商品を掛けで売ったときは「売掛金」で処理するんですよね。
でも、固定資産を売った代金や、まだ回収していないその他の代金も全部「売掛金」でいいんでしょうか?
良い質問ですね。「売掛金」は本業の商品・サービスの掛け代金だけに使う科目で、それ以外の未回収代金は「未収入金」など別の科目を使います。最初はここを混同しがちですよね。
あと、取引先が倒産して回収できなくなった売掛金って、どう処理すればいいのか分からなくて…。
また、回収不能になった売掛金の貸倒れ処理は要件が厳しく、税務調査でも狙われやすいポイントです。
この記事で、仕訳例・類似科目との違い・税務署のチェックポイントまで、実務に必要な知識を丸ごと解説します。
1「売掛金」が使われる取引例
「売掛金」は、本業(主たる営業活動)である商品の販売やサービスの提供を行い、その代金を後日受け取る権利(掛け代金)を計上する科目です。いわゆる「ツケ」で売ったときの、まだ回収していない代金だと考えると分かりやすいでしょう。業種を問わず、多くの会社で日常的に発生します。
商品を複数回納品して、1月でまとめて締めて請求して、支払いは翌月末までという場合が、代表例といったところでしょうか。
| 業種 | 売掛金になる取引(具体例) | よくある回収サイクル |
|---|---|---|
| 小売業・卸売業 | 得意先へ商品を掛けで販売した代金 | 月末締め翌月末払い等 |
| 製造業 | 自社製品・加工品を納品した代金 | 月末締め翌月末・翌々月末払い |
| 飲食業 | クレジットカード決済・電子マネー決済の未入金分 | 決済会社から翌月入金等 |
| IT・ソフトウェア業 | システム開発費・保守料・SaaS月額課金の請求分 | 検収後・月末締め翌月払い |
| コンサルティング業 | 月次顧問料・プロジェクト報酬の請求分 | 月末締め翌月払い |
| 建設業・工事業 |
完成・引渡し済みの工事代金の未回収分 ※建設業では売掛金ではなく完成工事未収入金という科目を使うことも多いです |
工事完成後の契約条件による |
| 美容・サロン業 | クレジットカード決済・電子マネー決済の未入金分 | 決済会社から翌月入金等 |
| 運送業 | 運賃・配送料の請求分 | 月末締め翌月末払い |
※クレジットカード・QRコード・電子マネー決済の未入金分は、実務上「売掛金」で処理するほか、決済手段ごとに補助科目を分けて管理する場合もあります。また、締め日が月末ではないことも多いため、期末の処理には注意が必要です。(後述)
1-1 「売掛金」ではなく別科目で処理する取引
「代金を後で受け取る」取引でも、それが本業の商品・サービスの販売でない場合は「売掛金」を使いません。以下の取引は間違えやすいので注意しましょう。
| 取引内容 | 正しい科目 | 理由 |
|---|---|---|
| 使わなくなった車両・機械・パソコン等(固定資産)を売却し、代金は後日受取り | 未収入金(未収金) | 本業の販売ではなく資産の処分による未回収代金 |
| 本業でない不用品・スクラップを売却し、代金は後日受取り | 未収入金(未収金) | 本業の営業取引ではない |
| 取引先が振り出した約束手形を受け取った | 受取手形 | 手形という証券で受け取った債権 |
| 売掛金が電子記録債権(でんさい)に変わった | 電子記録債権 | 電子債権記録機関に発生記録された債権 |
| 従業員に立て替えた交通費・社会保険料の本人負担分 | 立替金 | 営業取引ではなく一時的な立替え |
| 受注時に手付金・着手金を受け取った | 前受金 | まだ引渡し前で、逆に会社が負う債務(負債) |
| 子会社・役員へ資金を貸し付けた | 貸付金 | 営業取引ではなく金銭の貸付け |
※手形取引は2026年10月以降、順次廃止となる予定です。今後は仕訳で使う機会も減っていくでしょう。
2「売掛金」とは
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| グループ | 資産グループ |
| 決算書の表示 | 貸借対照表(B/S)の「流動資産」区分 |
| 類似科目 | 未収入金(未収金)・受取手形・電子記録債権 |
| 税区分 | 対象外(不課税) ※売掛金の計上・回収自体は消費税の課税対象外 |
| インボイス有無の判定 | 不要(売掛金の発生は債権の計上であり、仕入税額控除の対象取引ではない) |
売掛金は、売上を計上したタイミングで発生し、代金を回収したときに消滅します。
決算日時点で残っている売掛金の残高は、「まだ回収できていない売上代金」を意味します。回収サイト(締め日から入金までの期間)が長いほど資金繰りは苦しくなるため、残高管理は経営上とても重要です。
3「売掛金」の仕訳例
3-1 掛け売上で売掛金が発生したとき
本業の商品・サービスを掛けで販売した時点で、売上高を計上するとともに売掛金を計上します。
【仕訳例①】得意先へ商品(税込330,000円)を掛けで販売した(税込経理)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 330,000円 | 売上高 | 330,000円 |
【仕訳例②】コンサルティングの月次顧問料(税込55,000円)を請求した(税込経理)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 55,000円 | 売上高 | 55,000円 |
【仕訳例③】システムの月額保守料(税込110,000円)を請求した(税込経理)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 110,000円 | 売上高 | 110,000円 |
【仕訳例④】税抜経理方式で商品(本体300,000円・消費税30,000円)を掛けで販売した(税抜経理)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 330,000円 | 売上高 | 300,000円 |
| 仮受消費税 | 30,000円 |
※税抜経理方式では、売上高(本体)と仮受消費税(預かった消費税)を分けて計上します。仕訳例①〜③は税込経理方式の場合の仕訳です。どちらの方式でも最終的な納税額は変わりません。
3-2 売掛金を回収したとき
代金を回収したときに、売掛金を減少(貸方に計上)させます。
【仕訳例⑤】売掛金330,000円が普通預金に振り込まれた
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 330,000円 | 売掛金 | 330,000円 |
【仕訳例⑥】振込手数料440円が差し引かれて入金された(当社負担の場合)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 329,560円 | 売掛金 | 330,000円 |
| 支払手数料 | 440円 |
※振込手数料を当社が負担する取り決めの場合は、差し引かれた手数料を「支払手数料」に計上します。得意先負担の場合は全額(330,000円)が入金されます。
【仕訳例⑦】売掛金の回収として取引先振出しの約束手形を受け取った
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 受取手形 | 330,000円 | 売掛金 | 330,000円 |
【仕訳例⑧】売掛金が電子記録債権(でんさい)に変わった
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 電子記録債権 | 330,000円 | 売掛金 | 330,000円 |
※手形やでんさいで受け取った場合は、売掛金を消滅させ、それぞれ「受取手形」「電子記録債権」に振り替えます。
3-3 クレジットカード・キャッシュレス決済の売上
クレジットカードやQRコード決済で販売した場合、決済会社からの入金は後日になるため、いったん売掛金(または補助科目を分けて管理)で処理します。
【仕訳例⑨】店舗でクレジットカード決済により商品(税込33,000円)を販売した
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 33,000円 | 売上高 | 33,000円 |
(決済会社から手数料4%を差し引かれて入金されたとき)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 31,680円 | 売掛金 | 33,000円 |
| 支払手数料 | 1,320円 |
※決済手数料は「支払手数料」に計上します。売上は手数料分を減額せず全額計上するのが正しい処理です。
3-4 値引き・返品・貸倒れがあったとき
【仕訳例⑩】掛けで販売した商品に不良があり、値引き(税込5,500円)を行った
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,500円 | 売掛金 | 5,500円 |
【仕訳例⑪】掛けで販売した商品(税込33,000円)が返品された
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 33,000円 | 売掛金 | 33,000円 |
【仕訳例⑫】得意先が倒産し、売掛金220,000円が貸倒れとなった(貸倒引当金の残高がない場合)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒損失 | 220,000円 | 売掛金 | 220,000円 |
※貸倒れを損金にできる要件は厳格です。詳しくはセクション4-4で解説します。
3-5 決算時の貸倒引当金の設定
会計上は様々な引当金があるのですが、税務では引当金の計上を原則認めていません。貸倒引当金は税務上認められる数少ない引当金の1つです。税務上認められない引当金を計上した場合には、その計上額を法人税申告書の別表四で所得金額に加算する必要があります。
【仕訳例⑬】決算で売掛金残高に対し貸倒引当金50,000円を繰り入れた
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金繰入 | 50,000円 | 貸倒引当金 | 50,000円 |
※貸倒引当金の損金算入には法人の区分(中小法人等かどうか)による要件があります。繰入限度額の計算は国税庁 No.5501を参照してください。
【仕訳例⑭】前期に貸倒引当金を設定していた得意先の売掛金220,000円が貸倒れた(貸倒引当金の残高50,000円)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金 | 50,000円 | 売掛金 | 220,000円 |
| 貸倒損失 | 170,000円 |
※貸倒引当金を設定している売掛金が実際に貸倒れたときは、まず貸倒引当金を取り崩し、引当金の残高を超える金額だけを「貸倒損失」に計上します。
上記では引当金50,000円を取り崩し、超過分170,000円を貸倒損失としています。貸倒れの金額が引当金の残高以内に収まる場合は、全額を貸倒引当金の取り崩しで処理し、貸倒損失は計上しません。
なお、貸倒損失として損金算入するには、仕訳例⑫と同様に法基通9-6-1〜9-6-3の要件を満たす必要があります(詳しくはセクション4-4で解説します)。
4「売掛金」処理上の注意点
4-1 売上の計上時期と連動する
売掛金は売上と表裏一体です。売掛金をいつ計上するかは、売上をいつ計上するか(計上基準)とまったく同じです。法人税法では、資産の引渡しまたはサービスの提供が完了した時点で売上(と売掛金)を計上するのが原則です(法人税基本通達2-1-1)。
代金の入金日は関係ありません。3月決算の会社が3月31日に商品を引き渡したなら、入金が4月であっても当期(3月期)の売掛金・売上として計上します。この点は税務調査で最も狙われるポイントです(後述の「税務署はここをチェックする!」で詳述)。
4-2 消費税は売上計上時に認識する
前述のとおり、売掛金の発生・回収そのものは消費税の対象外です。消費税は売掛金のもとになった売上の計上時に認識します。税抜経理方式では、売上計上時に「仮受消費税」を計上し、回収時には消費税を動かしません。
4-3 売掛金を譲渡・ファクタリングしたときの消費税
売掛金を額面より低い金額で譲渡した場合、その差額は「売上債権売却損(債権売却損)」などで処理します。