会社から企業型確定拠出年金(企業型DC)の説明会があったんですが、正直、専門用語ばかりで頭に入ってきませんでした……。結局、自分の給料はどうなるんですか?
基本の掛金は、給料とは別に会社が用意してくれるお金ですよ。ただ、それをどう運用するかは、あなた自身が決めることになります。何も選ばなければ、そのまま増えにくい商品で眠り続けてしまう——ここが、この記事で一番お伝えしたいポイントです。
「会社から企業型DCの説明会があった。資料は渡されたけど、正直、専門用語ばかりで頭に入ってこない。結局、自分の給料はどうなるのか、何をすればいいのか、わからない」——説明会の後、こう感じている方は少なくないはずです。
実は、企業型DCに加入している人のうち、資産のすべてを「元本確保型(預貯金・保険などのほぼ増えない商品)」だけで運用している人は、2025年3月末時点で20.6%にのぼります(運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料」2025年3月末)。約5人に1人が、会社が用意してくれたお金を、実質的に「何も選ばない」状態のまま置いているということです。
この記事では、あなたの会社の企業型DCがどんな型なのかを特定し、判断に必要な情報を整理したうえで、最後に運用商品を一度だけ自分で選ぶところまでを案内します。会社が出してくれる掛金は、あなたが何もしなくても積み立てられていきます。だからこそ、運用商品を選ぶという最初の一歩さえ踏み出せば、あとは自動的に資産形成が進んでいく仕組みです。逆に言えば、その一歩を踏み出さない限り、増える可能性のある選択肢を自分から手放し続けることになります。
まず制度の仕組みを理解し、自分の勤務先がどの型に当てはまるかを特定します。そのうえで税金や社会保険料、元本割れのリスクといった判断材料を整理し、値動きとの付き合い方を押さえてから、実際にどれくらい資産が変わるのかを数字で確認します。読み終える頃には、自分が確認すべきこと(掛金の出どころ・制度の方式・iDeCoの拠出枠)がわかり、「運用商品を放置しない」という最初の判断ができる状態になっています。
- ✅ 自分の会社の企業型DCが、どの型(マッチング拠出/選択制)なのかの見分け方
- ✅ 税金・社会保険料が軽くなる仕組みと、その裏側にある注意点
- ✅ 「何も選ばない」ことが一番の機会損失になる理由と、商品選びの最初の一歩
- ✅ 掛金額別の資産シミュレーション
- ✅ 今日から確認すべきことの3ステップ
1 会社が出し、自分が運用する制度だと理解する
企業型DCがどんな制度か、まずは基本の仕組みから確認していきましょう。
✅ 会社が出してくれるお金は、使わない理由がない
✅ ただし「決まっているのは掛金の額」まで。受け取る額は運用次第
✅ 何もしないと、そのお金は「元本確保型」で眠ったままになる
企業型確定拠出年金(企業型DC)とは、会社が毎月一定額の掛金を拠出し、その資金を従業員自身が金融商品(投資信託・保険商品・定期預金など)を選んで運用する私的年金制度です。運用がうまくいけば将来の受取額は増えますが、運用成績が悪ければ元本を下回ることもあります。
1-1 確定しているのは「掛金の額」まで。受け取る額は運用次第
「退職金」と聞いて多くの方がイメージするのは、会社が将来の金額をあらかじめ約束してくれる制度(確定給付:DB)かもしれません。企業型DCはこれとは仕組みが異なります。
| タイプ | 企業型DC(確定拠出) | 確定給付(DB) |
|---|---|---|
| 確定しているもの | 会社が出す掛金の額 | 将来もらえる金額 |
| 運用するのは誰か | 従業員自身 | 会社(まとめて運用) |
| 将来の受取額 | 運用成績によって変わる | あらかじめ決まっている |
つまり企業型DCでは、会社が出してくれる掛金の額は決まっていますが、将来いくら受け取れるかは自分の運用次第ということになります。会社が出してくれるお金である以上、これを活用しない理由は基本的にありません。問題は、その先です。
1-2 何もしないと、そのお金は「元本確保型」で眠ったままになる
運用商品を自分で選ばず放置していると、あらかじめ会社が指定したデフォルト商品(多くの場合、定期預金や元本確保型の保険商品)で運用され続けます。悪いことではありませんが、運用益をあまり期待できない商品であることが多いのが実情です。
冒頭でも触れたとおり、企業型DC加入者のうち資産のすべてを元本確保型だけで運用している人は20.6%(2025年3月末、加入者ベース)にのぼります(運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料」)。会社が出してくれるお金を、実質的に「何も選ばない」まま置いている人が、約5人に1人いるということです。この記事のゴールは、あなたをこの5人に1人から外すことです。
「元本確保型のままでいい」というのは、ダメな選択なんですか?
ダメではありませんよ。元本確保型を自分の意思で選んだのであれば、それも立派な判断の一つです。問題なのは、選んだ覚えがないのに、気づけばそうなっている状態です。この記事を読み終えたあとに、あらためて「自分の意思で」選び直していただければ十分です。
とはいえ、選ぶためにはまず、自分の会社の制度がどんな型なのかを知る必要があります。次の章で、あなた自身のケースを特定していきましょう。
2 自分の勤務先が、どの型かを特定する
✅ 基本掛金は会社が出す。上乗せの方式は会社ごとに違う
✅ 選択制は社会保険料が軽くなる一方、影響もある(詳しくは3章)
✅ すでにiDeCoに入っている人は、「移換」か「併用」かを選ぶことになる
2-1 基本掛金は会社が出す。上乗せの方式は会社ごとに違う

基本となる掛金は、給料から天引きされるものではなく、給料とは別に会社が用意してくれるお金です。この基本掛金については、給料の額面が減るわけではありません。
ただし、掛金の上限まで上乗せしたい場合は、会社の制度によって次の2パターンのどちらかになります。どちらを採用しているかは会社次第です。
- マッチング拠出:従業員が任意で、会社の基本掛金とは別枠で追加負担するお金。給料の額面はそのまま変わりません。
- 選択制での追加:給料(基本給や手当など)の一部を、掛金に振り替える方式。この場合は給料の額面自体が減りますが、その分は社会保険料・税金の計算対象からも外れます(詳しくは3-2で解説します)。
「基本掛金がいくらで、上乗せ分がどちらの方式になっているか」は会社ごとに異なります。まずご自身の会社がどちらの方式か、制度導入担当窓口や説明資料で確認してみてください。これが、最初に確認すべきことの1つ目です。
改正前のマッチング拠出には、「加入者掛金(自分が出す掛金)は事業主掛金(会社が出す掛金)の額を超えてはならない」というルールがありました。2026年4月以降はこの制限が撤廃され、拠出限度額の枠内であれば、会社の掛金額に関係なく自分の掛金を設定できるようになります。
あわせて、2026年4月1日から同年11月30日までの間は、初めて事業主掛金を超える額に増額する場合の掛金額変更回数について、経過措置が設けられる見込みです。実際にこの仕組みを利用するには勤務先の企業型DC規約の見直しが必要になるため、勤務先が対応済みかどうかは人事担当窓口に確認してみてください。
2-2 選択制なら、給与の一部が掛金に振り替わる
選択制を採用している会社では、給与の一部を掛金に振り替えるかどうかを従業員自身の意思で選択できます。振り替えた分は社会保険料の計算対象から外れるため、目先の手取りへの影響を抑えながら積み立てられる、という魅力があります。
ただし、これは同時に将来受け取る年金や各種給付にも影響する話でもあります。「得だから振り替える」という単純な話ではないので、判断材料は3-2でまとめて確認します。
2-3 すでにiDeCoに入っている人は、「移換」か「併用」かを選ぶことになる
個人でiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)に加入していた方が、勤務先で新たに企業型DCが始まる場合、iDeCoの資産を企業型DCに移す「移換」と、iDeCoを続けながら企業型DCにも加入する「併用」のどちらかを選ぶことになります。
どちらが良いかは一概には言えません。口座を1つにまとめて管理をシンプルにしたい方は移換、掛金を上乗せしてより多く積み立てたい方は併用が向いていることが多いですが、会社の制度によって選べる選択肢自体が異なります。ここでは概要だけ押さえて、詳しい比較は6章にまとめました。iDeCoをお持ちでない方は、次の3章に進んでください。
自分の勤務先がどの型かが見えてきたら、次はいよいよ判断材料です。税金や社会保険料はどれくらい変わるのか、そして何に注意すべきかを整理していきましょう。
3 判断材料:税・社会保険料の軽減と、その裏側
ここからは、判断に使う材料を整理していきます。
✅ 拠出・運用・受取の3段階で税制優遇がある
✅ 社会保険料が軽くなる分、将来の年金や給付が減る可能性がある
✅ 原則60歳まで引き出せず、元本割れの可能性もある
3-1 拠出・運用・受取の3段階で税制優遇がある
拠出時:所得税・住民税の対象外
選択制で振り替えた掛金や、マッチング拠出で上乗せした掛金は、所得税・住民税の計算対象から外れます
運用時:運用益に課税されない
通常の投資では運用益に約20%課税されますが、企業型DCの運用中はこの課税がありません
受取時:退職所得控除・公的年金等控除の対象
一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除の対象になり、税負担が軽くなります
①の拠出時の優遇について、具体的な設例で軽減額をイメージしてみましょう。
- 40歳・年収400万円程度の正社員
- 選択制DCで、給与の一部月10,000円を掛金に振り替えた場合
- 振り替えた10,000円は、社会保険料・所得税・住民税それぞれの計算対象から外れます
| 軽減される項目 | 軽減される割合の目安 | 月あたりの軽減額(概算) |
|---|---|---|
| 社会保険料 | 約15% | 約1,500円 |
| 所得税 | 約5% | 約500円 |
| 住民税 | 一律10% | 約1,000円 |
| 合計 | ― | 約3,000円 |

月あたり約3,000円の負担軽減ということは、年間では約36,000円(3,000円×12ヶ月)の負担軽減になる計算です。掛金として積み立てながら、同時に手取りの目減りを抑えられる点が、選択制DCの実務的なメリットといえます。
上記の軽減割合・軽減額は、あくまでイメージをつかむための一例です。実際の軽減額は、年収・扶養家族の有無・加入している健康保険組合の保険料率(協会けんぽ/組合健保、都道府県によっても異なります)・所得税率の区分によって変動します。正確な金額を知りたい場合は、給与担当部署や社会保険労務士・税理士にご確認ください。【編集部注:本記事の社会保険料軽減割合(約15%)は目安であり、一次情報による確定値ではありません。根拠要確認】
運用益に対する課税は、厳密には「非課税」ではなく課税の繰り延べです。運用中は課税されず、受取時に退職所得控除・公的年金等控除などの枠組みで精算される仕組みになっています。また、確定拠出年金の資産には法律上特別法人税(年1.173%)という税金が定められていますが、現在は課税が凍結されています。この凍結措置は1999年(平成11年)から続いており、直近では2026年3月の税制改正で凍結期限が2029年3月末まで延長されました(租税特別措置法第68条の5)。過去にも繰り返し延長されてきた措置です。
受取時の退職所得控除は、会社の退職金と企業型DCの一時金を近い時期に受け取ると、それぞれで重複して使うことができません(所得税法施行令第69条)。控除枠が調整されるため、受け取り方によっては手取りが想定より少なくなることがあります。
さらに2026年1月以降、企業型DCの一時金を先に受け取った場合の調整期間が、これまでの4年内から9年内(合計5年から合計10年)に延長されました。DCの一時金を受け取ってから10年以内に退職金を受け取ると、退職所得控除が調整される扱いになります。
60歳前後で退職金と企業型DCの一時金の両方を受け取る予定がある方は、受け取る順番と時期によって手取り額が変わります。事前に会社の担当窓口や税理士に相談しておくことをおすすめします。
3-2 社会保険料が軽くなる分、将来の年金や給付が減る可能性がある
選択制で給与の一部を掛金に振り替えると、その分が社会保険料の計算のもとになる標準報酬月額から外れるため、社会保険料が軽減される可能性があります。ただし同じ企業型DCでも、給与とは別に上乗せする「マッチング拠出」の場合はこの軽減効果はありません。iDeCoも同様に、本人の手取りから拠出するため軽減効果はない点にご注意ください。
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