
法人税の別表4「所得の金額の計算に関する明細書」を手に取ってみると、加算や減算、留保や社外流出などよくわからない言葉が並び、大量の法人税用語が上から下まで敷き詰められています。
やはり、自力申告は無理か。税理士に依頼しよう。
そんな気になりますよね。
でも大丈夫です。
この記事では中小企業にとって要点を絞って的確に解説します。
中小企業はこの別表4のすべてを埋める必要はありません。
中小企業が書く箇所はだいたい決まっていますので安心してください。
そして別表4の作成は、パズルをはめ込む要領で特に頭を使わず必要な書類からの転記作業で完成します。
別表4を本当に理解しようとすると本当は難しいのですが、この記事のとおりにパズルをはめていけば意外に簡単にできますので安心してください。
別表4について税理士で元国税調査官の私が例え初めてでもわかりやすく解説していきます。
では始めていきましょう。
法人税の確定申告書の中で最も大事な別表は何か?と聞かれたら迷わずこう答えます。
「それは、間違いなく別表4だ!」と。
それはなぜか?
答えはシンプル。「税金の計算に直結する」からです。
その理由を説明します。
法人税額は次の算式で求めます。
所得金額 × 税率 = 法人税額
そして別表4の正式名称は、こういいます。
「所得の金額の計算に関する明細書」
そう、別表4は所得金額を計算して決定します。
所得金額に税率をかけて法人税額を算出すると言いました。
つまり、こういう関係が成り立ちます。
所得金額 大 税額 大
所得金額 小 税額 小
もっと言うと別表4を書き間違えるとたいていの場合税金の計算を間違うことになります。
これだけで別表4がいかに重要か理解いただけると思います。
ここで法人税の申告書作成を初めて行う人はこう思うかもしれません。
所得金額って何?
会社の利益に税率を掛けて税金を計算するじゃダメなの?
そうですよね。一番最初のところのなぜ別表4なんてものがあるかから解説を始めていきましょう。
この記事は次のような順番で解説して、別表4の役割、重要性をよく理解した上で、最終的には実際に別表4が書けるようになっていて確かめまでできるというところがゴールになっています。
別表4がなぜあるか? 所得金額をどう計算するか 実際に別表4をどう書くか 正しく書かれているか検算する
この記事では中小企業※1の法人税申告書の書き方に絞って解説していきます。
※1 この記事で中小企業という場合は、資本金(出資金)1億円以下の普通法人(資本金または出資金の額が5億円以上の法人等の100%子法人に該当する法人を除く)を指します。以下同じ
法人税法は大会社のための規定で複雑になっています。
中小企業に絞るととたんにシンプルになります。
法人税法が難しいとされる理由はここにあります。
私は中小企業の申告書を、税務署時代何百と見てきましたが、どの会社もだいだい同じでシンプルな申告がほとんどです。
その程度の申告書を税理士でなければ書けないということはまったくありません。
このような理由から日本の大多数を占める中小企業に的をしぼって別表4を解説していきます。
それでは別表4がなぜ必要かという点から始めていきましょう。
目次
1 別表4とは
別表4は、法人税の確定申告の中で法人税額を決定する最大要因である所得金額を算出するという重大な役割を担っているということを説明しました。
そもそも決算書で最終利益を算出しているのになぜ、その利益に税率をかけて税額を計算するのではなく、所得金額に税率をかけて法人税額を計算する必要があるのでしょうか?
ここからスタートしましょう。
1-1 なぜ別表4が必要なのか
なぜ別表4を用いて所得金額を算出する必要があるのか?
それは、当期利益を算出する決算書と所得金額を算出する確定申告書では、その作成目的がそもそも違うというところに起因しています。
決算書は企業会計原則をベースに作成されるものであり、確定申告書は法人税法を根拠に作成されるものです。
このようにそもそも両者は根拠としているものが違います。
両者の特徴を簡単な表にしてみます。
| 企業会計 | 法人税法 | |
|---|---|---|
| 作成する書類 | 決算書 | 確定申告書 |
| 主な目的 | 正しい経営成績と財産状態を開示すること | 課税の公平や適正な税負担の実現 |
このように両者は、その目的も違います。
決算書は、投資家や利益関係者などに向けて正しい経営成績と財産状態を開示する目的で作成されます。
一方、法人税の確定申告書は、課税の公平や適正な税負担を実現する目的で作成されます。
目的が違えば違う書類が作成されることは容易に想像できると思います。
これがために、法人税法で計算される法人税額は、決算書の当期利益をそのまま使うわけにはいかないのです。
そこで所得金額という課税ベースが登場するのです。
企業会計と法人税法の関係は、次のようになっています。
企業会計と法人税法の関係
法人税法は、確定した決算で算出された利益又は損失を基礎に所得金額を算出する
つまり
企業会計に基づき決算書作成
法人税法が決算書に手を加えて所得金額を算出
このように決算書が出来上がった後に法人税法がそれに手を加えて所得金額を計算し、それに税率をかけて法人税額を計算するというしくみになっているのです。
ここで別表4の登場です。
損益計算書で計算された利益(又は損失)を基礎に所得金額を算出するための法人税の申告書類が別表4(「所得の金額の計算に関する明細書」)なのです。
損益計算書で計算された利益(又は損失)から所得金額を算出するために別表4が必要というわけです。
1-2 どのように別表4で所得金額を算出するのか
別表4の立ち位置がわかったところで、続いて実際に別表4でどのように所得金額を算出するのかを具体的に見ていきましょう。
イメージ図を用意しました。
実際の別表4の様式にコメントを加えましたのでご覧ください。
別表4の先頭に損益計算書の税引後当期純利益を記入するところからスタートします。

別表4は、大まかに言うと、❶税引後当期純利益から始まって、❷「加算」欄に記載された金額の合計を❶に加算し、❸「減算」欄に記載された金額の合計を❶から差し引いて所得金額を計算します。
式で表現すると次のようになります。
❶税引後当期純利益 + ❷別表4の加算項目 ー ❸別表4の減算項目 = 所得金額
❷「加算」欄(加算項目)には次のような性質のものが記載されます。
| 加算項目 | 費用として認めない (損金不算入) | 収益として認める (益金算入) |
|---|
税引後当期純利益は最終的な会計上の利益ですが、それを計算する上で決算では費用とされているものも、法人税法ではそれを費用としては認めないということが起こります。
それは前述の両者の目的が違うためです。
法人税法は、適正に公平に課税したいという目的があるため、それを費用にしたら適正公平な課税ができないという場合には、会計上は費用となっていてもそれを費用としません。
具体例で考えてみましょう。
会計期間終了直近に利益を計算したら1,000,000でした。
でも税金を払いたくない。
そこで役員に賞与を1,000,000支給することに決めました。
そうすれば利益が0になり、税金も0です。
役員賞与を支給した場合と支給しなかった場合の法人税額を比較しながら計算してみます。
| 役員賞与なし | 役員賞与あり | |
|---|---|---|
| ①仮当期利益 | 1,000,000 | 1,000,000 |
| ②役員賞与 | 0 | 1,000,000 |
| ③所得金額(① – ②) | 1,000,000 | 0 |
| ④法人税額 (③ × 税率30%) | 300,000 | 0 |
役員賞与がある方は税額が0になります。
法人税法はこれを適正公平に課税ができないと判断します。
法人税法には事前に税務署に届出ていないで支給した賞与は費用として認めないという規定があるので、この1,000,000の役員賞与は法人税法上は費用として認められません。
法人税方では、この1,000,000は別表4で次のように当期利益に加算して調整を図ります。
| 企業会計 | |
|---|---|
| ①企業会計の当期純利益① | 0 |
| ②役員賞与の費用と認められない(損金不算入)額② | 1,000,000 |
| ③所得金額(① + ②) | 1,000,000 |
| ④法人税額(③ × 税率30%) | 300,000 |
加算項目には、このように費用として認めないというパターンと、決算書では収益と計上されていなかったけど収益とするというパターンもあります。
例えば、次の決算期に売上計上されているけど、法人税法的には今期の売上にすべきといったケースがこれです。
❸「減算」欄(減算項目)には次のような性質のものが記載されます。
| 減算項目 | 費用として認める (損金算入) | 収益として認めない (益金不算入) |
|---|
減算項目は加算で説明したことと反対です。
会計上は費用となっていなかったものを費用と認めるものと収益となっているものを収益として認めないという調整をここで行います。
例えば法人が配当を受け取ったら、会計上は収益となっていますが、法人税法上は収益と認めません。
配当は決算が終わった後の株主総会等で決定され、支払われます。
決算が終わっていると言うことは税額の計算も終わっていますので、法人税の納付が終わった後の最終利益から配当が支払われていると言えます。
それを受け取った法人の利益になってしまうとその利益にまた課税されるという二重課税の問題が出てくるため、法人が受け取った配当は当期利益から減算するという調整を行って適正公平の課税を担保するというしくみになっています。
この記事は別表4についてものですので、ここでは、損金や損金不算入という用語の解説はしませんが、詳しく知りたいと言う場合は次の記事で詳しく解説しています。
このように法人税法では、企業会計の決算で算出された当期利益をベースに法人税法の都合でその当期利益に加算や減算をして所得金額を算出するしくみになっています。
このような調整を別表4ですべて行うようになっているのです。
別表4の重要性と別表4で所得金額を算出するしくみを理解できたところで、法人税の確定申告をする上でどのように別表4を作成するのかという別表4の書き方をこれから解説していきます。
2 別表4の書き方
ここから別表4をどのように書いていくかを解説していきます。
これから別表4を書き上げるまで手取り足取りで解説していきますが、この時点でとても急いでいて、別表4の書き方を知らなくてもできあがっていればそれでいいという場合は、最速0秒で別表4を作成する方法をこの章の最後に紹介していますので、そちらに飛んでください。
2-4 最速0秒!別表4をかんたん高速に作成する方法へジャンプ
まず最初に別表4の記載例を見てしまいたいと思います。
別表4全体のイメージをまずは掴んでしまいましょう。
2-1 別表4の記載例
別表4には、様式が2種類あり、正規の別表4と簡易様式があります。
中小企業の場合は迷わず簡易様式を使用します。
この記載例も簡易様式を使用したものです。

全体のイメージを把握したところで、実際の別表4の書き方を詳しく見ていくことにしましょう。
2-2 別表4を書き上げるSTEP
具体的な書き方に入る前に別表4を書き上げるまでのSTEPを予め確認し、別表4を書き上げるまでの全体像を知っておきましょう。
別表4を書き上げるまでの4STEP
STEP1 事前に必要な書類を用意する
STEP2 STEP1で用意した書類の必要な値を別表4に転記する
STEP3 別表1、第6号様式、第20号様式を作成する
STEP4 別表4を仕上げる
法人税の確定申告書を書き上げる上で一番難しいのが実は、この別表4です。
このように一筋縄では作成できず、4STEP踏む必要があります。
STEP2で仮の別表4を完成させないと、法人税額を決定する別表1、そして地方税を決定する第6号様式と第20号様式を完成させられず、これらが完成し、税額が決定しないと別表4を完成させられないのです。
そんなことでこのように行ったり来たりする必要があります。
これだけ聞くとなんだか難しいと思うかもしれませんが、この記事を順に読んでいけば全く問題なく、難なくクリアできるので、ご安心ください。
別表4を書き上げるための全体像を理解できたところで、本題の別表4の書き方に入っていきましょう。
2-3 別表4の書き方
具体的な別表4の書き方の解説を始めていきます。
別表4を実際に書き始める前に、別表4の作成に必須の書類がありますので、それを用意する必要があります。
【STEP1】事前に必要な書類を用意する
事前に用意しておく必要のある書類は次の2種類です。
別表4作成前に必要な書類
- 損益計算書
- 別表5以降で自社で作成が必要な別表
一つ一つ確認していきましょう。
損益計算書を用意する
別表4は税引後当期純利益に法人税特有の加算項目を加算し、減算項目を減算して所得金額を求めるということは既に述べました。
ということはつまり、最初に税引後当期純利益の情報が必要です。
その情報はどこにあるのか?
損益計算書に載っています。
中間税額の処理や消費税の納付金額に関する仕訳もすべて済んでいるもの。
この状態の損益計算書がまだできていない場合は、まずは損益計算書を完成させることが先決です。
続いて事前に必要な書類2つ目です。
別表5以降で自社に必要な別表を用意する
別表4の加算項目や減算項目の多くは他の別表で計算してそれを参照することがほとんどであるため、別表5以降の別表は別表4作成前に完成させておく必要があります。
ただし、別表4もそうなのだが、別表5(1)と別表5(2)は別表1と地方税の確定申告書が書き上がらないとわからない部分があるので、その部分を除いて完成している状態にしておくこと。
また別表14(2)は別表4の途中まで計算が終わっていないと完成しないので、別表14(2)「寄附金の損金算入に関する明細書」は後回しにします。
別表5(1)以降の別表がまだ完成していないという場合は、先にそれらの書類を完成させてください。(別表5(1)、別表5(2)は途中のもの、別表14(2)は後回し)
この話を聞いて全然わからないという場合や別表4以前に法人税の申告書作成の手順が知りたいという方は、次の記事の「1-2 法人税確定申告書の作成手順を確認する」で詳しく解説しているのでそちらをご覧ください。
【STEP2】事前に用意した書類から転記する
事前に用意すべき書類が用意できたら、必要な値を別表4に転記していきます。
ここからが本番といってもいいのですが、パズルをはめこんでいくように解説していきますので、この手順通りに進めていただければ気づいたら完成しています。
別の書類から必要なバズルをとってきて、別表4にはめ込んでいく要領で進めていきます。
当期利益又は当期欠損の額を転記する(パズル)
❶ 「当期利益又は当期欠損の額」の総額①欄に転記する
まずは、損益計算書を用意して、損益計算書の税引後当期利益(又は損失)の値を別表4に下の図のように転記します。

上の図のように別表4の1ー①に記載します。
「1ー①」という表現は、「行1の①の列 = [当期利益又は当期欠損の額]行の[総額]列」を意味しています。以下このように表現していきます。
❷「配当」欄③に記入する
続いて当期中にその支払の効力が生じる配当があった場合1ー③にその金額を下の図のように記載します。

当期中にその支払の効力が生じる配当の金額は株主資本等変動計算書の「剰余金の配当」と一致します。
❸「留保②」欄に記入する
1ー②欄に[ 1ー① – 1ー③ ]という計算式で求めた値を記入します。
この例の場合は10,000,000 – 1,000,000 = 9,000,000
別表5(2)から転記する(パズル)
続いて別表5(2)を用意してください。
❶ 損金経理をした法人税等への転記
別表5(2)の当期分の中間の行の値を転記するのですが、その前提として次のことを遵守してください。
中間税額を支払った時の仕訳は、費用計上が原則。
仮払い処理は、処理が面倒になるのでやめよう。仮払い処理にメリットなし。
費用計上の仕訳例
| 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 法人税、住民税及び事業税 | 725,800 | 現金預金 | 725,800 |
この前提に基づいて別表5(2)を処理すると次の図のように各税目の中間分は⑤列に記載します。
この値を下の図のように別表4に記載します。

転記元(別表5(2)) | 転記先(別表4) |
|---|---|
| 法人税及び地方法人税の3ー⑤ | 損金経理をした法人税及び地方法人税 2 |
| 道具県民税の9ー⑤+市町村民税の13の⑤ | 損金経理をした道府県民税及び市町村民税 3 |
❷ 損金経理をした付帯税等への転記
別表5(2)の「その他」の「損金不算入のもの」の24〜27行の⑤列に記載された金額を別表4の「損金経理をした附帯税、加算金、延滞金及び過怠税 5」の①と③に転記します。

❸ 納税充当金から支出した事業税等の金額へ転記する
別表5(2)の「事業税及び特別法人事業税」の19行の③列に値がある場合は、その金額を別表4の13ー①と②に転記します。

減価償却超過額がある場合に別表16(1)、別表16(2)、別表16(8)から転記する(パズル)
❶「減価償却の償却超過額 6」欄への転記
減価償却費の償却超過額がある場合は、その金額を合計して別表4の「減価償却の償却超過額 6」の①②に転記します。
具体的には次の図のように別表16(1)、別表16(2)、別表16(8)から償却超過額を合計して転記します。

❷「減価償却超過額の当期認容額 12」欄への転記
減価償却超過額の当期認容額がある場合は、その金額を合計して別表4の「減価償却の償却超過額 12」の①②に転記します。
具体的には次の図のように別表16(1)、別表16(2)、別表16(8)から当期損金認容額を合計して転記します。

役員給与等の内訳書から転記する(パズル)
「役員給与等の内訳書」を用意します。
「役員給与等の内訳書」の上段「役員給与等の内訳」の「計」行の「その他」列に値がある場合は、別表4の「役員給与の損金不算入額 8」の①と③にその金額を次のように転記します。

別表15から転記する(パズル)
別表15の「損金不算入額 5」に値がある場合は、その金額を別表4の「交際費等の損金不算入額 8」の①と③に次のように転記します。

別表8(1)から転記する(パズル)
別表8(1)を作成し、受取配当等の益金不算入額を算出している場合は、別表8(1)の13又は26の値を別表4の「受取配当等の益金不算入額 14」の①と③に次のように転記します。

還付金額の受け入れ処理
還付金額を処理するにあたって、知っておくべき前提があります。
❶ 中間納付した金額が還付になった場合、または誤って納付し戻ってきた場合
中間税額が還付になった時は、「別表4作成の重要ポイント3」で述べたように次のように処理する方法が一番シンプルで簡単なのでこのように処理しましょう。
⑴ 確定申告書を作成して還付申告となったその決算期(X1期)では何もしない。
⑵ 還付申告書を提出した(還付金が税務署から入金になった)決算期(X2期)に次のような仕訳を登録します。
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税理士法人に勤めたばかりで、基本的に自分で問題は解決しなければならず
海野先生のHPにたどり着き、大変分かりやすく感謝申し上げます。
法人税の本も購入しましたが、結局は基本部分しか説明がなく、探している事例は説明がなく困っていました。
海野先生は細かく事例を使って説明して下さり、ほぼ自分が探していた事例を取り入れ
丁寧に説明があります。
今後もお世話になるかと思いますので、宜しくお願い申し上げます。