これは2割特例を適用期間が2023年10月1日から2026年9月30日に属する課税期間であるためです。
なるほどー2割特例は一時的なものなのですね。
2割特例の適用を受けるには、何か特別な手続きが必要なのでしょうか?
1-5 2割特例を適用するために必要な申請等の有無
つまり、前述の適用要件を満たしていれば、原則課税、簡易課税にどちらを選択していても、いつでも適用可能ということです。
なお、2割特例を適用を受けた事業者が、簡易課税制度を選択したい場合には、簡易課税選択届出書を提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用が認められます。
また、本来は簡易課税制度を適用した場合、2年間は簡易課税での申告を行わなければならない縛りがありますが、2割特例であれば、その縛りがなく次の年度から2割特例を適用することが可能です。
2割特例を適用するのに、事前に申請や届出は不要なんですね。
では、早速、2割特例を適用して消費税の申告書を作りたいと思います。
少しお待ちください。
2割特例には、多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。
その内容を確認してから、選択するかを決めても遅くはありません。
次の章で、2割特例のメリットとデメリットについて、解説しますので、確認していきましょう。
1-6 2割特例のメリットとデメリットとは
2割特例を適用すると、多くのメリットがあります。
基本的には、2割特例を適用できる事業者の場合、ほとんど場合は2割特例を適用した方がお得です。
ただ、ほとんど場合と記載したとおり、少なからずデメリットも存在しますので、その内容についてもここで押さえておきましょう。
まずは、2割特例を適用するメリットについて紹介していきます。
1-6-1 2割特例を適用するメリット
2割特例を適用した場合のメリットは以下の通りです。
- 消費税額が少なくなるケースが多い
- 適用するための手続きが不要
- 事務負担が軽減される
- 申告書の作成が簡単
一つずつ、確認していきましょう。
消費税額が少なくなるケースが多い
最初のメリットとしては、2割特例を適用すると、ほとんどの場合で消費税が少なるすることができます。
簡易課税と比較するとわかりやすいので、簡易課税と比較します。
卸売業と小売業等以外の業種においては、2割特例のほうが税額が少なくなります。
簡易課税方式との比較
設例内容:売上高 9,900,000円 (税額 900,000円) 経費 3,300,000円(うち税300,000円)
| 計算方法 | 計算式 | 消費税額 |
| 2割特例の場合 | 900,000 ×20% = 180,000 | 180,000円 |
| サービス業(第5種事業)の場合 | 900,000 -(900,000×50%)= 450,000 | 450,000円 |
| 卸振業(第1種事業)の場合 | 900,000 -(810,000×90%)= 90,000 | 90,000円 |
上記の表のように、卸売業の場合にのみ、簡易課税の方が税額が安くなります。
逆に言えば、他の業種であれば、2割特例の方が税額が安くなるということです。
なお、みなし仕入率がどのように設定されているかというと、次のように営んでいる業種ごとに設定されています。
事業区分 みなし仕入率 該当する事業 第一種事業 90% 卸売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業)をいいます。 第二種事業 80% 小売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で第一種事業以外のもの)、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業)をいいます。 第三種事業 70% 農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含みます。)、電気業、ガス業、熱供給業および水道業をいい、第一種事業、第二種事業に該当するものおよび加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除きます。 第四種事業 60% 第一種事業、第二種事業、第三種事業、第五種事業および第六種事業以外の事業をいい、具体的には、飲食店業などです。
なお、第三種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業も第四種事業となります。第五種事業 50% 運輸通信業、金融・保険業 、サービス業(飲食店業に該当する事業を除きます。)をいい、第一種事業から第三種事業までの事業に該当する事業を除きます。 第六種事業 40% 不動産業
適用するための事前手続きが不要
次のメリットとしては、2割特例には、事前に届出や申請をする必要がなく、気軽に適用できることです。
先ほど、紹介した簡易課税方式を適用するためには、事前に「簡易課税制度選択届出書」を提出しなければ、簡易課税方式での申告を適用することができませんが、2割特例の場合は 申告書の第一表にある「税額控除に係る経過措置の適用(2割特例) 」欄に「〇」を付すだけですので、適用することが非常に簡単です。
事務負担が軽減される
次のメリットとして、2割特例を適用することによって、事務負担の軽減に繋がるということです。
2割特例の税額の計算は、「受け取った消費税×20%」であることから、受け取った消費税を集計するだけで、基本的には消費税を算出することができます。
そのため、支払いに関する消費税について考慮する必要がありません。
したがって支払いに関して消費税がかかる取引かどうかの確認や税区分に関する記帳が不要です。
そして支払いの際、インボイスがある取引かどうかも把握する不要がありません。
このように、他の申告方法と比較して事務負担が大幅に軽減されます。
申告書の作成が簡単になる
最後のメリットとしては、原則課税方式、簡易課税方式に比べて2割特例の方が圧倒的に計算が楽、申告書の作成が楽であるということです。
原則課税の場合、売上にかかる消費税額だけでなく、経費にかかる消費税額も算出したうえで納税額を計算する必要があります。
また、原則課税と比べて計算が楽である簡易課税でも、事業区分を確認する必要があり、兼業等を行っている場合には75%ルールがあったりと申告書の作成は税務初心者には、容易ではない部分があります。
それらの方法と比べて2割特例の方は「預かった消費税×20%」とかなり簡単に計算できますので、申告書の作成も断然簡単になっています。
1-6-2 2割特例を適用するデメリット
2割特例を適用した場合のデメリットは以下の通りです。
- 「受け取った消費税<支払った消費税」の場合、2割特例だと還付されない
- 業種によっては、簡易課税方式の方が税金が安くなることがある
「受け取った消費税<支払った消費税」の場合、2割特例だと還付されない
デメリットの一つ目は、支払った消費税が受け取った消費税を上回る場合には、2割特例で申告を行った場合、還付申告とすることができない点です。
原則課税を適用する場合において、「受け取った消費税<支払った消費税」という関係のときは、支払った消費税の方が多いので、消費税が還付になります。
しかしながら、2割特例の計算式は、預かった消費税に20%を掛ける算出方法ですので、絶対に消費税の還付を受けることができません。
そのため、原則課税で消費税の還付を受けられる場合には、2割特例を適用すると金銭的に損をすることになります。
業種によっては、簡易課税方式の方が税金が安くなることがある
2つ目のデメリットとしては、先ほども紹介しましたが、業種によっては、簡易課税方式の方が税額が安くなる場合があることです。
簡易課税を適用した際に、「みなし仕入率」が80%を超える業種である「卸売業」については、2割特例を利用しない方が税額が安くなります。
ただし、この場合であっても、計算方法としては2割特例の方が簡単ではありますので、手間と税額の安さを比較して2割特例を適用するかどうかを判断することになるかと思います。
2割特例には、デメリットもあったんですね。
よく理解できました。
でも、私の会社では、2割特例を適用した方がお得そうです。
2割特例を適用した消費税の申告書の書き方も解説していただけますか?
次の章からは、2割特例を適用した消費税の申告書の書き方について、解説していきたいと思います。
2 2割特例を適用した消費税の申告書の書き方

この章では、2割特例を適用した消費税の申告書の書き方を解説していきます。
初心者の方でもこの記事のとおりに記載していけば、簡単に書きあげられるようにわかりやすく解説していきます。
2-1 申告書の作成の流れ
消費税の申告書で2割特例を適用した場合、どのように作成していくのでしょうか。
2割特例を適用した消費税の申告書の作成の流れについてどんな方にもわかるようにわかりやすく解説していきます。
まずは、全体像を把握するために「2割特例を適用した場合の消費税の申告書」がどのような書類なのかを見てみましょう。
(基本的に、法人が作成する申告書と個人事業主が作成する申告書には、大きな違いがありません。当記事では法人が作成する申告書を確認していきます。)
2割特例制度で使用するの申告書は、以下のとおり3種類の申告書類で構成されています。
- 第一表(申告書の本紙)・・・納付すべき消費税を計算
- 第二表(課税標準額の内訳書)・・・収入の方の消費税を計算
- 付表6(税率別消費税額計算表)・・・税率ごとに消費税を計算及び仕入税額控除の金額を計算
「第一表」

「第二表」

「付表6」

それぞれの申告書類には、役割があり、作成する手順も重要です。
ここまでの解説で、2割特例の消費税の納税額は、「受け取った消費税 × 20 %」で、だから2割特例と説明してきましたが、正確には次の算式になります。
具体的な式に当てはめると
100,000 ー (100,000 × 80%) = 20,000
となります。
100,000 × 20% = 20,000
と同じ結果になりますね。
2割特例制度を適用した消費税の申告書の作成手順は大きく分けて3つあり、以下のとおりとなります。
上記のような流れで申告書を作成していきます。
2割特例制度を適用した場合の消費税申告書の作成の3つのSTEP
STEP1 付表6を作成する
受け取った消費税から差し引く消費税を算出します。(「受け取った消費税 × 80%」部分)

STEP2 第二表を作成する
課税標準額から消費税額及び地方消費税額を算出し、記載を行います。(「受け取った消費税」部分の計算)

STEP3 第一表の作成を行う
第二表の記載した税額等を第一表に転記する。(「受け取った消費税」部分の計算)
その他の記載箇所を記載する。

すべての申告書が完成
2割特例を適用した消費税の申告書の書き方を例題に沿って実際に作成しながら解説としていきます。
ただ、すべてのケースに対応できるような例にするといたずらに複雑になるため、このパターンを知っていれば多くの会社で対応できるだろうというものに絞ってわかりやすく解説していきます。
2-2 申告書の記載例
こちらの記載例は、中小企業の方が作成する申告書の中で、これだけ知っていれば実務で十分対応できるものとなっています。
次のような設定で解説を進めていきます。
例題内容
法人名:株式会社 横浜総合商事
決算期:令和7年1月1日から令和7年12月31日
基準期間(令和5年12月31日期)の課税売上高:6,500,000円
決算内容:
売上高 標準税率分(10%) 8,800,000円
軽減税率分(8%) 1,080,000円
売上値引き 標準税率分(10%) 110,000円
貸倒処理した金額: 0円
貸倒回収額: 0円
消費税が10%と軽減8%の売上があって、
売上値引きがあるというケースです。
それでは、まずは付表6から解説していきます。
STEP1 付表6を記載する

2割特例を適用した消費税の申告書の作成について、まずは最初に作成する書類は「付表6」となっています。
前述のとおり、付表6で「受け取った消費税 × 80%」部分を計算します。
付表6の構成は、全体を通じて次のようになっています。
- A列:消費税率8%(軽減税率)分のものを記載する
- B列:消費税率10%のものを記載する
❶ ①欄「課税資産の譲渡等の対価の額」欄を記載する

①欄には、課税資産の譲渡等の対価の額を記載します。
課税資産の譲渡等の対価の額は次のように計算します。
軽減税率:課税資産の譲渡等の対価の額 = 課税売上げ※ × 100/108
注意)1000円未満の端数を切り捨てない
上記の計算式は、この課税売上げの税込み金額を税抜き金額にする計算です。
※「課税売上げ」とは、消費税が掛かっている売上のことを意味します。課税売上げには、標準税率(10%)と軽減税率(軽減8%)があります。
消費税がかかっている売上というのは、例えば土地の売買や税金や行政手数料には消費税がかかっていません。このように取引には消費税がかかるものと、かからないものがあります。そのうち、消費税のかかっている売上という意味です。
消費税がかかるものとかからないものはどうやって判断すればいいのですか?
収入の方は、ご自身がインボイスの発行事業者であれば、発行したインボイスに必ず記載しています。消費税10%や軽減8%もレシート等に記載があるはずです。
ちなみに支払った方も、相手から交付されたインボイスや契約書等をみれば確認できます。
例題では、下表のとおりの記載内容となります。
| 区 分 | 税率6.24%適用分(A) | 税率7.8%適用分(B) | 合計(C) |
|---|---|---|---|
| 課税資産の譲渡等の対価の額① | 1,080,000円×100/108=1,000,000円 | 8,800,000円×100/110=8,000,000円 | 1,000,000円(A)+8,000,000円(B)=9,000,000円 |
❷ ②欄「課税標準額」欄を記載する

②欄には、課税標準額を記載します。
課税標準額は次のように計算します。
軽減税率:課税標準額= 課税売上げ × 100/108(1,000円未満切り捨て)
注意)1,000円未満切り捨てた金額を記載します。
例題では、下表のとおりの記載内容となります。
なお、ここで算出した金額はすべて1,000円未満切り捨てとなります。
| 区 分 | 税率6.24%適用分(A) | 税率7.8%適用分(B) | 合計(C) |
|---|---|---|---|
| 課税標準額② | 1,080,000円×100/108=1,000,000円 | 8,800,000円×100/110=8,000,000円 | 1,000,000円(A)+8,000,000円(B)=9,000,000円 |
❸ ③欄「消費税額」を記載する
③欄には、課税標準額に対する消費税額を記載します。

課税標準額に対する消費税額は次のように計算します。
標準税率10%:課税標準額 × 消費税率(国税分 7.8%)= 消費税額
具体的には③欄は次のように求めます。
- A列は「課税標準額 ②」 × 6.24%で計算する
- B列は「課税標準額 ②」 × 7.8%で計算する
- C列は同じ行のA列とB列の値を合計する
例題では、下表のとおりの記載内容となります。
| 区 分 | 税率6.24%適用分(A) | 税率7.8%適用分(B) | 合計(C) |
|---|---|---|---|
| 課税標準額に対する消費税額③ | 1,000,000円×6.24%=62,400円 | 8,000,000円×7.8%=624,000円 | 62,400円(A)+624,000円(B)=686,400円 |
➍ ④欄「売上対価の返還等に係る消費税額」を記載する

「売上対価の返還等に係る消費税額」欄は、商品販売をした事業者がその取引を行った後に、売上値引きをしたり、売上割戻金や販売奨励金を支払ったり、売り上げた商品について返品を受けたこと等により売掛金の減額等を行った場合に使用する欄です。
売上対価の返還等に係る消費税額は、消費税がかかる売上の返還をおこなった金額を税率ごとに税込金額を集計して次の計算式で算出してください。
| 付表6⑤欄のA列 | 付表6⑤欄のB列 |
|---|---|
| 8%分の売上値引等の金額(税込)×6.24/108 | 10%分の売上値引等の金額(税込)×7.8/110 |
売上対価の返還等の金額を集計する際は、消費税の集計表や帳簿などから集計するようにしてください。
なお、売上対価の返還に関するインボイス(適格返還請求書)を基に集計を行うと誤りが生ずる可能性があります。
なぜなら、売上対価の返還に関するインボイス(適格返還請求書)を発行する必要がある取引は、1万円以上の取引のみであり、1万円未満の取引が漏れる可能性があるからです。
例題においては、以下のような記載内容となっています。
| 区 分 | 税率6.24%適用分(A) | 税率7.8%適用分(B) | 合計(C) |
|---|---|---|---|
| 売上対価の返還等に係る消費税額③ | ー | 110,000円 × 7.8/110=7,800円 | 0円(A)+7,800円(B)=7,800円(C) |
➎ ⑥欄「控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額」

この⑥欄には、③欄と④欄の合計から⑤欄を差し引いた額を記載します。
設例では、以下のような記載内容となっています。
| 区 分 | 税率6.24%適用分(A) | 税率7.8%適用分(B) | 合計(C) |
|---|---|---|---|
| 控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額⑥ | 62,400(③) + 0(④) ー 0 (⑤)= 62,400 | 624,000(③) + 0(④) -7,800(⑤) =616,200 | 62,400(A)+616,200(B)=678,600 |
❻ ⑦欄「特別控除税額」を記載する

この欄には、控除対象仕入税額とみなされる特別控除税額の金額を記載します。
この欄に記載する金額は、「控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額(⑥欄)×80%」で算出される額を記載します。
設例では、以下のような記載内容となっています。
| 区 分 | 税率6.24%適用分(A) | 税率7.8%適用分(B) | 合計(C) |
|---|---|---|---|
| 特別控除税額⑦ | 62,400円(⑥欄)×80% = 49,200円 | 678,600円(⑥欄)×80% = 492,960円 | 49,200円(A)+492,960円(B)=542,880円 |
ここが、「受け取った消費税額 × 80%」部分です。
STEP2 第二表を記載する

付表6が完成したら、次は申告書の第二表の作成を行います。
基本的には、付表6の内容を転記することで第二表の完成させることができます。
計算以外の内容に関する記載
❶ 納税地、名称又は屋号、代表者氏名又は氏名を記載する

納税地は原則、登記簿謄本に書かれているものを記入します。
法人の場合、「名称又は屋号」欄には、法人名を記入し、「代表者氏名又は氏名」には、代表者の氏名を記載します。なお、役職等は不要です。
個人事業者の場合は、名称又は屋号欄に「名称又は屋号」欄には、屋号を記入し、「代表者氏名又は氏名」には、事業主の本名を記載します。
❷ 課税期間を記載する

課税期間は、納付すべき消費税額の計算の基礎となる期間で、原則として、個人事業者の場合は、「暦年」(1月1日から12月31日まで)法人の場合、事業年度とされています。
和暦で、「自」には課税期間の開始年月日を、「至」には課税期間の終了年月日を、それぞれ記入します。
なお、インボイス開始に伴って年の途中から課税事業者となった場合であっても個人事業者は暦年、法人は事業年度を記載することになっています。
例題では、株式会社横浜総合商事の事業年度は、令和7年12月31日期ですので、「自 令和7年1月1日 至 令和7年12月31日」と記入しています。
❸ 申告書の種類を記載する

申告書が「確定申告書」であれば、「確定」とカッコ内に記入し、「修正申告書」であれば、「修正」と記入します。
例題では、「確定申告書」を作成しているため、「確定」と記入しています。
❹ ①欄「課税標準額」を記載する

①欄には、付表6のC列②欄の金額を転記します。

例題では、付表6のC列②欄の金額である、「9,000,000円」を①欄に記入しています。
➎ ⑤欄「課税資産の譲渡等の対価の額の合計額・6.24%適用分」を記載する

⑤欄には、付表6のA列②欄の金額を転記します

❻ ⑥欄「課税資産の譲渡等の対価の額の合計額・7.8%適用分」を記載する

⑥欄には、付表6のB列②欄の金額を転記します。

例題では、付表6のB列②欄の金額である、「8,000,000円」を⑥欄に記入しています。
⑦欄には、②欄から⑥欄の合計をした金額を記載します。
今回の例では、1,000,000(⑤欄) + 8,000,000(⑥欄) = 90,000,000を⑦欄に記載します。
❼ ⑪欄「消費税額」を記載する

⑪欄には、付表6のC列③欄の金額を転記します。

例題では、付表6のC列③欄の金額である、「686,400円」を⑪欄に記入しています。
❽ ⑮欄「⑪の内訳・6.24%適用分」を記載する

⑮欄には、付表6のA列③欄の金額を転記します。

❾ ⑯欄「⑪の内訳・7.8%適用分」を記載する

⑯欄には、付表6のB列③欄の金額を転記します。

例題では、付表6のB列③欄の金額である、「624,000円」を⑯欄に記入しています。
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