
法人税の別表4「所得の金額の計算に関する明細書」を手に取ってみると、加算や減算、留保や社外流出などよくわからない言葉が並び、大量の法人税用語が上から下まで敷き詰められています。
やはり、自力申告は無理か。税理士に依頼しよう。
そんな気になりますよね。
でも大丈夫です。
この記事では中小企業にとって要点を絞って的確に解説します。
中小企業はこの別表4のすべてを埋める必要はありません。
中小企業が書く箇所はだいたい決まっていますので安心してください。
そして別表4の作成は、パズルをはめ込む要領で特に頭を使わず必要な書類からの転記作業で完成します。
別表4を本当に理解しようとすると本当は難しいのですが、この記事のとおりにパズルをはめていけば意外に簡単にできますので安心してください。
別表4について税理士で元国税調査官の私が例え初めてでもわかりやすく解説していきます。
では始めていきましょう。
法人税の確定申告書の中で最も大事な別表は何か?と聞かれたら迷わずこう答えます。
「それは、間違いなく別表4だ!」と。
それはなぜか?
答えはシンプル。「税金の計算に直結する」からです。
その理由を説明します。
法人税額は次の算式で求めます。
所得金額 × 税率 = 法人税額
そして別表4の正式名称は、こういいます。
「所得の金額の計算に関する明細書」
そう、別表4は所得金額を計算して決定します。
所得金額に税率をかけて法人税額を算出すると言いました。
つまり、こういう関係が成り立ちます。
所得金額 大 税額 大
所得金額 小 税額 小
もっと言うと別表4を書き間違えるとたいていの場合税金の計算を間違うことになります。
これだけで別表4がいかに重要か理解いただけると思います。
ここで法人税の申告書作成を初めて行う人はこう思うかもしれません。
所得金額って何?
会社の利益に税率を掛けて税金を計算するじゃダメなの?
そうですよね。一番最初のところのなぜ別表4なんてものがあるかから解説を始めていきましょう。
この記事は次のような順番で解説して、別表4の役割、重要性をよく理解した上で、最終的には実際に別表4が書けるようになっていて確かめまでできるというところがゴールになっています。
別表4がなぜあるか? 所得金額をどう計算するか 実際に別表4をどう書くか 正しく書かれているか検算する
この記事では中小企業※1の法人税申告書の書き方に絞って解説していきます。
※1 この記事で中小企業という場合は、資本金(出資金)1億円以下の普通法人(資本金または出資金の額が5億円以上の法人等の100%子法人に該当する法人を除く)を指します。以下同じ
法人税法は大会社のための規定で複雑になっています。
中小企業に絞るととたんにシンプルになります。
法人税法が難しいとされる理由はここにあります。
私は中小企業の申告書を、税務署時代何百と見てきましたが、どの会社もだいだい同じでシンプルな申告がほとんどです。
その程度の申告書を税理士でなければ書けないということはまったくありません。
このような理由から日本の大多数を占める中小企業に的をしぼって別表4を解説していきます。
それでは別表4がなぜ必要かという点から始めていきましょう。
目次
1 別表4とは
別表4は、法人税の確定申告の中で法人税額を決定する最大要因である所得金額を算出するという重大な役割を担っているということを説明しました。
そもそも決算書で最終利益を算出しているのになぜ、その利益に税率をかけて税額を計算するのではなく、所得金額に税率をかけて法人税額を計算する必要があるのでしょうか?
ここからスタートしましょう。
1-1 なぜ別表4が必要なのか
なぜ別表4を用いて所得金額を算出する必要があるのか?
それは、当期利益を算出する決算書と所得金額を算出する確定申告書では、その作成目的がそもそも違うというところに起因しています。
決算書は企業会計原則をベースに作成されるものであり、確定申告書は法人税法を根拠に作成されるものです。
このようにそもそも両者は根拠としているものが違います。
両者の特徴を簡単な表にしてみます。
企業会計 | 法人税法 | |
---|---|---|
作成する書類 | 決算書 | 確定申告書 |
主な目的 | 正しい経営成績と財産状態を開示すること | 課税の公平や適正な税負担の実現 |
このように両者は、その目的も違います。
決算書は、投資家や利益関係者などに向けて正しい経営成績と財産状態を開示する目的で作成されます。
一方、法人税の確定申告書は、課税の公平や適正な税負担を実現する目的で作成されます。
目的が違えば違う書類が作成されることは容易に想像できると思います。
これがために、法人税法で計算される法人税額は、決算書の当期利益をそのまま使うわけにはいかないのです。
そこで所得金額という課税ベースが登場するのです。
企業会計と法人税法の関係は、次のようになっています。
企業会計と法人税法の関係
法人税法は、確定した決算で算出された利益又は損失を基礎に所得金額を算出する
つまり
企業会計に基づき決算書作成
法人税法が決算書に手を加えて所得金額を算出
このように決算書が出来上がった後に法人税法がそれに手を加えて所得金額を計算し、それに税率をかけて法人税額を計算するというしくみになっているのです。
ここで別表4の登場です。
損益計算書で計算された利益(又は損失)を基礎に所得金額を算出するための法人税の申告書類が別表4(「所得の金額の計算に関する明細書」)なのです。
損益計算書で計算された利益(又は損失)から所得金額を算出するために別表4が必要というわけです。
1-2 どのように別表4で所得金額を算出するのか
別表4の立ち位置がわかったところで、続いて実際に別表4でどのように所得金額を算出するのかを具体的に見ていきましょう。
イメージ図を用意しました。
実際の別表4の様式にコメントを加えましたのでご覧ください。
別表4の先頭に損益計算書の税引後当期純利益を記入するところからスタートします。
別表4は、大まかに言うと、❶税引後当期純利益から始まって、❷「加算」欄に記載された金額の合計を❶に加算し、❸「減算」欄に記載された金額の合計を❶から差し引いて所得金額を計算します。
式で表現すると次のようになります。
❶税引後当期純利益 + ❷別表4の加算項目 ー ❸別表4の減算項目 = 所得金額
❷「加算」欄(加算項目)には次のような性質のものが記載されます。
加算項目 | 費用として認めない (損金不算入) | 収益として認める (益金算入) |
---|
税引後当期純利益は最終的な会計上の利益ですが、それを計算する上で決算では費用とされているものも、法人税法ではそれを費用としては認めないということが起こります。
それは前述の両者の目的が違うためです。
法人税法は、適正に公平に課税したいという目的があるため、それを費用にしたら適正公平な課税ができないという場合には、会計上は費用となっていてもそれを費用としません。
具体例で考えてみましょう。
会計期間終了直近に利益を計算したら1,000,000でした。
でも税金を払いたくない。
そこで役員に賞与を1,000,000支給することに決めました。
そうすれば利益が0になり、税金も0です。
役員賞与を支給した場合と支給しなかった場合の法人税額を比較しながら計算してみます。
役員賞与なし | 役員賞与あり | |
---|---|---|
①仮当期利益 | 1,000,000 | 1,000,000 |
②役員賞与 | 0 | 1,000,000 |
③所得金額(① – ②) | 1,000,000 | 0 |
④法人税額 (③ × 税率30%) | 300,000 | 0 |
役員賞与がある方は税額が0になります。
法人税法はこれを適正公平に課税ができないと判断します。
法人税法には事前に税務署に届出ていないで支給した賞与は費用として認めないという規定があるので、この1,000,000の役員賞与は法人税法上は費用として認められません。
法人税方では、この1,000,000は別表4で次のように当期利益に加算して調整を図ります。
企業会計 | |
---|---|
①企業会計の当期純利益① | 0 |
②役員賞与の費用と認められない(損金不算入)額② | 1,000,000 |
③所得金額(① + ②) | 1,000,000 |
④法人税額(③ × 税率30%) | 300,000 |
加算項目には、このように費用として認めないというパターンと、決算書では収益と計上されていなかったけど収益とするというパターンもあります。
例えば、次の決算期に売上計上されているけど、法人税法的には今期の売上にすべきといったケースがこれです。
❸「減算」欄(減算項目)には次のような性質のものが記載されます。
減算項目 | 費用として認める (損金算入) | 収益として認めない (益金不算入) |
---|
減算項目は加算で説明したことと反対です。
会計上は費用となっていなかったものを費用と認めるものと収益となっているものを収益として認めないという調整をここで行います。
例えば法人が配当を受け取ったら、会計上は収益となっていますが、法人税法上は収益と認めません。
配当は決算が終わった後の株主総会等で決定され、支払われます。
決算が終わっていると言うことは税額の計算も終わっていますので、法人税の納付が終わった後の最終利益から配当が支払われていると言えます。
それを受け取った法人の利益になってしまうとその利益にまた課税されるという二重課税の問題が出てくるため、法人が受け取った配当は当期利益から減算するという調整を行って適正公平の課税を担保するというしくみになっています。
この記事は別表4についてものですので、ここでは、損金や損金不算入という用語の解説はしませんが、詳しく知りたいと言う場合は次の記事で詳しく解説しています。
このように法人税法では、企業会計の決算で算出された当期利益をベースに法人税法の都合でその当期利益に加算や減算をして所得金額を算出するしくみになっています。
このような調整を別表4ですべて行うようになっているのです。
別表4の重要性と別表4で所得金額を算出するしくみを理解できたところで、法人税の確定申告をする上でどのように別表4を作成するのかという別表4の書き方をこれから解説していきます。
2 別表4の書き方
ここから別表4をどのように書いていくかを解説していきます。
これから別表4を書き上げるまで手取り足取りで解説していきますが、この時点でとても急いでいて、別表4の書き方を知らなくてもできあがっていればそれでいいという場合は、最速0秒で別表4を作成する方法をこの章の最後に紹介していますので、そちらに飛んでください。
2-4 最速0秒!別表4をかんたん高速に作成する方法へジャンプ
まず最初に別表4の記載例を見てしまいたいと思います。
別表4全体のイメージをまずは掴んでしまいましょう。
2-1 別表4の記載例
別表4には、様式が2種類あり、正規の別表4と簡易様式があります。
中小企業の場合は迷わず簡易様式を使用します。
この記載例も簡易様式を使用したものです。
全体のイメージを把握したところで、実際の別表4の書き方を詳しく見ていくことにしましょう。
2-2 別表4を書き上げるSTEP
具体的な書き方に入る前に別表4を書き上げるまでのSTEPを予め確認し、別表4を書き上げるまでの全体像を知っておきましょう。
別表4を書き上げるまでの4STEP
STEP1 事前に必要な書類を用意する
STEP2 STEP1で用意した書類の必要な値を別表4に転記する
STEP3 別表1、第6号様式、第20号様式を作成する
STEP4 別表4を仕上げる
法人税の確定申告書を書き上げる上で一番難しいのが実は、この別表4です。
このように一筋縄では作成できず、4STEP踏む必要があります。
STEP2で仮の別表4を完成させないと、法人税額を決定する別表1、そして地方税を決定する第6号様式と第20号様式を完成させられず、これらが完成し、税額が決定しないと別表4を完成させられないのです。
そんなことでこのように行ったり来たりする必要があります。
これだけ聞くとなんだか難しいと思うかもしれませんが、この記事を順に読んでいけば全く問題なく、難なくクリアできるので、ご安心ください。
別表4を書き上げるための全体像を理解できたところで、本題の別表4の書き方に入っていきましょう。
2-3 別表4の書き方
具体的な別表4の書き方の解説を始めていきます。
別表4を実際に書き始める前に、別表4の作成に必須の書類がありますので、それを用意する必要があります。
【STEP1】事前に必要な書類を用意する
事前に用意しておく必要のある書類は次の2種類です。
別表4作成前に必要な書類
- 損益計算書
- 別表5以降で自社で作成が必要な別表
一つ一つ確認していきましょう。
損益計算書を用意する
別表4は税引後当期純利益に法人税特有の加算項目を加算し、減算項目を減算して所得金額を求めるということは既に述べました。
ということはつまり、最初に税引後当期純利益の情報が必要です。
その情報はどこにあるのか?
損益計算書に載っています。
中間税額の処理や消費税の納付金額に関する仕訳もすべて済んでいるもの。
この状態の損益計算書がまだできていない場合は、まずは損益計算書を完成させることが先決です。
続いて事前に必要な書類2つ目です。
別表5以降で自社に必要な別表を用意する
別表4の加算項目や減算項目の多くは他の別表で計算してそれを参照することがほとんどであるため、別表5以降の別表は別表4作成前に完成させておく必要があります。
ただし、別表4もそうなのだが、別表5(1)と別表5(2)は別表1と地方税の確定申告書が書き上がらないとわからない部分があるので、その部分を除いて完成している状態にしておくこと。
また別表14(2)は別表4の途中まで計算が終わっていないと完成しないので、別表14(2)「寄附金の損金算入に関する明細書」は後回しにします。
別表5(1)以降の別表がまだ完成していないという場合は、先にそれらの書類を完成させてください。(別表5(1)、別表5(2)は途中のもの、別表14(2)は後回し)
この話を聞いて全然わからないという場合や別表4以前に法人税の申告書作成の手順が知りたいという方は、次の記事の「1-2 法人税確定申告書の作成手順を確認する」で詳しく解説しているのでそちらをご覧ください。
【STEP2】事前に用意した書類から転記する
事前に用意すべき書類が用意できたら、必要な値を別表4に転記していきます。
ここからが本番といってもいいのですが、パズルをはめこんでいくように解説していきますので、この手順通りに進めていただければ気づいたら完成しています。
別の書類から必要なバズルをとってきて、別表4にはめ込んでいく要領で進めていきます。
当期利益又は当期欠損の額を転記する(パズル)
❶ 「当期利益又は当期欠損の額」の総額①欄に転記する
まずは、損益計算書を用意して、損益計算書の税引後当期利益(又は損失)の値を別表4に下の図のように転記します。
上の図のように別表4の1ー①に記載します。
「1ー①」という表現は、「行1の①の列 = [当期利益又は当期欠損の額]行の[総額]列」を意味しています。以下このように表現していきます。
❷「配当」欄③に記入する
続いて当期中にその支払の効力が生じる配当があった場合1ー③にその金額を下の図のように記載します。
当期中にその支払の効力が生じる配当の金額は株主資本等変動計算書の「剰余金の配当」と一致します。
❸「留保②」欄に記入する
1ー②欄に[ 1ー① – 1ー③ ]という計算式で求めた値を記入します。
この例の場合は10,000,000 – 1,000,000 = 9,000,000
別表5(2)から転記する(パズル)
続いて別表5(2)を用意してください。
❶ 損金経理をした法人税等への転記
別表5(2)の当期分の中間の行の値を転記するのですが、その前提として次のことを遵守してください。
中間税額を支払った時の仕訳は、費用計上が原則。
仮払い処理は、処理が面倒になるのでやめよう。仮払い処理にメリットなし。
費用計上の仕訳例
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
法人税、住民税及び事業税 | 725,800 | 現金預金 | 725,800 |
この前提に基づいて別表5(2)を処理すると次の図のように各税目の中間分は⑤列に記載します。
この値を下の図のように別表4に記載します。
転記元(別表5(2)) | 転記先(別表4) |
---|---|
法人税及び地方法人税の3ー⑤ | 損金経理をした法人税及び地方法人税 2 |
道具県民税の9ー⑤+市町村民税の13の⑤ | 損金経理をした道府県民税及び市町村民税 3 |
❷ 損金経理をした付帯税等への転記
別表5(2)の「その他」の「損金不算入のもの」の24〜27行の⑤列に記載された金額を別表4の「損金経理をした附帯税、加算金、延滞金及び過怠税 5」の①と③に転記します。
❸ 納税充当金から支出した事業税等の金額へ転記する
別表5(2)の「事業税及び特別法人事業税」の19行の③列に値がある場合は、その金額を別表4の13ー①と②に転記します。
減価償却超過額がある場合に別表16(1)、別表16(2)、別表16(8)から転記する(パズル)
❶「減価償却の償却超過額 6」欄への転記
減価償却費の償却超過額がある場合は、その金額を合計して別表4の「減価償却の償却超過額 6」の①②に転記します。
具体的には次の図のように別表16(1)、別表16(2)、別表16(8)から償却超過額を合計して転記します。
❷「減価償却超過額の当期認容額 12」欄への転記
減価償却超過額の当期認容額がある場合は、その金額を合計して別表4の「減価償却の償却超過額 12」の①②に転記します。
具体的には次の図のように別表16(1)、別表16(2)、別表16(8)から当期損金認容額を合計して転記します。
役員給与等の内訳書から転記する(パズル)
「役員給与等の内訳書」を用意します。
「役員給与等の内訳書」の上段「役員給与等の内訳」の「計」行の「その他」列に値がある場合は、別表4の「役員給与の損金不算入額 8」の①と③にその金額を次のように転記します。
別表15から転記する(パズル)
別表15の「損金不算入額 5」に値がある場合は、その金額を別表4の「交際費等の損金不算入額 8」の①と③に次のように転記します。
別表8(1)から転記する(パズル)
別表8(1)を作成し、受取配当等の益金不算入額を算出している場合は、別表8(1)の13又は26の値を別表4の「受取配当等の益金不算入額 14」の①と③に次のように転記します。
還付金額の受け入れ処理
還付金額を処理するにあたって、知っておくべき前提があります。
❶ 中間納付した金額が還付になった場合、または誤って納付し戻ってきた場合
中間税額が還付になった時は、「別表4作成の重要ポイント3」で述べたように次のように処理する方法が一番シンプルで簡単なのでこのように処理しましょう。
⑴ 確定申告書を作成して還付申告となったその決算期(X1期)では何もしない。
⑵ 還付申告書を提出した(還付金が税務署から入金になった)決算期(X2期)に次のような仕訳を登録します。
取引年月日 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
還付の申告書を提出した日 | 未収入金 | 100,000 | 雑収入 | 100,000 |
還付金を収益に計上した日の属する決算期では、法人税、地方法人税、道府県民税と市町村民税の還付金額の合計額を別表4の「法人税等の中間納付額及び過誤納に係る還付金額 18」の①②に記入します。
【注意点】
18ー①②に記入する金額には事業税と特別法人事業税の還付金は含まないことに注意!
なお、別表5(1)では次のように処理されています。
❷所得税額控除で還付になった場合または欠損金の繰戻しで還付になった場合
所得税額控除で還付になった場合または欠損金の繰戻しで還付になった場合は、「別表4作成の重要ポイント3」で述べたように次のように処理する方法が一番シンプルで簡単ですのでこのように処理しましょう。
⑴ 確定申告書を作成して還付申告となったその決算期(X1期)では何もしない。
⑵ 還付申告書を提出した(還付金が税務署から入金になった)決算期(X2期)に次のような仕訳を登録します。
取引年月日 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
還付の申告書を提出した日 | 未収入金 | 500,000 | 雑収入 | 500,000 |
還付金を収益に計上した日の属する決算期では、(2)のように還付金を処理した金額を別表4の「所得税額等及び欠損金の繰戻しによる還付金額等 19」の①③に記入します。
予め別表4に記載されてる項目以外の加算減算を記入する
加算項目と減算項目に予め印字されている中小企業で使用するものについては、すべて説明しました。
これ以外にも別表4で加算したり減算する必要のあるものがあります。
そういう場合は、加算項目と減算項目の空いている行に追記していきます。
例えば、税務調査で売上計上漏れ1,500,000円と売上に対応する仕入500,000が計上漏れとなっていることがわかり、修正申告する場合次のように記載します。
仮計を算出する
別表4の加算項目と減算項目をすべて埋めたら、次は「仮計 22」行の①〜③を計算します。
次の計算を①〜③の列に対してそれぞれ行います。
⑴加算項目の2から11の直前の行までの縦の列の合計を行い「小計 11」行に記載する。
⑵減算項目の12から21の直前の行までの縦の列の合計を行い「小計 21」行に記載する。
⑶「当期利益又は当期の欠損の額 1」+ 「小計 11」 ー 「小計21」 = 「仮計 22」
中小企業では、23と24の行は通常はいらないので、22の①②③の値をそのまま25の①②③に記入します。
【注意点】
社外流出③列だけは、2段書きになるケースがあります。
③列の※印の金額は仮計では外書で集計することになっています。
今回の例では14ー③で※100,000となっています。
※印がついた金額は※の数字同士で合算し、外※欄に記載します。
※印がついている行はすべて減算にありますので、今回の例では△100,000とします。
※以外の数字を加減算して22−③の本書きとして記載します。
留保と社外流出とは
別表4には①「総額」②「留保」③「社外流出」と縦に3つの列があります。
①「総額」で所得金額を計算します。中小企業ではこれが最も重要な列です。
②「留保」は、文字どおり社内に留保された金額を記載し、最終的に当期に発生した利益積立金額が算出されます。
この利益積立金額は、特定同族会社の留保金課税をする際に必要になる数字ですが、留保金課税は中小企業には無関係です。
裏を返すと②は、中小企業にはあんまり関係ない列と言っても過言ではありません。
③「社外流出③」は、留保以外所得の金額が社内にとどまることなく減少することを意味します。
交際費等の損金不算入額が良い例です。交際費等の損金不算入額は所得金額は増えますが、法人内にお金は残りません。
中小企業の場合は、別表4の①から③については、これほどの理解で十分です。
別表4は①列が最も大切だということを理解してください。
別表14(2)から転記する(パズル)
税務上の寄附金の支出があり、別表14(2)を作成している場合は、別表14(2)の24または40の値を別表4の27ー①と③に転記します。
なお、別表14(2)の7は、別表4の25の値が入りますので、別表4のこの値を算出するまで別表14(2)を作成することはできません。
別表6(1)から転記する(パズル)
所得税額控除を適用するために別表6(1)を作成している場合は、別表6(1)の6ー③の値を別表4の29ー①と③に転記します。
併せて別表5(2)の「損金不算入のもの」の行に「源泉所得税等」と記載し、②と⑤に別表6(1)の6ー③の値を記載します。
この部分を効率的に処理する上でまた重要な原則があります。
源泉所得税の天引きされたときの仕訳は次のように費用計上します。
これが最もシンプルで簡単な処理方法であるためこのように処理されていることを前提に解説しています。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
法人税、住民税及び事業税 | 60,000 | 受取配当金 | 60,000 |
なお、源泉所得税の中で所得税額控除の対象とならなかった金額については、別表5(2)の損金算入のものの行に追加します。
合計、差引計を計算する
❶「合計 34」行の値を仮計を計算した要領で、①〜③列について、[ 25 + 27 + 29 + 30 + 31 ]と縦の合計した結果をそれぞれ記載します。
❷「差引計 39」行の①〜③列について、[ 34 + 35 + 37 + 38 ]と縦の合計した結果をそれぞれ記載します。
別表7(1)から転記する(パズル)
別表7(1)の「計」行の4列(当期控除額の合計)に値がある場合は、別表4の40ー①と③に転記します。
総計、所得金額を計算する
❶「総計 41」行の①〜③列について、[ 39 + 40 ]の計算をした結果をそれぞれの列に記載します。
❷「所得金額又は欠損金額 48」行の①〜③列について、[ 41 + 42 + 47 ]の計算をした結果をそれぞれの列に記載します。
一旦ここで別表4の作成は終わります。
別表4の48ー①が算出されたことにより別表1の作成が可能になりますので、次に法人税額と地方法人税額を求めていきます。
【STEP3】法人税と地方税の当期の確定税額を求める
別表4を完成させるためには、法人税と地方税の確定申告書で納付すべき税額を算出する必要があります。
まず別表1から作成し、法人税と地方法人税の金額を確定させます。
この記事は別表4に関するものであるため、別表1については、記載例を示すだけにとどめます。
当期納付すべき法人税と地方法人税を求める
今回の例で別表1を作成すると次のようになります。
別表1記載例
この例では当期に納付すべき法人税額が1,990,700、地方法人税額が210,000の合計あることがわかりました。
別表1が完成すると今度は地方税の確定申告書を完成させることができます。
当期納付すべき道府県民税と事業税を求める
別表1が完成すると法人の道府県民税と事業税の確定申告書である第6号様式を作成することができます。
第6号様式を作成して当期納付すべき道府県民税と事業税の額を確定させます。
ここでも第6号様式の記載例を示すにとどめます。
今回の例で第6号様式を作成すると次のようになります。
第6号様式記載例
この例では、道府県民税が25,300、事業税が820,700、特別法人事業税が303,600であることがわかりました。
続いて市町村民税を確定させます。
当期納付すべき市町村民税を求める
別表1が完成すると法人の市町村民税の確定申告書である第20号様式を作成することができます。
第20号様式を作成して当期納付すべき市町村民税の金額を確定させます。
ここでも第20号様式の記載例を示すにとどめます。
今回の例で第20号様式を作成すると次のようになります。
今回の例では、市町村民税が147,300であることがわかりました。
別表1、6号様式、20号様式を作成したことにより、把握できた税額をまとめてみましょう。
税目 | 当期納付すべき金額 |
---|---|
法人税と地方法人税 | 2,200,700 |
道府県民税 | 25,300 |
事業税と特別法人事業税 | 1,124,300 |
市町村民税 | 147,300 |
合計 | 3,497,600 |
未払法人税等の仕訳を登録する
当期の確定申告で納付すべき金額がわかりましたので、次のような仕訳を決算期末の日付で最後に登録します。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
法人税、住民税及び事業税 | 2,200,700 | 未払法人税等 | 2,200,700 | 法人税と地方法人税 |
法人税、住民税及び事業税 | 1,149,600 | 未払法人税等 | 1,149,600 | 道府県民税と事業税 |
法人税、住民税及び事業税 | 147,300 | 未払法人税等 | 147,300 | 市町村民税 |
この仕訳を登録することにより損益計算書が完成します。
【STEP4】別表4を仕上げる
「当期利益又は当期欠損の額」を修正する
⑴ 未払法人税等の仕訳を追加したことにより、決算書の税引後当期純利益の金額が変わりましたので、別表4の「当期利益又は当期欠損の額 1」の①を次の図のように変更します。
⑵ 次に配当が1,000,000ありますので、1ー②の値を[ 6,502,400 – 1,000,000 ]という算式で求めた金額5,502,400に修正します。
「損金経理をした納税充当金」を記載する
法人税、住民税及び事業税 3,497,600 / 未払法人税等 3,497,600 という仕訳を最後に追加し、決算に反映させました。
この金額を別表4の4ー①と②に記入します。
損金経理とは、「確定した決算に費用として計上してある」という意味です。
また、納税充当金とは、「未払法人税等」を意味します。
つまり、「損金経理した納税充当金」とは、決算書に費用として計上された未払法人税等ということを意味します。
次の仕訳を登録したので、その金額は「損金経理した納税充当金」行に入ることになります。
法人税、住民税及び事業税 3,497,600 / 未払法人税等 3,497,600
これで別表4に記載すべき事項をすべて記載しました。
最後に記載例を見て、全体を確認しましょう。
完成形の別表4の記載例
ここまでで別表4の書き方についての解説は終了です。
国税庁から別表4の記載方法の解説が公表されていますので、紹介しておきます。
「令和3年版 法人税申告書・地方法人税申告書の記載の手引 別表4 国税庁」
ここまで別表4を書いてきて転記作業が非常に多かったと思います。
別表4の書き方の解説の最後に、別表4の各項目はどこから転記してくるのかを早見表でもう一度整理しておきましょう。
2-3 別表4への転記早見表
別表4を作成するのは基本的には一年に一回の作業になるので、どこから転記してくるかを忘れてしまうことも多いと思います。
忘れてしまった場合は、この早見表で確認しましょう。
転記先(別表4)の区分 | 区分 | 転記元 |
---|---|---|
当期利益又は当期欠損の額 | 1ー① | 損益計算書の税引後当期利益 |
当期利益又は当期欠損の額の配当 | 1ー③ | 株主資本等変動計算書の剰余金の配当 |
損金経理をした法人税及び地方法人税 | 2ー①② | 別表5(2) 5ー⑤ |
損金経理をした道府県民税及市町村民税 | 3ー①② | 別表5(2) 10ー⑤ + 15ー⑤ |
損金経理をした納税充当金 | 4ー①② | 仕訳帳 当期に未払法人税等を費用計上した金額(別表5(2) 31) |
損金経理をした附帯税、加算金、延滞金及び過怠税 | 5ー①③ | 別表5(2) 24ー⑤〜27ー⑤の合計 |
減価償却の償却超過額 | 6ー①② | 別表16(1) 37の合計 + 別表16(2) 41の合計 + 別表16(7) 7の合計 |
役員給与の損金不算入額 | 7ー①③ | 役員給与等の内訳書 [計]ー[その他] |
交際費等の損金不算入額 | 8ー①③ | 別表15ー5 |
減価償却超過額の当期認容額 | 12ー①② | 別表16(1) 39•40の合計 + 別表16(2)33•44の合計 + 別表16(7) 9の合計 |
納税充当金から支出した事業税等の金額 | 13ー①② | 別表5(2) 19ー③ |
受取配当等の益金不算入額 | 14ー①③ | 別表8(1) 13又は26 |
法人税等の中間納付額及び過誤納に係る還付金額 | 18ー①② | 別表5(1) 未収還付法人税・道府県民税・市町村民税の②列の合計 |
寄附金の損金不算入額 | 27ー①③ | 別表14(2) 24又は40 |
法人税額から控除される所得税額 | 28ー①③ | 別表6(1) 6ー③ |
欠損金又は災害損失金等の当期控除額 | 40ー①③ | 別表7(1) [計]ー4 |
ここまで別表4の書き方を初心者でも理解できるようあの手この手でわかりやすく解説してきました。
別表4を書くのが難しいということはなくても、色々な書類から転記しなければならなくて面倒だったり、転記ミスの心配があったり、1年に1度しかやらない作業なので、書き方を忘れてしまってまた1からやり直しなんてことも十分あり得るのではないでしょうか。
ここで別表4を簡単に効率的に作成する方法を紹介します。
2-4 最速0秒!別表4をかんたん高速に作成する方法
別表4の書き方で、どの書類から別表4のどこに転記するかを図解付きで丁寧に解説してきました。
このような別表4を作成する上で必要な知識が不要で、別表4に必要な調整を自動で行ってくれて、気づいたら別表4が完成しているという方法がありますので、それをここで紹介します。
それは、無料で使える法人税の知識不要のクラウド税務ソフト「全力法人税」を使う方法です。
例を出してその効率性を説明します。
例えば、別表4の「役員給与の損金不算入額」欄への転記は、全力法人税で画面の案内にしたがって入力していくと自動的に行われています。
交際費等の損金不算入額の例も見てみましょう。
所定の画面で、交際費に該当する科目と支出額を入力しただけで別表15の計算が終了し、かつ別表4の転記も終わっています。
このように全力法人税で画面の案内にしたがって入力していくと、別表4はほぼ何もせずに完成しています。
全力法人税を利用して別表4を作成した場合と手書きで作成した場合を比較してみたいと思います。
例えば次の別表4を作成するのに手書きでは何箇所書く必要があり、全力法人税では何箇所入力の必要があるか比較して意味ます。
手書きだと51箇所で、全力法人税では、なんと1箇所です。これだけでも約50倍効率的です。
別表4の作成を手書きでした場合と全力法人税でした場合の比較表
手書き | 全力法人税 | |
---|---|---|
申告書の書き方の知識 | いる | いらない |
直上の別表4の手書き又は入力箇所 | 50 | 1 |
作成時間※ | 初心者で60分 | 最速0分 (何も入力する必要がないケース←中小企業はほぼこれ) |
転記ミスの可能性 | あり | なし |
申告書の見た目 | 字による | 印字 → 整然としている |
価格 | 無料 | 無料 ただしすべての申告書類を出力したい場合 年間10,000円+税(初年度19,620円+税) |
電子申告 | できない | できる |
※別表4を作成するのに必要な書類はすべて揃っていて、そこから別表4の作成を開始するケースを想定
全力法人税を使用すると、別表4だけでなく法人税、地方税の確定申告書、そして申告に必要な勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書も法人税の知識入らずでどんどん出来上がっていきます。
このように全力法人税は、法人税の知識がなくてもかんたんに法人税の申告書が作成できるをコンセプトとしたソフトです。
これまでアカウントの登録数は17,000を超えています。
元国税調査官・税理士が監修しており、お客様レビューでの高評価数550件越えで信用できます。
全力法人税は、かなりの高機能にもかかわらず一部の申告書類の出力を除いてすべての機能を無料で利用できます。
これほど高機能で無料で利用できるものを他に知りません。(有料と無料によって出力できる書類についてはこちら)
全力法人税は、弥生会計、弥生オンライン、MFクラウド会計、会計王、freeeの会計データをインポートできるので、さらに入力箇所を少なくでき、法人税の申告書だけでなく、地方税の確定申告書、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書、消費税の申告も簡単にしかも早く正確に作成することが可能です。
2年目以降は前年度のデータも繰り越せるので、さらに作成効率が上がり、作成時間も減ります。
全力法人税で別表4を印刷するために出力する場合には、料金が必要ですが、次のように画面上で無料で確認できますので、コストをかけずに法人税の申告書を作成したいという方でも、全力法人税の無料利用で申告書作成作業を相当効率化させることができます。
全力法人税を手書きと併用させることでコストをかけずに転記漏れ等なく正確性も担保できます。
利用自体は無料ですのでこのような申告書作成支援ソフトを一度試してみても損はないと思います。
別表4の書き方、効率的に作成する方法を解説してきました。
別表4と別表5での転記が時に多かったと思います。
正しく転記されているか、転記漏れの不安が生じるかもしれません。
そこで、別表4と別表5のつながりを整理し、見直し作業もしやすくしていきたいと思います。
3 別表4と別表5のつながり
別表4、別表5(1)と別表5(2)という別表は必ず作成が必要な書類で、この3者間の転記作業は多岐に渡るので、別表4、別表5(1)と別表5(2)のつながりを整理しておきましょう。
3-1 別表4と別表5(2)の関係
まずは別表4と別表5(2)のつながりを確認しましょう。
別表4と別表5(2)のつながりを図解すると次のようになります。
別表5(2)から別表4へ転記すべき値を表にすると次のようになります。
【転記先】別表4 | 【転記元】別表5(2) | |
---|---|---|
❶ | 損金経理をした法人税及び地方法人税(2) | 5行目ー⑤列 |
❷ | 損金経理をした道府県民税及び市町村民税(3) | 10行目ー⑤列の値 + 15行目ー⑤列の値 |
❸ | 損金経理をした附帯税及び過怠税(4) | 24行目〜29行目の⑤列の値の合計 |
❹ | 納税充当金から支出した事業税等の金額(13) | 19行目ー③の値 |
❺ | 法人税額から控除される所得税(29) | 「その他」>「損金不算入のもの」(28)または(29)欄に「源泉所得税等」があった場合②列の値 |
❻ | 損金経理をした納税充当金(4) | 「繰入額」>「損金経理をした納税充当金(31)」欄 |
3-2 別表4と別表5(1)の関係
別表5(1)の名称が「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」であるように、別表5(1)は利益積立金額を計算することが主な目的です。
別表4の②の列は当期発生した利益積立金額を計算する箇所となっていることからこの部分が別表5(1)とつながってきます。
したがって別表4の②列にある金額はすべて別表5(1)のどこかに反映されている必要があります。
別表4に予め記載されている行は自動的に別表5(1)に反映されるように構成されていますので、基本的には気を使うのは自分で別表4に追加した項目になります。
それと減価償却の償却超過額(6)と減価償却超過額の当期認容額(12)は自分で別表5(1)に追加する必要あります。
具体的に次の図で確認しましょう。
このように別表4の「減価償却の償却超過額」と「減価償却超過額の当期認容額」の金額を②列に記入したときと加算項目と減算項目の行に新たに項目を追加して②列に記入したときは、必ず別表5(1)に対応する項目を追加して別表4で加算項目となっている場合は増③の列にその金額を記載し、減算項目となっている場合は、減②の列に(又は増③の列に△(マイナスという意味)をつけて)その金額を記載します。
別表4で留保②の列に金額が入るのは、会社に金銭など何らかの形で資産として残っている場合です。
例えば、売上の計上が漏れていたというケースで次の2つのケースで考えてみましょう。
①相手勘定科目が売掛金だった場合
②すでに使ってしまって会社にない場合
①は売掛金として会社にあるので、留保②の列にその金額を書きます。
②はすでに消費されており、会社に資産として残っていないので社外流出③の列にその金額を書きます。
別表4と別表5のつながりを解説しました。
別表4と別表5(1)、別表4と別表5(2)はかなり有機的につながっているということが理解いただけたと思います。
今回図解で解説した部分を中心に別表4と別表5との間の転記が正しく行われているかを見直してもらいたいと思います。
ただ、これほどたくさん転記作業を行うとつながりを理解したとしても正しく転記されているか不安が払拭できないかもしれません。
実は、別の視点から別表4と別表5(1)のつながりが正しいものかどうかを検算する方法が公されていますので、その方法を最後に紹介したいと思います。
別表4と別表5(1)を検算する
実は、別表5(1)の左端に検算方法が記載されています。
次の式で別表4と別表5(1)を検算します。
別表4の48-② + 別表5(1)の31-① + (別表5(1)の28-③ + 29-③ + 30-③) = 別表5(1)の31-④
この検算によって、❶別表4と別表5(1)のつながりが正しいかと❷別表4は損益計算書から、別表5(1)は貸借対照表から転記するものがありますので、決算書と別表4・別表5(1)との整合性という2つを同時に確認することができます。
この検算によってこの特に重要な2つの整合性を確認することができるので、転記の多い別表4、別表5(1)、決算書の整合性を必ず最後に確認しましょう。
なお、詳しい別表4と別表5(1)に関する検算の方法を具体例を用いて次の記事で解説していますので、実際にどのように検算を行うかを知りたい場合はこちらをご覧ください。
4 別表4のまとめ
いかがだったでしょうか。
別表4の役割と、別表4の書き方、そして検算方法を理解でき、初心者だった方も別表4マスターになれたのではないでしょうか。
別表4についてかなりのことが理解できたと思います。
ここで記事の内容を少し振り返ってみましょう。
- ⑴ 別表4は、企業会計に基づいて作成された決算書の利益から、法人税法の規定に基づいて加算や減算を加えて所得金額を算出するための書類でした。
- ⑵ 別表4には、それ単体では作成することができず、4STEPを踏んで作成するものでした。
- ⑶ 別表4を作成するには、他の別表やその他の関係書類の多くを作成済みにしておく必要がありました。
- ⑷ 別表4は⑶で用意した書類をパズルをはめこむように転記していく作業が中心でした。
- ⑸ 無料の申告書作成ソフトを使うと正確性を担保しつつ別表4が一瞬でできるのでこのような方法を活用する手もある。
- ⑹ 別表4の別表5のつながりを理解して転記もれがないかを確認できるようにしました。
- ⑺ 別表4と別表5(1)を検算することで、決算書と申告書の整合性を確認することもできました。
今回は、あえて中小企業に的を絞ることにより、シンプルな解説に徹することができました。
それによりかなり理解しやすかったと思います。
中小企業であれば、このような解説を読みながら申告書作成作業を行えば、法人税のことをよく知らなくても、十分自力申告が可能です。
そして効率的に進めることも可能です。
全力経理部の法人税の書き方の記事を読みながら、最短距離で自力申告をやり遂げてもらえると、たいへん嬉しく思います。1
税理士法人に勤めたばかりで、基本的に自分で問題は解決しなければならず
海野先生のHPにたどり着き、大変分かりやすく感謝申し上げます。
法人税の本も購入しましたが、結局は基本部分しか説明がなく、探している事例は説明がなく困っていました。
海野先生は細かく事例を使って説明して下さり、ほぼ自分が探していた事例を取り入れ
丁寧に説明があります。
今後もお世話になるかと思いますので、宜しくお願い申し上げます。