
役員報酬って、どうやって決めればいいんだろう?
設立間もない会社の経営者や、初めて役員報酬を設定しようとしている方の中には、こんな疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
「毎月、自分が決めた金額を振り込めば大丈夫だろう、、、」そう思っていたのに、あとから「そのやり方では損金にできません」と税務署に指摘されて戸惑うケースは少なくありません。
実は、役員報酬の出し方にも、法人税法ではしっかりとしたルールがあることをご存じでしょうか?
役員報酬を支給する上で、ほとんどすべての法人が考慮しなければならないルールが、今回のテーマである「定期同額給与」です。
これは、「毎月、同じ金額を支給する」という形式を守ることで、役員報酬を法人の経費(損金)として処理できるというルールです。
このルールに則っていないと、たとえ実際に役員報酬を支払っていたとしても、法人の経費(損金)として認められないケースがあるというとても重要なルールです。
本記事では、そんな定期同額給与の基礎から実務までの内容を元国税調査官の視点で税務初心者にもわかりすく解説していきます。
この記事を読み終える頃には、あなた自身が「損金にできる役員報酬のルール」を正しく理解し、迷わず実践できるようになります。
ぜひ最後までご覧いただき、税金で損しない税務に強い経営の第一歩を踏み出してください。
会社を設立してもうすぐ1月になるそんなある日・・・
会社を設立したばかりで忙しかったから役員報酬について決めるのを忘れてたな、、、
でも、役員報酬って毎月自由に支給してもいいものなのかな?
まぁ毎月の利益を見ながら適当に決めればいいか!
ちょっと待ってください!!
実は、役員報酬の支給の仕方を間違えると、法人税法上は経費(損金)に認められず、会社に余計な法人税が課されることになりますよ!
え!?経費に認められない!?
では、どうやって役員報酬を支給したら、きちんと法人の経費にできるのでしょうか?
法人の場合、役員報酬は、原則毎月定額を支給する必要があります!
これを「定期同額給与」と呼びます。
役員報酬が「定期同額給与」であれば、法人法上の経費である損金になります。そうでないと損金になりません。(※損金については後述します。)
今回は法人税の中で絶対に押さえておかなければならないルール「定期同額給与」について詳しく解説していきたいと思います。
本記事では、次のようなポイントを初心者向けにわかりやすく整理してご紹介します。
定期同額給与とはどのようなルールか?
定期同額給与は改定できる?その場合どのタイミングで、どのように改定できるのか?(改定方法・改定時期)
損金不算入と判断されてしまう具体的なケース
定期同額給与に関する手続きは必要か?届出は必要なのか?
正しい知識を身につけて、税務署にも自信を持って対応できる準備をしておきましょう。
経費にならなかったら大変だ!
絶対に理解しなければ!
よろしくお願います!
1 定期同額給与とは?

この章では、「定期同額給与」とはどのようなルールなのか、そもそも損金とはどのようなことなのか、そして定期同額給与の2つの条件について解説していきます。
1-1 定期同額給与とはどのようなルールなのか
そもそも「定期同額給与」というのはどのようなルールなんですか?
役員報酬と通常の給料とは、法人税法ではそんなに違いがあるんでしょうか?
法人税法では、役員に対して支給する給与に対して厳しいルールを設けています。
一般の従業員に支給する給与へのルールは、それほど厳しくありませんが、役員に対するものはたいへん厳しくなっています。
その中でも、最大級に注意しなければならないのが、この「定期同額給与」という役員の給与に対する法人税法の独自ルールです。
それでは、定期同額給与とはどのようなルールなのかを確認していきましょう!
定期同額給与とは、会社が役員に支給する報酬を、「損金」(法人税法上の経費)として認めてもらうために必要な形式の給与です。
役員に対して支給される給与のうち、以下の要件をすべて満たすものを指します。
- 支給時期が1か月以下の一定期間ごとであること
- 会計期間内の各支給期間における支給額が同額であること
こう言われると難しく感じるかもしれませんが、簡単に言うと次のように表現できます。
毎月、同額の役員報酬を支給する!
これら2つの条件を満たせば、基本的には、法人税法上は損金と認められます。
逆に言えば、この要件を満たさない役員報酬を支給した場合、原則として「損金」として認められず、その分税負担が多くなってしまいます。
1-2 そもそも損金とは
定期同額給与に該当しない役員報酬は「損金」と認められないという用語が出てきましたが、そもそも「損金」というのはどういう意味なんでしょう?
法人税法上も費用ってどういうことですか?
まず、税金を計算するイメージなのですが、次のようにイメージしてもらうといいです。
❶ 収益 ー 費用 = 利益
❷ 利益 × 法人税率 = 法人税
次の例で考えてみます。
- 収益:1,000万円
- 費用:600万円
- 法人税率:20%
❶ 利益は、1,000万円 – 600万円 = 400万円と計算できます。
❷ 法人税額は、400万円 × 20% = 80万円と計算できます。
これはよくわかりますよ。
損金というのは、まずは、この利益を計算するための「費用」とほとんど同じ意味だと考えてください。
費用が大きくなれば税金が少なくなりますよね?
先ほどの例で、費用を600万円から800万円にしてみると
| 費用 600万円 | 費用 800万円 | |
|---|---|---|
| 利益 | 1,000万円 – 600万円 = 400万円 | 1,000万円 – 800万円 = 200万円 |
| 法人税額 | 400万円 × 20% = 80万円 | 200万円 × 20% = 40万円 |
| 費用が200万円少なくなると | 法人税額が40万円少なくなる! |
費用が多くなれば、税金は少なくなりますね。
それを前提として、今度は法人税の立場に立って考えてみます。
法人税法は、税の公平性を考えて、企業会計では認められる費用も、法人税法では認めないというルールを決めています。
例えば、以下のようなルールがあります。
| ルールの内容 | ルールの理由 |
|---|---|
| 減価償却費を決まった方法で計算した金額を超える金額は認めない。 | 減価償却費を会社のルールで自由に計算することができると、利益が出そうな時に減価償却費を多めに計上して利益を圧縮するということもできるので不公平。 |
| 中小企業の場合は、交際費は800万円を超えた金額は認めない。 | 冗費の節約による企業経営の健全化と公正な企業間競争を促すため。 |
| 中小企業の役員賞与は、決められた期限内に税務署に届出を提出していないと認めない。 | 役員賞与を使って、今期は利益が出たから決算の時には賞与を支給するなど、利益を操作することを防ぐため。 |
このように、課税の公平を担保するために、法人税は独自ルールを作って費用とは認めない金額を決めています。そのため、法人税の費用と企業会計の費用が一致しなくなります。法人税では、会社計算の計算と異なった費用を算出するために「費用」でなく「損金」という言葉を使っているのです。
法人税法では、以下のように名称をつけて、企業会計(会社計算)と区別しています。
ではなく
所得金額 × 法人税率 = 法人税額
そして、定期同額給与のルールに従っていない役員報酬は、この法人税法の「損金」に算入されないのです。
損金に算入されないということを一言で「損金不算入」と言います。
ここまでの話をまとめます。
❷ 「所得金額 = 益金 ー 損金」は会社計算(企業会計)の「利益 = 収益 ー 費用」とほとんど同じ
❸ 会社が費用にしたすべてを法人税法では認められない部分があるので、便宜的に「費用」と区分するために「損金」とした。
❹ 法人税法では、会社計算の費用のうち損金と認められない金額を「損金不算入」の金額とし、認められる金額を「損金算入」の金額としている。
会社計算の費用はほとんどが損金となるが、一部損金不算入となるものがあると理解しよう!
「損金」「損金算入」「損金不算入」という言葉は、法人の経理には絶対必要になる知識です。まだよくわからないという方や、もっと詳しく知りたいという方は、次の記事でわかりやすく詳しく解説していますので、是非一読をおすすめします!
なるほど。「損金」のことはよくわかりました。
ちなみに役員報酬が定期同額給与のルールにしたがっていなくて、損金不算入となった場合は、だいたいどのくらい法人税が掛かってしまうのでしょうか。
では、定期同額給与の要件を満たさない役員報酬を支給した場合、どのくらい法人税の負担が増えるのかを具体例から見てみましょう。
説例内容は以下の通りです。
【説例内容】
- 事業年度:x1年4月1日からx2年3月31日 (12か月)
- 資本金:1,000万円(中小企業)
- 所得:3,000万円
- 役員報酬: ①x1年4月からX1年12月支給分の役員報酬は月50万円を支給
②x2年1月からX2年3月支給分の役員報酬は月150万円を支給
合計 900万円支給
(①は定期同額給与。②は定期同額給与でない)【役員報酬の支給状況】
支給日 支給額 4月30日 50万円 5月31日 50万円 6月30日 50万円 7月31日 50万円 8月31日 50万円 9月30日 50万円 10月30日 50万円 11月30日 50万円 12月31日 50万円 1月31日 150万円(内100万円は損金不算入) 2月28日 150万円(内100万円は損金不算入) 3月31日 150万円(内100万円は損金不算入) 合計 900万円
上の設例内容のとおり、支給した役員報酬のうち300万円が損金不算入となっています。この場合の法人税の概算は以下のようになります。
| 項目 | 増加する税負担額 |
|---|---|
| 損金不算入額 | 300万円 |
| 法人税(仮に実効税率30%) | 300万円×30% =90万円 |
| 増加する税負担額 | 90万円 |
なるほど、、3カ月間だけ役員報酬を100万円ずつ増額するだけで、法人税が90万円も増えてしまうのですね、、
これは、かなり大きい税額です。
おっしゃるとおり、ただ定期同額給与の要件を満たさない役員報酬を支給しただけで90万円もの無駄な税金がかかってしまうことになりかねません!
定期同額給与を知らないまま役員報酬を決めていたら、無駄な税金を支払うところでした。
役員報酬って、きちんとしたルールに沿って支給しないと、大変なことになるんですね。
そのとおりです。
会社経営において、「損金にできるかどうか」というのは税金対策の基本中の基本です。
法人税法では、定期同額給与は、知らないでは済まされないルールの代表格です!
1-3 定期同額給与となる条件とは
役員に報酬を支給するのには、定期同額給与のルールを守らなければならないということはよくわかりました!
この定期同額給与のルールを詳しく教えてください!
では、定期同額給与となる条件についてもう一度確認しますよ。
定期同額給与が損金算入されるには、以下の2つの条件をすべて満たす必要があります。
- 支給時期が1か月以下の一定期間ごとであること
- 会計期間内の各支給期間の支給額が同額であること
これを一つずつわかりやすく解説していきます。
1-3-1 支給時期が1か月以下の一定期間ごとであること
支給のタイミングは、「1か月以下の一定の期間ごと」である必要があります。
これは文字通りですが、役員報酬を損金に算入するには1月以下の期間でかつ一定の期間ごとに支給する必要があるということです。
このため、役員に対して年1回・年2回などの不定期な支給をしているケースは、たとえ月額換算していても、定期同額給与には該当せず、損金に算入できません。
例えば半月に1度といったように1月に満たない期間で役員報酬を支給することも可能ですが、そのような会社はほとんどないでしょうから、要するに毎月1回支給しなさいということを意味していると捉えてよいでしょう。
ここでのポイントは「毎月支給する」です。不定期はダメ!ということです。
1-3-2 会計期間内の各支給期間の支給額が同額であること
給与の支給額が、その会計期間内で、各支給時期の支給額が同額であることが求められます。
支給額が同額とはどういうことか、その意味をケース別に見ていきましょう。
給与改定がない場合
その会計期間内の各支給時期(給料日)に支給される金額が同額であることが求められます。
最も一般的な形は、「給与改定が一切ないケース」で、毎月同額を規則的に支給している役員報酬です。
この場合、事業年度を通じてすべての支給額が同額であれば、文句なく定期同額給与と認められます。
たとえば、以下のように支給が継続して行われていれば問題ありません。
【役員報酬の支給表】給与改定なし:毎月50万円を支給
| 支給日 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 2025年4月 | 500,000円 | 毎月支給 |
| 2025年5月 | 500,000円 | 毎月支給 |
| … | … | … |
| 2026年3月 | 500,000円 | 毎月支給 |
また、源泉所得税や社会保険料などが控除された後の「手取り額」が同額である場合も、定期同額給与とみなされます。
この例では、毎月50万円を支払っていますので、各支給時期で支給額が同額となっています。
例えば決算期末の3月だけ利益を圧縮する目的で100万円を支給すると同額とは言えなくなります。
給与改定がある場合
定期同額給与では、毎月絶対に同額でないといけないというわけではありません。一定の要件を満たせば金額を変えることができます。要件については後述します。定期同額給与で認められる給与改定があった場合で、次の①〜③の各期間内の各支給時期に支給される金額が同額であることが求められます。
①事業年度開始の日から改定後の直前の給料日まで
②改定後の直後の給料日から次の改定後の直前の給料日まで
③次の改定後の直後の給料日から事業年度終了まで
①は改定が行われるまでの3ヶ月間が同額になっています。
②も次の改定が行われるまでの4ヶ月間が同額になっています。
③は改定から期末までの5ヶ月間同額を支給しています。
この場合は同額として扱います。という意味です。
1-4 定期同額給与の支給例と一部損金不算入となる支給例
条件については、なんとなくわかってきました。
その条件を踏まえて、定期同額給与となる例と定期同額給与となっていない例を教えてもらえますか。
では、次は具体的な例を出して定期同額給与の支給例を確認していきたいと思います。
1-4-1 一般的な定期同額給与の支給例
定期同額給与が適正に支給されている、最も一般的なパターンは次のような形です。
4月から翌年3月までの12か月間、毎月月末に月額50万円の役員報酬を支給した。
| 支給日 | 支給額 |
| 4月30日 | 50万円 |
| 5月31日 | 50万円 |
| 6月30日 | 50万円 |
| 7月31日 | 50万円 |
| 8月31日 | 50万円 |
| 9月30日 | 50万円 |
| 10月30日 | 50万円 |
| 11月30日 | 50万円 |
| 12月31日 | 50万円 |
| 1月31日 | 50万円 |
| 2月28日 | 50万円 |
| 3月31日 | 50万円 |
| 合計 | 600万円 |

このような場合は定期同額給与の条件をすべて満たしているため、支払った給与は全額損金に算入されます。
一方、以下のような場合は、支給した役員報酬の一部が損金不算入となります。
1-4-2 一部が損金不算入となる役員報酬の支給例
以下は、税務上、定期同額給与として認められず、役員報酬の一部が損金不算入となるパターンです。
【設例】
4月から12月までの9か月間、毎月末日に月額50万円の役員報酬を支給した。
翌年1月から3月までについては、業績好調のため、毎月末に月額150万円の役員報酬を支給した。
(この給与の改定は、定期同額給与で認められるものでないケース)
【役員報酬の支給表】
| 支給日 | 支給額 |
| 4月30日 | 50万円 |
| 5月31日 | 50万円 |
| 6月30日 | 50万円 |
| 7月31日 | 50万円 |
| 8月31日 | 50万円 |
| 9月30日 | 50万円 |
| 10月30日 | 50万円 |
| 11月30日 | 50万円 |
| 12月31日 | 50万円 |
| 1月31日 | 150万円(内100万円は損金不算入) |
| 2月28日 | 150万円(内100万円は損金不算入) |
| 3月31日 | 150万円(内100万円は損金不算入) |
| 合計 | 900万円 |
【支給のイメージ図】

えっ、、業績が良くなって役員報酬を変えることもできないんですか?
そうですね。
定期同額給与で認められる改定以外は、役員報酬の金額を変更することはできません。
損金不算入となる定期同額給与については、他にもケースがありますので、後で詳しく解説していきたいと思います。
損金と認められないのは、支給額の150万円すべてではなく、同額分の50万円は認められて、それ以外の100万円が認められないんですね。
なるほど…
1-5 なぜ定期同額が必要なのか
でも、なんでこんなに「定期同額」であることにこだわるんですか?
会社のお金で役員に実際に給与を支払っているわけだから、自由に金額を決めてもいいと思うのですが。
確かにその感覚は自然だと思います。
この制度の目的は、役員報酬による恣意的な利益調整を防ぐことにあります。
恣意的な利益調整を防ぐこと??
どういう事でしょうか?
恣意的な利益調整とは、例えば、「今期は利益が出そうだから役員報酬を増やして法人税を減らそう」とか、「赤字だから一時的に報酬を減らそう」といったように、役員報酬を使って会社自身が自由に利益を操作することを指します。
国税当局が最も警戒しているのは、このような操作の中でも、税金を少なくするような恣意的な利益調整です。
もし会社が役員報酬を自由に上下させて利益を調整できると、課税の公平性が大きく損なわれてしまいます。
そのため、税法では「役員報酬は、毎月、同じ金額を支給する」というルールを設けることで、こうした調整が起きないようにしているのです。
なるほど、、、定期同額給与は、会社が勝手に役員報酬をいじって利益を調整されるのを防ぐための制度なんですね。
つまり、税金の計算をちゃんと公平にするために、毎月きちんと同じ額を払うルールがあるってわけですね!
そのとおりです。
定期同額給与というのは、
会社が勝手に税金を調整しないように
すべての会社が公平に課税されるように
国が設けたルールです。
次章では、定期同額給与となる役員報酬を支給するには、実際にどのような手続きを踏めばよいのか、そしてどのように支給すればよいのかについて解説していきたいと思います。
2 実際の支給と手続きの流れ

定期同額給与のルールや意味はわかってきました!
でも実際に支給するとなると、どんな書類が必要で、どんな手続きをすればいいんでしょうか?
では、支給の手続きの流れをひとつずつ見ていきましょう。
2-1 定期同額給与を支給するために必要な書類
定期同額給与を支給する際には、税務署に何か届け出を出さないといけないんでしょうか?
実は、定期同額給与を支給する際には、税務署に対して届出書などを提出する必要はありません。
つまり、特別な届出書や申請書を提出する義務はないということです。
ただ、給与を決定する場合や給与改定を行う場合は、その事実を証明する資料が必要になります。
ふむふむ。
証拠となる記録というのは、どんなものを作成したらいいのですか?
役員報酬を決めたり金額等を変更するには、株主総会や取締役会などしかるべき機関での決議が必要です。
その決議内容を記録した「議事録」を作成しておく必要があります。
なお、議事録については、税務調査の際に改定事由などの確認する資料として提出を求められることがありますので必ず作成し保管しておくようにしてください。
2-2 議事録の作成について
全力法人税に無料登録またはログインするとこの記事の全文をお読みいただけます。













コメント