勘定科目の「福利厚生費」について、具体例をふんだんに使って簿記初心者にもわかりやすく解説します。
1「福利厚生費」が使われる取引例
勘定科目の「福利厚生費」で経理される主な取引例は以下のとおりです。
| 内容 | 具体例 |
|---|---|
| 従業員の健康に関する費用 | 定期健康診断、人間ドック、常備医薬品、医務室関係の費用 |
| 従業員の環境改善に関する費用 | 社宅、保養所、交通費、通勤手当、出張手当、食事補助、福利厚生サービスの利用料、資格取得費用、社員割引、プロ野球年間シート |
| 従業員の親睦活動に関する費用 | 新年会、忘年会、親睦会、運動会、サークル活動、社員旅行、スポーツクラブの法人契約 |
| 従業員の慶弔に関する費用 | 結婚祝、出産祝、誕生日祝、フラワーギフト、花輪、香典、お見舞い金、勤続表彰 |
| 従業員が使用する消耗品に関する費用 | 制服の支給、作業服の支給、職場用のお茶やコーヒーの費用、新聞や雑誌の購読料、創立〇周年記念品 |
| 従業員のための保険に関する費用 | 従業員向け法人保険(生命保険料、損害保険料) |
| 従業員の育児や介護に関する費用 | 保育園料補助、介護保険対象サービスの利用補助 |
2「福利厚生費」とは
「福利厚生費」で経理されるものは、健康診断の費用、親睦会の補助、レクリエーション費用、慶弔見舞金、制服の支給など、会社が従業員のために支払う費用です。
2-1 福利厚生費の特徴
「福利厚生費」の会計上おさえておくべき特徴は次のとおりです。
| グループ | 「費用」グループ |
|---|---|
| 決算書の表示 | 販売費及び一般管理費 |
| 類似科目 | 交際費、給与 |
| 税区分 | 課税対象仕入 |
| インボイス有無の判定 | 必要 |
2-2 福利厚生費とする2つの要件
福利厚生費とは、従業員の生活の質を向上させたり、働きやすい環境を提供するために支出する費用をいいますが、福利厚生費として経理するには以下の2点をいずれも満たしている必要があることに注意が必要です。
- 従業員のおおむねすべてを対象とし、機会が平等にあること
- 支出金額が社会通念上妥当であること
2-2-1 従業員すべてを対象とし、利用機会が平等であること
「従業員のおおむねすべてを対象とし」なので、他社の会社の人がいれば、福利厚生費にはなりません。(交際費になります。)
「従業員すべて」ということですので、一部の従業員だけというのは難しいでしょう。
これは、会社の規模や業態によっては、全従業員でなくてもよいと解されています。規模の大きい会社であれば、部署ごとの忘年会などが考えられるかと思います。
しかしながら会社が本店事務所のみで、従業員10人程度であれば全員に声をかけるのは難しくないので、部署ごとというのは難しいと思われます。
「機会が平等に」とは、機会が全従業員に対して与えられていれば良いので、実際の参加者が全員でなくても構いません。参加率は概ね50%以上であればよいとされています。
ちなみに1人社長の会社(マイクロ法人)はどうなるでしょうか?
社長1人は従業員全員と考えられるからいいのではないかと考えられます。
でもダメです。
社長は従業員ではありません。
つまり、1人社長の会社には福利厚生費は使えません。
また、社長の親族しかいない会社でも、個人的経費の負担は認められないため、福利厚生費として、いいえ、そもそも経費として計上できません。
2-2-2 支出金額が社会通念上、妥当であること
「社会通念上妥当」というのは、社会の一般的な感覚的で通常という意味です。
ちなみに10か月間で53回の従業員の慰労のための飲み会代は福利厚生費とならず交際費だという判例があります。それはやりすぎで、頻度が社会通念を超えていると判断されたということです。
1人当たり約2.2万円~2.9万円の慰安のための行事(旅行でない)も交際費だという判例もあります。金額が社会通念を超えていると判断されたということです。
社会一般的に判断というのは実際には難しいです。
このように社会通念的に判断という場合は、つまりグレーゾーンということを意味します。
2-2-3 社員旅行が福利厚生費となるかで理解を深めよう
どのような費用を「福利厚生費」として計上してよいかは税務上グレーゾーンが多いところです。
その感覚を鋭くする目的で、社員旅行で福利厚生費とするにはどのような要件があるかを確認してみましょう。
社員旅行が福利厚生費になるかについては、国税庁のタックスアンサーなどで詳しく取り上げられています。
ここで福利厚生費の特徴を把握できれば、それをその他の支出にも応用できます。
社員旅行に対して会社が負担する費用が福利厚生費になるかどうかは、次の2つで判断します。
○その旅行の内容(旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、従業員等の参加割合・使用者及び参加従業員等の負担額及び負担割合など)を総合的に勘案して、社会通念上一般に行われているレクリエーション旅行と認められるかどうか。
○その旅行の従業員への負担額が、強いて課税するほどでもないという少額不追求の趣旨を逸脱しないものかどうか。
つまり、前述の福利厚生費とする以下の2つの要件を、旅行での判断に当てはめたらこうなるよということを詳しく説明しています。
- 従業員すべてを対象とし、機会が平等にあること
- 支出金額が社会通念上妥当であること
【社員旅行が福利厚生費になるケース】
上記の判断基準は抽象的ですが、具体的には、次の2つの要件のいずれにも当てはまる場合は、福利厚生費として構いません。
- 旅行の期間が4泊5日以内であること。(海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。)
- 旅行に参加した人数が全体の人数の50パーセント以上であること。(工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50パーセント以上が参加することが必要)
「社員旅行を福利厚生費で処理できるのは最大何泊?」という質問をよく聞きますが、ズバリ4泊までです!
ただし、上の2つの条件のいずれも満たしている場合でも、自己都合で旅行に参加していなかった人にお金を支給する場合は、参加者と不参加者の全員にその不参加者に対して支給する額の給与の支給があったものとされます。
給与とされる場合は、その給与を受けた人はその分の源泉所得税が天引かれることになります。
会社側は、給与があったとされた金額から源泉所得税を計算して税務署に改めて納付することになります。
給与として取り扱われて源泉所得税がかかることについては、以下の記事で詳しく解説しています。
なお、必ずしも従業員の参加割合が50%以上でない場合も福利厚生費として認められるという見解も国税庁タックスアンサー(従業員の参加割合が50%未満である従業員レクリエーション旅行)で示されています。
- 総務担当者が福利厚生規程に基づき全従業員を対象とした国内旅行を計画し、全従業員を対象に参加者を募集したところ、従業員の都合等により、参加割合は38%であった。
- 旅行期間:3泊4日
- 費用及び負担状況:旅行費用15万円(内使用者負担7万円)
このような内容の旅行は、社会通念上一般に行われているレクリエーション旅行と認められ、給与や交際費とせず、福利厚生費として認められるとされています。
【社員旅行が福利厚生費にならないケース】
逆に社員旅行が福利厚生費になる要件を満たさない場合、どのように経理すべきなのかについても確認しましょう。
| ケース | 勘定科目 |
|---|---|
| 取引先に対する接待旅行 | 交際費 |
| 役員だけで行う旅行 | 給与 |
| 実質的に私的旅行と認められる旅行 | 給与 |
| 金銭との選択が可能な旅行 | 給与 |
(参考)国税庁タックスアンサー No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行
役員だけの旅行は、給与となることに注意しましょう。
所得税基本通達36-30で「使用者が役員又は使用人のレクリエーションのために社会通念上一般的に行われていると認められる会食、旅行、演芸会、運動会等の行事の費用を負担することにより、これらの行事に参加した役員又は使用人が受ける経済的利益については、-中略- 役員だけを対象として当該行事の費用を負担する場合を除き、課税しなくて差し支えない。」と定められています。
なお、基本通達とは、税務署職員を拘束するもので、税務署ではこのように取り扱うよ、というものを公開しているものです。
ここで、交際費と福利厚生費の区分は重要なのか?という疑問が湧く方がいると思います。
法人の場合は、交際費は800万円までは損金としてよいという規定があります。
損金とは、会社の経費と読み替えてもらえばと思います。
法人の場合は、原則交際費は税金の計算上会社の経費になりません。ただし、中小企業の場合は、800万円までなら会社の経費に特別にしてよいという規定があります。
大企業の場合は、福利厚生費なら会社の経費になって、交際費は会社の経費にならないので重要な問題となります。
中小企業の場合は、800万円までなら会社の経費になるので、交際費と福利厚生費の区分はあまり問題になりません。
また、個人事業主の場合は、交際費に上限はありませんので、交際費と福利厚生費の区分は、こちらもあまり問題になりません。
社員旅行が福利厚生費になるかどうかを考察したところでわかったことをまとめると次の点になるでしょう。
- 福利厚生費規定等に基づいて会社全体または部署や支店など全体に参加を募っていること
- 参加者がおおむね50%以上であること
- 支出額が社会一般的に高すぎないこと